JP5979349B2 - 車両のパワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
このようなモータの待機電力の節減を目的として、特許文献1の技術が提案されている。この特許文献1の技術では各モータに流れる電流からポンプ負荷を推定し、ポンプ負荷が大で操舵アシストのために多量の作動油が要求されるときには、2つのモータを駆動して各油圧ポンプから吐出される作動油を油圧シリンダに供給している。そして、ポンプ負荷が低下して作動油の要求量が減少すると、片側のモータを停止させて1つのモータのみを駆動することにより待機電力の節減を図っている。
しかしながら、このような油圧ポンプの吐出効率について上記特許文献1の技術では何ら考慮していないため、1モータ駆動と2モータ駆動とを適切に切り換えることができなかった。例えば1モータ駆動時において、油圧ポンプの回転速度が上昇して効率悪化の領域に侵入した場合でも、1モータ駆動が継続されて油圧ポンプを効率悪化の領域で駆動することになる。このため油圧ポンプを駆動するモータの消費電力が急増し、ひいてはオルタネータを駆動しているエンジンの燃費悪化の要因になるという問題があった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、2つの油圧ポンプの駆動状態を適切に切り換えることにより各油圧ポンプを常に効率の良好な領域内で作動させることができ、もってポンプ駆動用のモータの消費電力を節減して燃費悪化を抑制することができる車両のパワーステアリング装置を提供することにある。
請求項2の発明は、請求項1において、第1のモータのみの作動から第1のモータ及び第2のモータを協働で作動させる場合、第1のモータの作動と第2のモータの作動とをオーバーラップさせるものである。
従って、要求吐出量が第1の領域内にある場合は、第1のモータにより第1の油圧ポンプが駆動されることで要求吐出量が達成される。そして、要求吐出量が増加して第2の領域に突入すると、第1及び第2のモータを協働させて第1及び第2の油圧ポンプを作動させる。このため第1及び第2の油圧ポンプは共に第1の領域内で作動して第2の領域内への突入が防止される。結果として要求吐出量を確実に達成した上で、第1及び第2の油圧ポンプを常に吐出効率の良好な第1の領域内で駆動でき、各油圧ポンプを駆動するモータの消費電力を抑制して燃費悪化を抑制することができる。
図1の全体構成図に示すように、トラックの左右の前輪1はそれぞれタイロッド2を介してパワーシリンダ3に連結され、このパワーシリンダ3に一体で設けられたギヤボックス4にはステアリングシャフト5を介してステアリング6が連結されている。パワーシリンダ3には油路7を介して、互いに並列関係となるように第1の油圧ポンプ8及び第2の油圧ポンプ9が接続されている。第1の油圧ポンプ8には第1のモータ10が直結され、第2の油圧ポンプ9には第2のモータ11が直結され、これらの油圧ポンプ8,9はそれぞれのモータ10,11により個別に回転駆動されて作動油を吐出するようになっている。
第1及び第2のモータ10,11はパワーステアリング装置を制御するためのECU13に接続され、ECU13は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップなどの記憶に供される記憶装置(ROM,RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなどから構成されている。ECU13には、ステアリングシャフト5に設けられた操舵角センサ14が接続され、この操舵角センサ14により検出されたステアリング6の操舵角θが検出情報としてECU13に入力されるようになっている。
まず、以下に述べるように第1及び第2の油圧ポンプ8,9は、ステアリング操舵に応じて要求される作動油の吐出量(要求吐出量)を達成するように、単独で或いは互いに協働して作動油を吐出してパワーシリンダ3に供給する。このため単一の油圧ポンプを備えた一般的なパワーステアリング装置に比較すると、油圧ポンプ8,9の容量は大幅に小さく、必然的にそれを駆動するモータ10,11も小型のものが使用されている。なお、本実施形態では第1及び第2の油圧ポンプ8,9として同一容量の製品を用いているが、これに限ることはなく、油圧ポンプ8,9の容量を相違させてもよい。
一方、図2の特性図に示すように、第1及び第2の油圧ポンプ8,9は回転速度に略比例して作動油の吐出量を増減させる一方、回転速度に対して吐出効率を依存させる特性を有している。即ち、油圧ポンプ8,9の回転速度(作動油の吐出量)が所定の回転速度未満の領域では略一定の良好な吐出効率を維持し、所定の回転速度以上の領域では吐出効率を次第に低下させる。以下、油圧ポンプ8,9の回転速度が所定の回転速度未満で吐出効率が良好な領域を効率良好領域(第1の領域)と称し、回転速度が所定の回転速度以上で吐出効率が悪い領域を効率悪化領域(第2の領域)と称する。
なお、切換判定値N0の設定は上記に限ることはなく、例えば効率良好領域と効率悪化領域との境界である所定の回転速度に切換判定値N0を一致させてもよい。
ECU13は操舵角センサ14からステアリング6の操舵角を入力すると、操舵角θに基づき操舵角速度ωaを算出する(操舵角速度検出手段)。算出した操舵角速度ωaは要求吐出量算出部21に入力され、要求吐出量算出部21では、図中のマップに従って操舵角速度ωaから要求吐出量が算出される(要求吐出量推定手段)。操舵角速度ωaが早いほど操舵アシストのために要求されるパワーシリンダ3の動作速度が高まり、必然的により大きな吐出量が要求される。このため操舵角速度ωaと要求吐出量とは略正比例の関係が成立し、その関係に基づき予め図中のマップ特性が設定されている。
