JP5990059B2 - StAR発現抑制剤 - Google Patents
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Description
皮脂の分泌に影響を与える主な因子として、アンドロゲンやエストロゲン等のステロイドホルモン関連因子、PPAR等の核内受容体、サブスタンスP等の神経ペプチド等が知られているが、中でも皮脂腺細胞ではアンドロゲン合成系が活発に働いていることが報告されており(非特許文献1)、ステロイドホルモン関連因子との関係は重要視されている。
したがって、StARの発現を制御することによって、テストステロンの合成量を制御することが可能であると考えられ、StARの発現の抑制は、皮脂分泌の抑制、毛髪や体毛の伸長を制御可能であると考えられる。
(1)ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするStAR発現抑制剤。
(2)ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とする皮脂分泌抑制剤。
(3)ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするニキビ予防又は改善剤。
(4)ホウトウ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とする育毛剤。
(5)ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするアンドロゲン合成抑制剤。
斯かる植物は、そのまま又は乾燥・粉砕等して用いることができる。また、上記部位は、そのまま抽出工程に付されてもよく、又は粉砕、切断若しくは乾燥された後に抽出工程に付されてもよい。該抽出物は天然成分由来であり安全性も高い。
抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。
また、植物の抽出物は市販品を使用することもできる。
したがって、本発明の植物又はそれらの抽出物は、過度の皮脂分泌に起因する疾患や症状、例えば、脂漏性皮膚炎、ニキビ、酒さ(赤ら顔)、フケ、脱毛、更には臭いなどの予防又は改善に有効である。
また、皮膚におけるStARの発現量は、皮膚組織中のテストステロン濃度と正相関する(前記非特許文献3)。テストステロンは毛の伸長と密接に関与することが知られており(Dermatol. Ther. 2008; 21: 314-328. )、頭髪や体毛、ひげといった毛の成長を制御する(Mol Cell Endocrinol (2002) 198, 89-95)。また、本発明者らは、StARの発現量が異なる頭頂部と側頭部の頭皮における毛の密度が、StARの発現が高い部位(頭頂部)では低いことを明らかにしている(参考例2)。
したがって、StARの発現を抑制することによってテストステロンの生合成を抑制でき、当該毛の成長を制御できると考えられる。すなわち、StARの発現抑制作用を有する本発明の植物又はそれらの抽出物は、テストステロン合成抑制剤ともなり得、頭髪(頭頂部)に対する育毛、男性型脱毛症の予防又は改善、体毛、ひげなどに対する抑毛等の効果を有すると考えられる。
このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明の植物又はそれらの抽出物を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
種々の形態の食品を調製するには、本発明の植物又はそれらの抽出物を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中の本発明の植物又はそれらの抽出物の含有量(抽出物の乾燥物換算)は、一般的に0.01〜100質量%とするのが好ましく、0.1〜100質量%とするのがより好ましく、更に好ましくは1〜100質量%とするのが好ましい。
<1>ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするStAR発現抑制剤。
<2>ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とする皮脂分泌抑制剤。
<3>ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするニキビ予防又は改善剤。
<4>ホウトウ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とする育毛剤。
<5>ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするテストステロン合成抑制剤。
<7>皮脂分泌抑制剤を製造するための、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物の使用。
<8>ニキビ予防又は改善剤を製造するための、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物の使用。
<9>育毛剤を製造するための、ホウトウ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物の使用。
<10>テストステロン合成抑制剤を製造するための、ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物の使用。
<11>StAR発現抑制に使用するための、ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物。
<12>皮脂分泌抑制に使用するための、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物。
<13>ニキビ予防又は改善に使用するための、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物。
