JP5985111B2 - 緩衝構造体 並びにこれを適用したシューズ - Google Patents
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Description
上記のような優れた緩衝性能を有する緩衝素材として、ゲルや低硬度のゴム(軟質素材)を採用した構造が知られている(例えば特許文献1〜10参照)。
また軟質素材を靴底内部に封入してしまうと、軟質素材が充分に変形するスペースが確保できなくなり、且つ靴底素材の性能に影響されてしまうので、軟質素材の性能を充分に発揮させられないという課題があった。
また、緩衝性を高めるためには、軟質素材の変形量を多くすることが有効であるが、従来は圧縮方向の変形が主であり、限定された厚み条件においては、変形量に限界があり、必然的に緩衝性能の向上に限界があった。一方、実質的に緩衝作用を担う緩衝部材を柔らかくするほど緩衝性は向上するが、緩衝部材が柔らか過ぎると受圧時に緩衝部材が圧縮し切ってしまい、底突きを生じたり、底突きしない場合であっても反発性が小さいため、着地からつま先での蹴り出しのプロセスにおいて、足首の過度の旋回や重心の振れ(着地安定性)、更に蹴り出し時の反発力による推進力の低下といった、いわゆる反発性が低下してしまうので、緩衝性と走行や跳躍し易い性能との両立を図る課題もあった。また、一般的にゲルやゴム等の粘弾性体の場合には、軟質化に伴い他部材との接着が比較的難しいという課題もあった。
このようなことから、ユーザに対し軟質素材の存在を極力アピールできるよう、軟質素材を外部に露出させること、特に外周面の大半を最大限外部に露出させることと、高い緩衝性能を発揮しながら走行や跳躍し易い性能も維持できることとを両立する緩衝構造やシューズが追求されてきた。更に、装着者の経時的な足のコンディション(足の浮腫や疲労に伴う走行性や歩行性の変化)に応じて、その場で緩衝性能をカスタマイズできるニーズも高まっている。
しかし、単純に、外部に緩衝素材を露出させればよいというものではない。すなわち、上記特許文献11のように、ミッドソールとアウターソールとの間に、柱状の緩衝素材を上下に固定した場合には、緩衝素材は圧縮変形によって柱が屈曲したり傾倒したりして「ぐらつき」を生じ易くなってしまうため、柱状の部材に硬質の樹脂素材を用いたり、周辺に別のサポート部材を必要とする。このようにすれば、一応、垂直方向の衝撃に対する緩衝性は確保できるが、実際の使用で生じる多くの斜め方向からの衝撃や変形に対する緩衝性を損なってしまう。
仮に、柱状の緩衝部材をより軟質な素材にしたとしても、ミッドソールとアウターソールの間に固定された緩衝素材(軟質素材)は、上下の接合面によって変形が規制(拘束)されてしまうことから、軟質素材特有の高い緩衝性能自体が大きく規制されてしまうことは変わらない(特に変形開始時)。
更に、圧縮変形に加えて斜め方向に剪断変形させることによって、変形量を増やして緩衝性能を向上させた靴が提案されているが(例えば特許文献4参照)、軟質素材の膨出変形にはほとんど着目されていなかった。
また、第1、第2受圧部を非平行にすると、第1、第2受圧部に挟まれる開口部が全周一定とならず、大きな開口部となる広角開口側の方が、リング材の膨出量(突出量)も大きくなり、外観的な面白さが得られる。
更に、第1、第2受圧部を非平行にすると、例えば第1受圧部を上側に配置した場合に、第1受圧部と柱材との接合部を足の接地面(足裏がソールと接触する面)より高い位置に設けることができ、柱材が着地時の安定性に寄与しながら、緩衝性を発揮することができる。
なお、膨出規制部は、受圧時にリング材をどのように変形させるか等によって、素材、形状、寸法、個数などを適宜設定することができる。
以下、緩衝構造体1が設けられるシューズSから説明する。
なお、緩衝構造体1をシューズSに設けるにあたっては、緩衝性能を強くアピールする目的や意匠性向上等の観点から緩衝構造体1自体が極力外部から目視できるように設置されることが望まれており、このため上記図1でもソールS1(シューズS)の足裏面のほぼ全外周縁に緩衝構造体1を取り付ける形態を例示している。しかしながら、緩衝構造体1をソールS1に設けるにあたっては、目視されないように設置してもよく、図示しないが、例えばソールS1の内部に緩衝構造体1を収容する受入空間を予め形成しておき、ここに緩衝構造体1を収容した後、この受入空間を透過部材(透明部材)で閉塞し、緩衝構造体1を外部から目視できるようにする等の構成としてもよい。
因みに、ユーザはシューズSを購入する際、このような緩衝構造体1、特にリング材3を実際に手や指で触ることが多く(図1参照)、機能的に必要な部位だけ緩衝構造体1を設ければよい場合であっても、緩衝構造体1が足裏全面に設けられている商品の方が、ユーザの購買意欲をより刺激し易いものである。
緩衝構造体1は、衝撃的圧縮荷重が加えられた際(受圧時)、この衝撃を緩衝するのが主目的であるものの、この緩衝が進行する適度な段階で(例えば、緩衝素材が底突き現象を起こす前に)、緩衝されない衝撃力を反発力として装着者の足の蹴り出し動作へとスムーズに移行させるようにしたものである。
緩衝構造体1は、一例として図1(a)に併せ示すように、荷重が掛かっていない初期状態(無荷重状態)で斜めに立設された柱材2と、この柱材2の外側に嵌設されるリング材3とを主な構成部材として具える。更に、緩衝構造体1は、柱材2の上下両端に第1、第2受圧部4U、4D(以下、第1、第2受圧部4U、4Dを、単に「受圧部」と称することがある)を具えるものである。このため上下の受圧部4U・4Dは、柱材2によって連結された構造となっている。
また、本実施例では、一例として図1(b)や(c)に示すように、リング材3と上下の受圧部4U・4Dとの間の少なくとも一方に、クリアランスC(後述する作用待機部5の一種)を設けてもよい。
最初にクリアランスCが設けられた構成を例に説明する。緩衝構造体1にクリアランスCが設けられている場合、緩衝プロセスは、主に、第一変形段階、第二変形段階、及び復元段階の三段階から成る。
