JP5975002B2 - カラー磁性膜構造 - Google Patents

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Description

本発明は、既存の壁や柱、戸、ボード、及びパーテーションなどの下地面に塗布して、永久磁石が磁気吸着可能な面を形成する塗料を塗装した磁性面の磁性膜構造であって、詳しくは、鉄粉を主成分とする磁性塗料層と、該磁性塗料層の上に、錆ない磁性粉表面をカラー顔料で処理した磁性粉を主成分とする磁性カラー塗料層を形成した、2層からなる磁性膜構造に関するものである。
図2は従来の技術を示すもので、マグネットシートが磁気吸着(以下磁着という)する壁を形成する為の塗料は、鉄粉やマグネタイト、ソフトフェライトなどの軟磁性粉をそのままで塗料樹脂バインダーに混ぜ込んで作成し、その塗布・乾燥させた磁性塗料層4はいずれも該軟磁性粉の黒色が現れるので、壁面やボードの表面としてはそのまま採用される事は少なく、その上に非磁性の表装塗装や表装シート5が設けられている。
また、鉄粉は磁着力が強く安価なものの、錆易い為に普及していなかった。
実用新案登録番号第3001461号 特開2004−21231号 特開2011−79996号
特許文献1は、シート状マグネットの表面に非磁性の装飾層を一体化してマグネットの黒い色を遮りカラー化しており、特許文献2は、鉄粉の錆対策を施すと共に表装シートを貼設している。
しかしいずれも非磁性の表装シートをワザワザ配設する必要があり、更に該非磁性層が厚いと、永久磁石が磁着する力(以下磁着力という)が大幅に低下してしまう。
特許文献3は、鉄粉の防錆加工を必須とする一方で、その鉄粉層を形成する塗料として透明塗料を採用すれば塗布する地の色を変えず、有色塗料を採用すれば所望の色になるとしている。
しかし現実的には鉄粉の色は黒く、所望の色を得るには鉄粉を殆ど含まなくする必用があり、永久磁石の磁着力を著しく低下させてしまう。また、鉄の防錆処理として燐酸塩処理が知られているが、粉体に対しては効果が限定的で、環境対策を含めて高価になってしまう。
本発明は以上の状況に鑑みてなされたもので、鉄粉の錆びを防止すると共に、磁着力の低下を最低限に抑えつつ表面をカラー化することを課題とする。
課題を解決する為に本発明は、下地に対して、塗料樹脂バインダー内に平均粒子径が20ミクロン以上200ミクロン以下の鉄粉を分散させた磁性塗料を、塗布し硬化させてなる磁性塗料層を形成し、さらにその磁性塗料層の上に、表面をカラー顔料で処理した平均粒子径が40ミクロン以上200ミクロン以下の磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種又は複数種の混合物からなるカラー化磁性粉を塗料樹脂バインダーに分散させた磁性カラー塗料を、塗布し硬化させてなる磁性カラー塗料層を形成した2層構造とした。
カラー化磁性粉は、磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種又は複数種の混合物100重量部に対して、カラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重両部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級して得られた磁性粉であるか、若しくは、磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種の100重量部に対して、カラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重両部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級して得られた表面をカラー化した磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉またはハードフェライト粉を2種以上混合して得られた磁性粉を採用する。
