以下に本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
図1に模式的に示すように、車両1の車両ボディ1aの側部には、適宜の支持部材(図示略)を介しスライドドア2が前後方向に移動可能に支持されている。スライドドア2は、前後方向への移動に伴って乗降用の開口部を開閉する。
スライドドア2の外面前側には、車両前後方向に延在するアウトサイドドアハンドル3が後端部を支点に揺動可能に連結されている。すなわち、図2に模式的に示すように、スライドドア2は、ドア外板をなすアウターパネル2aと、ドア内板をなすインナーパネル2bと、該インナーパネル2bを車内側から被覆して意匠面をなすドアトリム2cとを備える。そして、アウトサイドドアハンドル3は、車外側に露出する態様でアウターパネル2aに設置されている。なお、スライドドア2内には、インナーパネル2bによって区画される車外側空間S1及び車内側空間S2が形成されている。もちろん、アウトサイドドアハンドル3は、スライドドア2に対して前端部を支点として揺動可能に連結されていてもよいし、アウトサイドドアハンドル3の形状は、例えば上下方向に延在するものであってもよい。
さらに、スライドドア2内には、図1,2に示すように、前側及び後側に配置されたフロントラッチ機構6(ラッチ機構)及びリアラッチ機構7がそれぞれ設置されるとともに、下側に配置された全開ラッチ機構8が設置されている。図2に示すように、フロントラッチ機構6及びリアラッチ機構7は、車外側空間S1に配置されており、車両ボデー1a側と係合してスライドドア2を閉状態(全閉状態又は半ドア状態)に保持する。
具体的には、図5に示すように、フロントラッチ機構6は、ラッチ31、ポール32、ラッチスプリング33、ポールスプリング34(付勢部材)及びアーム36を有して構成されている。そして、フロントラッチ機構6は、車両ボデー1aに固着されたストライカ11と係合することで車両ボデー1aに対してスライドドア2を閉状態で保持する。すなわち、スライドドア2を閉めるときラッチ31が回転してストライカ11と係合し、同時にポール32がラッチ31を回り止めすることで、フロントラッチ機構6は、ラッチ状態となり、スライドドア2を閉状態で保持する。また、フロントラッチ機構6は、ポール32においてアーム36を介してリモートコントロール装置18と連係されている。そして、リモートコントロール装置18からの動力によりアーム36及びポール32を動かしてラッチ31の回り止めを解除すると、該ラッチ31はラッチスプリング33に付勢されて戻り回転し、ストライカ11との係合状態を解除して、フロントラッチ機構6は、アンラッチ状態となり、車両ボデー1aに対してスライドドア2を開可能状態にする。なお、回転したポール32は、ポールスプリング34にて、初期位置に復帰する。なお、リアラッチ機構7はフロントラッチ機構6と略同様な構成であるため、説明を省略する。また、フロントラッチ機構6のアーム36の一端35には、後述する板ばね式リンク40(リンク部材)と連結される圧入部35が形成されている。なお、圧入部35は、圧入溝35a,35bを対向配置することにて形成される。
全開ラッチ機構8は、車外側空間S1に配置されており、車両ボデー1a側と係合してスライドドア2を全開状態に保持する。この全開ラッチ機構8も、リモートコントロール装置18と連係されており、該リモートコントロール装置18からの動力により上記に準じて動作することで、車両ボデー1aに対してスライドドア2を閉可能状態にする。
一方、図3に示すように、インナーパネル2bには、フロントラッチ機構6等をインナーパネル2bの車両内側から車外側空間S1内に配置するためのサービスホールとして機能するモジュール取付開口15aが形成されている。モジュールベース16は、リモートコントロール装置18、リリースアクチュエータ19、ロッキングアクチュエータ17及びウィンドレギュレータ(図示略)等のモジュールが組み付けられるとともに、前記モジュール取付開口15aを覆う態様にてインナーパネル2bに固着される金属板である。なお、モジュールベース16の周縁部にはシール材16aが設けられており、モジュールベース16はシール材16aを介してインナーパネル2bに取り付けられ、モジュールベース16とインナーパネル2bとの間はシール材16aにて防水されている。モジュ−ルベ−ス16の車両内側(ドアトリム2c側)には、リモートコントロール装置18が設けられる。また、モジュールベース16の車両外側(アウターパネル2a側)には、リモートコントロール装置18を介して動力が伝達される金属製の第3ラチェット連動レバー21が設けられる。なお、リアラッチ機構7は、クローザ(図示略)と一体となっていてもよい。なお、モジュールベース16は、シール材16aを介してインナーパネル2bの内側面に取り付けられているが、もちろんシール材16aを介してインナーパネル2bの外側面に取り付けてもよい。
