以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、以下の実施の形態において、構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態の基板の成膜処理で用いられる成膜装置の反応室の構造の一例を一部断面にして示す概念図、図2は図1に示す反応室が設けられた成膜装置の全体構造の一例を内部を透過して示す斜視図である。
最初に、本実施の形態の成膜処理で用いられる図1に示す反応室44と、図2に示す成膜装置全体の構造について説明する。
まず、図1に縦型SiC 成膜装置の反応室及びその周囲の構成を説明する。反応室44及びその周囲には、反応空間を形成する主に石英からなる反応管42、ウエハホルダ100によって保持された図8に示すウエハ(半導体ウエハ)14を処理温度に加熱するための誘導コイル50、誘導コイル50を支持する絶縁物質(例えばアルミナなどのセラミック材)からなる支持体51及び誘導コイル50によって発生するうず電流により発熱するSiC を表面にコーティングしたカーボングラファイトからなる被加熱体48、処理温度に加熱された被加熱体48から放射されるふく射熱により反応管42の壁の温度が上昇するのを防止する炭素繊維(カーボンフェルト)を主体とする断熱材54が設けられ、さらに、反応管42の外側には、電磁波及び熱の外部への漏洩を防止する筐体カバー58が設けられ、反応管42と筐体カバー58の間のヒータ室58aには、水冷パルプ55aが設けられた水冷板55が設置されている。
また、反応室44には、ウエハ14の裏面成膜を防止するSiC コーティングされたカーボングラファイトからなるウエハホルダ100、ウエハ14がセットされたウエハホルダ100を複数枚積層状態に保持し、かつ表面がSiC コーティングされたカーボングラファイトからなるボート30、ウエハ14に対して原料ガスを供給する原料タンク70a,70b,70c,70dとバルブ74a,74b,74c,74d、流量調節器(マスフローコントローラとも呼ぶ)72a,72b,72c,72dを介して連結されたガスノズル62,65、各ウエハ14間に均一なガス流れを形成するための圧力調整弁79を介してポンプ80と連結された排気ノズル66、反応室44の下部のシール部材の温度上昇を防止する下部断熱手段34、ウエハ14上の膜厚が均一となるよう処理中にウエハ14を回転させるための回転軸104、積層されたウエハ14を反応室44にロード・アンロードする上下動手段(図示せず)に連結された反応室44の下部の開口部を密閉するシール体102等が設けられている。
なお、ガスノズル62は、カーボン系原料を供給し、かつ石英からなり、その先端側には、グラファイトからなる供給ノズル62aが取り付けられている。また、ガスノズル65は、Si系原料を供給し、かつ石英からなる。
一方、排気ノズル66は、石英からなり、その先端側には、グラファイトからなる排気ノズル66aが取り付けられている。
次に、図1に示す縦型SiC 成膜装置の作用について説明する。
シール体102上に固定され、かつウエハ14がそれぞれにセットされた複数枚のウエハホルダ100を搭載したボート30を上下動手段(図示せず)により反応室44にロードして反応室44の空間を密閉する。そして、炉内に不活性ガス(例えばAr等)を導入しながら排気管76や圧力調整弁79を介して接続されたポンプ80により反応室44の空間を所望の圧力にする。反応室44の外周部に設けられた誘導コイル50に高周波電力(例えば10〜100KHz 、10〜200 KW )を印加して被加熱体48に渦電流を発生させ、ジュール熱により所望の処理温度(1500〜1800℃)に加熱する。これにより、被加熱体48より内側に配置されたウエハ14、ウエハホルダ100及びボート30は、被加熱体48より放射されるふく射熱により被加熱体48の温度と同等の温度に加熱される。
一方、反応室44の下部の開口部の周辺においては、シール部材(Oリング等)の耐熱性から下部断熱手段34により温度を低く(200℃程度)維持している。処理温度(1500〜1800℃)に維持されたウエハ14に対してガスノズル65とガスノズル62及び供給ノズル62aよりキャリアガスを混合したSi系原料(図示ではSiCL4 、その他SiH4、TCS 、DCS 等)とカーボン系材料(図示ではC3H8、その他C2H4等)を供給しつつ、バルブ(圧力調整弁)74dによって反応室44内を所望の圧力に制御しながらSiC エピタキシャル成膜処理を行う。成膜処理中はウエハ14面内の均一性を確保するため、回転軸104により回転する。
