以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
図1は本発明の実施形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置を示す断面図である。画像形成装置10は、胴内排紙方式のタンデム型カラー複写機であり、下側の装置本体11と上側の装置本体16とを備える。
下側の装置本体11には、給紙部14と、画像形成部12と、定着器13が配設され、また、上側の装置本体16には、原稿画像を読み取る画像読取装置20が配設される。下側の装置本体11と上側の装置本体16との間には排紙空間15が形成され、この排紙空間15に定着処理後の用紙Pが排出される。
画像形成部12は、給紙部14から給紙された用紙Pにトナー像を形成するものであり、中間転写体である中間転写ベルト125の回転方向の上流側から下流側へ向けてマゼンタ用ユニット12Mと、シアン用ユニット12Cと、イエロー用ユニット12Yと、ブラック用ユニット12Kとが配設される。
各画像形成ユニット12M、12C、12Y、12Kには、像担持体である感光体121が配設され、感光体121の周囲には、現像装置122、露光部124、帯電部123、及びクリーニング部126が配設される。
現像装置122は、感光体121の右方に対向して配置され、感光体121にトナーを供給する。帯電部123は、現像装置122に対して感光体121の回転方向の上流側に感光体121の表面に対向して配置され、感光体121表面を一様に帯電させる。
露光部124は、画像読取装置20にて読み取った文字や絵柄などの画像データに基づいて、感光体121を走査露光するためのものであり感光体121の下方に設けられる。露光部124には、図示しないレーザー光源、ポリゴンミラー等が設けられ、レーザー光源から出射されたレーザー光が、ポリゴンミラーを介して、帯電部123に対して感光体121の回転方向下流側から、感光体121の表面に照射される。照射されたレーザー光により、感光体121表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置122によりトナー像に現像される。
無端状の中間転写ベルト125は、駆動ローラー125aとテンションローラー125bに回転可能に張架されている。駆動ローラー125aは図示しないモーターによって回転駆動され、中間転写ベルト125は駆動ローラー125aの回転によって循環駆動させられる。
この中間転写ベルト125に接離可能な感光体121が中間転写ベルト125の下方で走行方向に沿って隣り合うように配列されている。1次転写ローラー125cは、中間転写ベルト125を挟んで感光体121と対向し、中間転写ベルト125に圧接して1次転写部を形成する。この1次転写部において、中間転写ベルト125の回転とともに所定のタイミングで各感光体121のトナー像が中間転写ベルト125に順次積層される。これにより、中間転写ベルト125表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたトナー像が形成される。1次転写後に、クリーニング部126が感光体121の表面に残留するトナーをクリーニングする。
2次転写ローラー113は、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aに圧接し、中間転写ベルト125との圧接部において2次転写部を形成する。中間転写ベルト125表面のトナー像がこの2次転写部で用紙Pに転写される。転写後に、図示しないベルトクリーニング装置が中間転写ベルト125に残存するトナーを清掃する。
画像形成装置10内の下方には給紙部14が配設され、給紙部14には、用紙Pを収納し、挿脱可能に装置本体11に装着された用紙トレイ141が設けられる。給紙部14の左方には、第1用紙搬送路111が配設される。第1用紙搬送路111は、用紙トレイ141からピックアップローラー142によって送出された用紙Pを搬送ローラー112によって中間転写ベルト125の2次転写部に搬送する。更に、装置本体11の左上方には、用紙Pに形成されたトナー像を定着させる定着器13と、定着処理の行われた用紙Pを用紙排出トレイ151に搬送する第2用紙搬送路114とが配設される。
2次転写ローラー113による用紙Pへのトナー像の転写と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが2次転写部に搬送される。2次転写部に搬送された用紙Pは、転写バイアスが印加された2次転写ローラー113によって、中間転写ベルト125上のトナー像を2次転写され、定着器13に搬送される。