緩衝構造体1は、圧力を受けると、柱材2が傾倒して行くとともに、リング材3が転動して行き、受圧部4の一部に接触すると、リング材3が内周側から外周側に膨出変形を開始する(第一変形段階)。続いて、リング材3が上下の受圧部4に挟まれて圧縮される変形と、柱材2の傾倒による変形とが複合的に作用する第二変形段階へと至る(第二変形段階)。その後、除圧状態となり、リング材3の変形及び柱材2の傾倒の復元によって、受圧時のプロセスを逆に戻る(復元段階)。この一連のプロセスから成るサイクルによって、本構成による独特の緩衝性と反発性が発揮される。
一方、図1(a)に示したクリアランスCが無い構成の場合には、第一変形段階を経ずに第二変形段階と復元段階から成るサイクルによって、本構成による独特の緩衝性と反発性が発揮される。
第一変形段階:受圧に伴いまず柱材2が傾斜形成方向に傾倒するのに伴って、リング材3の位置が転動して、リング材3の上下面の一部が受圧部4U及び/または受圧部4Dに接触する。リング材3が受圧部4に接触するとリング材3は柱材2によって内部から剪断変形を開始する。なお、図1(d)においては、リング材3の上下面の対角する片端部が受圧部4U・4Dに同時に接触した例について示しているが、それぞれが別々のタイミングで接触開始してもよいし、片側だけが接触するようにしてもよい。また図3(b)の場合には、受圧部4に接する前に柱材2の傾倒によってリング材3が剪断変形する。このように緩衝構造体1の構成の違いによって、第一変形段階の変形プロセスをアレンジすることができる。なお、リング材3の変形抵抗(反発性)は、柱材2の傾倒と復元の挙動を制御する作用を担うことになる。
なお、図1(d)においては、受圧に対して上下受圧部4U・4Dの位置関係が平行に保たれるように図示しているが、受圧部4U・4Dの面に対して、斜め方向からの衝撃や圧力を受ける際には受圧部4U・4Dのいずれか一方が傾くような変形になる場合もある。更に、このような斜め方向からの衝撃に対して、柱材2の傾倒とともに受圧部4も傾けるように設計してもよく、この場合には、傾けた面側へと強圧縮部位が形成できる。
更にまた、後述するようにクリアランス調整をすれば、適宜第一変形段階から第二変形段階へ移行するタイミング等を調整することができる。特に、柱材2の上下両方にクリアランスCを設けた場合には、上下のクリアランスCの差を利用して第一変形段階から第二変形段階へ移行するタイミングを段階的に発現させる等して、より多様な緩衝性と反発性を有した緩衝構造体1を設計することができる。
また、例えば、上側の受圧部4Uの一部が足の接地面(足裏がソールと接触する面)より高い部分(足の側面部分)に巻き上がるようにすれば、着地時の足のぐらつきを抑制して、安定性の向上に寄与させることができる。
緩衝構造体1は、ランナー(装着者)が地面に足を着地させ、蹴り出すまでに生じる変形から復元に至る行程で衝撃エネルギーを吸収し、緩衝する。この変形から復元に至る行程において、緩衝構造体1に生じる変形量と力との関係は図20(a)に例示したヒステリシスループとなり、このヒステリシスループで囲まれた領域が吸収したエネルギーに相当する。前記ヒステリシスループは、具体的には、下記1)〜4)の緩衝構造体1の変形行程を経て、変形前の緩衝構造体1の形状に戻る。すなわち、
1)変形行程A:足裏が着地し、受圧部4が衝撃的圧縮荷重を受けて柱材2
が主体的に傾倒する行程、
2)変形行程B:柱材2の傾倒によって、リング材3が受圧部4に部分的に
接触しながら、リング材3が変形する行程、
3)変形行程C:リング材3が柱材2の傾倒による変形に加えて、受圧部4
によって圧縮変形される行程、
4)変形行程D:足が地面から離れるにつれて荷重が小さくなり、緩衝構造
体1の形状が復元しようとする変形行程
上記変形行程Aと変形行程Bが第一変形段階、変形行程Cが第二変形段階、変形行程Dが復元段階に、それぞれ対応する。
なお、変形行程Aはリング材3の変形を伴わないので、ヒステリシスは、リング材3の変形を伴う変形行程BからDで形成される。
また、図3(b)に示す緩衝構造体1は、リング材3が受圧部4に接する前に、柱材2の傾倒によってリング材3が剪断変形する。このような構成では、図20(b)に示すように、柱材2のみが変形する変形行程Aがなく、リング材3の変形を伴う変形行程BからDで構成されるヒステリシスループとなる。なお、受圧時に変形行程Aを生じないのは、初期状態でリング材3の角部が受圧部4に接している緩衝構造体1でも同様である。
更に、緩衝構造体1にクリアランスCが構成されない場合には、図20(c)のように変形行程CからDのヒステリシスループとなる。
続いて第二変形段階に移行すると(変形行程C)、受圧部4によって柱材2とリング材3とが複合的に反力を生じ、柱材2及びリング材3の材料物性、形状、寸法によって、変位に対する変形行程Cの傾きが変化する。
その後、緩衝構造体1を変形させる力が取り除かれると、復元段階に移行し、柱材2及びリング材3の形状変形あるいは変形規制による見かけの弾性率の増加分、及び柱材2とリング材3の材料物性、形状、寸法に応じた変位に対する反力応答、すなわち変形行程Dの経路が決定されて、緩衝構造体1に生じる変形量と力との関係におけるヒステリシスループの面積E1とE2とに応じた緩衝性と反発性が発揮される。
そして、本発明の緩衝構造体1を上述した構成とすることで、緩衝プロセスにおいて、緩衝性(E1)とのバランスを図りつつ、圧縮変形量の抑制と反発力の増加のタイミングを調整(図20における変形行程B、Cのループの形状と傾きの調整)を図ることができるため、底突きを防止しながら優れた緩衝性と反発性との両立が実現される。なお、第一変形段階及び第二変形段階は、構成条件を変えることによって、適宜、緩衝性能を変更することができる。
まず柱材2について説明する。
柱材2は、上下の受圧部4U・4Dを接続するものであり、受圧により柱材2自身が傾倒するものであるが、荷重が除去された際には、初期状態に復帰するものである。ここで荷重除去時の復帰は、柱材2自身が必ずしも積極的に復帰する必要はなく、例えばリング材3の弾性を利用して復帰する構造でも構わない。なお、柱材2は、自身の傾倒により、リング材3を外周側方向に膨出変形させるものであり、傾倒する際に柱材2自身が湾曲や屈曲(座屈)するような変形を伴ってもよい。
