JP5981771B2 - 炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物、それを用いた成形材料及び炭素繊維強化プラスチック - Google Patents
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Description
特に、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂と、ガラス繊維とを含むFRPは、スチレン等の重合性不飽和単量体を併用することによって成形材料の粘度の調整が可能な上に、低温から高温までの幅広い温度範囲で硬化させることができるため、最も広範囲で使用されている。
更には、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂をベース樹脂として用い、各種、強化繊維、フィラー、増粘剤、硬化剤、禁止剤等を添加してなるブロック状成形材料、所謂、バルクモールディングコンパウンド、または、フィルムにて、各種、強化繊維、フィラー、増粘剤、硬化剤、禁止剤等を含有してなるコンパウンドを、シート状にしてなるシート状成形材料、所謂、シートモールディングコンパウンドとしても、広く使用されている。
前記高強度と軽量化とを両立し得るFRPとしては、例えば、従来のガラス繊維の代わりに炭素繊維を使用した炭素繊維強化プラスチックが知られている。前記炭素繊維は、ポリアクリルニトリル樹脂や、石油、石炭から採れるピッチ等の有機物を繊維化して、その後、特殊な熱処理工程を経て作られる微細な黒鉛結晶構造をもつ繊維であって、従来のガラス繊維よりも軽く、高強度であるという特徴を有する。
そのため、前記炭素繊維とエポキシ樹脂とを用いて得られたFRPは、従来のガラス繊維と比較して格段に優れた強度を有し、さらには、従来品の約25%以上もの軽量化を達成したものであった。
すなわち、機械的強度等の特性に影響する大きな要因として、炭素繊維との界面密着性が上げられ、また、樹脂自体の靱性を向上させる試み、即ちその脆さを改善させる試みが考えられるが、従来の手法では、炭素繊維との界面密着性を考慮しながら脆さを改良する樹脂設計は困難であった。また、機械的強度の改善を図るために、高靱性を有するエポキシ樹脂を用いることが検討されている。
しかし、前記エポキシ樹脂は、一般に粘度が高く、前記不飽和ポリエステルやビニルエステルのように重合性不飽和単量体を用いることによってその粘度を調整することが困難であるため、成形法や成形条件の点で多くの制限があった。また、前記エポキシ樹脂は、通常、常温下で硬化し難く、硬化に長期の時間を要することから、生産効率を向上するうえでも大きな問題であった。そこで、炭素繊維を用いた優れたFRP強度を有し、粘度調整及び成形硬化性に優れる樹脂の開発が強く望まれていた。
また、ビニルエステルと、炭素繊維とを含むFRPとしては、例えば、ビニルエステルと、スチレンモノマーとからなるビニルエステル樹脂、もしくは、メタクリルモノマーと、光重合開始剤とからなるビニルエステル樹脂を、ガラス繊維もしくは炭素繊維に含浸させながらフィラメントワインディング法で成型物を得た後、蛍光灯による光とレドックス反応により生成するラジカルにより、その成型物を硬化させて得られた炭素繊維強化樹脂複合材料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、上記特許文献2に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料も、従来のエポキシ樹脂系の成形材料に匹敵するレベルの強度を付与することが困難であるため、高強度の成形品の製造に使用することは、依然として困難であった。
更には、該樹脂組成物を用い、ブロック状成形材料及びシート状成形材料に利用可能な、即ち、バルクモールディング、或いはシートモールディングへの適用が可能であるが、その際に、コンパウンドを増粘させる必要があり、従来、増粘剤として、例えば、酸化マグネシウムのような金属酸化物がシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)等に好適に用いられている。
しかし、ポリマー中に酸基および水酸基を有する必要があり、例えば、ビニルエステル、ウレタンアクリレート、(メタ)アクリル酸エステルの重合体からなる樹脂などのような酸基を有さない場合には金属酸化物を用いることはできない。また、該増粘方法は樹脂中の水分によって、その増粘速度および増粘度が大きく左右され、増粘を安定して制御することが難しい。そこで、増粘剤として、アクリル樹脂微粉末を用いた増粘性材料の検討がなされており、不飽和ポリエステル樹脂をベース樹脂として各種検討がなされており、例えば、特開平5−171022号公報に開示されているような樹脂粉末を用いて増粘させた場合、不溶解部分が残り、得られた成形品の物性が低下する問題がある。さらに、上記アクリル粉末による増粘は、増粘安定、迅速な増粘などの点では良好であるが、全ての場合において、アクリル粉末が一部不溶な部分として残り、異物の入った成型品と同様、無添加の場合に比べて強度面で劣っており、増粘性が良好で、取り扱い性、成形性、強度に優れた増粘剤を用いた、ブロック状成形材料及びシート状成形材料が望まれている。
また、第二の効果として、特定の増粘剤を含有することにより、加熱圧縮成形に使用可能である成形材料及び炭素繊維強化プラスチックを提供することができる。
本発明の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物は、下記一般式(I)で示される構造を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上のラジカル重合性不飽和単量体(B)と、有機過酸化物(C)と、を含有してなるものである。
なお、前記分子量は、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を構成する原子の式量に基づき、その合計量から求められる値を指す。
中でも、水酸基含有(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、水酸基含有メタクリレートを使用することがより好ましい。水酸基含有メタクリレートを使用することにより、得られる成形品を耐熱性に特に優れたものとすることができる。
