JP5987956B2 - 基板保持用枠体と基板の梱包体 - Google Patents

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Description

本発明は、剛性である矩形状(四角形状)の基板を、同じく矩形状の基板保持用枠体の内周に設けた基板支持部に1枚ずつ載せ、該基板を載せた状態の基板保持用枠体を多段に積み重ねして保管・搬送する用途の基板保持用枠体とそれを使用した基板の梱包体に関する。
積載された基板は相互間で接触しないようにし、高い密度で集積する必要があり、且つ搬送及び保管時における破損や塵埃の混入や汚染を防止する必要もある。
このような基板の例としては薄板ガラス基板があり、特には、プラズマデイスプレイ用、有機ELデイスプレイ用、液晶表示用のカラーフィルターやタッチパネル及びそれらの中間製品、その他の各種基板等を挙げることができる。
このような保管・搬送装置には、基板保持用枠体と共に、基板支持部の先端に差し込みして基板を直接載せる部分となる基板保持部材、多段に積み重ねした基板保持用枠体全体の下面を受けるインナーパレット、最下段に用いる防振パレットが必要であり、さらには、基板保持用枠体の上面や周囲を保護する上蓋やカバー等が必要になる。
本発明はこれらの搬送・保管装置中、特に、基板保持用枠体とそれを使用した基板の梱包体に関するものである。
液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル、それらのカラーィルター等の基板を損傷したり、汚したりすることなく搬送及び保管することが重要である。このような板状物を搬送等する際は、板状物の機能層を保護するため、板状物が接触しないように所定間隔で並列収納する必要がある。
しかし、これら基板であるカラーフィルターやその中間製品等は表示装置自体が大型化しており、小サイズ物であっても多面付けの状態で製造されるため、大サイズ化しており、1メートル角程度のサイズにもなると、0.7mm厚のガラス基板でも対向する2辺または4辺を支持した場合は、中間部が100mm程度以上重力方向に湾曲した状態になるのを避けられない。基板はさらに2メートル角以上の大サイズ化が求められており、保管スペースや取り扱い装置の問題からこのような基板を高密度で安全に保管し、取り扱いできるようにする必要がある。
薄板状基板を、枠体を使用して、衝撃による傷等を防止しながら搬送しようとするものに特許文献1がある。しかし、同文献のものは、基板を保持する上側の面は、溝および綾線を伴わない連続した同一平面及び曲面では無く、手掛部5と枠体側面1a又載置部3の上面と内周面3c又内周面3cと支持枠2の上面はいずれも直角に繋がっている。このように角で繋げている為、異物付着した場合に洗浄性が容易でない。又基板保持する面に異物が残る事により、基板保持用枠体に基板を積載し、搬送した時に基板へ異物が転写する可能性がある。特許文献2においては、特許文献1で前述したものと同様にフランジ部42f及び枠部42及びサポート部材を嵌合させる部分42では、いずれも直角に繋がっている為、異物が付着し易く又付着異物の除去が困難である。又異なる問題としてガラス搬送用枠体の上下面間に緩衝材を用いて振動や衝撃を防止しようとするが、緩衝材には、発泡樹脂やゴム等が用いられるが(段落[0023])、このような材料を使用した場合は、緩衝材自体が塵埃やごみの発生源になると考えられる。また、ガラス基板を保持する当接材6の使用も必須であり、同様な材料を使用するので、やはり塵埃等の発生源になると考えられる。
薄板状基板を、枠体を使用し、湾曲状態で多段に積み重ねて搬送するものに特許文献3がある。しかし、このものも、緩衝材7や当接材6の使用が必須であり、これには発泡樹脂やゴム等が使用されるので(段落[0020])塵埃等の発生は避けられない。
また、上下の枠体相互間の位置合わせを係合凸部9aと係合凹部9bで行うので、このような箇所に塵埃が溜まり易く、この部分を清浄化するにも問題があると考えられる。特許文献2においても、載置部3及び係合凸部9aの構造は、特許文献1と同様に同じ面にあるため、係合部の変形または破損の問題がある。
なお、金属ラミネート用フィルムに関して、特許文献4、5があるが、その組成はいずれも本願で使用のものと相違している。
特開2006−168748号公報 特開2004−359343号公報 特開2006−168749号公報 特開平11−35911号公報 特開平11−291431号公報
このような中、近年、特に、液晶表示用フラットパネルにおいては、より大型のカラーフィルター形成基板の製造が要求されており、カラーフィルター基板やその中間工程基板の輸送、保管装置に対して、さらに一層の、輸送効率向上による輸送コスト低減や保管場所の省スペース化、中間製品の安全な扱いが求められている。
ちなみに、第6世代といわれる基板は、1500mm×1850mmのサイズ、第8世代は、2200mm×2500mmのサイズ、第9世代は、2400mm×2800mmのサイズとなっている。
大サイズのガラスを平面状態で収納し、輸送時の振動が加わった場合、数百mm程度、上下に振動でうねり、跳ね上がり、収納間隔を極めて大きくとらないと基板同士で接触破損が生じる。あるいは、ガラス自体が振動で上下に数百mm跳ね上がり、変形しているうちに自壊する。
このようなガラス基板を嵩高にならないように、高い密度で集積して搬送・保管することは、保管スペースの節減のみだけではなく、取り扱い装置や搬送装置の大型化を防ぎ、ひいては、資源の節減や製造コストの低減に寄与することになる。
