JP5978108B2 - 混合膜の製造方法、及び多孔質膜の製造方法 - Google Patents

混合膜の製造方法、及び多孔質膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、混合膜の製造方法、多孔質膜の製造方法、混合膜、多孔質膜、及び成膜装置に関する。
ガラスや金属などの基材上に、セラミックスや半導体微粒子などの無機材料からなる多孔質膜を形成する従来方法としては、基材上に無機物質の微粒子およびバインダー樹脂を含む分散液を塗布し、これを乾燥させて分散媒を除去した後、数百℃で焼成することにより、微粒子同士を結着させるとともに、バインダー樹脂を焼失させることにより、微粒子間に空隙を形成して、多孔質膜を形成する方法が知られている。この分散液を用いる方法では、分散液中のバインダー樹脂の含有量を調整することにより、焼成後の多孔質膜における空隙率を制御できる。
しかしながら、この分散液を用いる方法では、数百℃の焼成処理が必要であるため、熱に弱いプラスチック基材、低融点の金属基材、熱によって物性が劣化する部位を有する基材等を用いることが難しかった。
これに対して、焼成処理を必要としない無機物質の微粒子を用いた緻密膜の形成方法であるエアロゾルデポジション法(AD法)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、無機物質の微粒子およびバインダー樹脂を含む分散液を焼成した後、これを粉砕することにより、前もって多孔質粒子を調製し、その多孔質粒子をエアロゾルの原料として使用するAD法によって、基材上に多孔質膜を形成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
特開2001−3180号公報 特開2004−33818号公報
AD法によれば、微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを亜音速〜超音速で基材上に吹き付けることにより、衝突の運動エネルギーによって脆性変形した粒子同士が結着し、焼成法や物理蒸着法と同等の強度を有する膜体(構造体)を形成できる。しかし、従来のAD法では、緻密な(空隙率の低い)膜体しか形成することができず、高い空隙率の多孔質膜を形成すること困難であった。更に、従来のAD法により成膜された膜体において、その厚み方向又は拡がり方向(膜平面方向)に空隙率を連続的に変化させたグラデーション構造を形成することは一層困難であった。
また、従来方法により成膜された膜体において、その厚み方向又は拡がり方向(膜平面方向)に、当該膜体を構成する互いに異なる種類の粒子の占有率(体積比)を連続的に変化させたグラデーション構造を形成することも困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、互いに異なる種類の粒子からなる混合膜の厚み方向又は拡がり方向(平面方向)に各粒子の占有率が連続的又は段階的に(漸次)変化する混合膜の製造方法、多孔質膜の厚み方向又は拡がり方向(平面方向)に空隙率が連続的又は段階的に(漸次)変化する多孔質膜の製造方法、前記製造方法により得られた混合膜及び多孔質膜、並びに前記製造方法に適用可能な成膜装置の提供を課題とする。
(1)互いに異なる種類の粒子αと粒子βとが混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける前記粒子β/前記粒子αの混合比を、連続的に又は段階的に変化させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記粒子αからなる第一部分と前記粒子βからなる第二部分とによって構成される混合膜を形成することを特徴とする混合膜の製造方法。
(2)前記(1)に記載の混合膜の製造方法を用いた多孔質膜の製造方法であって、下記除去処理により除かれ難い粒子Aと下記除去処理により除かれ易い粒子Bとが混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける前記粒子B/前記粒子Aの混合比を、連続的に又は段階的に変化させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記粒子Aからなる非除去部と前記粒子Bからなる除去部とによって構成される混合膜を形成し、前記除去部を溶解、分解、揮発、昇華又は焼失させて除去する除去処理を行うことによって多孔質膜を形成することを特徴とする多孔質膜の製造方法。
(3)前記混合比を連続的に又は段階的に増加させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けることを特徴とする前記(2)に記載の多孔質膜の製造方法。
(4)前記混合比を連続的に又は段階的に減少させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けることを特徴とする前記(2)に記載の多孔質膜の製造方法。
(5)ロールトゥロール方式で前記基材を移動し、前記基材の所定領域に対して、第一の混合比の前記エアロゾルを吹き付けた後、同じ所定領域に対して、前記第一の混合比よりも前記混合比が高い第二の混合比の前記エアロゾルを吹き付けることを特徴とする前記(2)に記載の多孔質膜の製造方法。
(6)ロールトゥロール方式で前記基材を移動し、前記基材の所定領域に対して、第一の混合比の前記エアロゾルを吹き付けた後、同じ所定領域に対して、前記第一の混合比よりも前記混合比が低い第二の混合比の前記エアロゾルを吹き付けることを特徴とする前記(2)に記載の多孔質膜の製造方法。
(7)前記ノズルを前記基材の平面方向に移動させながら前記吹き付けを連続的に行うことを特徴とする前記(2)〜(4)の何れか一に記載の多孔質膜の製造方法。
(8)前記除去処理が、水、酸又は塩基による溶解、光又は熱による分解、減圧による揮発又は昇華、或いは燃焼による焼失であることを特徴とする前記(2)〜(7)の何れか一に記載の多孔質膜の製造方法。
(9)前記粒子Aが、酸化チタンからなる粒子であることを特徴とする前記(2)〜(8)の何れか一に記載の多孔質膜の製造方法。
(10)前記(2)〜(9)の何れか一に記載の多孔質膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする多孔質膜。
(11)前記(1)に記載の混合膜の製造方法によって製造されたことを特徴とする混合膜。
(12)複数の粒子供給器と、前記複数の粒子供給器から供給される各粒子を混合してエアロゾルを発生するエアロゾル発生器と、前記複数の粒子供給器から前記エアロゾル発生器に供給する各粒子の供給量をそれぞれ独立して制御する制御器と、前記エアロゾルを吹き付けるノズルと、を備えたことを特徴とする成膜装置。
本発明の混合膜の製造方法によれば、互いに異なる種類の粒子からなる混合膜の厚み方向又は拡がり方向(平面方向)に、各粒子の占有率(体積比)が連続的に(漸次)増加又は減少する混合膜を基材上に成膜できる。ロールトゥロール方式(roll to roll方式)に適した可撓性の基材にも当該混合膜を容易に形成できる。この結果、グラデーション構造を有する混合膜を容易に製造することができる。また、本発明の混合膜は、色素増感太陽電池の光電極を構成する多孔質膜の製造に利用できる。