定着器13は、熱源により加熱される定着ローラー131と、定着ローラー131に圧接して配設された加圧ローラー132とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。トナー像が定着された用紙Pは第2用紙搬送路114を通って、排出ローラーにより用紙排出トレイ151に排出される。
図2は画像読取装置20の構成を示す断面図である。画像読取装置20は、原稿台であるコンタクトガラス35と、コンタクトガラス35の下方に配設される第1キャリッジ50と、第1キャリッジ50の左方に配設される第2キャリッジ60と、第2キャリッジ60の右方に配設される光電変換部70とを備える。
第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60は、図示しない走査機構部に夫々接続されており、各走査機構部が所定の速度で図2の左右方向に移動することにより、コンタクトガラス35上に載置された原稿Mを露光走査し、原稿M全面を読み取ることができる。
第1キャリッジ50は、コンタクトガラス35上の原稿Mに向けて、主走査方向(図2の紙面の表裏方向)に広がる照明光を照射する照明部51と、原稿Mからの反射光を第2キャリッジ60に向けて反射する第1ミラー52とを備える。第1ミラー52は垂直方向に対して45度傾斜して第1キャリッジ50に保持される。
第2キャリッジ60は、第1ミラー52に水平方向で対向して配置される第2ミラー61と、第2ミラー61の下方で対向して配置される第3ミラー62とを備える。第2ミラー61は、垂直方向に対して第1ミラー52と同じ方向に45°傾斜して第2キャリッジ60に保持される。第3ミラー62は、垂直方向に対して第2ミラー61の反対方向に45°傾斜して第2キャリッジ60に保持される。
従って、第1キャリッジ50の第1ミラー52で反射された光は水平方向に進行して第2ミラー61に至り、第2ミラー61で反射した光は下方に進行して第3ミラー62に至り、第3ミラー62で反射した光は水平方向に進行して光電変換部70へ導かれる。
光電変換部70は、結像レンズ71と、結像レンズ71の右方に配置されるセンサー部であるイメージセンサー72とを備え、画像読取装置20の装置本体20aに固定される。結像レンズ71は、第3ミラー62を介して入射した原稿Mの反射光をイメージセンサー72上に結像させる。イメージセンサー72は、主走査方向(図2の紙面の表裏方向)に配列されたCCD等の受光素子を有し、結像レンズ71により結像された原稿Mの光学像を電気信号に変換する。
原稿Mをコンタクトガラス35に載置した状態で原稿画像を読み取る場合、第1キャリッジ50の照明部51により原稿Mを照明するとともに、第1キャリッジ50は、図2に示す初期位置から所定の速度で右方向(副走査方向)へ原稿Mの右端部である終端位置まで移動する。また、第2キャリッジ60は、図2に示す初期位置から第1キャリッジ50と連動しながら第1キャリッジ50の1/2の速度で右方向(副走査方向)に移動する。副走査方向の各移動位置において、第1キャリッジ50の照明部51の照明光による原稿Mからの反射光は、第1ミラー52によって第2キャリッジ60の第2ミラー61に向けて反射される。第2キャリッジ60では、原稿Mからの反射光は、第2ミラー61から第3ミラー62へ反射され、さらに第3ミラー62から光電変換部70の結像レンズ71に導かれ、結像レンズ71によってイメージセンサー72上に結像させられる。イメージセンサー72上に結像した原稿像は電気信号に変換されて、画像データが形成される。このように、照明部51が原稿Mを照明しながら第1キャリッジ50が初期位置から終端位置まで移動することで、原稿Mの全画面の原稿像が読み込まれ、読み込みが完了すると、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60は各初期位置に戻る。
シートスルータイプで原稿Mの画像を読み取る場合、第1キャリッジ50及び第2キャリッジ60は図2の初期位置に保持された状態にあり、図示しない原稿搬送装置によって原稿Mがコンタクトガラス35上を搬送されることにより、コンタクトガラス35上の初期位置に対向した位置で原稿Mの原稿像が副走査方向に順次読み取られて、画像データが形成される。