スライドドア2の内面前側には、車両上下方向に延在するインサイドドアハンドル4が中央部を支点に揺動可能に連結されている。すなわち、図2,3に示すように、インサイドドアハンドル4は、ドアトリム2cの開口(図示略)から車内側に露出する態様でリモートコントロール装置5及びモジュールベース16を介してインナーパネル2bに支持されている。なお、インサイドドアハンドル4は、中立位置に復帰するよう付勢されている。
図2,3に示すように、インナーパネル2bには、車内側空間S2において、リリースアクチュエータ19が設置されている。このリリースアクチュエータ19は、リモートコントロール装置18に連係されており、その動力をリモートコントロール装置18を介してフロントラッチ機構6、リアラッチ機構7及び全開ラッチ機構8にそれぞれ伝達することで前述の態様でスライドドア2を開可能状態又は閉可能状態にする。さらに、モジュールベース16には、ロッキングアクチュエータ17が支持されている。このロッキングアクチュエータ17は、スライドドア2のロック状態及びアンロック状態を切り替えるためのものである。なお、スライドドア2のロック状態では、例えばインサイドドアハンドル4を回動操作しても、その操作力をリモートコントロール装置18がフロントラッチ機構6及びリアラッチ機構7に伝達することはなく、スライドドア2が開可能状態になることはない。一方、スライドドア2のアンロック状態では、例えばインサイドドアハンドル4の回動操作に伴い、その操作力をリモートコントロール装置18がフロントラッチ機構6及びリアラッチ機構7に伝達することで、スライドドア2が開可能状態になる。
このように、車両用ドア開閉装置5は、フロントラッチ機構6、リアラッチ機構7、全開ラッチ機構8、アウトサイドドアハンドル3、インサイドドアハンドル4、リリースアクチュエータ19、ロッキングアクチュエータ17、リモートコントロール装置18、後述する板ばね式リンク40等を備える。
ここで、リモートコントロール装置18の説明をする。
図3,4に示すように、リモートコントロール装置18は、モジュールベース16に固定された固定ベース18aと、固定ベース18aに固定されたメイン軸体18bと、メイン軸体18bに支持された複数の回動レバーとを有する。メイン軸体18bは車両内側に向けて延びており、複数の回動レバーが回動自在に支持されている。複数の回動レバーとは、固定ベース18aに近い側から順に、車両外側に動力中継レバー18c、車両内側に第1ラチェット連動レバー18d、車内ハンドル連結レバー18e、車外ハンドル連結レバー18f、全開ラッチ解除レバー18gである。また、固定ベース18aは、メイン軸体18bとは別軸にてロッキングレバー18hを回動自在に支持している。
全開ラッチ解除レバー18gは、第1レバー突片18g1と、第2レバー片部18g2とを有する。第1レバー片部18g1は、全開ラッチ機構8にケーブルC1を介して連結される。また、第2レバー片部18g2はロッド(図示略)を介してインサイドドアハンドル4に連結される。インサイドドアハンドル4の閉操作により、全開ラッチ解除レバー18gは反時計回りに回動して、ケーブルC1が引かれることにより全開ラッチ機構8が解除される。なお、インサイドドアハンドル4の閉操作では、第2レバー片部18g2にて空振りしてインサイドドアハンドル4の操作力は全開ラッチ解除レバー18gに伝達されない構成である。
第1ラチェット連動レバー18dは、第1レバー突片18d1と、第2レバー片部18d2とを有する。第1レバー片部18d1は、リアラッチ機構7にケーブルC2を介して連結される。第1ラチェット連動レバー18dが反時計回りに回動することでリアラッチ機構7が解除される。ここで、第2ラチェット連動レバー18Aは、車内側空間S2にてモジュールベース16に回動自在に支持される。詳説すると、第2ラチェット連動レバー18Aは、一端部18A1にて第1ラチェット連動レバー18dの第2レバー片部18d2に回動自在に連結され、他端部18A2にてモジュールベース16のサブ軸体18Bに対して一体的に回動自在に支持される。また、第3ラチェット連動レバー21は、車外側空間S1にてモジュールベース16に回動自在に支持される。詳説すると、第3ラチェット連動レバー21は、一端部21Aにてサブ軸体18Bに対して一体的に回動自在に支持され、他端部21Bにて板ばね式リンク40に連結されている。なお、板ばね式リンク40は、フロントラッチ機構6へ力を伝達するための部材である。このため、第1ラチェット連動レバー18dが反時計回りに回動すると、第2ラチェット連動レバー18A及び第3ラチェット連動レバー21がサブ軸体18Bを中心として回動して、板ばね式リンク40が引かれることによりフロントラッチ機構6が解除される。