カラー化磁性粉表面を同等のカラー顔料で再度処理した、重カラー化磁性粉を採用すると、色が更に濃くなって好適である。
なお、カラー顔料として、二酸化チタン、合成ウルトラマリン、弁柄、酸化クロム焼成顔料などの無機顔料を採用することが出来る。
本発明によれば、表面がカラー化された磁性層が直接形成されるので、表装のための非磁性カラー塗装や非磁性表装シートの貼着が不要、若しくは必要最小限の薄さでもってカラー化の目的が達成される。このため、カラー化の工程が簡単で、且つ磁着力が高い。
さらに、磁性カラー塗料層は錆びることが無い。
本発明の実施態様を示すカラー磁性膜構造の断面図を示す。 従来の磁性膜構造の断面図を示す。 本発明で採用した砂鉄粉の電子顕微鏡写真を示す。 酸化チタンで表面処理された砂鉄粉の電子顕微鏡写真を示す。 減圧下で磁性粉等に塗料樹脂バインダーを初めて接触させる方法を示す図を示す。 酸化チタンで表面処理された砂鉄粉の他の電子顕微鏡写真を示す。 酸化クロムで表面処理された砂鉄粉の電子顕微鏡写真を示す。 本発明で採用した鉄粉の電子顕微鏡写真を示す。 本発明の防錆型磁性塗料層の破断面の電子顕微鏡写真を示す。
本発明を実施するためには、先ずカラー化磁性粉を作成する。カラー化磁性粉は、平均粒子径が40ミクロン以上200ミクロン以下の磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種又は複数種の混合物であって、その表面がカラー顔料で処理されている。
カラー化磁性粉は、磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種又は複数種の混合物100重量部に対して、カラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重両部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級して得るか、若しくは、磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種の100重量部に対して、カラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重両部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級して得られた表面をカラー化した磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉またはハードフェライト粉それぞれの2種以上を混合して得られる。
或いはカラー化磁性粉の表面を同様のカラー顔料で再度処理することによって得られる重カラー化磁性粉は、磁性粉表面の殆どがカラー顔料で被覆されるので色が濃くなり、好適である。
ここで採用されるカラー顔料は無機であって、二酸化チタンが白色、合成ウルトラマリンが青色、弁柄が赤色、酸化クロム焼成顔料が緑色として選ばれるが、特に酸化チタンは白色を呈するので最も好ましい。白色は壁や面の色として広く採用されている。
酸化チタンは、アナターゼ型で市販のものを使用出来る。
図1は本発明の実施態様を示すカラー磁性膜構造の断面図であり、塗料樹脂バインダー内に平均粒子径が20ミクロン以上200ミクロン以下の鉄粉を分散させた磁性塗料を、下地1に対して塗布し硬化させてなる磁性塗料層2を形成し、さらに該磁性塗料層の上に、カラー化磁性粉または重カラー化磁性粉を塗料樹脂バインダーに分散させた磁性カラー塗料を、塗布し硬化させてなる磁性カラー塗料層3を形成して2層構造としている。
