JP6998013B2 - 磁性石こう組成物、磁性石こうボード及び磁性石こう組成物を用いた施工方法 - Google Patents
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Description
特に、水硬性無機バインダーとして石膏を採用すると、ポーラスであることもあって水分の浸透が容易で、水分の存在下で金属鉄の錆は顕著であり、そのままでは採用出来ない。
本技術は、改めて着磁を施して永久磁石として活用するか、又は永久磁石が吸着する軟磁性体として使用することになるが、いずれにせよ高価で特種な建材・建装材となってしまう。また、希土類系硬質磁性粉体は錆が問題となる。
いずれにせよ、金属鉄を採用すればその錆が現実となる。さらに、本発明で採用する石こうにおいては、水の存在下で半水(焼)石こうが2水石こうに再結晶する現象を利用するので、可使時間が短いという、生産上の制約があった。
さらに、本発明では、磁性石こう組成物を混ぜ合わせた後の可使時間を現在より長くすることを課題とする。
また、鉄粉の重量が石こうバインダーの重量の2倍より低いと、磁性石こう層内の鉄粉の比率が低く、磁気吸着力が弱くなってしまう。
他方で、6倍より高いと相対的に石こうの量が少なくなり、鉄粉間をつなぐバインダーとしての役割が果せなくなってしまう。
さらに、還元鉄粉表面の凹みにバインダーである2水石こう結晶が絡みつき、あるいはアンカー効果をもたらして好都合である。
これらは被磁気吸着性が鉄粉に比べやや小さい磁性粉であるが、錆びる事が無く、かつ
上磁性石こう層は下層にある磁性石こう層を被覆しており、下層の鉄粉の錆を更に抑制している。
本発明を適用した内装材は、石膏ボードの特性を維持しながら永久磁石を吸引する。そして、鉄粉の錆は押さえられている。
また、本発明において、鉄粉と亜鉛粉とを含む組成物に水を加えて混練してスラリーとした場合、適切な水の量で適切な粘度を保ち、かつ石こうが硬化するまでの可使時間が石こう単独の場合に比して延びており、製造方法等に弾力性を持たせることができる。
パテとして施工した部分が、石こうボードとしての特徴である断熱性や防音性を有しているので、内装材として好適である。磁性ボード部分と同様に、永久磁石を吸引する機能も有している。
水(飲料用)10グラムを紙コップに採り、亜鉛粉末(銘柄はF末。粒子径3~5ミクロン。ハクスイテック株式会社が販売。)4グラムを投入して撹拌した。その後、還元鉄粉(銘柄はDR。平均粒子径D50は98ミクロン程度。DOWA IP CREATION社製。)を40グラム加えて撹拌した。
次に、半水石膏(家庭化学工業社製高級工作石こう。電子顕微鏡写真を図6に示す。)を10グラム、パラパラと投入後スパチラで約2分半の間撹拌し、その後撹拌を止めてそのまま放置硬化させた。
他方で、撹拌終了後スパチラに付着していた組成物を紙の上に落として、滴下した状態のまま放置して硬化・乾燥させた。
また、紙コップを傾けて観察し、スパチラで表面を押し、さらに時々手のひらでコップに触ることによって、紙コップ内での組成物スラリーの粘度の変化や発熱を確認し、記録した。
図3‐(2)においても、錆は殆ど認められない。
亜鉛粉の添加を零としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパチラで約2分半の間撹拌後そのまま紙コップを放置する一方、スパチラに付着した組成物を紙の上に落とし、この後、紙コップ内のスラリーの粘性と発熱を観察した。
スパチラに付着した組成物中に亜鉛粉が無く、放置すれば表面層に錆があり、内部も錆が進行している。錆の色は一部が黒っぽく又他部分は赤褐色である。破断粉を容器に集め改めて水に接触させると、前面赤褐色の錆になった。