また、柱材2の素材としては、特に限定されないが、例えば受圧時に単に高さ寸法が縮小する変形や、体積を減少させる圧縮変形は起こさない(もしくは極めて起こし難い)素材で構成される。具体的には、合成樹脂製の成形品の適用が現実的である。前記合成樹脂としてはポリエーテルブロックアミド共重合体(例えばPEBAX(登録商標))、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの非発泡の樹脂が好ましい。またEVAなどの発泡材であっても、熱プレスなどをして変形が起こりにくい充分に硬いものに加工すれば柱材2の材料として使用可能である。
ここで、本実施例の柱材2は、一例として上記図1に示すように、荷重が掛かっていない初期状態から、既に傾斜状態に形成され、受圧によって更に傾斜形成方向に傾倒する構成が好ましい。
なお、柱材2と受圧部4U・4Dとの接続形態については後述する。
ここで柱材2は、受圧部4(下側受圧部4D)と、これに対し斜めに形成される柱材2との成す角を、次第に減少させるように傾倒して行くため(これを本明細書では「傾斜形成方向(の傾倒)」と称している)、初期状態における柱材2の傾斜角度を設定することは、上側受圧部4Uの落差(上下の受圧部4U・4Dの接近寸法)や、上側受圧部4Uの水平方向へのスライド寸法を決定することになるものである(もちろん、これらはリング材3の硬度等の性状によっても異なる)。
なお、本明細書では、柱材2として円柱状を成すものを多く示すが、柱材2の形状は必ずしも円柱状に限定されるものではない。例えば、矩形柱や複数柱とすれば後述するように倒れ易い方向を設定できる。また、断面形状も円形のほか様々な形状とすることができる。
また、柱材2の角度が小さいほど柱材2の傾倒する可動域(ストローク)が小さくなるため、柱材2に嵌設するリング材3の厚み(高さ)も薄くなり、従って上記角度下限未満では、充分な緩衝性が得られ難くなる。
また、角度が小さいほど傾倒する方向が限定されるが、角度が90度付近の場合には、傾倒する方向の自由度を持たせた設計に有効である。
リング材3は、柱材2の外側に嵌設される弾性部材であり、より具体的には柱材2や受圧部4U・4Dよりも弾性率が小さく変形し易い部材から成る。このリング材3は、柱材2の傾倒によって内周側から剪断変形を伴って外周方向に押され、当該方向に膨出変形する。更に、リング材3は、上下の受圧部4U・4Dに挟み込まれ圧縮される前記第二変形段階において、柱材2の傾倒による剪断変形と複合されて外周方向に向かって膨出変形を生じる。また逆に、リング材3は、柱材2の傾倒による剪断応力や上下の受圧部4U・4Dによる圧縮応力の減少に伴って、自身の反発弾性によって復元し、応力が完全に除去された際には、初期状態に復帰する。
またリング材3は、変形と復元により衝撃を吸収する緩衝作用を担うものであるが、上述したようにリング材3の内周側に位置する柱材2の傾倒動作を規制するとともに、柱材2の傾倒を復元させるようにも機能する。またリング材3の素材としては、上述したようにリング材3が柱材2や受圧部4よりも柔らかければ、どのような素材で形成してもよく、例えば各種ゴム材やゲル材、あるいはこれらの発泡体(例えばEVAなど)が適用できる。硬度や伸び特性など材料特性は、緩衝構造体1の性能に応じて選択できる。
なお、図1(b)に示すリング材3は、荷重が掛かっていない初期状態で、上下の受圧部4U・4Dとの間にクリアランスCが形成されている。つまりリング材3の高さ(後述する「有効作用高さ」)が、柱材2の高さより小さく形成されている。
また、一度、柱材2に外嵌めしたリング材3を取り外さないことが前提、つまりリング材3の嵌め替えを行わない場合(交換不可を前提とした場合)には、リング材3を柱材2に対して接着固定してもよい。
一方、リング材3を柱材2に対し接着せず、嵌め替え自在とした場合には、適宜の組み合わせが採り得る。例えばリング材3(柱受入孔3h)の孔径を柱材2の外径よりも小さくして(言わば「しまりばめ」)、柱材2にリング材3を嵌めたときの自身の締め付け力を利用してリング材3を柱材2に強固に保持させてもよい。この状態は、リング材3と柱材2との双方に応力バイアスが掛かった状態であり、この状態を例えばリング材3(柱受入孔3h)の孔径寸法によって適宜調整することができ、これにより様々な緩衝特性を得ることができる。
また、リング材3(柱受入孔3h)の孔径を柱材2の外径よりも大きくした場合には、リング材3(柱受入孔3h)の内周面と柱材2の外周面との間に隙間状態に応じた緩衝特性が得られる。もちろん、リング材3(柱受入孔3h)の孔径と柱材2の外径とを同じにしてもよい。
リング材3を着脱自在にする方法としては、リング材外周から中心孔に向かう切れ込みスリットを設けて外れるようにしておき、装着後の断面接合面を剥がすようにしてもよいし、前記スリットをスパイラル状に形成してスリットからリング材3を回転させながら着脱できるようにしてもよい。
なお、リング材3を嵌め替え自在とすることにより、例えば、長距離マラソンやトライアスロンなどの長時間の過酷な走行や歩行による経時的な足のコンディションの変化に応じて、緩衝性や反発性、プロネーション特性といった性能を、その場で調整することができる。また、購入後にユーザが自分の好みにあったリング材3を選んで独自のアレンジを楽しむことや(オシャレを楽しむ感覚)、ユーザ独自の多段緩衝特性を見つけ出す楽しみ等、新たな展開や面白さ等をユーザに提供することもできる。
受圧部4は、受圧時の荷重(負荷)を柱材2やリング材3に伝達する部位であり、シューズSにおけるミッドソールやアウターソールなどのソールS1とは全く異なる部材として形成する構成としてもよいし、例えば図2に示すように、ソールS1の一部を受圧部4とする構成としてもよい。ここで本図2では、下側受圧部4をシューズSの踵部(一部)とした態様を示しており、当該構成により緩衝構造体1のシンプル化やシューズSの軽量化などが図れるものである。
また、受圧部4をソールS1の一部として形成する場合には、当然、その素材はソールS1と同一となるが、受圧部4がソールS1に取り付けられる部材として形成される場合であっても、受圧部4をソールS1と同じ素材で形成してもよい。なお、受圧部4をソールS1と全く異なった素材で形成する場合には、例えばソールS1よりも硬質の樹脂材等を適用することが好ましい。
