従来よりこの種冷凍装置は、圧縮手段、ガスクーラ、膨張手段(絞り手段)等から冷凍サイクルが構成され、圧縮手段で圧縮された冷媒がガスクーラにて放熱し、膨張手段にて減圧膨張された後、蒸発器にて冷媒を蒸発させて、このときの冷媒の蒸発により周囲の空気を冷却するものとされていた。近年、この種冷凍装置では、自然環境問題などからフロン系冷媒が使用できなくなってきている。このため、フロン冷媒の代替品として自然冷媒である二酸化炭素を使用するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
二酸化炭素冷媒は、臨界点が圧力7.38MPaと高圧であるのに加え、これが+31.1℃という日常的な温度で生じるという特有の物性を有している。そのため、通常の気温では、二酸化炭素冷媒を使用した冷凍装置の高圧側での放熱運転は、臨界点以上の超臨界圧力で行われる場合が多い。臨界状態での二酸化炭素の放熱は、液化という状態が無いため、ガスクーラ内の冷媒の温度に依存する密度と容積により圧力が決定される。
この状態の冷媒を膨張弁等で膨張させると、蒸発器入口での冷媒の乾き度が高くなり、液冷媒の比率が低くなるため、冷却能力を確保するためには、蒸発器への冷媒の供給量を増加させる必要がある。また、蒸発器への冷媒供給量が多くなると、配管内を流れる冷媒の速度が上がるため、圧力損失が増大し、蒸発器入口と出口の間で温度勾配が生じ、熱交換効率が悪化する。
また、臨界状態であった冷媒は膨張して臨界圧力以下に下がると、液/ガス2相の平衡状態になり、それが蒸発器に流入すると、蒸発器の配管内は同温度の液とガスの気泡で満たされた状態となる。そのため、管壁付近での熱交換はあるものの、管中心部では冷媒への熱移動が困難になる。これらの問題から、吸熱効果を上げるために蒸発器を大型化し、圧力損失を抑えるために配管数を増やしたり複雑化する必要が生じ、コストが高騰する問題があった。
また、高圧側が超臨界圧力となる二酸化炭素冷媒を用いた場合は、外気温度が上昇して例えば+25℃〜30℃以上となると、上述のガスクーラ内では冷媒は液化せず、高圧側は超臨界の状態のガスサイクル運転が行われることとなる。そのため、超臨界ガスとなった高圧側では冷媒の圧力や密度が高いため、それを収納するために径の大きな所謂受液器を設けることは冷凍機の機内のスペースが大きくなり、現実的には無理がある。更に、冷媒の状態が所謂気体(ガス)といった状態ではないので、上記受液器内では気液分離することができない。そのため、この受液器では循環冷媒量の調整を行うことができなくなり、冷媒回路中の過剰なガス冷媒によって高圧側圧力が異常に上昇するという問題が考えられる。
そこで、ガスクーラで放熱させた臨界冷媒の一部を分離して膨張させ、分離した残りの冷媒を熱交換器で過冷却し、膨張弁に送る乾き度を下げる。また、冷媒回路の高圧側に膨張弁を介して冷媒量調整タンクを接続し、高圧側の圧力が異常に上昇したときは、この冷媒量調整タンクに冷媒を回収し、圧力が低下した場合には冷媒回路中に放出する方法が考えられている(例えば、特許文献2参照)。
図4に係る従来の冷凍装置100の冷媒回路図を示し、図5にそのp−h線図を示す。従来の冷凍装置100は、冷凍機103と複数台のショーケース105A、105Bとから成り、冷凍機103と各ショーケース105A、105Bとが、冷媒配管107及び109により連結されている。そして、冷媒回路は高圧側の冷媒圧力がその臨界圧力以上(超臨界)となる二酸化炭素を冷媒として用いる。
冷凍機103は、第1及び第2の回転圧縮要素118、120を有する圧縮機111を備える。第1の回転圧縮要素118は、冷媒配管109を介して冷媒回路の低圧側から圧縮機111に吸い込まれる低圧冷媒を圧縮し、中間圧まで昇圧して吐出し、第2の回転圧縮要素120は、第1の回転圧縮要素118で圧縮されて吐出された中間圧の冷媒を更に吸い込み、圧縮して高圧まで昇圧し、冷媒回路の高圧側に吐出する。
