JP5984037B2 - 金属拡散層製造方法及び鉄鋼材 - Google Patents

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本発明は、鉄鋼材等の金属材からなる基材を誘導加熱しつつ投射材を噴射して表面処理する金属拡散層製造方法及び鉄鋼材に関し、特に耐腐食性を向上させることができる技術に関する。
鉄鋼材等の金属材からなる基材に投射材を噴射して表面処理を施す方法として、目的に応じて種々の手法が知られている。例えば、投射材の消耗率をほとんど増大させずに清浄化・粗面化(表面清掃)効率を向上させるため、金属系粒子(大小2つの混合粒子)を投射する技術(例えば、特許文献1参照)、異なるサイズの粒子を混合したものを投射して、二段ショットピーニングと同等でより効果的な疲労強度向上の効果を得る技術(例えば、特許文献2参照)、焼結部品の表面に,固体潤滑剤粒子と硬質粒子との混合粒子を用いたショットピーニングを施し,硬質粒子の衝突エネルギにより固体潤滑剤を焼結部品に存在する空孔に十分に浸透させる技術(例えば、特許文献3参照)、酸化還元電位が異なる2種類の金属粉末が混合された投射材を鋼製の母材表面にショットピーニングして被膜を形成する技術(例えば、特許文献4)等が知られている。
特開2001−353661号公報 特開2000−52248号公報 特開2004−255522号公報 特開2008−1930号公報
上述した基材の表面処理方法では、次のような問題があった。すなわち、耐腐食性を向上させるためには、投射圧力、粒子供給量、投射時間、投射後の高温保持時間(以下、「保持時間」と称する)、投射材料の種類やその組合せ等の諸条件が複雑に関連するため、最適な処理条件が得られていなかった。
そこで本発明は、ショットピーニングにおける最適な処理条件によって鉄鋼材からなる基材の耐腐食性を向上させることができる金属拡散層製造方法及び鉄鋼材を提供することを目的としている。
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の金属拡散層製造方法及び鉄鋼材は次のように構成されている。
本発明に係る金属拡散層製造方法は、チャンバ内に収容された鉄鋼材からなる基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法であって、前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子と前記基材より硬く前記基材に対して化学反応がしにくい拡散促進粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記基材内部に当該金属粒子を構成する成分が拡散した金属拡散層を形成する噴射工程と、前記基材を冷却する冷却工程とを備えている。
本発明に係る金属拡散層製造方法は、チャンバ内に収容された鉄鋼材からなる基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法であって、前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子と、前記基材より硬く前記基材に拡散する性質を有する拡散促進粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進粒子を構成する成分とが拡散した金属拡散層を形成する噴射工程と、前記基材を冷却する冷却工程と、前記基材を焼きなまして当該基材の表面近傍に前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進粒子を構成する成分とからなる化合物を形成する焼きなまし工程とを備えている。
本発明に係る金属拡散層製造方法は、チャンバ内に収容された鉄鋼材からなる基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法であって、前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、前記基材を構成する鉄と原子半径との差が15%以内の金属粒子と前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内前記基材より硬い前記基材に拡散する性質を有する拡散促進金属粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進金属粒子を構成する成分とが拡散した金属拡散層を形成する噴射工程と前記基材を冷却する冷却工程と、前記基材を焼きなまして当該基材の表面近傍に前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進金属粒子を構成する成分とからなる化合物を形成する焼きなまし工程とを備えている。
本発明に係る鉄鋼材は、鉄鋼材からなる基材と、当該基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子を構成する成分当該基材より硬く当該基材に拡散する性質を有する拡散促進金属粒子を構成する成分とが拡散した金属拡散層と、当該金属粒子を構成する成分と当該拡散促進金属粒子を構成する成分とからなる化合物とを当該基材の表面に備える