本発明の目的の1つは、強い磁着力を確保する事である。
磁性カラー塗料層は鉄粉を含まず、砂鉄やフェライト磁性粉が磁性成分なので、鉄粉に比較して磁着力がやや劣る。しかし強い磁性を有している。
磁性カラー塗料層に永久磁石が近づくと磁気回路の一部を形成して、磁性塗料層の鉄粉の磁気特性を磁性カラー塗料層の表面に効率良く導く役割を果たすので、鉄粉の持つ強い磁着力を殆ど低下させることは無い。すなわち、磁性カラー塗料層が砂鉄等の磁性粉を含まない場合や、単に非磁性のカラー塗層、或いは非磁性のカラー表装シートに比して遥かに強い磁着力を示すことが出来る。
他方で、磁性カラー塗料層3は化学的に安定で錆びないのみならず、磁性塗料層2を被覆する形で、水分や酸素が磁性塗料層2へ浸透することを防ぐバリアー層としての役割を果たしている。このため、磁性塗料層2に含まれている鉄粉の錆びを防いでいる。
一般に、磁性を有する塗料の塗装・硬化面の磁性特性は、その硬化塗料中の固形成分中の磁性材料の体積含率が大きい程好適である。したがって本発明に限らず塗料樹脂バインダーに使用する組成は、他の顔料や着色剤等は使用を必要最小限に控え、塗膜形成と塗膜としての必要特性を確保しつつ、乾燥後の磁性材料の含有率を高める必要がある。
尚、本発明において平均粒径は、特に指定しない限り「累積50%径」を言う。
平均粒子径が173ミクロンの砂鉄粉100重量部に対して、アナターゼ型酸化チタン微粉10重量部を混合し撹拌しながら、アクリル酸エステル共重合体29%含有水性エマルジョン10重両部を滴下し、10分間撹拌後、150℃で2時間静置乾燥する。
次ぎに、80メッシュ(目開き177ミクロン)の篩いでもって、粉砕・解砕及び分級を行い、カラー化磁性粉を得た。
該カラー化地性粉を肉眼で観察すると、大多数の白い粒子と灰色粒子との混合状態に見えた。
また、該カラー化磁性粉の厚さ約1.5mmの層を作り、その上に透明ガラス(厚さ1mm)を載せ、その上に、日本電色工業株式会社製簡易型分光色差計・NF−333の分光窓を接して測定した3つの刺激値から、CIE色差式で3つの色彩値:L*、a*、及びb*を求め、スタンダードを測定したそれぞれの値との差を、色差;ΔL*、Δa*、及びΔb*として求めた。同様にして総合色差;ΔE*(ab)を求めた。
尚、測定は3箇所を測定した平均値をそのサンプルの測定値とした。
その結果、カラー化磁性粉のΔL*は40.36、Δa*は−1.11、Δb*は−0.38、及びΔE*(ab)は40.38だった。ここにスタンダードは、本実施例で採用した砂鉄粉である。
本実施例で採用した砂鉄粉及びカラー化磁性粉のそれぞれ分級前のSEM写真を図3及び図4に示す。
次ぎに、還元鉄粉DR(DOWA IP CREATION社製、平均粒子径=98ミクロン)100グラムを、塗料樹脂バインダー(ガーデニングカラー・クリアー、アトムサポート株式会社が販売)と沈降防止剤との混合物45グラムに混ぜ込み、磁性塗料を作成した。還元鉄粉DRのSEM写真を図8に示す。
同様に、該カラー化磁性粉100グラムを該塗料樹脂バインダーと沈降防止剤との混合物75グラムに練り込み、磁性カラー塗料を作成した。
石膏ボードの下地に該磁性塗料を塗布・乾燥させて、厚さ0.6mmの磁性塗料層を形成し、更にその上に、該磁性カラー塗料を塗布・乾燥させて厚さ0.2mmの磁性カラー塗料層を積層して、カラー磁性膜を作成した。
カラー磁性膜の磁着力を以下の方法で測定した。
30mm*30mmの正方形のマグネットシートサンプル(1.0mm厚、多極着磁ピッチ2.5mm、表面磁束密度が35〜40ミリテスラー)を準備し、略5cm*5cmの大きさの磁性膜に磁気吸着させ、それぞれを平面に対して垂直方向に引き離す為に必要な力を測定した。