車内ハンドル連結レバー18eは、第1レバー突片18e1と、第2レバー片部18e2とを有する。第1レバー片部18e1は、インサイドドアハンドル4にロッド(図示略)を介して連結される。
動力中継レバー18cは、ピン18c1を有する。室内ハンドル連結レバー18eが反時計回りに回動すると第2レバー片部18e2がピン18c1に当接して、動力中継レバー18cを反時計回りに回動させる。なお、詳細な説明は省略するが、動力中継レバー18cと、室内ハンドル連結レバー18eとの動力伝達を遮断させることでチャイルドプロテクタ機能が働くことになる。また、動力中継レバー18cは、ピンPを介して第1ラチェット連動レバー18dの長孔18d3に連結される。ロッキングレバー18hが回動することで、当該ピンPが長孔18d3に沿って上下動するようになっている。そして、当該ピンPが長孔18d3の上方に位置するときは、動力中継レバー18cの反時計回りの回動することで、ピンPを介して動力が伝達され、第1ラチェット連動レバー18dが反時計回りに回動する。すなわち、この状態がアンロック状態である。そして、当該ピンPが長孔18d3の下方に位置するときは、動力中継レバー18cの反時計回りの回動しても、第1ラチェット連動レバー18dの動力が伝達されない。すなわち、この状態がアンロック状態である。
ロッキングレバー18hは、ロッキングアクチュエータ17又はロックノブ(図示略)により回動し、上述のようにロック状態・アンロック状態を切り替え可能である。
また、車外ハンドル連結レバー18fは、アウトサイドドアハンドル3の操作力がベルクランクB及びロッドR2等を介して入力される第1入力部18f1と、リリースアクチュエータ19の操作力がロッドR1を介して入力される第2入力部18f2と、第1レバー片部18f3を有する。第1入力部18f1又は第2入力部18f2からドア開操作の入力により、車外ハンドル連結レバー18fは反時計回りに回動する。これにより、第1レバー片部18f3が動力中継レバー18cに当接して、動力中継レバー18cを反時計回りに回動させる。なお、ベルクランクBは、モジュールベース16に回動自在に支持されるレバー部材である。
ここで、板ばね式リンク40の説明をする。
図6は、板ばね式リンク40の説明図であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図、(c)は拡大図である。
図3,4,6に示すように、板ばね式リンク40は、第3ラチェット連動レバー21とフロントラッチ機構6との間に配設される動力伝達部材である。すなわち、板ばね式リンク40は、一端部40aが第3ラチェット連動レバー21に連結され、他端部40bがフロントラッチ機構6に連結される。ここで、インサイドドアハンドル4側の端部である一端部40aに板ばね51(変形可能部)が設けられる。
図6に示すように、板ばね式リンク40は、リンク41と、板ばね51とを有している。リンク41は、その一端部41aが平面状に潰されており、一端部41aにその一端側から順番に固定用孔45(固定部)と回転留め用孔44とが形成されている。また、リンク41は、その他端部41bが蛇腹状(又はねじ状)に形成されており、他端部41bがフロントラッチ機構6のアーム36の一端部に形成された圧入部35に連結される。なお、他端部41bは蛇腹状(又はねじ状)に形成されているため、アーム36と板ばね式リンク40との間にてストロークの微調整が可能となっている。板ばね51は、その一端部51aに第3ラチェット連動レバー21の他端部21Bに連結するための連結孔51a1が形成されている。なお、第3ラチェット連動レバー21の他端部21Bにも連結孔21B1が形成されており、第3ラチェット連動レバー21の他端部21Bと板ばね式リンク40の板ばね51の一端部51aとは各連結孔に挿通されたリベット70にて連結されている(図4参照。)。また、板ばね51は、車両内側方向と車両外側方向(板厚方向)に弾性変形可能な金属板であり、モジュールベース16の延在する方向においてシール材16aよりも中央側に配置されている。すなわち、シール部材16aよりもインサイドドアハンドル4側に設置されている。