また素材の異種、同種は問わず、柱材2と受圧部4とを別部材として形成した場合には、形成後に、これらを接着することが可能である。もちろん、最初から柱材2と受圧部4とを一体的に形成した場合には、生産性を向上させ得るし、これらを別部材として形成し接着した場合における剥離の発生リスクも解消することができる(言わば接着強度の確保)。
なお、柱材2と受圧部4とを一体的に形成するにあたっては、多色射出成形などが適用でき、更にはこれらをソールS1と一体化したい場合にも好適である。因みに、受圧部4の形状は、必ずしも薄い板状(円板状)に限定されるものではなく、例えば上記図2(b)に併せ示すように、受圧部4、特に上側受圧部4を先割れ状に形成しても構わない。ここで本図2(b)では、受圧部4と柱材2とを一体的に形成しており、リング材3を柱材2に嵌設する場合に、先割れ状の上側受圧部4を窄め、嵌設後は先割れ状態に戻すものである。もちろん、このような先割れ状の上側受圧部4の形状を利用して、シューズS(例えば踵部)に装着することが可能である。
なお、作用待機部5としては、必ずしもリング材3と受圧部4との間に設けられるクリアランスCに限定されるものではなく、これについては後述する。
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変をしてもよい。
まず、上述した実施例では、柱材2は、一例として図3(a)に示すように、ほぼ一定の径サイズの柱体を斜めストレート状に立設したものを主に示したが、柱材2は、例えば同図(b)に示すように、ほぼ一定の径サイズの柱体を側面視「く」の字状に屈曲形成(もしくは湾曲形成)した形態としてもよいし、他にも例えば同図(c)に示すように、ほぼ一定の径太さの柱体を上下両端付近(受圧部4付近)で傾斜させながら、中央部付近では、ほぼ真っ直ぐな状態に形成した形態としてもよい。
また、柱材2としては、例えば斜め上下からの衝撃を受ける部位であれば、同図(f)に示すように、円柱等の柱体をほぼ真っ直ぐに立設しながらも、その下端縁の一部を切り欠いた立体とする形態としてもよい(ここを切欠き20とする)。この場合、受圧を受けた柱材2は、切欠き20の方に倒れるように傾倒するものである。
このように柱材2としては、種々の形状(形態)が採り得るものであり、特に図3(c)や(f)などから、柱材2は、初期状態から必ずしも傾斜していなくてもよく、受圧によって傾倒すればよいものである。
なお、例えば柱材2の下側を硬度の高い素材で形成し、上側を硬度の低い素材で形成すれば、受圧時に上側受圧部4Uが傾倒し易くなり(非水平な状態になり易く)、装着者の足の運びをガイドする作用、重心の移動方向をガイドする作用等が期待できる。
更に図4(c)に示す実施例は、一つの柱材2において、その左右で、硬度等の性状を異ならせた形態であり、ここでは斜円柱状の柱材2を左右で等分し、各々を異なる素材で形成した例を示している。
また図4(d)に示す実施例は、柱材2の内周部と外周部とを、硬度等の性状が異なる素材で形成した例である。ここで内周部は細い斜円柱状に形成され、外周部は、これを覆う筒状(斜めの円筒状)に形成される。
また図4(e)は、柱材2の上側一部のみを硬度等の性状が異なる素材で形成した例であり、技術思想(概念)としては上記図(a)と(c)とを複合させた形態である。
また、リング材3は、例えば図5(b)に示すように、その外形傾斜(側面の傾斜)を、柱材2の傾斜角度と異ならせた形態としてもよい。ここで本図5(b)では、リング材3の右上部及び左下部の余肉が大きく付着するように形成したものであり、当該部位は、上述したように柱材2の傾倒によって、比較大きく膨出変形する部位であるためである。すなわち、このような構成により、第一変形段階からリング材3の膨出が強調されるようにしたものである。
なお、図5(f)に示す実施例は、リング材3の外形断面サイズ(径寸法)を高さ方向において段階的に変化させながら、なお且つリング材3の外形を螺旋状に形成した実施例である。この場合、リング材3は上下方向に圧縮変形することに伴い、ねじり作用による剪断変形も引き起こすので、より高い緩衝効果が発揮される。
また、同一のリング材3を、各部で性状を異ならせる場合には、三段以上の多段階状に形成した構造としてもよく、例えば図6(b)に示すように、一つのリング材3の上下部を同じ性状の素材(例えば低い硬度)で形成し、真ん中部分を異なった性状の素材(例えば高い硬度)で形成した構造としてもよい。ここでも当該構造に応じた膨出及び復元変形態様によって、独自の緩衝性や反発性が得られるものである。
また図6(d)に示す実施例は、一つのリング材3において、その下側内周部分を、他の部位と異なる性状の素材で形成した例であり、技術思想(概念)としては上記図(a)と(c)とを複合した形態である。
以上述べたように、同一のリング材3であっても、これを各部で性状の異なる素材等で形成すれば、各部で硬度等によって緩衝性や反発性を異ならせることが可能であるが、一つのリング材3を同一素材で形成した場合であっても部分的に硬度等の性状を異ならせることで緩衝性や反発性を異ならせることも可能である。具体的には、例えば図6(e)に示すように、同一素材から成るリング材3の下部のみに小孔32を多数開口すれば、同じリング材3であっても部分的に性状を異ならせることが可能である。もちろん、これは柱材2についても適用できる考え方である。
ここで、図8(a)に示す実施例は、硬度等の性状の異なるリング材3を上下方向に間隔(クリアランスC)を開けて連なるように嵌設した形態である。因みに、図中符号「3U」が上側に嵌められたリング材であり、図中符号「3D」が下側に嵌められたリング材である。また本図8(a)では、クリアランスCを三箇所に分けて設けているが、クリアランスCの取り方としては種々の態様が可能である。
また第二変形段階は、第一変形段階の剪断変形に、上下の受圧部4U・4Dによる圧縮がリング材3に加わる段階であり、このときリング材3は性状的に柔らかいリング材3が嵌設された部位(例えば上側リング材3U)で大きく膨出変形する。従って、このように性状の異なるリング材3を直列状に嵌設した場合にも独自の緩衝特性が得られるものである。
なお、ここでは各リング材3U・3Dの性状が異なるものとして説明したが、全く同じ性状のリング材3を嵌設する構成としてもよい。
