JP5987493B2 - パターン形成方法とそれにより形成されたパターン及びデバイス - Google Patents
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Description
エッチング法は、金属の表面や形状を化学的あるいは電気化学的に溶解除去して所定のパターンを形成するもので、表面処理を含めた広義の加工技術である。すなわち、エッチングは化学加工の一種であり、主に金属表面に希望のパターン形状を得るために行われるが、一般的に工程が煩雑であり、また後工程で廃液処理が必要であるために課題が多い。 また、エッチング法によって形成された導電回路は、アルミニウムや銅など金属のみで形成されたものであるため、折り曲げ等の機械的あるいは物理的衝撃に対して弱いという問題がある。
スクリーン印刷は、版(スクリーン)を介してインク(例えば、導電性インク)を塗布し印刷するものであり、形成したいパターン用のスクリーンを準備しなくてはならない。すなわち、用いる導電性インクもスクリーンも形成したいパターンの精度に合わせて準備する必要があり、パターンが異なる毎にそれに応じた違うスクリーンを用意する必要がある。
インクジェット法は、液体吐出ヘッドからインクなどの液体材料を液滴状として吐出し、被印刷基材上に印刷するものであり、スクリーン印刷法と比べると、大型の画面の全体にわたってパターン精度を均等にするのが容易であるとともに、頻繁に行わなければならない版交換が不要なので費用および時間を節約できるという利点を有する。このように、インクジェット法は、スクリーン印刷法に較べて大型の画面におけるパターン精度の均等性や、版交換を不要とする特長がある。しかし、インクジェット法によるパターン形成においては、(1)被形成面の濡れ性が良好でなければ、インクの飛散や流動が生じること、(2)パターンエッジに液滴の吹き付けに特有の微視的な凹凸が生じることなどの問題がある。
前述の各種パターニング手法における問題を解決するため、種々のパターン形成方法が検討され提案されている。
また、特許文献2には、液晶パネルのカラーフィルタの形成に際して、エネルギー照射によって濡れ性が変化する光触媒含有層を基板上に形成し、エネルギーのパターン照射をして光触媒含有層の一部について濡れ性を高めた後、濡れ性の高められた部分に着色インクを付着させる製造方法が提案されている。すなわち、被形成面における所望パターンの部分のみについて濡れ性を高める方法が記載されている。特許文献2の手法により、濡れ性の良い部分と悪い部分とのパターンを少ない工程で容易に形成することができ、さらにインクの吸収層が不要で、品質が良好かつ低コストでカラーフィルタが製造できるとしている。
また、特許文献3には、基板上に構成要素のパターンを包含するように部分的に濡れ性を高める表面処理材をパターン印刷し、この下地膜を光照射によってパターン整形し、整形後の下地膜を利用して基板上に選択的にインクを付着させて所望パターンの構成要素を形成するフラットパネルディスプレイの製造方法が提案されている。この工程では光を照射したところの下地膜はOH基等が結合しやすい親水性の領域になる。特許文献3の手法により、画面のセル配置に対応したパターンの構成要素をできるだけ少ない材料で所望のパターンどおりに形成することができるとしている。
また、特許文献4には、第1の液滴の周縁部にスキン層を形成させてバンクを形成し、このバンク内に第2の液滴を滴下し、乾燥させて単層膜を形成する膜形成方法が提案されている。特許文献4の手法により、印刷法またはフォトリソグラフィによるパターニング工程を要せずバンクを形成することができ、材料使用量の低減化を図ることができるとしているが、第1の液滴の滴下だけで精度の良いラインを有するバンクの形成は難しく、高精度のパターンエッジ形成は困難である。
また、特許文献5には、基板に予め機能液に対する障壁としてバンクを形成した後、バンク間の溝上に高表面エネルギー部を形成し、バンク上に低表面エネルギー部を形成する前処理をし、バンク間の溝に機能液を供給することが提案されている。特許文献5の手法により、微細で均一な機能性パターンの形成が可能であるとしているとしているが、バンク形成においてフォトリソグラフィによるパターニング工程を必要とする難点がある。
また、特許文献6には、基体上に形成した自己組織化単分子膜にレーザー光で露光して自己組織化単分子膜パターンを形成し、このパターン上に薄膜材料を選択的に配して薄膜パターンを形成する方法が提案されている。特許文献6の手法により、微細な薄膜パターンが短時間で簡便に形成できるとしているが、自己組織化単分子膜の形成後、レーザー光で露光してエッチングを繰り返してパターン化するという長い工程となっている。