そして、板ばね51には、その他端部51bにリンク41の固定用孔45に連結するための連結用孔54(連結部)と、回転留め用孔44に挿入するためのクランク状の曲げ部53とが形成されている。リンク41の一端部41aと板ばね51の他端部51とは、曲げ部53がリンク41の回転留め用孔44に挿入され板ばね51の連結用孔54とリンク41の固定用孔45とに挿通されたリベット60にて連結されている。なお、リンク41の一端部41aと板ばね51とをリベット60を用いて連結しているが、溶接、ろう付け、接着、溶着、ねじ留めと云った他の連結手段で代用することも可能である。
ここで、曲げ部53と回転留め用孔44との詳細構造を説明する。図6(c)に示すように、曲げ部53は、第1平面部53aと、第1平面部53aと略平行な第2平面部53bと、第1平面部53aから第2平面部53bに屈曲するとともに第1平面部53aと第2平面部53bとを連結する曲面部53cとから形成され、全体としてクランク形状を呈する。また、回転留め用孔44は略方形状に形成され、一方の幅が曲げ部53の曲面部53cの幅と略同程度である。そして、回転留め用孔44に曲げ部53が挿通された状態で、曲面部53cの側面が回転留め用孔44を形成する部位に当接可能となる。そのため、リンク41に対して板ばね51が回転留めされることになる。
ここで、本発明の車両用ドア開閉装置5の動作について説明する。
アンロック状態における閉状態(全閉状態又は半ドア状態)において、使用者がインサイドドアハンドル4の開操作を行うと、当該操作力がロッド(図示略)を介して車内ハンドル連結レバー18eを反時計回りに回動させ、車内ハンドル連結レバー18eを介して動力中継レバー18cを反時計回りに回動させる。そして、当該操作力による伝達力は、動力中継レバー18cを介して、第1ラチェット連動レバー18dを反時計回りに回動させ、第1ラチェット連動レバー18d及びケーブルを介してリアラッチ機構7をアンラッチ状態にする。また、第1ラチェット連動レバー18dが反時計回りに回動されると、第1ラチェット連動レバー18dを介して第2ラチェット連動レバー18Aが反時計回りに回動される。そのため、当該操作力による伝達力は、第2ラチェット連動レバー18Aが反時計回りに回動させ、第2ラチェット連動レバー18Aを介して第3ラチェット連動レバー21が反時計回りに回動させ、第3ラチェット連動レバー21及び板ばね式リンク40を介してフロントラッチ機構6をアンラッチ状態にする。これにより、スライドドア2は開可能状態となる。なお、当該操作力による伝達力は、板ばね式リンク40には圧縮方向ではなく引張り方向の力が作用する。
アンロック状態における閉状態(全閉状態又は半ドア状態)であるスライドドア2において、使用者がアウトサイドドアハンドル3の開操作を行うと、当該操作力がベルクランクB及びロッドR2等を介して車外ハンドル連結レバー18fを反時計回りに回動させ、車外ハンドル連結レバー18fを介して動力中継レバー18cを反時計回りに回動させる。ここで、動力中継レバー18cからフロントラッチ機構6及びリアラッチ機構7までの当該操作力による伝達力の伝達経路は上記インサイドドアハンドル4の開操作の場合と同様であるため、説明を省略する。よって、当該操作力による伝達力は、フロントラッチ機構6及びリアラッチ機構7をアンラッチ状態にする。これにより、スライドドア2は開可能状態となる。
ここで、パワースライドシステムを導入した場合にて、パワースライドドアシステムを起動するためのスイッチ(図示なし)をトリガーとして、リリースアクチュエータ19が作動する場合を考える。この場合も、リリースアクチュエータ19からの伝達力が、ロッドR1を介して車外ハンドル連結レバー18fを反時計回りに回動させる。ここで、上記アウトサイドドアハンドル3の開操作の場合と同様であるため、説明を省略する。よって、リリースアクチュエータ19からの伝達力は、フロントラッチ機構6及びリアラッチ機構7をアンラッチ状態にする。これにより、スライドドア2は開可能状態となる。
アンロック状態における全開状態であるスライドドア2において、使用者がインサイドドアハンドル4の開操作を行うと、当該操作力がロッドを介して全開ラッチ解除レバー18gを反時計回りに回動させる。当該操作力による伝達力は、全開ラッチ解除レバー18g及びケーブルC1を介して、全開ラッチ機構8をアンラッチ状態にする。これにより、スライドドア2は閉可能状態となる。