本発明に係る鉄鋼材は、鉄鋼材からなる基材と、当該基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子を構成する成分当該基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内で当該基材より硬く当該基材に拡散する性質を有する拡散促進金属粒子を構成する成分とが混合した金属拡散層と、当該金属粒子を構成する成分と当該拡散促進金属粒子を構成する成分とからなる化合物とを当該基材の表面に備える
本発明によれば、ショットピーニングにおける最適な処理条件によって基材の耐腐食性を向上させることが可能となる。
本発明の第1の実施の形態に係る金属拡散層製造方法により金属材を製造する表面処理装置の構成を示す説明図。 同表面処理装置における時間と温度変化との関係を示す説明図。 同表面処理装置において処理された基材の分極試験に基づく、参照電極との間の電位と電流密度との関係を示す図。 同表面処理装置において処理された基材の電子顕微鏡写真、クロムマッピング、鉄マッピングを示す説明図。 同表面処理装置において処理された基材の電子顕微鏡写真、クロムマッピング、鉄マッピングを示す説明図。 同表面処理装置において処理された被処理物の分極試験に基づく、参照電極との間の電位と電流密度の関係を示す図。 技術例に係る金属拡散層製造方法により金属材を製造する同表面処理装置における時間と温度変化との関係を示す説明図。 同表面処理装置における処理条件を示す説明図。 同表面処理装置において処理された被処理物の分極試験に基づく、参照電極との間の電位と電流密度との関係を示す図。 同表面処理装置において処理された被処理物の分極試験に基づく、参照電極との間の電位と電流密度との関係を示す図。 同表面処理装置において表面処理された被処理物の表面を模式的に示す説明図。 同表面処理装置において表面処理された被処理物の表面を模式的に示す説明図。 同表面処理装置において表面処理された被処理物の表面を模式的に示す説明図。 本発明の第2の実施の形態に係る金属拡散層製造方法により金属材を製造する表面処理装置100における時間と温度変化との関係を示す説明図。 同表面処理装置100における時間と温度変化との関係を示す説明図。 同表面処理装置において処理された焼きなまし前の基材表面の光学顕微鏡による組織観察断面図。 同表面処理装置において処理された焼きなまし後の基材表面の光学顕微鏡による組織観察断面図。 Cr−Si−Feの3元素状態図。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る表面処理方法を実施する表面処理装置100の概略構成を示す断面図である。表面処理装置100は、基材Wを誘導加熱しつつ投射材Pを噴射して表面処理する装置である。ここで、基材Wとしては、鉄鋼材等の金属材を対象としている。一方、投射材Pとしては、例えば鉄、クロム、アルミニウム等の金属、あるいはクロム−ニッケルや炭化タングステン−コバルト等の合金、アルミナやシリカ、ジルコニア等のセラミックスである金属酸化物、炭化珪素や窒化珪素等のセラミックスである金属を含有する金属化合物、シリコン等、及びこれらの組合せが例示できる。また、投射材としては、例えば平均粒径が数μm〜数百μmに調整されたものが利用される。
図1に示すように、表面処理装置100は、気密に形成されたチャンバ110を備えている。チャンバ110内には、基材Wを載置する支持台120と、この支持台120の周囲に設けられた誘導加熱コイル130と、支持台120に向けて投射材又は不活性ガスを噴射する噴射ノズル(投射材噴射部)140とが設けられている。
支持台120には、基材Wの表面温度を測定する温度センサ121が設けられている。温度センサ121の出力は制御部300に接続されている。
誘導加熱コイル130は、チャンバ110外に設けられた高周波印加装置200に接続され、所定の周波数の高周波電流が印加される。
チャンバ110内には、噴射ノズル140が設けられ、支持台120に向けられたノズル141を備えている。噴射ノズル140には、電磁弁142を介してアルゴンガス(不活性ガス)を供給するガスボンベ160及び流量弁・圧力調整弁161に接続されている。流量弁・圧力調整弁161では、アルゴンガスを吸引式の噴射圧で例えば、0.4MPa以上となるように制御する。
流量弁・圧力調整弁161は、さらに粒子フィーダ150に接続されたフィーダライン151に接続されている。フィーダライン151には粒子フィーダ調整弁152〜154が設けられ、噴射ノズル140に投射材Pが供給されている。
高周波印加装置200は、単一、あるいは複数の周波数の高周波電流を誘導加熱コイル130に印加し、基材Wを誘導加熱する。
図1中300は、表面処理装置100の各部を制御する制御部を示している。制御部300は、作業者の設定、予め設定されたプログラム、センサ出力等の情報に基づいて、高周波印加装置200、電磁弁142、粒子フィーダ調整弁152〜154、基材Wの加熱、投射材Pの噴射速度・噴射量、アルゴンガスの噴射・噴射タイミング等を調整する。
