JP7022966B2 - 水性マグネット塗料を用いたマグネットシート及びマグネット面 - Google Patents
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Description
このような室内磁性壁は、例えば非磁性壁の壁面に磁性シートを貼着することで製作できる。ここで磁性シートは、磁粉と、粘結材となる有機高分子エラストマーとを原料としたシート状の磁性体である(例えば特許文献1参照)。
他方で磁性紛が硬質の場合は、合成樹脂バインダーに硬質フェライト粒子を分散させたシートを製造し、予め着磁しておいてから、改めて所定の形状にカットしてから壁面に貼るという工程が必要だった。
なお、ハード(硬質)磁性紛を分散させ、面に塗布する為の塗料は無かった。
そこで本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、磁性面、特に任意形状の面積をマグネット面に変貌させる際、施工作業の手間と労力が軽減される水性マグネット塗料を用いたマグネットシート及びマグネット面を提供することを課題とする。
即ち、本発明の態様は、粒子径が110μ以下を主成分とするハードフェライト磁性粉を、水性樹脂塗料に分散してなる水性マグネット塗料とする。
さらに、該エマルジョン系塗料が、白色を含むカラーであれば、該カラーのマグネット面とすることが出来る。
そしてそのマグネットシートの粘着剤層面を磁性又は非磁性の面に貼着させる事によって、マグネット面を形成することが出来る。
例えば、同じ幅の異極を交互に複数個並べて固定した永久磁石組体を、マグネット面又はマグネットシートに当接させた状態で、該幅方向に対して垂直方向へ直線状に移動させると、ピッチが一定の多極着磁を施すことが出来る。
粉体の粒子径を工業的にコントロールする為には篩による分級操作が採用されるが、本発明で採用した、研究及び開発用の「サンポーのステンレスふるい」(ブランド名)では、各篩の網の隙間の大きさ(開口)を、「OPENING」の数値で表している。例えばOPENING106μでは106μ角の綾織の隙間を表している。
OPENING106μの篩を例にとると、基本的には粒子径が106μより小さいものは網を通過し、106μより大きいものは網の上に残る。
なお、粒子径が網の開口より小さくても、各粒子が凝集するか、大きな粒子に付着すると通過しないで網の上に残る。さらに粒子径が網の開口より大きくても、粒子の形状に拠っては通過してしまうことがあるため、篩を用いた分級では粒子径に若干の誤差があり、厳密に区分することは難しい。
以下の実施例では略円筒状の枠体の下部にステンレス製の網を張った「TEST-SIEVE」(商品名)を用いた。
上記とは別に水性多用途EX(白)5ccに、上記と同じマグネット紛を13.8グラム加えた後、水2cc(後述する表1には記載していない)と共に焼き石膏(高級工作用/家庭化学工業株式会社が販売)0.5グラムを添加して素早く混合して鼠色の水性マグネット塗料を得た。更に上記とは別に水性多用途カラー(白)5ccに、上記と同じマグネット紛を13.8グラム加えた後、酸化チタン(白色顔料/アマゾン.コム社から購入)0.18グラムを添加し良く混合して鼠色の水性マグネット塗料を得た。
具体的には、両面粘着テープ((株)ニトムズ製のPROSELF(登録商標)の「カーペット用強弱両面テープ」)1の巻き凹面(巻体の径方向内側面)を台紙4に貼着させ、巻き凸面(巻体の径方向外側面)の離型紙2を取り除いた面の粘着剤層3の表面に、上記水性マグネット塗料を配置し、バーコーター6による矢印X1方向への押圧移動により延伸させスペーサー7の厚さのシート状のマグネット層(乾燥前)8として塗り付けた。
なお、以下の各実施例2,3及び比較例1,2,3では、結果としてできたマグネットシートや軟磁性シートはそれぞれ色や処方配合は異なるものの、構成形状としては同一であることから、本明細書では、同一の符号「9」又は「10」を付す。他の実施形態でも同様な考えを適用する。但しマグネット層を表す場合は符号「11」とした。
尚、実施例1の配合は、表1の実験No.1,2,3,4に記載している。下記比較例1の配合は、実験No.5である。
該現象は、本発明の実施例2,3及び比較例1,2,3においても同様だった。