従来、使用されている基板保持枠では、積み重ねや取り出し操作時に、枠体相互間の位置合わせ部に変形が生じ易く、積み重ね時や搬送時の衝撃でガラス基板の破損が生じ易い問題があった。また、このような衝撃を吸収する為に基板保持枠体の間に緩衝材が使用されるものもあるが、長期にわたる使用により変形したり、緩衝材からの発塵の問題があり、基板の汚染を増大させる原因となり、厳重な対策が要求されている。
特に積層された金属枠体間の接触による微小金属粉の発生は、ガラス基板の破損に繋がる重要な課題である。
第6世代(G6)のガラス基板は、一般的に0.7mmt、1500mm×1850mmであり、1枚の重量が5kg、両端を支持した場合に撓み量が350mm程度となる。
第6世代(G6)のガラス基板の板厚は、これ以外にも0.4mmtや0.5mmtなど薄板及び1.1mmや1.6mmtの厚板もある。外形サイズにおいても1500mm×1800mmがある。
輸送効率を高める為、この様な大型ガラス基板を大量に保管、輸送する省スペース化した基板保管装置、搬送装置が要求される。一方、輸送、ハンドリングでの大型ガラス基板の破損が1枚でも発生した場合、他のガラス基板へのガラス破片の付着、ガラス破片の付着したガラス基板が装置へ持ち込まれる事による他のガラスの破損、装置の破損や工程内で使用される高価なマスクや治具などへ傷を付けたり2次的な損失が発生する。
又1枚のガラス基板破損による2次的がダメージを防止する為、ガラス基板の破損が生じた場合は、生産を中断して装置、治具など徹底した清浄が必要であり、1枚のガラス破損による損失は、甚大なものとなる。
たとえガラス基板が破損しなくてもガラス基板周辺部などにキズが生じた場合においても後の工程での接触や加熱処理などのガラス基板へのストレスにより破損が発生する場合もあり、大型ガラス基板の取扱いに対しては、1枚でも破損が発生しないように厳重な対策が必要である。
本発明は、このような課題を解決すべく、鋭意研究して完成されたものである。
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、矩形状の基板の1枚を、平面視矩形状の金属枠部を有する基板保持用枠体内に収め、当該基板を収めた状態の該枠体を位置合わせして多段に積み重ねた状態で、搬送または保管の用途に供する基板保持用枠体であって、(1)正方形または長方形の断面形状を有する金属枠部と、(2)該金属枠部の内周面の上面側に設けられ、内周下方側に傾斜した形態を有する第一嵌合部と、さらにその先に延出して形成された基板支持部と、(3)該金属枠部の内周面の下面側に設けられ、内周下方側に傾斜した形態を有する第二嵌合部と、(4)該金属枠部の左右の辺から外周側に延出して形成された手掛け部と、を有する形態において、前記金属枠部の上面と前記第一嵌合部の上面と前記基板支持部の上面と前記手掛け部の上面とが、各部上面間において溝、段部および稜線を伴わない同一の連続した平面及び曲面で形成されており、該金属枠部の上面、該第一嵌合部の該第二嵌合部の下面と接触する部分の上面、該手掛け部の上面、のいずれかの面の一部又は全面にフィラーを含有し剛性を有する均一な厚みの樹脂層が形成され、上下の金属枠体面、嵌合部の面や手掛け部のどの部分の面も上下の金属枠体同士が接触しないことにより、金属の異物が絶対に発生しないことを特徴とする基板保持用枠体、にある。
前記(稜線を伴わない同一の連続した平面及び曲面)とは、角をもたないなだらかな面のことである。該稜線とは、面と面とが接する時の角を意味する。
なお以下、明細書中において基板保持用枠体を、単に「枠体」と略称する場合もある。
また、「金属枠体」という場合は、金属枠部以外に金属材料からなる嵌合部、基板支持部、手掛け部を含むものとする。
上記課題を解決する本発明の要旨の第2は、上記の基板保持用枠体に、基板を各枠体間が平滑な金属枠部面の密接な嵌合部の嵌め合わせにより密封状態になるように多段に積み重ねし、最上段の基板保持用枠体の嵌合部に上蓋の嵌合部を嵌め合わせて面間を密封し、かつ上蓋が基板に接触しないようにし、最下段の基板保持用枠体の嵌合部にインナーパレットの嵌合部を嵌め合わせて面間を密封し、かつインナーパレットの上面が基板に接触しないようにされて防振パレットに搭載され搬送されることを特徴とする基板の梱包体、にある。
本発明の基板保持用枠体は、(1)正方形または長方形の断面形状を有する金属枠部と、(2)該金属枠部の内周面の上面側に設けられ、内周下方側に傾斜した形態を有する第一嵌合部と、さらにその先に延出して形成された基板支持部と、(3)該金属枠部の内周面の下面側に設けられ、内周下方側に傾斜した形態を有する第二嵌合部と、(4)該金属枠部の左右の辺から外周側に延出して形成された手掛け部と、を有する構造であるので、嵌合部を金属枠部自体にではなく、基板保持用枠体自体や基板の荷重を、直接には受けない金属枠部の内周側に形成したので、金属枠部の変形を防止し、かつ密封状態を確保して、塵埃等の混入防止を図ることができる。
また、金属枠部の上面と第一嵌合部の上面と基板支持部の上面と手掛け部の上面とが、各部上面間において溝、段部および稜線を伴わない同一の連続した平面及び曲面で形成されている構造にされているから、付着異物が溜まり難い構造であり、輸送や基板の脱着や枠体の取り扱いによる汚れ、異物付着に対して、枠体表面の拭取り洗浄を容易にできる。
さらに、上記のように上面が連続した面で構成されていることにより、上面に薄い均一な樹脂層が容易に形成することが可能となる。金属枠体表面にフィラーを含有した均一な厚みの樹脂層を形成することにより金属枠体同士の接触による金属異物の発生が防止できる。
前記樹脂層は、スペーサ機能を有し、剛性を有する第一樹脂機能層が上下に隣接する金属枠体同士が接触しないようにし、表面が凹凸形状の第二樹脂機能層が枠体同士の貼りつきを防止する機能を有する。この2つの異なる機能を有することにより、枠体同士の接触による金属異物の発生を防止できるのと同時に多段に高重量物を長期間積み重ねても枠体同士の貼りつきによる不具合が防止できる。
