以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインバータ制御装置10の適用されたシステムの構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。以降の実施形態も同様にして重複する説明を省略する。
本システムは、次のように構成されている。無効電力補償装置1は、交流母線7に接続されている。交流母線7は、送電線9によりスコット巻線変圧器11を介して交流き電回路と接続されている。インバータ制御装置10は、無効電力補償装置1を制御するように設けられている。電圧検出器8は、交流母線7の三相交流電圧Vacを検出するために設けられている。電流検出器12は、スコット巻線変圧器11に流れる三相負荷電流ILを検出するために設けられている。
無効電力補償装置1は、変圧器2、インバータ3、直流キャパシタ4、出力電流検出器5、及び直流電圧検出器6を備えている。
直流キャパシタ4は、インバータ3の直流側に接続されている。
インバータ3は、変圧器2を介して交流母線7に接続されている。インバータ3は、直流キャパシタ4により印加される直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ3は、変換した交流電力を、変圧器2を介して交流母線7に出力する。なお、インバータ3は、三相ブリッジ回路で構成されていてもよいし、3台の単相ブリッジ回路を備えるインバータで構成されていてもよい。
変圧器2は、インバータ3から出力される三相交流電圧を変圧して、交流母線7に出力する。例えば、変圧器2は、Y結線又は△結線などの三相変圧器である。
出力電流検出器5は、インバータ3から出力される三相交流電流Iinvを検出する。出力電流検出器5は、検出したインバータ三相出力電流Iinvをインバータ制御装置10に出力する。
直流電圧検出器6は、直流キャパシタ4に印加される直流電圧Vdcを検出する。直流電圧検出器6は、検出した直流電圧Vdcをインバータ制御装置10に出力する。
電圧検出器8は、交流母線7の三相交流電圧Vacを検出する。三相交流電圧Vacは、U相電圧Vu、V相電圧Vv、及びW相電圧Vwからなる。電圧検出器8は、検出した三相交流電圧Vacをインバータ制御装置10に出力する。
電流検出器12は、スコット巻線変圧器11に流れる三相負荷電流IL(U相負荷電流ILu、V相負荷電流ILv、W相負荷電流ILw)を検出する。電流検出器12は、検出した三相負荷電流ILをインバータ制御装置10に出力する。
スコット巻線変圧器11の一次側は、送電線9により交流母線7に接続されている。スコット巻線変圧器11の二次側は、交流き電回路と接続されている。スコット巻線変圧器11は、三相交流電圧Vac(U相電圧Vu、V相電圧Vv、W相電圧Vw)を90°の電圧位相差のあるT座とM座の2組の単相交流電圧に変換する。
インバータ制御装置10は、出力電流検出器5により検出された出力電流Iinv、電圧検出器8により検出された三相交流電圧Vac、電流検出器12により検出された三相負荷電流ILに基づいて、負荷電流の逆相成分と正相無効成分を補償するように、インバータ3を制御する。また、インバータ制御装置10は、インバータ3の直流電圧Vdcが所望の値で一定になるように制御する。
図2を参照して、スコット巻線変圧器11について説明する。
U端子、V端子、及びW端子は、それぞれ120°の位相差をもつ三相交流の各相端子を示している。N端子は、U端子とW端子との中間点にある。U端子とW端子間の巻線には、三相のUW相間電圧が印加される。V端子とN端子間の巻線には、U端子とW端子間の巻線に印加される電圧の√3/2倍の電圧が印加される。また、V端子とN端子間の巻数もU端子とW端子間の巻数の√3/2倍である。各巻線の2次側には90°の位相差のある2組の単相電圧VM(M座電圧)、VT(T座電圧)が発生する。M座とT座に同じ大きさの負荷があれば、三相平衡した正相電流が流れる。一方、M座とT座の負荷の大きさが異なる場合、三相不平衡電流となる。三相不平衡電流では、逆相成分を含んだ電流が流れる。
インバータ制御装置10は、変換器制御回路21、パルス発生回路22、直流電圧制御回路23、負荷電流MT変換回路24、M座負荷電流dq変換回路25M、T座負荷電流dq変換回路25T、電流指令値制限回路26、及び加算器27Mdを備えている。
負荷電流MT変換回路24には、電流検出器12により検出された三相負荷電流ILが入力される。負荷電流MT変換回路24は、電流検出器12により検出された三相負荷電流ILを、M座負荷電流ILMα,ILMβ及びT座負荷電流ILTα,ILTβに変換する。M座負荷電流ILMαは、スコット巻線変圧器11の二次側に流れるM座相当の負荷電流である。M座負荷電流ILMβは、M座負荷電流ILMαに対して90°遅延した電流である。T座負荷電流ILTαは、スコット巻線変圧器11の二次側に流れるT座相当の負荷電流である。T座負荷電流ILTβは、T座負荷電流ILTαに対して90°遅延した電流である。負荷電流MT変換回路24は、演算したM座負荷電流ILMα,ILMβ及びT座負荷電流ILTα,ILTβをそれぞれM座負荷電流dq変換回路25M及びT座負荷電流dq変換回路25Tに出力する。
負荷電流MT変換回路24は、次式により、M座負荷電流ILMα,ILMβ及びT座負荷電流ILTα,ILTβを求める。
ILMα=(ILu−ILw)/2、ILMβ=ILMαの90°遅延 …(1)
ILTα=ILv×√3/2、ILTβ=ILTαの90°遅延 …(2)
M座負荷電流dq変換回路25Mには、変換器制御回路21のM座位相検出回路37Mにより検出されたM座電圧の位相θM及び負荷電流MT変換回路24により演算されたM座負荷電流ILMα,ILMβが入力される。M座負荷電流dq変換回路25Mは、M座負荷電流ILMα,ILMβを、M座電圧の位相θMを用いて、M座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMqに変換する。M座負荷電流dq変換回路25Mは、演算したM座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMqを電流指令値制限回路26に出力する。
ここで、M座負荷電流のd軸成分ILMdは、M座の有効電力相当の負荷電流である。M座負荷電流のq軸成分ILMqは、M座の無効電力相当の負荷電流である。また、M座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMqは、定常状態では直流信号である。
T座負荷電流dq変換回路25Tには、変換器制御回路21のT座位相検出回路37Tにより検出されたT座電圧の位相θT及び負荷電流MT変換回路24により演算されたT座負荷電流ILTα,ILTβが入力される。T座負荷電流dq変換回路25Tは、T座負荷電流ILTα,ILTβを、T座電圧の位相θTを用いて、T座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqに変換する。T座負荷電流dq変換回路25Tは、演算したT座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqを電流指令値制限回路26に出力する。
ここで、T座負荷電流のd軸成分ILTdは、T座の有効電力相当の負荷電流である。T座負荷電流のq軸成分ILTqは、T座の無効電力相当の負荷電流である。また、T座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqは、定常状態では直流信号である。
M座負荷電流dq変換回路25M及びT座負荷電流dq変換回路25Tは、次式により、dq変換を行う。
ILMd=ILMα×cosθM+ILMβ×sinθM …(3)
ILMq=ILMα×sinθM−ILMβ×cosθM …(4)
ILTd=ILTα×cosθT+ILTβ×sinθT …(5)
ILTq=ILTα×sinθT−ILTβ×cosθT …(6)
直流電圧制御回路23には、直流電圧検出器6により検出された直流電圧Vdcが入力される。直流電圧制御回路23は、入力された直流電圧Vdcに基づいて、インバータ3の直流電圧Vdcが所望の値で一定になるようなM座有効電流指令値IMdrefvを演算する。M座有効電流指令値IMdrefvは、M座の有効電流を制御するための指令値である。直流電圧制御回路23は、演算したM座有効電流指令値IMdrefvを加算器27Mdに出力する。
ここで、無効電力補償装置1の直流回路には直流キャパシタ4が設置されているだけであり、電源は設けられていない。このため、無効電力補償装置1は、有効電力を交流系統に供給する動作をすることはできない。そこで、直流電圧制御回路23は、直流電圧Vdcを一定に維持するために、インバータ3及び変圧器2の損失を補償するだけの小さな有効電力をインバータ3の交流側から直流側へ吸収するように制御する。ここでは、直流電圧制御回路23は、M座有効電流指令値IMdrefに加算するための値として演算したが、T座有効電流指令値ITdrefに加算するための値としてもよいし、両方の有効電流指令値IMdref,ITdrefに加算するための値としてもよい。
電流指令値制限回路26には、M座負荷電流dq変換回路25Mにより演算されたM座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMq及びT座負荷電流dq変換回路25Tにより演算されたT座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqが入力される。電流指令値制限回路26は、M座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMq及びT座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqに基づいて、インバータ3の出力容量の範囲内になるように制限された4つの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefを生成する。
M座有効電流指令値IMdrefは、M座の有効電流を制御するための指令値である。M座無効電流指令値IMqrefは、M座の無効電流を制御するための指令値である。T座有効電流指令値ITdrefは、T座の有効電流を制御するための指令値である。T座無効電流指令値ITqrefは、T座の無効電流を制御するための指令値である。
電流指令値制限回路26は、T座有効電流指令値ITdref、M座無効電流指令値IMqref、及びT座無効電流指令値ITqrefを変換器制御回路21に出力する。電流指令値制限回路26は、M座有効電流指令値IMdrefを加算器27Mdに出力する。