また、特許文献7には、有機樹脂溶液塗布により表面凹凸の最大山高さを調整した有機樹脂層に紫外線照射、電子線照射、コロナ放電あるいはオゾン処理して有機樹脂層表面の一部に親水性領域を形成することを基本技術とする基板、導電性基板および有機電界効果型トランジスタの製造方法が提案されている。特に、樹脂基材のような凹凸のある基材上に、種々の応用が可能な電極、金属配線、絶縁層などの層や、これらの層の微細なパターンなどを形成できる基板、導電性基板に関する。特許文献7の手法により、樹脂基材のように表面に凹凸や突起物が多い基材上でも、所望の層が形成できるとしているが、感光性樹脂の露光部分は親水性の領域になっている。
また、特許文献8には、偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板の一方の支持層の表面に形成されたアンダーコート層(中心線平均粗さが100〜500nm)と、含フッ素シラン化合物(オリゴマーおよびポリマーの少なくとも一種からなる)を用いて形成(物理的気相成長法によって堆積)された汚染防止層とを有する偏光板が提案されている。物理的気相成長法としては、真空蒸着などの真空プロセスで作成している。特許文献8の手法により、表面反射が少なく優れた視認性を確保しながら、撥水性,汚染防止性に優れた偏光板が提供されるとしている。
すなわち、上記課題は、基板上に、インク液を配置してパターンを形成するパターン形成方法であって、前記基板上に、親水性感光樹脂層を形成する工程と、前記親水性感光樹脂層に光を照射して、設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部の表面を予め変質させる工程と、前記光照射後の基板をフッ素系化合物からなる液体または気体に曝してエッジ周辺部表面を撥水化する工程と、前記表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液を配置する工程と、を有することを特徴とするパターン形成方法により解決される。
また、上記課題は、請求項1乃至6のいずれかに記載のパターン形成方法により形成されたことを特徴とするパターンにより解決される。
また、上記課題は、請求項7に記載のパターンが導電性であり、該パターンと半導体素子を備えたことを特徴とするデバイスにより解決される。
また、本発明のパターン形成方法により形成されたパターン、あるいはパターンと半導体素子を備えたデバイスとすれば、細線状のパターンにおけるパターンエッジを精度よく安定して形成することができ、パターンの微細化および材料使用量の低減化を図ることができる。
前記基板上に、親水性感光樹脂層を形成する工程と、
前記親水性感光樹脂層に光を照射して、設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部の表面を予め変質させる工程と、
前記光照射後の基板をフッ素系化合物からなる液体または気体に曝してエッジ周辺部表面を撥水化する工程と、
前記表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液を配置する工程と、
を有することを特徴とするものである。
本発明のパターン形成方法によれば、所望とするパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部(パターンのエッジラインに沿って隣接するライン外側の狭小領域)の表面を、予め、光照射して変質させ、さらに撥水化処理を施してあるため、親水性のインクがパターン形状領域内に配置(インクジェット印刷法などにより付与)された場合に、表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画された領域内にインクが留まり、微視的な凹凸などがなくエッジ精度が良好なパターンが形成される。すなわち、印刷法またはフォトリソグラフィ法などにおける複雑なパターニング工程を必要とせず、より簡単なプロセスでパターンを精度よく形成することができる。
本発明における表面が撥水化されたエッジ周辺部を形成しないで、直接パターンをインクジェットやスクリーン印刷で形成する場合では、粘度が低い材料(インク)では、インクが自由に流れて形成すべき形状に留まらずパターンが変化し崩れてしまうし、粘度が高いインクでは、インクジェットの打つタイミングで脈動がエッジにそのまま形成されてしまう問題がある。
本発明のパターン形成方法は、基板上に、親水性感光樹脂層を形成する工程(1)、親水性感光樹脂層に光を照射して、設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部の表面を予め変質させる工程(2)、前記光照射後の基板をフッ素系化合物からなる液体または気体に曝してエッジ周辺部表面を撥水化する工程(3)、前記表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液を配置する工程(4)を有する。
