以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態によるホイールクレーンの構成について説明する。なお、以下の説明おいて、「前」とは、ホイールクレーンの通常の走行時(前進時)における前方を意味し、「後」とは、ホイールクレーンの通常の走行時における後方を意味する。
この第1実施形態によるホイールクレーンは、車体2と、4つの車輪4と、図略の前側車軸と、図略の後側車軸と、エンジン8と、冷却装置10と、図略の動力伝達機構と、図略の油圧供給装置と、アウトリガ11と、旋回フレーム12と、図略の旋回装置と、ブーム14と、図略の伸縮用油圧シリンダ、起伏用油圧シリンダ16と、フック装置18と、吊りロープ20と、ウィンチ22と、運転室24とを備えている。
車体2は、ホイールクレーンの下部走行体のベースとなる部分である。この車体2は、前後方向の車長がその前後方向に直交する方向の車幅に比べて大きい形状を有している。車体2は、その上面に配置された円環状の下側旋回ベアリング2aを有している。この下側旋回ベアリング2aは、旋回フレーム12が上下方向に延びる旋回軸回りに旋回可能となるようにその旋回フレーム12を支持している。下側旋回ベアリング2aは、車体2の前後方向において後述する前輪4aと後輪4bとの間の中央位置C上で、かつ、車体2の幅方向(左右方向)の中心位置上に当該下側旋回ベアリング2aの円環形状の中心が位置するように配置されている。また、車体2は、エンジン8を収容するためのエンジン室2bを有している。車体2は、ホイールクレーンの通常の走行時(前進時)に前方に向かう前端部を有しており、その前端部にエンジン室2bが配設されている。エンジン室2bの前面には、当該エンジン室2b内へ空気を導入するための図略の通風口が設けられている。
4つの車輪4は、車体2の左右に分かれて配置されるとともにその車体2の前後方向に並んで配置されている。具体的には、この4つの車輪4は、車体2の前部の下部に配置された2つの前輪4aと、車体2の後部の下部に配置された2つの後輪4bとからなる。なお、前輪4aは、本発明の「最も前寄りに位置する車輪」の概念に含まれるものであり、後輪4bは、本発明の「最も後寄りに位置する車輪」の概念に含まれるものである。2つの前輪4aは、車体2のうち前記旋回軸の位置よりも前方でかつ当該車体2の前端部のエンジン室2bよりも後方の位置に配置されている。また、2つの前輪4aは、車体2の幅方向の中心に対して左右に分かれて対称的に配置されている。また、2つの後輪4bは、車体2のうち前記旋回軸の位置よりも後方でかつ当該車体2の後端部よりも前方の位置に配置されている。また、2つの後輪4bは、前記2つの前輪4aと同様に、車体2の幅方向の中心に対して左右に分かれて対称的に配置されている。
図略の前側車軸は、車体2の前部の下部に設けられており、車体2の幅方向に延びるように配置されている。前記2つの前輪4aのうち一方の前輪4aは、前側車軸の軸方向の一端に接続されており、もう一方の前輪4aは、前側車軸の軸方向の他端に接続されている。
図略の後側車軸は、車体2の後部の下部に設けられており、車体2の幅方向に延びるように配置されている。前記2つの後輪4bのうち一方の後輪4bは、後側車軸の軸方向の一端に接続されており、もう一方の後輪4bは、後側車軸の軸方向の他端に接続されている。
エンジン8は、ホイールクレーンの走行時に前輪4a及び後輪4bを回転させるための動力を発するものであり、大重量を有している。このエンジン8は、上記したように車体2の前端部に配設されたエンジン室2b内に収容されることによって、車体2の前後方向において前輪4aと後輪4bとの間でその前輪4aの中心位置Aと後輪4bの中心位置Bとから等距離に位置する中央位置Cに対して前側に配置されている。なお、このエンジン8が発する動力は、油圧供給装置にも供給される。また、前輪4aの中心位置Aは、車体2の前後方向における前側車軸の位置に相当し、後輪4bの中心位置Bは、車体2の前後方向における後側車軸の位置に相当する。
冷却装置10は、熱交換によりエンジン8を冷却するためのものであり、エンジン室2b内に設けられている。この冷却装置10は、例えばラジエータやインタークーラ等である。冷却装置10は、図略の配管によってエンジン8と接続されており、その配管を通じて当該冷却装置10とエンジン8との間で冷却液が流通する。また、冷却装置10は、エンジン室2b内において前記通風口に面する位置に配置されている。ホイールクレーンは、その走行時に前方から風を受け、その風が前記通風口を通じてエンジン室2b内に取り込まれて冷却装置10による熱交換が良好に行われる。
図略の動力伝達機構は、車体2に設けられており、エンジン8が発する動力を前側車軸及び後側車軸に伝達するとともに、図略の油圧供給装置に伝達するものである。エンジン8の発する動力がこの動力伝達機構により前側車軸及び後側車軸に伝達されることによって、前側車軸及び後側車軸は各々の軸回りにそれぞれ回転し、その前側車軸の回転力が前輪4aに伝達されることにより前輪4aが回転するとともに、後側車軸の回転力が後輪4bに伝達されることにより後輪4bが回転する。
図略の油圧供給装置は、車体2に設けられており、図略の旋回用油圧モータ、ブーム14を伸縮させるための図略の伸縮用油圧シリンダ、起伏用油圧シリンダ16及びウィンチ22の後述する駆動用油圧モータ22b(図3参照)に油圧を供給するための装置である。この油圧供給装置は、前記動力伝達機構を通じてエンジン8の動力の供給を受け、それによって旋回用油圧モータ、起伏用油圧シリンダ16及びウィンチ22の駆動用油圧モータに油圧を供給する。
アウトリガ11は、車体2の前部と後部に分かれて配置されており、クレーン作業時に車体2を地面に対して支えるものである。具体的には、アウトリガ11は、車体2のうち前輪4aよりも前側でかつ当該車体2の前端部よりも後側の位置と、車体2のうち後輪4bよりも後側の位置とにそれぞれ設けられている。このアウトリガ11は、クレーン作業時には、図3に示すように車体2の両側に張り出して地面に対して車体2を支え、ホイールクレーンの走行時には、車体2の幅方向において車体2の内側へ退避して格納される。