アンロック状態における全開状態であるスライドドア2において、使用者がアウトサイドドアハンドル3の開操作を行うと、当該操作力がベルクランクB及びロッドR2等を介して車外ハンドル連結レバー18fを反時計回りに回動させ、車外ハンドル連結レバー18fを介して全開ラッチ解除レバー18gを反時計回りに回動させる。当該操作力による伝達力は、全開ラッチ解除レバー18g及びケーブルC1を介して、全開ラッチ機構8をアンラッチ状態にする。これにより、スライドドア2は閉可能状態となる。
第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏し得ることができる。
(1)車外側空間S1に配置される部品(例えば、フロントラッチ機構6等)をメンテナンス等する場合には、モジュールベース16をインナーパネル2bから取り外す必要がある。しかしながら、フロントラッチ機構6と板ばね式リンク40を連結した状態でモジュールベース16をインナーパネル2bから取り外すと、板ばね式リンク40のリンク41がインナーパネル2bに当接して、板ばね式リンク40のリンク41に車両内側方向へ過大な負荷が掛かることが想定される。この場合、本実施形態では、板ばね式リンク40を採用しているため、板ばね51が車両内側方向へ弾性変形してリンク41への負荷を吸収することができる。また、製造時等においてメンテナンスの際にフロントラッチ機構6と板ばね式リンク40を連結した状態でリンク41に車両外側方向へ過大な負荷が掛かった場合でも、板ばね51が車両外側方向へ弾性変形してリンク41への負荷を吸収することができる。このように、板ばね式リンク40のリンク41に車両内側方向又は車両外側方向へ過大な負荷が掛かった場合には、板ばね51が車両内側方向へ弾性変形して負荷を吸収する。これにより、板ばね式リンク40のリンク41が塑性変形し難く、板ばね式リンク40を再利用することができる。
(2)板ばね式リンク40を所定位置からインサイドドアハンドル4側に引いた後に板ばね式リンク40を所定位置に戻すための付勢部材34をフロントラッチ機構6に有している。更に、板ばね式リンク40にはスライドドア2を開ける際にも閉じる際にも圧縮方向ではなく引張り方向の力が作用するため、板ばね式リンク40については引張り方向のみの考慮すればよくなる(板ばね式リンク40の座屈等の圧縮変形を考慮する必要はない。)。これにより、板ばね式リンク40を簡素化できる。加えて、モジュールベース16に取り付けられた他部品の間をぬって設置される板ばね式リンク40を薄くすることができ、スライドドア2の内部に設置される他の部品との干渉を従来よりも避け易くすることができる。
(3)板ばね51は、シール材16aよりもインサイドドアハンドル4側に設置されている。そのため、板ばね51がインナーパネルに直接当接することをなくすことができる
(4)変形可能部は板ばね51であるため、簡素な構成にて変形可能部を構成できる。また、曲げ部53と回転留め用孔44とが協働してリンク41及び板ばね51の相対回転を抑制するため、固定用孔45と連結用孔54とリベット60にて連結する際の連結性、すなわちリンク41と板ばね51との組付性を向上できる。
(5)板ばね51を設けることにより、板ばね式リンク40の代わりにリンク41を設置して塑性変形し難いようにリンク41の断面積を大きくする場合に比べて、車両用ドア開閉装置5を軽量化することができる。
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を詳細に説明する。
第2実施形態は、第1実施形態に対して、板ばね式リンク40をヒンジ式リンク部材140(リンク部材)に変更したものであるため、ヒンジ式リンク部材140以外の説明は省略する。
ヒンジ式リンク部材140は、第3ラチェット連動レバー21とフロントラッチ機構6との間に配設される動力伝達部材である。すなわち、ヒンジ式リンク部材140は、一端部140aが第3ラチェット連動レバー21に連結され、他端部140bがフロントラッチ機構6に連結される。ここで、インサイドドアハンドル4側の端部である一端部140aにヒンジ151(変形可能部)が設けられる。
図7に示すように、ヒンジ式リンク部材140は、ヒンジ151と、リンク141とを有している。
リンク141は、その一端部141aが平面状に潰されており、一端部141aに溶接部位145(固定部)が形成されている。また、リンク141は、その他端部141bが蛇腹状(又はねじ状)に形成されており、他端部141bがフロントラッチ機構6のアーム36の一端部に形成された圧入部35に連結される。なお、他端部141bは蛇腹状(又はねじ状)に形成されているため、アーム36とヒンジ式リンク部材140との間にてストロークの微調整が可能となっている。