本発明の多孔質膜の製造方法によれば、多孔質膜の厚み方向又は拡がり方向(平面方向)に空隙率が連続的に(漸次)増加又は減少する多孔質膜を基材上に成膜できる。ロールトゥロール方式(roll to roll方式)に適した可撓性の基材にも当該多孔質膜を形成できる。
また、本発明の多孔質膜の製造方法によれば、空隙率が漸次増加又は減少するグラデーション構造を有する多孔質膜を容易に形成することができるので、色素増感太陽電池の光電極として用いる場合、入射した光の透過、吸収、散乱を効率的に制御可能な多孔質膜を形成することが可能である。また、多孔質膜内に色素等の物質を効率的に吸着させたり、電解質成分を効率的に拡散させることが容易である多孔質膜を形成することができる。したがって、本発明の製造方法によって得られる多孔質膜は、色素増感太陽電池における光電極を構成する多孔質膜として優れた性能を発揮し得る。
本発明の成膜装置によれば、吹き付けるエアロゾル中の複数の粒子の配合割合を任意に漸次変化させることが可能であり、膜の一方の側から他方の側に向けて、当該膜の状態及び形態(例えば空隙率)を連続的かつ容易に変化させた膜を形成することが可能である。このことは前記混合膜及び多孔質膜の製造効率の向上にも大きく寄与する。
本発明の製造効率の高さは、従来の多層成膜のようなステップ成膜法(一層毎に微粒子分散液の塗布、乾燥、焼成を繰り返す成膜方法)では得ることができない。
成膜時間とエアロゾル中の粒子混合比の関係を表したグラフである。 膜の厚み方向(基材から離れる方向)に空隙率が増加する多孔質膜の断面模式図である。 成膜時間とエアロゾル中の粒子混合比の関係を表したグラフである。 膜の厚み方向(基材から離れる方向)に空隙率が減少する多孔質膜の断面模式図である。 膜の平面方向に(紙面左側から右側へ)空隙率が増加する多孔質膜の断面模式図である。 膜の平面方向に(紙面左側から右側へ)空隙率が減少する多孔質膜の断面模式図である。 成膜時間とエアロゾル中の粒子混合比の関係を表したグラフである。 成膜時間とエアロゾル中の粒子混合比の関係を表したグラフである。 成膜装置の一例を示す概略構成図である。 多孔質膜の空隙率が低い断面を観察したSEM像である。 多孔質膜の空隙率が増加した断面を観察したSEM像である。 多孔質膜の空隙率が更に増加した断面を観察したSEM像である。 基板上に成膜された二層構造の多孔質膜の断面模式図である。 成膜時間とエアロゾル中の粒子混合比の関係を表したグラフである。 膜の厚み方向(基材から離れる方向)に、初めは空隙率が増加し、次いで空隙率が減少する多孔質膜の断面模式図である。 混合膜における粒子α/粒子β=80/20の断面を観察したSEM像である。 混合膜における粒子α/粒子β=40/60の断面を観察したSEM像である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態である多孔質膜の製造方法を説明する。以下の説明で参照する図面は、模式的なものであり、大きさ、長さ、厚み等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更できる。
《混合膜の製造方法》
本発明の第一態様の混合膜の製造方法は、互いに異なる種類の粒子αと粒子βとが混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける前記粒子β/前記粒子αの混合比を、連続的に又は段階的に変化させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記粒子αからなる第一部分と前記粒子βからなる第二部分とによって構成される混合膜を形成する混合膜の製造方法である。この製造方法は、第二態様の多孔質膜の製造方法に利用可能である。
本発明の第一態様の混合膜の製造方法においては、前記混合比を連続的に又は段階的に増加させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けてもよい。この場合、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的又は段階的に、粒子αの体積比(占有率)が減少し、粒子βの体積比が増加した混合膜(図1,2参照);又は、成膜開始位置を基点として膜の平面方向(膜の拡がり方向)に、連続的又は段階的に、粒子αの体積比(占有率)が減少し、粒子βの体積比が増加した混合膜(図1,5参照)が得られる。
本発明の第一態様の混合膜の製造方法においては、前記混合比を連続的に又は段階的に減少させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けてもよい。この場合、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的又は段階的に、粒子αの体積比(占有率)が増加し、粒子βの体積比が減少した混合膜(図3,4参照);又は、成膜開始位置を基点として膜の平面方向(膜の拡がり方向)に、連続的又は段階的に、粒子αの体積比(占有率)が増加し、粒子βの体積比が減少した混合膜(図3,6参照)が得られる。
第一態様の混合膜の製造方法において、粒子α及び粒子βは、互いに種類が異なる異種の粒子であり、エアロゾルの吹き付けにより混合膜を成膜可能であれば特に制限されない。ここで、「互いに種類が異なる」とは、化学的成分(材料)が異なること、大きさが異なること、形状が異なること、硬さが異なること、密度が異なること、又は除去性が異なること、のうち何れか1以上を意味する。
前記「除去性」とは、粒子αからなる第一部分と粒子βからなる第二部分とを含む混合膜に対して、水、酸又は塩基による溶解処理、光又は熱による分解処理、揮発又は昇華を促す減圧処理、或いは焼失を促す燃焼処理を行った場合、第一部分又は第二部分のいずれか一方が選択的若しくは優先的に除去されうる性質をいう。
このような除去性が異なる粒子α及び粒子βの組み合わせとしては、後述する第二態様の粒子A及び粒子Bの組み合わせが好ましい。以下、第二態様を説明する。
《多孔質膜の製造方法》
本発明の第二態様の多孔質膜の製造方法は、下記除去処理により除かれ難い粒子Aと下記除去処理により除かれ易い粒子Bとが混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける前記粒子B/前記粒子Aの混合比を、連続的に又は段階的に変化させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記粒子Aからなる非除去部と前記粒子Bからなる除去部とによって構成される混合膜を形成し、前記除去部を溶解、分解、揮発、昇華又は焼失させて除去する除去処理を行うことによって多孔質膜を形成する方法である。
前記粒子Aは、前記除去処理により全く影響を受けずに、前記除去処理により全く除かれない粒子であってもよい。
前記粒子Bは、前記除去処理により、前記粒子Aよりも10倍以上速く除去される粒子であってもよい。
本発明の第二態様の多孔質膜の製造方法においては、前記混合比を連続的に又は段階的に増加させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けてもよい。
本発明の第二態様の多孔質膜の製造方法においては、前記混合比を連続的に又は段階的に減少させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けてもよい。