加算器27Mdには、電流指令値制限回路26により生成されたM座有効電流指令値IMdref及び直流電圧制御回路23により演算されたM座有効電流指令値IMdrefvが入力される。加算器27Mdは、入力された2つのM座有効電流指令値IMdrefv,M座有効電流指令値IMdrefを加算する。加算器27Mdは、加算したM座有効電流指令値IMdref1を変換器制御回路21に出力する。
変換器制御回路21には、出力電流検出器5により検出されたインバータ出力電流Iinv、電圧検出器8により検出された三相交流電圧Vac、加算器27Mdにより演算されたM座有効電流指令値IMdref1、及び電流指令値制限回路26により演算されたM座無効電流指令値IMqref、T座有効電流指令値ITdref並びにT座無効電流指令値ITqrefが入力される。
変換器制御回路21は、インバータ出力電流Iinv、三相交流電圧Vac、M座有効電流指令値IMdref1、T座有効電流指令値ITdref、M座無効電流指令値IMqref、T座無効電流指令値ITqrefに基づいて、インバータ出力三相電圧信号Vinvを演算する。インバータ出力三相電圧信号Vinvは、インバータ3から出力させる三相交流電圧Vacを制御するための指令値である。インバータ3は、インバータ出力三相電圧信号Vinvに従って三相交流電圧Vacを出力することで、インバータ出力三相電圧信号VinvのM座有効電流成分IMd、M座無効電流成分IMq、T座有効電流成分ITd、及びT座無効電流成分ITqがそれぞれの電流指令値IMdref1,ITdref,IMqref,ITqrefに等しくなるように制御される。インバータ出力三相電圧信号Vinvには、インバータ3から出力させる電圧の各相電圧に対する指令値が含まれている。変換器制御回路21は、演算したインバータ出力三相電圧信号Vinvをパルス発生回路22に出力する。
パルス発生回路22は、インバータ出力電圧が変換器制御回路21により演算されたインバータ出力三相電圧信号Vinvになるようなスイッチングパルス信号Psを出力する。パルス発生回路22から出力されるスイッチングパルス信号Psにより、インバータ3のスイッチング素子が駆動する。これにより、インバータ3の出力電圧が制御される。
図3は、本実施形態に係る変換器制御回路21の構成を示す構成図である。
変換器制御回路21は、電流MT変換回路31、M座電流dq変換回路32M、T座電流dq変換回路32T、4つの減算器33Md,33Mq,33Td,33Tq、M座電流制御回路34M、T座電流制御回路34T、4つの加算器35Md,35Mq,35Td,35Tq、電圧MT変換回路36、M座位相検出回路37M、T座位相検出回路37T、M座電圧dq変換回路38M、T座電圧dq変換回路38T、M座逆dq変換回路39M、T座逆dq変換回路39T、及び逆MT変換回路40を備えている。
電流MT変換回路31は、インバータ出力電流Iinvを、M座電流IMα,IMβ及びT座電流ITα,ITβに変換する。M座電流IMαは、スコット巻線変圧器11の二次側に流れるM座相当の電流である。M座電流IMβは、M座電流IMαに対して90°遅延した電流である。T座電流ITαは、スコット巻線変圧器11の二次側に流れるT座相当の電流である。T座電流ITβは、T座電流ITαに対して90°遅延した電流である。電流MT変換回路31は、演算したM座電流IMα,IMβ及びT座電流ITα,ITβをそれぞれM座電流dq変換回路32M及びT座電流dq変換回路32Tに出力する。
電流MT変換回路31は、次式により、M座電流IMα,IMβ及びT座電流ITα,ITβを求める。ここで、インバータ出力電流Iinvは、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの各相電流からなるものとする。
IMα=(Iu−Iw)/2、IMβ=IMαの90°遅延 …(7)
ITα=Iv×√3/2、ITβ=ITαの90°遅延 …(8)
電圧MT変換回路36は、三相交流電圧VacをM座電圧VMα,VMβ及びT座電圧VTα,VTβに変換する。
電圧MT変換回路36は、次式により、M座電圧VM及びT座電圧VTを求める。ここで、電流及び電圧の各相の対応関係については、図2に示すスコット巻線変圧器11の巻線構成の通りである。
VM=Vu−Vw、VT=(2×Vv−Vu−Vw)/√3 …(9)
M座電圧VMαは、上式により求めたM座電圧VMと同じである。M座電圧VMβは、M座電圧VMαに対して90°遅延した電圧である。T座電圧VTαは、上式により求めたT座電圧VTと同じである。T座電圧VTβは、T座電圧VTαに対して90°遅延した電圧である。
電圧MT変換回路36は、演算したM座電圧VMα,VMβをM座位相検出回路37M及びM座電圧dq変換回路38Mに出力する。電圧MT変換回路36は、演算したT座電圧VTα,VTβをT座位相検出回路37T及びT座電圧dq変換回路38Tに出力する。
電圧MT変換回路36は、次式により、M座電圧VMα,VMβ及びT座電圧VTα,VTβを求める。
VMα=Vu−Vw、VMβ=VMαの90°遅延 …(10)
VTα=(2×Vv−Vu−Vw)/√3、VTβ=VTαの90°遅延 …(11)
M座位相検出回路37Mは、電圧MT変換回路36により演算されたM座電圧VMα,VMβに基づいて、M座電圧の位相θMを検出する。M座位相検出回路37Mは、検出したM座電圧の位相θMをM座電流dq変換回路32M及びM座逆dq変換回路39Mに出力する。
T座位相検出回路37Tは、電圧MT変換回路36により演算されたT座電圧VTα,VTβに基づいて、T座電圧の位相θTを検出する。T座位相検出回路37Tは、検出したT座電圧の位相θTをT座電流dq変換回路32T及びT座逆dq変換回路39Tに出力する。
M座電流dq変換回路32Mは、電流MT変換回路31により演算されたM座電流IMα,IMβを、M座位相検出回路37Mにより検出されたM座電圧の位相θMを用いて、M座電流のdq軸成分IMd,IMqに変換する。M座電流dq変換回路32Mは、演算したM座電流のdq軸成分IMd,IMqをそれぞれ減算器33Md,33Mqに出力する。
ここで、M座電流のd軸成分IMdは、M座の有効電力相当の電流である。M座電流のq軸成分IMqは、M座の無効電力相当の電流である。また、M座電流のdq軸成分IMd,IMqは、定常状態では直流信号である。
T座電流dq変換回路32Tは、電流MT変換回路31により演算されたT座電流ITα,ITβを、T座位相検出回路37Tにより検出されたT座電圧の位相θTを用いて、T座電流のdq軸成分ITd,ITqに変換する。T座電流dq変換回路32Tは、演算したT座電流のdq軸成分ITd,ITqをそれぞれ減算器33Td,33Tqに出力する。
ここで、T座電流のd軸成分ITdは、T座の有効電力相当の電流である。T座電流のq軸成分ITqは、T座の無効電力相当の電流である。また、T座電流のdq軸成分ITd,ITqは、定常状態では直流信号である。
減算器33Mdには、加算器27Mdにより演算されたM座有効電流指令値IMdref1及びM座電流dq変換回路32Mにより演算されたM座電流のd軸成分IMdが入力される。減算器33Mdは、M座有効電流指令値IMdref1からM座電流のd軸成分IMdを減算して、M座電流d軸差分ΔIMdを求める。減算器33Mdは、演算したM座電流d軸差分ΔIMdをM座電流制御回路34Mに出力する。
減算器33Mqには、電流指令値制限回路26により演算されたM座無効電流指令値IMqref及びM座電流dq変換回路32Mにより演算されたM座電流のq軸成分IMqが入力される。減算器33Mqは、M座無効電流指令値IMqrefからM座電流のq軸成分IMqを減算して、M座電流q軸差分ΔIMqを求める。減算器33Mqは、演算したM座電流q軸差分ΔIMqをM座電流制御回路34Mに出力する。
減算器33Tdには、電流指令値制限回路26により演算されたT座有効電流指令値ITdref及びT座電流dq変換回路32Tにより演算されたT座電流のd軸成分ITdが入力される。減算器33Tdは、T座有効電流指令値ITdrefからT座電流のd軸成分ITdを減算して、T座電流d軸差分ΔITdを求める。減算器33Tdは、演算したT座電流d軸差分ΔITdをT座電流制御回路34Tに出力する。
減算器33Tqには、電流指令値制限回路26により演算されたT座無効電流指令値ITqref及びT座電流dq変換回路32Tにより演算されたT座電流のq軸成分ITqが入力される。減算器33Tqは、T座無効電流指令値ITqrefからT座電流のq軸成分ITqを減算して、T座電流q軸差分ΔITqを求める。減算器33Tqは、演算したT座電流q軸差分ΔITqをT座電流制御回路34Tに出力する。
M座電流制御回路34Mは、減算器33Mdにより演算されたM座電流d軸差分ΔIMd及び減算器33Mqにより演算されたM座電流q軸差分ΔIMqが入力される。M座電流制御回路34Mは、M座電流d軸差分ΔIMd及びM座電流q軸差分ΔIMqがそれぞれゼロに近づくような値を演算する。例えば、M座電流制御回路34Mは、1次遅れ回路又は比例積分回路などである。M座電流制御回路34Mは、演算した値のdq軸成分をそれぞれ加算器35Md,35Mqに出力する。
T座電流制御回路34Tは、減算器33Tdにより演算されたT座電流d軸差分ΔITd及び減算器33Tqにより演算されたT座電流q軸差分ΔITqが入力される。T座電流制御回路34Tは、T座電流d軸差分ΔITd及びT座電流q軸差分ΔITqがそれぞれゼロに近づくような値を演算する。例えば、T座電流制御回路34Tは、1次遅れ回路又は比例積分回路などである。T座電流制御回路34Tは、演算した値のdq軸成分をそれぞれ加算器35Td,35Tqに出力する。
M座電圧dq変換回路38Mは、電圧MT変換回路36により演算されたM座電圧VMα,VMβを、M座位相検出回路37Mにより検出されたM座電圧の位相θMを用いて、M座電圧のdq軸成分VMd,VMqに変換する。M座電圧dq変換回路38Mは、演算したM座電圧のdq軸成分VMd,VMqをそれぞれ加算器35Md,35Mqに出力する。
ここで、M座電圧のd軸成分VMdは、M座の有効電力相当の電圧である。M座電圧のq軸成分VMqは、M座の無効電力相当の電圧である。また、M座電圧のdq軸成分VMd,VMqは、定常状態では直流信号である。
T座電圧dq変換回路38Tは、電圧MT変換回路36により演算されたT座電圧VTα,VTβを、T座位相検出回路37Tにより検出されたT座電圧の位相θTを用いて、T座電圧のdq軸成分VTd,VTqに変換する。T座電圧dq変換回路38Tは、演算したT座電圧のdq軸成分VTd,VTqをそれぞれ加算器35Td,35Tqに出力する。