第1の回転圧縮要素118の低圧部(図5のa)に吸い込まれた低圧(LP:通常運転状態で2.5MPa程)の冷媒ガスは、当該第1の回転圧縮要素118により中間圧(MP:通常運転状態で5MPa程)に昇圧され(図5のb)、インタークーラ138に流入する。インタークーラ138は、第1の回転圧縮要素118から吐出された中間圧の冷媒を空冷するものであり、インタークーラ138でた冷媒は第2の回転圧縮要素120に吸い込まれる(図5のc)。そして、この第2の回転圧縮要素120に吸い込まれた中間圧(MP)の冷媒ガスは、当該第2の回転圧縮要素120により2段目の圧縮が行われて高温高圧(HP:通常運転状態で8MPa程の超臨界圧力)の冷媒ガスとなる(図5のd)。
そして、第2の回転圧縮要素120の吐出側はオイルセパレータ144、ガスクーラ146、分流器182、スプリット熱交換器180を介して冷媒配管107に接続される。ガスクーラ146にはそれを空冷するガスクーラ用送風機147が配設されている。ショーケース105A、105Bは、店舗内等に設置されて冷媒配管107及び109に並列に接続される。各ショーケース105A、5Bは、電動膨張弁からなる主膨張手段162A、162Bと、蒸発器163A、163Bをそれぞれ備えている。主膨張手段162A、162Bは冷媒配管107に接続され、各蒸発器163A、163Bは冷媒配管109に接続されて最終的に圧縮機111の第1の回転圧縮要素118に連通接続されている。
分流器182は、ガスクーラ146から出た冷媒(図5のe)を第1の冷媒流と第2の冷媒流とに分流し、第1の冷媒流は電動膨張弁からなる補助膨張手段183を介してスプリット熱交換器180の第1の流路180Aに流れ、これが補助回路となる。また、第2の冷媒流はスプリット熱交換器180の第2の流路180Bを経て冷媒配管107に流れ、これが主回路となる。即ち、冷凍機103からショーケース105A、105Bに冷媒は高圧で搬送されることになる。
スプリット熱交換器180は、補助膨張手段183で減圧された第1の冷媒流(図5のg)を第1の流路180Aに流し、分流器182で分流された第2の冷媒流を第2の流路180Bに流してそれらの熱交換を行わせる。それにより、第2の冷媒流は第1の流路180Aを流れる第1の冷媒流により冷却されるので、主膨張手段162A、162Bに向かう第2の冷媒流(図5のf)を過冷却することが可能となり、蒸発器163A、163Bの入口側における比エンタルピを小さくすることができる。そして、主膨張手段162A、162Bで減圧された第2の冷媒流(図5のh)は蒸発器163A、163Bに流入して蒸発し、このときの吸熱作用でショーケース105A、105Bの庫内を冷蔵温度に冷却する。
図5は係る冷凍装置100のp−h線図である。図4の冷媒回路中に(a)〜(i)の符号で示した箇所が、図5中の(a)〜(i)に対応している。スプリット熱交換器180における過冷却は図5中の(e)から(f)で示す部分であり、その分(h)から(a)までの冷凍効果が増大される効果がある。尚、第1の流路180Aを出た冷媒(図5のi)はインタークーラ138から出た冷媒に合流される。
スプリット熱交換器180の下流側の冷媒配管107には、第1の連通回路201を介して冷媒量調整タンク200が接続されている。冷媒量調整タンク200は、所定の容積を有するものであり、第1の連通回路201には、電動膨張弁202が介設されている。冷媒量調整タンク200には、当該タンク200内上部と、インタークーラ138出口とを連通する第2の連通回路203が接続され、第2の連通回路203には、電磁弁204が介設されている。また、冷媒量調整タンク200には、下部とインタークーラ138出口とを連通する第3の連通回路205が接続され、第3の連通回路205には、電磁弁206とキャピラリチューブ207が介設されている。
そして、高圧側の圧力が異常に上昇したときは、電動膨張弁202を介して冷媒量調整タンク200に高圧冷媒を回収し、高圧上昇を抑える。そして、高圧側の圧力が低下したら電磁弁206を開いて圧縮機111の第2の回転圧縮要素120の吸込側に放出するものであった。
しかしながら、上記のように冷媒を高圧で搬送する冷凍装置では、冷媒配管107を超臨界状態の冷媒が流れるため、サイトグラスなどで冷媒充填量を正確に判断することが難しくなる。また、冷媒は外気温度が高くなる夏季には膨張し、冬季には収縮するが、二酸化炭素等の冷媒ではこの変化が大きくなるため、冷媒量調整タンクで回収/放出しても調整し切れなくなる。そのため、冷凍能力の確保を考慮して多めに充填した場合、運転状況によっては、やはり高圧側圧力が急激に上昇するようになる。そして、高圧側圧力が大きく変化することにより、ショーケース105A、105B側の主膨張手段162A、162B前後の差圧も大きく変化し、電動膨張弁により制御し切れなくなる。