旋回フレーム12は、ホイールクレーンの上部旋回体のベースとなるものであり、上下方向に延びる旋回軸回りに旋回自在となるように車体2上に搭載されている。この旋回フレーム12の旋回軸は、前輪4aと後輪4bの間の前記中央位置C上で、かつ、車体2の幅方向(左右方向)の中心位置上に位置している。すなわち、この旋回フレーム12の旋回軸の位置は、前記下側旋回ベアリング2aの中心位置と一致している。旋回フレーム12は、ホイールクレーンの通常の走行時には図1〜図3に示すような旋回基準位置に配置される。この旋回基準位置は、旋回フレーム12が前向きで車体2に対して正対するように配置される前記旋回軸回りの旋回位置であり、当該旋回フレーム12の後述する一対の支持部12cによって支持されるブーム14が倒伏した状態において車体2の前後方向に延びるとともにそのブーム14の先端が車体2の後方に位置するように当該旋回フレーム12が車体2に対して配置される前記旋回軸回りの旋回位置である。また、旋回フレーム12は、基板部12aと、上側旋回ベアリング12bと、一対の支持部12cとを有している。
基板部12aは、平板状に形成されており、車体2上において略水平に配置されている。この基板部12aは、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置された状態において、前輪4aの中心位置Aと後輪4bの中心位置Bとの間の領域であって、前輪4aと後輪4bとの間の前記中央位置Cの前後に跨る領域に配置される。なお、この状態において、基板部12aの前端の位置は、前記中央位置Cよりも前側でかつ前輪4aよりも後側の位置に配置され、基板部12aの後端の位置は、後輪4bの前端よりも後側でかつ後輪4bの中心位置Bよりも前側の位置に配置される。また、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置された状態において、基板部12aの左右両端の位置は、車体2の左右幅内に収まっている。
上側旋回ベアリング12bは、車体2の下側旋回ベアリング2aに上から係合している部分である。この上側旋回ベアリング12bは、円環状に形成されており、基板部12aの下面から下方に突出するように基板部12aに設けられている。この上側旋回ベアリング12bの円環形状の中心位置は、下側旋回ベアリング2aの中心位置(前記旋回軸の位置)と一致しており、当該上側旋回ベアリング12bは、下側旋回ベアリング2aに対してその中心位置回りに回動可能となるように係合している。上側旋回ベアリング12bがこのように下側旋回ベアリング2aに対して係合していることによって、旋回フレーム12が車体2に対して旋回軸回りに旋回可能となっている。
一対の支持部12cは、ブーム14、起伏用油圧シリンダ16及び運転室24を支持するための部分である。各支持部12cは、略平板状で同形に形成されており、基板部12a上にその基板部12aに対して垂直となるように立設されている。一対の支持部12cは、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置された状態において、車体2の幅方向(左右方向)の中心位置(車体2の幅方向における基板部12aの中心位置)に対して両側に分かれて配置されているとともに互いに平行となるように配置されている。また、両支持部12cは、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置された状態において、基板部12aの前端部から前方へ張り出しており、その前端の位置は、前輪4aの前端よりわずかに前側でかつ車体2の前端部よりも後側の位置に位置する。この状態において両支持部12cのうち基板部12aの前端部から張り出した部分の下縁は、基板部12aの前端から前方斜め上へ延びた後、水平に前方へ向かって延びている。また、同状態において、両支持部12cの後端は、前記中央位置Cよりも後側でかつ後輪4bの前端よりも前側の位置に位置している。なお、基板部12aは、同状態において、上側旋回ベアリング12bよりも後側でかつ両支持部12cよりも後側に位置する部位を有する。
図略の旋回装置は、旋回フレーム12を車体2に対して旋回軸回りに旋回させるものである。この旋回装置は、車体2に設けられている。旋回装置は、図略の旋回用油圧モータを備えており、この旋回用油圧モータには前記油圧供給装置から油圧が供給される。旋回装置は、その旋回用油圧モータに油圧が供給されることによって作動し、旋回フレーム12を旋回させる。
ブーム14は、略直線的に延びており、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置されたときに当該ブーム14の基端部が車体2の前記中央位置Cよりも前側に位置し、かつ、当該ブーム14の先端部がその基端部よりも後側に位置するように旋回フレーム12上に搭載されている。ブーム14は、その軸方向(長手方向)に伸縮自在となるように構成されている。また、ブーム14は、その基端部を支点として起伏自在となるように旋回フレーム12上に搭載されている。以下、このブームの詳細な構成について説明する。
ブーム14は、その伸長状態において当該ブーム14の基端側から先端側へ順に配置される複数の角筒状の単位ブーム14aと、ブーム14の先端(ブーム14の最も先端寄りに位置する単位ブーム14aの先端)に設けられるヘッド部14bとを有する。各単位ブーム14aは、ブーム14の伸長状態において当該ブーム14の基端側から先端寄りに配置されるものほどその断面形状が小さくなっており、ブーム14の基端寄りに配置される単位ブーム14aに対してブーム14の先端寄りに配置される各単位ブーム14aが順番に内挿されている。各単位ブーム14aは、その単位ブーム14aが内挿された基端側の単位ブーム14aに対して軸方向に進退可能となっている。ブーム14内には、当該ブーム14を伸縮させるための図略の伸縮用油圧シリンダが設けられている。この伸縮用油圧シリンダは、前記油圧供給装置から油圧が供給されることによって作動し、各単位ブーム14aをその単位ブーム14aが内挿された基端側の単位ブーム14aに対して進退移動させる。これによって、ブーム14の伸縮が行われる。
ブーム14の基端部は、ブーム支持ピン14dによって一対の支持部12cに連結されている。具体的には、ブーム14の基端部は、一対の支持部12cのうち旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態で当該支持部12cの前端となる部分同士の間に配置されている。そして、ブーム14の最も基端寄りに位置する単位ブーム14aの基端部と、各支持部12cのうち旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態で当該支持部12cの前端となる部分の上端部には、それぞれ貫通穴が設けられている。これらの貫通穴にブーム支持ピン14dが、旋回フレーム12が旋回基準位置にある状態で車体2の幅方向(左右方向)に水平に延びるように挿通されている。ブーム14は、このブーム支持ピン14dを軸として回動し、起伏自在となっている。このような構成により、ブーム14の基端部及びその基端部を支持するブーム支持ピン14dは、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態で前輪4aの中心位置Aよりも前側で車体2の前端部よりも後側の位置に配置される。