前記樹脂層の表面が凹凸形状の第二樹脂機能層が金属枠体同士の横ずれ防止機能を有する。この機能を有することにより多段に積み重ねた状態で輸送された時の振動や衝撃に対しても金属枠体同士の横ずれが防止でき安定した搬送や基板の受け渡しが可能となる。
前記樹脂層の表面が凹凸形状の第二樹脂機能層が金属枠体の静電気の発生を防止する機能を有する。この機能を有することにより多段に積み重ねた金属枠体を取り外す時の剥離時の静電気の発生を低減でき、帯電による微小異物付着や基板へのダメージを防止できる。
前記樹脂層は、第一樹脂機能層と第二樹脂機能層を積層して一体とした樹脂テープであることにより、稜線を伴わない同一で連続した平面または曲面で形成された金属枠体に均一な厚みで容易に形成できる。
前記樹脂層の厚みは、上下に隣接する金属枠体が接触しない厚みが必要条件であり、厚みの分だけ多段に積み重ねた時の梱包体の高さが高くなる。70μm以上であって400μm以下であるので安全に積層し、高さも問題無く使用できる。
前記金属枠体がアルミまたはアルミ合金からできていることにより、多段で高重量の枠体の強度を保持し、軽量化が図れる。アルミの表面は容易に酸化膜が形成でき、この上に樹脂テープを熱圧融着で強固に容易に形成できる。これにより粘着性を有する接着剤を使うことないため、不純物による汚染のない基板の保持が可能となる。
アルミへのエチレン−プロピレン共重合体が熱融着性を有することは、特許文献4(段落[0006])にも記載されているとおりである。液晶用部品や半導体製品は、不純物汚染特にイオン汚染は、製品の性能に極めて悪い影響を及ぼす。本発明は、汚染となる粘着性のある接着材を使用しないで、アルミと樹脂で熱融着するものである。
前記樹脂テープは、前記第一樹脂機能層が前記金属枠体に熱圧融着性を有する樹脂で構成され、該樹脂テープを金属枠体に融着し、剛性を有する樹脂層が形成される。前期第二樹脂機能層は金属枠体に熱圧融着性を有さない樹脂で形成されることにより、該樹脂層上に高重量の金属枠体が積載されるが、保管時間が長時間になる場合において該樹脂層と上に積載される金属枠体が圧融着を生じない。このように第一樹脂機能層と第二樹脂機能層で熱圧融着性が異なることにより、スペーサ機能層として樹脂層が容易に形成可能であり、さらに樹脂層表面が積載される金属枠体と融着して、金属枠体に付着して剥がれたりせず、長期使用に耐える性能が得られる。
前記第一樹脂機能層の樹脂は、エチレン−プロピレン共重合体樹脂からなり、層厚は60μm以上であって400μm以下で形成する。該樹脂層中の前記フィラーは、粒径が50nm以上で400nm以下の酸化チタンを、第一樹脂機能層に3質量%から5質量%分散されている。エチレン−プロピレン共重合体樹脂は、金属枠体に融着しやすい樹脂であり、微小な酸化チタン粒子を分散しすることにより剛性を有する。測定は、EDX(エネルギー分散蛍光X線分光)分析による質量%である。
樹脂層は、スペーサとしての機能を有し、樹脂中に水や溶剤に難溶な酸化チタンの微粒子を分散させた該第一樹脂機能層を形成する。先行技術では、金属の枠体間に振動の衝撃を和らげる為、発泡材やゴム等の緩衝材が使われているが本発明は、大型基板を高密度に積層した高重量物の積載の安定性及び発塵を防止する為、緩衝性のない逆に剛性を持たせた性質が必要である。第一機能層は、この緩衝性の少ない剛性を有する為、金属枠体を安定して接触を防止でき、積層した状態で長時間の保管された後でも変形が少なく、搬送の安定性が向上できる。
前記第二樹脂機能層の樹脂は、アクリル系樹脂であり、層厚は2μm以上であって4μm以下で形成する。該樹脂層中の前記フィラーは、粒径が0.1μm以上で3μm以下の硫酸バリウムの粒塊と0.1μm以下の酸化シリコン粒子とが第二樹脂機能層に70質量%以上90質量%以下で含まれ、第二樹脂機能層は、表面の凹凸形状を有することによる積載した金属枠体との貼りつき防止効果や搬送時の振動による横ずれ防止効果や積層された金属枠体をロボットにより一枚ずつ取り出す際の静電気の発生を防止する効果を有する。
該凹凸形状は、金属枠体と融着し難いアクリル系樹脂で、化学的に不活性で、水に対して難溶性の硫酸バリウムの粒塊の表面を被覆し、微小な酸化シリコンで大きな硫酸バリウムの粒塊の隙間を充填し、樹脂の容量を極力少なく形成することにより表面の凹凸を形成すると共に金属枠体との樹脂の融着を更に防止する効果を有する。
これらの各作用により大型基板を安全に積層および取り出し等のロボットによるハンドリングを行い金属枠体における金属異物の発生を防止することが可能となった。
G6サイズなど大型で重いガラスを搭載した状態で基板保持用枠体をロボット等でハンドリングする必要があり、基板保持用枠体の変形や基板保持枠体間のスペーサの変形があると多段に積載した状態では、ハンドリング不良を起こす。スペーサ材がゴムや発泡性の緩衝材では、変形によるハンドリング不良が発生したが、本発明は、大型基板を高密度に積載し最上段の基板保持用枠体の嵌合部に上蓋の嵌合部を嵌め合わせて封じかつ上蓋が基板に接触しないようにし、最下段の基板保持用枠体の嵌合部にインナーパレットの嵌合部を嵌め合わせて封じ、上蓋とインナーパレット間を結束ベルトで結束し、防振パレットに載せ、トラック輸送をおこなった結果、振動や衝撃によるスペーサ機能の樹脂層からの発塵も無く、積載状態での長期保管での樹脂層のクリープ変形も無くロボット等のハンドリング不良も発生せず、金属異物の発生もないことが確認できた。
又枠体表面も拭取り洗浄も表面形状が連続面の為、容易に作業ができ良好な品質が維持できた。