これらの現象は、半水石こうの水和反応に対する鉄と亜鉛の複雑な影響を示していると考えられる。
他方で、表2によれば、亜鉛が有する犠牲防食効果によって鉄の錆を防ぐ働きが発揮されたと考えられる。
さらに、本発明の磁性石こうボードは、石こうボード本来の特徴を備えている。すなわち、耐火性、遮音性、断熱性などを損なうことが殆ど無い。
市販の石こうボード(厚さ約12mm)の片側表面の原紙を取り除いた石こう層表面に、実施例1の組成物を硬化前に約1.0mmの厚さに塗布すると共に、その上に新しい原紙を接触させて平面を保持した状態で組成物を硬化させて磁性石こう層を形成させた。
その結果、市販の石こうボードの石こう層と塗布した磁性石こう層とが一体化するとともに、磁性石こう組成物が接着剤の様な作用を及ぼして新しい原紙とも一体化した。磁性石こう層を形成する際に、水和2水石こうの棒状結晶が原紙の繊維の隙間に入り込んだと考えられる。
本磁性石こうボードの磁性石こう層には、原紙を介して永久磁石が強く吸着した。なお、本実施例2は図7に示す構成を有している。
本発明のバインダーは石こうであり図1に示した様に空隙が多いので、該空隙を埋めて全体の透磁率を高める目的で好適である。錆びないという特徴も好適である。
添加量は、鉄粉100重量部に対して50部以下が良い。これを越えると、金属鉄の磁気吸着力に比べて低い磁性成分が無視出来なくなり、低下してしまうからである。ただし、添加する重量と鉄粉の重量との和が、石こう(半水石こうに換算)バインダーの重量の2倍以上6倍以下が好ましい。
実施例2において、原紙を採用せずロールでもって塗布厚を調整したあと、そのまま硬化させた。
並行して、平均粒子径が約1.8μmのハードフェライト粉と平均粒子径が約5μmの四三酸化鉄粉とを重量で1対1に混合した磁性粉40グラムに対して、水(飲料用湧水)10グラムを紙コップに採り撹拌しながら、実施例1で用いた半水石膏10グラムを、パラパラと投入後スパチラで約2分半の間撹拌し、スラリーを得た。
上磁性石こう層は磁性石こう層と一体化した。且つ錆びることが無い上磁性石こう層でもって下層にある磁性石こう層を被覆しており、下層の鉄粉の錆を抑制している。
なお、本実施例3は図8に示す構成を有している。実施例3の磁性石こうボードは、永久磁石を強く吸着した。
還元鉄粉の形状や石こう結晶との絡み具合いは、図1、図2、及び図4に示されている。
還元鉄粉の粒径が20μmより小さいと高価であり、採用出来ない。粒径が大きいことは本発明には重要では無いが、磁性石こう層表面が粗くなるので、実用性でもって判断する。
鉄粉と亜鉛粉とのそれぞれの総表面積の比が重要だと考えられるが、バインダー中に散在することも必要だと考えられる。
また、図1及び図2の視野を詳細に観察すると、亜鉛粉はランダムに分布していて、さらに局部的には濃淡がある。しかし、防錆効果があることが表2から判る。亜鉛粉は鉄粉の表面には殆ど存在せず、見かけ上の写真での面積は鉄粉の1/10をはるかに下回っている。
原紙の片面に内装用の表装材を積層しておけば、本発明の実施例2の磁性石こうボードは、そのまま内装ボードとして採用できる。そして、さらに、該表装材表面に磁石を磁着させることができる。
また、石こうボードを生産する従来のラインで、図7または図8の構成の磁性石こうボードを生産することができる。
実施例2は、石こう層表面に磁性石こう組成物を塗布した例である。
さらに、本発明の磁性石こうボードを複数枚並べて、壁面を形成する(図9-(1))場合、磁性石こうボード同士が当接又は隣接する場所には隙間が生じることがある。そして本発明の磁性石こう組成物は、該隙間を埋めることができる(図9-(2))のである。
