JP5983977B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
このような固体電解コンデンサは、固体電解質として二酸化マンガンを用いた従来の固体電解コンデンサと比較して、固体電解質の導電率が10〜100倍高く、またESR(等価直列抵抗)を大きく減少させることが可能であり、小型電子機器の高周波ノイズの吸収用など様々な用途への応用が期待されている。
化学酸化重合法は、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリンなどの導電性高分子のモノマーと、酸化剤やドーパント(導電補助剤)を含む溶液をに、表面に陽極酸化皮膜が形成された金属体(陽極体)を浸漬させ、陽極酸化皮膜上においてモノマーと酸化剤とを直接反応させて導電性高分子層を形成させる方法である。
一方、電解重合法は、予め陽極酸化皮膜上に導電性の下地層を形成しておき、該下地層上に導電性高分子のモノマーおよびドーパントを含む電解質液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜と下地層との間に電圧を印加して導電性高分子層を形成する方法である。
また、特許文献2には、化学酸化重合法により形成されたポリピロールもしくはポリアニリンの導電性高分子層を下地とし、該下地の表面に同質の導電性高分子層を電解重合法によってさらに形成する方法が開示されている。
そこで、陽極酸化皮膜上で化学酸化重合を行わずに導電性高分子層を形成するスラリーポリマー塗布法が提案されている。スラリーポリマー塗布法は、予めモノマーを重合させてポリマー(導電性高分子)とし、該ポリマーを含む分散液を陽極酸化皮膜上に願信させて乾燥し、塗膜とすることにより導電性高分子層を形成する方法である。
スラリーポリマー塗布法は、化学酸化重合法や電解重合法とは異なり、陽極酸化皮膜上で重合反応を進行させるのではなく、予めモノマーと酸化剤とドーパントを化学反応させて重合反応が完了した導電性高分子を用いる。従って、重合反応を陽極酸化皮膜上で行う必要がないため、製造工程の制御が比較的容易であるという特徴を有する。
従って、スラリーポリマー塗布法により導電性高分子層を形成する場合に、その導電率を上げてESRを低下させるためには、分子量の大きな導電性高分子を用いればよい。
この方法では、まず化学酸化重合法により陽極酸化皮膜上に第一の導電性高分子層を形成し、ついでスラリーポリマー塗布法により、分子量が大きく導電性の高い導電性高分子の分散液を用いて、高導電率の第二の導電性高分子層を形成する。
また、ポリジオキシチオフェンは、分子量は小さいものの水や有機溶剤に難溶であり、分散液中で凝集しやすく、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しにくかった。
しかし、近年、多孔質の金属体はさらに微細化されていたり、様々な形態の微細孔を有していたりする。また、巻回型固体電解コンデンサのように、繊維又は紙系のセパレーターに絶縁油を染み込ませたものでは、導電性高分子はセパレーターに浸透しづらく、コンデンサ内部の陽極酸化皮膜の微細孔に含浸させることが難しかった。
従って、多孔質金属体の表面に形成された陽極酸化皮膜も内部はより微細で複雑であり、該陽極酸化皮膜の内部に導電性高分子を含浸させるには、上述したポリマー溶液を用いるだけでは不十分であった。
そこで、さらに検討を重ねた結果、ポリマー溶液の表面張力を規定すること、または/および、界面活性剤を含むことで、セパレーターに絶縁油を染み込ませた巻回型固体電解コンデンサの場合でも、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の実施の形態において、巻回型固体電解コンデンサは、導電性高分子層の形成工程の他は、公知の技術により製造される。
例えば、アルミニウム箔の表層近傍をエッチングにより多孔質体化した後、陽極酸化により誘電体酸化皮膜層(陽極酸化皮膜)を形成し、本実施の形態による導電性高分子層を含む固体電解質を形成した後、陰極部を形成し、陽極部および陰極部には外部端子を接続し外装を施して、本実施の形態にかかる巻回型固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の更なる実施形態における固体電解質層の作製工程では、繊維又は紙系のセパレーターを使用したコンデンサ素子に、可溶性導電性高分子と、0.1〜20質量%の界面活性剤を含む導電性組成物を塗布し、乾燥して導電性高分子層を形成する。
本発明において、導電性高分子層は、水または有機溶剤に可溶な導電性高分子(以下、「可溶性導電性高分子」という。)を含む。
なお、本発明において「導電性」とは、109Ω・cm以下の体積抵抗率を有することである。
可溶性導電性高分子としては、水または有機溶剤に溶解するものであれば特に限定されないが、スルホン酸基(−SO3H)および/またはカルボキシ基(−COOH)を有するものが、溶解性の観点で好ましく用いられる。なお、可溶性導電性高分子において、スルホン酸基、カルボキシ基は、それぞれ、酸の状態(−SO3H、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO3 −、−COO−)で含まれていてもよい。
本発明において「可溶」とは、10gの水または有機溶剤(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。つまり、式(1)中、R1〜R4のうちの少なくとも一つは、−SO3 −、−SO3H、−COOHまたは−COO−である。特に、製造が容易な点で、R1〜R4のうち、いずれか一つが炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つが−SO3 −または−SO3Hであり、残りがHであるものが好ましい。
また、可溶性導電性高分子は、導電性に優れる観点で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
なお、可溶性導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定し、ポリエチレングリコール換算した値である。
他の導電性高分子としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどが挙げられる。
ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。
これら界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、界面活性剤の含有量が20質量%以下であれば、導電性を良好に維持できる。
前記導電性組成物は、可溶性導電性高分子および絶縁油に溶解する溶剤を含有し、必要に応じて他の導電性高分子や、各種添加剤を溶媒に溶解することで得られる。
その際、表面張力を65mN/m以下になるように調整する。表面張力調整方法としては、例えば、水と有機溶剤の混合溶媒を使用する方法、水および/または有機溶剤に既存の界面活性剤を添加する方法等がある。
導電性組成物の表面張力が65mN/m以下であれば、陽極酸化皮膜が形成されたコンデンサ素子に対する濡れ性が向上するため、分子量の大きい可溶性導電性高分子を用いても、可溶性導電性高分子は陽極酸化皮膜の表面に堆積することなく、微細な凹凸の内部へ含浸できる。
なお、導電性組成物の表面張力は、可溶性導電性高分子の種類や量、溶媒の種類などによって調整できる。
前記絶縁油等の油分を溶解する溶剤を含有するものであれば特に限定されない。
前記導電性組成物に用いる溶媒の具体例としては、前記絶縁油等の油分を溶解する溶剤及び水を混合したものが好ましく用いられる。なお、溶媒は2種以上を用いても何ら差し支えない。
可溶性導電性高分子の割合が0.5質量%以上であれば、十分な膜厚の導電性高分子層を形成できる。一方、可溶性導電性高分子の割合が30質量%以下であれば、導電性組成物中で可溶性導電性高分子が凝集するのを抑制でき、導電性組成物が高粘度化しにくくなり、可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部により含浸しやすくなる。
導電性組成物の表面張力が65mN/m以下であれば、陽極酸化皮膜が形成された巻回型固体電解コンデンサ素子に対する濡れ性が向上するため、分子量の大きい可溶性導電性高分子を用いても、可溶性導電性高分子は陽極酸化皮膜の表面に堆積することなく、微細な凹凸の内部へ含浸できる。
例えば、溶媒として混合溶媒を用いる場合、有機溶剤の割合が多くなるに連れて、導電性組成物の表面張力は低くなる傾向にある。
また、導電性組成物の表面張力は、上述した界面活性剤を配合することでも調整できる。
特に、溶剤として水のみを用いる場合は、導電性組成物の表面張力が高くなる傾向にある。そのような場合は、界面活性剤を配合すると表面張力が低下しやすくなる。
すなわち、測定子(白金プレート)を測定溶液につけて、測定子が溶液に引っ張られる力(表面張力)と測定子を固定しているバネの力がつりあったときの、測定子が溶液に沈んだ変位から、表面張力を測定した。
ディップコート法により導電性組成物を塗布する場合、作業性の観点から、導電性組成物への浸漬時間は、1〜30分が好ましい。また、ディップコートする際に、減圧時にディップさせて常圧に戻す、あるいは、ディップ時に加圧するなどの方法も有効である。
しかし、本発明であれば、上述した導電性組成物を用いて塗布を行うので、可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しやすい。従って、スプレーコート法などを用いなくても、操作が容易で、初期投資がかかりにくく、しかも可溶性導電性高分子を無駄なく利用できるディップコート法を使用でき、経済的にも有益である。
また、乾燥条件は、可溶性導電性高分子や溶媒の種類により決定されるが、通常、乾燥温度は、乾燥性の観点から、20〜190℃が好ましく、乾燥時間は1〜30分が好ましい。
よって、本発明により得られる巻回型固体電解コンデンサは、陽極酸化皮膜上に、その微細な凹凸の内部にまで十分に可溶性導電性高分子が含浸した導電性高分子層が形成されるので、静電容量が高く、コンデンサとしての性能に優れる。
また、本発明は、陽極酸化皮膜上で化学酸化重合を行わずに導電性高分子層を形成できるので、製造工程の制御が容易であり、制御性に優れる。
本発明において、巻回型固体電解コンデンサに使用されるセパレーターには、繊維又は紙系やPET等がある。巻回型固体電解コンデンサを作る工程で、セパレーターに絶縁油を染み込ませたものが用いられることもある。上記絶縁油としては、フタル酸エステルやマレイン酸エステル、フマル酸エステル、アルキルベンゼン油などが挙げられるが、鉱油、ジアリルエタン油、アルキルベンゼン油、脂肪族エステル油、芳香族エステル油、多環芳香族油、シリコン油等の電気絶縁油またはこれらの混合物が含まれるものであれば特に限定されるものではない。
導電性組成物の表面張力は、自動表面張力計(協和界面科学株式会社 CBVP−Z型)を用いて、プレート法(ウィルヘルミ法)で測定した。
すなわち、測定子(白金プレート)を測定溶液につけて、測定子が溶液に引っ張られる力(表面張力)と測定子を固定しているバネの力がつりあったときの、測定子が溶液に沈んだ変位から、表面張力を測定した。
試験片を縦方向(積層方向)に切断し、これを走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、「S−4300SE/N」、)にて、観察倍率1000〜30000倍で観察して、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への可溶性導電性高分子の含浸状態を確認した。以下に示す評価基準にて含浸性の評価を行った。
◎:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に十分含浸している。
○:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に十分ではないが含浸している。
△:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部にやや含浸している。
×:可溶性導電性高分子の陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸が不十分である。
電気容量はLCRメーター(アジレント製E4980A プレシジョンLCRメーター)を用いて周波数120Hzで測定した。