基板保持用枠体を上面から見た平面図である。 基板保持用枠体を3段に積み重ねした左辺の金属枠部と嵌合部、および基板支持部の断面図である。平面図である図1のY−Yの断面であり、斜視図である図4のZ−Zの断面である。 図2の基板支持部に対して、基板保持部材を装着し、基板を載置してから、基板保持用枠体を3段に積み重ねした状態の断面図である。 基板保持用枠体の外観を示す斜視図である。 基板保持用枠体に基板を載せる状態の外観斜視図である。 基板保持用枠体に基板を載せ、枠体を多段に積み重ねた状態で、上蓋を被せ、下側にインナーパレットと防振パレットをあてがう状態を示す斜視図である。 基板保持用枠体とインナーパレットとを結束材で梱包した状態を示す斜視図である。 金属枠体上の樹脂層の断面図であり、「第一機能層および第二機能層」を示している。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明するが、理解を容易にするため、本発明の基板保持用枠体について詳細に説明する前に、基板保持用枠体を用いた基板の搬送・保管装置の全体、すなわち、基板の梱包体から説明することとする。
図4は、基板保持用枠体の外観を示す斜視図である。基板保持用枠体10は、平面視は矩形状の枠体であるが、斜視図では中央部が重力方向に湾曲した枠体となっている。四辺に、フレーム状の金属枠部11(11a、11b、11c、11dからなる)を有している。この金属枠部11が、多段に積み重ねる基板保持用枠体10自体と基板の全重量を支える構造部材となっている。
金属枠部11の左右の辺11a、11bは平坦な直線状の金属枠であるが、前後の辺11c、11dは下方に湾曲した形状にされている。ここで、枠体の前後と左右は、本来、対向する2辺のいずれを前後または左右としても良いが、本明細書では、区別し易いように矩形状の基板の長辺側が載る2辺を左右辺としている。
金属枠部11の上面内周側には第1嵌合部12aとさらにその先に延出した基板支持部13が溝及び稜線を伴わない連続した同一平面及び曲面で延出して形成され、金属枠部11の上面外周側には手掛部15が溝、段部および稜線を伴わない連続した同一平面及び曲面で延出して形成される。
基板支持部13には、一定間隔でその金属面を覆うように、樹脂製の基板保持部材14が装着されている。基板保持部材14は、基板支持部13に一定間隔で切り欠きまたは抜き穴を設けて、その切り欠き部等に取り付ける場合もあるので、その場合は、基板保持部材14を含めた基板支持部13が一定幅で内周側に延び出ることになる。ただし、基板保持部材14は、一定間隔を置かず帯状に連続して装着してもよい。
基板支持部13で囲まれた中央の領域Kは、何もない開口(空間域)である。
図5は、基板保持用枠体に基板を載せる状態の外観斜視図である。
基板保持用枠体10に基板Aを載せる場合は、静止させた状態の基板保持用枠体10に対して、上方から基板Aを下降させて載置しても良いが、異物の付着を防ぐためには、製造装置から出された基板Aを一旦架台上に停止させ、その状態で基板保持用枠体10を架台の下方から上昇させて基板Aを掬い上げるように載せる方法が好ましい。
基板Aは基板保持部材14面に接して置かれる。その際、機能層面は上面にされ、上段に載せた基板保持用枠体10の基板保持部材14面にも接しないようにされる。
図6は、基板保持用枠体10に基板を載せ、枠体を多段に積み重ねた状態で、表面板21を被せ、下側にインナーパレット30と防振パレット40をあてがう状態を示す斜視図である。
基板保持用枠体10を既に基板Aを載せた他の基板保持用枠体10に順次重ねることにより、枠体の多段積み重ね体100にすることができる。上下の枠体の積み重ねは、下方の基板保持用枠体10の基板支持部13の金属枠部11に近い嵌合部上面と、上方の基板保持用枠体10の嵌合部の下面とが係合することにより、嵌め合わせされ、位置合わせが確実に行われる。
インナーパレット30は、最下段に載せられている基板Aに接触しないように基板の湾曲面に合わせた形状の金属または樹脂製の表面板を有している。また、多段に積み重ねた枠体と基板Aの全重量をパレットの四辺で受けるようにされている。枠体同様に、塵埃等を発生させない考慮がされている。密封構造とするため、最下段の基板保持用枠体10の下面嵌合部と嵌合するパレット自体の嵌合部を有するものとする。
防振パレット40は、基板に及ぼす搬送中の振動等を抑制するためのものである。一般的には、防振ゴムを使用して輸送中・荷役中の振動・衝撃を緩衝する働きをする。塵埃や異物を発生させないものであれば、市販品を用いてもよい。
上蓋20にも、基板Aのたわみ形状に合わせ、下方に湾曲した表面板21を有するものを使用する。これには、上方からの衝撃等に耐えるように強固な金属または樹脂材料を使用するのが好ましい。また、密封構造とするため、最上段の基板保持用枠体10の上面と嵌合するように、上蓋20自体にも嵌合部を有する構造のものとする。結束機構22と結束ベルト23が付いたものがさらに好ましい。
図7は、基板保持用枠体とインナーパレットとを結束材で梱包した状態を示す斜視図である。基板保持用枠体10の積み重ね体100を上蓋20とインナーパレット30の間に挟み、結束機構22と結束ベルト23を用いて結束している。図示しない外カバーを被せて梱包体が完成する。この状態で保管することができ、貨物や航空便として輸送することもできる。
本願は、上記で説明した基板の搬送・保管装置の全体説明中における基板保持用枠体とそれを用いた基板の密封梱包体に関するものなので、以下、基板保持用枠体10とその使用方法等に関して詳述する。
図1は、基板保持用枠体を上面から見た平面図である。
基板保持用枠体10は、図1のように、平面状態で観察した場合の外形は、基板Aの形状をほぼ比例して拡大した形状の矩形状のものである。ただし、金属枠部11は、左右の枠部11a、11bが直線状の平行枠であるのに対して、前後の枠部11c、11dは、湾曲した形状にされている。