更に、外気温度が高い環境下ではスプリット熱交換器180における過冷却効果が殆ど期待できなくなることが分かった。即ち、補助膨張手段183を中間圧で制御しているため、冷蔵のショーケース等では中間圧が高く、温度があまり低くなくなり、スプリット熱交換器180における過冷却が行えなくなる。
例えば、外気温度が+20℃のとき、中間圧(MP)は5MPa、+30℃のとき6MPaに達する。そして、スプリット熱交換器180における第1の冷媒流による冷却温度は実測値+15℃〜+23℃となっていて、スプリット熱交換器180を出た第2の冷媒流の温度は+20℃〜+30℃であった。これは外気温度と殆ど同一であり、スプリット熱交換器180における過冷却効果が小さいことが実測で分かっている。
また、スプリット熱交換器180からの第1の冷媒流で第1の回転圧縮要素118の吐出温度を制御していたため、供給冷媒量が変動し、スプリット熱交換器180における安定した過冷却を得ることができない。
更に、従来の冷凍装置では冷凍機103の保護を目的として冷媒量は不足気味で運転されていた。そして、ショーケース105A、105Bに供給される冷媒は臨界圧からの膨張となるので、スプリット熱交換器180で十分な過冷却が行えない場合、やはり主膨張手段162A、162Bにおける冷媒の乾き度が高くなり、蒸発器163A、163Bにおいて十分な冷却効果が得られないという問題が発生する。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、二酸化炭素等の冷媒を用いる冷凍装置において、蒸発器に流入する冷媒を膨張させる膨張手段に十分な量の飽和液冷媒を送ることができる冷凍装置を提供するものである。
上記課題を解決するために、請求項1の発明の冷凍装置は、圧縮手段と、ガスクーラと、主膨張手段と、蒸発器とから冷媒回路が構成され、高圧側が超臨界圧力となるものにおいて、ガスクーラと主膨張手段の間に接続された中圧制御装置を備え、この中圧制御装置は、ガスクーラから出た高圧冷媒を膨張させて中間圧に下げる高圧膨張手段と、この高圧膨張手段にて膨張された冷媒を貯留し、飽和液冷媒とガス冷媒とに分離する中圧受液器と、この中圧受液器内の飽和液冷媒が流入する液冷媒流路と中圧受液器内のガス冷媒が流入するガス冷媒流路とを有して両流路を流れる冷媒を熱交換させるガス冷熱回収器と、中圧受液器内のガス冷媒を膨張させた後、ガス冷熱回収器のガス冷媒流路に流入させる中圧膨張手段とを有し、ガス冷熱回収器の液冷媒流路から出た冷媒を主膨張手段に流入させ、ガス冷媒流路から出た冷媒を圧縮手段に戻すことを特徴とする。
更に、ガスクーラから出た冷媒の温度と圧力を検出するガスクーラ出口温度センサ及びガスクーラ出口圧力センサと、各センサの出力に基づいて高圧膨張手段を制御する制御手段とを設けたので、この制御手段により、例えばガスクーラ内の冷媒の流速が速くなり過ぎないように高圧膨張手段を制御することにより、ガスクーラにおける冷媒の放熱能力を確保することが可能となる。
請求項2の発明の冷凍装置は、上記発明においてガス冷熱回収器のガス冷媒流路を出た冷媒を、蒸発器を出た冷媒と共に圧縮手段に吸い込ませることを特徴とする。
請求項3の発明の冷凍装置は、請求項1又は請求項2の発明において中圧膨張手段に流入するガス冷媒の圧力を検出する中圧膨張手段入口圧力センサと、この中圧膨張手段入口圧力センサの出力に基づいて中圧膨張手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
請求項4の発明の冷凍装置は、請求項1乃至請求項3の発明において圧縮手段及びガスクーラを含む冷凍機ユニットと、主膨張手段及び蒸発器を含む利用側ユニットとを備え、冷凍機ユニットは、中圧制御装置も含むことを特徴とする。
請求項5の発明の冷凍装置は、請求項1乃至請求項3の発明において圧縮手段及びガスクーラを含む冷凍機ユニットと、主膨張手段及び蒸発器を含む利用側ユニットとを備え、この利用側ユニットは、中圧制御装置も含むことを特徴とする。