次ぎに該カラー磁性膜の防錆性を以下の方法で観察した。
カラー磁性面を水平に保ち、その表面に水道水を十分に吸収させたキッチンペーパー(50mm*50mm)を載せて、乾燥しないように水分を補給しながら毎日カラー磁性面表面を観察して、赤錆の発生が肉眼で確認出来た最初の日を記録した。
カラー磁性膜表面の肉眼観察結果、及び上述した方法と同様にして得た色差測定結果をそれぞれ表1、表2に示すと共に、磁着力の測定結果、及び錆の発生日数を表3に示す。
尚、色差測定のスタンダードは、砂鉄粉、又はカラー化磁性粉とした。








カラー磁性膜表面は白く、油性マジックペンで鮮明に筆記することが出来る。更に磁性カラー塗料層を設けない比較例1に較べ、カラー化することで磁着力は殆ど低下せず、錆の発生は実質的に無視出来た。
砂鉄粉100重量部に替えて、実施例1と同じ方法で得られたカラー化磁性粉100グラムを採用すること以外は、実施例1と同様の方法で重カラー化磁性粉を得た。
重カラー化磁性粉を肉眼で観察すると、全体に一様な白い粒子の集まりだった。
次いで、実施例1と同様にして重カラー化磁性粉の色差は、ΔL*は52.06、Δa*は−1.73、Δb*は1.29、及びΔE*(ab)は52.11だった。
重カラー化磁性粉の分級前のSEM写真を図6に示す。
次いで、実施例1と同様の方法で、カラー磁性膜を作成した。
実施例1と同様の方法でカラー磁性膜表面の肉眼観察と色差測定を実施した。ここに色差測定のスタンダードは、砂鉄粉、又は重カラー化磁性粉とした。
更に磁着力と錆の発生日数を確認し、それらの結果を表1、表2、及び表3に示す。
カラー磁性膜表面の白さが大幅に増し、色差の測定結果にも現れている。塗装表面に油性マジックインクで筆記すると、赤色も黒色も鮮明だった。磁着力と防錆性は実質上実施例1と同等だった。
酸化チタンに替えて酸化クロム焼成顔料を採用すること以外は実施例1と同様の方法でもって、表面が緑色のカラー化磁性粉を得た。
該カラー化磁性粉を肉眼で観察すると、全体に一様な深緑色だった。
次いで、実施例1と同様にして該カラー化磁性粉の色差は、ΔL*は0.92、Δa*は−5.81、Δb*は4.40、及びΔE*(ab)は7.35だった。
該カラー化磁性粉の分級前のSEM写真を図7に示す。
次いで、実施例1と同様の方法で、カラー磁性膜を作成した。
実施例1と同様の方法でカラー磁性膜表面の肉眼観察と色差測定を実施した。ここに色差測定のスタンダードは、砂鉄粉、又は該カラー化磁性粉とした。
更に磁着力と錆の発生日数を確認し、それらの結果を表1、表2、及び表3に示す。
黒っぽい深緑色のカラー磁性膜が得られた。磁着力と防錆性は良好だった。
本発明は上述した技術に加えて以下の方法でもって特性をより高める事が出来る。
すなわち、本発明の目的の1つは磁性塗料層の鉄粉の錆びを防ぐことであるが、その為には、鉄粉に較べて微小な亜鉛粉を該磁性塗料層に添加して、図1の防錆型磁性塗料層6とすることが有効である。
すなわち、鉄粉100重量部に対して、粒子径が鉄粉の1/10以下の亜鉛粉を5〜30重量部添加するので、該亜鉛粉を鉄粉とともに塗料樹脂バインダーと混合すると、圧倒的多数の微小亜鉛粉が該鉄粉の周辺近傍に分散し存在する。
更に、該亜鉛粉末の比表面積が大きいので、防錆型磁性塗料層に浸透してきた水分と接する機会と面積が大きく、電気化学的防食作用(犠牲防食)が進行し鉄粉のさびを防止する。該電気化学的防食作用は鉄と亜鉛とが近ければ近いほど好適なので、鉄粉粒子の周辺近傍に亜鉛粉末が存在する事が必要であり十分である。
亜鉛粉は2〜8μ程度の微粉がジンクリッチペイント用途などに市販されていて入手することが出来る。
亜鉛粉の添加による防錆効果は、バリアー層としての磁性カラー塗料層に万一ピンホールなどが発生して水分や酸素が容易に磁性塗料層へ進入した場合において、特に有効である。