左右の金属枠部11a、11bの外側には、手掛部15が形成されている。手掛部15は、ロボットアーム等で把持する部分であり、辺の全長に沿って設ける必要はなく部分的な長さのものであっても良い。
基板保持用枠体10は、枠部材に構造強度を有する金属材料等を使用する。基板保持用枠体10自体と基板Aの合計荷重に耐える必要があるからである。例えば、前記第6世代(0.7mmt 1500mm×1850mm)の場合、1枚のガラス基板が5kg、基板保持用枠体が5.5kgになるので、150段にした場合、1.5トン以上となる。第6世代と言われるガラスは、段落[0009]で前述したようにサイズや板厚が、若干異なるものがあり、当然の事であるが、ガラス基板の重量及び基板保持枠体10の重量も若干異なり、総重量も変わってくる。
金属枠部11の上面からは内周側に向けて、一定幅の基板支持部13が延出して形成されている。基板支持部13の金属枠部11に沿う部分は、上側の第1嵌合部12aであり、下側の第2嵌合部12bと嵌め込みできる傾斜面にされている。なお、第1嵌合部とは、その先に基板支持部13が延出しているものを言い、第2嵌合部とは、嵌合用の突起片のみからなるものをいうものとする。金属枠部11の下面には、この傾斜面に沿って嵌合部が形成されているが、図1では図示されていない(図2または図3参照)。
嵌合部は、四辺の全てまたは少なくとも三辺に設けるのが好ましい。枠体10の前後左右を位置合わせするためである。
基板支持部13には、一定間隔で基板支持部13の金属面を覆うように、樹脂製の基板保持部材14が装着される。ガラスを代表する基板は、金属面に対してよりも弾性体である樹脂材料に接していれば、衝撃を受けた際に損傷し難いからである。
基板保持部材14は、その寸法によって異なるが、一の辺に5〜20個程度、装着される。図1の場合は、左右辺に各6個、前後辺に各6個が装着されている。従って、1枚の基板保持部材14は、幅5〜10cm、長さ10〜25cm程度のものとなる。ただし、基板保持部材14は間隔を置いて装着しなくても良いのは、前記のとおりである。
基板支持部13と基板保持部材14により囲まれる領域Kは開口域である。この領域の全体と基板保持部材面14にかけて、基板Aが載せられることになる。
図2は、基板保持用枠体を3段に積み重ねした左辺の金属枠部と嵌合部、および基板支持部の断面図である。右辺側は対称形の断面形状になるが、図示していない。3段としたのは例示であり、実際はさらに多段にする。
金属枠部11には、軽量化の目的からアルミやアルミ合金等の材料を使用する。図のように、断面が矩形状または正方形状であって、中空構造を好適に採用できる。
ロボットアーム等の把手部となる手掛部15は、金属枠部11の上面と平行な平滑面として、外方に定幅で延びている。金属枠部11の上面と第1嵌合部12aの上面、基板支持部13の上面および手掛部15の上面の各上面間において、溝、段部および稜線を伴わない連続した同一平面及び曲面で形成するのは、塵埃の発生防止と清浄化の容易なためである。
金属枠部の上面の一部又は全面及び第一嵌合部の上面の第二嵌合部の下面と接触する部分の一部又は全面及び手掛け部の上面の一部又は全面の少なくてもいずれかの面に樹脂層17が形成され、上下の金属枠体面、嵌合部の面や手掛部のどの部分の面も上下間で樹脂のスペーサが形成されているのは、金属どうしが接触し金属の異物を発生させないためである。
樹脂のスペーサとして熱融着性のあるテープをアルミ枠体に継ぎ目なく平滑に貼り合せるには、金属枠部11の上面と第1嵌合部12aの上面、基板支持部13の上面および手掛部15の上面の各上面間において溝、段部および稜線を伴わない連続した同一平面及び曲面で形成することが必要である。第一嵌合部12aの面は、嵌合のために水平面に対して斜めの角度を有するが、稜線を伴わない連続した曲面で形成される。
図2の場合、基板支持部13は金属枠11の上面から延出して設けられているが、下面側から延出して基板支持部13としてもよい。基板支持部13の金属枠に沿う部分は、第1嵌合部12aとなっている。第2嵌合部12bは金属枠11の下面から短く延出する突起片として設けられている。基板支持部13を下側にした場合は、この突起片は上面側から突出することになる。
どちらも嵌合に関する効果は変わらないが、基板支持部13が上面である場合が、基板への塵埃の落下を少なくできると考えられる。
基板支持部13は、一定幅H1で設ける。H1は、6〜15cm程度となる。左右の金属枠部11a、11bに設ける基板支持部13a、13bは、角度αで下方に屈曲されている。第6世代のサイズで板厚0.7mmtのガラスの場合は、最も深く撓んだ中央部分で、両端からの撓み量は、100mmから120mm程度とするのが好ましい。その場合、角度αは、5度から25度程度の範囲となる。前後の金属枠部11c、11dにも基板支持部13c、13dを設けるが、金属枠部11c、11d自体が湾曲しているので、長さ方向はその撓み形状に従うが、内周側下方には僅かに屈曲させる程度で良い。
図2の場合、第2嵌合部12bは、金属枠部11の下辺から傾斜屈曲して形成されている。このように、嵌合部12bは、金属枠部11自体にではなく、枠自体や基板の荷重を直接受けない枠部11の内周部分に形成されている。
金属枠部11に沿う部分には第1嵌合部12aが形成される。この部分は第2嵌合部12bの形状に合致するように、同様に下方に傾斜した形状にされる。この第2嵌合部12bの下面と第1嵌合部12aの上面の嵌め合わせにより、上下の基板保持用枠体10相互間の位置合わせがされる。このように、嵌合部12a及び12bは、枠体を多段積みした場合に金属枠部11自体の荷重を受けない内周部分に形成するのが好ましい。