また、一つの柱材2に複数のリング材3を嵌設する場合には、例えば図8(b)に示すように、複数のリング材3同士を密着状態に嵌設する構成としてもよい。因みに、本図8(b)では、三つのリング材3を階段状に重ねて嵌設するタイプ(緩衝構造体1の全体形状としては斜めの柱状を呈するタイプ)を図示している。
具体的には、例えば図9(a)に示すように、リング材3の上端縁及び下端縁を傾斜させ、側面視状態でテーパ状に形成した形態としてもよい。ここで本図9(a)では、リング材3の高さ寸法の低い方(長さ寸法としては短い方)を右側とし、高い方(長さ寸法としては長い方)を左側として図示している。
本実施例における第一変形段階は、上下の受圧部4U・4Dがリング材3と接触してクリアランスC(総和)が見かけ上なくなるまで、柱材2が傾倒する段階であり、リング材3の一部が受圧部4に接触した時点から、リング材3は内周側から剪断変形を受けて外周側方向に押され、当該方向に膨出変形するものである。
また第二変形段階は、上記柱材2の傾倒に加え、上下の受圧部4U・4Dによる直接的な圧縮がリング材3に加わる行程であり、リング材3には、この圧縮による膨出変形も加わることになる。
なお、この第二変形段階では、リング材3がもともと側面視テーパ形状であること、また高さ寸法の高い方が、低い方よりも圧縮変形し難いこと等から、上下の受圧部4同士が平行でなくなり、図示のように高さ寸法の低い方に倒れ込むことになる。
このように緩衝構造体1は、加わった衝撃を単に緩衝するだけでなく、特定の方向に誘導する作用をも併せ持つことができるのである。
本実施例においても、具体的な緩衝態様は図示しないが、第一変形段階は、クリアランスC(総和)が見かけ上なくなるまで、柱材2が傾倒する段階であり、受圧部4U・4Dがリング材3と接触した時点から、リング材3は内周側から剪断変形を受けて外周側方向に膨出変形するものである。
また第二変形段階は、このような柱材2の傾倒に加え、上下の受圧部4U・4Dによる直接的な圧縮がリング材3に加わる行程であり、リング材3には、この圧縮による膨出変形も複合的に加わるものである。
このため第二変形段階では、上記と同様に、上側受圧部4Uが、リング材3の高さ寸法の低い方に倒れ込むものであり、例えば装着者の足に生じるオーバープロネーションを防止することができる。
なお、リング材3を側面視勾配状に形成するにあたっては、リング材3の下端縁のみを傾斜させても実現でき、同様の効果が得られるものである。
因みに、本図9(c)では、当初、傾斜形成方向に、リング材3(径方向)の肉厚寸法を最大に設定した状態から、リング材3を約90度回転させ、柱材2を傾斜形成方向に傾倒し易くした状況を図示している。なお、本実施例においては、例えば本図9(c)に併せ示すように、柱材2を多角形断面の形状とすることにより、回転後のリング材3の位置を固定し易い構造としてもよい。
なお、このような思想は、ユーザ自身が、独自の緩衝性を見出す楽しみが得られる点で、シューズSに新たな付加価値を与えるものである。
なお、本図10(a)では、膨出したリング材3の内周面(リング変形許容空間AS側)がリング変形許容空間AS内の奥部まで入り込むように図示しているが、必ずしもこのような変形挙動を採るとは限らず、リング材3や柱材2の硬度等によっては、リング材3の内周面がリング変形許容空間ASの奥まで入り込まない場合もある。ただし、このようなリング変形許容空間ASを形成することによって少なくともリング材3は受圧時に変形し易くなるものである。
なお、柱材2やリング材3にリング変形許容空間ASを設ける形態は、互いの接触部に空洞を形成し、双方の接触面積を減少させる形態でもあるため、リング材3による柱材2の規制力や保持力は多少低下し得るものである。また、その分、受圧時における柱材2の変形(傾倒や膨出)は起こり易くなるものである。
ここで図11(a)では、膨出規制部ERを、緩衝構造体1の上部においてリング状(輪状)に形成しており、また上側受圧部4Uを、ソールS1と一体で形成している。また、図中の斜線部が膨出規制部ERであり、これもソールS1と一体で形成、もしくはソールS1に埋設状態に設けるものである。なお、この場合、本図11(a)に併せ示すように、特に第二変形段階において、リング材3は上部側が膨出規制部ERに強く密着するものであり、その分、膨出規制部ERが存在しない下部側で大きく膨出するものである。
このように膨出規制部ERは、受圧時にリング材3の変形をどのように規制したいのかによって(目的の制御によって)、素材、形状、設置箇所や設ける数等を適宜設定することができるものである。逆に言えば、受圧時の柱材2やリング材3の変形の仕方を制御することにより、緩衝構造体1の緩衝性能をコントロールすることができるものである。
クリアランスC以外の作用待機部5としては、例えば図12(a)に示すように、リング材3における受圧部4との接触先端部を全周鋭角状に形成し、当該部位でリング材3の肉(材料)が存在しない未充足空間NSを形成しておく形態が挙げられる(接触しているためクリアランスCとしては存在しない)。この場合、荷重が掛かると、内側の柱材2が傾倒することはもちろん、外側のリング材3もほぼ同時に、上下の受圧部4U・4Dによる圧縮を受ける。しかし、この段階でのリング材3の圧縮は、本来は膨出変形を行うはずのリング材3の肉(材料)が、上記未充足空間NSを埋めるように移動する変形挙動となるため、外観的な膨出変形としてはほとんど生じないものである。従って、リング材3が実質的な膨出変形を起こすまでには受圧開始から幾らかの時間差が生じ、このため、このような未充足空間NSも作用待機部5の一つとなる。また、このような時間差を考慮して、リング材3が実質的な膨出変形(外観的な膨出変形)を起こす際の高さを、本明細書では「有効作用高さ」と称している。
また、本図12(a)に示すように、リング材3に作用待機部5としての未充足空間NSを形成した場合には、リング材3が実質的な膨出変形を行う有効作用高さは、「(荷重が掛かっていない初期状態の)最大高さ」から「(未充足空間NSを埋めるまで、もしくはリング材3が外観的な膨出変形を起こすまでの)作用待機部5の長さ寸法」を除いた高さ寸法となる。