<14>育毛に使用するための、ホウトウ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物。
<15>テストステロン合成抑制に使用するための、ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物。
<16>ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を投与又は摂取するStAR発現抑制方法。
<17>ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を投与又は摂取する皮脂分泌抑制方法。
<18>ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を投与又は摂取するニキビ予防又は改善方法。
<19>ホウトウ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を投与又は摂取する育毛方法。
<20>ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を投与又は摂取するテストステロン合成抑制方法。
<21>非治療的な方法である前記<16>〜<20>のいずれか1に記載の方法。
<22>前記<1>〜<21>において、植物の使用部位は、好適には、ホウトウは花、ラクンタイは葉、ハチセンカは枝葉である。
<23>前記<1>〜<21>において、植物抽出物を得るための抽出溶剤は、好適には、水、アルコール系(アルコール類及び/又は多価アルコール類)溶剤、又は水−アルコール系混合溶剤である。ここで、アルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールがより好ましく、エタノールがさらに好ましく、また、多価アルコール類としてはブチレングリコールがより好ましい。
<24>前記<1>〜<21>において、植物抽出物を得るための抽出溶剤は、好適にはアルコール−水混合液であり、さらに好適には、アルコールの濃度が5%(v/v)以下、20%(v/v)以上、30%(v/v)以上、40%(v/v)以上、そして60%(v/v)以下、70%(v/v)以下、80%(v/v)以下、95%(v/v)以下である。
<25>前記<1>〜<21>において、植物抽出物は、好適には、植物体1質量部に対して8質量部以上50質量部以下の抽出溶剤を用い、40℃以上90℃以下にて1分間以上3日間以下抽出されるものである。
1.細胞培養
ハムスターの耳介部由来の皮脂腺培養細胞 Ha−SE(クラボウ社)は、増殖状態を保つために皮脂腺細胞増殖用培地(Humedia−BG;添加剤としてヒトepidermal growth factor)を用いて増殖させ、その後、分化を誘導(皮脂合成を促進)するために皮脂腺細胞分化誘導培地(HuMedia−BD;添加剤としてインスリン)を用いて培養を行った。
Ha−SEを6−well plateに1.0×105 cells/wellの細胞密度で播種し、48時間後(90%コンフルエント)にStARの遺伝子発現をノックダウンするために、siRNAを製品添付のプロトコールに従い、Lipofectamine 2000(Invtrogen社)を用いて細胞に導入した(20nM siRNA, 5μl Lipofectamine 2000)。設計したsiRNAの配列は表1に示した。また陰性Controlには上記のsiRNAと等量のStealth RNAi Negative Control Duplexes(Invitrogen社)を細胞に導入した。導入24時間後に分化誘導培地であるHumedia−BDに培地を交換し、培養を継続した。
導入3日後に細胞を回収し、 RNeasy mini kit (QIAGEN社)を用いて、添付のマニュアルに従いRNA抽出を行った。1μgのRNAを鋳型にして、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社)を用いて、添付のマニュアルに従いcDNA合成を行った。TaqManR Universal PCR Master Mix、Taqmanプローブ(Applied Biosystems社)を用いて内在性Controlである18S ribosomal RNAの発現を定量した。一方でSYBRR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社)、及び表2に示したprimerを用いて、StARの発現量を定量した。StARの発現量を18S ribosomal RNAの発現量で補正し、相対発現量として評価した。
導入14日後に、オイルレッド染色の強度を指標とした脂質合成測定キット(クラボウ社)を用いて、添付のマニュアルに従い脂質の定量を行った。
5.結果
StARの発現抑制により皮脂の蓄積が有意に抑制されることが確認された(図1)。
1.ヒト頭皮標本
同一個人(男性10人)より採取した側頭部と頭頂部の皮膚は、適当な大きさに切り分け、10%のホルマリン溶液に浸漬し、24時間置いた後、パラフィンで包埋した。
ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックより、それぞれの検体において切片を作成した後に、HE染色を実施した。HE染色切片上に存在する毛包数を顕微鏡下で測定し、その数を組織の長さで除いたものを毛髪密度とした。
免疫組織化学にはヒストファインキット(ニチレイ社)を用いた。StARの抗原賦活化はクエン酸バッファー(2mmol/L クエン酸、9mmol/L クエン酸三ナトリウム二水和物、pH 6.0)中で20分間マイクロウェーブ処理を行った。一次抗体原液の希釈率はStAR: 1/500とした。発色はDAB溶液(1mM DAB、50mM Tris−HCL buffer (pH 7.6)、0.006% 過酸化水素)を用いて行い、カウンター染色にはヘマトキシリン溶液を用いた。陰性コントロールには一次抗体の代わりにウサギのIgGを用いた。StARの染色強度は、Breast Cancer Res. Treat. (2002) 74, 47-53に記載された改変版H−score法を用いて目視評価を行った)。