ヒンジ151は、ヒンジプレート153,154と、ヒンジプレート153,154を貫通するピン155と、ヒンジプレート153,154に挟まれるワッシャ156,157と、を有している。そして、ヒンジプレート153とヒンジプレート154とは、ワッシャ156,157を介してピン155にて相対回転自在に連結されている。これにより、ヒンジ151は、車両外側方向又は車両内側方向(取り外す方向及び取り付ける方向)に略180度回転できるように設定されている。
ヒンジプレート154は、その一端部154aに第3ラチェット連動レバー21の他端部21Bに連結するための連結孔154a1が形成されている。また、ヒンジプレート153の他端部154bがリンク141の一端部141aの溶接部位145と溶接連結されることで、ヒンジ151とリンク141とは連結されている。なお、ヒンジプレート153とリンク141の連結手段は、ろう付け、かしめ、ねじ留め、接着、溶着と云った他の連結手段で代用することも可能である。
第2実施形態によれば、上記作用効果(2)、(3)相当に加えて、以下の作用効果を奏し得ることができる。
(6)車外側空間S1に配置される部品(例えば、フロントラッチ機構6等)をメンテナンス等する場合には、モジュールベース16をインナーパネル2bから取り外す必要がある。しかしながら、フロントラッチ機構6とヒンジ式リンク部材140を連結した状態でモジュールベース16をインナーパネル2bから取り外すと、ヒンジ式リンク部材140のリンク141がインナーパネル2bに当接して、ヒンジ式リンク部材140のリンク141に車両内側方向へ過大な負荷が掛かることが想定される。この場合、本実施形態では、ヒンジ式リンク部材140を採用しているため、ヒンジ151が負荷の掛かった方向に回転してリンク141への負荷を吸収することができる。また、製造時等においてメンテナンスの際にフロントラッチ機構6とヒンジ式リンク部材140を連結した状態でリンク141に車両外側方向へ過大な負荷が掛かった場合でも、ヒンジ151が負荷の掛かった方向に回転してリンク141への負荷を吸収することができる。このように、ヒンジ式リンク部材140のリンク141に車両内側方向又は車両外側方向へ過大な負荷が掛かった場合には、ヒンジ151が負荷の掛かった方向に回転して負荷を吸収する。これにより、ヒンジ式リンク部材140のリンク141が塑性変形し難く、ヒンジ式リンク部材140を再利用することができる。
(7)ヒンジ151により、モジュールベース16をインナーパネル2bから取り外す方向又は取り付ける方向に対して、ヒンジ式リンク部材140を略180度回転させることができる。これにより、ヒンジ151は、板ばね51よりも広い角度に曲げられてもヒンジ式リンク部材140の塑性変形を防止して再利用を可能にすることが可能になる。更に、ヒンジ151は、板ばね51よりも剛性を上げ、高強度にすることができる。
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を詳細に説明する。
第3実施形態は、第1実施形態に対して、板ばね式リンク40をケーブル式リンク部材240(リンク部材)に変更したものであるため、ケーブル式リンク部材240以外の説明は省略する。
ケーブル式リンク部材240は、第3ラチェット連動レバー21とフロントラッチ機構6との間に配設される動力伝達部材である。すなわち、ケーブル式リンク部材240は、一端部240aが第3ラチェット連動レバー21に連結され、他端部240bがフロントラッチ機構6に連結される。ここで、インサイドドアハンドル4側の端部である一端部240aにケーブル251及び筒状部材256(変形可能部)が設けられる。
図8に示すように、ケーブル式リンク部材240は、ケーブル251(変形可能部)と、筒状部材256(補強部材、変形可能部)と、リンク241(第1リンク)と、圧着端子252(第2リンク)とを有している。
筒状部材256は、例えば円筒形状のプラスチックであり、ケーブル251の径方向(筒状部材の径方向)に向けて屈曲可能である。また、筒状部材256は、ケーブル256の軸方向への座屈を抑制する補強部材としても機能する。