ここで、例えば図13(a)及び(b)は、複数の柱材2の外側に一つのリング材3を嵌設した形態であるが、リング材3の嵌設態様としては、各柱材2に一つずつリング材3を嵌める態様でもよいし(柱材2と同じ数のリング材3が必要となる)、あるいは図13(c)に示すように、複数の柱材2を幾つかのグループに分け、そのグループ毎にリング材3を嵌設する態様としてもよい(リング材3の数は柱材2の数未満となる)。
また、柱材2を複数立設する本実施例においては、図13(a)に併せて示すように、複数の柱材2を等配状に設け、各柱材2の傾倒方向を同一円の接線方向に設定しておけば、受圧時に各柱材2の傾倒に伴い(周方向への傾倒)、受圧部4は適宜の回転を受けることになる(ねじり作用が加わることになる)。従って、このような緩衝構造体1は、単に上下方向の圧縮変形だけでなく、柱材2が回転しながら傾倒することによる剪断変形も加わることで、更に効果的な緩衝性能を発揮するものである。
また各柱材2や各リング材3の硬度や太さ(形状)等を異ならせれば、更に多様な緩衝性を発現させることができる。なお、上記図13に示す複数の柱材2は、同一性状の素材で形成しても構わないし、異種性状の素材で形成しても構わない。
因みに、個々の柱材2にリング材3を一つずつ嵌設する場合等には、受圧時に隣り合う緩衝構造体1(リング材3)が互いに干渉し合うようにすれば、この干渉によって更に多様な緩衝性を得ることができる。もちろん受圧時にリング材3を干渉し合うようにさせるのは、上記図13(c)のような場合(グループ分けした柱材2毎にリング材3を嵌設する場合)でも可能である。
また、上記図13のように、単数の緩衝構造体1において柱材2を複数設けた場合には、個々の柱材2を硬質の樹脂材で形成し、受圧時、特に第一変形段階から積極的に柱材2を外周側に膨出変形させることが可能である。
ここで、本図14(a)では、シューズSの踵部に設けた緩衝構造体1を例示しており、下側受圧部4Dをほぼ水平に設定する一方、上側受圧部4Uを傾斜状態に(シューズ前方側が下り傾斜となるように)設けている。そして、このような構成(対向する上下の受圧部4U・4Dを非平行に設ける構成)を採ることにより、より実情に則した緩衝特性が得られるものである。すなわち、例えば着地時等におけるシューズSは、爪先側をやや上に向けた傾斜状態や湾曲状態で着地することが多く、シューズS全体が水平状態を維持したまま真っ直ぐ下方に降りてくることはほとんどないため、緩衝構造体1の設置位置、装着者の歩行の癖、負荷の掛かり方等により、上下の受圧部4U・4Dを非平行とすることは、より現実的な緩衝特性が得られるものである。
この角度のより好ましい範囲は、緩衝構造体1が配置される場所によって異なる。例えば、靴底の前方部分(例えば、踏付部から爪先部に至る部分)は、靴底の中でも厚みが相対的に薄いため、柱材3を長くして柱材3が大きく傾斜できるようにすることが好ましい。そのように柱材3の傾斜を大きくするためには、受圧部同士の相対的な角度があまり大きくならないように、例えば前記角度を15〜45度に設定することが好ましい。
逆に、靴底の後方部分(例えば、不踏部から踵部に至る部分)は、靴底の中でも相対的に厚いため、柱材3を大きく傾斜させる必要性が小さい。この場合は、柱材3の長さは比較的短くてもよく、受圧部同士の相対的な角度が比較的大きくてもよい。この場合の前記角度の好ましい範囲は、例えば30〜75度である。なお、柱材3を短くすることによって軽量化を図ることができる。
また本図14(a)の場合、着地時の緩衝構造体1には相当の荷重が掛かり、第二変形段階においてリング材3が、シューズ前方側に過度に押し出されることとなる。このため、本図14(a)に併せ示すように、下側受圧部4Dにおけるシューズ前方側に返し41を形成しておき、衝撃荷重を受けたリング材3が、下側受圧部4Dから過度に飛び出さないように(押し出されないように)することが可能である。
また、このようなことから、例えば図14(d)に示すように、狭角開口側4nにおける上下の受圧部4U・4Dに、リング材3の膨出抑制部4rを設ければ、リング材3を広角開口側4wでより大きく膨出させることができる。つまり、膨出抑制部4rは、広角開口側4wでのリング材3の膨出変形を強調するものと言える。また、このような膨出抑制部4rにより、狭角開口側4nでは、リング材3の膨出変形が抑えられるので、受圧時の当該部位でのリング材3の硬度が増すものである。また、リング材3の抜け防止にも寄与する。
なお、このような膨出抑制部4rを設けることは、上下の受圧部4U・4Dが平行に設定されている場合にも採り得る手法であり、例えばシューズSの外周面側にリング材3を大きく膨出させたい(強調したい)場合に有効である。
因みに、本実施例のように上下の受圧部4を板バネのように連結した場合には、受圧部4をソールS1とは別の部材、例えば全く異なる硬質の樹脂材で形成することが好ましく、これには一例としてポリエーテルブロックアミド共重合体(例えばペバックス(登録商標))などが適用可能である。
なお、上下の受圧部4を連結する本実施例を図14に含めたのは、本実施例の初期状態における上側受圧部4Uを傾斜状態に設定したため(上下の受圧部4を非平行で描いたため)であるが、上下の受圧部4を連結する本構造自体は、上下の受圧部4が平行である場合にも採用できるものである。
ここで、上記図15(a)では、柱材2の根元付近に形成した切欠きを傾倒誘導部2gとするものであるが、傾倒誘導部2gの形成部位は、特に限定されるものではない。すなわち、傾倒誘導部2gとしては、例えば図15(b)に示すように、柱材2の上端付近に形成してもよい。なお、この場合には、柱材2そのものよりも、むしろ上側受圧部4Uの方が傾倒し易くなるかも知れないが、このような場合(柱材2のみならず受圧部4をも傾倒し易くする場合)も含めて傾倒誘導部2gとする。
因みに、上記図3(f)に示した切欠き20も、当該傾倒誘導部2gの一種に該当し得るものである。
因みに、リング材3との接触部位に形成する上記傾倒誘導部2gは、既に述べたリング変形許容空間ASとしても機能し得るものである。あるいは図示しないが柱材2と受圧部4の連結部分をボールジョイントのような可動構造としてもよい。