また、ブーム14は、ホイールクレーンの走行時には、後方へ向かって延び、ブーム14の重心が前輪4aと後輪4bの間の前記中央位置Cに対して後側に位置するように車体2の後端から後方へ張り出す走行時倒伏姿勢(図1参照)をとり得るように旋回フレーム12に搭載されている。また、ブーム14は、走行時倒伏姿勢では、前記中央位置Cからブーム14の先端までの水平方向の距離が前記中央位置Cからブーム14の基端部までの水平方向の距離よりも大きくなるように後方へ向かって延びて当該ブーム14の重心が前記中央位置Cに対して後側に位置するようになっている。そして、ホイールクレーンの走行時には、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置されるとともにブーム14が走行時倒伏姿勢となるように倒伏させられ、この走行時倒伏姿勢となったブーム14の先端(ヘッド部14bの後端)は、車体2の後端よりも後側に位置する。また、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置されてブーム14が走行時倒伏姿勢をとった状態では、ブーム14は、車体2の幅方向の中心線上に位置し、その中心線に沿って延びている。また、ブーム14は、走行時倒伏姿勢では、最も縮んだ状態となっている。また、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置されてブーム14が走行時倒伏姿勢になった状態では、当該ブーム14は、後方へ向かうにつれて下側へ向かうように斜めに延びている。すなわち、この状態におけるブーム14のうちその基端部の上端が当該ブーム14の中で最も高い位置に位置する。この状態において、ブーム14は、運転室24の上端の高さ位置以下の範囲に配置されている。また、この状態において、ブーム14のうち下側を向く面と旋回フレーム12の基板部12aの上面及び車体2の上面との間には、隙間が設けられている。また、この状態において、ブーム14のうち前記中央位置Cに対して後側に位置する部分の体積及び重量は、当該ブーム14のうち前記中央位置Cに対して前側に位置する部分の体積及び重量よりも大きくなっている。そして、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときにそのブーム14の重心が車体2の中央位置Cよりも後側に位置することにより、旋回フレーム12を後方へ転倒させる方向へのモーメントがブーム14から旋回フレーム12に作用する。このモーメントは、旋回フレーム12から図略の旋回装置を介して車体2に伝達される。その結果、ブーム14の重量に起因する荷重は、車体2のうち中央位置Cに対して後側に偏って掛かることになる。
起伏用油圧シリンダ16は、前記油圧供給装置から油圧が供給されることによって作動し、ブーム14を起伏動作させる。この起伏用油圧シリンダ16は、前記一対の支持部12c間に配置されており、ブーム14が前記走行時倒伏姿勢となっている状態ではそのブーム14の下側で当該ブーム14に対して概ね沿うように配置される。起伏用油圧シリンダ16は、筒体16aと、その筒体16a内に収容された図略のピストンと、そのピストンに接続され、筒体16a内から突出するロッド部16bとを有する。
筒体16aの軸方向の一端部は、前記一対の支持部12cのうち旋回フレーム12が前記旋回基準位置にある状態で基板部12aから前方に張り出す部位同士の間に水平に延びるように架設された筒体取付ピン17aによって支持されている。起伏用油圧シリンダ16は、この筒体取付ピン17aを軸として回動可能となっている。また、筒体16aは、図略の油圧配管を介して前記油圧供給装置と接続されており、その油圧配管を通じて油圧供給装置から筒体16a内に油圧が供給される。ロッド部16bは、筒体16aの前記一端部と反対側の他端部に設けられた開口部を通じて筒体16a内から突出している。ロッド部16bの先端は、ブーム14の最も基端寄りに位置する単位ブーム14aのうち当該ブーム14が前記走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面に対して取り付けられている。具体的には、その単位ブーム14aの下側を向く面にブラケット14fが設けられており、そのブラケット14fにロッド取付ピン17bを介してロッド部16bの先端が取り付けられている。ロッド取付ピン17bは、筒体取付ピン17aと同方向に延びており、ロッド部16bの先端部は、このロッド取付ピン17bを軸として回動可能となっている。そして、このブーム14に対するロッド部16bの先端の取付部位は、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに上方から見て下側旋回ベアリング2aの外径内に位置する。このため、後述するように両支持部12cの後側であって走行時倒伏姿勢にあるブーム14の下面と基板部12aとの間にウィンチ22を設置するスペースが残されており、そのウィンチ22とロッド部16b及びブラケット14fとの干渉が回避される。
フック装置18は、クレーン作業時に吊荷を吊るためのものであり、ブーム14の先端から吊りロープ20を介して吊り下げられる。なお、ブーム14が走行時倒伏姿勢にあるときには、図1に示すようにブーム14のヘッド部14bに当接した状態で保持される。
