JP5980583B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、トレッド面に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、その主溝に面した溝壁面を有する陸部とが設けられた空気入りタイヤに関する。
従来、タイヤが発生する騒音として、エアポンピングを要因とする気柱管共鳴音(800Hz〜1.25KHz)が知られている。このエアポンピングは、主溝と路面とで形成される管状空間内の空気が放出されるものであり、特に接地時に陸部の溝壁面が膨出変形することで容積の減った主溝が空気を圧縮し、圧力を高められた空気が放出されることで大きなポンピング音が生じる。
特許文献1には、主溝に面した陸部の溝壁面に、長手方向の両端を含む全体形状において周囲が閉塞し且つタイヤ径方向に延びる複数本の長穴を設けた空気入りタイヤが記載されている。これは、主溝内の空気と陸部の壁面との摩擦抵抗を増加させるための構造であり、それによって気柱管共鳴音の低減を図っている。
一方、本発明者は、陸部の溝壁面に比較的大きな凹溝を設け、その凹溝に陸部の変形を取り入れることで溝壁面の膨出を軽減し、延いては主溝の容積減少による空気の圧力上昇を抑えて、気柱管共鳴音を低減することを考えた。しかし、その場合、凹溝によって陸部の溝壁面が撓みやすくなり、特に前後方向の動きが大きくなることで制動性能が低下することが判明した。
特開平10−315711号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、気柱管共鳴音を低減しながら制動性能を確保できる空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド面に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した溝壁面を有する陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、前記溝壁面の溝底側に設けられ、前記主溝の深さ方向に延びるとともに前記陸部の頂面に達しないで終端する複数本の凹溝と、前記凹溝の各々の内部に形成され、前記主溝の長さ方向に延びて前記凹溝の溝壁同士を接続する架橋部とを備えるものである。
このタイヤでは、陸部の溝壁面に設けた複数本の凹溝に陸部の変形を取り入れることにより、溝壁面の膨出を軽減できる。即ち、接地に伴って陸部が荷重を受けた際には、溝壁面が主溝側へ膨出する変形だけでなく、凹溝の溝壁がタイヤ周方向へ膨出する変形も発現するため、ゴムの変形量が分散して、溝壁面の主溝側への膨出が抑制される。その結果、接地時に主溝の容積が急激に減少することなく、主溝内の空気の圧力上昇を抑えて気柱管共鳴音を低減できる。
それでいて、凹溝の各々の内部に架橋部を形成しているため、凹溝による前後方向の剛性低下を軽減し、制動時の陸部の倒れ込みを抑えることができる。また、凹溝が陸部の頂面に達しないで終端することで、陸部の頂面側の剛性低下を回避できる。これらに基づいて、制動性能を確保することができる。加えて、凹溝を溝壁面の溝底側に設けていることから、上述した凹溝の溝壁の変形を発現しやすく、気柱管共鳴音を低減するうえで有効である。
本発明の空気入りタイヤにおいて、少なくとも1つの前記凹溝に対し、板状をなす複数の前記架橋部が深さ方向に間隔を置いて形成されているものが好ましい。かかる構成では、接地時における凹溝の溝壁の変形を妨げずに、凹溝による剛性低下を架橋部で効果的に軽減して、気柱管共鳴音を低減しつつ制動性能を確保することができる。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記架橋部の深さ方向の位置を、タイヤ周方向に隣接する前記凹溝の間で相違させているものが好ましい。かかる構成では、タイヤ周方向に隣接する凹溝の間で、制動時に生じる凹溝の変形の態様を相違させて、陸部の前後方向の剛性を効果的に確保できる。
本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に隣接する前記凹溝の間に形成された柱部の幅に比べて、その柱部に面する前記凹溝の幅が大きいのが好ましい。これにより、凹溝の幅を大きく設定しやすくなり、その凹溝の溝壁のタイヤ周方向への膨出変形を促して、溝壁面の主溝側への膨出を適切に抑えられる。したがって、気柱管共鳴音を低減するうえで有効である。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記陸部としてブロックが設けられ、前記溝壁面のタイヤ周方向両端側に、前記凹溝を設けていない平坦領域が形成されているものが好ましい。これにより、ブロックの溝壁面のタイヤ周方向両端側の剛性を高めて、凹溝によるヒールアンドトウ摩耗の発生を防止できる。