次に、図3を用いて、画像読み取りと画像処理の構成及び制御について説明する。図3は、画像読取部80及び画像処理部90の構成を示すブロック図である。
画像形成装置10は、原稿画像及びサンプル画像(詳細は後述)を読み取る画像読取部80と、画像読取部80が読み取った原稿画像データを補正する画像処理部90と、画像処理部90によって原稿画像データを補正する際に用いるデータを保存する記憶部100と、画像処理部90による画像処理後のデータが入力される画像形成部12と、を備える。また、画像形成装置10は、図示しないインターフェイス部を介して調整データ生成装置110(図5参照)等の外部装置とデータを送受信することが可能である。画像読取部80、画像処理部90、画像形成部12及びインターフェイス部は、図示しないROM、RAM等の記憶装置に保存された制御プログラムや各種データに基づいてCPU(中央演算処理装置、図略)によって制御される。
画像読取部80は、コンタクトガラス35上の原稿画像、或いはサンプル画像からの反射光に基づき各画像を読み取り、各画像データを生成するために、前述のイメージセンサー72とA/D変換部81を備える。
イメージセンサー72は、主走査方向にライン状に配列された複数の受光素子を有し、主走査方向に並んだ受光素子(画素)の画像を同時に読み取る。そしてイメージセンサー72は、受光した光量に応じて画素ごとに電流(電圧)に変換し、1ラインごとに各画素の電流をA/D変換部81に出力する。この場合、各画素の複数の色成分(本実施形態では例えばR、G、Bの3成分)の光量に応じて電流(電圧)を出力する。
A/D変換部81は、イメージセンサー72から出力される1ラインの各画素の電流の大きさに応じて、画素ごとに量子化して、画像データを生成し、1ラインごとに各画素の画像データを画像処理部90に出力する。画素の画像データは、例えば0〜255の256階調(階調値、8ビット)の多値データからなる。
画像処理部90は、画像データに関する演算を行うとともに画像処理を行い、CPU及びRAM、ROM84等のメモリや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、LSI、各種IC等の電子部品を組み合わせて構成される回路である。画像処理部90は、位置補正手段である位置補正部91と、位置及び色収差補正手段である位置及び色収差補正部92と、画像鮮鋭化手段である画像鮮鋭部93、及び画像データ出力部94を備えており、位置補正、色収差補正、画像鮮鋭化、及び画像データ出力の各機能が実現される。
位置補正部91は、画像読取部80で読み取った原稿画像データの1ラインごとの主走査方向の位置ズレを1画素単位で補正し、各ラインの画像データが副走査方向に不揃いになることを防ぐものである。記憶部100の第1の位置誤差保存部101に格納されたデータに基づいて、読み取った各ラインの主走査方向の位置ズレが1画素単位で補正される。
位置及び色収差補正部92は、読み取った原稿画像データの1ラインごとの主走査方向の位置ズレを1画素未満の単位で補正するとともに、結像レンズ71(図2参照)の倍率色収差によって発生する原稿画像データの色ズレを補正するものである。記憶部100の第1の位置誤差保存部101に格納されたデータに基づいて、読み取った各ラインの主走査方向の位置ズレが1画素未満の単位で補正される。また、記憶部100の第2の位置誤差保存部102に格納されたデータに基づいて、例えばR成分に対してG成分及びB成分の各画素データの主走査方向の位置ズレが1画素未満の単位で補正される。各ラインの主走査方向の1画素未満の位置ズレの補正と、色収差に対する1画素未満の画素の位置ズレ補正は一括して行われる。
位置及び色収差補正部92によって各画素データの位置ズレを補正した場合、画素データの位置ズレを補正することで、原稿画像データの画質が低下するが、画像鮮鋭部93は、この画像の低下を矯正するものである。記憶部100のエッジ強調データ保存部103に格納されたデータを、原稿画像データの画素の位置調整量(シフト量)に応じて変更し、変更したデータに基づいて原稿画像データを鮮鋭なものに補正する。
画像データ出力部94は、画像処理後のデータを画像形成部12の露光部124に出力する際、露光部124がレーザー光を画像データにあわせて出力できるように、データ変換等を行いつつ画像データを出力する。