本発明のパターン形成方法のプロセスを図1の概略模式図に示す。図1において、符号1は基板、2は親水性感光樹脂層、3はエッジ周辺部、4は撥水化されたエッジ周辺部表面、5はパターン形状領域内、6はインク液を示し、([工程(1)]から[工程(4)]を経由してパターンを形成する。以下、各工程を詳細に説明する。
基板上に、親水性を有する感光樹脂(濡れ性の良い材料)を用いて薄膜(親水性感光樹脂層)を形成する。
親水性感光樹脂としては後述のようなものが挙げられ、これら樹脂溶液を基板上に塗布し(例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、スピンナーコーティング、ディピング等)、薄膜(親水性感光樹脂層)を形成することもできるし、予め所定の膜厚に整形した親水性感光樹脂からなる薄膜を基板上に転写し、親水性感光樹脂層を形成することもできる。
親水性感光樹脂層の膜厚としては0.5μm〜10μm程度である。膜厚が0.5μm未満では塗布膜厚に不均一性が生じやすく、膜厚が10μm超えると仕上がり膜厚に不均一性が発生する傾向がある。
ここで、親水性感光樹脂層が形成される基板としては特に制限はなく、パターンの使用目的に応じて適宜選択することができる。
基板として、例えば、表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を持つものまで任意に選択できるが、板状の基体、いわゆる基板が好ましく使用される。具体的には、公知の合成樹脂性のフィルム、プリント配線板製造用の基板(プリント基板)、ガラス板(ソーダガラス板など)、紙、金属板などが挙げられる。
前記基板として本発明において好ましく用いられる合成樹脂性のフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET:Polyethylene terephtalate)あるいはポリエチレンナフタレートフィルム(PEN:Polyethylene naphthalate)などが挙げられる。これらのフィルムは、機械的特性、電気的特性、耐熱特性などが良好で可撓性があり、市販材料として流通している一般的な材料であるため入手が容易であることなどの点から好ましく使用できる。なお、ガラス転移温度(TG:やわらかくなりはじめる温度)はPETよりもPENの方が高く、ガスの透過性はPETよりもPENの方が低くなっていて密な基板となっている。
前記親水性感光樹脂層は、基板上に、親水性を有する感光樹脂(親水性感光樹脂)を用いて形成されるが、この際、親水性感光樹脂(光照射により重合又は硬化可能な化合物)と必要に応じて重合開始剤とを含有せしめる。つまり、親水性感光樹脂層に光(例えば、レーザ光線)を照射して、照射部分の表面を変質させることが可能な樹脂組成を選択することが必要である。
ここで、「変質」とは、光照射により親水性感光樹脂が重合又は硬化し、収縮を伴う変化により、予め形成すべき設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部の表面に微細な溝を形成することを指す。微細な溝は、所謂パターンのエッジラインに沿って隣接するライン外側の狭小領域に形成される。
分子内に2重結合を1個有する化合物(モノマー)の具体例としては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリート、1,3-ジオキサンアルコールのε-カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3-ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類が挙げられる。
分子内に2重結合を2個有する化合物(モノマー)の具体例としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート、2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-ヒドロキシメチル-5-エチル-1,3-ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε-カプロラクトン付加物、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類が挙げられる。
分子内に2重結合を3個以上有する化合物(モノマー)の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε-カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル類が挙げられる。