なお、キャリアガス(H2)の漏洩による爆発を防止するために、反応管42の外側にライナーチューブ(石英管)45を設置する。また、ガスを供給したり、排気の起点となるポートを具備しているインレットアダプタ59からの漏洩による爆発を防止するために、その周辺にスカベンジャー46を設置する。さらに、反応管42とライナーチューブ45との間の空間とスカベンジャー46は、ヒータベース47を境にして同一雰囲気化されている。
ここで、ライナーチューブ45にはその内側に溶接された上部開口ノズル49があり、接続口よりN2を供給することで、ライナーチューブ45の上部より下部のスカベンジャー46側に大気が押し出され、徐々にN2雰囲気化されていく。押し出された大気は、ヒータベース47に開いている穴を通してダクト43に接続されており、ここより排気される。なお、スカベンジャー46の下は、インレットアダプタ59と密閉可能な構造となっている。ダクト43はガス検知器39と接続されており、O2やH2が検知できるようになっている。このような構造により、反応管42の外にH2が漏洩した場合、大気混合による爆発を未然防止することが可能となり、かつ漏洩も検知できるようになっている。
次に、図2を用いて縦型SiC 成膜装置を含む全体構成である熱処理装置(基板処理装置)10の構成について説明する。
図2に示す熱処理装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、基板熱処理のための主要部が配置される筺体12を有している。なお、熱処理装置10では、例えば、SiC で構成される基板である図8のウエハ14を収納する基板収容器としてのフープ(以下、ポッドともいう)16が、ウエハキャリアとして使用される。ポッド16は、複数枚のウエハ14またはウエハホルダ100をそれぞれ所定の間隔を設けて高さ方向に積層して収納可能な容器(搬送装置)である。
前記筺体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、このポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウエハ14またはウエハホルダ100が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18にセットされる。
筺体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。また、このポッド搬送装置20の近傍には、ポッド棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド棚22はポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。また、基板枚数検知器26はポッドオープナ24に隣接して配置される。ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18とポッド棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は蓋が開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知する。
また、筺体12内には、基板移載機28、基板支持具としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツイーザ)32を有し、図示しない駆動手段により上下回転動作が可能な構造となっている。アーム32は、例えば5枚のウエハ14やウエハホルダ100を取り出すことができ、このアーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にて、ウエハ14やウエハホルダ100を搬送する。
ボート30は、例えばカーボングラファイトや炭化珪素等の耐熱性材料で構成され、複数枚のウエハ14やウエハホルダ100を水平姿勢で、かつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に多段に保持するように構成されている。なお、ボート30の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成される円板形状をした断熱部材としてのボート断熱部35が配置されており、サセプタである被加熱体48(図1参照)からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなるよう構成されている。
図2に示す熱処理装置10では、筺体12内の背面側の上部には処理炉40が配置されており、この処理炉40内に複数枚のウエハ14またはウエハホルダ100を装填したボート30が搬入され熱処理が行われる。