上記の空気入りタイヤにおいて、前記溝壁面のタイヤ周方向中央側に位置する前記凹溝に、前記平坦領域に近い前記凹溝よりも多数の前記架橋部が形成されているものが好ましい。ブロックの溝壁面のタイヤ周方向中央側は、接地圧が高くて撓みやすい傾向にあるため、その中央側の凹溝に多数の架橋部を形成することにより、ブロックの剛性を的確に高めて制動性能を確保できる。
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド面の一例を示す平面図 ブロックの斜視図 ブロックの溝壁面を示す正面図 別実施形態に係るブロックの溝壁面を示す正面図 別実施形態に係るブロックの溝壁面を示す正面図 別実施形態に係るブロックの溝壁面を示す斜視図
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すトレッド面には、タイヤ周方向CDに沿って延びる主溝2と、その主溝2に面した溝壁面を有する陸部とが設けられている。本実施形態では、陸部として、タイヤ周方向に沿って延びるリブ5と、矩形状のブロック10とが設けられている。各ブロック10は、タイヤ周方向CDと交差する方向に延びた横溝3によって分断されている。
図2に示すように、ブロック10は、主溝2に面した溝壁面10aと、横溝3に面した溝壁面10bとを有する。図3に示すように、溝壁面10aの溝底側には、主溝2の深さ方向DDに延びるとともにブロック10の頂面10cに達しないで終端する複数本の凹溝1が設けられている。凹溝1の各々の内部には、主溝2の長さ方向LDに延びて凹溝1の溝壁同士を接続する架橋部4が形成されている。同様に、図示されない反対側の溝壁面10aにも、架橋部4を持つ複数本の凹溝1が設けられている。
ブロック10を構成するゴムは非圧縮性であるため、接地の際にタイヤ径方向の荷重を受けたブロック10は、溝壁面10aや溝壁面10bを膨出させて、いわゆる俵型変形を起こす。気柱管共鳴音には、管状空間を形成する主溝2に面した溝壁面10aの膨出が関与し、その溝壁面10aの膨出を抑えることが気柱管共鳴音の低減に資する。このタイヤでは、溝壁面10aに設けた複数本の凹溝1にブロック10の変形を取り入れることで、その溝壁面10aの膨出を軽減できる。
即ち、ブロック10が荷重を受けた際には、溝壁面10aが主溝2側へ膨出する変形だけでなく、凹溝1の溝壁がタイヤ周方向CD(本実施形態では主溝2の長さ方向LDと同じ)へ膨出する変形も発現するため、ゴムの変形量が分散して、溝壁面10aの主溝2側への膨出が抑制される。その結果、接地時に主溝2の容積が急激に減少することなく、主溝2内の空気の圧力上昇を抑えて気柱管共鳴音を低減できる。
このような凹溝1は、溝壁面10aを撓みやすくするため、前後方向への動きが大きくなって制動性能が低下する恐れがある。そこで、このタイヤでは、凹溝1による前後方向の剛性低下を架橋部4によって軽減し、制動時のブロック10の倒れ込みを抑えるとともに、凹溝1を頂面10cに到達させずに終端させることで、ブロック10の頂面10c側の剛性低下を抑制しており、これらに基づいて制動性能の確保を図っている。
凹溝1は、主溝2の溝底に達した一端部と、頂面10cに達しないで閉鎖した他端部とを有する。凹溝1の深さD1は、主溝2の溝底から他端部に至るまでの深さ方向DDの距離として測定され、主溝2の深さD2の50〜90%であることが好ましい。これが50%以上であることで、凹溝1の溝壁がタイヤ周方向へ膨出する変形量を確保し、気柱管共鳴音をより有効に低減できる。また、これが90%以下であることにより、ブロック10の頂面側の剛性低下を確実に回避できる。
凹溝1の奥行き方向(主溝2から遠ざかる方向であり、本実施形態ではタイヤ幅方向)の長さは、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。この長さを0.5mm以上とすることで、凹溝1の溝壁がタイヤ周方向へ膨出する変形量を確保し、気柱管共鳴音をより有効に低減できる。また、ブロック10の剛性を確保するうえで、凹溝1の奥行き方向の長さは1.5mm以下であることが好ましい。