また、前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)の数平均分子量は、200〜3000であることが好ましい。また、この範囲内の数平均分子量とするため、反応条件を適宜決定することができる。反応条件としては、例えば、前記反応温度範囲にて行い、必要に応じて反応触媒を併用することが好ましい。
また、前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)を製造する際には、重合禁止剤を用いても良い。前記重合禁止剤としては、後述するものが挙げられる。前記重合禁止剤の濃度としては、前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)の重量部に対して10〜1500ppmで用いることが好ましい。
前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)と、前記活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)との反応は、50〜100℃の温度範囲で行うことが好ましい。
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を製造する際には、オクチル錫系化合物等の公知の触媒を使用しても良い。
また、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を製造する際には、前記(A−1)を製造する際と同様の重合禁止剤を用いても良い。前記重合禁止剤の濃度としては、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)の重量部に対して10〜1500ppmで用いることが好ましい。
通常、ラジカル重合性不飽和単量体は、スチレンが用いられるが、スチレンを用いた場合は、炭素繊維強化プラスチックの機械的特性が十分発現されず、十分な機械的強度を発現させるためには、炭素繊維との界面接着性を考慮した、本発明のラジカル重合性不飽和単量体(B)を用いる必要がある。更に、該ラジカル重合性不飽和単量体(B)は、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と共に用いることで、炭素繊維との界面接着性が良好であり、また、樹脂自体の高靱性化が発現されるため、炭素繊維強化プラスチックの機械的特性の発現がより高いものとなる。本発明のラジカル重合性不飽和単量体は、特性を損なわない範囲で下記列挙するラジカル重合性不飽和単量体と併用することが可能だが、本発明のラジカル重合性不飽和単量体は、全体のラジカル重合性不飽和単量体を100重量部とすると、70重量部以上含有することが望ましい。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとフェノキシエチル(メタ)アクリレートを併用して用いると、硬化物の吸水性の観点からより好ましい。
また、特性を損なわない範囲で、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリールフタレート、トリアリール(イソ)シアヌレート;さらにアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等として、(メタ)アクリル酸メチル(メチルメタクリレート)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アミノメチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)のジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)変性(n=1〜8)ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド(EO)変性(n=1〜3)ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド(EO)変性(n=1〜3)トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノエステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の、樹脂と架橋可能な重合性不飽和化合物を併用することができる。
前記有機過酸化物(C)は、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)との合計100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で使用することが好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。前記上限値10重量部以上であると、前記有機過酸化物同士のラジカル種の再結合等が起こり、機械的物性に悪影響を及ぼす場合がある。
前記紫外線硬化剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系化合物等を使用することができる。
また、前記電子線硬化剤としては、例えば、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジスルファイド系化合物等を使用することができる。
前記重合禁止剤としては、例えば、トルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を使用することができる。前記重合禁止剤の使用量は、前記炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物中10〜1500ppmが好ましい。
ここで、PAN系炭素繊維とは、アクリロニトリル構造単位を主成分とし、イタコン酸、アクリル酸、アクリルエステル、アクリルアミド等のビニル単量体単位を10モル%以下含有する共重合体を出発原料とし、これを酸化雰囲気中で熱処理することにより耐炎化し、次いで、不活性雰囲気中で炭素化又は黒鉛化した繊維である。