熱処理装置10において、ウエハキャリアとして用いられるポッド(フープ)16内には、後述する図6に示すようなブリッジツール88が設けられていても良い。このブリッジツール88は、大口径ウエハ用のポッド16であっても小口径のウエハ14を収納可能にするために、小口径のウエハ14の外周部に対応した形状(大きさ)で設けられたウエハ支持部(レール部)88dを複数段に亘って有しており、このブリッジツール88を配置することで、大口径ウエハ用のポッド16であっても小口径のウエハ14やウエハホルダ100を使用することができる。
つまり、本実施の形態の小口径のウエハ14は、まずウエハホルダ100によって保持され、ウエハホルダ100に保持された状態でポッド(フープ)16内に収納される。
したがって、熱処理装置10を用いたSiC のウエハ14の熱処理(成膜処理)では、ウエハ14を保持したウエハホルダ100を精度良く、ポッド16内のブリッジツール88内に収納することが、最終的に熱処理装置10のボート30にウエハホルダ100を移載した時のボート30上でのウエハホルダ100の姿勢の精度につながることになる。
すなわち、ウエハ14を保持したウエハホルダ100をポッド16に収納する際のウエハホルダ100の姿勢精度が、成膜処理において非常に重要になる。
本実施の形態では、ウエハ14を保持したウエハホルダ100をポッド16内に収納する際に、治具(基板搬送治具)を用いてポッド16への収納を行う。
次に図3〜図7を用いて、本実施の形態の基板搬送治具の構造と、ウエハホルダ100の前記基板搬送治具を用いたポッド(フープ)16への収納方法について説明する。
図3は本発明の実施の形態の基板搬送治具の構造の一例を示す斜視図、図4は図3に示す基板搬送治具の構造の一例を示す平面図、図5は図3に示す基板搬送治具にウエハホルダを搭載した構造の一例を示す平面図、図6は本発明の実施の形態の基板搬送治具を用いた基板ホルダの搬送装置への設置状態の一例を示す斜視図、図7は本発明の実施の形態の基板搬送治具を用いた基板ホルダの搬送装置への設置時の位置決め状態の一例を一部破断して示す平面図である。
図3に示す基板搬送治具であるウエハ搬送治具90は、図2に示す熱処理装置10で用いられるポッド(フープ:ウエハ14の搬送装置)16に、基板ホルダであるウエハホルダ100によって保持されたウエハ14を収納する際に用いられる治具である。
図3〜図5を用いてウエハ搬送治具90の構造について説明すると、図8に示すようなウエハ14を保持した円盤状のウエハホルダ100を支持する板状の台座部91と、ウエハ搬送治具90をハンドリングする際に作業者が保持する(掴む)部分であるグリップ部93とを有している。グリップ部93は、台座部91に、例えばねじ固定されている。
ここで、台座部91には、上面(表面)91aから一段下がったザグリ面91bが形成されており、このザグリ面91bにウエハホルダ100を搭載する構造となっている。また、上面91aからザグリ面91bに下がる箇所が落とし込み部91c,91d,91eとしてウエハホルダ100の外周部の位置決めを行う部分となっている。すなわち、第1位置決め部である落とし込み部91c,91d,91eは、ウエハホルダ100の外周形状に対応して外周形状に沿った形状となっており、したがって、本実施の形態では、落とし込み部91c,91d,91eがそれぞれウエハホルダ100の外周形状に沿った円弧状に形成されている。
これにより、ザグリ面91bにウエハホルダ100を搭載した際には、図5に示すように、ウエハホルダ100の外周部が円弧状の落とし込み部91c,91d,91eによって位置決めされる。
また、図3及び図4に示すように、ザグリ面91bには、上方に突出した第2位置決め部であるコマ状の突起部91fが3箇所設けられている。この突起部91fは、ザグリ面91bにウエハホルダ100を搭載した際のウエハホルダ100の表面に沿った回転方向の位置決めを行うものであり、図5に示すようにウエハホルダ100に形成された3つの穴である第1連通穴112a、第2連通穴112b、第3連通穴112cにそれぞれ1つずつ突起部91fが入り込んで(配置されることで)、ザグリ面91b上でのウエハホルダ100の回転方向が位置決めされる。
以上の構造により、ウエハ搬送治具90に対するウエハホルダ100の位置決めが行われる。
次に、ウエハ搬送治具90とポッド(フープ)16の位置決めについて説明する。
ウエハ搬送治具90の台座部91の左右両側の側部には、第3位置決め部である位置決めブロック92が取り付けられている。すなわち、位置決めブロック92は台座部91の両側の側部に、例えばねじ固定で取り付けられており、台座部91の側部から外方に向かって突出した突出部92aを備えている。