あるいは前記アクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸のエステル誘導体等を挙げることができる。
上記の中でも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル化合物が特に好適に使用できる。これらの化合物のうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート類、シリコーン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したシリコーンアクリレート類、その他のアクリレート類等が挙げられる。
上記エポキシアクリレート類としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のように、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入して得られるプレポリマーが挙げられる。
上記ウレタンアクリレート類としては、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2-ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレト・キシレンジイソシアネート、1,2-ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2-ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングルコール・トリレンジイソシアネート・2-ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入して得られるプレポリマーが挙げられる。
上記シリコーンアクリレート類としては、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2-ヒドロキシエチルアクリレート等のように、シリコーン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入して得られるプレポリマーが挙げられる。
上記その他のプレポリマーとして、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、あるいはスピラン樹脂アクリレート類等が挙げられる。
前記重合又は硬化可能な化合物(付加重合もしくは架橋可能な化合物)としては、プレポリマーだけ1種または2種以上を混合して用いてもよいし、前述のモノマー類と混合して用いてもよい。
親水性感光樹脂層を構成する全組成物(感光樹脂層組成物)中、重合又は硬化可能な化合物(親水性感光樹脂)の含有量は、好ましくは5重量%以上80重量%以下の範囲で配合され、より好ましくは10重量%以上70重量%以下の範囲で配合される。親水性感光樹脂の含有量が5重量%未満であると、親水性の層として十分に機能しなく、80重量%を超えると粒子間が凝集して膨潤してしまう。
ここで、重合開始剤(光重合開始剤)は、基板上に形成された親水性感光樹脂層に光が照射された際、露光により親水性感光樹脂を重合又は硬化させるためのものである。親水性感光樹脂の重合又は硬化に伴って、前述のように形成すべきパターン形状のエッジ周辺部(パターンのエッジラインに沿って隣接するライン外側の狭小領域)の表面に微細な溝を形成することができる。
光重合開始剤としては、光反応により光重合開始剤(化合物)の化学結合が開裂してラジカルを生成するいわゆる光開裂型のものと、光重合させるモノマー(組成)内の水素を引き抜くことによりラジカルを生成する水素引き抜き型のものが挙げられる。
光開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α−ヒドロキシケトンのオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。一方、水素引き抜き型の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、メチル−o−ベンゾイルベゾエート、アントラキノン類等が使用できる。これら例示した光重合開始剤は、いずれも、有機溶剤に溶解するものである。
熱重合開始剤としては、例えば、クメンヒドロペルオキシド、第3ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ第3ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、等の有機過酸化物、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化水素と2価の鉄塩、過硫酸塩と硫酸水素ナトリウム、クメンヒドロペルオキシドと2価の鉄塩、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリン等のレドックス系重合開始剤の他、ジスルフィド化合物や、マンガントリアセチルアセトナート、ペンタシアノベンジルコバルテート等の有機金属錯体等が使用できる。