また、前記炭素繊維は、前記集束処理とは別に、予め、電解酸価処理等の表面処理が施されていてもよい。炭素繊維の集束に使用する集束剤としては、芳香族構造及び不飽和二重結合含有樹脂を含有するもの等が用いられる。
また、前記炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物には、炭素繊維以外に、ガラス繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維、金属繊維、ジュートやマニラ麻等の天然植物繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、ガラスビーズ、砕砂
アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン等の充填剤を配合して用いることもできる。これら充填材は、作業性や得られる成形品の強度、機能、外観、経済性などを考慮して選ばれる。
さらに、前記炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物には、ステアリン酸亜鉛、チタン白、亜鉛華、その他各種顔料安定剤、難燃剤、消泡剤、カップリング剤、内部離型剤、熱可塑性樹脂等の低収縮剤、低収縮剤がラジカル重合性樹脂と非相溶の場合は相溶化剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、光安定剤、熱安定剤等の他の添加剤を使用することができる。
前記硬化反応は、使用する前記有機過酸化物(C)の種類等によって異なるが、概ね常温〜150℃で加熱し行うことが好ましい。
特に、本発明の樹脂組成物を用い、ブロック状成形材料及びシート状成形材料に利用することができ、即ち、バルクモールディング、或いはシートモールディングへの適用が可能である。その際に、コンパウンドを増粘させる必要があり、従来、増粘剤として、例えば、酸化マグネシウムのような金属酸化物がSMCやBMC等に好適に用いられる。
前記増粘剤(E)としては、ポリメチルメタクリレート又はメチルメタクリレートを主成分とする粉末状のものが用いることができる。
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノールを202部、イソホロンジイソシアネートを622部、トルハイドロキノンを50ppm仕込み、90℃で約2時間加熱攪拌して、分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタンを得た。
その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを382部、錫系触媒を50ppm添加し、90℃で約7時間反応させて、分子量848のポリウレタン(I)を得た。
なお、前記分子量は、前記ポリウレタン(I)を構成する原子の式量に基づき計算して求めた値である。
(IRスペクトル測定条件)
測定機器:赤外分光光度計FT/IR−460(日本分光社製)。
測定法:KBrプレート使用による透過法。
積算回数:16回。
(ピークの帰属)
[シクロヘキサンジメタノール由来のピーク]
2920cm−1、2860cm−1、1450cm−1:C−H振動。
1030cm−1:C−O吸収。
[ウレタン結合生成確認のピーク]
1710cm−1:C=O基。
1530cm−1:〜N(H)−C=O〜。
[イソシアネート基が消失していることを確認するピーク]
2260〜2270cm−1:NCO基。
合成例1と全く同一の反応装置に、シクロヘキサンジメタノールを216部、ノルボルネンジイソシアネートを618部、トルハイドロキノンを50ppm仕込み、80℃で約2時間加熱攪拌して、分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタンを得た。
その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを410部、錫系触媒を50ppm添加し、90℃で約7時間反応させて、分子量816のポリウレタン(II)を得た。
なお、前記分子量は、前記ポリウレタン(II)を構成する原子の式量に基づき計算して求めた値である。
合成例1と全く同一の反応装置に、ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量375部)を990部、メタクリル酸を215部、ジブチルヒドロキシトルエンを350ppm、2−メチルイミダゾールを1000ppm仕込み、110℃で約5時間反応させ、酸価が4に達したところで反応を終了し、エポキシメタクリレート樹脂を得た。
合成例1と全く同一の反応装置に、ポリプロピレングリコール(水酸基価より算出の分子量701)を701部、トリレンジイソシアネートを296部、イソホロンジイソシアネートを67部仕込み、80℃で約5時間加熱攪拌して、分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(イソシアネート当量532)を得た。
その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを273部添加し、80℃で約4時間反応させて、ポリウレタン(III)を得た。
メチルメタクリレート80部を、撹拌機を備えた反応機に仕込み、乳化剤としてメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体からなる高分子乳化剤1部、触媒として過硫酸カリウム0.1部を添加し、水150重量部中で重合温度80℃にて180分間撹拌した後、重合転化率98%になるまで重合を行った。得られたラテックスの平均粒子径はいずれも0.2〜0.5μmの範囲内であった。得られたラテックスをスプレードライによって150℃で噴霧乾燥し、重合体粉末を得た。重量平均分子量は40万であった。得られたアクリル樹脂からなる重合体をアクリル樹脂からなる増粘剤として使用した。