これにより、ウエハホルダ100をポッド16内に収納する際は、図7のA部に示すように、ポッド16内のウエハホルダ100を支持するレール部(ここでは図6に示すブリッジツール88のウエハ支持部(レール部)88dの端部88e)に位置決めブロック92の突出部92aを突き当ててウエハ搬送治具90とポッド16の位置決めを行う。
さらに、ウエハ搬送治具90の台座部91の先端部には、図3及び図4に示すように、切り欠き部91gが形成されている。この切り欠き部91gは、ウエハホルダ100をポッド16内に収納する際に、図7のB部に示すように、台座部91の切り欠き部91gをブリッジツール88の位置決め柱88fに突き合わせてウエハ搬送治具90の水平方向の回転防止(ウエハ搬送治具90の回転方向の位置決め)を行う。
また、図4に示すウエハ搬送治具90の台座部91のザグリ面91bの最大幅Mは、図7に示すポッド16内のブリッジツール88のウエハ支持部88d間の距離Lより僅かに小さくなっている。
次に、ウエハ搬送治具90を用いたウエハホルダ100のポッド16内への収納動作について説明する。
まず、図5に示すように、図8のウエハ14を保持したウエハホルダ100を、図3及び図4に示すウエハ搬送治具90の台座部91のザグリ面91bに搭載する。その際、台座部91に形成された円弧状の落とし込み部91c,91d,91eによってウエハホルダ100の外周部が位置決めされる。
さらに、ウエハ搬送治具90のザグリ面91bに形成された3つの突起部91fをそれぞれウエハホルダ100の第1連通穴112a、第2連通穴112b、第3連通穴112cに1つずつ配置することで、ザグリ面91bに搭載したウエハホルダ100の回転方向を位置決めする。
この状態で図6及び図7に示すように、作業者がグリップ部93を保持してウエハ搬送治具90を用いてウエハホルダ100のポッド16内への収納を行う。
図6に示すように前面のフタ部16a(図15参照)を開けた状態で、図7に示すようにウエハ搬送治具90に搭載されたウエハホルダ100をポッド16内に収納する。
まず、図7のB部に示すように、台座部91の先端部の切り欠き部91gをブリッジツール88の位置決め柱88fに突き合わせてウエハ搬送治具90の回転方向の位置決めを行うとともに、図7のA部に示すように、フープ16内のブリッジツール88のウエハ支持部88dの端部88eに位置決めブロック92の突出部92aを突き当ててウエハ搬送治具90とポッド16の位置決めを行う。
この時、図7に示すブリッジツール88内の左右のウエハ支持部88d間の距離Lより、図4に示すウエハ搬送治具90の台座部91のザグリ面91bの最大幅Mが僅かに小さいため、ウエハ搬送治具90はブリッジツール88内の左右のウエハ支持部88dによってガイドされ、これによってウエハ搬送治具90は、水平方向及び回転方向が位置決めされる。
その後、ウエハ搬送治具90を僅かに下降させ、ザグリ面91bの3つの突起部91fのそれぞれを、ウエハホルダ100の第1連通穴112a、第2連通穴112b、第3連通穴112cから外してウエハ搬送治具90のみをポッド16内から搬出する(取り出す)。
これにより、ウエハホルダ100は精度高くポッド16内に収納される。
次に、本実施の形態で用いられる基板ホルダであるウエハホルダ100について説明する。
図8は本発明の実施の形態の基板搬送治具によって保持される基板ホルダの構造の一例を示す斜視図、図9は図8に示す基板ホルダにおける反応ガスの消費部分の一例を示す概念図である。
ウエハ14を搭載するウエハホルダ100は、図8、図9に示すように円盤状に形成され、当該ウエハホルダ100は、円環状のホルダベース110と円盤状のホルダカバー120とを備えている。ここで、ホルダベース110及びホルダカバー120においても、何れもSiC 等の耐熱材料によりそれぞれ形成されている。なお、ホルダベース110は本実施の形態におけるウエハホルダを、ホルダカバー120は本実施の形態における蓋部材をそれぞれ構成している。このように、ホルダカバー120によりウエハ14の上面14bを覆う構成とすることにより、ウエハ14の上方側から落下してくるパーティクル(微細ゴミ)からウエハ14を保護することができる。
ウエハホルダ100を構成するホルダベース110の外径寸法は、ウエハ14の外形寸法よりも大きい外径寸法に設定されている。ホルダベース110の中央部分には、ホルダベース110を軸方向に貫通する貫通穴110aが設けられ、当該貫通穴110aの内周縁には環状段差部111が形成されている。この環状段差部111は、ウエハ14を保持するようになっている。