実施例1で採用した「水性多用途カラー(白)=シリコンアクリル樹脂系エマルジョン塗料」5ccに、実施例1で採用した等方性BaフェライトTF(東京フェライト製造(株)製)の焼結体をハンマーで粉砕し、篩で分級した粉体106μ↑を13.8グラム加えて良く混合して鼠色の水性マグネット塗料を得た。(表1の実験No.5)
続いて実施例1と同様にして両面粘着テープ1の片面に塗布・乾燥させてマグネットシート9を得た。
水性多用途EX(白)5ccに、ニュージーランド・タハロ産の砂鉄(しまだ鉱業から購入)を分級して得られた32μ↓の粉体14.6グラムを加えてよく混合した。(表1の実験No.7)
なお、砂鉄の量はその密度を考慮してフェライトと同じ体積比率とした。
続いて、実施例1と同様にして、両面粘着テープの1の片面に塗布・乾燥させて軟磁性シート9を得た。
尚本発明では、樹脂塗料の量が2割増しになれば磁性紛の量も2割増しとして、体積比率を同じにした。
続いて、実施例1と同様にして、両面粘着テープの1の片面に塗布・乾燥させてマグネットシート9を2種類を得た。
実施例3と同じ樹脂塗料に、Baフェライトに代えて比較例2で採用した砂鉄を分級して得られた106μ↓&32μ↑の粉体を17.5グラム加えて良く混合して緑の水性マグネット塗料を得た。(表1の実験No.10)
更に、水性多用途カラー(緑)5cc単独に分級して得られた砂鉄106μ↓&32μ↑の粉体を14.6グラム加えて良く混合して緑の水性マグネット塗料を得た。(表1の実験No.11)
続いて、実施例1と同様にして、両面粘着テープの1の片面に塗布・乾燥させて軟磁性シート9を2種類2枚得た。
続いて、実施例1と同様にして、両面粘着テープの1の片面に塗布・乾燥させてマグネットシート9を得た。
Baフェライトに代えてニュージーランド・タハロ産の砂鉄を分級して得られた106μ↓&32μ↑を17.5グラムを加えた以外は実施例4と同様にして、(表1の実験No.13)両面粘着テープの片面に塗布・乾燥させて軟磁性シートを得た。
実施例1~4、及び比較例1~4で得られたマグネットシート9(全13種類)の表面の色を測色計(株式会社コニカミノルタ社製の分光測色計:CM-700d)で定量化した。サンプルのデータは、1枚に付き所定間隔をあけた異なる3ヶ所を測定し、その測定数値の算術平均を採った。ここに、L*a*b*表色系(国際照明委員会)において、「L*」軸は明度(明るさ)であり、「a*」軸はプラスが赤でマイナスは緑を表す。「b*」軸はプラスが黄でマイナスは青を表している。
また、各磁性シート9の表面(以下、単に「シート表面」と記すことがある)を肉眼で観察して、表面の粗さや色彩を感覚的に評価した。その結果を表2に示す。
また表2からは、粒子径が32μ↓であれば表面の粗さは無いが、しかし磁性粉の黒さが優位となって塗料の白さやカラーが損なわれてしまう傾向にある。
寸法が(2.0mm)×(9mm)×(12mm)の板状(図7)で、寸法が(2.0mm)×(9mm)の平面が磁極で、長さ12mmの方向に磁化させた焼結Nd磁石(N35/株式会社マグナ社製)6個を、図8に示すようにNS極を交互に並べて磁極面を面一に揃えた「磁石組」13を準備し、本発明のマグネットシートの表面に当接させ、図の矢印X2の方向へ一直線にスライドさせ、図9に示す様な着磁ピッチが2.0mmでN・S交互に多極着磁されたマグネットシートを得た。
同様に、寸法が(2.5mm)×(9mm)×(12mm)の焼結Nd磁石でもって、着磁ピッチが2.5mmでN・S交互に多極着磁されたマグネットシートを得た。
表面磁束密度には、着磁操作やマグネットシート自体のバラつき、そして測定誤差等を含むが、しかしいずれのシートも、メタリーシートを少なくとも2枚磁気係留させる事が出来た。
比較例1~4で得られたシートを、実施例5の方法で着磁を試みたが、比較例2,3,4のシートは着磁できなかった。
比較例1のシートは、表面の凹凸の影響で安定した着磁が困難だった。着磁されたシートの表面磁束密度は、5.8mT~7.7mT程度で、数か所で15mTが測定されたに過ぎず、弱い。メタリーシート1枚の係留も困難であった。
その総合判断の欄は、得られたシート9の表面の粗さと表面の色の具合を肉眼で観察し、実際に壁面等に塗布した場合を想定すると共に、さらに本発明の最大の目的である磁気吸引性とを併せて、総合的に判定したものである。「×」印は「採用不可」、「△~○」は「採用可能」、「○」は「採用」の判断を表している。
次いで、「こて」でもって子供部屋の壁面5の内、略1平方メートルを上記水性マグネット塗料で塗装し、自然乾燥させた(図3参照)。