制御部300による制御の一例として、制御部300による制御の一例として、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させ、その後にノズル141から投射材を投射圧力0.4MPa、投射時間30秒だけ噴射させるとともに基材Wが900℃に維持される状態に誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させ、その後、ノズル141からアルゴンガスのみを噴射させて基材Wを冷却させるように制御を行う。
本実施の形態における制御部300による制御の一例として、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させ、その後にノズル141から投射材を投射圧力0.4MPa、投射時間30秒だけ噴射させるとともに基材Wが900℃に維持される状態に誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させ、その後、ノズル141からアルゴンガスのみを噴射させて基材Wを冷却させるように制御を行う。
このように構成された表面処理装置100は、次のようにして動作する。なお、図2には基材Wの表面の温度変化を示している。なお、基材WとしてはS45C材、投射材Pとしては、クロム(金属粒子)とSKH59鋼の混合材を用いた。基材Wを構成する鉄とクロムは、原子半径の差が15%以内であるため、クロムは鉄の中に拡散する性質を有している。また、SKH59鋼は基材Wより硬く、かつ、不活性であり、クロムが基材W中へ拡散することを促進する性質を有する粒子(拡散促進粒子)である。
最初に、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させる。
次に、ノズル141から投射材Pを投射圧力0.4MPa、所定の粒子供給量、投射時間30秒だけ基材Wに向けて投射させてショットピーニング処理(SP)を行う(噴射工程)。このとき、温度センサ121の出力が900℃に保持されるように、誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させる。投射材Pの噴射(SP)により、投射材Pが基材Wの表面に衝突する。次に、ノズル141からアルゴンガスのみを基材Wに噴射して冷却を行う(冷却工程)。
なお、投射材Pについては、クロム材とSKH59鋼との混合比率を、クロム材の比率を10%(Cr10),15%(Cr15),20%(Cr20),25%(Cr25),50%(Cr50),75%(Cr75),100%(Cr100)と変えて、耐腐食性を比較した。図3は処理された基材Wの分極試験に基づく、参照電極との間の電位と電流密度との関係を示す図である。測定条件は環境25℃、電解液が3%NaCl水溶液、対極が白金電極、参照電極が飽和カロメル電極である。ここで電流密度が最も低くなる電位が自然電位である。
耐腐食性が向上するのは、自然電位が高く(貴である)、かつ、電流密度が一定となる傾向がある(不動態領域が大きい)ものとなる。したがって、図3に示すように、クロム材の比率が25%及び50%のものが耐腐食性に優れることが判る。これに対し、クロム材の比率が10%〜20%のものは、耐腐食性については劣っている。
上述したように、本実施の形態に係る表面処理装置100において、投射材としてクロム材とSKH59鋼との混合材を用いたショットピーニングにより基材Wの耐腐食性を高めるためには、クロム材の比率を25〜50%としたものが最適であることが判る。これは、クロムとS45Cよりも硬いSKH59鋼が同時に噴射されることで,クロムの基材W内部への拡散を促進するためである。また、不活性の金属材であり基材Wとの化学反応を抑制することができる。
このようにして、基材Wの表面にクロムと基材Wとが混合したクロム拡散層(金属拡散層)が形成された金属材が得られる。
なお、図4Aは、Cr100、Cr75、Cr50、Cr25における電子顕微鏡写真、クロムマッピング、鉄マッピングを示している。この図4Aからわかるように、Cr50及びCr25はクロム拡散層が一定以上の厚みをもって形成されており、耐腐食性の向上に寄与している。
これに対し、図4Bは、Cr10、Cr15、Cr20における電子顕微鏡写真、クロムマッピング、鉄マッピングを示している。この図4Bからわかるように、Cr10、Cr15、Cr20についてもクロム拡散層が一定以上の厚みをもって形成されるが、耐腐食性の向上に寄与していない。
さらに、噴射工程と冷却工程との間に、温度を少なくとも60秒間の一定に維持する温度保持工程を設定するようにしてもよい。この温度保持工程を設定することで、よりクロム拡散層の厚さが大きくなる。
図5は、SKH59鋼の代わりに、基材W中へ拡散し、かつ、それを促進する性質を有する拡散促進金属粒子として、Si粒子を用いた場合の、参照電極との間の電位と電流密度との関係を示す図である。この時のクロムの重量割合は50%である。この時、ショットピーニング後に、焼なましを施すことにより、さらに耐腐食性が向上することが、判る。