このように、ホルダベース110の環状段差部111にウエハ14を保持させることで、ホルダベース110の中央部分にウエハ14を精度良く位置決め(搭載)することができ、各ボート柱31a〜31cとウエハ14とを遠ざけることができる。また、ウエハ14を環状段差部111に保持させることで、ウエハ14の成膜面となる下面14aを反応室44内の雰囲気に曝すことができる。
ホルダベース110は、本体部112と薄肉部113とを備えており、薄肉部113は、ホルダベース110の他の部分、つまり本体部112よりも薄肉に形成されている。これらの本体部112及び薄肉部113は、それぞれホルダベース110の径方向に沿って対向配置されている。ウエハホルダ100を図2のボート30に移載した状態のもとで、本体部112の各ボート柱31a〜31cに対応する部分には、本体部112の厚み方向、つまりウエハホルダ100の軸方向に沿うよう貫通した第1連通穴112a,第2連通穴112b,第3連通穴112cがそれぞれ設けられている。
各連通穴112a〜112cは、何れも同じ形状に形成され、ホルダベース110の周方向に沿う長穴形状に形成されている。各連通穴112a〜112cのホルダベース110の周方向に沿う長さ寸法は、各ボート柱31a〜31cの幅寸法よりも大きく設定され、一方、各連通穴112a〜112cのホルダベース110の径方向に沿う長さ寸法(幅寸法)は、少なくともホルダベース110の最低限の強度を確保し得る大きい寸法に設定されている。つまり、本体部112の径方向に沿う各ボート柱31a〜31cに対応する部分の幅寸法は、少なくともホルダベース110の最低限の強度を確保し得る小さい寸法(幅狭)に設定されている。
本体部112の周方向に沿う第1連通穴112a(第1ボート柱31a)と第2連通穴112b(第2ボート柱31b)との間、および第1連通穴112a(第1ボート柱31a)と第3連通穴112c(第3ボート柱31c)との間には、本体部112の径方向に沿う幅寸法を小さくする一対の切り欠き部112dが形成されている。各切り欠き部112dはそれぞれ同じ形状に形成されている。各切り欠き部112dの本体部112の周方向に沿う長さ寸法は、その両端側が各連通穴112a〜112cに臨む位置にまで延びる長さ寸法に設定されている。ここで、各連通穴112a〜112c及び各切り欠き部112dは、いずれも各ボート柱31a〜31cによる反応ガスの消費を考慮して設けられるものであり、これらの機能については後述する。
薄肉部113は、第2ボート柱31bと第3ボート柱31cとの間に配置され、ホルダベース110におけるウエハ14の下面14a側とは反対側の上面14b側を、例えば切削する(切削加工)ことにより形成されている。薄肉部113は、本体部112のように連通穴や切り欠き部を備えていない。また、薄肉部113の厚み寸法は、本体部112の厚み寸法の略半分の厚み寸法に設定されている。本実施の形態においては、例えば本体部112の厚み寸法を4mmに設定し、薄肉部113の厚み寸法を2mmに設定している。なお、ウエハ14の厚み寸法は、例えば1mmに設定されている。
ここで、薄肉部113を設けることで、ホルダベース110の中心を挟む本体部112側と薄肉部113側とで、当該ホルダベース110の重量バランスを良くしている。つまり、本体部112に設けた各連通穴112a〜112cおよび各切り欠き部112dを設けたことによる本体部112の軽量化に対応し、その反対側を薄肉部113として両者を略同じ重量としている。これにより、ウエハ14を搭載したウエハホルダ100が、搬送中に傾斜したりボート30上でがたついたりするのを防止する。
ホルダカバー120は、大径本体部121と小径嵌合部122とを備えており、小径嵌合部122は、ホルダベース110の環状段差部111に入り込んで装着されるようになっている。これにより、ホルダベース110に対するホルダカバー120のがたつきを抑制している。小径嵌合部122は、環状段差部111との間でウエハ14を挟み、ウエハ14の成膜面である下面14aとは反対側の上面(非成膜面)14bと接触している。このように、ホルダカバー120を、上面14bと接触するよう構成することで、反応ガス(成膜ガス)が上面14bに入り込まず、上面14bが成膜されないようにできる。
図9はウエハホルダ100のホルダカバー120を省略し、上方側から見た図であり、ウエハ14にはハッチングを施している。ウエハ14を搭載したウエハホルダ100は、図1に示す回転軸104の回転駆動に伴うボート30の回転により、反応室44内で破線矢印R方向に回転するようになっている。図9においては、ウエハホルダ100を形成するホルダベース110による反応ガスの消費を説明するために、ウエハホルダ100の径方向外側から当該ウエハホルダ100の中心Oまで延びる第1仮想長方形VR1,第2仮想長方形VR2及び第3仮想長方形VR3(図中二点鎖線)を記載している。ここで、各仮想長方形VR1〜VR3の短手方向に沿う幅寸法は、各ボート柱31a〜31cの幅寸法(直径寸法)となっている。