a−1:ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを,25℃で100mmolのトリエチルアミン水溶液に攪拌溶解し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、重合体粉末15gを得た。この重合体の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレングリコール換算で求めた質量平均分子量は約10000であった。
B−1:a−1(5質量部)と、溶媒として水(100質量部)を混合した。
B−2:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とイソプロピルアルコール(IPA)(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−3:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とアセトン(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−4:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とメタノール(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−5:a−1(5質量部)と、溶媒として水(90質量部)と、メタノール(10質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−6:a−1(5質量部)と、溶媒として水(75質量部)とメタノール(25質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−7:a−1(3質量部)と、溶媒として水(100質量部)を混合した。
B−8:a−1(3質量部)と、溶媒として水(80質量部)とメタノール(20質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−9:a−1(5質量部)と、溶媒として水(100質量部)に界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王株式会社製の「ペレックスOT−P」(c−1)を0.5質量%)混合した。
B−10:a−1(3質量部)と、溶媒として水(100質量部)に界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王株式会社製の「ペレックスOT−P」(c−1)を0.1質量%)混合した。
B−11:a−1(3質量部)と、溶媒として水(80質量部)とイソプロピルアルコール(IPA)(20質量部)の混合溶媒とを混合した。
導電性組成物(B−1〜B−11)を調整し、各々の表面張力を測定した。結果を表1に示す。
表1(B−2)に示す組成で導電性組成物を調整し、前記組成物溶液に誘電体層を有する陽極酸化したアルミ箔を浸漬し、130℃で乾燥することによって導電性高分子層を形成させた巻回型固体電解コンデンサ用アルミ箔を作製した。前記巻回型固体電解コンデンサ用アルミ箔の含浸性評価の結果を表2に示す。
表1に示す種類の導電性組成物(実施例2〜6:B―3〜6、B−9、比較例1:B−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして含浸性評価を行った。含浸性評価の結果を表2に示す。
PET製のセパレーターを有するAl巻回コンデンサ素子にB−7〜10(実施例7〜9:B−8、10、11、比較例2:B−7)の導電性組成物を浸漬させた後に、130℃で1時間乾燥させたものを、LCRメーター(アジレント製E4980A プレシジョンLCRメーター)を用いて120Hzでの電気容量を測定した。その結果を表3に示す。
一方、表面張力が67mN/mである比較例1は、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子層を十分に含浸させることができなかった。
また、表3より、表面張力が65mN/m以下の場合、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子が十分に含浸(陽極酸化皮膜の微細孔の被覆率が改善)できたため、高い電気容量が発現させることができた。
一方、表面張力が67mN/mである比較例2は、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子層を十分に含浸させることができず、十分な電気容量を発現することができなかった。
1 巻回型コンデンサ(素子)
2 陰極
3 陽極
4 セパレーター
Claims (4)
- 巻回型固体電解コンデンサの製造方法であって、
セパレーターを使用したコンデンサ素子に、可溶性導電性高分子と、水および/または有
機溶剤を含み、表面張力を29.7mN/m以上、43.1mN/m以下の範囲に調整した導電性組成物を塗布する工程と、乾燥して導電性高分子層を形成する工程を有する、巻回型固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記導電性組成物に含まれる有機溶剤の量が、1〜70質量%である、請求項1に記載の巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記導電性組成物が、0.1〜20質量%の界面活性剤を更に含む、請求項1または2に記載の巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記導電性高分子が下記一般式(1)で表されるものである請求項1〜3の何れか一項に記載の巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
式(1)中、R1〜R4は、各々独立に、−H、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、−F、−Cl、−Brまたは−Iであり、R1〜R4のうちの少なくとも一つは酸性基である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
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