以下、第一実施形態と第二実施形態の説明において、前記混合比を増加させながら前記吹き付けを行う場合を主に説明する。前記混合比を減少させながら前記吹き付けを行う場合については、以下の説明において「増加」を「減少」と読み換えることにより理解される。なお、増加させる場合と減少させる場合とで得られる効果が異なる場合は、当該効果を後で説明する。
本発明の第二態様の多孔質膜の製造方法においては、前記除去処理が、水、酸又は塩基による溶解、光又は熱による分解、減圧による揮発又は昇華、或いは燃焼による焼失のうち、何れの除去処理であってもよい。また、当該除去処理は2種以上の除去処理を組み合わせて行ってもよい。前記除去処理としては、前記溶解又は前記分解による除去処理が好ましく、前記溶解による除去処理がより好ましい。前述した除去処理のうち、基材に対する損傷が少ない除去処理であることが更に好ましい。例えば、基材として耐熱性の低い樹脂フィルムを用いた場合は、燃焼による除去処理は通常困難である。一方、耐化学性(耐薬品性)を有する基材を用いた場合は、酸やアルカリを用いて溶解する除去処理が適している。
以下、第一実施形態においては溶解させて除去する方法を説明する。第二実施形態の説明においては、減圧による揮発又は昇華、及び燃焼による焼失について説明する。光又は熱による分解については特に例示しないが、常法により行うことができる。
〔第一実施形態〕
第一実施形態において、前記粒子Aとして不溶性粒子を使用し、前記粒子Bとして可溶性粒子を使用する。したがって、第一実施形態の多孔質膜の製造方法は、不溶性粒子と可溶性粒子が混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける、(前記可溶性粒子)/(前記不溶性粒子)の混合比を、連続的に又は段階的に、増加又は減少させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記不溶性粒子からなる不溶部(非除去部)及び前記可溶性粒子からなる可溶部(除去部)によって構成される混合膜を形成し、前記可溶部を溶解して除去することにより多孔質膜を形成する方法である。
(基材)
前記基材としては、前記エアロゾルを高速で基材に吹き付けることにより、前記基材上に前記混合膜を形成可能なものであれば特に限定されない。例えば、ガラス基材、各種プラスチックからなる基材、各種金属からなる基材が挙げられる。
前記基材の形状は特に制限されず、例えば、板状、フィルム状、シート状が挙げられる。前記基材の種類及び形状が、ロールトゥロール方式で搬送可能な種類及び形状であってもよい。
前記基材の吹き付け面(成膜面)の状態は成膜可能な状態であればよく、必ずしも平面である必要はない。平面以外の吹き付け面としては、例えば凸面、凹面などの球面若しくは円柱の側面、五角柱や四角柱などの側面のように角部を有する面、又は円錐や三角錐などの尖った先端を有する面などでもよい。
(吹き付け法)
前記基材に前記エアロゾルを吹き付けることにより成膜する方法(以下、「吹き付け法」と略記する。)は、公知の方法が適用可能である。例えば、溶射法、コールドスプレー法、エアロゾルデポジション法(以下、「AD法」と略記する。)等が挙げられる。
溶射法は、本実施形態の不溶性粒子及び可溶性粒子に相当する溶射材を加熱して基材に吹き付け、基材上に、本実施形態の混合膜に相当する薄膜を形成する技術である。溶射材を加熱するための熱源としては、燃焼炎やプラズマが用いられる。これらの熱により液滴状あるいは微粒子状に成形された溶射材が、高速のガス流によって基材に吹き付けられ、基材上で凝固し密着することにより、薄膜が形成される。
コールドスプレー法は、本実施形態の不溶性粒子及び可溶性粒子に相当する粉末材料を溶融温度以下の固相状態で基材に衝突させて、基材上に、本実施形態の混合膜に相当する薄膜を形成する技術である。
AD法は、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスからなる搬送ガスによって、本実施形態の不溶性粒子及び可溶性粒子に相当する原料粒子を亜音速〜超音速程度まで加速させ、基材に原料粒子を高速で吹き付けて、原料粒子と基材、又は、原料粒子同士を接合させて、基材上に、本実施形態の混合膜に相当する薄膜を形成する技術である。
AD法において、基材表面に衝突した原料粒子は、少なくともその一部が基材表面に食い込んで、容易には剥離しない。更に吹き付けを継続すると、基材表面に食い込んだ原料粒子に対して、別の微粒子が衝突する。原料粒子同士の衝突によって、衝突した箇所に新生面が形成される。主にこの新生面において原料粒子同士が接合する。原料粒子同士の衝突においては、原料粒子が溶融するような温度上昇は生じ難いため、原料粒子同士が接合した界面にはガラス質からなる粒界層は実質的に存在しない、と理解されている。所望の膜厚に達するまで原料粒子の吹き付けを継続することにより、空隙率が比較的低い緻密な薄膜を形成できる。形成した薄膜は、充分な強度を有するので、焼成による焼き締めは不要である。
本実施形態に適用可能なAD法としては、例えば「国際公開第WO01/27348A1号パンフレット」に開示されている超微粒子ビーム堆積法、「特許第3265481号公報」に開示されている脆性材料超微粒子低温成形法などが挙げられる。この公報は、吹き付ける前の原料粒子に、クラックが入るか入らないか程度の内部歪を予め加えておくことが重要である;内部歪を加えることにより、原料粒子が衝突した際に脆性破壊(脆性変形)が起こり易くなるため、一層緻密な薄膜を形成できる;と報告している。
本実施形態においては、前記混合膜が、緻密膜ではなく、多孔質膜(膜内に空隙を有する膜)であることが好ましい。これにより、成膜後の不溶部の除去が容易になる。多孔質の混合膜を成膜する場合は、搬送ガスの吹き付け速度にもよるが、通常は、上述のように原料粒子に内部歪を加える処理は行う必要がない。
(不溶性粒子)
前記不溶性粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫化アンチモン等からなる粒子が挙げられる。本実施形態の多孔質膜の製造方法を、色素増感太陽電池の光電極製造に利用する場合には、酸化チタンが好ましい。
ここで「不溶性」とは、前記混合膜の可溶部を溶解させる溶解液に対して全く溶解しないこと、又は、前記溶解液に対する溶解速度が前記可溶性粒子の当該溶解速度に比べて充分に小さいことを意味する。この「不溶性」の条件を満たす、吹き付け可能な粒子であれば、前記不溶性粒子として如何なる粒子でも特に制限なく使用できる。
前記不溶性粒子の溶解速度/前記可溶性粒子の溶解速度は、混合膜から可溶性粒子を選択的に又は優先的に溶解して除去するために、1/10以下であることが好ましい。
前記吹き付け法を適用する場合、搬送ガスによるエアロゾルの吹き付け速度を充分に高めるために、前記不溶性粒子の比重が2以上であることが好ましい。
酸化チタンの結晶型は、アナターゼ型、ルチル型およびブルカイト型のいずれでもよい。
本実施形態の多孔質膜を、色素増感太陽電池の光電極に利用する場合には、酸化チタンの結晶型を、例えば、アナターゼ型とすることにより、ルチル型よりも電気化学的な反応活性を高くでき、増感色素からの電子注入が一層効率的になる。また、ルチル型の屈折率はアナターゼ型の屈折率よりも高いため、一次粒子径が大きいルチル型の酸化チタンを適量混合することにより、光散乱効果及び光利用効率を一層高めることができる。