4.結果
StARの発現が高い部位は、毛髪密度が低いことが確認された(図2)。
(製造例1)ホウトウ抽出物の調製
ホウトウ(Paulownia fortunei(Seem.)Hemsl.)の花200gに、15倍量(3L)の50(v/v)%エタノール−水混合溶液を加え、85℃、3時間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、ホウトウの抽出乾固物を得た。
この抽出固形分を50(v/v)%エタノールに溶解し、ホウトウの1(w/v)%エタノール抽出物を調製した。
ラクンタイ(Crinum asiaticum L. var.sinicum Bak.)の葉200gに、15倍量(3L)の50(v/v)%エタノール−水混合溶液を加え、85℃、3時間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、ラクンタイの抽出乾固物を得た。
この抽出固形分を50(v/v)%エタノールに溶解し、ラクンタイの1(w/v)%エタノール抽出物を調製した。
ハチセンカと(Hydrangea macrophylla(Thunb.)Serige)の枝葉100gに、20倍量(2L)の50(v/v)%エタノール−水混合溶液を加え、85℃、3時間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、ハチセンカの抽出乾固物を得た。
この抽出固形分を50(v/v)%エタノールに溶解し、ハチセンカの1(w/v)%エタノール抽出物を調製した。
(1)StARのプロモーターアッセイ
StARのプロモーター領域(−980/+61)をホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込み、副腎皮質癌細胞株であるH295R細胞に導入して過剰発現させた。そこにStARの発現を亢進させる薬剤cAMPを添加した条件下で、被験物質を添加しStARのプロモーター活性が抑制された場合において、ルシフェラーゼの活性が減少する評価系を構築した。
pGL4.10及びpRL−CMVは、Promega社より購入した。
pGL4.10 (StAR)は、StARのプロモーター領域(−980/+61)を以下のプライマーを用いてヒトゲノムより増幅し、XhoIとHindIIIで切断したpGL4.10に、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)を用いてクローニングし、plasmidを構築した。
プライマー配列:
Foward :GCTCGCTAGCCTCGAGTCTCTACTGCCTGGTAAACACC(配列番号6)
Reverce:CCGGATTGCCAAGCTTTCATGTTGCGCATGTGTCTGTA(配列番号7)
H295R細胞を96−well plateに11.0×104 cells/wellの細胞密度で播種し、その12時間後に培養液(5% チャコール処理血清を含むDMEM/F12)を交換し、pGL4.10(StAR)、及びpRL−CMVをLipofectamine 2000(Invtrogen社)を用い、製品添付のプロトコールに従い細胞に導入した。導入24時間後に、cAMP溶媒(終濃度25μM)、及び製造例1〜3で調製した各植物抽出物(0.5%(v/v)、1.0%(v/v))のいずれかを添加し、さらに24時間培養を行った。ホタルルシフェラーゼ(StARのプロモーター活性の指標)、及びウミシイタケルシフェラーゼ(plasmidの導入効率の指標)の活性測定には、Dual−GloTM Luciferase Assay System(Promega社)を用い、添付のプロトコールに従い実施した。ホタルルシフェラーゼの発光強度をウミシイタケルシフェラーゼの発光強度で除したものを、Relative light unit(RLU)として算出した。
本発明の植物抽出物は、コントロールと比較して70%以下にStARの発現(StARのプロモーター活性)を抑制する作用が認められた(図3)。
本発明の植物抽出物の皮脂蓄積抑制効果を確認すべく、ハムスター皮脂腺細胞に対してインスリンを用いて分化誘導し、そこに製造例2及び3で調製した各植物抽出物を添加して皮脂の蓄積をナイルレッド染色の蛍光強度を指標に評価を行った。
ハムスター皮脂腺細胞はクラボウ社より購入した。
ハムスター初代培養皮脂腺細胞(クラボウ社)を24−well plateに1×105cells/wellとなるよう播種し、3日間Humedia−BG(クラボウ社)で培養した後、陰性対照であるDimethyl sulfoxide(コントロール)、皮脂蓄積を抑制することが知られているall trans retinoic acid(atRA)、アダパレン(adapalene)、及び製造例2、3で調製した植物抽出物のいずれかを、それぞれ1(v/v)%となるように添加したHumedia−BD(クラボウ社)中で更に3日間培養した。培養後、それぞれのwellをPBSで2回洗浄し、10μg/ml Nile Red染色液を滴下し30分37℃、CO2 5%の条件下で染色した。染色終了後にPBSで2回洗浄し、485nmの励起波長を当て、565nmの波長の蛍光強度を測定した。
本発明の植物抽出物は、ハムスター皮脂腺細胞における皮脂の蓄積を抑制した(表1)。
Claims (4)
- ホウトウ、ラクンタイ及びハチセンカから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするStAR発現抑制剤。
- ラクンタイ又はその抽出物を有効成分とする皮脂分泌抑制剤。
- ラクンタイ又はその抽出物を有効成分とするニキビ予防又は改善剤。
- ホウトウ及びラクンタイから選ばれる1種以上の植物又はそれらの抽出物を有効成分とするテストステロン合成抑制剤。
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