有機溶媒が無い水性塗料なので、健康に気使うことなく作業が出来た。使用したコテは水道水で洗う事が出来た。
着磁された部分は、メモ用紙をゼムクリップで磁気係留することが出来た。
また、ハードフェライトは他の永久磁石によって磁化して該永久磁石を磁気吸引するので、市販の磁気フックなどを使用することも出来た。
該マグネットテープ10の離型紙2をはがして非磁性のパーテーション5Aに貼り、カラフルなマグネットパーテーションとすることが出来た。(図6)
本発明で採用したエマルジョン系塗料、更にアクリル樹脂系又はシリコンアクリル樹脂系は、上記粘着が良好である。
径の小さな粒子は色を黒くする作用があり、大きな粒子は、塗装表面を粗くすることが、表2から明らかになっている。
図19は表1の実験No.6の配合で作成した、実施例2で得られたマグネットシートの断面電子顕微鏡写真である。Baフェライト粒子は小さい。マグネット層14は粘着剤15に良く粘着している。
図21は表1の実験No.9の配合で作成した、実施例3で得られたマグネットシートの断面電子顕微鏡写真である。Baフェライト粒子は小さい。
図22は表1の実験No.12の配合で作成した、実施例4で得られたマグネットシートの断面電子顕微鏡写真である。
また、その軟らかさから、手触りが良いという特徴がある。
以上及び表2から、塗布・乾燥後の塗布表面からは、粒子径は「110μ↓」である事が好ましい。
本発明の最大の特長である着磁が有効に実施できるためにもまた、粒子径は「110μ↓」である事が好ましく、「30μ↓」は何ら問題が無い。
他方で本発明の特長の1つであるカラー化に関しては、より鮮明な色を出現させるためには、粒子径は「30μ↑」が好ましい。
勿論、電磁石方式の着磁ヨークを用いた着磁であっても良い。
また、該マグネット面は、軟磁性面としての機能を併せ持つので、磁気フックなどを係留することも出来る。カラー化も可能である。
2 離型紙
3 粘着剤層
4 台紙(シート状部材)
5 非磁性面(壁、パーテーションなど)
6 バーコーター
7 スペーサー
8 磁性(マグネット)層
9 マグネットシート
10 マグネットシート
11 マグネット層
12 Nd焼結永久磁石
13 磁石組(永久磁石組体)
14 着磁されたマグネットシート
X1 バーコーターを移動せせる方向
X2 磁石組を移動させる方向
Claims (9)
- 粒子径が30μ以上110μ以下を主成分とするハードフェライト磁性粉を、白色を含むカラーの水性樹脂塗料に分散してなる水性マグネット塗料のみを単層として、壁面又はボードに塗布し乾燥させてなることを特徴とするマグネット面。
- 水性樹脂塗料がエマルジョン系塗料であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネット面。
- エマルジョン系塗料がアクリル樹脂系エマルジョン塗料とシリコンアクリル樹脂系エマルジョン塗料の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のマグネット面。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の水性マグネット塗料のみを単層として、非磁性材から成るシート状部材の片面に塗布し乾燥させてなることを特徴とするマグネットシート。
- 非磁性材から成るシート状部材が、裏面に粘着剤層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のマグネットシート。
- 非磁性材から成るシート状部材が、両面粘着テープであることを特徴とする請求項4に記載のマグネットシート。
- 請求項5又は請求項6に記載のマグネットシートの粘着剤層面を、磁性又は非磁性の面に貼着させてなる事を特徴とするマグネット面。
- 水性マグネット塗料を塗布した面を永久磁石で着磁した事を特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のマグネット面又はマグネットシート。
- 着磁は、同じ幅の異極を交互に複数個並べて固定した永久磁石組体を、水性マグネット塗料を塗布した面に当接させた状態で、該幅方向に対して垂直方向へ直線状に移動して行うことを特徴とする請求項8に記載のマグネット面又はマグネットシート。
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