ここで、T座電圧のd軸成分VTdは、T座の有効電力相当の電圧である。T座電圧のq軸成分VTqは、T座の無効電力相当の電圧である。また、T座電圧のdq軸成分VTd,VTqは、定常状態では直流信号である。
加算器35Mdは、M座電圧dq変換回路38Mにより演算されたM座電圧のd軸成分VMdに、M座電流制御回路34Mにより演算された値のd軸成分を加算して、M座有効電圧信号VIMdを求める。加算器35Mdは、演算したM座有効電圧信号VIMdをM座逆dq変換回路39Mに出力する。
加算器35Mqは、M座電圧dq変換回路38Mにより演算されたM座電圧のq軸成分VMqに、M座電流制御回路34Mにより演算された値のq軸成分を加算して、M座無効電圧信号VIMqを求める。加算器35Mqは、演算したM座無効電圧信号VIMqをM座逆dq変換回路39Mに出力する。
加算器35Tdは、T座電圧dq変換回路38Tにより演算されたT座電圧のd軸成分VTdに、T座電流制御回路34Tにより演算された値のd軸成分を加算して、T座有効電圧信号VITdを求める。加算器35Tdは、演算したT座有効電圧信号VITdをT座逆dq変換回路39Tに出力する。
加算器35Tqは、T座電圧dq変換回路38Tにより演算されたT座電圧のq軸成分VTqに、T座電流制御回路34Tにより演算された値のq軸成分を加算して、T座無効電圧信号VITqを求める。加算器35Tqは、演算したT座無効電圧信号VITqをT座逆dq変換回路39Tに出力する。
M座逆dq変換回路39Mには、加算器35Mdにより演算されたM座有効電圧信号VIMd、加算器35Mqにより演算されたM座無効電圧信号VIMq、及びM座位相検出回路37Mにより検出されたM座電圧の位相θMが入力される。M座逆dq変換回路39Mは、M座有効電圧信号VIMd及びM座無効電圧信号VIMqをM座電圧の位相θMを用いて逆dq軸変換することにより、M座単相交流電圧信号VIMを求める。M座逆dq変換回路39Mは、演算したM座単相交流電圧信号VIMを逆MT変換回路40に出力する。
T座逆dq変換回路39Tには、加算器35Tdにより演算されたT座有効電圧信号VITd、加算器35Tqにより演算されたT座無効電圧信号VITq、及びT座位相検出回路37Tにより検出されたT座電圧の位相θTが入力される。T座逆dq変換回路39Tは、T座有効電圧信号VITd及びT座無効電圧信号VITqをT座電圧の位相θTを用いて逆dq軸変換することにより、T座単相交流電圧信号VITを求める。T座逆dq変換回路39Tは、演算したT座単相交流電圧信号VITを逆MT変換回路40に出力する。
M座逆dq変換回路39M及びT座逆dq変換回路39Tは、次式により、逆dq変換を行う。
VIM=VIMd×cosθM+VIMq×sinθM …(12)
VIT=VITd×cosθT+VITq×sinθM …(13)
逆MT変換回路40には、M座逆dq変換回路39Mにより演算されたM座単相交流電圧信号VIM及びT座逆dq変換回路39Tにより演算されたT座単相交流電圧信号VITが入力される。逆MT変換回路40は、M座単相交流電圧信号VIM及びT座単相交流電圧信号VITを三相交流電圧信号Vinvに変換する。逆MT変換回路40は、演算した三相交流電圧信号Vinvをインバータ出力三相電圧信号Vinvとしてパルス発生回路22に出力する。
逆MT変換回路40は、次式により、逆MT変換を行う。ここで、インバータ3の各相ブリッジは、相間に接続されるため、三相交流電圧信号Vinvは、UV相間電圧信号VIuv、VW相間電圧信号VIvw、及びWU相間電圧信号VIwuからなる。
VIuv=VIu−VIv=(VIM−√3×VIT)/2、VIvw=VIv−VIw=(VIM+√3×VIT)/2、VIwu=VIw−VIu=−VIM …(14)
図4は、本実施形態に係る電流指令値制限回路26の構成を示す構成図である。
電流指令値制限回路26は、逆相成分演算回路261、正相無効成分演算回路262、皮相値演算回路263、2つのリミッタ回路264N,264qP、2つの除算器265d,265q、リミット値演算回路266、符号反転回路267、加算器268、及び減算器269を備えている。
逆相成分演算回路261には、M座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMq及びT座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqが入力される。逆相成分演算回路261は、次式により、M座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMq及びT座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqから負荷電流の逆相有効成分ILdN及び逆相無効成分ILqNを演算する。逆相成分演算回路261は、演算した負荷電流の逆相有効成分ILdN及び逆相無効成分ILqNをそれぞれ2つの除算器265d,265qに出力する。また、逆相成分演算回路261は、演算した負荷電流の逆相有効成分ILdN及び逆相無効成分ILqNを皮相値演算回路263に出力する。
ILdN=(ILMd−ILTd)/2 …(15)
ILqN=(ILMq−ILTq)/2 …(16)
皮相値演算回路263は、次式により、逆相成分演算回路261により演算された負荷電流の逆相有効成分ILdN及び逆相無効成分ILqNから逆相電流皮相値ILNを演算する。皮相値演算回路263は、演算した逆相電流皮相値ILNをリミッタ回路264Nに出力する。
リミッタ回路264Nは、皮相値演算回路263により演算された逆相電流皮相値ILNを予め設定されているリミット値1[p.u.]以上の値に制限する。具体的には、逆相電流皮相値ILNが1[p.u.]未満であれば1[p.u.]にし、逆相電流皮相値ILNが1[p.u.]以上であればそのままの値を出力する。リミッタ回路264Nは、1[p.u.]以上に制限した逆相電流皮相値ILNlimを2つの除算器265d,265qに出力する。
除算器265dには、逆相成分演算回路261により演算された負荷電流の逆相有効成分ILdN及びリミッタ回路264Nにより制限された逆相電流皮相値ILNlimが入力される。除算器265dは、逆相有効成分ILdNを逆相電流皮相値ILNlimで除算して逆相有効成分IdNを求める。除算器265dは、演算した逆相有効成分IdNをリミット値演算回路266に出力する。逆相有効成分IdNは、無効電力補償装置1により補償する負荷電流の逆相有効成分となる。
逆相有効成分IdNは、そのままM座有効電流指令値IMdrefとなる。符号反転回路267により逆相有効成分IdNの符号を反転させた値は、T座有効電流指令値ITdrefとなる。M座有効電流指令値IMdref及びT座有効電流指令値ITdrefは、変換器制御回路21に出力される。
除算器265qには、逆相成分演算回路261により演算された負荷電流の逆相無効成分ILqN及びリミッタ回路264Nにより制限された逆相電流皮相値ILNlimが入力される。除算器265qは、逆相無効成分ILqNを逆相電流皮相値ILNlimで除算して逆相無効成分IqNを求める。除算器265qは、演算した逆相無効成分IqNをリミット値演算回路266、加算器268及び減算器269に出力する。逆相無効成分IqNは、無効電力補償装置1により補償する負荷電流の逆相無効成分となる。
リミット値演算回路266には、2つの除算器265d,265qによりそれぞれ演算された補償する負荷電流の逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNが入力される。リミット値演算回路266は、次式により、補償する負荷電流の逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNからリミッタ回路264qPで用いる上下限リミット値(p.u.値)を演算する。リミット値演算回路266は、演算した上下限リミット値をリミッタ回路264qPに設定する。
上下限リミット値=±MIN(リミット値1、リミット値2) …式(20)
ここで、MINは、最小値を選択する関数である。
正相無効成分演算回路262には、M座負荷電流のq軸成分ILMq及びT座負荷電流のq軸成分ILTqが入力される。正相無効成分演算回路262は、次式により、M座負荷電流のq軸成分ILMq及びT座負荷電流のq軸成分ILTqから負荷電流の正相無効成分ILqPを演算する。正相無効成分演算回路262は、演算した負荷電流の正相無効成分ILqPをリミッタ回路264qPに出力する。
ILqP=(ILMq+ILTq)/2 …式(21)
リミッタ回路264qPは、正相無効成分演算回路262により演算された負荷電流の正相無効成分ILqPを、リミット値演算回路266により演算された上下限リミット値の範囲内に制限する。リミッタ回路264qPは、制限した正相無効成分IqPを加算器268及び減算器269に出力する。制限された正相無効成分IqPは、無効電力補償装置1により補償する負荷電流の正相無効成分となる。
加算器268には、除算器265qにより演算された逆相無効成分IqN及びリミッタ回路264qPにより制限された正相無効成分IqPが入力される。加算器268は、逆相無効成分IqNと正相無効成分IqPを加算してM座無効電流指令値IMqrefを求める。加算器268は、演算したM座無効電流指令値IMqrefを変換器制御回路21に出力する。
減算器269には、除算器265qにより演算された逆相無効成分IqN及びリミッタ回路264qPにより制限された負荷電流の正相無効成分IqPが入力される。減算器269は、負荷電流の正相無効成分IqPから逆相無効成分IqNを減算してT座無効電流指令値ITqrefを求める。減算器269には、演算したT座無効電流指令値ITqrefを変換器制御回路21に出力する。
従って、補償する負荷電流の逆相有効成分IdN、逆相無効成分IqN及び正相無効成分IqPと、4つの電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefとの関係は、次式のようになる。
IMdref=IdN …式(22)
ITdref=−IdN …式(23)
IMqref=IqP+IqN …式(24)
ITqref=IqP−IqN …式(25)
ここで、電流指令値制限回路26による電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefの制限方法について説明する。
インバータ制御装置10では、M座電流IMとT座電流ITをそれぞれ個別に制御するために、M座電流指令値IMdref,IMqrefとT座電流指令値ITdref,ITqrefを別々に演算している。