端的に表現すると、まず要求吐出量の達成のために第1の油圧ポンプ8が駆動され、吐出量が不足して要求吐出量を達成不能な場合には第1の油圧ポンプ8に加えて第2の油圧ポンプ9が協働して駆動される。
本実施形態では1モータ駆動から2モータ駆動への切換時に、第2のモータ11の回転速度を0からステップ的に増加させると共に、その増加分だけ第1のモータ10の回転速度をステップ的に低下させて、要求吐出量を達成しながら切換を完了している。2モータ駆動への切換の完了後には、要求吐出量の増加に応じて第1及び第2のモータ10,11の回転速度が共に増加し、それぞれの油圧ポンプ8,9の吐出量が増加することにより要求吐出量が達成され続ける。
一方、ステアリング6の操舵終了などにより操舵角速度ωaと共に要求吐出量が低下した場合も、上記と逆の手順を辿って2モータ駆動から1モータ駆動への切換が実行される。
本実施形態では、このような状況に至る直前の第1のモータ10の回転速度が切換判定値N0に達した時点で、2モータ駆動に切り換えられて第2のモータ11により第2の油圧ポンプ9の駆動が開始され、第1及び第2の油圧ポンプ8,9の協働により要求吐出量が達成される。そして、この切換に伴って第1の油圧ポンプ8の回転速度はステップ的に低下し、それに伴って吐出量が低下するため効率悪化領域への突入が未然に防止される。
上記のようにマップ中の第1及び第2のモータ10,11の回転速度は制御指令値であり、この制御指令値に基づき両モータ10,11が制御されるのであるが、停止中の第2のモータ11を駆動する際には応答遅れが生じる。この応答遅れにより第2の油圧ポンプ9の吐出量が急激に増加せず、一時的に作動油の合計吐出量が不足して要求吐出量を達成できなくなる。第1のモータ10の回転速度の低下を緩慢にすることで第1の油圧ポンプ8の吐出量の低下が緩やかになり、第2の油圧ポンプ9側の吐出量の不足が補われる。このため一時的な合計吐出量の不足を解消でき、ひいてはより確実に要求吐出量を達成することができる。
この別例では、第1のモータ10の回転速度が切換判定値N0に達した時点で、第1のモータ10の回転速度を切換判定値N0に維持すると共に、第2のモータ11の回転速度を0から次第に増加させている。このように制御した場合でも上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、上記実施形態では第2のモータ11の回転速度を0からステップ的に増加させる故に顕著な制御上の応答遅れが生じたが、この別例では回転速度を緩やかに増加させるため応答遅れを無視できる程度に抑制できる。よって、上記実施形態のように1モータ駆動から2モータ駆動への切換時に両モータ10,11間にオーバーラップの領域を形成する必要がないし、仮にその必要があったとしても僅かなオーバーラップの領域を形成するだけで作動油の合計吐出量の不足を解消することができる。
また、上記実施形態では、図3に示したように、操舵角速度ωaから一旦要求吐出量を算出し、その要求吐出量に基づき第1及び第2のモータ10,11の回転速度を算出したが、これに限ることはない。例えば予め操舵角速度ωaと要求吐出量との関係は判明していることから、操舵角速度ωaに基づき第1及び第2のモータ10,11の回転速度を直接算出するようにしてもよい。この場合には、図3に示すモータ回転速度算出部22の各マップの横軸を要求吐出量に代えて操舵角速度ωaとすればよい。
9 第2の油圧ポンプ
10 第1のモータ
11 第2のモータ
13 ECU
(操舵角検出手段、要求吐出量推定手段、効率マップ手段、モータ回転速度制御手段)
14 操舵角センサ(操舵角検出手段)
Claims (2)
- 油圧ポンプから吐出される作動油によってステアリングの操舵をアシストするパワーステアリング装置であって、
第1のモータにより駆動される第1の油圧ポンプと、
前記第1の油圧ポンプに対し並列配置されて、第2のモータにより駆動される第2の油圧ポンプと、
前記ステアリングの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
前記操舵角速度検出手段によって検出した操作角速度に基づき、前記第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプが吐出すべき作動油の要求吐出量を推定する要求吐出量推定手段と、
前記第1の油圧ポンプの作動油の吐出特性から導かれる吐出効率が良好な第1の領域及び吐出効率が悪い第2の領域が設定される効率マップ手段と、
前記要求吐出量推定手段によって推定された作動油の要求吐出量に基づき、前記第1のモータ及び第2のモータの回転速度を制御するモータ回転速度制御手段を備え、
前記モータ回転速度制御手段は、前記要求吐出量が前記効率マップに設定された第1の領域内にある場合は前記第1のモータのみを駆動し、前記要求吐出量が前記第2の領域内にある場合は前記第1のモータ及び第2のモータを協働させることにより、前記第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプを前記第1の領域内で作動させるように制御することを特徴とする車両のパワーステアリング装置。 - 前記第1のモータのみの作動から前記第1のモータ及び第2のモータを協働で作動させる場合、該第1のモータの作動と第2のモータの作動とをオーバーラップさせることを特徴とする請求項1記載の車両のパワーステアリング装置。
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