このように、Si粒子を用いた場合であっても、自然電位が高く、かつ、不動態領域が大きくなり、耐腐食性に優れることが判る。
図6は技術例に係る表面処理方法を実施する表面処理装置100における時間と温度変化との関係を示す説明図である。なお、表面処理装置100の構成は上述したものと同様であり、詳細な説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
なお、制御部300による制御の一例として、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させ、その後にノズル141から投射材を所定の投射圧力、所定の粒子供給量、所定の投射時間だけ噴射させるとともに基材Wが900℃に維持される状態に誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させ、所定の保持時間の間を維持した後、ノズル141からアルゴンガスのみを噴射させて基材Wを冷却させるように制御を行う。
このように構成された表面処理装置100は、次のようにして動作する。なお、被処理材WとしてS45C鋼、投射材はクロム材を用いた。図6に示すように、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させる。
次に、ノズル141から投射材Pを所定の投射圧力、所定の粒子供給量、所定の投射時間だけ基材Wに向けて投射させてショットピーニング処理(SP)を行う。このとき、温度センサ121の出力が900℃に保持されるように、誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させる。投射材Pの噴射(SP)により、投射材Pが基材Wの表面に衝突する。次に、所定の保持時間の間を維持し、ノズル141からアルゴンガスのみを基材Wに噴射して冷却を行う。
なお、投射圧力、粒子供給量、投射時間、保持時間については、実験計画法により、処理条件を設定した。具体的には、図7に示すように、試験片S1〜S8において、投射圧力を0.3MPaと0.5MPa、粒子供給量を0.2g/秒と0.8g/秒、投射時間を30秒と90秒、保持時間を0秒と60秒とし、表面O元素濃度、表面Cr元素濃度、改質層厚さの変化について調べた。
これにより、投射時間を短くすることで酸化反応を抑制可能、保持時間を長くすることにより,拡散が促進され、投射圧力が高く、粒子供給量が少ないほど、改質層厚さは増加(拡散を促進)することが判った。
一方、各処理条件下において、基材Wの分極試験を行った。この分極試験の結果、図8,9に示すように、参照電極との間の電位と電流密度との関係が判る。耐腐食性が向上するのは、自然電位が高く、かつ、不動態領域が大きい試験片S5のみであるから、投射圧力を0.5MPa、粒子供給量を0.2g/秒、投射時間を30秒、保持時間を60秒とすることが最適であることが判る。
なお、図10〜図12は、表面処理された基材Wの表面を模式的に示す説明図である。図10に示すように、試験片S1は基材Wの表面にクロム材が移着する。図11に示すように、試験片S2,S4,S6,S7,S8は、クロム材が移着するとともに、一部が拡散する。また、図12に示すように、試験片S3,S5は、クロム材の移着層は無く、拡散している。
上述したように、本技術例に係る表面処理装置100において、ショットピーニングにより基材Wの耐腐食性を高めるためには、投射材の投射時間を短くし、保持時間を長くし、投射圧力を高くし、粒子供給量を少なくすることで、改質層厚さが増加させることが良いことが判る。また、具体的な値としては、投射圧力を0.5MPa、粒子供給量を0.2g/s、投射時間を30秒、保持時間を60秒とすることが最適であることが判る。
図13及び図14は本発明の第2の実施の形態に係る表面処理方法を実施する表面処理装置100における時間と温度変化との関係を示す説明図である。なお、表面処理装置100の構成は上述したものと同様であり、詳細な説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
本実施の形態における制御部300による制御の一例として、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させ、その後にノズル141から投射材を投射圧力0.4MPa、投射時間30秒だけ噴射させるとともに基材Wが900℃に維持される状態に誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させ、その後、ノズル141からアルゴンガスのみを噴射させて基材Wを冷却させるように制御を行う。その後、500〜600℃で焼きなましを行う。
このように構成された表面処理装置100は、次のようにして動作する。なお、基材WとしてはS45C材、投射材Pとしては、クロム(金属粒子)とSiの混合材を用いた。基材Wを構成する鉄とクロムは、原子半径の差が15%以内であるため、クロムは鉄の中に拡散する性質を有している。また,Siは基材W中へ拡散し、かつそれを促進する性質を有する粒子(拡散促進金属粒子)である。