しかし、M座電流指令値IMdref,IMqrefとT座電流指令値ITdref,ITqrefがそれぞれ定格(1[p.u.])電流以下であっても、逆MT変換により、三相量に変換した場合、M座電流IMとT座電流ITの位相の条件によっては、インバータ3の三相出力電流Iinvが最大1.37[p.u.]の大きさになる可能性がある。
図5から図7は、スコット巻線変圧器11のT座電流IT、M座電流IM、及び三相電流X(U相、W相)の関係を示すベクトル図である。図5は、T座電流ITとM座電流IMとの一般的な位相差θにおける関係を示している。図6は、T座電流ITとM座電流IMとの位相差θが0°のときの関係を示している。図7は、T座電流ITとM座電流IMとの位相差θが90°のときの関係を示している。
また、三相電流Iu,Iv,Iw、M座電流IM、及びT座電流ITをp.u.値で表したベクトル式は、次のようになる。
上式のU相電流Iu及びV相電流Ivのそれぞれのベクトルの大きさは、図5に示すベクトルXの大きさである。これを式で表すと、次式のようになる。
式(26)より、M座電流IMとT座電流ITがそれぞれ−1[p.u.]から1[p.u.]の範囲で変化する場合、V相電流Ivの大きさは各電流IM,ITの位相に関係なく1[p.u.]以下である。
それに対し、式(27)から、U相電流Iu、W相電流Iwの大きさはM座電流IMとT座電流ITの位相差θが0°あるいは180°で大きさが1[p.u.]の場合、図6に示すように、1.37[p.u.]になることがわかる。
一方、M座電流IMとT座電流ITの大きさが1[p.u.]であっても、位相差が90°であれば、U相電流Iu、W相電流Iwの大きさは1[p.u.]である。
M座電流IMとT座電流ITは、力率が同じであれば、位相差θは90°である。例えば、位相差θが90°になる場合としては、M座電流IMとT座電流ITがともに有効電流成分のみの場合が考えられる。
M座電流IMとT座電流ITの位相差θが0°あるいは180°となるのは、例えば、M座電流IMが有効電流成分のみであり、かつT座電流ITが無効電流成分のみの場合である。または、M座とT座の有効電力の大きさが同じで向きが逆であり、さらに無効電力の大きさが有効電力と等しく、かつM座とT座の無効電力の向きが同じの場合も、位相差θが0°あるいは180°となる。
このように、M座電流IMとT座電流ITをそれぞれ定格値以下に制御していても、その位相差θによっては、インバータ3の三相出力電流Iinvが定格値を超える(即ち、過電流になる)可能性がある。
従って、電流指令値制限回路26では、インバータ3の三相出力電流Iinvが定格値を超えないようにするために、以下のような制御をする。
まず、皮相値演算回路263、リミッタ回路264N、及び2つの除算器265d,265qの構成により、補償する逆相電流の有効成分IdN及び無効成分IqNの合計が1[p.u.]を超えないようにする。
このように補償する逆相電流の有効成分IdN及び無効成分IqNを決定した後に、リミット値演算回路266により、式(18)〜式(20)を用いて、インバータ3の三相出力電流Iinvが1[p.u.]以下で補償することのできる正相無効電流IqPの最大値及び最小値を求める。この最大値及び最小値がリミッタ回路264qPの上下限リミット値となる。
正相無効成分演算回路262により演算された負荷電流の正相無効成分ILqPは、この上下限リミット値の範囲内になるようにリミッタ回路264qPにより制限される。この制限された値が補償する正相無効電流IqPとなる。
このようにして演算された補償する逆相有効電流IdN、逆相無効電流IqN、及び正相無効電流IqPを、T座電流ITとM座電流との間で融通するように、電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefが決定される。
次に、電流指令値制限回路26による演算処理について説明する。
まず、負荷電流の逆相成分ILdN,ILqN及び正相無効成分ILqPが、インバータ3の定格容量に対して充分小さい場合について説明する。具体的には、M座負荷電流の有効(d軸)成分ILMd=1.2[p.u.]、T座負荷電流の有効(d軸)成分ILTd=0.4[p.u.]、M座負荷電流の無効(q軸)成分ILMq=−0.1[p.u.]、T座負荷電流の無効(q軸)成分ILTq=0.5[p.u.]とする。
式(15)、式(16)及び式(21)より、逆相有効成分ILdN=0.4[p.u.]、逆相無効成分ILqN=−0.3[p.u.]、正相無効成分ILqP=0.2[p.u.]となる。
皮相値演算回路263により演算される逆相電流皮相値ILNは、式(17)より√(0.4)^2+(−0.3)^2)=0.5[p.u.]となる。従って、リミッタ回路264Nの出力は1.0[p.u.]となる。このため、除算器265d,265qからそれぞれ出力される補償する逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNは、検出された負荷電流の逆相有効成分ILdN及び無効成分ILqNと等しくなる。即ち、逆相有効成分IdN=0.4[p.u.]、逆相無効成分IqN=−0.3[p.u.]となる。
リミット値演算回路266は、補償する逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNを式(18)〜式(20)を用いてリミット値を求めると、リミット値1=0.502、リミット値2=0.692、上下限リミット値=±0.502[p.u.]となる。
検出された負荷電流の正相無効成分ILqP=0.2[p.u.]は、この上下限リミット値の範囲内である。従って、リミッタ回路264qPから出力される補償する正相無効成分IqPは、検出された負荷電流の正相無効成分ILqPと等しくなる。
このように演算された補償する逆相有効成分IdN、逆相無効成分IqN及び正相無効成分IqPを使用して電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefが演算される。インバータ制御装置10は、インバータ3の出力電流をこれらの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefと等しくなるように制御する。これにより、無効電力補償装置1のインバータ3は、負荷電流の逆相有効成分と逆相無効成分と正相無効成分を100%補償するように運転する。このとき、インバータ3の三相出力電流Iinvは、1[p.u.]以下である。これにより、無効電力補償装置1と隣接する交流電源からは、正相有効電力のみが供給される。
次に、負荷電流の逆相成分ILdN,ILqNがインバータ3の定格容量に対して充分小さく、負荷電流の正相無効成分ILqPが大きい場合について説明する。具体的には、負荷電流ILのそれぞれの成分は、逆相有効成分ILdN=0.4[p.u.]、逆相無効成分ILqN=−0.3[p.u.]、正相無効成分ILqP=−0.8[p.u.]とする。
皮相値演算回路263により演算される逆相電流皮相値ILNは、0.5[p.u.]となる。従って、リミッタ回路264Nの出力は1.0[p.u.]となる。このため、除算器265d,265qからそれぞれ出力される補償する逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNは、検出された負荷電流の逆相有効成分ILdN及び逆相無効成分ILqNと等しくなる。即ち、逆相有効成分IdN=0.4[p.u.]、逆相無効成分IqN=−0.3[p.u.]となる。
補償する逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNからリミット値演算回路266で求められるリミッタ回路264qPの上下限リミット値は±0.502[p.u.]となる。これにより、検出された負荷電流の正相無効成分ILqP=−0.8[p.u.]は、−0.502[p.u.]のリミット値で制限される。従って、補償する正相無効成分IqPは、負荷電流の正相無効成分ILqPより小さな値となる。
このように演算された補償する逆相有効成分IdN、逆相無効成分IqN及び正相無効成分IqPを使用して電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefが演算される。インバータ制御装置10は、インバータ3の出力電流をこれらの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefと等しくなるように制御する。これにより、無効電力補償装置1のインバータ3は、負荷電流の逆相有効成分と逆相無効成分100%補償し、正相無効成分を約60%補償するように運転する。このとき、インバータ3の三相出力電流Iinvは、1[p.u.]以下である。これにより、無効電力補償装置1と隣接する交流電源からは、正相有効電力と正相無効電力の一部が供給される。
次に、負荷電流の逆相成分ILdN,ILqNがインバータ3の定格容量よりも大きい場合について説明する。具体的には、負荷電流ILのそれぞれの成分は、逆相有効成分ILdN=−1.6[p.u.]、逆相無効成分ILqN=1.2[p.u.]、正相無効成分ILqP=0.2[p.u.]とする。
皮相値演算回路263により演算される逆相電流皮相値ILNは、2.0[p.u.]となる。従って、リミッタ回路264Nの出力は2.0[p.u.]となる。このため、除算器265d,265qからそれぞれ出力される補償する逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNは、逆相有効成分IdN=−0.8[p.u.]、逆相無効成分IqN=0.6[p.u.]となる。
補償する逆相有効成分IdN及び逆相無効成分IqNからリミット値演算回路266で求められるリミッタ回路264qPの上下限リミット値は±0.0[p.u.]となる。これにより、補償する正相無効成分IqPは、負荷電流の正相無効成分ILqPの値に関わらずゼロになる。
このように演算された補償する逆相有効成分IdN、逆相無効成分IqN及び正相無効成分IqPを使用して電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefが演算される。インバータ制御装置10は、インバータ3の出力電流をこれらの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefと等しくなるように制御する。これにより、無効電力補償装置1のインバータ3は、負荷電流の逆相有効成分と逆相無効成分の一部を補償するように運転する。このとき、インバータ3の三相出力電流Iinvは、最大値の1[p.u.]である。
さらに、上記3つのいずれの負荷条件においても、直流電圧制御回路23から出力されるM座有効電流指令値IMdrefvに上記で演算したM座有効電流指令値IMdrefを加算することで、インバータ3の直流電圧Vdcを一定に維持するよう制御を行う。