防錆型磁性塗料層の破断面のSEM写真を図9に示す。
更に本発明は、次ぎの技術も有効である。
本発明で使用する磁性塗料及び磁性カラー塗料は、使用している鉄粉やカラー化磁性粉と塗料樹脂バインダーとを大気圧下で単純に混合する他に、以下の方法で得る事が出来る。
即ち、予め脱気・減圧された容器内で、乾燥した鉄粉、若しくはカラー化磁性粉と塗料樹脂バインダーとを初めて接触・混合し、その後圧力を大気圧に戻すという減圧混合工程を経た塗料を採用する。
具体的には、図5に示す透明な真空容器7の中に乾燥した鉄粉またはカラー化磁性粉8を収納した容器9を設置し、その上方に漏斗10を配置した。漏斗には所定量の塗料樹脂バインダー11が満たされてバルブ12で真空容器内とつながっている。真空ポンプ13で容器7の内部を少なくとも数百Pa(パスカル)まで減圧して数分後、真空ポンプを作動させながらバルブ12をゆっくりと開いて、塗料樹脂バインダー11を容器9内へ垂らし収納物を濡らす。
塗料樹脂バインダーは発泡しながら滴下する。
所定量の塗料樹脂バインダー全量を注いだ後バルブ12を閉め、バルブ14を閉めてからバルブ15をゆっくり開けて、容器7の内部を大気圧にもどす。
該処理中に塗料樹脂バインダー中の溶媒が蒸発するが、冷却トラップ(図示せず)で大気中への飛散を防ぐとともに、容器7を大気圧に戻した後、蒸発した量に相当する溶媒を容器9に加えて撹拌して粘度を調整する。
減圧混合工程を実施例2に適用すると、磁着力は0.186(ニュートン)/(平方センチメートル)、発錆日数は50日以上と良好であった。肉眼観察では、カラー磁性膜の白さは変わらないものの深みが増した様に見えた。
該減圧混合工程は、鉄粉、カラー化磁性粉、重カラー化磁性粉、及び塗料樹脂バインダーに含まれるか或は表面に吸着している水分や酸素を除去する効果がある。更に、微細な粉体が凝集した内部や鉄粉内部に微細気泡が残留して塗料樹脂バインダーとの濡れが不十分となり、分散を悪くするという不具合を減少させる効果がある。また、鉄粉やカラー化磁性粉と塗料樹脂バインダーとのなじみを良くして塗膜硬化後の空隙の発生を防止するので、塗装後のピンホールの発生を無くして水分や酸素の浸透を防ぐ効果を高めると共に塗装部分の機械特性の低下を防ぐ効果があり、好適である。
磁性塗料や磁性カラー塗料を混練する事は、該減圧混合工程の有無に関わらず混和を促進して好適である。
(比較例1)
実施例1において、磁性カラー塗料層を設けず、磁性塗料層単独としたところ、表面は黒く且つ、表3に示す様に磁着力は強いが数日で錆が発生した。
(比較例2)
実施例1の磁性カラー塗料において、砂鉄を使用せず、塗料樹脂バインダーを乾燥させた際の体積が該砂鉄の体積に相当する塗料樹脂バインダー量を増やすとともに、酸化チタンの量は変更せず添加・混合したカラー塗料を、磁性カラー塗料に替えて採用したこと以外は、実施例1と同様にして、表面がカラー(白色)の非磁性層でその下が磁性塗料層からなる2層構造の膜を得た。
肉眼観察で表面は最も白くなり、表3に示す様に防錆性は優れているが磁着力が大幅に低下した。
(比較例3)
平均粒子径が173ミクロンの砂鉄粉100重量部に対して、撹拌しながらアクリル酸エステル共重合体29%含有水性エマルジョン10重両部を滴下し、10分間撹拌後150℃で2時間静置乾燥し、次ぎに、80メッシュ(目開き177ミクロン)の篩いでもって粉砕・解砕及び分級を行い、アクリル酸エステルで処理された処理砂鉄粉を得た。
次ぎに、次の式1で示される重量部のアナターゼ型酸化チタン微粉量と該処理砂鉄粉との混合物をカラー化磁性粉と見做して、実施例1と同様にして2層構造の表面がカラー化された磁性膜を得た。
10*処理砂鉄粉重量/(処理砂鉄粉重量+分級(篩い)残り重量)・・・式1