これら重合開始剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、重合又は硬化可能な化合物(親水性感光樹脂)100重量部に対して、0〜20重量部であり、より好ましくは10重量部以下である。
これらのバインダー樹脂は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
このように、光照射により変質したエッジ周辺部以外の親水性感光樹脂層領域を予め除去する用途の場合には、前記親水性感光樹脂層を構成する組成物として、重合又は硬化可能な化合物(親水性感光樹脂)、重合開始剤(光重合開始剤)、感光性基およびアルカリ溶液での溶解性(アルカリ現像性)を付与するための酸基を導入した化合物(バインダー)を含有してなるものが好ましくもちいられる。さらに必要に応じて、熱架橋剤やフィラーなどのその他の成分を含有してもよい。
工程(2)は、前記基板上に形成した親水性感光樹脂層に光を照射して、設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部の表面を予め変質させる工程(露光工程)である。
前記露光工程においてはマスクを用いずに親水性感光樹脂層(略、感光層)に直接光を照射し露光(マスクレス露光)することができる。
露光に用いられる光線(化学線)としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましく、特にレーザー光線による光照射が好ましい。
前記露光工程では、露光光の焦点は、感光層の表面よりも基板側の位置に調節される。なお、前記露光光の焦点は、光照射に用いる露光装置(露光機)のコンピューター自動制御によって調節されて制御されることが望ましい。例えば、感光層の厚みを露光機に入力することにより焦点を自動制御する。
レーザー露光の例としては、例えば、マスクレス、ラスター走査方式により、露光装置として波長400nm程度のArレーザーを用い、スポット径10μm前後で、設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部(所謂、パターンのエッジラインに沿って隣接するライン外側の狭小領域)の表面に直接レーザー描画(露光)する。露光するパターン形状のエッジライン外側の狭小領域(エッジ周辺部)はCADを使用して設計すればよい。
工程(3)は、前記光照射後の基板をフッ素系化合物からなる液体または気体に曝してエッジ周辺部表面を撥水化する工程である。
撥水化する工程で用いるフッ素系化合物としては、フッ素系溶媒が好ましく用いられる。すなわち、フッ素系溶媒(構成元素としてフッ素を含有する化学構造式で表わされる溶媒)としてハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、6フッ化ベンゼン、フッ化エーテルなどが挙げられる。
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の具体例としては、例えば、HCFC−123(冷媒として使われている。)などが、フッ化エーテルの具体例としては、例えば、CH3OCF2CF3、CF3OCF2CF3、三フッ化ホウ素エチルエーテル[(C2H5)2O・BF3]などが例示される。
なお、これら例示に限定されるものではなく、本発明の撥水化工程に適用可能なフッ素系化合物であればいずれも使用可能である。
フッ素系化合物からなる液体または気体に曝す方法としては、例えば、フッ素系溶媒を塗布するか、溶液中に浸漬するか、蒸気中に曝露するか、これらを組合せた方法が用いられ、これらの処理によって前記エッジ周辺部の表面を変質させた親水性感光樹脂層を撥水化することができる。
撥水化に至るメカニズムの詳細は不明であるが自己組織化膜(self assembly膜)が形成されている可能性もある。すなわち、当該フッ素系化合物の溶液中または蒸気(気体雰囲気)中において、フッ素系化合物が光照射(例えば、レーザー露光)により変質したエッジ周辺部の表面に自発的に化学吸着し、自己集合化膜[自己組織化膜、またはセルフアセンブリ(self assembly)膜:2次元の単分子膜]、を形成するものと想定される。なお、レーザー露光されていない未変質の親水性感光樹脂層表面は親水性が大きいため、フッ素系化合物との結合(化学吸着)が起こりにくく撥水性となりにくい。
撥水処理の方法や処理時間は、親水性感光樹脂層の種類や、用いるフッ素系化合物(フッ素系溶媒)などにより適切な条件を設定する必要があり一義的に決められないが、例えば、ポリイミド系感光性材料を親水性感光樹脂層とした場合、フッ化エーテル溶媒中で2分〜10分程度でも処理可能である。