本実施形態によれば、スコット巻線変圧器11により三相交流電圧Vacから変換されたM座電圧VM及びT座電圧VTを個別に制御することができる。
また、負荷電流ILに含まれる逆相成分をインバータ3の定格電流内で最大限に補償することで、交流電源に流れる逆相電流を低減することができる。
さらに、逆相成分の補償をしても、インバータ3の三相出力電流Iinvの大きさが定格に対して余裕がある場合には、定格値を超えない範囲で、負荷電流の正相無効成分ILqPを補償することができる。これにより、電圧変動を抑制することができる。
また、直流電圧制御回路23から出力されるM座有効電流指令値IMdrefvを電流指令値制限回路26により演算されたM座有効電流指令値IMdrefに加算することで、インバータ3の直流電圧Vdcを一定に維持するように制御することができる。
さらに、交流き電系統へ接続される三相交流系統に設置される無効電力補償装置1として、三相インバータの機器構成を用いることができる。
また、インバータ制御装置10は、高速かつ誤差が少ない制御を常にインバータ3の定格出力の範囲内で行うことができる。これにより、インバータ3の過電流を防止し、かつインバータ3の出力容量を最大限に活用することができる。
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る電流指令値制限回路26Aの構成を示す構成図である。
本実施形態に係るインバータ制御装置10は、図1に示す第1の実施形態に係るインバータ制御装置10において、電流指令値制限回路26を図8に示す電流指令値制限回路26Aに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
電流指令値制限回路26Aは、逆相有効成分演算回路261A、三相電流最大値演算回路263A、リミッタ回路264A、4つの除算器265Md,265Td,265Mq,265Tq、及び符号反転回路267Aを備えている。
電流指令値制限回路26Aには、M座負荷電流のdq軸成分ILMd,ILMq及びT座負荷電流のdq軸成分ILTd,ILTqが入力される。
入力されたM座負荷電流のq軸成分ILMqは、M座無効電流指令値IMqref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Mqに出力する。M座無効電流指令値IMqref0は、最終的なM座無効電流指令値IMqrefを決定するための基になる値である。
入力されたT座負荷電流のq軸成分ILTqは、T座無効電流指令値ITqref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Tqに出力する。T座無効電流指令値ITqref0は、最終的なT座無効電流指令値ITqrefを決定するための基になる値である。
逆相有効成分演算回路261Aには、M座負荷電流のd軸成分ILMd及びT座負荷電流のd軸成分ILTdが入力される。逆相有効成分演算回路261Aは、式(15)により、M座負荷電流のd軸成分ILMd及びT座負荷電流のd軸成分ILTdから負荷電流の逆相有効成分ILdNを演算する。逆相有効成分演算回路261Aは、演算した負荷電流の逆相有効成分ILdNを符号反転回路267Aに出力する。また、逆相有効成分演算回路261Aは、演算した負荷電流の逆相有効成分ILdNをM座有効電流指令値IMdref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Mdに出力する。M座有効電流指令値IMdref0は、最終的なM座有効電流指令値IMdrefを決定するための基になる値である。
符号反転回路267Aは、逆相有効成分演算回路261Aにより演算された逆相有効成分ILdNの符号を反転させる。符号反転回路267Aは、逆相有効成分ILdNの符号を反転させた値をT座有効電流指令値ITdref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Tdに出力する。T座有効電流指令値ITdref0は、最終的なT座有効電流指令値ITdrefを決定するための基になる値である。
三相電流最大値演算回路263Aには、M座無効電流指令値IMqref0、T座無効電流指令値ITqref0、逆相有効成分演算回路261Aにより演算されたM座有効電流指令値IMdref0、及び符号反転回路267Aにより演算されたT座有効電流指令値ITdref0が入力される。三相電流最大値演算回路263Aは、次式により、4つの電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0から各相電流Iu,Iv,Iwの大きさ(波高値)を演算する。三相電流最大値演算回路263Aは、演算した各相電流Iu,Iv,Iwの大きさのうち最大値Imaxをリミッタ回路264Aに出力する。
リミッタ回路264Aは、三相電流最大値演算回路263Aにより演算された三相電流最大値Imaxを予め設定されているリミット値1[p.u.]以上の値に制限する。具体的には、三相電流最大値Imaxが1[p.u.]未満であれば1[p.u.]にし、三相電流最大値Imaxが1[p.u.]以上であればそのままの値を出力する。リミッタ回路264Aは、1[p.u.]以上に制限した三相電流最大値Imaxlimを4つの除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqに出力する。
除算器265Mdには、逆相有効成分演算回路261Aにより演算されたM座有効電流指令値IMdref0及びリミッタ回路264Aにより演算された三相電流最大値Imaxlimが入力される。除算器265Mdは、M座有効電流指令値IMdref0を三相電流最大値Imaxlimで除算して最終的なM座有効電流指令値IMdrefを求める。
除算器265Tdには、符号反転回路267Aにより演算されたT座有効電流指令値ITdref0及びリミッタ回路264Aにより演算された三相電流最大値Imaxlimが入力される。除算器265Tdは、T座有効電流指令値ITdref0を三相電流最大値Imaxlimで除算して最終的なT座有効電流指令値ITdrefを求める。
除算器265Mqには、M座無効電流指令値IMqref0及びリミッタ回路264Aにより演算された三相電流最大値Imaxlimが入力される。除算器265Mqは、M座無効電流指令値IMqref0を三相電流最大値Imaxlimで除算して最終的なM座無効電流指令値IMqrefを求める。
除算器265Tqには、T座無効電流指令値ITqref0及びリミッタ回路264Aにより演算された三相電流最大値Imaxlimが入力される。除算器265Tqは、T座無効電流指令値ITqref0を三相電流最大値Imaxlimで除算して最終的なT座無効電流指令値ITqrefを求める。
除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqにより演算された電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefは、変換器制御回路21に出力される。
次に、電流指令値制限回路26Aによる演算処理について説明する。
まず、負荷電流の逆相成分ILdN,ILqN及び正相無効成分ILqPが、インバータ3の定格容量に対して充分小さい場合について説明する。具体的には、M座負荷電流の有効(d軸)成分ILMd=1.2[p.u.]、T座負荷電流の有効(d軸)成分ILTd=0.4[p.u.]、M座負荷電流の無効(q軸)成分ILMq=−0.1[p.u.]、T座負荷電流の無効(q軸)成分ILTq=0.5[p.u.]とする。
式(15)より、逆相有効成分ILdN=0.4[p.u.]となる。従って、M座有効電流指令値IMdref0=0.4[p.u.]、T座有効電流指令値ITdref0=−0.4[p.u.]、M座無効電流指令値IMqref0=−0.1[p.u.]、T座無効電流指令値ITqref0=0.5[p.u.]となる。
これらの値を式(28)に代入すると、U相電流Iu=0.302[p.u.]、V相電流Iv=0.640[p.u.]、W相電流Iw=0.607[p.u.]となる。従って、三相電流最大値Imaxは、V相電流Ivの0.640[p.u.]となる。三相電流最大値Imaxは、1[p.u.]以下であるため、リミッタ回路264Aから出力される制限された三相電流最大値Imaxlimは、1[p.u.]である。
従って、除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqには、1が入力される。このため、除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqから出力される最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefは、入力された電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0と同じになる。
インバータ制御装置10は、インバータ3の出力電流をこれらの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefと等しくなるように制御する。これにより、無効電力補償装置1のインバータ3は、負荷電流の逆相有効成分と逆相無効成分と正相無効成分を100%補償するように運転する。このとき、インバータ3の三相出力電流Iinvは、1[p.u.]以下である。これにより、無効電力補償装置1と隣接する交流電源からは、正相有効電力のみが供給される。
次に、負荷電流の正相無効成分ILqPがインバータ3の定格容量よりも大きい場合について説明する。具体的には、負荷電流ILのそれぞれの成分は、M座負荷電流の有効成分ILMd=1.2[p.u.]、T座負荷電流の有効成分ILTd=0.4[p.u.]、M座負荷電流の無効成分ILMq=2.0[p.u.]、T座負荷電流の無効成分ILTq=2.1[p.u.]とする。
式(15)より、逆相有効成分ILdN=0.4[p.u.]となる。従って、M座有効電流指令値IMdref0=0.4[p.u.]、T座有効電流指令値ITdref0=−0.4[p.u.]、M座無効電流指令値IMqref0=2.0[p.u.]、T座無効電流指令値ITqref0=2.1[p.u.]となる。
これらの値を式(28)に代入すると、U相電流Iu=1.69[p.u.]、V相電流Iv=2.14[p.u.]、W相電流Iw=2.38[p.u.]となる。従って、三相電流最大値Imaxは、W相電流Iwの2.38[p.u.]となる。三相電流最大値Imaxは、1[p.u.]以上であるため、リミッタ回路264Aから出力される制限された三相電流最大値Imaxlimは、入力値と同じ2.38[p.u.]である。