前記不溶性粒子の形状は、特に限定されず、球状、正八面体状、星状、又はこれらの類似形状、或いは、針状、板状等が挙げられる。これらの形状の粒子うち、球状、正八面体状及びその類似形状の粒子が容易に入手できる。また、長い針状の不溶性粒子を用いて形成した多孔質膜は、色素増感太陽電池の光電極に適用された場合、当該光電極の光散乱効果及び電子移動効率を向上させることができる。
前記不溶性粒子の粒子径(一次粒子径)は、特に限定されず、製造する多孔質膜の強度、空隙率(嵩密度)を考慮して適宜調整すればよい。例えば、1nm〜100μm、又は10nm〜10μmの粒子径を有する不溶性粒子を使用できる。
前記不溶性粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(可溶性粒子)
前記可溶性粒子の「可溶性」とは、前記混合膜の可溶部を溶解する溶解液に対して容易に溶解すること、又は、前記溶解液に対する溶解速度が前記不溶性粒子の当該溶解速度に比べて充分に大きいことを意味する。この「可溶性」の条件を満たす、吹き付け可能な粒子であれば、前記可溶性粒子として如何なる粒子でも特に制限なく使用できる。
前記不溶性粒子の溶解速度/前記可溶性粒子の溶解速度は、混合膜から可溶性粒子を選択的に又は優先的に溶解して除去するために、1/10以下であることが好ましい。
前記可溶性粒子としては、例えば、水、酸又は塩基(アルカリ)に対する溶解性が前記不溶性粒子よりも高い水溶性の粒子、金属カルコゲニド化合物からなる粒子、金属水酸化物からなる粒子などが挙げられる。
前記吹き付け法を適用する場合、搬送ガスによるエアロゾルの吹き付け速度を充分に高めるために、前記可溶性粒子の比重が2以上であることが好ましい。
前記「水、酸又は塩基(アルカリ)に対する溶解性が前記不溶性粒子よりも高い粒子」としては、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ等の金属カルコゲニド化合物(金属酸化物)や、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マンガン、水酸化ニッケル等の金属水酸化物からなる粒子が挙げられる。
ここで例示した金属酸化物からなる粒子及び金属水酸化物からなる粒子は、通常、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は硫化アンチモンからなる前記不溶性粒子よりも、酸又は塩基の水溶液に対して10倍以上の溶解速度を有する。
前記可溶性粒子として、前記「水、酸又は塩基(アルカリ)に対する溶解性が前記不溶性粒子よりも高い粒子」を用いた場合、前記混合膜を構成する可溶部を水、酸又は塩基の水溶液によってエッチングすることにより、当該可溶部を容易に除去して、前記不溶性粒子からなる不溶部だけで構成された多孔質膜を形成できる。
前記水溶性の粒子としては、例えば、塩化ナトリウム、水酸化リチウム、硫化マグネシウム、水酸化バリウム、水溶性ポリマー等からなる粒子が挙げられる。
前記可溶性粒子として、水溶性の粒子を用いた場合、前記混合膜を構成する可溶部を水又は温水によってエッチングすることにより、不溶性粒子からなる不溶部だけで構成された多孔質膜を形成できる。
前記可溶性粒子の粒子径(一次粒子径)は、特に限定されず、製造する多孔質膜の強度、空隙率(嵩密度)を考慮して適宜調整すればよい。例えば、1nm〜100μm、又は10nm〜10μmの粒子径の可溶性粒子を使用できる。
前記可溶性粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(各粒子の相対的な大きさ)
前記不溶性粒子の粒子径と前記可溶性粒子の粒子径の比は特に制限されないが、エアロゾル中に各粒子を均一に分散させるために、各粒子の粒子径が同程度であることが好ましい。具体的には、(不溶性粒子の粒子径)/(可溶性粒子の粒子径)=10/1〜1/50であることが好ましい。
(混合比)
前記エアロゾルを構成する不溶性粒子と可溶性粒子の混合比(体積比)を連続的に又は段階的に増加させる方法は、特に制限されない。
例えば、単一のエアロゾル発生器に、不溶性粒子を供給する第一粒子供給器及び可溶性粒子を供給する第二粒子供給器を接続し、各粒子供給器から供給する各粒子の体積比を制御する方法が挙げられる。エアロゾル発生器に供給された各粒子は、空気、窒素、アルゴン等のガスと共に均一に混合されてエアロゾルになる。具体的には、成膜開始時点では第一粒子供給器から供給される不溶性粒子の体積(量)を第二粒子供給器から供給される可溶性粒子の体積(量)よりも大きくする。次に、成膜を継続する間に、連続的に又は段階的に、第一粒子供給器から供給される不溶性粒子の体積(量)を減少させ、更に第二粒子供給器から供給される可溶性粒子の体積(量)を増加させることにより、エアロゾル中の粒子の合計体積(合計量)を変動させることなく、前記混合比を連続的に又は段階的に増加させることができる。
図1を参照して更に具体例を説明する。エアロゾル発生器に供給する不溶性粒子(粒子A)と可溶性粒子(粒子B)の供給量を各々独立に制御して、成膜開始時(図1の(1))においては不溶性粒子:可溶性粒子=100:0の割合で供給する。続いて成膜中(図1の(2))に、連続的に一定速度で不溶性粒子の供給量を減らし、且つ連続的に同じ一定速度で可溶性粒子の供給量を増加させる。その後、成膜終了時(図1の(3))においては不溶性粒子:可溶性粒子=40:60の割合で供給することにより、図1に示すように、区間(2)において、混合比が連続的に変化したエアロゾルを発生させることができる。
(混合膜)
・第一の吹き付け例
図1の混合比で構成されたエアロゾルをノズルから基材に吹き付ける際、ノズルと基材との相対位置をほぼ固定した状態で吹き付けを連続的に行うことにより、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に連続的に可溶性粒子の体積比が増加した(不溶性粒子の体積比が減少した)混合膜が得られる(図2参照)。成膜する混合膜の厚みは特に制限されず、例えば膜厚が1〜100μmの混合膜を形成できる。また、前記吹き付けの際、ノズルを揺動することにより、吹き付け面積及び成膜面積を増加させてもよい。
ここでは、前記混合比を増加させる場合(図1,2)を説明したが、前記混合比を減少させる場合も同様に行うことができる。前記混合比を減少させる場合(図3参照)は、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に連続的に可溶性粒子の体積比が減少した(不溶性粒子の体積比が増加した)混合膜が得られる(図4参照)。
・第二の吹き付け例
図1の混合比で構成されたエアロゾルをノズルから基材に吹き付ける際、ノズルを基材の平面方向に移動させながら吹き付けを連続的に行うことにより、成膜開始位置を基点として膜の平面方向(膜の拡がり方向)に連続的に可溶性粒子の体積比が増加した(不溶性粒子の体積比が減少した)混合膜が得られる(図5参照;図における矢印は基板に対するノズルの移動方向を示す)。成膜する混合膜の平面方向の直径(長さ)は特に制限されず、例えば直径が10〜1000μmの混合膜を形成できる。
ここでは、前記混合比を増加させる場合(図1,5)を説明したが、前記混合比を減少させる場合も同様に行うことができる。前記混合比を減少させる場合(図3参照)は、膜の平面方向に連続的に可溶性粒子の体積比が減少した(不溶性粒子の体積比が増加した)混合膜が得られる(図6参照;図における矢印は基板に対するノズルの移動方向を示す)。