凹溝1は、タイヤ周方向CDに間隔を設けて配置されており、そのタイヤ周方向CDに隣接する凹溝1の間に、柱部8が櫛歯状に形成されている。凹溝1の溝壁のタイヤ周方向への膨出変形を促す観点から、柱部8の幅W8に比べて、その柱部8に面する凹溝1の幅W1が大きいことが好ましい。かかる場合において、幅W8を1.5〜3mmとし、幅W1を2.5〜4mmとした構成が例示される。
気柱管共鳴音を低減するうえで、凹溝1の幅W1とピッチPとが、0.1P<W1の関係を満たすことが好ましい。トレッド面には、主溝2を含む種々の溝部からなる模様がタイヤ周方向に繰り返し設けられており、ピッチPは、その模様構成単位の長さである。また、制動性能の向上効果を高める観点から、W1<0.3Pの関係を満たすことが好ましく、W1<0.2Pの関係を満たすことがより好ましい。
ブロック10において、1つの溝壁面10aに設けられる凹溝1の本数は、特に限られるものではないが、溝壁面10aの主溝2側への膨出を抑制するうえで2本以上が好ましく、4本以上がより好ましい。
少なくとも1つの凹溝1には、板状をなす複数の架橋部4が深さ方向DDに間隔を置いて形成されており、本実施形態では、溝壁面10aに設けられた全ての凹溝1に、かかる態様で架橋部4が形成されている。凹溝1の溝壁の変形を妨げずに且つ凹溝1による前後方向の剛性低下を軽減するうえで、架橋部4の厚みT4は、例えば0.5〜1.0mmの範囲内に設定される。深さ方向DDにおける架橋部4の間隔は、厚みT4よりも大きいことが好ましい。架橋部4は、凹溝1の開口から奥行き方向の端まで連続して延びている。
本実施形態では、架橋部4の深さ方向DDの位置を、タイヤ周方向CDに隣接する凹溝1の間で相違させている。具体的には、図3の左右両端の凹溝1に形成された二本の架橋部4の深さ方向DDの位置が、それらに隣接する凹溝1に形成された三本の架橋部4の深さ方向DDの位置と相違しており、互いの位置関係は、架橋部4と架橋部4との間、凹溝1の一端部と架橋部4との間、又は、凹溝1の他端部と架橋部4との間の何れかになる。かかる架橋部4の配置は、図4のように全ての凹溝1に適用すると尚更に好ましい。
本実施形態では、凹溝1によるヒールアンドトウ摩耗の発生を防止しうるように、溝壁面10aのタイヤ周方向CDの両端側に、凹溝1を設けていない平坦領域6を形成している。平坦領域6の長さL6は、凹溝1の幅W1よりも大きく、好ましくは各長さL6が溝壁面10aの長さL10の15〜30%に設定される。制動性能を効果的に確保する観点から、溝壁面10aのタイヤ周方向CDの中央側に位置する凹溝1には、平坦領域6に近い凹溝1よりも多数の架橋部4を形成している。
凹溝1の幅は、一定であるものに限られず、深さ方向DDで変化してもよい。その場合、図5のように凹溝1を溝底側で幅広とした形状が好ましく、これにより溝壁面10aの主溝2側への膨出を効率良く抑制できる。ブロック10の溝底側は頂面側よりも剛性が高いため、凹溝1がこのような形状でも剛性低下は然程に大きくない。(A)は凹溝1の開口を台形状とした例であり、(B)は凹溝1の開口を段付き形状とした例である。このように凹溝1の幅が変化する場合、前述の実施形態で説明した幅W1,W8に関する好適な態様に関しては、凹溝1の深さD1の中央で測定される幅が用いられる。
図6は、溝壁面10aの溝底側に柱部8を補強する補強部7を設けた例であり、これによってブロック10の剛性を高めて制動性能の確保に資する。特に柱部8よりも凹溝1を幅広(W1>W8)にした構造では、柱部8において剛性が低下する場合があるため、それを補強するうえで有用となる。図6に示した補強部7は、滑り台形状をしているが、その他の形状でも構わない。
本発明では、上記の如き架橋部が形成されている凹溝を、トレッド面内の全てのブロックに対して設けることができるが、トレッド面内の一部のブロックに対してだけ設けても構わない。
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ成形型に設けられる主溝形成用の骨部に、上記の如き凹溝を成形するための突起を設ける程度の改変で、その他は従来のタイヤ製造工程と同様にして製造を行うことができる。かかる突起は、骨部の側方を機械加工することにより、或いは骨部の側方にブレードを設置することにより設けることが可能である。
本発明の空気入りタイヤは、上記の如き架橋部が形成された凹溝を陸部に設けること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも本発明に採用できる。