ウィンチ22は、吊りロープ20を巻き取ることによりフック装置18を巻き上げる一方、吊りロープ20を繰り出すことによりフック装置18を巻き下げるものである。当該第1実施形態では、このウィンチ22は、旋回フレーム12の基板部12a上に搭載されている。具体的には、ウィンチ22は、前記下側旋回ベアリング2aの外径の外側の位置であって、ホイールクレーンの走行時に旋回フレーム12が前記旋回基準位置にある状態で前輪4aと後輪4bの間の前記中央位置C(前記旋回軸の位置)よりも後側となる位置に配置されている。詳しくは、ウィンチ22は、旋回フレーム12が前記旋回基準位置にある状態で基板部12aのうち両支持部12cの後側に位置する部位上に設置されている。また、ウィンチ22は、ブーム14が走行時倒伏姿勢になった状態においてそのブーム14の直下に位置するような位置に設置されている。また、ウィンチ22は、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときにそのブーム14と上下方向において干渉しないように配置されている。また、このウィンチ22は、吊りロープ20が巻かれるドラム22aと、そのドラム22aを回転させる駆動用油圧モータ22bとを有する。駆動用油圧モータ22bは、前記油圧供給装置と図略の油圧配管を介して繋がっており、その油圧配管を通じて油圧供給装置から油圧の供給を受ける。駆動用油圧モータ22bは、油圧が供給されることによって作動し、ドラム22aが吊りロープ20を巻き取り又は繰り出すようにそのドラム22aを回転させる。
運転室24は、ホイールクレーンの走行時やクレーン作業時等にオペレータが搭乗するものであり、オペレータはこの運転室24内でホイールクレーンの各種操作を行う。この運転室24は、ホイールクレーンの走行時に前方を向くように配置される走行時運転位置(図1参照)と、クレーン作業時に後方を向くように配置される作業時運転位置(図2参照)との間で上下方向に延びる軸回りに回動可能となるように旋回フレーム12に搭載されている。
運転室24は、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態で旋回フレーム12の一対の支持部12cのうち前方に向かって右側に位置する支持部12cの右側に配置される。この状態で、運転室24の右端の位置は、車体2の右端の位置と一致している。また、運転室24は、オペレータが搭乗する運転室本体24aと、その運転室本体24aに設けられ、旋回フレーム12に取り付けられる取付部24bとを有する。運転室本体24aは、その正面(走行時運転位置において前方を向く面)及び左右両側面に窓が設けられている。取付部24bは、運転室本体24aの背面(前記正面の裏側の面)に突設されている。この取付部24bには、上下方向に貫通する挿通穴が設けられている。旋回フレーム12の一対の支持部12cのうち旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置されたときに前方に向かって右側に位置する支持部12cの右側面には、上下に離間して配置された一対の運転室取付用ブラケット12fが設けられており、この運転室取付用ブラケット12fに運転室支持軸25(図3参照)を介して運転室24の取付部24bが取り付けられている。具体的には、運転室支持軸25は、一対の運転室取付用ブラケット12f間で上下方向に延びるようにそれらのブラケット12fに取り付けられている。取付部24bは、当該取付部24bを上下方向に貫通する貫通穴を有している。取付部24bは、一対の運転室取付用ブラケット12f間に配置され、当該取付部24bの貫通穴に運転室支持軸25が挿通されている。これにより、取付部24bは、運転室支持軸25を軸としてその周りに回動可能となっている。このような構成により、運転室24は、運転室支持軸25を軸として前記走行時運転位置と前記作業時運転位置との間で回動可能となっている。なお、運転室支持軸25は、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態で、前輪4aの中心位置Aよりも僅かに後側でかつその前輪4aの後端よりも前側の位置に配置されている。
ホイールクレーンの走行時には、旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置された状態で運転室24が走行時運転位置に配置され、オペレータは、運転室本体24a内からその正面の窓を通じて前方を視認し、ホイールクレーンの走行のための操作を行う。この状態では、運転室本体24aの前端は、車体2の前端にほぼ揃う位置にあり、運転室本体24aのうち左右両側面の窓が位置する部位は、支持部12cよりも前方に位置するため、運転室本体24a内から左右両側への視界を遮るものがなく、良好な視界が得られる。
一方、クレーン作業時には、運転室24が作業時運転位置に配置され、オペレータは、運転室本体24a内からその正面の窓を通じてブーム14の先端側を視認しながら、ブーム14の伸縮、起伏、フック装置18の巻き上げ/巻き下げ及び旋回フレーム12の旋回のための各操作を行う。
なお、この第1実施形態では、運転室24が走行時運転位置に配置された状態で旋回フレーム12を旋回時基準位置から旋回軸回りに180度旋回させて運転室24の正面が車体2の後方を向くように運転室24を配置することも可能である。車体2のうち前記中央位置Cから後端にかけての部位の上面の高さは、この旋回の際、運転室24の下端や旋回フレーム12の支持部12cのうち基板部12aから張り出した部分の下縁と干渉しないような高さに設定されている。また、車体2のうち前記中央位置Cから前端にかけての部位、特に車体2の前端部の上面の高さは、この旋回の際、走行時倒伏姿勢をとっているブーム14と干渉しないような高さに設定されている。
また、この第1実施形態では、運転室24を作業時運転位置に配置した図2に示す状態でオペレータが運転室本体24a内から車体2の後方を正面に捉えてホイールクレーンの後進操作を行うことも可能である。
以上説明したように、この第1実施形態では、ホイールクレーンの走行時に旋回フレーム12が前記旋回基準位置に配置されるとともにブーム14が走行時倒伏姿勢をとることによって、ブーム14の重心が車体2の中央位置Cよりも後側に位置する。このため、ブーム14の重量に起因する荷重は、車体2に対してその中央位置Cよりも後側に偏って掛かり、この後側に偏って掛かる荷重と、車体2の中央位置Cよりも前側に配置されたエンジン8の重量とによって、ホイールクレーンの前輪4aの軸重(前側車軸にかかる荷重)と後輪4bの軸重(後側車軸にかかる荷重)とのバランスを均等に近づけることができる。つまり、この第1実施形態では、前記中央位置Cに対するエンジン8とブーム14の相対的な配置の工夫によって前後の軸重のバランスの均等化を図るものであるから、従来のように前後の軸重のバランスの偏りを是正するために別途大きなカウンタウェイトを追加する必要がなく、その省略もしくは削減が可能である。このため、ホイールクレーンの軽量化を図ることができる。