リンク241は、一端部241aにリンク241の延在方向に凹む凹部243が形成されている。凹部243には、ケーブル251の一端部251aが挿入され、例えばかしめによりリンク241とケーブル251とが連結される。また、リンク241は、その他端部241bが蛇腹状(又はねじ状)に形成されており、他端部241bがフロントラッチ機構6のアーム36の一端部に形成された圧入部35に連結される。なお、他端部241bは蛇腹状(又はねじ状)に形成されているため、アーム36と板ばね式リンク40との間にてストロークの微調整が可能となっている。なお、リンク241とケーブル251との連結手段は、溶着、ろう付け、ねじ留め、接着、溶着と云った他の連結手段で代用することも可能である。
圧着端子252は、その一端部252aに第3ラチェット連動レバー21の他端部21Bに連結するための連結孔252a1が形成されている。そして、圧着端子252は、その他端部252bに、圧着端子252(リンク241)の延在方向に凹む凹部254が形成されている。凹部254には、ケーブル251の他端部251bが挿入され、例えばかしめにより圧着端子252とケーブル251とが連結される。なお、圧着端子252とケーブル251との連結手段は、溶着、ろう付け、ねじ留め、接着、溶着と云った他の連結手段で代用することも可能である。
ここで、筒状部材256は、ケーブル252の全周を覆う態様にて、圧着端子252の他端部252bとリンク241の一端部241aとに保持される。例えば、筒状部材256は、圧着端子252及びリンク241に対して接着剤等にて固定される。そして、変形可能部はケーブル251及び筒状部材256にて構成されるため、ケーブル251の径方向の全てに曲げることができる。
第3実施形態によれば、上記作用効果(2)、(3)相当に加えて、以下の作用効果を奏し得ることができる。
(8)車外側空間S1に配置される部品(例えば、フロントラッチ機構6等)をメンテナンス等する場合には、モジュールベース16をインナーパネル2bから取り外す必要がある。しかしながら、フロントラッチ機構6とケーブル式リンク部材240を連結した状態でモジュールベース16をインナーパネル2bから取り外すと、ケーブル式リンク部材240のリンク241がインナーパネル2bに当接して、ケーブル式リンク部材240のリンク241に車両内側方向へ過大な負荷が掛かることが想定される。この場合、本実施形態では、ケーブル式リンク部材240を採用しているため、ケーブル251及び筒状部材256がリンク241への負荷の掛かった方向に曲がることによってリンク241への負荷を吸収することができる。また、製造時等においてメンテナンスの際にフロントラッチ機構6とケーブル式リンク部材240を連結した状態でリンク241に車両外側方向とそれ以外の斜め方向へ過大な負荷が掛かった場合でも、ケーブル251が径方向の全てに曲がることでこれらの負荷を吸収することができる。このように、ケーブル式リンク部材240のリンク241に車両内側方向、車両外側方向又はそれ以外の斜め方向へ過大な負荷が掛かった場合には、ケーブル251が径方向の全てに曲がることでこれらの負荷を吸収する。これにより、ケーブル式リンク部材240のリンク241が塑性変形し難く、ケーブル式リンク部材240を再利用することができる。
(9)変形可能部はケーブル251及び筒状部材256である。これにより、変形可能部をケーブル251のみとするとケーブル251が軸方向に座屈するという問題が起こり得るが、ケーブル式リンク部材240を組み付ける際にケーブル251の軸方向の座屈を低減する筒状部材256により、当該座屈を低減させることができる。それゆえ、変形可能部により、ケーブル式リンク部材240の組み付け性を阻害し難くなる。
(10)筒状部材256がケーブル251の全周を覆っているため、より好適にケーブル251の軸方向の座屈を低減させることができる。
(11)筒状部材256がケーブル251の全周を覆っているため、ケーブル251に粉塵が付着することを低減できる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第1実施形態において、板ばね51は、金属ケーブル、可撓性スプリング、ポリアミド等の軟質プラスチックベルト、硬質ゴムベルト等で代用することも可能である。
・第3実施形態において、筒状部材256は筒状でないケーブル251の軸方向の座屈を低減する補強部材に置換してもよい。ただし、この場合は、上記作用効果(10),(11)を奏し得なくなる。
・第1〜3実施形態において、板ばね式リンク40をフロントラッチ機構6との連結に適用したが、例えばリアラッチ機構8との連結に適用してもよい。また、リアラッチ機構8にてスライドドア2を十分に車両ボディ1aに保持可能であれば、フロントラッチ機構6を用いなくてもよい。