第1仮想長方形VR1は、第1ボート柱31aに対応する部分に設けられ、当該第1仮想長方形VR1の部分におけるウエハホルダ100(ホルダベース110)の表面積は、合計でS1(図中網掛部分)に設定されている。このホルダベース110(本体部112)における表面積S1は、第1連通穴112aの大きさに依存し、小さい値に設定されている。
ここで、図9においては、第1ボート柱31aに対応する部分にのみ第1仮想長方形VR1を記載しているが、第2ボート柱31b及び第3ボート柱31cに対応する部分にも第1仮想長方形VR1と同じ仮想長方形を記載できる。つまり、第2ボート柱31b及び第3ボート柱31cに対応する部分の仮想長方形(図示せず)におけるホルダベース110の表面積についても、上述と同様に合計でS1に設定されている。
第2仮想長方形VR2は、ウエハホルダ100の中心Oを中心として、第1仮想長方形VR1を図中左側へ45度傾けた位置、つまり第1ボート柱31aと第2ボート柱31bとの間の中間位置まで回転させた位置に設けられている。第2仮想長方形VR2の部分におけるホルダベース110の表面積は、第1仮想長方形VR1の部分の表面積S1よりも大きい表面積S2(図中網掛部分)に設定、つまり第1仮想長方形VR1の部分の表面積S1は、第2仮想長方形VR2の部分の表面積S2よりも小さくなっている(S1<S2)。第2仮想長方形VR2の部分における本体部112には、切り欠き部112dを設けているが、当該切り欠き部112dのウエハホルダ100の径方向に沿う幅寸法よりも、第1仮想長方形VR1の部分に対応して設けた第1連通穴112aのウエハホルダ100の径方向に沿う幅寸法の方が大きいため、表面積S2>表面積S1となる。
ここで、図9においては、第1ボート柱31aと第2ボート柱31bとの間にのみ第2仮想長方形VR2を記載しているが、第1ボート柱31aと第3ボート柱31cとの間にも第2仮想長方形VR2と同じ仮想長方形を記載できる。つまり、第1ボート柱31aと第3ボート柱31cとの間の中間位置における仮想長方形(図示せず)においても、そのホルダベース110の表面積は上述と同様にS2に設定される。
第3仮想長方形VR3は、ウエハホルダ100の中心Oを中心として、第1仮想長方形VR1を図中左右側のいずれか一方に180度傾けた位置、つまり第2ボート柱31bと第3ボート柱31cとの間で、中心Oを挟む第1ボート柱31aの反対側にある薄肉部113の中間位置まで回転させた位置に設けられている。第3仮想長方形VR3の部分におけるホルダベース110の表面積は、第2仮想長方形VR2の部分の表面積S2よりも大きい表面積S3(図中網掛部分)に設定、つまり第2仮想長方形VR2の部分の表面積S2は、切り欠き部112dを設けた分、第3仮想長方形VR3の部分の表面積S3よりも小さくなっている(S2<S3)。
このように、各ボート柱31a〜31cに対応する部分のホルダベース110の表面積をS1とし、第1ボート柱31aと第2ボート柱31bとの間及び第1ボート柱31aと第3ボート柱31cとの間のホルダベース110の表面積をS2とし、第2ボート柱31bと第3ボート柱31cとの間のホルダベース110の表面積をS3とし、これらの大小関係をS1<S2<S3としている。これにより、図中矢印に示すように、第1ガス供給ノズル61の各第1ガス供給口60から供給される反応ガスは、各ボート柱31a〜31cに対応する部分では、各ボート柱31a〜31cおよび表面積S1の部分(消費位置A)で消費される。また、第1ボート柱31aと第2ボート柱31bとの間および第1ボート柱31aと第3ボート柱31cとの間では、反応ガスは表面積S2の部分(消費位置B)で消費される。さらに、第2ボート柱31bと第3ボート柱31cとの間では、反応ガスは表面積S3の部分(消費位置C)で消費される。
ここで、各消費位置A〜Cにおける反応ガスの消費量は、何れの部分においても略同じ消費量となるようバランスされている。例えば、消費位置Cではホルダベース110の表面積S3の部分で消費量20%となり、消費位置Aでは各ボート柱31a〜31cで消費量18%、ホルダベース110の表面積S1の部分で消費量2%となる。消費位置Bでは、消費位置Cに比して各ボート柱31a〜31cに近接しており、これにより各ボート柱31a〜31cでの消費(消費量5%)が影響する。このため、消費位置Bでは、切り欠き部112dを設けて反応ガスの消費量を微調整(消費量15%となるよう調整)している。