また、この第1実施形態では、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態でブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときに、そのブーム14は後方へ向かうにつれて下側へ向かうように斜めに延びるため、ブーム14の長さを確保しつつ、走行時におけるホイールクレーンの回転半径の増大を防止することができる。具体的には、ブーム14が走行時倒伏姿勢において後方へ向かって水平に延びている場合には、ブーム14の長さが大きくなると、車体2の後端から後方へのブーム14の先端の突出量が増大する。この場合には、ホイールクレーンの全長が増大するため、走行時におけるホイールクレーンの回転半径が増大する。これに対して、この第1実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢において後方へ向かって斜め下向きに延びるため、ブーム14の長さを大きくしたとしても、ブーム14が走行時倒伏姿勢において水平配置される場合に比べて、車体2の後端からのブーム14の突出量を抑えることができる。このため、この第1実施形態では、ブーム14の長さを確保しつつ、走行時におけるホイールクレーンの回転半径の増大を防止することができる。
また、この第1実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢において後方へ向かって斜め下向きに延びるため、ブーム14が走行時倒伏姿勢において後方へ向かって水平に延びるように配置される場合に比べて、ブーム14の重心の位置を下げることができる。そのため、ホイールクレーンの低重心化を図ることができ、ホイールクレーンの安定性を向上することができる。なお、この第1実施形態では、ホイールクレーンの安定性を向上させる代わりに車体2を小型化することも可能である。具体的には、車体2を小型化する場合には、ホイールクレーンの安定性が低下するが、当該第1実施形態では、ホイールクレーンの低重心化による安定性の向上効果が得られるため、その安定性の向上効果と相殺可能な分だけ車体2を小型化することができる。
また、この第1実施形態では、運転室24がホイールクレーンの走行時に前方を向くように配置される走行時運転位置とクレーン作業時に後方を向くように配置される作業時運転位置との間で回動可能であるため、ホイールクレーンの走行時とクレーン作業時とでホイールクレーンの運転にそれぞれ適した運転位置に運転室24を配置することができる。また、ホイールクレーンがUターンするためのスペースがないような狭い場所でも、運転室24を作業時運転位置に配置すれば、オペレータが運転室本体24a内から後方を正面に捉えた状態でホイールクレーンを後進させることができるため、そのような狭い場所からホイールクレーンを容易に脱出させることができる。この際、走行時倒伏姿勢にあるブーム14が運転室24から後方への視界の中に入るが、このブーム14は後方へ向かうにつれて下側へ向かうように傾斜した姿勢となっているため、そのブーム14が後方へ向かって水平に延びるように配置されている場合に比べて、ブーム14により運転室24から後方への視界が遮られる範囲を小さくすることができる。
また、この第1実施形態では、熱交換によりエンジン8を冷却するための冷却装置10が車体2の前端部に配設されているため、ホイールクレーンの走行時に前方から受ける風を冷却装置10による熱交換に利用することが可能であり、その熱交換による冷却を有効に行うことができる。そして、この第1実施形態では、エンジン8及び冷却装置10が共に車体2の前端部のエンジン室2b内に設けられているため、エンジン8と冷却装置10との間で冷却液を流通させるためにエンジン8と冷却装置10とを繋ぐ配管として長さの小さい配管を用いることができる。そのため、冷却液用の配管と他の構成部材との配置の兼ね合いをあまり考慮することなく、エンジン8と冷却装置10の配置のための構成を簡略化することができる。
また、この第1実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときにそのブーム14の基端部が前記中央位置Cよりも前側に配置されるため、ブームが走行時倒伏姿勢をとったときにそのブームの基端部が中央位置よりも後側に配置される場合に比べて、ブームの長さを大きくすることができる。すなわち、この第1実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときにそのブーム14の重心が前記中央位置Cに対して後側に位置するようにしつつ、ブーム14の長さを確保することができる。
また、この第1実施形態では、旋回フレーム12の旋回軸が前記中央位置C上に配置されており、走行時倒伏姿勢をとったときのブーム14の基端部がそれら旋回軸及び中央位置Cに対して車体2の前側に離間して配置されるため、旋回フレーム12の旋回軸に対するブーム14の前後方向の重量バランスの偏りを軽減することができるとともに、旋回フレーム12を中央位置C上の旋回軸回りに旋回させることができる。このため、旋回フレーム12の旋回時における車体2の安定性を向上することができる。
また、この第1実施形態では、旋回フレーム12の旋回軸が前輪4aと後輪4bの間の中央位置C上に位置するため、旋回軸の位置が中央位置Cに対して前側又は後側にずれている場合に比べて、旋回フレーム12の旋回時における車体2の安定性を向上することができる。
また、この第1実施形態では、ウィンチ22が旋回フレーム12の基板部12a上に設けられているため、ブームにウィンチが設けられている場合に比べて、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときのウィンチ22の高さ位置を低い位置とすることができる。また、クレーン作業時にブーム14が走行時倒伏姿勢から起立された場合においても、ウィンチ22の高さ位置は変わらず、低い位置で維持される。従って、この第1実施形態では、ホイールクレーンの走行時及びクレーン作業時のいずれにおいても、ホイールクレーンの低重心化を促進することができ、その結果、ホイールクレーンの走行時及びクレーン作業時の安定性をより向上することができる。
また、この第1実施形態では、ウィンチ22が旋回フレーム12の基板部12aのうちブーム14が走行時倒伏姿勢になったときにそのブーム14の直下に位置する位置に設けられているため、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときにウィンチ22がそのブーム14の下に隠れる。このため、ウィンチ22のドラム22aに巻かれた吊りロープ20に雨が直接かかるのを防ぐことができる。その結果、吊りロープ20の腐食による損耗を軽減することができる。また、このウィンチ22の設置位置に起因して、走行時倒伏姿勢になったときのブームの上面にウィンチが設けられている場合と異なり、作業時運転位置にある運転室14内から後方への視界がウィンチ22によって遮られるのを防ぐことができる。