合成例1で得られたポリウレタン(I)50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと表記する場合がある。)25部、フェノキシエチルメタクリレート(以下、PhEMAと表記する場合がある。)25部を混合して均一溶液にし、促進剤として8%オクテン酸コバルト0.3部を添加して均一になるよう混合し、さらにラジカル硬化剤(「328E」、化薬アクゾ社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。離型処理の施された350mm×350mmのガラス板上において、炭素繊維クロス(「パイロフィルTR3110MS」、三菱レイヨン社製、ビニルエステル樹脂用炭素繊維)の上に、ハンドレイアップ成形法(8プライ)によって、該樹脂組成物を炭素繊維の体積含有率が50%になるように積層し、常温(25℃)で12時間硬化させた後、さらに60℃にて3時間後硬化させ、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例2で得られたポリウレタン(II)50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25部、フェノキシエチルメタクリレート25部を混合して均一溶液にし、促進剤として8%オクテン酸コバルト0.3部を添加して均一になるよう混合し、さらにラジカル硬化剤(「328E」、化薬アクゾ社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。実施例1と同様に、炭素繊維クロスと積層を行い、硬化させ、同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例1で得られたポリウレタン(I)50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25部、フェノキシエチルメタクリレート25部を混合して均一溶液にし、さらにラジカル硬化剤(「パーキュアーHO」、日本油脂社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。引き続き、合成例で得られたアクリル樹脂からなる増粘剤を20部添加、溶解させた。引き続き、350mm×350mmのガラス板上に、離型剤処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を置き、その上に、増粘剤が混合された樹脂組成物を、炭素繊維クロス(「パイロフィルTR3110MS」、三菱レイヨン社製、ビニルエステル樹脂用炭素繊維)に、ローラーを用い、炭素繊維クロスを一枚ずつ含浸させ、8枚積層し、最後に同PETフィルムで挟み込み、50℃にて1時間、乾燥機中で加熱し、増粘させ、シート状の成形材料とした。その後ガラス板を取り除き、PETフィルムで挟まれた該シート状成形材料を、加熱プレス機にて、加熱温度100℃、プレス圧力15MPaにて、30分間、繊維強化された硬化物の厚みが、2mm厚、炭素繊維の体積含有率が50%になる様に、加熱圧縮硬化させた。硬化後、PETフィルムを取り除き、得られた硬化物を用い、実施例1と同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例2で得られたポリウレタン(II)50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25部、フェノキシエチルメタクリレート25部を混合して均一溶液にし、さらにラジカル硬化剤(「パーキュアーHO」、日本油脂社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。引き続き、合成例で得られたアクリル樹脂からなる増粘剤を20部添加、溶解させた。引き続き、350mm×350mmのガラス板上に、離型剤処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を置き、その上に、増粘剤が混合された樹脂組成物を、炭素繊維クロス(「パイロフィルTR3110MS」、三菱レイヨン社製、ビニルエステル樹脂用炭素繊維)に、ローラーを用い、炭素繊維クロスを一枚ずつ含浸させ、8枚積層し、最後に同PETフィルムで挟み込み、50℃にて1時間、乾燥機中で加熱し、増粘させ、シート状の成形材料とした。その後ガラス板を取り除き、PETフィルムで挟まれた該シート状成形材料を、加熱プレス機にて、加熱温度100℃、プレス圧力15MPaにて、30分間、繊維強化された硬化物の厚みが、2mm厚、炭素繊維の体積含有率が50%になる様に、加熱圧縮硬化させた。硬化後、PETフィルムを取り除き、得られた硬化物を用い、実施例1と同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例3で得られたエポキシメタクリレート樹脂を58部、スチレン(以下、SMと表記する場合がある。)42部にて希釈し、促進剤として8%オクテン酸コバルト0.3部を添加して均一になるよう混合し、さらにラジカル硬化剤(「328E」、化薬アクゾ社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。実施例1と同様に、炭素繊維クロスと積層を行い、硬化させ、同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例4で得られたポリウレタン(III)を、不揮発成分が70%となるようにスチレン30部にて希釈し、促進剤として8%オクテン酸コバルト0.3部を添加して均一になるよう混合し、さらにラジカル硬化剤(「328E」、化薬アクゾ社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。実施例1と同様に、炭素繊維クロスと積層を行い、硬化させ、同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例3で得られたエポキシメタクリレート樹脂を58部、不揮発成分が75%となるようにスチレン42部にて希釈し、混合して均一溶液にし、さらにラジカル硬化剤(「パーキュアーHO」、日本油脂社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。引き続き、合成例で得られたアクリル樹脂からなる増粘剤を20部添加、溶解させた。引き続き、350mm×350mmのガラス板上に、離型剤処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を置き、その上に、増粘剤が混合された樹脂組成物を、炭素繊維クロス(「パイロフィルTR3110MS」、三菱レイヨン社製、ビニルエステル樹脂用炭素繊維)に、ローラーを用い、炭素繊維クロスを一枚ずつ含浸させ、8枚積層し、最後に同PETフィルムで挟み込み、50℃にて1時間、乾燥機中で加熱し、増粘させ、シート状の成形材料とした。その後ガラス板を取り除き、PETフィルムで挟まれた該シート状成形材料を、加熱プレス機にて、加熱温度100℃、プレス圧力15MPaにて、30分間、繊維強化された硬化物の厚みが、2mm厚、炭素繊維の体積含有率が50%になる様に、加熱圧縮硬化させた。硬化後、PETフィルムを取り除き、得られた硬化物を用い、実施例1と同様に、曲げ強さ、曲げ弾性率、圧縮強さ及び圧縮弾性率を測定し評価した。