表面が撥水化されたエッジ周辺部と同じ箇所に再度光を照射する工程を介在させることにより、工程(2)、で形成された親水性感光樹脂の重合又は硬化による収縮を伴う変化で形成された微細な溝が、さらに熱収縮により深い溝に変化する。これに伴ってエッジ周辺部が見かけ上盛り上がると考えられる。このようなエッジ周辺部を形成し、粘度の高いインク(例えば、導電性インク)を用いてパターンを形成すれば、パターンエッジがなだらかな形状を呈し通常はかまぼこ型に形成されるのが、パターンエッジが盛り上がり、銅箔等のバルク導電体を形成した場合に近いエッジが形成される。
工程(4)は、前記表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液を配置する工程である。
インク液としては、着色剤(顔料や染料)を含むインク、磁性材料や導電性材料などの機能性材料を含むインクなどがあり、目的に応じて用いられる。ここで、着色剤としては、各種公知の染料及び顔料を用いることができる。顔料を用いた場合、必要に応じて分散剤等を用いることもできる。当然、組成分として着色剤(色材)を含まないインクであってもよい。また、磁性材料や導電性材料などの機能性材料を含むインクの使用により、目視で認識可能な情報以外にも多様な印刷が可能である。
前記導電性材料を含むインク(導電性インク)としては、一般的な導電性材料を用いることができるが、基板に合成樹脂性のフィルム(プラスチックフィルム)を用いる場合には、低温プロセスを適用するので比較的低温(例えば、150度以下)で硬化するインクがよい。
導電性インクとしては、導電性ナノ粒子を含むインクが好ましく用いられ、例えば、導電性ナノ粒子(金属ナノ粉末)が、金属ナノ粉末、金属ナノ粉末および金属コロイド類を組み合わせたもの、あるいは金属ナノ粉末、並びに被還元性金属塩(metal reducible salt)および/または有機金属錯体類を分解して導電性材料を形成する有機金属化合物などから得られるものが挙げられる。
インクジェット法による印刷では、前記パターン形状領域内に配置されたインク液を乾燥・熱処理(必要により焼成)することで導電パターンが形成される。
インクジェット法によれば、区画されたパターンにおけるエッジを精度よく安定して形成することができ、例えば、表面が撥水化されたエッジ周辺部の形成により、インクジェットの打つタイミングで生じるインク液の脈動に基づく凹凸が解消されると共に、パターンの微細化および材料使用量の低減化を図ることができる。つまり、マスクを用いたり、エッチング処理を必要としないので複雑なパターニング工程を経ず、より簡単なプロセスでパターンを精度よく形成することができ、製造プロセスの簡略化および低コスト化を実現できる可能性がある。
インクジェット法に用いるインクの粘度、としては、基板あるいは親水性感光樹脂層の種類により選択されるが、吐出温度において3mPa・s〜30mPa・s程度の範囲であることが好適である。インクの粘度が一定範囲に調整されることにより、エッジ精度の良好なパターン形成が安定して行える。なお、粘度は回転粘度計により測定される。
すなわちインクの粘度が上記範囲よりも低い場合には、流動し易いことにより、表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液滴を留めるのが難しくなることがあり、粘度が上記範囲よりも高い場合には、インクジェット装置のノズルからの吐出安定性が悪くなってインク液滴の着弾位置のズレなどが発生しパターン形状領域内にインク液を配置するのが難しくなる場合がある。
図2に示す液滴吐出塗布装置10において、架台11の上に、Y軸駆動手段12が設置してあり、その上に基板13を搭載するステージ14がY軸方向に駆動できるように設置されている。なお、ステージ14には図示されていない真空、静電気などの吸着手段が付随して設けられており、基板13が固定されている。また、X軸支持部材15にはX軸駆動手段16が取り付けられており、これにZ軸駆動手段17上に搭載されたヘッドベース18が取り付けられており、X軸方向に移動できるようになっている。ヘッドベース18の上にはインク液を吐出させる液滴吐出ヘッド19が搭載されている。この液滴吐出ヘッド19には図示されていないインクタンクから供給用パイプ20を介してインク液が供給される。このような液滴吐出塗布装置を用いて、前記パターン形状領域内にインク液を的確に配置することができる。
導電性パターンと半導体素子を備えたデバイスとすれば、各種電子機器(例えば、携帯電話、ワープロ、パソコン等)などに適用できる。