ここで、「分級(篩い)残り重量」とは、上述した粉砕・解砕及び分級の操作で、篩い別けられた粗粒(篩いON)重量を意味するものとする。
本比較例は、実施例1とほぼ同等な砂鉄、アクリル酸エステル及び酸化チタンを分散させた表面がカラー化された2層構造であるが、砂鉄粉は酸化チタンで処理されていない。
表3に示す様に、磁着力と防錆性は優れているが、表面を肉眼観察すると、やや白っぽい背景の中に黒い粒子が全面に見えていた。
本発明において磁着力を高める為には、磁性粉の体積充填率を高める事も重要であり、一般には充填粉に粒度分布を持たせる事が現実的には有効である事が知られている。
この事実は、相対的に大きな粒子が充填されたその隙間に小さな粒子が充填されるモデルで説明される。典型的な数学モデルでは単一直径球が接して重点されている隙間に内接する最大球の直径を求める命題に帰するが、現実的には、平均粒子径が異なる2つの粒度分布においてその粒径比や量の比を適切化する。本発明においても該手段は排除しない。
亜鉛粉は磁性粉ではないので磁着力に寄与せず、むしろ、磁性粉の充填可能比率を下げる可能性がある。そこで、亜鉛粉の粒径と充填量が磁性粉(鉄粉)の粒径とその量に対して重要となる。
即ち、鉄粉の体積充填率を大幅に低下させる事無く、且つ犠牲防食効果を発揮するために、鉄粉の表面近傍に亜鉛微粉末が存在する事が重要となる。
本発明者等の検討に拠ると、亜鉛粉末の粒径D50(累積50%径)が鉄粉の粒径D50の10分の1以下の場合、好適であった。該鉄粉間に亜鉛粉が入り易くなるので、鉄粉周辺・近傍に亜鉛粉が存在する状態を作る事が出来たと考えられる。
亜鉛粉の粒径は小さいほど好ましい。亜鉛粉の粒径が相対的に大きくなれば防錆の目的からは多量の添加を必要として、その場合は塗料中の亜鉛の体積比率が大きくなり相対的に鉄粉の体積が減少するので、磁着力が著しく低下してしまうので好ましく無い。
他方で亜鉛粉が更に小さくなると、価格や取り扱い性の困難さの増加、酸化され易くなるという欠点が現れる。数ミクロンが好適である。
亜鉛粉末の添加量は鉄粉100重量部に対して5〜30重量部が好適である。5部未満では防錆効果が確保できず、30部を過ぎると、亜鉛の体積が無視できなくなり、磁性塗料硬化後の磁性層の中の磁性粉の体積を大きく減じてしまい、結果、磁着力の低下が大きくなる。
本発明で採用する磁性粉は、鉄粉と砂鉄とソフトフェライト粉、及びハードフェライト粉である。鉄粉は他の磁性粉と比較して、磁石への磁着力が最も強いので採用されるものの、錆の発生が避けられなかった。
砂鉄は磁鉄鉱(四酸化三鉄=マグネタイト)が主成分の軟磁性粉なので被磁着性がある。比較的安価且つ錆びないという特徴がある。
ソフトフェライトの代表的なマンガンジンク(Mn−Zn)フェライト、及びニッケルジンク(Ni−Zn)フェライトは軟磁性であり錆びない。
ハードフェライト粉は、ストロンチュームフェライトやバリウムフェライトの粉体であり、保磁力がやや高いので軟磁性粉には分類されないものの、ハードフェライト磁石若しくはそれ以上の表面磁束密度を有する磁石が近づくと磁化して磁着するので本発明では採用される。ハードフェライト粉は、化学的に安定であり錆無いので好適である。
鉄粉の種類は、インゴットの粉砕粉、アトマイズ粉(水−アトマイズ、及びガス−アトマイズ)、及び還元鉄粉があり、いずれも粉砕や分級工程を追加する場合がある。
砂鉄は採取されたあと粉砕され、選別・分級されて粒度を調整する。
ソフトフェライト粉は、例えばトランスなどの他の用途に使用済を回収した安価な焼結体を粉砕・分級して望みの粒度を得て、使用する事が出来る。或は数十ミクロンから百数十ミクロンの大きさのボンド用の粉体を入手する事が出来る。