最初に、高周波印加装置200から誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させて基材Wを900℃まで加熱させる。
次に、ノズル141から投射材Pを投射圧力0.4MPa、所定の粒子供給量0.2g/秒、投射時間30秒だけ基材Wに向けて投射させてショットピーニング処理(SP)を行う(噴射工程)。このとき、温度センサ121の出力が900℃に保持されるように、誘導加熱コイル130に高周波電流を供給させる。投射材Pの噴射(SP)により、投射材Pが基材Wの表面に衝突する。次に、ノズル141からアルゴンガスのみを基材Wに噴射して冷却を行う(冷却工程)。
次に、図14に示すように、焼きなまし処理を行う。このとき、焼きなまし温度は600℃、焼きなまし時間は1時間程度が好ましい。
図15は焼きなまし前の基材W表面の光学顕微鏡による組織観察断面図である。クロム及びSiの拡散層Kができていることがわかる。図16は焼きなまし後の基材W表面の光学顕微鏡による組織観察断面図である。拡散層Kの厚さが増加するとともに、その表面近傍に多数の針状の析出物Dができていることがわかる。
ここで、図15の拡散層Kについて、元素分析を行う。図15におけるPoint1,2,3の元素濃度割合を図17のFe−Cr−Si系の三元系状態図に当てはめると、D0+CrSiの領域にそれぞれ位置し、CrSiが形成されることがわかる。これに対し、Point4の元素割合の場合には,A2+D0の領域に位置し、CrSiは形成されないことがわかる。
この結果と図16の観察結果を併せて考えると、表面近傍に認められた針状の析出物Dは、CrSiであるものと考えられる。Point3の位置よりも内部(基材側)でCrSiが形成されなかったのは、600℃での焼なましにおいて、CrSiを形成できる条件を満たしていなかったからである。なお、CrSi(シリサイド)は耐酸化性があり、腐食に強い。
上述したように、本実施の形態に係る表面処理装置100において、投射材としてクロム材とSiとの混合材を用いたショットピーニングにより基材Wの耐腐食性を高めるためには、ショットピーニングの後、焼きなまし工程を加えることが良い。
このようにして、基材Wの表面にクロムとSiとが混合したクロム拡散層(金属拡散層)及びシリサイドが形成された金属材が得られる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]チャンバ内に収容された基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法において、前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、前記基材と原子半径の差が15%以内の金属粒子と前記基材より硬く、かつ、拡散促進粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記金属材を含む金属拡散層を形成する噴射工程と、前記基材を冷却する冷却工程とを備えていることを特徴とする金属拡散層製造方法。
[2]前記金属粒子はクロム材で、前記投射材における重量割合が25〜50%であることを特徴とする[1]に記載の金属拡散層製造方法。
[3]前記拡散促進粒子は、不活性であることを特徴とする[1]に記載の金属拡散層製造方法。
[4]前記拡散促進粒子は、SKH59鋼であることを特徴とする[3]に記載の金属拡散層製造方法。
[5]前記拡散促進粒子は、前記基材内に拡散する性質を有することを特徴とする[1]に記載の金属拡散層製造方法。
[6]前記拡散促進粒子は、Si材であることを特徴とする[5]に記載の金属拡散層製造方法。
[7]前記噴射工程と前記冷却工程との間に、温度を少なくとも60秒間の一定に維持する温度保持工程を有していることを特徴とする[2]に記載の金属拡散層製造方法。
[8]チャンバ内に収容された基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法において、前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、前記金属粒子と前記基材と原子半径の差が15%以内、かつ、前記基材より硬い拡散促進金属粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記金属粒子を含む金属拡散層を形成する噴射工程と、前記基材を焼きなます焼きなまし工程と、前記基材を冷却する冷却工程とを備えていることを特徴とする金属拡散層製造方法。
[9]基材と、この基材の表面に前記基材と原子半径の差が15%以内の金属粒子が拡散した金属拡散層とを備えていることを特徴とする金属材。
[10]基材と、前記基材と原子半径の差が15%以内の金属粒子と、前記基材と原子半径の差が15%以内、かつ、前記基材より硬い拡散促進金属粒子とが混合した金属拡散層とを備えていることを特徴とする金属材。
100…表面処理装置、110…チャンバ、120…支持台、121…温度センサ、130…誘導加熱コイル、140…噴射ノズル、142…電磁弁、150…粒子フィーダ、151…フィーダライン、152〜154…粒子フィーダ調整弁、160…ガスボンベ、161…流量弁・圧力調整弁、200…高周波印加装置、300…制御部、W…基材、P…投射材。