嵌合部の傾斜面の金属枠の水平面に対する角度βは、5度から45度程度、より好ましくは、10度から20度となる。また、その斜辺の幅hは5mm〜20mm程度となる。
適度な傾斜をつけることで、多少の位置ずれが生じてもその荷重で嵌合し、位置調整がされる(セルフアライメント)機能が生じることになる。
金属枠部11の上下面を平滑な面仕上げにし、嵌合部12a及び12bと基板支持部の金属枠11に沿う部分の上下面を正しく位置合わせして積み重ねることにより、枠間の間隔dを一定にするとともに、内部を略密封状態にすることができる。
図3は、図2の基板支持部に対して、基板保持部材を装着し、基板を載置してから、基板保持用枠体を3段に積み重ねした状態の左端断面図である。
基板保持部材14が基板支持部13面に装着されている。基板を保持した枠体を多段に積み重ねる為に枠体の間隔dは、なるべく小さくするが、基板の上面と基板保持部材14の先端部(開口Kにのぞむ側)が接触することにより、基板の上面に形成されている機能層に傷や異物を発生させることがある。これを防止するため、基板保持部材14の少なくとも先端側(開口Kにのぞむ側)は薄肉に形成するか基板支持部13から突出しない形状にすることが好ましい。厚肉であれば、上下の基板保持用枠体間の間隙を狭くしてしまうからである。ただし、基板保持部材14の後端14aは基板支持部間の間隙幅近くまで肉厚にして、基板Aの前後左右の揺動によるずれを抑える機能を果たさせるのが好ましい。
基板保持部材14の基板支持部13への装着は、各種の方法を採用できる。基板保持部材14の先端(開口Kにのぞむ側)近くを蝶番状に開閉できる構造にし、後端(金属枠側)において、表裏の片を、基板支持部に設けた数個の小孔を通じて、嵌め合わせして装着しても良い。あるいは、前記のように、基板支持部13に基板保持部材14よりも小さく比例した形状の切り欠きや抜き孔を設け、薄い基板保持部材14の後端と左右側面に形成したスライド溝により、該切り欠きや抜き孔内に差し込むようにすることもできる。いずれにしても、簡単には脱落しなく、塵埃等を発生させない構造にする必要がある。
図3の場合、基板保持部材14は、基板支持部13に嵌め込み固定されているが、図面に詳細構造は示されていない。また、基板保持部材14の肉厚にされた最後端部14fにより、基板Aが揺動するのを停止させるストッパーの機能を持たせている。このような、基板保持部材14の構造により、基板Aの揺動を一定範囲に抑えることができる。図3中、上段の基板A1は、最後端部14fに接触しており、下段の基板A2は右側によっていることを示している。
基板Aの揺動範囲を±5mmとした場合、撓み曲線に沿う左右のストッパー14f間の距離は、基板Aの幅+10mmとすることができる。
前記の図2の場合、1500mm×1850mmサイズのガラス基板(厚み、0.7mm)で、段ピッチ間隔dを5mm〜20mmとすることができる。基板のサイズが一層大型化又は、板厚が薄くなれば、撓み量は大きくなるが、撓みの程度が一定(同一品種内でばらつきがない。)であれば、均一な撓み量となるので同一の段ピッチ間隔を採用できる。ただし、大サイズ化や薄板化と共に、衝撃や振動等を受けた際の揺動や上下のはね等も大きくなるので、間隔はその場合の考慮が必要になる。
金属枠部11の四隅は、図1に図示のように、樹脂製等のコーナーピース16を端部に嵌め込みして連結できるが、可能であれば溶接等で接合してもよい。コーナーピースの場合、金属枠部11との連結部が平滑に接続されるように注意する。
コーナーピース16内に差し込みされる金属枠部11は切削するかプレスして薄肉化し、コーナーピース16の表面と金属枠部11の表面との間に段差が生じないようにする。
コーナーピース16自体にも表裏の嵌合溝を形成し、四隅のコーナーピース16で上下に位置する枠体を確実に位置合わせし結合する。金属枠部11とコーナーピース16は、2辺の角度が直角に維持されるように、ボルトとナットで強く固定される。
各枠体の四隅にあるコーナーピースで上下の枠体を嵌合することにより、多段に積層した状態でも振動や衝撃に対してズレを起こさず、安全に基板の輸送ができる。
なお、特許請求の範囲では、格納される基板を矩形状の基板としているが、典型的には、表示装置用に使用されるカラーフィルター用基板やタッチパネル用基板などの薄板ガラス基板、薄板プラスチック基板、またはそれらに表示装置用の機能層を設けた各種基板や中間製品が対象となるのは、明らかなことである。
(材質と製法に関する実施形態)
金属枠11に使用する材料には、軽量で腐食を生じない金属材料を使用できる。具体的には、純アルミニウム、ジュラルミン(アルミ、銅(3.5〜5.5%)、マグネシウム)系、アルミニウム−マンガン系等のアルミニウム合金等を使用できる。これらの材料を中空押し出し加工して枠形を製造することができる。
前記金属枠部の上面の一部又は全面及び第一嵌合部の上面の第二嵌合部の下面と接触する部分の一部又は全面及び手掛け部の上面の一部又は全面の少なくともいずれかの面にスペーサ機能を備える樹脂層17を形成する。
ここでいうスペーサ機能とは、単に金属と金属との間を直接接触させない機能を言い、適度の被膜強度と樹脂層の厚みを有すれば、この機能の目的を果たす。そのためには、該樹脂層17は、金属枠部との接触や擦れによる金属異物を発生させないこと、樹脂層自体が接触や擦れにより異物を発生させないこと、且つ高荷重や衝撃による変形が生じ難い材質であるものが望ましい。公知文献では、このような薄板大型基板を枠体で保持し積み重ねる場合に枠体の間にゴム材や発泡材を振動や衝撃を吸収するために緩衝材として挿入されているが、本発明では、振動や衝撃を吸収するためではなく、上下に位置する金属枠体の金属同士が接触しないで長期保管でも変形しない膜強度と耐摩耗性を有する樹脂層17を金属枠体上に形成する。