図4、図5を用いて記憶部100に格納された各データの生成について説明する。図4は、記憶部100に格納する位置誤差データ及びエッジ強調データを生成するためのサンプル画像SPを示す図である。図5は、位置誤差データ及びエッジ強調データを生成する装置の構成を示す斜視図である。尚、図5では画像形成装置10の画像読取装置20のみを示している。
図4に示すように、サンプル画像SPは、副走査方向Yに直線状に延びる第1基準画像S1と、主走査方向Xに等間隔に並列される複数の直線状の第2基準画像S2と、主走査方向Xの複数の位置に配置される分解能測定のための第3基準画像と、からなる。サンプル画像SPは、読取可能な最大の原稿サイズと同じ大きさで形成される。
第1基準画像S1は、主走査方向Xの左端に配置され、副走査走行方向Yには、最大の原稿サイズの読み取り範囲に配置される。第2基準画像S2は、副走査方向Yの上端(原稿画像の読み取りの初期位置に対応)に配置され、主走査方向Xには、最大の原稿サイズの読み取り範囲と略同じ領域内に形成される。第1基準画像S1の副走査方向Yの一部が第2基準画像S2の主走査方向Xの一部と兼用されている。第3基準画像S3は、第2基準画像S2に対し副走査方向Yに隣接して配置されるとともに、主走査走行方向Xには、最大の原稿サイズの読み取り範囲に配置される。第3基準画像S3は、単位長さ当たり所定本数の縞のチャートが形成され、そのチャートが主走査方向Xに複数個配置されたものである。尚、第1〜第3基準画像S1〜S3は、最大の原稿サイズの読み取り範囲ならば、サンプル画像SPの全画面のどこにあってもよい。また、第1〜第3基準画像S1〜S3を夫々別のサンプル画像SPに形成してもよい。
図5に示すように、サンプル画像SPは、画像読取装置20のコンタクトガラス35上の所定の基準位置に載置される。サンプル画像SPの第1〜第3基準画像S1〜S3(図4参照)は画像読取部80(図3参照)によって読み取られる。サンプル画像SPを読み取る場合、原稿画像を読み取る場合と同様に、走査機構部によって第1及び第2キャリッジ50、60(図2参照)が副走査方向に走査され、サンプル画像SPの反射光が結像レンズ71(図2参照)によって画像読取部80のイメージセンサー72(図3参照)上に結像させられる。画像読取部80は、イメージセンサー72上の画像から第1〜第3基準画像S1〜S3の画像データを生成する。
第1〜第3基準画像S1〜S3の画像データは、画像形成装置10から調整データ生成装置110に送信される。調整データ生成装置110は、第1〜第3基準画像S1〜S3の画像データに基づいて、第1の位置誤差データと第2の位置誤差データ及びエッジ強調データを算出し、算出したこれらの調整データを画像形成装置10に送信するものである。画像形成装置10及び調整データ生成装置110間のデータの送受信と、調整データ生成装置110による調整データの生成は、画像形成装置10の組み立て及び調整が完了し、画像形成装置10が工場から出荷される前に行われる。調整データが画像形成装置10の記憶部100(図3参照)に書き込まれると、調整データ生成装置110が画像形成装置10から取り外され、画像形成装置10が出荷される。
図6〜図8を用いて第1の位置誤差データの生成について説明する。図6は、サンプル画像SPの第1基準画像S1を読み取ったときの画像データを示す図である。図7は、第1の位置誤差データを生成する手順を示すフローチャートである。図8は、第1の位置誤差データの保存形式の一例を示す図である。尚、図8では、実施形態の説明が煩雑にならないようにするために、副走査方向Yの全画素をY1〜Y7として画素の数を少なくしている。
図6に示すように、サンプル画像SPの第1基準画像S1に対して、その画像データSd1(破線で示す)が傾斜して読み取られることがある。第1基準画像データSd1の傾斜は、画像読取装置20を構成する部品及び組み立ての精度が低下することにより、第1及び第2キャリッジ50、60(図2参照)がコンタクトガラス35上のサンプル画像SPに対して傾斜した状態で走査されることに起因して発生する。原稿画像を読み取る場合にも、サンプル画像SPと同様に、画像データの傾斜は発生する。
画像データの傾斜を解消するために、第1の位置誤差データが第1基準画像データSd1に基づいて生成される。
図7に示すステップ1では、画像形成装置10の画像読取部80により第1基準画像S1が読み取られ、第1基準画像データSd1が1ラインごとに生成される。生成された第1基準画像データSd1は1ラインごとに画像形成装置10から調整データ生成装置110に送信される。