そして、このような鍔体22を柱材2に設けることにより、受圧時のリング材3の変形(圧縮や膨出)を促進し得るものである。例えば、受圧により、本図16(a)に併せ示すように柱材2が傾倒した場合、その影響を受けて、鍔体22は図中のリング材3中に付した矢印のように、リング材3を挟み付ける力が作用するものである。
因みに、鍔体22は、柱材2が傾倒した際の、柱材2とリング材3(柱受入孔3h)との滑りを防止し、柱材2の傾倒を確実にリング材3の膨出変形に変換する作用もあり、このため鍔体22は、リング材3の膨出変形を強調することにも寄与している。
また、鍔体22は、必ずしも初期状態で水平(もしくは受圧部4に平行)に設置される必要はなく、例えば図16(c)に示すように、傾斜状態(もしくは受圧部4に対して非平行状態)に設けた態様としてもよい。ここで、本図16(c)では、初期状態における上側受圧部4Uを下側受圧部4Dに対して非平行状態に設定しているが、上側受圧部4Uは下側受圧部4Dに対して平行であっても構わない。
また、鍔体22を柱材2の周方向において不連続状態に形成する際には、例えば図16(d)に示すように、左右の鍔体22を形成する高さ方向の位置を変えて設けた態様としてもよい(いわゆる互い違い状)。
また、図16(e)や図16(f)のように、少なくとも一部がリング材3に埋設された態様であってもよい。
具体的には、例えば図17(a)に示すように、柱材2を上下に二分割し、これらを互いに嵌め合う入れ子状とするものである。ここで、二分割された柱材2のうちの上部を上部柱材2Uとし、下部を下部柱材2Dとするものであり、特に本実施例では、上部柱材2Uを外側、下部柱材2Dを内側に位置させた嵌め合いとする。また、上部柱材2Uは、例えば上側受圧部4Uと当初から一体的に形成する等して、常に一体で可動できるように構成するものであり(別部材で接合も可)、下部柱材2Dも同様に下側受圧部4Dと一体で可動するように構成する。また、リング材3は、外側の柱材2(ここでは上部柱材2U)に嵌設するものである。
更に、ここでは上部柱材2Uと下部柱材2Dとの嵌め合い空間には、エアが封入されており、受圧時には、上下の柱材2U・2Dが傾倒しながら、互いに接近するものであり、この間に上記内部空間のエアを押し縮めてエアダンパー(空気バネ)作用が生じるものである。また、荷重が掛かっていない初期状態で、下部柱材2Dは上部柱材2Uから外れてしまう(抜け落ちてしまう)ことがないように設定される。
あるいは図示しないが図17(a)(b)の上下の柱材2D・2Uをネジ溝やカギ溝により嵌合させるようにしてもよい。
そして、第二変形段階では、このような変形に、上下の受圧部4U・4Dによるリング材3の圧縮が加わるものであり、この加わった分、第一変形段階よりも緩衝構造体1としては潰れにくくなるものである(緩衝性としては低下し、反発性を高める)。
また、上下の柱材2U・2Dの内外関係(嵌め合い関係)は適宜変更可能であり、例えば図17(b)に示すように、上部柱材2Uを内側、下部柱材2Dを外側とした構成としてもよい。
また上部柱材2Uと下部柱材2Dとは、必ずしも入れ子状に形成する必要はなく、上下の柱材2U・2Dが剪断方向(横方向)に分離しなければ(例えばリング材3等で剪断方向への分離が規制できれば)、上下の柱材2U・2D同士は、例えば図17(c)に示すように、単なる上下方向に摺動自在に形成する構成としてもよい。
このように柱材2は、入れ子状など複数の部材で形成すること、つまり購入後においてもリング材3を柱材2(シューズS)から着脱することができ、これにより例えばユーザがリング材3を自分で交換することにより、独自の緩衝性能を見出すことができるものである。
また本図17(d)では、ソールS1を上下斜め方向に分離できるように形成しておき、この間にリング材3を収容するものである。また上側のソールS1に上側受圧部4Uや上部柱材2Uを一体的に形成しておき、下側のソールS1に下側受圧部4Dや下部柱材2Dを一体的に設けておくものである。
そして、例えばユーザがリング材3を自分で交換する場合等に、図17(e)に示すように、シューズSの側部からアクセスし、ソールS1を上下斜めに分離させ、つまりこの操作により上部柱材2Uと下部柱材2Dとを引き離し、リング材3を交換する(嵌め替える)ものである。
一方、下側受圧部4Dにおいても、斜め上向きの柱体21(これも柱材2の一部を成すものであり、特にこれを下部柱体21Dとする)が形成され、その上端部から外周側に張り出すように鍔体22(これを特に下部鍔体22Dとする)が連続して形成され、これら下側受圧部4D、下部柱体21D、下部鍔体22Dを総称して下パーツ10Dとする。
このため、分離した上下パーツ10U・10Dを各々単独で見た場合には、同図18(b)に併せ示すように、上下の受圧部4U・4Dに、柱体21U・21D及び鍔体22U・22Dが連続したフック状を成すように目視され、これらが立体的な柱材2や鍔体22を形成するものとは分かりづらい外観となっている。
また、このような構成上、リング材3の内側中央部には、鍔体22を受け入れるための溝33が全周にわたって中ぐり状に形成される。
なお、本実施例においてもリング材3は、荷重が掛かっていない初期状態で、上下の受圧部4U・4Dと非接触であり、クリアランスCを有するものとして描いている(図18(a)参照)。
このためリング材3に形成された溝33には軸方向(柱材2の軸方向)に沿って互い違いに働く力(リング材3を押し広げるような力)が作用し、これが本第一変形段階における緩衝作用として機能する。もちろん、リング材3には、上下の柱体21U・21Dが傾倒することによる内部からの膨出変形も加わり、これも緩衝作用として機能する。
そして、第二変形段階では、上述した変形に加え、上下の受圧部4U・4Dが直接リング材3を圧縮することになり、これによる膨出変形がリング材3に加わる。このため第二変形段階では、必然的に第一変形段階よりも緩衝構造体1としては潰れにくくなる(緩衝性としては低下する)。また初期状態に復帰する際には上下の鍔体22U・22Dは、リング材3によって元の位置に戻り、且つリング材3を元の位置へと戻すように機能する。