・第三の吹き付け例
図7に示すように、可溶性粒子(粒子B)/不溶性粒子(粒子A)の混合比を段階的に(ステップワイズに)増加させたエアロゾルを発生させて成膜する方法も例示できる。図における成膜時間(2)を4等分に分割し、4段階で混合比を上げる場合を以下に説明する。この段階的に混合比を下げる方法は、基材をロールトゥロール方式で搬送する場合に特に効果的である。以下、詳細に説明する。
まず、不溶性粒子:可溶性粒子=100:0の混合比で発生させたエアロゾル(図7の(1))を、ロールトゥロール方式で搬送される基材の所定領域に均一に吹き付ける。次に、不溶性粒子:可溶性粒子=85:15の混合比で発生させたエアロゾル(図7の(2a))を前記所定領域に重ねて均一に吹き付ける。次に、不溶性粒子:可溶性粒子=70:30の混合比で発生させたエアロゾル(図7の(2b))を前記所定領域に重ねて均一に吹き付ける。次に、不溶性粒子:可溶性粒子=55:45の混合比で発生させたエアロゾル(図7の(2c))を前記所定領域に重ねて均一に吹き付ける。次に、不溶性粒子:可溶性粒子=40:60の混合比で発生させたエアロゾル(図7の(2d))を前記所定領域に重ねて均一に吹き付ける。
このように同一の所定領域に対して、混合比を段階的に増加させたエアロゾルを重ねて均一に吹き付ける場合、大面積の基材をロールトゥロール方式で搬送させることにより、製造効率を向上させることができる。
ここでは4段階で混合比を増加させる例を示したが、段階の数は適宜設定することができる。例えば2〜25段階でもよく、3〜20段階でもよく、4〜15段階でもよく、5〜10段階でもよい。段階の数の検討に際しては、混合膜の膜厚、各段階において形成する層の厚み、及び混合比の変化率などを考慮することが好ましい。
通常、2〜3段階で混合比を増加させて成膜した混合膜の膜厚方向の断面をSEMで観察した場合には、各段階に対応した層(例えば厚み10μm程度の層)が膜厚方向に積層された状態が観察できる。図13は、2段階で混合比を増加させて形成した混合膜を更にエッチング処理して得られた、多孔質膜100の膜厚方向の断面模式図である。基材101上に、第一層102と第二層103とが積層されている。可溶性粒子が除去された空隙の体積比については、第二層103の方が第一層102よりも大きい。また、不溶性粒子の体積比については、第一層102の方が第二層103よりも大きい。
一方、多段階で混合比を増加させて、一層あたりの厚みが極めて薄い状態で成膜した混合膜の断面をSEMで観察しても、明確な積層構造は観察されない。すなわち、多段階で混合比を増加させることにより、上述した「第一の吹き付け例」で得られた混合膜と同様に、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的に可溶性粒子の体積比が増加した(不溶性粒子の体積比が減少した)混合膜が得られる(図2参照)。この場合、各層の厚みは、特に制限されないが、例えば0.1μm〜5μmであってもよいし、0.5μm〜4μmであってもよいし、1μm〜3μmであってもよい。
従来の多孔質膜の製造方法によって積層構造を有する混合膜を成膜する場合、各層ごとに、粒子含有スラリーの塗布、乾燥、焼成の3工程が少なくとも必要になる。具体的には不溶性粒子と可溶性粒子の混合比が異なる粒子含有スラリーを各層ごとに調製し、基材上に、バーコート法などにより第一のスラリーを塗布し、乾燥し、焼成することにより第一層を形成する。続いて、第二層以降に対しても同様の工程を繰り返す。各層ごとに乾燥及び焼成を行う必要があるため、非常に手間と時間を要し、製造コストが高くなる問題がある。更に、各層の厚みを薄くすることには限界があるため、通常は各層ごとに約2μm以上の厚みと急峻な空隙率の変化(界面)を有する。したがって、従来方法では、多層構造であり、空隙率を連続的に変化させたグラデーション構造を得ることは現実的ではない。
一方、本発明の第一実施形態における「第三の吹き付け例」によれば、各層ごとに乾燥及び焼成を行うことなく混合膜(多孔質膜)が得られるため、製造効率を向上させて、製造コストを大幅に低減することができる。更に、混合膜における各層の厚みは、吹き付け時間(吹き付け量)を調整することにより所望の厚みにできる(例えば0.1μm程度)ため、積層構造と表現するよりはグラデーション構造と表現されるべき膜構造、すなわち、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的に可溶性粒子の体積比が増加した混合膜(膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的に空隙率が増加した多孔質膜)を低コストで製造することができる。
ここでは、前記混合比を増加させる場合(図7,2)を説明したが、前記混合比を減少させる場合も同様に行うことができる。前記混合比を減少させる場合(図8参照)は、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的に可溶性粒子の体積比が減少した(不溶性粒子の体積比が増加した)混合膜が得られる(図4参照)。
・第四の吹き付け例
図14に示すように、成膜時間(2)において前記混合比を連続的に増加させ、次いで成膜時間(4)において前記混合比を連続的に減少させてもよい。図14の混合比で構成されたエアロゾルをノズルから基材に吹き付ける際、ノズルと基材との相対位置をほぼ固定した状態で吹き付けを連続的に行うことにより、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的に可溶性粒子の体積比が増加し(不溶性粒子の体積比が減少し)、次いで連続的に可溶性粒子の体積比が減少した(不溶性粒子の体積比が増加した)混合膜が得られる(図15参照)。成膜する混合膜の厚みは特に制限されず、例えば膜厚が1〜100μmの混合膜を形成できる。また、前記吹き付けの際、ノズルを揺動することにより、吹き付け面積及び成膜面積を増加させてもよい。
(溶解、除去)
前記混合膜の可溶部を溶解して除去することより、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に連続的に空隙率が増加又は減少した多孔質膜を基材上に形成できる。
前記可溶性粒子として、水、酸又は塩基(アルカリ)に対する溶解性が前記不溶性粒子よりも高い粒子を用いた場合、水、酸又はアルカリ水溶液に混合膜を浸漬し、可溶性粒子を溶解して、混合膜内から可溶性粒子を除去することにより、可溶性粒子が除去された領域が空隙になった多孔質膜が得られる。この際、可溶部の溶解及び除去を促進するために、混合膜を浸漬する溶液の温度を高めたり(例えば50℃以上)、当該溶液に超音波振動を加えてもよい。
同様に、前記可溶性粒子として水溶性ポリマー等の前記水溶性の粒子を用いた場合は、当該混合膜を水又は温水に浸漬させればよい。前記可溶性粒子として金属カルコゲニド化合物からなる粒子、金属水酸化物からなる粒子などを用いた場合も同様であり、当該混合膜を構成する可溶性粒子が溶解する溶液に当該混合膜を浸漬すれば、当該可溶性粒子が除去された多孔質膜を得られる。
可溶部を溶解除去した後、更に多孔質膜を水洗して残渣を取り除き、乾燥することにより不溶部だけからなる多孔質膜を得られる。具体的には、不溶性粒子として例えば酸化チタンを用いた場合、酸化チタンだけで構成された多孔質膜を得ることができる。
〔第二実施形態〕