ステップ2では、調整データ生成装置110によって、第1基準画像データSd1の各ラインの主走査方向の位置ズレ量が算出される。ステップ3では、各ラインの位置ズレ量が1画素単位と1画素未満の例えば1/8画素単位とに分割される。第1の位置誤差データとして、1画素単位の位置ズレ量と、1画素未満の位置ズレ量が生成される。
ステップ4では、各ラインの第1の位置誤差データは調整データ生成装置110から画像形成装置10に送信され、記憶部100の第1の位置誤差保存部101に書き込まれる。
図8に示すように、記憶部100に保存された第1の位置誤差データは、1画素単位の位置ズレ量を整数部mとして、また1画素未満の位置ズレ量は、n/8の分子の値が小数部nとで構成される。例えば、副走査方向Y1のラインにおいて、走査位置ズレがない場合、整数部mは0が記憶され、小数部nは0が記憶される。また、副走査方向Y7のラインにおいて、1画素と6/8画素の走査位置ズレがある場合、整数部mには1が記憶され、小数部nには6/8の分子の値6が記憶される。副走査方向Y2〜Y6のラインも、上記同様に整数部mと小数部nが記憶される。原稿画像を読み取る場合、図8に示す誤差データテーブルに基づいて、原稿画像データの各ラインの位置が補正される。このように走査位置ズレが記憶されることで、記憶部100の容量が小さくて済む。尚、誤差データテーブルは、副走査方向Yの全てのラインにおいて第1の位置誤差データを記憶することに替えて、全てのラインのうち所定間隔で並ぶ複数のラインにおいて第1の位置誤差データを記憶し、データを記憶していないラインについては、複数のラインの各第1の位置誤差データに基づいて線形補間するように構成してもよい。この構成では、記憶部100の容量が更に小さくて済む。
次に、図9〜図11を用いて第2の位置誤差データの生成について説明する。図9は、サンプル画像SPの第2基準画像S2を読み取ったときの画像データを示す図である。図10は、第2の位置誤差データを生成する手順を示すフローチャートである。図11は、第2の位置誤差データの保存形式の一例を示す図である。尚、図11では、実施形態の説明が煩雑にならないようにするために、主走査方向Xの全画素をX1〜X9として画素の数を少なくしている。
図9に示すように、サンプル画像SPの第2基準画像S2(図4参照)は、R、G、Bの各色成分の画像データS2r、S2g、S2bとして読み取られる。第2基準画像S2の複数の線は所定のピッチ間隔で配列されているが、第2基準画像データS2r、S2g、S2bは、結像レンズ71(図2参照)の倍率色収差により、夫々各線のピッチ間隔が異なる。例えば、画像データS2rのピッチ間隔に対して、画像データS2gのピッチ間隔は狭いため、S2rとS2gの誤差は中央部から端部に向かうにつれて徐々に大きくなっている。また、画像データS2bのピッチ間隔はS2gよりもさらに狭いため、S2rとS2gの誤差は中央部から端部に向かうにつれてさらに大きくなっている。これは結像レンズ71の倍率色収差に起因するものであるために、色成分によるピッチ間隔のズレは、走査すると各ラインにおいて同じように出現する。また、原稿画像を読み取る場合にも、サンプル画像SPと同様に、画像データの色ごとのピッチ間隔のズレは発生する。
画像データの色ごとの位置ズレを解消するために、第2の位置誤差データが第2基準画像データS2r、S2g、S2bに基づいて生成される。
図10に示すステップ11では、画像形成装置10の画像読取部80により、第2基準画像S2が読み取られ、第2基準画像データS2r、S2g、S2bが複数のラインにおいて生成される。第2基準画像データS2r、S2g、S2bが画像形成装置10から調整データ生成装置110に送信される。
ステップ12では、調整データ生成装置110は、複数のラインの第2基準画像データS2r、S2g、S2bの中から所定の一つのラインの第2基準画像データS2r、S2g、S2bを選択する。この第2基準画像データS2r、S2g、S2bに基づいて、基準色(例えば赤色)に対する他の色(例えば緑色、青色)の位置ズレ量(第2の位置誤差データ)が算出される。第2の位置誤差データは、所定のラインにおいて、基準色の画素に対応する位置にあるべき他の色の画素の位置ズレであって、主走査方向の1画素以内の位置ズレとして現れる。尚、基準色は緑色或いは青色であってもよい。
ステップ13では、第2の位置誤差データが調整データ生成装置110から画像形成装置10に送信され、記憶部100の第2の位置誤差保存部102に書き込まれる。