ハードフェライト粉は、他の用途に使用済みの安価な焼結体を回収し、消磁後粉砕・分級して望みの粒度を得る事が出来る。
本発明における磁性塗料や磁性カラー塗料に、分散剤や沈降防止剤などを添加することは該塗料の安定性や塗布の作業性から好ましい実施態様である。
本発明の磁性膜の表面の凹凸を隠して滑らかにする目的で、或いは更に鮮やかなカラーを出す為に、本発明の磁性カラー塗料層の上に非磁性表装塗装を行っても良い。本発明の場合は、同色の場合は極薄い塗装で十分である。該非磁性表装層が薄ければ薄いほど磁着力の低下が小さいので、極薄い塗装は好適である。
また、本発明によって白色のカラー磁性膜を作成し、その上に他のカラーの塗装を行う場合には、黒い表面に塗装する場合に較べて薄い塗装膜でもって望みの色を発現することが出来るのみならず、鮮やかな色が実現する。
本発明では、説明の便宜上「塗料」である事を前提に説明したが、印刷法でもって本発明の磁性面を形成することが可能なことは容易に類推できる。或は塗装と印刷とを組み合わせて本発明の磁性膜構造が形成できることは明らかである。
1 下地
2 磁性塗料層
3 磁性カラー塗料層
4 磁性塗料層
5 カラー装飾(非磁性)層
6 防錆型磁性塗料層
7 真空容器
8 鉄粉、鉄粉と亜鉛粉の混合物、カラー磁性粉、または重カラー磁性粉
9 容器
10 漏斗
11 塗料樹脂バインダー
12 バルブ
13 真空ポンプ
14 真空ポンプバルブ
15 通気バルブ

Claims (4)

  1. 下地に対して、塗料樹脂バインダー内に平均粒子径が20ミクロン以上200ミクロン以下の鉄粉を分散させた磁性塗料を、塗布し硬化させてなる磁性塗料層を形成し、さらに該磁性塗料層の上に、表面をカラー顔料で処理した平均粒子径が40ミクロン以上200ミクロン以下の磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種又は複数種の混合物からなるカラー化磁性粉を塗料樹脂バインダーに分散させた磁性カラー塗料を、塗布し硬化させてなる磁性カラー塗料層を形成して成る2層構造を特徴とするカラー磁性膜構造。
  2. 請求項1に記載のカラー磁性膜構の製造方法であって、カラー化磁性粉が、磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種又は複数種の混合物100重量部に対して、カラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級して得られた磁性粉であるか、若しくは、磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉、およびハードフェライト粉の群から選ばれる1種の100重量部に対して、カラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級して得られた表面をカラー化した磁鉄鉱粉、ソフトフェライト粉またはハードフェライト粉を2種以上混合して得られた磁性粉であることを特徴とするカラー磁性膜構造の製造方法
  3. 請求項1に記載のカラー磁性膜構造の製造方法であって、カラー化磁性粉100重量部に対して、該カラー化磁性粉を得る為に採用したカラー顔料と同等のカラー顔料8〜13重量部を加えた混合物を撹拌しながら、水溶性エマルジョン樹脂10重部を滴下後約10分間撹拌し、その後150℃で約90分間乾燥し解砕・粉砕後分級する方法で得られた重カラー化磁性粉を、カラー化磁性粉に替えて採用することを特徴とするカラー磁性膜構造の製造方法
  4. カラー顔料が、二酸化チタン、合成ウルトラマリン、弁柄、又は酸化クロム焼成顔料である事を特徴とする請求項1に記載のカラー磁性膜構造。

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