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、凹溝をブロックに設けた例を示したが、これに限られず、陸部であるリブに設けることも可能である。
本発明の構成と効果を具体的に示すため、下記の評価を行ったので説明する。
(1)気柱管共鳴音
JASO C606−81に準拠して単体台上試験を実施し、速度50km/hにおいて1000Hz気柱管共鳴音レベルを測定した。比較例1の結果を基準としたタイヤ騒音差で評価し、マイナス値が大きいほど気柱管共鳴音が低減されていることを示す。
(2)制動性能
実車にタイヤを装着して乾燥路面を走行し、速度を100km/hから0km/hに落としたときの制動距離を測定し、その逆数を算出した。比較例1の結果を100として指数で評価し、当該指数が大きいほど制動性能に優れていることを示す。
評価に供したタイヤのサイズは195/65R15であり、後述する構成を除き、各例におけるタイヤ構造やゴム配合などは共通である。図3の如き凹溝を設けたものを実施例1、図4の如き凹溝を設けたものを実施例2とした。また、凹溝の一端部を溝底に到達させずに閉鎖し且つ架橋部を具備しないこと以外は実施例1と同じものを比較例1、架橋部を具備しないこと以外は実施例1と同じものを比較例2とした。主溝の深さD2は10mm、凹溝の深さD1は7mm(比較例1では凹溝の深さ方向長さは5mm)である。表1に評価結果を示す。
Figure 0005980583
表1に示すように、実施例1,2では、図3,4のような凹溝を設けたことにより、比較例1,2に比べて気柱管共鳴音を低減できている。更に、実施例1,2では、凹溝に架橋部を形成したことにより制動性能を確保できており、中でも実施例2の改善効果が大きい。
1 凹溝
2 主溝
3 横溝
4 架橋部
5 柱部
6 平坦領域
7 補強部
10 ブロック(陸部の一例)
10a 溝壁面
10c 頂面

Claims (5)

  1. トレッド面に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した溝壁面を有する陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
    前記溝壁面の溝底側に設けられ、前記主溝の深さ方向に延びるとともに前記陸部の頂面に達しないで終端する複数本の凹溝と、
    前記凹溝の各々の内部に形成され、前記主溝の長さ方向に延びて前記凹溝の溝壁同士を接続する架橋部とを備え、
    前記架橋部の深さ方向の位置を、タイヤ周方向に隣接する前記凹溝の間で相違させていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 少なくとも1つの前記凹溝に対し、板状をなす複数の前記架橋部が深さ方向に間隔を置いて形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. タイヤ周方向に隣接する前記凹溝の間に形成された柱部の幅に比べて、その柱部に面する前記凹溝の幅が大きい請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記陸部としてブロックが設けられ、前記溝壁面のタイヤ周方向両端側に、前記凹溝を設けていない平坦領域が形成されている請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. トレッド面に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した溝壁面を有する陸部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
    前記溝壁面の溝底側に設けられ、前記主溝の深さ方向に延びるとともに前記陸部の頂面に達しないで終端する複数本の凹溝と、
    前記凹溝の各々の内部に形成され、前記主溝の長さ方向に延びて前記凹溝の溝壁同士を接続する架橋部とを備え、
    前記陸部としてブロックが設けられ、前記溝壁面のタイヤ周方向両端側に、前記凹溝を設けていない平坦領域が形成されており、
    前記溝壁面のタイヤ周方向中央側に位置する前記凹溝に、前記平坦領域に近い前記凹溝よりも多数の前記架橋部が形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
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