図11に示すように、記憶部100は、主走査方向Xの各画素(X1〜X9)において、基準色に対する画素データの位置ズレがn/8である場合、n/8の分子の値nを位置ズレ補正係数として記憶する。原稿画像を読み取る場合、図11に示す誤差データテーブルに基づいて、原稿画像データの各ラインの画素の色成分による位置ズレが補正されることで、結像レンズ71の倍率色収差が補正される。尚、図9では、倍率色収差による画像データの位置ズレは、ラインの中央部(結像レンズ71の光軸)を基準としているが、図11の誤差データテーブルでは、ラインの左端部の画素(画素X1)を基準(位置ズレn=0)に変換している。
次に、図12〜図14を用いてエッジ強調データの生成について説明する。図12は、サンプル画像SPの第3基準画像S3を読み取ったときのMTF(Modulation Transfer Function)特性を示す図である。図13は、エッジ強調データを生成する手順を示すフローチャートである。図14は、エッジ強調データの保存形式の一例を示す図である。尚、MTF特性は、所定の空間周波数(単位長さ当たり所定本数の縞、図4の第3基準画像S3)のチャート画像に対する結像レンズ71(図2参照)によるチャート画像の分解能を示すものである。図12の縦軸には、結像レンズ71の分解能を示すMTF(単位:%)をとっている。図12の横軸はイメージセンサー72の主走査方向Xの位置を示し、その中央部は結像レンズ71の光軸に対応し、その端部は結像レンズ71の周辺に対応している。また、
図12に示すように、サンプル画像SPの第3基準画像S3(図4参照)を読み取ると、MTFは、主走査方向Xの中央部で大きく、両端部に向かうに従って徐々に小さくなっている。端部側のMTFの低下は、結像レンズ71のレンズ収差等の光学特性に起因するものである。結像レンズ71の光学特性に起因するものであるために、走査すると各ラインの両端部側において同じようにMTFの低下が出現する。原稿画像を読み取る場合にも、画像データの両端部側ではMTFが低下している。
画像データの両端部側におけるMTFの低下を解消するために、エッジ強調データが第3基準画像S3を読み取ったときのMTF特性データに基づいて生成される。
図13に示すステップ21では、画像形成装置10の画像読取部80により、第3基準画像S3が読み取られ、前述のMTF特性に対応した第3基準画像データが複数のラインに生成される。第3基準画像データが画像形成装置10から調整データ生成装置110に送信される。
ステップ22では、調整データ生成装置110は、複数ラインの第3基準画像データの中から所定の一つのラインの第3基準画像データを選択する。この第3基準画像データに基づいてエッジ強調データが作成される。エッジ強調データは、MTFが低下した画素を補正し、一つのラインにおける画素間のMTFを均一にするためのエッジ強調フィルターに用いられる係数である。
ステップ23では、エッジ強調データが調整データ生成装置110から画像形成装置10に送信され、記憶部100のエッジ強調データ保存部103に書き込まれる。
図14に示すように、記憶部100には、主走査方向Xの各画素(X1〜X9)に対して、各エッジ強調係数が記憶される。画素X5はラインの中央部であり、MTFの低下が
小さいので、画素X5のエッジ強調係数は小さく、一方、画素X1、X9はラインの端部
であり、MTFの低下が大きいので、画素X1、X9のエッジ強調係数は大きく設定され
る。原稿画像を読み取る場合、図14に示すエッジ強調テーブルの係数を用いて原稿画像データにエッジ強調フィルターをかけることで、原稿画像データの各画素のMTFが均一になるように補正される。
上記の記憶部100の調整データを用いて、画像処理部90は原稿画像データの画像処理を行う。図15は、原稿画像データの画像処理の手順を示すフローチャートである。図16は原稿画像データの所定のラインの画像データを示す図である。図17は、1画素未満の単位でラインの走査位置ズレを補正する場合の原稿画像データの各画素の補正係数を示す図である。図18は、1画素未満の単位でラインの走査位置ズレを補正するための補正係数と、色収差を補正するための補正係数とを合算した場合の原稿画像データの各画素の補正係数を示す図である。図19は原稿画像データの各画素のエッジ強調補正係数を示す図である。
図15に示すステップ31では、画像読取部80が原稿画像を読み取り、イメージセンサー72の1ラインごとの原稿画像データを生成する。原稿画像データは1ラインごとに画像読取部80から画像処理部90に出力される。