Claims (9)

  1. チャンバ内に収容された鉄鋼材からなる基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法において、
    前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、
    前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、
    前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子と、前記基材より硬く化学反応がしにくい拡散促進粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記基材内部に当該金属粒子を構成する成分が拡散した金属拡散層を形成する噴射工程と、
    前記基材を冷却する冷却工程とを備えていることを特徴とする金属拡散層製造方法。
  2. チャンバ内に収容された鉄鋼材からなる基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法において、
    前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、
    前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、
    前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子と、前記基材より硬く当該基材に拡散する性質を有する拡散促進粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進粒子を構成する成分とが拡散した金属拡散層を形成する噴射工程と、
    前記基材を冷却する冷却工程と
    前記基材を焼きなまして当該基材の表面近傍に前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進粒子を構成する成分とからなる化合物を形成する焼きなまし工程とを備えていることを特徴とする金属拡散層製造方法。
  3. 前記金属粒子はクロム材で、前記投射材における重量割合が25〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属拡散層製造方法。
  4. 前記拡散促進粒子は、SKH59鋼であることを特徴とする請求項1に記載の金属拡散層製造方法。
  5. 前記拡散促進粒子は、Si材であることを特徴とする請求項2に記載の金属拡散層製造方法。
  6. 前記噴射工程と前記冷却工程との間に、温度を少なくとも60秒間の一定に維持する温度保持工程を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属拡散層製造方法。
  7. チャンバ内に収容された鉄鋼材からなる基材の表面に金属拡散層を形成する金属拡散層製造方法において、
    前記チャンバ内を不活性ガスに置換する置換工程と、
    前記基材を所定の処理温度まで加熱する加熱工程と、
    前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子と、前記基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内前記基材より硬い前記基材に拡散する性質を有する拡散促進金属粒子とを混合した投射材を前記基材表面に噴射して前記金属粒子を構成する成分を含む金属拡散層を形成する噴射工程と、
    前記基材を冷却する冷却工程と
    前記基材を焼きなまして当該基材の表面近傍に前記金属粒子を構成する成分と前記拡散促進金属粒子を構成する成分とからなる化合物を形成する焼きなまし工程とを備えていることを特徴とする金属拡散層製造方法。
  8. 鉄鋼材からなる基材と、
    当該基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子を構成する成分と、当該基材より硬く当該基材に拡散する性質を有する拡散促進金属粒子を構成する成分とが拡散した金属拡散層と、当該金属粒子を構成する成分と当該拡散促進金属粒子を構成する成分とからなる化合物とを当該基材の表面に備えることを特徴とする鉄鋼材。
  9. 鉄鋼材からなる基材と、
    当該基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内の金属粒子を構成する成分、当該基材を構成する鉄との原子半径の差が15%以内で当該基材より硬く当該基材に拡散する性質を有する拡散促進金属粒子を構成する成分とが混合した金属拡散層と、当該金属粒子を構成する成分と当該拡散促進金属粒子を構成する成分とからなる化合物とを当該基材の表面に備えることを特徴とする鉄鋼材。
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