第二実施形態において、前記粒子Aとして不揮発性粒子を使用し、前記粒子Bとして揮発性粒子を使用する。したがって、第二実施形態の多孔質膜の製造方法は、不揮発性粒子と揮発性粒子が混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける、(前記揮発性粒子)/(前記不揮発性粒子)の混合比を、連続的に又は段階的に、増加又は減少させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記不揮発性粒子からなる不気化部(非除去部)と前記揮発性粒子からなる気化部(除去部)とによって構成される混合膜を形成し、前記気化部を気化又は焼失させて除去することにより多孔質膜を形成する方法である。
(基材)
本実施形態の基材としては、上述の第一実施形態と同様の基材が適用可能である。
基材に不揮発性粒子と揮発性粒子が混合されたエアロゾルを吹き付ける方法としては、上述の第一実施形態と同様の方法が適用可能である。
(不揮発性粒子)
前記不揮発性粒子としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫化アンチモン等が挙げられる。
ここで「不揮発性」とは、前記混合膜の気化部を気化又は焼失させて、除去する処理に対して全く除去されないこと、又は、前記処理に対する気化速度(焼失速度)が前記揮発性粒子の当該気化速度に比べて充分に小さいことを意味する。この「不揮発性」の条件を満たす、吹き付け可能な粒子であれば、前記不揮発性粒子として如何なる粒子でも特に制限なく使用できる。
前記不揮発性粒子の気化速度/前記揮発性粒子の気化速度は、混合膜から揮発性粒子を選択的に又は優先的に気化して除去することを容易に行うために、1/10以下であることが好ましい。また、前記吹き付け法を適用する場合、搬送ガスによるエアロゾルの吹き付け速度を充分に高めるために、前記不揮発性粒子の比重が2以上であることが好ましい。
前記不揮発性粒子の形状は、特に限定されず、球状またはその類似形状、正八面体状またはその類似形状、星状またはその類似形状、針状、板状等が挙げられる。
前記不揮発性粒子の粒子径(一次粒子径)は、特に限定されず、製造する多孔質膜の強度、空隙率(嵩密度)を考慮して適宜調整すればよい。例えば、5nm〜1μmの粒子径を有する酸化チタンを前記不揮発性粒子として使用できる。
前記不揮発性粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(揮発性粒子)
前記揮発性粒子の「揮発性」とは、前記混合膜の気化部を気化又は焼失させて、除去する処理に対して容易に除去されること、又は、前記処理に対する気化速度(焼失速度)が前記不揮発性粒子の当該気化速度に比べて充分に大きいことを意味する。この「揮発性」の条件を満たす粒子であれば、前記揮発性粒子として如何なる粒子でも特に制限なく使用できる。
前記不揮発性粒子の気化速度/前記揮発性粒子の気化速度は、混合膜から揮発性粒子を選択的に又は優先的に除去することを容易に行うために、1/10以下であることが好ましい。また、前記吹き付け法を適用する場合、搬送ガスによるエアロゾルの吹き付け速度を充分に高めるために、前記揮発性粒子の比重が2以上であることが好ましい。
前記揮発性粒子としては、例えば、昇華性の粒子、炭素又は炭化水素からなる粒子などが挙げられる。
前記昇華性の粒子としては、例えば、ヨウ素、フタル酸、サリチル酸、ナフタレンなどが挙げられる。
前記揮発性粒子として、昇華性の粒子を用いた場合、例えば、昇華性の粒子の物性に応じた減圧処理及び加温処理を行うことにより、混合膜を構成する気化部を容易に除去して、不揮発性粒子からなる不気化部だけで構成された多孔質膜を形成できる。
前記炭素又は炭化水素からなる粒子としては、例えば、グラファイト、アモルファスカーボン、高分子樹脂などが挙げられる。
前記揮発性粒子として、炭素又は炭化水素からなる粒子を用いた場合、例えば、混合膜に対して低温酸素プラズマ処理を行うことにより、当該粒子を、一酸化炭素、二酸化炭素などのガス、或いは、エタン、エチレン、メタンなどの低級炭化水素に分解して除去できる。この結果、不揮発性粒子からなる不気化部だけで構成された多孔質膜を形成できる。
前記揮発性粒子の粒子径(一次粒子径)は、特に限定されず、製造する多孔質膜の強度、空隙率(嵩密度)を考慮して適宜調整すればよい。例えば、5nm〜1μmの粒子径を有する炭素粒子を前記揮発性粒子として使用できる。
前記揮発性粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(各粒子の相対的な大きさ)
前記不揮発性粒子の粒子径と前記揮発性粒子の粒子径の比は特に制限されないが、エアロゾル中に各粒子を均一に分散させるために、各粒子の粒子径が同程度であることが好ましい。具体的には、(不揮発性粒子の粒子径)/(揮発性粒子の粒子径)=10/1〜1/50であることが好ましい。
以上で説明した不揮発性粒子(粒子A)及び揮発性粒子(粒子B)は、それぞれ第一実施形態の不溶性粒子及び可溶性粒子に対応する。第一実施形態で説明した混合比及び混合膜については、本実施形態においても同様に適用できるため、これらの説明は省略する。
本実施形態の製法によれば、第一実施形態と同様の吹き付け方法によって、膜の厚み方向であって基材から離れる方向に、連続的又は段階的に、空隙の体積比(空隙率)が増加又は減少した(不揮発性粒子の体積比が減少又は増加した)多孔質膜(図2,4参照);又は、成膜開始位置を基点として膜の平面方向(膜の拡がり方向)に、連続的又は段階的に、空隙の体積比(空隙率)が増加又は減少した(不揮発性粒子の体積比が減少又は増加した)多孔質膜(図5,6参照)が得られる。
《多孔質膜》
本発明の第三態様の多孔質膜は、第一態様の製法により製造された多孔質膜である。当該多孔質膜は、色素増感太陽電池や二次電池の分野に利用することができる。例えば、前記基材として、表面にITO、FTO等の導電層を備えた透明基材を用い、その導電層の上に酸化チタン等の酸化物半導体層からなる多孔質膜を形成することにより、色素増感太陽電池の光電極として使用可能な部材が得られる。本発明の第三態様の多孔質膜の空隙率分布は連続的(漸次的)又は段階的に変化しているため、当該多孔質膜に入射する光の透過、吸収、散乱を効率的に制御することが可能である。前記透過、吸収、散乱の効率を制御することにより、光電極の光電変換効率を向上させることも可能である。
《混合膜》
本発明の第四態様の混合膜は、第一態様の製法により製造された混合膜である。当該混合膜は、第二態様の多孔質膜の製造方法に利用可能である。
《成膜装置》
本発明の第五態様の成膜装置を図9を参照して説明するが、本発明の成膜装置はこれに限定されない。成膜装置60は、複数の粒子供給器68,69と、前記複数の粒子供給器から供給される各粒子を混合してエアロゾルを発生するエアロゾル発生器65と、前記複数の粒子供給器から前記エアロゾル発生器に供給する各粒子の供給量をそれぞれ独立して制御する制御器66,67と、前記エアロゾルを吹き付けるノズル52と、を備えている。成膜装置60は、AD法による成膜に適用可能である。
第一粒子供給器68からエアロゾル発生器65に供給される第一粒子の供給量は、第一制御器66により任意に調整可能である。同様に、第二粒子供給器69からエアロゾル発生器65に供給される第二粒子の供給量は、第二制御器67により任意に調整可能である。この構成の場合、第一粒子として前述の不溶性粒子を用い、第二粒子として前述の可溶性粒子を用いれば、不溶性粒子と可溶性粒子が任意の混合比で含まれたエアロゾルを発生させることができる。