ステップ32では、画像処理部90の位置補正部91は、原稿画像データの各ラインの主走査方向の位置を揃えるために、各ラインを主走査方向Xに位置調整(シフト)する。
具体的には、位置補正部91は、記憶部100に保存された第1の位置誤差データに基づいて、原稿画像データの1ラインごとに1画素単位で主走査方向にシフトする。例えば、位置補正部91は、第1の位置誤差データテーブル(図8参照)の整数部mを参照し、画素Y6及びY7のラインが夫々整数部m=1であることから、画素Y6のライン及び画素Y7のラインを夫々1画素だけ主走査方向にシフトさせる。一方、画素Y1〜Y5の各ラインでは、整数部m=0であるので、1画素単位の画素のシフト補正が実行されない。
次に、ステップ33では、位置及び色収差補正部92は、1画素未満の第1の位置誤差データに基づく主走査方向の1画素未満のシフト量と、第2の位置誤差データに基づく主走査方向の1画素未満のシフト量と、を合算する。
具体的には、記憶部100に保存された第1の位置誤差データの小数部nの係数を参照して、例えば、原稿画像データの各画素に、図17に示すように画素Y1〜Y7の各ラインに補正係数を分布させる。尚、図17補正係数は、1/8画素単位のシフト補正における分子の値を示す。
また、記憶部100に保存された第2の位置誤差データ(図11参照)を参照して、原稿画像データの画素Y1〜Y7の各ラインの画素に補正係数を分布させる。尚、この補正係数は、1/8画素単位のシフト補正における分子の値を示す。
次に、画素ごとに、1画素未満の第1の位置誤差データに関わる補正係数と第2位置誤差に関わる補正係数とを合算する。画素ごとに各補正係数を合算すると、図18に示すように補正係数が分布することになる。
図15に示すステップ34では、原稿画像データのラインの位置補正と色収差補正を1画素未満の画素単位で一括して行うために、合算した補正係数に基づいて、シフト補正が行われる。
具体的には、シフト補正は平滑化フィルターをよって行われる。平滑化フィルターによる処理は、シフトする注目画素の階調値と、注目画素の主走査方向の一方の隣接画素の階調値との平均を求めるものである。例えば、画素Y2のラインでは、各画素は、図16に示す階調値を有するものとする。ここで、画素Y2のラインにおける注目画素を画素X5とすると、画素X5は、補正係数が2(図18参照)であるので、2/8画素だけ主走査方向にシフトさせる必要がある。注目画素X5に対して、隣接画素は画素X6である。従って、シフト補正後の画素X5の階調値は、式(1)となる。
シフト補正後の画素X5の階調値=(g5×6+g6×2)/(6+2)…式(1)
尚、式(1)において係数2は2/8画素の分子の値(n=2)に対応し、係数6は2/8画素と合算すると1画素となる6/8画素の分子の値に対応する各数値である。
図18に示す画素Y2ラインの他の画素X1〜X4、X6〜9を夫々注目画素として、
式(1)に各画素の補正係数を置き換えて演算することで、画素Y2のライン全ての画素のシフト補正が行われる。
画素Y3〜Y7の各ラインの画素についても、図18に示す各画素の補正係数に基づいて平滑化フィルター処理を施すことで、各ラインの画像の濃度(画素の階調値)をなだらかに変化させることができる。また、各補正係数を画素ごとに合算し、合算した補正係数に基づいて、画素のシフト補正を行うことで、原稿画像データの1画素未満のラインの位置補正及び色収差補正を一括して行うことができる。このことにより、画像処理部90のASIC等の電子部品の構成が簡素化されコストダウンすることができる。また、原稿画像データの1画素未満のラインの位置補正と色収差補正を夫々別に実行する場合に対してMTFの低下が抑えられる。
上記ステップ34では、原稿画像データの画素を1/8画素の単位で主走査方向にシフトさせているが、1/8画素の単位のシフト補正に限らず、1/8画素の単位から1/32画素の単位の範囲で主走査方向にシフトさせるのが望ましい。原稿画像データの画素を1/8画素の単位より大きい単位でシフトさせると、各ラインの画像の不揃いが目立ち、また、色補正が充分でなく、画像の色ズレが目立つことになる。一方、原稿画像データの画素を1/32画素の単位より小さい単位でシフトさせると、記憶部100の容量が大きくなり、また画像処理部90の画像処理にかかる時間が長くなる。