また、この第1実施形態のようにウィンチ22が設置されていれば、作業時運転位置にある運転室14内からウィンチ22を直視することができるので、後方へ倒伏させたブーム14の先端部の下面にフック装置18が略沿うようにそのフック装置18を格納するためにウィンチ22により吊りロープ20を巻き取らせる際、ウィンチ22を視認しながらその巻き取り動作を実施することができる。このため、この際のウィンチ22による吊りロープ20の巻過ぎが発生するのを防ぐことができる。
また、この第1実施形態では、ホイールクレーンの転倒角度の低下を防ぐことができる。具体的には、上記従来のホイールクレーンでは、ブーム重心及びエンジンが車体の前後方向の中央位置よりも後側に位置することに起因する後側への軸重の偏りを是正するため、車体前部の運転室の上方にカウンタウェイトが配置されているが、このようにカウンタウェイトを配置すると、クレーンの重心位置が高くなる。このため、走行時等にホイールクレーンの車体が傾いた場合に転倒しやすくなり、当該ホイールクレーンの転倒角度が低下する。これに対して、この第1実施形態のホイールクレーンでは、ブーム14の重心が前記中央位置Cよりも後側に位置するのに対してエンジン8を前記中央位置Cよりも前側に配置することで、前後の軸重のバランスを取っているため、そもそもカウンタウェイトを運転室14の近傍に配置する必要がない。このため、上記従来のようなカウンタウェイトの配置に起因するホイールクレーンの転倒角度の低下を防ぐことができる。
また、上記従来のホイールクレーンでは、運転室の左側方上部にカウンタウェイトの一部が位置しているが、このようなカウンタウェイトの配置は、運転室からの良好な視界を確保するという観点からは好ましいものではない。この第1実施形態のホイールクレーンでは、上記のように運転室近傍にカウンタウェイトを配置しなくてもよいため、運転室14から側方への良好な視界を確保することができる。
また、上記従来のホイールクレーンでは、その前部に設けられたカウンタウェイトが、後方へ倒伏した姿勢のブームの基端部から前方へ突出しており、クレーン作業時における上部旋回体の旋回半径が増大する。これに対して、この第1実施形態のホイールクレーンでは、従来のホイールクレーンのような配置でカウンタウェイトを設ける必要がないため、クレーン作業時における上部旋回体の旋回半径の増大を防ぐことができる。
(第2実施形態)
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態によるホイールクレーンの構成について説明する。
この第2実施形態では、ウィンチ32a,32bがブーム14に設けられている。具体的には、ブーム14は、図4及び図5に示す走行時倒伏姿勢になったときに上側を向く面を有しており、その面上にウィンチ32a,32bが搭載されている。また、この第2実施形態のホイールクレーンは、吊荷を吊るためのフック装置として主フック装置28aと図略の補フック装置とを備えている。なお、この主フック装置28a及び補フック装置は、本発明の「フック装置」の概念に含まれるものである。
主フック装置28aは、主巻ロープ20aを介してブーム14の先端のヘッド部14bから吊り下げられ、補フック装置は、補巻ロープを介してブーム14の先端のヘッド部14bから吊り下げられる。なお、主巻ロープ20a及び補巻ロープ20bは、本発明の「吊りロープ」の概念に含まれるものである。ウィンチ32a,32bのうち一方のウィンチ32aは、主巻ロープ20aを巻き取ることにより主フック装置28aを巻き上げる一方、主巻ロープ20aを繰り出すことにより主フック装置28aを巻き下げる主巻き用のウィンチであり、もう一方のウィンチ32bは、補巻ロープ20bを巻き取ることにより補フック装置を巻き上げる一方、補巻ロープ20bを繰り出すことにより補フック装置を巻き下げる補巻き用のウィンチである。各ウィンチ32a,32bが有する構成は、上記第1実施形態のウィンチ22が有する構成と同様である。
両ウィンチ32a,32bは、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときに最も基端寄りの単位ブーム14aのうち上側を向く面に設置されている。そして、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときに、主巻き用のウィンチ32aは、前輪4aと後輪4bとの間の中央位置Cからわずかに後側に亘る範囲に配置され、その主巻き用のウィンチ32aの後方に補巻き用のウィンチ32bが配置される。また、ウィンチ32a,32bは、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときに運転室24の上端の高さ位置よりも低い位置に配置される。また、ウィンチ32a,32bがブーム14に搭載されることに起因して、旋回フレーム12の基板部12aにウィンチを搭載する部位が不要となるので、この第2実施形態では、上記第1実施形態において基板部12aのうちウィンチ22が設置されていた部位が省略されている。この第2実施形態によるホイールクレーンの上記以外の構成は、上記第1実施形態によるホイールクレーンの構成と同様である。
ブームが走行時倒伏姿勢をとったときにウィンチがそのブームの下方に位置するように配設される場合には、ブームがウィンチに対して干渉しない角度までしかブームを倒伏させられないが、この第2実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときに上側を向く当該ブーム14の面上にウィンチ32a,32bが搭載されたことにより、ブーム14の先端の位置がより低い位置となるまでブーム14を倒伏させることができる。このため、狭所からのホイールクレーンの脱出のために運転室24を作業時運転位置に配置してオペレータが運転室本体24a内でホイールクレーンの後進操作を行う際、運転室本体24aから後方への視界の中にブーム14が入る範囲をより小さくすることができ、その結果、ブーム14により運転室24から後方への視界が遮られる範囲をより小さくすることができる。