成膜装置60に備えられた粒子供給器は2つであるが、更に多数の粒子供給器を備えていてもよい。また、成膜装置60の構成においては、各粒子供給器に個別に制御器が接続されているが、単一の制御器が複数の粒子供給器を制御する構成であってもよい。また、成膜装置60の構成においては、各粒子供給器から供給される各粒子がエアロゾル発生器内で混合されているが、エアロゾル発生器と独立した混合器をエアロゾル発生器の前段に設けた構成であってもよい。
成膜装置60は、ガスボンベ55と、搬送管56と、マスフロー制御器57と、基台63(ステージ63)と、成膜室51と、を更に備えている。
エアロゾル54を加速して基材53に吹き付けるための搬送ガスが充填されたガスボンベ55には、搬送管56の一端が接続されている。ガスボンベ55から供給される搬送ガスは搬送管56に供給される。搬送管56の途中には、ガスボンベ55側(上流側)から順に、マスフロー制御器57と、エアロゾル発生器65と、が設けられている。搬送管56の他端にはノズル52が備えられている。エアロゾル54を構成する各粒子の大きさや分散度を調整するために、エアロゾル発生器65の下流側に、図示しない解砕器及び分級器が設けられていてもよい。
マスフロー制御器57は、ガスボンベ55からエアロゾル発生器65に供給される搬送ガスの流量を調整する機器であり、一般に使用されている公知のマスフロー制御器を適用できる。エアロゾル発生器65で生成されたエアロゾルは、搬送管56の搬送ガス中に分散されて、ノズル52へ搬送され、更に基材53へ吹き付けられる。
ノズル52は、図示略の開口部(ノズル口)が基台63上の基材53に対向するように配置されている。ノズル52の開口部の面積や形状は、搬送ガスの圧力、吹き付け面積、基材と開口部との距離等を考慮して適宜決めればよい。成膜装置60はノズル52を1つだけ備える構成であるが、複数のノズルを備えていてもよい。
基台63は、ノズル52に対向して設置されている。基台63の構成は基材53を支持可能であれば如何なる構成であってもよい。図示したように平台の平面に基材を載置し、当該基材を水平方向に移動可能な基台であってもよいし、ロールトゥロール方式に用いられるような円柱状のロールの側面を基台としてもよい。また、ロールトゥロール方式で基材を搬送する場合、ロール間に張られた基材の張力を利用し、当該基材が撓まないように保持して、エアロゾルを吹き付けてもよい。この場合、基台は備えられていなくても構わない。ノズルの前を基材が往復する又は通過する回数を調整することにより、基材上に形成する膜の厚みを制御できる。
ノズル52から噴射されたエアロゾル54は、基材53の表面又は成膜中の膜に衝突し、前記粒子からなる膜が形成される。例えばAD法による成膜の場合、亜音速〜超音速の噴射速度(例えば、10〜1000m/sの噴射速度)でエアロゾルを基材に吹き付けることにより、粒子が基材に食い込み、更に粒子同士が接合された緻密な膜(空隙率が比較的小さい膜)を成膜できる。
前記エアロゾルの吹き付けによる成膜は、原料粒子の融点より充分に低い常温環境(例えば20〜200℃)で行うことが可能であるため、基材として耐熱性が低い樹脂フィルムを適用できる。また、前記成膜は、例えば5〜1000Paに減圧された成膜室内で行ってもよい。成膜装置60の構成においては、成膜室51を減圧するための真空ポンプ62が備えられている。成膜室内の空気を排出し、成膜室内を搬送ガスと同じガス雰囲気下にしてもよい。減圧された成膜室内で前記吹き付けを行うことにより、成膜室内に不要な対流を発生させることを防止し、ノズルの開口部から噴射されるエアロゾルを基材の所望の位置(領域)に、より正確に吹き付けることができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1;垂直方向のグラデーション構造;多孔質膜]
図9に示す成膜装置60を用いて、エアロデポジション法(AD法)により、ガラス基板53上に多孔質膜を次のように成膜した。
不溶性粒子(粒子A)である直径約30nmの酸化チタン粒子と、可溶性粒子(粒子B)である直径約20nmの酸化亜鉛粒子をそれぞれ別の粒子供給器68,69に入れた。エアロゾル発生器65に供給する各粒子の量を調整する制御器66,67により、各粒子の混合比を調整し、粒子Aと粒子Bを混合したエアロゾルを発生させた。成膜室51を20Paに減圧し、搬送ガスとして窒素ガスを用いた。室温(約25℃)において、マスフロー制御器57を介して供給される搬送ガスにより、粒子A及び粒子Bが混合されたエアロゾルをノズル52からガラス基板に吹き付けて混合膜を成膜した。
本実施例において、図1に示すように、エアロゾル発生器65における粒子Aと粒子Bの混合比を、成膜開始時(図1の(1))には粒子A100%とし、その後、連続的に(徐々に)粒子Bの比率を上昇させ(図1の(2))、成膜終了時(図1の(3))には粒子A40%:粒子B60%の混合比とした。
本実施例において、ステージ63は移動せず、ガラス基板53とノズル52の相対的な位置を固定して成膜した。これにより、粒子Aと粒子Bの混合比が時間と共に変化するにつれ、ガラス基板に対して垂直方向に粒子Bの存在比が連続的に増加する混合膜を得た。
得られた混合膜を1%塩化水素水溶液(希塩酸)に浸漬して、混合膜を構成する酸化亜鉛部分を溶解して除去(エッチング)することにより、酸化チタンからなる多孔質膜を得た。この除去処理において、酸化チタンからなる不溶部はほとんど溶解せず、酸化亜鉛からなる可溶部は短時間で溶解した。よって、前記溶解速度の比は1/10以下であった。エッチング後に得られた多孔質膜において、厚み方向に連続的に空隙率が高まるグラデーション構造(空隙の濃度勾配が漸次増加する構造)を形成できた(図2参照)。
得られた多孔質膜の断面の、空隙率の異なる3箇所(図2の(1)(2)(3))を、SEMによって観察した。各箇所のSEM像を図10,11,12に示す。これらのうち、図10のSEM像が最もガラス基板に近い箇所を示し、図11、図12のSEM像が、この順に基板から離れた箇所を示す。図10において、酸化チタンの密度は高く、空隙は少ない。図11,12では、この順に空隙が多くなっている。なお、図1,2の(1)(2)(3)と、図10,11,12の(1)(2)(3)とはそれぞれ対応している。
[実施例2;水平方向のグラデーション構造;多孔質膜]
エアロゾルを吹き付ける際にステージ63を水平に一方向に移動して、ガラス基板53とノズル52との相対位置を連続的に水平移動させた以外は、実施例1と同様に行った。図5の矢印は基板に対するノズルの移動方向を示す。成膜開始地点(図5の(1))から終了地点(図5の(3))に向けて、ガラス基板に対して平行に粒子Bの存在比が連続的に増加する混合膜を得た。また、エッチング後に得られた酸化チタンからなる多孔質膜において、ガラス基板の平面と平行な方向に連続的に空隙率が高まるグラデーション(空隙の濃度勾配が漸次増加する構造)を形成できた(図5参照)。
得られた多孔質膜の厚み方向の断面(基板を含む従断面)の、成膜開始地点から距離の異なる3箇所(図5の(1)(2)(3))をSEMによって観察した。各断面のSEM像は、図10,11,12と同様であった。なお、図1,5の(1)(2)(3)と、図10,11,12の(1)(2)(3)とはそれぞれ対応している。