パテとして施工した部分が、石こうボードとしての特徴である断熱性や防音性を有しているので、内装材として好適である。磁性ボード部分と同様に、永久磁石を吸引する機能も有している。
前記鉄粉の重量は石こうバインダーの重量(半水石こう換算)の2~6倍が好ましい。
2 2水石こう
3 亜鉛粉
4 石こう層
5 磁性石こうボード
6 磁性石こう層
7 上磁性石こう層
8 原紙
9 隙間(当接部)
10 パテとして隙間を埋めた磁性石こう組成物
11 下地壁面
Claims (15)
- 平均粒子径が20μm以上の鉄粉100重量部と、平均粒子径が2μm以上かつ前記鉄粉の平均粒子径の1/10以下の亜鉛粉5~30重量部とを主成分とする混合粉体を、石こうバインダーに分散してなる磁性石こう組成物であって、
前記鉄粉の重量は石こうバインダーの重量(半水石こう換算)の2~6倍とすることを特徴とする磁性石こう組成物。 - 前記鉄粉は還元鉄粉である請求項1の磁性石こう組成物。
- ハードフェライト粉、ソフトフェライト粉、四三酸化鉄粉、の群から選ばれる1種又は複数の磁性粉が添加されている請求項1又は請求項2の磁性石こう組成物。
- 請求項1から請求項3までのいずれかの磁性石こう組成物を含有する塗料用磁性石こう組成物。
- 請求項1から請求項3までのいずれかの磁性石こう組成物を含有するパテ用磁性石こう組成物。
- 請求項4の塗料用磁性石こう組成物を含有する磁性石こう塗料。
- 請求項5のパテ用磁性石こう組成物を含有する磁性石こうパテ。
- 平均粒子径が20μm以上の鉄粉100重量部と、平均粒子径が2μm以上かつ前記鉄粉の平均粒子径の1/10以下の亜鉛粉5~30重量部とを主成分とする混合粉体を、石こうバインダーに分散すると共に、前記鉄粉の重量を石こうバインダーの重量(半水石こう換算)の2~6倍とする磁性石こう組成物からなる磁性石こう層が、石こうボードの片面又は両面に具備されていることを特徴とする磁性石こうボード。
- 前記鉄粉は還元鉄粉である請求項8の磁性石こうボード。
- 前記組成物は、ハードフェライト粉、ソフトフェライト粉、四三酸化鉄粉、の群から選ばれる1種又は複数の磁性粉が添加されている請求項8又は請求項9の磁性石こうボード。
- 石こうボードに請求項6の磁性石こう塗料を塗布したことを特徴とする磁性石こうボード。
- 請求項8から請求項11までのいずれかに記載の磁性石こうボードの磁性石こう層の上に、ハードフェライト粉、ソフトフェライト粉、四三酸化鉄粉の群から選ばれる1種又は複数の混合粉を主成分とする磁性粉を石こうバインダーに分散してなる組成からなる上磁性石こう層を積層させて構成する磁性石こうボード。
- 請求項8から請求項12までのいずれかの磁性石こうボードを複数枚隣接して配置し壁面を形成し、前記磁性石こうボードが隣接した隙間を、請求項1から請求項3までのいずれかの磁性石こう組成物でもって埋めることを特徴とする施工方法。
- 請求項8から請求項12までのいずれかの磁性石こうボードを複数枚隣接して配置し壁面を形成し、前記磁性石こうボードが隣接した隙間を、請求項7の磁性石こうパテでもって埋めることを特徴とする施工方法。
- 請求項13又は請求項14に記載された施工方法で得られた壁面の上に、ハードフェライト粉、ソフトフェライト粉、四三酸化鉄粉の群から選ばれる1種又は複数の混合粉を主成分とする磁性粉を石こうバインダーに分散してなる組成からなる上磁性石こう層を積層させて構成することを特徴とする施工方法。
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