このように各消費位置A〜Cにおいて反応ガスの消費量をバランス、つまり各消費位置A〜Cの全て部分において、上述の例示のようにウエハ14に到達するまでの反応ガスの消費量を略20%とすることができ、ひいてはウエハ14に到達するまでの反応ガスの濃度を略均一化できるようにしている。すなわち、本実施の形態における各連通穴112a〜112cの大きさや、切り欠き部112dの大きさは、上述したような反応ガスの消費量を考慮に入れて設定されると良い。
次に、本実施の形態の変形例のウエハホルダ(基板ホルダ)200について説明する。図10は本発明の実施の形態の変形例の基板ホルダの構造を示す斜視図、図11は図10に示す基板ホルダにおける反応ガスの消費部分を示す概念図である。
変形例の基板ホルダでは、上述のウエハホルダ100に比してウエハホルダ200を形成するホルダベース210の形状のみが異なっている。つまり、ウエハホルダ100ではホルダベース110に一対の切り欠き部112d(図8参照)を設け、その外周側を非円形としたのに対し、変形例ではホルダベース210に各切り欠き部112dを設けず、その外周側を円形としている。ホルダベース210は、各切り欠き部112dに換えて一対の抜き穴211を備えており、各抜き穴211は各切り欠き部112dと同じ機能を有している。各抜き穴211は、第1ボート柱31aと第2ボート柱31bとの間、及び第1ボート柱31aと第3ボート柱31cとの間にそれぞれ設けられ、ウエハホルダ200の軸方向に沿うようホルダベース210の本体部212を貫通して設けられている。
各抜き穴211(ウエハホルダ200)は、各切り欠き部112d(ウエハホルダ100)に比して径方向内側に配置されるため、ホルダベース210の第2仮想長方形VR2の部分の表面積S20(図11参照)と、図9に示す表面積S2とを略同じ表面積とするために、各抜き穴211の径方向に沿う幅寸法を、各切り欠き部112dの径方向に沿う幅寸法よりも大きくしている。これにより、ホルダベース210の本体部212側の重量は、図9に示すホルダベース110の本体部112側の重量よりも軽くなっている。したがって、ホルダベース210の中心Oを挟む本体部212側の重量と薄肉部213側の重量とをバランスさせるために、薄肉部213には円弧穴213aを設けている。円弧穴213aは、ウエハホルダ200の軸方向に沿うようホルダベース210の薄肉部213を貫通して設けられている。
ここで、ホルダベース210の第3仮想長方形VR3の部分の表面積S30は、図9に示す表面積S3よりも若干小さくなっているため、これに合わせて、第1,第2仮想長方形VR1,VR2の部分の表面積S10,S20も、図9に示す表面積S1,S2よりも若干小さく設定されている。これにより、ウエハホルダ100と同様、各ウエハ14に到達する反応ガスの濃度をその全周において略均一化させている。なお、変形例のウエハホルダ200によるウエハ14の膜厚状態は、ウエハホルダ100の場合と略同じ結果となる。
以上、変形例のウエハホルダ200においても、上述したウエハホルダ100と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、変形例のウエハホルダ200においては、第1ボート柱31aと第2ボート柱31bとの間及び第1ボート柱31aと第3ボート柱31cとの間に、ウエハホルダ200(ホルダベース210)の軸方向に沿う各抜き穴211を設けたので、ホルダベース210の外周側を円形にできる。したがって、第1ガス供給ノズル61の第1ガス供給口60から供給される反応ガスの流れ方向が乱れるのを抑制して、各ウエハ14への反応ガスの供給をより安定化させることができる。
次に本実施の形態で用いられるブリッジツール88について説明する。
図12は本発明の実施の形態のフープ内に設置されるブリッジツールの構造の一例を示す正面図、図13は図12に示すブリッジツールが設置されたフープ内にウエハホルダを収納した状態の一例を示す正面図、図14は図13に示す構造の蓋開時の状態の一例を内部を透過して示す平面図、図15は図14に示す構造の蓋閉時の状態の一例を内部を透過して示す平面図である。また、図16は図12に示すブリッジツールが偏芯配置されたフープ内にウエハホルダを収納した状態の一例を示す正面図、図17は図16に示す構造の蓋閉時の状態の一例を内部を透過して示す平面図である。
図12に示すブリッジツール88は、大口径ウエハ用のポッド16を小口径のウエハ14の収納容器(搬送装置)として用いることができるようにするための変換ツールであり、大口径ウエハ用のポッド16の内部に取り付けて小口径のウエハ14を収納可能にするものである。すなわち、1つのポッド16で異なった複数種類の径の半導体ウエハの収納に対応させるための変換ツールである。