[実施例3;垂直方向のグラデーション構造;混合膜]
図9に示す成膜装置60を用いて、エアロデポジション法(AD法)により、ガラス基板53上に混合膜を次のように成膜した。
粒子αである直径約20nmの酸化チタン粒子と、粒子βである直径約40nmの酸化マグネシウム粒子をそれぞれ別の粒子供給器68,69に入れた。エアロゾル発生器65に供給する各粒子の量を調整する制御器66,67により、各粒子の混合比を調整し、粒子αと粒子βを混合したエアロゾルを発生させた。成膜室51を20Paに減圧し、搬送ガスとして窒素ガスを用いた。室温(約25℃)において、マスフロー制御器57を介して供給される搬送ガスにより、粒子α及び粒子βが混合されたエアロゾルをノズル52からガラス基板に吹き付けて混合膜を成膜した。
本実施例において、図1に示すように、エアロゾル発生器65における粒子αと粒子βの混合比を、成膜開始時(図1の(1))には粒子α100%とし、その後、連続的に(徐々に)粒子βの比率を上昇させ(図1の(2))、成膜終了時(図1の(3))には粒子α40%:粒子β60%の混合比とした。
本実施例において、ステージ63は移動せず、ガラス基板53とノズル52の相対的な位置を固定して成膜した。これにより、粒子αと粒子βの混合比が時間と共に変化するにつれ、ガラス基板に対して垂直方向に粒子βの体積比が連続的に増加する混合膜を得た。
得られた混合膜において、厚み方向に連続的に粒子βの占有率(体積比)が高まるグラデーション構造(粒子βの濃度勾配が漸次増加する構造)を形成できた(図2参照;本実施例では、黒色部が粒子αの存在を示し、白色部が粒子βの存在を示す)。
得られた混合膜の断面の、空隙率の異なる2箇所をSEMによって観察した。各箇所のSEM像を図16,17に示す。図16は、粒子α/粒子β=80/20の断面を示す。図17は、粒子α/粒子β=40/60の断面を示す。図16,17において、灰色部は粒子αからなる部位を示し、白色部は粒子βからなる部位を示し、黒い小さな点は空隙を示す。
[実施例4;水平方向のグラデーション構造;混合膜]
図5に示すように、エアロゾルを吹き付ける際にステージ63を水平に一方向に移動して、ガラス基板53とノズル52との相対位置を連続的に水平移動させた以外は、実施例3と同様に行った。図5の矢印は基板に対するノズルの移動方向を示す。成膜開始地点(図5の(1))から終了地点(図5の(3))に向けて、ガラス基板に対して平行に粒子βの体積比が連続的に増加する混合膜を得た。
得られた混合膜において、ガラス基板の平面と平行な方向に連続的に粒子βの占有率(体積比)が高まるグラデーション(粒子βの濃度勾配が漸次増加する構造)を形成できた。なお、本実施例では、図5の黒色部が粒子αの存在を示し、白色部が粒子βの存在を示す。
得られた混合膜の厚み方向の断面(基板を含む従断面)の、成膜開始地点から距離の異なる2箇所をSEMによって観察した。各断面のSEM像は、図16,17と同様であった。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法、多孔質膜及び成膜装置は、色素増感太陽電池や二次電池の分野に広く適用可能である。
10,10’,20,20’,30…多孔質膜、51…成膜室、52…ノズル、53…基材、54…エアロゾル、55…ガスボンベ、56…搬送管、57…マスフロー制御器、60…成膜装置、62…真空ポンプ、63…基台(ステージ)、65…エアロゾル発生器、66,67…制御器、68,69…粒子供給器。

Claims (9)

  1. 互いに異なる種類の粒子αと粒子βとが混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける前記粒子β/前記粒子αの混合比を、連続的に又は段階的に変化させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記粒子αからなる第一部分と前記粒子βからなる第二部分とによって構成される混合膜を形成する混合膜の製造方法であって、
    (前記粒子αの粒子径)/(前記粒子βの粒子径)=10/1〜1/50であり、
    成膜を継続する間に連続的又は段階的に、前記エアロゾル中の前記粒子αの体積を減少させ、更に前記粒子βの体積を増加させる、或いは、前記エアロゾル中の前記粒子αの体積を増加させ、更に前記粒子βの体積を減少させることによって、前記エアロゾル中の前記粒子αと前記粒子βの合計体積を一定に保つことを特徴とする混合膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の混合膜の製造方法を用いた多孔質膜の製造方法であって、
    下記除去処理により除かれ難い粒子Aと下記除去処理により除かれ易い粒子Bとが混合されたエアロゾルを発生させ、前記エアロゾルにおける前記粒子B/前記粒子Aの混合比を、連続的に又は段階的に変化させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けて、前記粒子Aからなる非除去部と前記粒子Bからなる除去部とによって構成される混合膜を形成し、前記除去部を溶解、分解、揮発、昇華又は焼失させて除去する除去処理を行うことによって多孔質膜を形成することを特徴とする多孔質膜の製造方法。
  3. 前記混合比を連続的に又は段階的に増加させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の多孔質膜の製造方法。
  4. 前記混合比を連続的に又は段階的に減少させながら、前記エアロゾルをノズルから基材に吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の多孔質膜の製造方法。
  5. ロールトゥロール方式で前記基材を移動し、前記基材の所定領域に対して、第一の混合比の前記エアロゾルを吹き付けた後、同じ所定領域に対して、前記第一の混合比よりも前記混合比が高い第二の混合比の前記エアロゾルを吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の多孔質膜の製造方法。
  6. ロールトゥロール方式で前記基材を移動し、前記基材の所定領域に対して、第一の混合比の前記エアロゾルを吹き付けた後、同じ所定領域に対して、前記第一の混合比よりも前記混合比が低い第二の混合比の前記エアロゾルを吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の多孔質膜の製造方法。
  7. 前記ノズルを前記基材の平面方向に移動させながら前記吹き付けを連続的に行うことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
  8. 前記除去処理が、水、酸又は塩基による溶解、光又は熱による分解、減圧による揮発又は昇華、或いは燃焼による焼失であることを特徴とする請求項2〜7の何れか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
  9. 前記粒子Aが、酸化チタンからなる粒子であることを特徴とする請求項2〜8の何れか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
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