該樹脂層17は、長時間、高荷重がかかっても変形が生じない剛性を有するスペーサとして第一樹脂機能層と、長時間、高荷重で積層された金属枠体間の貼りつき防止機能と輸送時の振動による衝撃に対して横ずれを抑制する機能及び積層した枠体を取り外す際の剥離による静電気の発生を防止する機能を有する第二樹脂機能層で構成される。
図8は、金属枠体上の樹脂層の断面図である。
図8のように、樹脂層17は、第一樹脂機能層171と第二樹脂機能層172を有する2層構造のフィルムを前記金属枠部の表面に第一樹脂機能層を前記金属枠体表面Mに熱融着させて形成する。
第一樹脂機能層171は、酸化チタン微粒子をエチレンープロピレン共重合体樹脂に分散した層で、第二樹脂機能層172は、アクリル系樹脂に硫酸バリウム粒子と酸化シリコン微粒子を分散させた層である。
第一樹脂機能層171は、アルミの金属枠体表面Mに熱融着で形成するため、アルミへ融着しやすいエチレンープロピレン共重合体樹脂を用い、該樹脂中に粒径が50nmから400nmの酸化チタン粒子をチタンの質量%で、3%から6%分散させ、膜厚は60μm〜400μmで形成する。
第一樹脂機能層171は、上下に隣接する金属枠体間のスペーサ機能を有し酸化チタンの微小粒子を樹脂に分散させることにより、剛性を持たせ、長時間、高荷重がかかってもクリープ変形が生じ難くなる。膜厚は、金属枠体同士が接触しない膜厚が必要条件であり、厚くすると多層に積層した梱包体が嵩高くなるため、金属枠体同士が接触しない限度で、できる限り薄膜厚にするのが最適である。
第二樹脂機能層172は0.1μm以上で3μm以下の硫酸バリウムの粒塊をアクリル系樹脂中に分散させ、2μm〜4μmの厚みで第一樹脂機能層171上に形成する。第二樹脂機能層172は、積層された金属枠体間の貼りつき防止効果と振動による衝撃に対して横ずれを抑制する効果及び静電気の発生を防ぐ効果をもつ。硫酸バリウムの粒子Bは粒塊状態で、樹脂で薄く被覆された状態で、同じアクリル樹脂に分散した0.1μm以下の酸化シリコンの微粒子Sで硫酸バリウムの粒塊の隙間を充填し、樹脂の容積を極力少なくする。層の表面は、アクリル樹脂で被覆された硫酸バリウムの粒塊で凹凸に形成される。硫酸バリウムは、水に対する溶解性も極めて低く、金属枠体の繰り返し使用および水洗浄にも安定性がある。
第二樹脂機能層172は、金属枠体が積載され長時間保管される可能性もあり、金属枠体と圧融着を生じて金属枠体の裏面に融着して部分的に剥離が生じることを防止する必要がある。これを防止するため、圧融着し難いアクリル系樹脂を用いフィラーの充填率を高くし樹脂の容積を極力減らすようにする。
アクリル樹脂に被覆された硫酸バリウムの粒塊により形成された表面の1μm程度の凹凸は、積載されるアルミ製の金属枠体の滑りを抑制することにより、横ずれを抑制する効果を有する。
更にこのような表面の凹凸は、積載される金属枠体との隙間に微小な空隙が形成され、完全密着状態にならないため、積載された金属枠体の手掛部をロボットハンドで掴み急激に金属枠体を分離して取り出すときに剥離による静電気が生じ難い効果がある。
樹脂テープは、第一樹脂機能層をアルミの金属枠体の上面に押し付けた状態で100℃から170℃で熱融着しスペーサ層が形成される。このとき凹凸形状を有し、圧融着し難い第二樹脂機能層が上面のため、上部から押さえ板との貼り付きも防止でき、積載された状態においても上に載置されたアルミ枠体に融着し樹脂テープの剥がれも防止できる。
基板保持部材14には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂材料、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、ナイロン66、ナイロン610といったポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の材料を使用できる。これらの材料を、金型を用いインジェクション成形して製造できる。
コーナーピース16にも基板保持部材14と同様な材料を同様に加工して製造することができる。
アルミニウム合金材料を使用して、1500mm×1850mmサイズの基板保持用枠体10を製造した。まず、図2図示の断面形状の金属枠を中空押し出し加工して製造した。
左右の金属枠部11a、11bはそのまま使用したが、前後の金属枠部11c、11dは押し出し後、曲げ加工を行った。曲げ量D(図4、図5参照)は、100mmから150mmとなるようにした。金属枠部11の厚み(段ピッチ)dを10mmとし、金属枠幅W1を30mmとし第2嵌合部12bの幅W2を20mmとした。各部の肉厚は、3mmから5mmとなった。
平滑な平面または曲面の各前後、左右の金属枠体の金属枠部上面、第一嵌合部上面、基板支持部上面、手掛部上面にスペーサ機能を有する樹脂テープを熱融着で貼り合せた。
該樹脂テープ17は、第一樹脂機能層171とその上の第二樹脂機能層172とからなる構成であり、第一樹脂機能層は、粒径が50nmから400nmの酸化チタン微粒子をエチレン−プロピレン共重合体樹脂に分散した層であり、膜厚は、150μmとなった。
該樹脂テープの第二樹脂機能層は、アクリル系樹脂に硫酸バリウム粒子と酸化シリコン微粒子を分散させた層であり、0.1μm以上で3μm以下の硫酸バリウムの粒塊と0.1μm以下の酸化シリコンの微粒子が分散した層であり、膜厚は、3μmで第一樹脂機能層上に形成した。
アクリル樹脂に被覆された硫酸バリウムの粒塊により形成された表面の1μm程度の凹凸が形成された。
樹脂テープ材は、第一樹脂機能層をアルミの金属枠体の上面に押し付けた状態で120℃、30秒で熱融着しスペーサ層を形成した。