従って、除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqには、2.38が入力される。このため、除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqから出力される最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefは、それぞれ入力された電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0の1/2.38倍に低減される。即ち、M座有効電流指令値IMdref=0.17[p.u.]、T座有効電流指令値ITdref=−0.17[p.u.]、M座無効電流指令値IMqref=0.84[p.u.]、T座無効電流指令値ITqref=0.88[p.u.]となる。
インバータ制御装置10は、インバータ3の出力電流をこれらの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefと等しくなるように制御する。これにより、無効電力補償装置1のインバータ3は、負荷電流の逆相有効成分と逆相無効成分と正相無効成分を同じ比率(1/2.38)で補償するように運転する。このとき、インバータ3の三相出力電流Iinvの最大値は、1[p.u.]である。第1の実施形態に係る電流指令値制限回路26では、同じ負荷電流ILが流れた場合、逆相成分を100%補償し、残った容量内で正相無効電流を補償していた。これに対し、本実施形態に係る電流指令値制限回路26Aでは、逆相有効成分と逆相無効成分と正相無効成分を同等に補償する。
次に、負荷電流の逆相成分ILdN,ILqNがインバータ3の定格容量よりも大きい場合について説明する。具体的には、負荷電流ILのそれぞれの成分は、M座負荷電流の有効成分ILMd=−3.0[p.u.]、T座負荷電流の有効成分ILTd=0.2[p.u.]、M座負荷電流の無効成分ILMq=1.4[p.u.]、T座負荷電流の無効成分ILTq=−1.0[p.u.]とする。
式(15)より、逆相有効成分ILdN=−1.6[p.u.]となる。従って、M座有効電流指令値IMdref0=−1.6[p.u.]、T座有効電流指令値ITdref0=1.6[p.u.]、M座無効電流指令値IMqref0=1.4[p.u.]、T座無効電流指令値ITqref0=−1.0[p.u.]となる。
これらの値を式(28)に代入すると、U相電流Iu=2.20[p.u.]、V相電流Iv=1.89[p.u.]、W相電流Iw=1.93[p.u.]となる。従って、三相電流最大値Imaxは、U相電流Iuの2.20[p.u.]となる。三相電流最大値Imaxは、1[p.u.]以上であるため、リミッタ回路264Aから出力される制限された三相電流最大値Imaxlimは、入力値と同じ2.20[p.u.]である。
従って、除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqには、2.20が入力される。このため、除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqから出力される最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefは、それぞれ入力された電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0の1/2.20倍に低減される。即ち、M座有効電流指令値IMdref=−0.73[p.u.]、T座有効電流指令値ITdref=0.73[p.u.]、M座無効電流指令値IMqref=0.64[p.u.]、T座無効電流指令値ITqref=−0.45[p.u.]となる。
インバータ制御装置10は、インバータ3の出力電流をこれらの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefと等しくなるように制御する。これにより、無効電力補償装置1のインバータ3は、負荷電流の逆相有効成分と逆相無効成分と正相無効成分を同じ比率(1/2.20)で補償するように運転する。このとき、インバータ3の三相出力電流Iinvの最大値は、1[p.u.]である。第1の実施形態に係る電流指令値制限回路26では、同じ負荷電流ILが流れた場合、逆相成分を三相出力電流Iinvが1[p.u.]を超えない範囲で最大限補償し、正相無効電流は全く補償しなかった。これに対し、本実施形態に係る電流指令値制限回路26Aでは、逆相有効成分と逆相無効成分と正相無効成分を同等に補償する。
本実施形態によれば、スコット巻線変圧器11により三相交流電圧Vacから変換されたM座電圧VM及びT座電圧VTを個別に制御することができる。
また、負荷電流ILに含まれる逆相成分と正相無効電力成分をインバータ3の定格電流内で最大限に補償することで、交流電源に流れる逆相電流と無効電流を低減することができる。
さらに、直流電圧制御回路23から出力されるM座有効電流指令値IMdrefvを電流指令値制限回路26Aにより演算されたM座有効電流指令値IMdrefに加算することで、インバータ3の直流電圧Vdcを一定に維持するように制御することができる。
また、交流き電系統へ接続される三相交流系統に設置される無効電力補償装置1として、三相インバータの機器構成を用いることができる。
さらに、インバータ制御装置10は、高速かつ誤差が少ない制御を常にインバータ3の定格出力の範囲内で行うことができる。これにより、インバータ3の過電流を防止し、かつインバータ3の出力容量を最大限に活用することができる。
ここで、第1の実施形態では、負荷電流の逆相成分を優先的に補償し、インバータ3の出力電流Iinvに余裕がある場合には、出力電流Iinvが定格1[p.u.]を超えない範囲で正相無効電流を補償していた。これに対し、本実施形態では、逆相成分と正相無効電力成分を同等に補償する。
適用するき電システムにより、逆相成分補償と無効電力成分の補償の必要性は異なる。例えば、単相の無効電力補償装置が別途設置されている場合には、無効電力補償の要望は低い。このような場合には、第1の実施形態に係るインバータ制御装置10が適している。一方、他に無効電力補償装置がなく、単相電圧変動が大きい場合には本実施形態に係るインバータ制御装置10が適している。
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る電流指令値制限回路26Bの構成を示す構成図である。
本実施形態に係るインバータ制御装置10は、図1に示す第1の実施形態に係るインバータ制御装置10において、電流指令値制限回路26を図9に示す電流指令値制限回路26Bに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
電流指令値制限回路26Bは、第1の実施形態における、逆相成分演算回路261及び正相無効成分演算回路262を備え、第2の実施形態における、リミッタ回路264A、4つの除算器265Md,265Td,265Mq,265Tq、符号反転回路267Aを備え、三相電流最大値演算回路263B、加算器268B、及び減算器269Bを備えている。
三相電流最大値演算回路263Bには、逆相成分演算回路261により演算された負荷電流の逆相有効成分ILdN及び逆相無効成分ILqN、及び正相無効成分演算回路262により演算された負荷電流の正相無効成分ILqPが入力される。三相電流最大値演算回路263Bは、次式により、逆相有効成分ILdN、逆相無効成分ILqN、及び正相無効成分ILqP相当の電流を三相電流に変換した場合の各相電流Iu,Iv,Iwの大きさ(波高値)を演算する。三相電流最大値演算回路263Bは、演算した各相電流Iu,Iv,Iwの大きさのうち最大値Imaxをリミッタ回路264Aに出力する。
上式は、式(22)〜式(25)を式(29)に代入したものである。但し、IMdref、ITdref、IMqref、ITqrefは、それぞれIMdref0、ITdref0、IMqref0、ITqref0に、IdN、IqP、IqNは、それぞれILdN、ILqP、ILqNに置き換えている。
リミッタ回路264Aは、第2の実施形態で説明したように、制限した三相電流最大値Imaxlimを4つの除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqに出力する。
加算器268Bには、逆相成分演算回路261により演算された負荷電流の逆相無効成分ILqN及び正相無効成分演算回路262により演算された負荷電流の正相無効成分ILqPが入力される。加算器268Bは、逆相無効成分ILqNと正相無効成分ILqPを加算してM座無効電流指令値IMqref0を求める。加算器268Bは、演算したM座無効電流指令値IMqref0を除算器265Mqに出力する。
減算器269Bには、逆相成分演算回路261により演算された負荷電流の逆相無効成分ILqN及び正相無効成分演算回路262により演算された負荷電流の正相無効成分ILqPが入力される。減算器269Bは、正相無効成分ILqPから逆相無効成分ILqNを減算してT座無効電流指令値ITqref0を求める。減算器269Bには、演算したT座無効電流指令値ITqref0を除算器265Tqに出力する。
除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqは、第2の実施形態と同様にそれぞれ電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefを演算する。除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqは、演算した電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefを変換器制御回路21に出力する。
本実施形態によれば、理論上は第2の実施形態と同じ制御になるため、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態では、第2の実施形態では演算していない負荷電流の逆相無効成分ILqN及び正相無効成分ILqPを演算している。従って、これらの演算結果を他の制御で使用したり、計測値としてモニタリングしたりすることができる。
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第4の実施形態に係る電流指令値制限回路26Cの構成を示す構成図である。
本実施形態に係るインバータ制御装置10は、図1に示す第1の実施形態に係るインバータ制御装置10において、電流指令値制限回路26を図10に示す電流指令値制限回路26Cに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