合成例4で得られたポリウレタン(III)を、不揮発成分が70%となるようにスチレンモノマーにて希釈し、さらにラジカル硬化剤(「パーキュアーHO」、日本油脂社製、有機過酸化物)を1部添加して混合し、樹脂組成物を調整した。引き続き、合成例で得られたアクリル樹脂からなる増粘剤を20部添加、溶解させた。引き続き、350mm×350mmのガラス板上に、離型剤処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を置き、その上に、増粘剤が混合された樹脂組成物を、炭素繊維クロス(「パイロフィルTR3110MS」、三菱レイヨン社製、ビニルエステル樹脂用炭素繊維)に、ローラーを用い、炭素繊維クロスを一枚ずつ含浸させ、8枚積層し、最後に同PETフィルムで挟み込み、50℃にて1時間、乾燥機中で加熱し、実施例1〜2と同様にして増粘させる工程にて処理を行ったが得られたシートは、増粘せずに、後のPETフィルムを剥がす際にベタつきが残り、良好なシート状成形材料は得られなかったため、硬化物の特性の評価はできなかった。表記は、測定不可と記載した。
樹脂粘度は、上記実施例1〜2及び比較例1〜2の硬化前の樹脂組成物を用いて、JIS−K−6901に順じて測定した。
樹脂臭気は、上記実施例1〜2及び比較例1〜2の硬化前の樹脂組成物の臭気を、官能試験により評価した。臭気が強いものを×、臭気の少ないものを○として評価した。
硬化性は、実施例1〜2及び比較例1〜2については、JIS−K−6901に順じ、促進剤を併用し、25℃においても硬化するものを○とし、実施例3〜4及び比較例3〜4については、中温硬化可能な有機過酸化物であるパーキュアーHO、1重量%にて100℃、反応時間30分後においても硬化するものを○として評価した。実施例1〜4及び比較例1〜3は、ラジカル重合性樹脂組成物であるため、いずれも優れた硬化性を示した。
増粘性は、上記実施例3〜4及び比較例3〜4について、50℃、1時間後の増粘処理後、用いたPETフィルムの一部剥ぎ、その剥がれ状態にて評価した。PETフィルムが剥がれ、樹脂組成物がフィルムに残らないものを○、ベタつきが強くPETフィルムに樹脂組成物が残るものを×として評価した。
前述の実施例、比較例内の記載に従い成形された炭素繊維を用いたFRP積層板を用い、実施例1〜4及び比較例1〜4について、曲げ強さ、曲げ弾性率の測定は、JIS−K−7074に順じて、オートグラフ(AGS−5KNG(島津製作所製))を用いて測定し、圧縮強さ、圧縮弾性率の測定は、JIS−K−7018に準じて、オートグラフ(AG−25TB(島津製作所製))を用いて測定した。
また、表2に示す結果から、本発明を適用した実施例3〜4の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物は、比較例4の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物と比較して、増粘性が優れていることが分かった。
そして、表1〜2に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜4の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物は、比較例1〜4の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物と比較して、いずれも硬化性及び曲げ弾性率は同等以上であり、曲げ強さ、圧縮強さ、圧縮弾性率に優れていることが分かった。
Claims (6)
- 下記一般式(I)で示される(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上、並びに、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むラジカル重合性不飽和単量体(B)と、有機過酸化物(C)と、を含有することを特徴とする炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物。
- 前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)100重量部に対して、ラジカル重合性不飽和単量体(B)を50重量部〜200重量部含有する請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物。
- 前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)が、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と、活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させることによって得られるものである請求項1又は2に記載の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物と、炭素繊維(D)とを含有することを特徴とする成形材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物と、炭素繊維(D)と、アクリル樹脂からなる増粘剤(E)とを含有することを特徴とする成形材料。
- 請求項4又は5に記載の成形材料を硬化して得られる炭素繊維強化プラスチック。
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