なお、本図19(a)において、踵部分に、拇趾球や小趾球よりも多くの緩衝構造体1を設けたのは、多くの人が着地時にまず踵から着地し、踵に大きな衝撃が掛かるためである。この設置例において、踵部から着地して爪先で蹴り出す動作の観点から、各部に配置する緩衝構造体1としては、踵部分では緩衝性が大きい緩衝構造体1を、拇趾球及び小趾球部分では蹴り出し易くするために反発性を効かした緩衝構造体1を配置することが好ましい。
また、踵部で着地してから爪先で蹴り出すまでに至る過程において、スムーズな圧力中心点の誘導を実現するためには、緩衝構造体1の柱材2の傾倒方向が圧力中心点の移動の方向となるように配置することが好ましい。なお、柱材2を特定の方向に傾倒させるには、前述のように柱材2の初期状態での傾斜角度を鋭角に設定する方法や、柱材2に傾倒誘導部2gを設ける構造とする等の手法が適用できる。
Foot Strike:前足着地)に適したシューズに緩衝構造体1を適用する場合には、図21(a)に示すように、反発性の大きい緩衝構造体1を後足部全体に多く配置する。一方、踵外側から着地する一般的なリアフットストライク(Rear Foot Strike:後足着地)に適したシューズに緩衝構造体1を適用する場合には、図21(b)に示すように、反発性の小さい緩衝構造体1を後足部の外側に多く配置する。図21に示すような反発性バランスとなるように緩衝構造体1を配置することによって、リアフットストライク、フォアフットストライクのそれぞれにおいて、足裏に掛かる荷重(重心)を適正な圧力中心点の軌跡に導くことができる。
S1 ソール
S2 アッパー
1 緩衝構造体
2 柱材
3 リング材
4 受圧部
5 作用待機部
10U 上パーツ
10D 下パーツ
2 柱材
2U 上部柱材
2D 下部柱材
2g 傾倒誘導部
20 切欠き
21 柱体
21U 上部柱体
21D 下部柱体
22 鍔体
22U 上部鍔体
22D 下部鍔体
3 リング材
3U 上側リング材
3D 下側リング材
3h 柱受入孔
31 切欠き
32 小孔
33 溝
4 受圧部
4U 第1受圧部
4D 第2受圧部
41 返し
4w 広角開口側
4n 狭角開口側
4r 膨出抑制部
5 作用待機部
C クリアランス
NS 未充足空間
51 突起
AS リング変形許容空間
ER 膨出規制部
Claims (16)
- 柱材と、
この柱材に嵌設される弾性を有するリング材と、
前記柱材の上端に連結された第1の受圧部と、
前記柱材の下端に連結された第2の受圧部と
を具えて成る緩衝構造体において、
前記柱材は、受圧に伴い前記第1、第2受圧部の少なくとも一方に対して傾倒し、除圧に伴い復元するものであり、
また柱材の傾倒によって、前記リング材を、内周側から外周側方向に膨出変形させるようにしたことを特徴とする緩衝構造体。
- 前記リング材と前記第1の受圧部との間、前記リング材と前記第2の受圧部との間の少なくとも一方の間に作用待機部を設けたことを特徴とする請求項1記載の緩衝構造体。
- 前記リング材は、内周側からの柱材の傾倒に伴う外周側方向への膨出変形が進行する過程で、前記第1、第2受圧部による圧縮変形と剪断変形とが、更に付加されることを特徴とする請求項1または2記載の緩衝構造体。
- 前記柱材は、荷重が掛かっていない初期状態で、前記第1、第2受圧部の少なくとも一方に対して傾斜状態に形成された部位を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の緩衝構造体。
- 前記柱材は、受圧時における傾倒を促進させる傾倒誘導部を有していることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の緩衝構造体。
- 前記第1、第2受圧部は、荷重が掛かっていない初期状態で、非平行状態に設定されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の緩衝構造体。
- 前記柱材は、外周方向に張り出す鍔体を更に有し、当該鍔体は少なくとも一部がリング材内部に埋設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の緩衝構造体。
- 前記第2受圧部は、靴底であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の緩衝構造体。
- 前記リング材と柱材との接触面には、少なくともどちらかに、陥凹状のリング変形許容空間が形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の緩衝構造体。
- 前記リング材の膨出変形を制限する膨出規制部を更に具え、当該膨出規制部は、前記リング材の外側に配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の緩衝構造体。
- 前記リング材と柱材のうち少なくとも一方は、複数の異なる素材または異なる性状を有する部位から構成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の緩衝構造体。
- 前記柱材は、複数の部材で軸方向に連結可能に構成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の緩衝構造体。
- 前記リング材は、柱材に対して着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の緩衝構造体。
- 前記柱材は、表面に、前記リング材を柱材の中段に把持するための凸部、凹部、くびれ部の少なくともいずれか一つが形成され、リング材と嵌設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載の緩衝構造体。
- 着地時に装着者の脚に加わる衝撃を緩衝する緩衝構造体をソールに組み込んで成るシューズであって、
この緩衝構造体には請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14記載の緩衝構造体が適用されることを特徴とするシューズ。 - 前記緩衝構造体は、前記柱材の傾倒方向を走行または歩行時の圧力中心点の軌跡を誘導する方向に設定して配置されていることを特徴とする請求項15記載のシューズ。
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