なお、この第2実施形態では、ウィンチ32a,32bの配置に関連して得られる効果を除けば、上記第1実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、図6及び図7を参照して、本発明の第3実施形態によるホイールクレーンの構成について説明する。
この第3実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときの下側の面にウィンチ22が設けられている。
具体的には、ブーム14の最も基端寄りに位置する単位ブーム14aは、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面を有しており、その面にウィンチ22が設けられている。このウィンチ22は、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態でブーム14が走行時倒伏姿勢になっているときに前輪4aと後輪4bとの間の中央位置Cよりも後側でかつ後輪4bの中心位置Bよりも前側の位置に配置される。また、ウィンチ22は、旋回フレーム12が旋回基準位置に配置された状態でブーム14が走行時倒伏姿勢になっているときに、ブーム14に対する起伏用油圧シリンダ16のロッド部16bの取付部位であるブラケット14fよりも後側に位置する位置で、かつ、下側旋回ベアリング2aの外径の範囲よりも外側(下側旋回ベアリング2aよりも後側)の位置に配置されている。より詳しくは、同状態において、ウィンチ22は、後輪4bの前端と後輪4bの中心位置Bとの間の位置に配置される。
また、ブーム14は、走行時倒伏姿勢をとったときに後方へ向かうにつれて下側へ向かうように斜めに延びるが、そのときのブーム14の傾斜角度は、当該ブーム14の下側面に設けられたウィンチ22が車体2の上面に接触しないような傾斜角度に設定される。
また、この第3実施形態では、ブーム14にウィンチ22が搭載されるため、旋回フレーム12の基板部12aは、上記第2実施形態における基板部12aと同様に構成されている。
この第3実施形態によるホイールクレーンの上記以外の構成は、上記第1実施形態によるホイールクレーンの構成と同様である。
以上説明したように、この第3実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面にウィンチ22が設けられているため、ブームが走行時倒伏姿勢になったときに上側を向く面にウィンチが設けられている場合に比べて、ウィンチ22を低い位置に配置することができる。このため、ホイールクレーンの走行時においてそのホイールクレーンの低重心化を図ることができ、その結果、ホイールクレーンの走行時の安定性を向上することができる。
また、この第3実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面にウィンチ22が設けられていることに起因して、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときにウィンチ22のドラム22aがブーム14の下に隠れる。このため、ウィンチ22のドラム22aに巻かれた吊りロープ20に雨が直接かかるのを防ぐことができる。その結果、吊りロープ20の腐食による損耗を軽減することができる。また、走行時倒伏姿勢になったときのブーム14の下側を向く面にウィンチ22が設けられていることによって、走行時倒伏姿勢になったときのブームの上面にウィンチが設けられている場合と異なり、作業時運転位置にある運転室14内から後方への視界がウィンチ22によって遮られるのを防ぐことができる。
なお、この第3実施形態では、ウィンチ22の配置に関連して得られる効果を除けば、上記第1実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態によるホイールクレーンの構成について説明する。
この第4実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときにそのブーム14の先端が車体2の後端から後方に突出しない。具体的には、走行時倒伏姿勢をとったときのブーム14の先端の前後方向の位置は、車体2の後端の位置と一致している。そして、この第4実施形態では、ブーム14は、走行時倒伏姿勢をとったときに、車体2の中央位置Cからブーム14の先端までの水平方向の距離が車体2の中央位置Cからブーム14の基端部までの水平方向の距離よりも大きくなるように後方へ向かって延び、それによって、当該ブーム14の重心が中央位置Cに対して後側に位置する。
また、この第4実施形態では、ホイールクレーンは、図略の4本の車軸と、8つの車輪4とを備えており、各車軸に左右の車輪4がそれぞれ装着されている。具体的には、ホイールクレーンは、図略の2本の前側車軸と、図略の2本の後側車軸とを備えている。2本の前側車軸は、車体2の前部の下部に当該車体2の幅方向に延びるように設けられており、前後方向において互いに間隔をあけて配置されている。また、2本の後側車軸は、車体2の後部の下部に当該車体2の幅方向に延びるように設けられており、前後方向において互いに間隔をあけて配置されている。8つの車輪4は、車体2の前部の下部に配置された4つの前輪4aと、車体2の後部の下部に配置された4つの後輪4bとからなる。4つの前輪4aは、2本の前側車軸の各々に2つずつ装着されており、4つの後輪4bは、2本の後側車軸の各々に2つずつ装着されている。なお、この第4実施形態における車体2の中央位置Cは、車体2の前後方向において最も前側の前輪4aと最も後側の後輪4bとの間でその最も前側の前輪4aの中心位置Aと最も後側の後輪4bの中心位置Bとから等距離に位置する位置である。
また、この第4実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときにその先端部が車体2の後端よりも後方へ突出しないことに起因して、走行時倒伏姿勢におけるブーム14の先端部は、車体2との干渉を防ぐために車体2の後端部の上側に配置される。
また、この第4実施形態では、旋回フレーム12の旋回軸は、車体2の中央位置Cの近傍ではあるが、その中央位置Cよりも僅かに前側に位置している。この第4実施形態でも、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときにそのブーム14の重心が車体2の中央位置Cよりも後側に位置することにより、旋回フレーム12を後方へ転倒させる方向へのモーメントがブーム14から旋回フレーム12に作用する。このモーメントは、旋回フレーム12から図略の旋回装置を介して車体2に伝達される。その結果、ブーム14の重量に起因する荷重は、車体2のうち中央位置Cに対して後側に偏って掛かることになる。