請求項6の発明の冷凍装置は、上記各発明において冷媒として二酸化炭素を使用したことを特徴とする。
圧縮手段にて圧縮され、ガスクーラから出た冷媒を膨張させて圧力を中間圧に下げると、飽和液冷媒とガス冷媒とになる。本発明では、ガスクーラから出た冷媒を膨張させてその圧力を中間圧に下げ、その後、飽和液冷媒とガス冷媒とに分離し、飽和液冷媒を主膨張手段に供給する。そして、気液分離したガス冷媒を膨張させて低温の液冷媒とガス冷媒にする。それを主膨張手段に向かう飽和液冷媒と熱交換させるので、ガス冷媒の冷熱を利用して主膨張手段に向かう液冷媒を過冷却することができるようになる。
これにより、ガスクーラから出た冷媒の状態に拘わらず、過冷却状態で主膨張手段に十分な量の冷媒を供給し、蒸発器に流入する冷媒の乾き度を小さくすることができるようになり、請求項8の発明の如き二酸化炭素冷媒を用いた冷凍装置の蒸発器において大きな冷却効果を得ることが可能となる。
特に、分離したガス冷媒が有する冷却能力を蒸発器での冷却能力に置換することができるようになるので、ガスクーラから出た冷媒のガス比率が高い場合でも、蒸発器における冷却効果の向上を図ることが可能となる。
更に、ガスクーラから出た冷媒を高圧膨張手段にて膨張させてその圧力を中間圧に下げ、その後、中圧受液器に貯留して飽和液冷媒とガス冷媒とに分離するようにすれば、冷媒量の調整効果も得ることができるようになり、冷媒回路内に多めに冷媒を充填することも可能となる。更にまた、中圧受液器にて高圧側圧力の変動も吸収することが可能となるので、一定の中間圧にて飽和液冷媒を主膨張手段に供給することができるようになり、蒸発器における安定した過熱度制御を行うことができるようになる。
この場合、請求項1の発明の如く高圧膨張手段と、中圧受液器と、中圧受液器で分離された飽和液冷媒が流入する液冷媒流路とガス冷媒が流入するガス冷媒流路とを有して両流路を流れる冷媒を熱交換させるガス冷熱回収器と、中圧受液器で分離されたガス冷媒を膨張させた後、ガス冷熱回収器のガス冷媒流路に流入させる中圧膨張手段を有する中圧制御装置を構成し、この中圧制御装置が請求項4の発明の如く、圧縮手段及びガスクーラを含む冷凍機ユニットに含まれるようにすれば、主膨張手段及び蒸発器を含む利用側ユニット側に中圧制御装置を設ける場合に比して、利用側ユニット側における設置スペースを削減することが可能となる。
逆に、請求項5の発明の如く中圧制御装置が利用側ユニットに含まれるようにすれば、店舗に設置されるショーケースユニットと冷凍機ユニットの如く、主膨張手段及び蒸発器を含む利用側ユニットと冷凍機ユニットとが離間して設置される場合に、冷凍機ユニットと利用側ユニットとを接続する長い冷媒配管を高圧で冷媒搬送することができるようになるので、充填冷媒量を削減することができるようになる。
また、請求項2の発明の如くガス冷熱回収器のガス冷媒流路を出た冷媒を、蒸発器を出た冷媒と共に圧縮手段に吸い込ませるようにすれば、中圧受液器内のガス冷媒の圧力を中圧膨張手段により低圧まで落とすことができるようになり、ガス冷媒による高い過冷却効果を期待できるようになる。
更に、請求項3の発明の如く中圧膨張手段に流入するガス冷媒の圧力を検出する中圧膨張手段入口圧力センサと、この中圧膨張手段入口圧力センサの出力に基づいて中圧膨張手段を制御する制御手段とを設けたので、この制御手段により、例えば中圧膨張手段に流入するガス冷媒の圧力が下がり過ぎないように中圧膨張手段を制御することにより、ガス冷熱回収器における飽和液冷媒の過冷却効果を維持することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態にかかる冷凍装置Rの冷媒回路図である。本実施例における冷凍装置Rは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗に設置された低温ショーケースを冷却するものであり、店外に設置された冷凍機ユニット3と、店内に設置された複数台のショーケースユニット(利用側ユニット)5A、5Bとを備え、これら冷凍機ユニット3と各ショーケースユニット5A、5Bとが、冷媒配管7及び9により連結されて所定の冷媒回路1が構成されるものである。