電流指令値制限回路26Cは、第1の実施形態に係る電流指令値制限回路26に相当する電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefと、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る電流指令値制限回路26A,26Bに相当する電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefに出力を切り換えることのできる回路である。
電流指令値制限回路26Cは、第1の実施形態における、逆相成分演算回路261、正相無効成分演算回路262、皮相値演算回路263、2つのリミッタ回路264N,264qP、2つの除算器265d,265q、リミット値演算回路266、符号反転回路267、加算器268、及び減算器269を備え、第2の実施形態における、三相電流最大値演算回路263A、リミッタ回路264A、4つの除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqを備え、第3の実施形態における、加算器268B及び減算器269Bを備え、3つのスイッチ回路SW1,SW2,SW3を備えている。
3つのスイッチ回路SW1〜SW3は、連動して動作する。スイッチ回路SW1〜SW3がa端子を選択している場合、第1の実施形態に相当する電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefが出力される。スイッチ回路SW1〜SW3がb端子を選択している場合、第2の実施形態及び第3の実施形態に相当する電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefが出力される。
まず、スイッチ回路SW1〜SW3でa端子が選択されている場合の電流指令値制限回路26Cの構成について説明する。
スイッチ回路SW1のa端子には、負荷電流の逆相有効成分ILdNをリミッタ回路264Nの出力値ILNlimで除算器265dにより除算された値IdNが入力される。この値IdNは、M座有効電流指令値IMdref0として、三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Mdに入力される。
また、この値IdNは、符号反転回路267により符号を反転してT座有効電流指令値ITdref0となる。T座有効電流指令値ITdref0は、三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Tdに入力される。
スイッチ回路SW2のa端子には、負荷電流の正相無効成分ILqPがリミッタ回路264qPにより制限された値IqPと負荷電流の逆相無効成分ILqNをリミッタ回路264Nの出力値ILNlimで除算器265qにより除算した値IqNとの和が入力される。この和の値は、M座無効電流指令値IMqref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Mqに入力される。
スイッチ回路SW3のa端子には、負荷電流の正相無効成分ILqPがリミッタ回路264qPにより制限された値IqPから負荷電流の逆相無効成分ILqNをリミッタ回路264Nの出力値ILNlimで除算した値IqNを減算した値が入力される。この減算した値は、T座無効電流指令値ITqref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Tqに入力される。
スイッチ回路SW1〜SW3のそれぞれのa端子から出力される電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0は、第1の実施形態に係る電流指令値制限回路26から出力される最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefと同じである。従って、スイッチ回路SW1〜SW3のそれぞれのa端子から出力される電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0は、第1実施形態で説明したように、除算器265d,265q及びリミッタ回路264qPにより値が制限されることにより、インバータ3の三相出力電流Iinvの最大値が定格の1[p.u.]以下になるように制限されている。
このため、三相電流最大値演算回路263Aにより演算される最大値Imaxは、1[p.u.]以下であるため、リミッタ回路264Aから出力される制限された最大値Imaxは、1[p.u.]である。
従って、スイッチ回路SW1〜SW3でa端子が選択されている場合、各除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqに入力された電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0は、そのまま最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefとして、変換器制御回路21に出力される。即ち、スイッチ回路SW1〜SW3でa端子が選択されている場合、電流指令値制限回路26Cは、第1の実施形態と同じ最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefを出力する。
次に、スイッチ回路SW1〜SW3でb端子が選択されている場合の電流指令値制限回路26Cの構成について説明する。
スイッチ回路SW1のb端子には、負荷電流の逆相有効成分ILdNが入力される。逆相有効成分ILdNは、M座有効電流指令値IMdref0として、三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Mdに入力される。
また、逆相有効成分ILdNは、符号反転回路267により符号を反転してT座有効電流指令値ITdref0となる。T座有効電流指令値ITdref0は、三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Tdに入力される。
スイッチ回路SW2のb端子には、負荷電流の正相無効成分ILqPと負荷電流の逆相無効成分ILqNとの和が入力される。この和の値は、M座無効電流指令値IMqref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Mqに入力される。
スイッチ回路SW3のb端子には、負荷電流の正相無効成分ILqPから負荷電流の逆相無効成分ILqNを減算した値が入力される。この減算した値は、T座無効電流指令値ITqref0として三相電流最大値演算回路263A及び除算器265Tqに入力される。
スイッチ回路SW1〜SW3のそれぞれのb端子から出力される電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0は、第2の実施形態又は第3の実施形態に係る電流指令値制限回路26A,26Bにおける制限されていない電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0と同じである。従って、スイッチ回路SW1〜SW3のそれぞれのb端子から出力される電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0は、そのまま最終的な電流指令値として使用すると、インバータ3の三相出力電流Iinvの最大値が定格の1[p.u.]を超える可能性がある。
三相電流最大値演算回路263Aは、スイッチ回路SW1〜SW3のそれぞれのb端子から出力される電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0から演算した各相電流Iu,Iv,Iwの大きさのうち最大値Imaxをリミッタ回路264Aに出力する。除算器265Md,265Td,265Mq,265Tqは、入力された電流指令値IMdref0,ITdref0,IMqref0,ITqref0をリミッタ回路264Aから出力される制限された最大値Imaxlimで除算して、最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefを出力する。これにより、最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefで出力される三相出力電流Iinvの最大値は1[p.u.]以下になる。
即ち、スイッチ回路SW1〜SW3でb端子が選択されている場合、電流指令値制限回路26Cは、第2の実施形態又は第3の実施形態と同じ最終的な電流指令値IMdref,ITdref,IMqref,ITqrefを出力する。
本実施形態によれば、スイッチ回路SW1〜SW3により、負荷電流の逆相成分と正相無効成分を補償するインバータ3の制御方法を切り換えることができる。スイッチ回路SW1〜SW3でa端子を選択した場合は、負荷電流の逆相成分を優先的に補償する。逆相成分を優先的に補償しても、インバータ3の出力電流に余裕がある場合は、その余裕の範囲内で正相無効成分を補償する。スイッチ回路SW1〜SW3でb端子を選択した場合は、逆相成分と正相無効成分を同じ比率で、インバータ3の出力電流が容量を超えない範囲で補償する。
これにより、第1の実施形態による作用効果と第2の実施形態又は第3の実施形態による作用効果を選択的に得ることができる。
(第5の実施形態)
図11は、本発明の第5の実施形態に係るインバータ制御装置10Dの適用されたシステムの構成を示す構成図である。
本システムは、図1に示す第1の実施形態に係るシステムにおいて、インバータ制御装置10を図11に示すインバータ制御装置10Dに代え、電流検出器12を取り除いたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
インバータ制御装置10Dは、第1の実施形態における、変換器制御回路21及びパルス発生回路22を備え、直流電圧制御回路23D、電流指令値制限回路26D、加算器27Td、電圧MT変換回路51、M座電圧実効値演算回路52M、T座電圧実効値演算回路52T、3つの減算器53M,53T,53MT、M座電圧制御回路54M、T座電圧制御回路54T、及び差電圧制御回路55を備えている。
インバータ制御装置10Dは、第1の実施形態に係るインバータ制御装置10と同様の装置である。ここでは、主に異なる部分について説明する。