また、この第4実施形態では、車体2のうち前後方向において2本の前側車軸の間に位置する部位にエンジン室2bが設けられており、そのエンジン室2b内にエンジン8が収容されている。
この第4実施形態によるホイールクレーンの上記以外の構成は、上記第1実施形態によるホイールクレーンの構成と同様である。
この第4実施形態では、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったとき、そのブーム14の先端は車体2の後端から後方に突出しないが、車体2の中央位置Cからブーム14の基端までの水平方向の距離が車体2の中央位置Cからブーム14の先端までの水平方向の距離よりも大きくなり、それによって、走行時倒伏姿勢のブーム14の重心が車体2の中央位置Cよりも後側に位置する。このため、ブーム14の重量に起因する荷重は、車体2に対してその中央位置Cよりも後側に偏って掛かる。そして、この後側に偏って掛かる荷重と、車体2の中央位置Cよりも前側に配置されたエンジン8の重量とによって、ホイールクレーンの前輪4aの軸重と後輪4bの軸重とのバランスを均等に近づけることができる。その結果、この第4実施形態でも、従来のように前後の軸重のバランスの偏りを是正するために別途大きなカウンタウェイトを設けなくてもよく、ホイールクレーンの軽量化を図ることができる。
この第4実施形態のホイールクレーンによる上記以外の効果は、上記第1実施形態のホイールクレーンによる効果と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、図9及び図10に示す上記第3実施形態の変形例のように、ホイールクレーンが、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面に設けられたウィンチ32aに加えて、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに上側を向く面に設けられたウィンチ32bを備えていてもよい。
具体的には、この変形例によるホイールクレーンでは、ブーム14の最も基端寄りに位置する単位ブーム14aが、ブーム14が走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面と上側を向く面とを有しており、その下側を向く面に主巻き用のウィンチ32aが設けられているとともにその上側を向く面に補巻き用のウィンチ32bが設けられている。主巻き用のウィンチ32aは、主巻ロープ20aの巻き取り/繰り出しを行うことにより主フック装置28aの巻き上げ/巻き下げを行うものであり、補巻き用のウィンチ32bは、補巻ロープ20bの巻き取り/繰り出しを行うことにより図略の補フック装置の巻き上げ/巻き下げを行うものである。主巻き用のウィンチ32aが設けられた位置及び当該ウィンチ32aの構成は、上記第3実施形態によるウィンチ22が設けられた位置及びそのウィンチ22の構成と同様である。また、補巻き用のウィンチ32bは、ブーム14が走行時倒伏姿勢をとったときに主巻き用のウィンチ32aの直上となる位置に設けられている。この補巻き用のウィンチ32bの構成は、上記第2実施形態による補巻き用のウィンチ32bの構成と同様である。
この変形例によるホイールクレーンの上記以外の構成は、上記第3実施形態によるホイールクレーンと同様である。
この変形例によるホイールクレーンでは、ウィンチ32a,32bが両方ともブーム14が走行時倒伏姿勢になったときにそのブーム14の上側を向く面に設けられている場合に比べて、ホイールクレーンの走行時における低重心化を図ることができ、ホイールクレーンの走行時の安定性を向上することができる。
また、ホイールクレーンに設けられている車輪の数及び位置は、上記した数及び位置に限定されない。例えば、上記第1〜第3実施形態及び上記変形例において、車輪は、車体の前後方向において3箇所以上の位置に分かれて配置されていてもよい。また、上記第4実施形態において、車輪は、車体の前後方向において、2箇所、3箇所又は5箇所以上の位置に分かれて配置されていてもよい。これらの場合には、本発明における中央位置は、車体の前後方向において分かれて配置された複数の車輪のうち最も前寄りに位置する車輪と最も後寄りに位置する車輪との間の中央位置となる。そして、これらの場合には、その最も前寄りに位置する車輪を前記前輪4a(上記第4実施形態では最も前側の前輪4a)と置き換え、かつ、その最も後寄りに位置する車輪を前記後輪4b(上記第4実施形態では最も後側の後輪4b)と置き換えて上記各実施形態及び変形例に記載の構成を適用すればよい。
また、エンジン8は、必ずしも車体2の前端部に設けられている必要はなく、前輪4aと後輪4bとの間の中央位置Cに対して前側の箇所であれば、車体2の前端部以外の箇所に設けられていてもよい。
また、ブーム14は、走行時倒伏姿勢をとったときに後方へ向かって水平又は僅かに上向きに延びていてもよい。
また、旋回フレーム12の旋回軸は、車体2の前後方向における前輪4aと後輪4bとの間の前記中央位置C上に配置されていなくてもよい。例えば、旋回フレーム12の旋回軸の位置は、前記中央位置Cに対して前側又は後側にずれていてもよい。なお、この場合には、車体2の前後方向において、旋回フレーム12の旋回軸の位置が、走行時倒伏姿勢をとったときのブーム14の基端部よりも前記中央位置Cの近くに配置されていることが、旋回フレーム12の旋回時の安定性の向上を図る上で好ましい。
また、上記各ウィンチ22,32a,32bは、必ずしも上記した設置位置に設置されていなくてもよく、上記各設置位置以外の様々な位置に設置してもよい。例えば、上記第4実施形態において、ウィンチ22は、上記第3実施形態のようにブーム14のうち走行時倒伏姿勢になったときに下側を向く面に設けられていてもよい。また、上記第4実施形態において、上記第2実施形態や、上記第3実施形態の変形例のような形態でブーム14にウィンチが設けられていてもよい。なお、各ウィンチがどのような形態に設置されている場合でも、各ウィンチの設置位置は、前輪と後輪との間の中央位置(旋回フレームの旋回軸の位置)よりも後方であることが好ましい。
また、本発明が適用されるホイールクレーンは、エンジンの動力によって前輪と後輪の両方を回転駆動させるものに限定されない。すなわち、エンジンの動力によって前輪のみ又は後輪のみを回転駆動させるホイールクレーンでも、本発明を適用可能である。