四隅の金属枠部を加工し、ポリアミド樹脂製のコーナーピース16に嵌め込みできるようにして接続した。基板支持部13面にポリプロピレン樹脂製の基板保持部材14を装着した。完成した基板保持用枠体10の外形は、1670mm×1980mm程度となった。
完成した基板保持用枠体10と前記の移載用架台を用いて基板A(厚み0.7mm、1500mm×1850mmガラス基板)の移載試験を行ったが、円滑に、基板の受け渡し、受け取りができることが確認された。なお、基板Aの撓み量は、120mm程度となるようにした。
また、基板の梱包体を長期間保管しても、枠体間が貼りつくことはなく、樹脂層に起因する塵埃の発生等も認められなかった。
10 基板保持用枠体
11 金属枠部
12a 第1嵌合部
12b 第2嵌合部
13 基板支持部
14 基板保持部材
15 手掛部
16 コーナーピース
17 樹脂層
20 上蓋
21 表面板
22 結束機構
23 結束ベルト
30 インナーパレット
40 防振パレット
100 枠体の多段積み重ね体
A 基板
D 金属枠体 曲げ量
M 金属枠体表面
171 第一樹脂機能層
172 第二樹脂機能層
B 硫酸バリウム粒子
S 酸化シリコン粒子
T 酸化チタン粒子

Claims (12)

  1. 矩形状の基板の1枚を、平面視矩形状の金属枠部を有する基板保持用枠体内に収め、当該基板を収めた状態の該枠体を位置合わせして多段に積み重ねた状態で、搬送または保管の用途に供する基板保持用枠体であって、
    (1)正方形または長方形の断面形状を有する金属枠部と、
    (2)該金属枠部の内周面の上面側に設けられ、内周下方側に傾斜した形態を有する第一嵌合部と、さらにその先に延出して形成された基板支持部と、
    (3)該金属枠部の内周面の下面側に設けられ、内周下方側に傾斜した形態を有する第二嵌合部と、
    (4)該金属枠部の左右の辺から外周側に延出して形成された手掛け部と、を有し、
    前記金属枠部の上面と前記第一嵌合部の上面と前記基板支持部の上面と前記手掛け部の上面とが、各部上面間において溝、段部および稜線を伴わない同一の連続した平面及び曲面で形成されており、該金属枠部の上面、該第一嵌合部の該第二嵌合部の下面と接触する部分の上面、該手掛け部の上面、のいずれかの面の一部又は全面にフィラーを含有する剛性を有する均一な厚みの樹脂層を有する基板保持枠体。
  2. 前記樹脂層は、前記金属枠体同士が接触することを防止するスペーサ機能を有し、該樹脂層は、剛性を有し変形を防止する第一樹脂機能層と表面に凹凸形状を有し積み重ねた枠体同士の貼りつきを防止する第二樹脂機能層とで構成されることを特徴とする請求項1に記載する基板保持用枠体。
  3. 前記第二樹脂機能層は、積み重ねされた基板保持用枠体間の貼りつき防止機能を有する層であるとともに、横ズレを防止する機能を有する層であることを特徴とする請求項2に記載する基板保持用枠体。
  4. 前記第二樹脂機能層は、積み重ねされた金属枠体の静電気の発生を防止する機能層であることを特徴とする請求項3に記載する基板保持用枠体。
  5. 前記樹脂層は、第一樹脂機能層と第二樹脂機能層を一体とした樹脂テープであることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1の請求項に記載する基板保持用枠体。
  6. 前記第一樹脂機能層と第二樹脂機能層の合計厚みは、70μm以上であって、400μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1の請求項に記載する基板保持用枠体。
  7. 前記金属枠体がアルミまたはアルミ合金からできていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1の請求項に記載する基板保持用枠体。
  8. 前記樹脂テープは、第一樹脂機能層が前記金属枠体に熱圧融着性を有する樹脂で構成され、第二樹脂機能層が金属枠体に熱圧融着性を有しない樹脂で構成されることを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか1の請求項に記載する基板保持用枠体。
  9. 前記第一樹脂機能層の樹脂は、エチレンープロピレン共重合体樹脂からなり、層厚は60μm以上400μm以下であり、該樹脂層中の前記フィラーは、粒径が50nm以上400nm以下の酸化チタンであり、第一樹脂機能層に3質量%以上5質量%以下で含まれていることを特徴とする請求項2乃至請求項8の何れか1の請求項に記載する基板保持用枠体。
  10. 前記第二樹脂機能層の樹脂は、アクリル系樹脂であり、層厚は2μm以上4μm以下であり、該樹脂層中の前記フィラーは、粒径が0.1μm以上3μm以下の硫酸バリウムの粒塊と0.1μm以下の酸化シリコン粒子で構成され、第二樹脂機能層に70質量%以上90質量%以下で含まれていることを特徴とする請求項2乃至請求項9の何れか1の請求項に記載する基板保持用枠体。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか1の請求項に記載する基板保持用枠体に、基板を載置した状態の基板保持用枠体を、平滑な金属枠体上の樹脂層を介して嵌合部の嵌め合わせにより多段に積み重ねし、最上段の基板保持用枠体の嵌合部に上蓋の嵌合部を嵌め合わせて封じ、かつ上蓋が基板に接触しないようにし、最下段の基板保持用枠体の嵌合部にインナーパレットの嵌合部を嵌め合わせて封じ、かつ上蓋とインナーパレット間を結束ベルトで結束し、防振パレットに載せて搬送することを特徴とする基板の梱包体。
  12. 前記基板が、表示装置用に用いるガラス基板またはプラスチック基板であることを特徴とする請求項11に記載する基板の梱包体。
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