電圧MT変換回路51には、電圧検出器8により検出された三相交流電圧Vacが入力される。電圧MT変換回路51は、三相交流電圧VacをM座電圧VMとT座電圧VTに変換する。電圧MT変換回路51は、演算したM座電圧VM及びT座電圧VTをそれぞれM座電圧実効値演算回路52M及びT座電圧実効値演算回路52Tに出力する。
電圧MT変換回路51は、次式により、M座電圧VM及びT座電圧VTを求める。ここで、電流及び電圧の各相の対応関係については、図2に示すスコット巻線変圧器11の巻線構成の通りである。
VM=Vu−Vw、VT=(2×Vv−Vu−Vw)/√3 …(30)
M座電圧実効値演算回路52Mは、電圧MT変換回路51から入力されたM座電圧VMに基づいて、M座電圧実効値VMr(電圧ベクトルVMの大きさ)を演算する。M座電圧実効値演算回路52Mは、演算したM座電圧実効値VMrを減算器53Mに出力する。
T座電圧実効値演算回路52Tは、電圧MT変換回路51から入力されたT座電圧VTに基づいて、T座電圧実効値VTr(電圧ベクトルVTの大きさ)を演算する。T座電圧実効値演算回路52Tは、演算したT座電圧実効値VTrを減算器53Tに出力する。
減算器53Mには、M座電圧実効値演算回路52Mにより演算されたM座電圧実効値VMr及び予め設定されたM座電圧指令値VMrefが入力される。減算器53Mは、M座電圧指令値VMrefからM座電圧実効値VMrを減算して、M座電圧差分ΔVMを求める。減算器53Mは、演算したM座電圧差分ΔVMをM座電圧制御回路54Mに出力する。
減算器53Tには、T座電圧実効値演算回路52Tにより演算されたT座電圧実効値VTr及び予め設定されたT座電圧指令値VTrefが入力される。減算器53Tは、T座電圧指令値VTrefからT座電圧実効値VTrを減算して、T座電圧差分ΔVTを求める。減算器53Tは、演算したT座電圧差分ΔVTをT座電圧制御回路54Tに出力する。
減算器53MTには、M座電圧実効値演算回路52Mにより演算されたM座電圧実効値VMr及びT座電圧実効値演算回路52Tにより演算されたT座電圧実効値VTrが入力される。減算器53MTは、T座電圧実効値VTrからM座電圧実効値VMrを減算して、差電圧ΔVMTを求める。減算器53Tは、演算した差電圧ΔVMTを差電圧制御回路55に出力する。
M座電圧制御回路54Mは、減算器53Mにより演算されたM座電圧差分ΔVMがゼロに近づくような値を演算する。例えば、M座電圧制御回路54Mは、1次遅れ回路又は比例積分回路などである。M座電圧制御回路54Mは、演算した値をM座無効電流指令値IMqref0として電流指令値制限回路26Dに出力する。
T座電圧制御回路54Tは、減算器53Tにより演算されたT座電圧差分ΔVTがゼロに近づくような値を演算する。例えば、T座電圧制御回路54Tは、1次遅れ回路又は比例積分回路などである。T座電圧制御回路54Tは、演算した値をT座無効電流指令値ITqref0として電流指令値制限回路26Dに出力する。
差電圧制御回路55は、減算器53MTにより演算された差電圧ΔVMTがゼロに近づくような値を演算する。例えば、差電圧制御回路55は、1次遅れ回路又は比例積分回路などである。差電圧制御回路55は、演算した値を有効電流指令値Idref0として電流指令値制限回路26Dに出力する。有効電流指令値Idref0は、最終的な2つの有効電流指令値IMdref,ITdrefを決定するための基になる値である。
電流指令値制限回路26Dには、M座電圧制御回路54Mにより演算されたM座無効電流指令値IMqref0、T座電圧制御回路54Tにより演算されたT座無効電流指令値ITqref0、及び差電圧制御回路55により演算された有効電流指令値Idref0が入力される。電流指令値制限回路26Dは、インバータ3の出力容量の範囲内になるように、M座無効電流指令値IMqref0、T座無効電流指令値ITqref0、及び有効電流指令値Idref0に基づいて、最終的な4つの電流指令値IMdref,IMqref,ITdref,ITqrefを生成する。電流指令値制限回路26Dは、M座無効電流指令値IMqref、T座無効電流指令値ITqref、及びM座有効電流指令値IMdrefを変換器制御回路21に出力する。電流指令値制限回路26Dは、T座有効電流指令値ITdrefを加算器27Tdに出力する。
直流電圧制御回路23Dには、直流電圧検出器6により検出された直流電圧Vdcが入力される。直流電圧制御回路23Dは、入力された直流電圧Vdcに基づいて、インバータ3の直流電圧Vdcが所望の値で一定になるようなT座有効電流指令値ITdrefvを演算する。T座有効電流指令値ITdrefvは、T座の有効電流を制御するための指令値である。直流電圧制御回路23Dは、演算したT座有効電流指令値ITdrefvを加算器27Tdに出力する。その他の点については、第1の実施形態に係る直流電圧制御回路23と同様である。
加算器27Tdには、電流指令値制限回路26Dにより生成されたT座有効電流指令値ITdref及び直流電圧制御回路23Dにより演算されたT座有効電流指令値ITdrefvが入力される。加算器27Tdは、入力された2つのT座有効電流指令値ITdrefv,ITdrefを加算する。加算器27Tdは、加算したT座有効電流指令値ITdref1を変換器制御回路21に出力する。
変換器制御回路21については、第1の実施形態で述べた通りである。ここで、第1の実施形態における変換器制御回路21に入力されるM座有効電流指令値IMdref及びT座有効電流指令値ITdref1は、それぞれM座有効電流指令値IMdref1及びT座有効電流指令値ITdrefと読み替えるものとする。
図12は、本実施形態に係る電流指令値制限回路26Dの構成を示す構成図である。
電流指令値制限回路26Dは、3つのリミッタ回路264Mq,264Tq,264d、リミット値演算回路266D、及び符号反転回路267Dを備えている。
リミッタ回路264Mqは、入力されたM座無効電流指令値IMqref0をインバータ3の三相出力電流Iinvの定格値である±1[p.u.]以内に制限して、最終的なM座無効電流指令値IMqrefを演算する。リミッタ回路264Mqは、演算したM座無効電流指令値IMqrefをリミット値演算回路266D及び変換器制御回路21に出力する。
リミッタ回路264Tqは、入力されたT座無効電流指令値ITqref0をインバータ3の三相出力電流Iinvの定格値である±1[p.u.]以内に制限して、最終的なT座無効電流指令値ITqrefを演算する。リミッタ回路264Tqは、演算したT座無効電流指令値ITqrefをリミット値演算回路266D及び変換器制御回路21に出力する。
リミット値演算回路266Dには、リミッタ回路264Mqにより制限されたM座無効電流指令値IMqref及びリミッタ回路264Tqにより制限されたT座無効電流指令値ITqrefが入力される。リミット値演算回路266Dは、次式により、M座無効電流指令値IMqref及びT座無効電流指令値ITqrefからリミッタ回路264dで用いる上下限リミット値(p.u.値)を演算する。リミット値演算回路266Dは、演算した上下限リミット値をリミッタ回路264dに設定する。
上下限リミット値=±MIN(リミット値1、リミット値2) …(33)
ここで、MINは、最小値を選択する関数である。
上記の式(31)〜式(33)は、M座無効電流IMq及びT座無効電流ITqを決定した場合に、三相出力電流Iinvの最大値を1[p.u.]以下にするためにとりうるM座有効電流IMd及びT座有効電流ITdの最大値及び最小値を求める式である。これらの式は、図5から図7に示すベクトル図から導き出される。
リミッタ回路264dは、差電圧制御回路55により演算された有効電流指令値Idref0をリミット値演算回路266Dにより演算された上下限リミット値の範囲内に制限する。リミッタ回路264dは、制限した有効電流指令値Idref0をM座有効電流指令値IMdrefとして変換器制御回路21に出力する。
符号反転回路267Dは、リミッタ回路264dにより制限された有効電流指令値Idref0の符号を反転させる。符号反転回路267Dは、符号を反転させた値をT座有効電流指令値ITdrefとして変換器制御回路21に出力する。
本実施形態によれば、スコット巻線変圧器11により三相交流電圧Vacから変換されたM座電圧VM及びT座電圧VTを個別に制御することができる。
また、無効電力補償装置1が接続される系統の電圧Vacを検出することで、スコット巻線変圧器11に流れる負荷電流が検出できない場合でも、M座電圧VM及びT座電圧VTを制御することができる。
さらに、電流指令値制限回路26Dでは、無効電流がインバータ3の三相出力電流Iinvの定格値を超えないように優先的に制御する。無効電流を制御しても定格値まで余裕があればその範囲内で有効電力による電圧制御を行うように制御する。これにより、インバータ3の三相出力電流Iinvの定格値を超えない範囲で、無効電力と有効電力を効果的に電圧制御することができる。
ここで、電圧を制御するには有効電流よりも無効電流を調整する方が効果的である。また、無効電力補償装置1は、M座とT座の有効電流出力の和をゼロとする必要がある。即ち、無効電力補償装置1は、有効電力を供給することができないため、M座とT座との間で電力融通を行うことしかできない。従って、無効電力補償装置では、無効電力を優先的に制御するのが適切である。
また、直流電圧制御回路23Dから出力されるT座有効電流指令値ITdrefvを電流指令値制限回路26Dにより演算されたT座有効電流指令値ITdrefに加算することで、インバータ3の直流電圧Vdcを一定に維持するように制御することができる。
さらに、交流き電系統へ接続される三相交流系統に設置される無効電力補償装置1として、三相インバータの機器構成を用いることができる。
また、インバータ制御装置10Dは、高速かつ誤差が少ない制御を常にインバータ3の定格出力の範囲内で行うことができる。これにより、インバータ3の過電流を防止し、かつインバータ3の出力容量を最大限に活用することができる。
なお、各実施形態では、スコット巻線変圧器11を用いて説明したが、三相交流電圧を2組の単相交流電圧に変換する変圧器であれば、他の変圧器でもよい。例えば、ウッドブリッジ結線又は変形ウッドブリッジ結線でもよい。適用する変圧器の結線に応じて、各種演算式等を変更することで、同様に構成することができる。
さらに、各実施形態で説明した電流指令値を演算する構成は、どのように組み合わせてもよい。例えば、系統構成の変更に応じて電流指令値を切り換える構成としてもよい。具体的には、負荷電流を検出できない系統構成であれば、第5の実施形態の電流指令値により、変換器制御回路21による制御を行い、負荷電流を検出できる系統構成であれば、第1から第4の実施形態の電流指令値により、変換器制御回路21による制御を行ってもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。