次に、ステップ35では、画像処理部90の画像鮮鋭部93は、原稿画像データの画質の低下(MTFの低下)を矯正するために、記憶部100のエッジ強調データ保存部103に格納されたデータ(エッジ強調係数)を、原稿画像データの画素のシフト量に応じて変更し、更に、ステップ36では、画像鮮鋭部93は、変更したエッジ強調係数に基づいて原稿画像データを鮮鋭なものに補正する。原稿画像データのMTFの低下は、ステップ34の補正により原稿画像データの画素を1画素未満でシフトさせることで発生する。尚、補正係数の合算により補正係数が変化すると、原稿画像データのMTFが変化するが、画素のシフト量が画素の1/2になると、原稿画像データのMTFが最も低下する。
そこで、図15のステップ35では、エッジ強調テーブル(図14参照)のエッジ強調係数を、ステップ34において合算した補正係数(図18参照)に基づいて変更する。
ここで、エッジ強調テーブル(図14参照)に基づいて原稿画像データを補正する場合、原稿画像データの画素Y1〜Y7の各ラインの画素には、図19に示すようにエッジ強調係数が分布する。小さい値のエッジ強調係数は、画素Y1〜Y7ラインの中央部(画素X5の近傍)に分布し、一方、大きい値のエッジ強調係数は、画素Y1〜Y7ラインの端部側(画素X1、X2、X8、X9)に分布している。これによって、結像レンズ71の光学特性に起因する原稿画像データのMTFの低下は補正される。更に、ステップ34における原稿画像データの各画素のシフト補正に起因するMTFの低下を補正するために、エッジ強調テーブルのエッジ強調係数を変更する必要がある。
ステップ34における補正のための補正係数(図18参照)を、その数値の大きさに応じて区分し、その区分ごとにエッジ強調係数に重み付けする。
例えば、図18に示す補正係数が2及び3である場合、補正係数2及び3に対応する画素では、図19に示すエッジ強調係数に1を加算する重み付けを行う。図18の画素(X4、Y3)の場合には、画素(X4、Y3)の補正係数が2であるので、図19に示す画素(X4、Y3)のエッジ強調係数4に1を加算して、エッジ強調係数を5に変更する。
また、図18に示す補正係数が4及び5である場合、補正係数4及び5に対応する画素では、図19に示すエッジ強調係数に2を加算する重み付けを行う。さらに、ステップ34における補正のための補正係数が6及び7である場合、補正係数6及び7に対応する画素では、図19に示すエッジ強調係数に3を加算する重み付けを行う。
このように、ステップ34における補正のための補正係数が大きくなると、その補正係数に対応する画素のエッジ強調係数の重み付けが大きくなるように変更する。
ステップ36では、変更したエッジ強調係数を用いて原稿画像データの各画素にエッジ強調フィルターをかける。エッジ強調フィルターによる処理は、鮮鋭化する(MTFを向上させる)注目画素の階調値と、注目画素に主走査方向の両側に隣接する各画素の階調値と注目画素の階調値との差分を求め、各差分に係数を積算してから注目画素の階調値を加算するものである。
即ち、注目画素の階調値をga、一方の隣接画素の階調値をgb、他方の隣接画素の階調値をgcとして、エッジ強調係数をpとし、エッジ強調フィルター処理を1/q画素単位で行うものとすると、
フィルター処理後の注目画素の階調値=[ga×(q−p)+(ga−gb)×p+(ga−gc)×p]/(q−p)…式(2)
で表せる。
画素(X1、Y1)〜画素(X9、Y7)の各画素を注目画素して、式(2)によりフィルター処理することで、結像レンズ71の光学特性に起因する原稿画像データのMTFの補正とともに、原稿画像データの各画素のシフト補正に起因するMTFの低下を補正することができる。
ステップ37では、上記の画像処理された原稿画像データが画像処理部90から画像形成部12に出力される。
上記実施形態によれば、記憶部100は、第1の位置誤差データ、第2の位置誤差データ及びエッジ強調データを記憶する。この構成により、画像処理部90を機能させるASIC等の電子部品の構成が簡素化されるために、画像処理時間が短縮され、また電子部品をコストダウンすることができる。
尚、上記実施形態では、調整データ生成装置110によって第1の位置誤差データ、第2の位置誤差データ及びエッジ強調データを生成する構成を示したが、本発明はこれに限らず、原稿画像の読み取りの直前に、画像処理部90によって第1の位置誤差データ、第2の位置誤差データ及びエッジ強調データを生成し、画像処理部90が第1の位置誤差データ、第2の位置誤差データ及びエッジ強調データを用いて主走査方向の位置ズレの補正、色収差補正、及びエッジ強調処理を実行してもよい。