本発明のパターン形成方法によりエッジ精度の高いパターンが版やマスクを使わない低温工程で安定して形成されるので、半導体素子を備えた各種デバイス、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子の一部を構成する場合には、高集積化されたスイッチング素子を安定的に得ることができる。デバイスとしては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等も挙げられる。また、導電性パターンをアンテナ回路とし、ICチップと接続すれば非接触ICカード(FRID)に適用できる。
本発明のパターン形成方法により形成されたパターン、あるいはパターンと半導体素子を備えたデバイスは、簡単なプロセスでパターンエッジを精度よく安定して形成されるのでパターンの微細化および材料使用量の低減化を図ることができる。
[実施例1〜6、比較例1〜4]
(I)評価用サンプルの作製
下記により、実施例1〜6および比較例1〜4のパターン(アンテナ回路)を作製し、これらのアンテナ回路にRFID用ICを実装して評価用のRFIDを作製した。なお、RFIDは非接触ICカードを指す。
〔A〕:RFIDのアンテナ回路作製
工程(1):基板上に親水性感光樹脂層を形成
厚さ:0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)を基板として用いた。これらPET製またはPEN製の基板(寸法:500mm×800mm)上に、感光性樹脂組成物を、焼成後の膜厚が下記表1に示すようにそれぞれ所定の膜厚(7μm〜9μm)になるようにスピナー(ミカサ(株)製)を用いて塗布した。次いで、100℃の乾燥機中で5分間乾燥して親水性感光樹脂層(略、感光性樹脂層)を形成した。感光性樹脂層の厚みは下記表1に示すようにそれぞれ7μm〜9μmであった。感光性樹脂組成物に使用した感光性樹脂はポリイミド系感光性材料(フォトニース:東レ社製)である。
工程(2):光照射によるエッジ周辺部の表面変質
次に、実施例1〜6については、親水性感光樹脂層(感光性樹脂層))にArレーザー(波長:405nm)を照射して、設定されたRFIDのパターンのエッジラインに沿って隣接するライン外側の狭小領域(所謂、パターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部)のみ露光させて予め表面を変質させた。露光による変質に伴ってエッジ周辺部に形成された微細な溝の幅は、およそ500nm程度であり、この溝がパターン形状のエッジに沿って形成された。なお、RFIDのパターンはテスト用に設計したパターンを用いた。
一方、比較例1〜4については光照射によるエッジ周辺部の表面変質を行わなかった。
工程(3):エッジ周辺部表面を撥水化
前記レーザー照射射後の基板(実施例1〜6)をフッ化エーテル(商品名:“HFE-347pc-f”ダイキン工業社製)中に1分間曝して露光により変質されたエッジ周辺部(微細な溝)表面を撥水化処理した。なお、比較例1〜4については、露光処理が施されていないため、感光性樹脂層(親水性感光樹脂層)の表面は未変質状態であることから、撥水化処理は行っていない。
工程(4)パターン形状領域内にインク液を配置
前記表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状(RFIDのパターン)領域内に導電性インクをインクジェットにより塗布した(実施例1〜6)。比較例1〜4の場合には、設定されたパターン形状(エッジ周辺部により区画されていない)に沿って導電性インクをインクジェットにより塗布した。
導電性インクとしては、主成分がエポキシ樹脂でNiと金をベースにした粘度が25mP・sのインク(商品名:GA−6330サンユレック社製)を用いた。
また、インクジェットによる塗布は、エアロジェット(武蔵エンジニアリング社製)を用いディスペンサー方式を採用した。
導電性インクの塗布量は、印加するエア圧力とディスペンスするヘッドの穴内径を適宜調整して制御した。通常はヘッドの穴内径を100μmとして塗布し、膜厚を厚くする場合には120μmとして塗布した。なお、RFIDパターンの線幅は、細いところでおよそ100μmである。
導電性インクの塗布後、150℃で30分間熱処理して導電性のパターン(アンテナ回路)を形成した。導電性パターンを構成する導電性材料の膜厚は下記表1に示すようにそれぞれ10μm、11μm、17μmに形成された。
〔B〕:RFID(非接触ICカード)の作製
上記で作製した実施例1〜6および比較例1〜4それぞれのアンテナ回路にRFID用IC(MONZA3)を上記導電性インクに用いたのと同様の導電材料(ACI:異方性導電材料)で接合して実装し評価用のRFID(非接触ICカード)を作製した。
上記で作製した実施例1〜6および比較例1〜4それぞれのアンテナ回路におけるパターン形状のエッジについて評価した。また、上記で作製した実施例1〜6および比較例1〜4それぞれの評価用RFIDについて評価(EC Global 標準測定)を行った。結果を下記表1に示す。