ブリッジツール88の構成は、底板88a及び天板88bと、底板88a及び天板88bの間に立てて配置され、かつ両者に接合する柱部88cと、小口径のウエハ14やウエハホルダ100を所定の間隔を設けて複数段に亘って収納可能なように柱部88cに設けられた複数のウエハ支持部(レール部)88dと、ウエハホルダ100の水平方向の回転を防止する位置決めとなる位置決め柱88fとを備えている。ウエハ支持部88dは、左右両側と中央奥の3本の柱部88cに複数段に亘って設けられており、ウエハ14やウエハホルダ100の外周部に対応した段差形状88gを有している。
図13に示すように、ポッド(フープ)16内においてブリッジツール88は、2本の固定棒16fに設置されており、天板88bと底板88aそれぞれが、ポッド16の大口径ウエハ用のウエハ支持部16bに支持されている。なお、図13は、ブリッジツール88をポッド16の中心に設置した場合である。
また、図14はポッド16のフタ部16aを開けた状態、図15はポッド16のフタ部16aを閉めた状態を示す図である。
図14に示すようにフタ部16aを開けた際には、第1支持棒16cによって支持された移動板16dが前面側に移動(P方向に沿って移動)し、さらに第2支持棒16eによって支持されてウエハ14やウエハホルダ100を保持していたリテーナ16gがQ方向に沿って移動してウエハ14やウエハホルダ100から離れた状態となる。
一方、図15に示すようにポッド16のフタ部16aを閉めた際には、移動板16dが奥側に移動し、これによりリテーナ16gもウエハ14やウエハホルダ100に接触してウエハ14やウエハホルダ100を保持した状態となり、この状態でポッド16の搬送等が行われる。
図16、図17は、ブリッジツール88をポッド16内で偏芯させて設置した場合である。例えば、ウエハ14やウエハホルダ100より径が大きな(径が異なる)ウエハ15をポッド16内に設置したブリッジツール88に収納する場合等に、ブリッジツール88をポッド16内で偏芯させて設置する。この場合にも、フタ部16aを閉じた際にはウエハ15はリテーナ16gによって保持される。
以上、本実施の形態で説明した技術的思想によれば、以下に記す効果のうち少なくとも1つを実現することができる。
(1)基板を保持した基板ホルダを基板搬送治具で支持し、かつ基板搬送治具を搬送装置との間で位置決めした状態で基板ホルダを搬送装置内に設置することで、基板を保持した基板ホルダの搬送装置内への収納を高精度に行うことができる。すなわち、基板の搬送装置内への収納を、その収納位置が作業者間でばらつくことなく、高精度に行うことができる。
(2)前記(1)により、基板処理時の基板へのパーティクルの付着を低減することができ、基板に膜を形成する場合、膜の質を高めることができる。
(3)基板の搬送装置内への収納を、作業者が直接的な手作業ではなく、基板搬送治具を介して行うことができるため、基板の収納の作業時間の短縮化を図ることができる。
(4)作業者が基板に触れることなく基板搬送治具を介して非接触で基板の収納を行うため、他の基板との接触の可能性を低減することができ、基板へのパーティクルの付着を低減することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前記実施の形態では、ポッド(フープ)内にブリッジツールを設置し、ブリッジツールのウエハ支持部に対して、基板(ウエハ)を保持した基板ホルダを基板搬送治具を用いて収納する場合を一例として説明したが、前記基板搬送治具は、ポッド内にブリッジツールを設置せずに、ポッド内に設けられた元々のウエハ支持部に対して、基板(ウエハ)を保持した基板ホルダを収納する際に用いられるものであってもよい。すなわち、基板搬送治具の台座部91の最大幅を、ポッド内に設けられたウエハ支持部間の距離に対応させておくことでブリッジツールを使用しない場合でも適用可能となる。
最後に本発明の好ましい主な態様を以下に付記する。
(1)基板を保持した基板ホルダを支持する台座部と、前記基板ホルダの外周部の位置決めを行う第1位置決め部と、前記基板ホルダの表面に沿った回転方向の位置決めを行う第2位置決め部と、複数枚の基板を収納可能な搬送装置内の前記基板ホルダを支持するレール部に対して位置決めを行う第3位置決め部と、を有する基板搬送治具。
(2)基板ホルダの外周形状に適合した形状を有し、かつ基板ホルダに対して位置決めを行うザグリ部及びコマ部が設けられ、さらに搬送装置内の変換ツールに接触させて位置決めを行う位置決め部を備えた基板搬送治具。
(3)搬送装置内の変換ツールの基板支持部の設置ピッチに対応して高さ方向にそれぞれに基板ホルダを支持可能な複数の台座部を有した基板搬送治具。