エッジ評価およびRFIDについての評価方法および評価基準は下記による。
〈エッジ評価〉
顕微鏡評価でエッジの精度が、下記のように本来設定された直線から5μm以上づれているものを×とし5μm以内を○とした。
○:直線からのずれが5μm未満
×:直線からのずれが5μm以上づれている
〈RFID評価〉
上記作成した評価用RFID(デバイス)を電波暗箱に入れてEC Global 標準測定を行い何m飛ぶかを測定した。Voyantic Ltd.社製の装置を用い、キャリア周波数帯域はUHF帯の900MHz帯で測定した。飛ぶ距離が3m以上であれば良好であり、1m未満では実用に供しない。
一方、光照射による露光工程および撥水化工程を省いてパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部を形成しない比較例1〜4では、エッジ精度が悪く、RFID特性も実用に供しないレベルであった。
本発明のパターン形成方法により形成されたパターン、あるいはパターンと半導体素子を備えたデバイスとすれば、任意の形状のパターンにおけるパターンエッジを精度よく安定して形成することができ、微細化、複雑形状化などにも対応できるほか、材料使用量の低減化を図ることができる。
本発明のパターン形成方法によりエッジ精度の高いパターンが安定して形成されるので、半導体素子を備えた各種デバイス、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子の一部を構成する場合には、高集積化されたスイッチング素子を安定的に得ることができる。デバイスとしては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等も挙げられる。また、導電性パターンをアンテナ回路とし、ICチップと接続すれば非接触ICカード(RFID)に適用できる。
1 基板
2 親水性感光樹脂層
3 エッジ周辺部
4 撥水化されたエッジ周辺部表面
5 パターン形状領域内
6 インク液
(図2の符号)
10 液滴吐出塗布装置
11 架台
12 Y軸駆動手段
13 基板
14 ステージ
15 X軸支持部材
16 X軸駆動手段
17 Z軸駆動手段
18 ヘッドベース
19 液滴吐出ヘッド
20 供給用パイプ
Claims (9)
- 基板上に、インク液を配置してパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記基板上に、親水性感光樹脂層を形成する工程と、
前記親水性感光樹脂層に光を照射して、設定されたパターン形状のエッジに隣接するエッジ周辺部の表面を予め変質させる工程と、
前記光照射後の基板をフッ素系化合物からなる液体または気体に曝してエッジ周辺部表面を撥水化する工程と、
前記表面が撥水化されたエッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液を配置する工程と、
を有することを特徴とするパターン形成方法。 - 前記インク液が、導電性インクであることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
- 前記光照射が、レーザー光線によるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成方法。
- 前記エッジ周辺部により区画されたパターン形状領域内にインク液を配置する工程の後、熱処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパターン形成方法。
- 前記インク液を配置する工程が、インクジェット法によるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパターン形成方法。
- 前記基板が、ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはポリエチレンナフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のパターン形成方法。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のパターン形成方法により形成されたことを特徴とするパターン。
- 請求項7に記載のパターンが導電性であり、該パターンと半導体素子を備えたことを特徴とするデバイス。
- 前記デバイスが、非接触ICカードであることを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
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