この冷凍装置Rの冷媒回路1は、高圧側の冷媒圧力(高圧圧力)がその臨界圧力以上(超臨界)となる二酸化炭素を冷媒として用いる。この二酸化炭素冷媒は、地球環境に優しく、可燃性及び毒性等を考慮した自然冷媒である。また、潤滑油としてのオイルは、例えば鉱物油(ミネラルオイル)、アルキルベンゼン油、エーテル油、エステル油、PAG(ポリアルキルグリコール)等、既存のオイルが使用される。
冷凍機ユニット3は、圧縮機(圧縮手段)11を備える。本実施例において、圧縮機11は、内部中間圧型多段圧縮式ロータリ圧縮機であり、鋼板から成る円筒状の密閉容器12と、この密閉容器12の内部空間の上側に配置収納された図示しない電動要素及びこの電動要素により駆動される第1の(低段側)回転圧縮要素(第1の圧縮要素)18及び第2の(高段側)回転圧縮要素(第2の圧縮要素)20から構成されている。
第1の回転圧縮要素18は、冷媒配管9を介して冷媒回路1の低圧側から圧縮機11に吸い込まれる低圧冷媒を圧縮して中間圧まで昇圧して吐出し、第2の回転圧縮要素20は、第1の回転圧縮要素20で圧縮されて吐出された中間圧の冷媒を更に吸い込み、圧縮して高圧まで昇圧し、冷媒回路1の高圧側に吐出する。圧縮機11は、周波数可変型の圧縮機であり、前記電動要素の運転周波数を変更することで、第1の回転圧縮要素18及び第2の回転圧縮要素20の回転数を制御可能とする。
圧縮機11の第1の回転圧縮要素18には冷媒導入管21が接続され、この冷媒導入管21に冷媒配管9に接続されている。これらの配管を介して第1の回転圧縮要素18の低圧部に吸い込まれた低圧(LP:通常運転状態で2.5MPa程)の冷媒ガスは、当該第1の回転圧縮要素18により中間圧(MP:通常運転状態で5MPa程)に昇圧されて密閉容器12内に吐出される。これにより、密閉容器12内は中間圧(MP)となる。
そして、密閉容器12内の中間圧の冷媒ガスはインタークーラ22の一端に接続された中間圧吐出配管23に吐出される。インタークーラ22は、第1の回転圧縮要素18から吐出された中間圧の冷媒を空冷するものであり、当該インタークーラ22の他端には、中間圧吸入管24が接続され、この中間圧吸入管24は圧縮機11の第2の回転圧縮要素20の吸込側に接続される。
中間圧吸入管24により第2の回転圧縮要素20の中圧部に吸い込まれた中間圧(MP)の冷媒ガスは、当該第2の回転圧縮要素20により2段目の圧縮が行われて高温高圧(HP:通常運転状態で8MPa程の超臨界圧力)の冷媒ガスとなる。
そして、圧縮機11の第2の回転圧縮要素20の高圧室側に接続された高圧吐出配管26は、オイルセパレータ27、ガスクーラ28、詳細は後述する本発明の中圧制御装置29を介して、冷媒配管7に接続される。尚、本実施例では中圧制御装置29は冷凍機ユニット3に設置されている。
ガスクーラ28は、圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒を放熱させて冷却するものであり、ガスクーラ28の近傍には当該ガスクーラ28を空冷するガスクーラ用送風機31が配設されている。そして、このガスクーラ28の出口配管32に中圧制御装置29の入口配管33が接続されている。
この中圧制御装置29は、電動膨張弁から成る高圧膨張手段34と、所定容量のタンクから成る中圧受液器36と、これも電動膨張弁から成る中圧膨張手段37と、熱交換器から成るガス冷熱回収器38等から構成されている。前記入口配管33は高圧膨張手段34の入口配管であり、この高圧膨張手段34の出口配管39は中圧受液器36内に上部から挿入接続されて内部にて開口している。
この中圧受液器36内底部からは液冷媒配管41が引き出され、中圧受液器36の上部にはガス冷媒配管42が接続されている。ガス冷熱回収器38は液冷媒流路38Aとガス冷媒流路38Bとを有しており、両流路38A、38B内を流れる冷媒同士を熱交換させるものである。そして、このガス冷熱回収器38の液冷媒流路38Aの入口に前記液冷媒配管41の出口が接続されている。中圧膨張手段37はガス冷媒配管42に介設され、このガス冷媒配管42の出口はガス冷熱回収器38のガス冷媒流路38Bの入口に接続されている。
そして、ガス冷熱回収器38のガス冷媒流路38Bの出口は冷媒戻し配管43に接続され、この冷媒戻し配管43は圧縮機11の冷媒導入管21に接続された冷媒配管9に接続されている。また、ガス冷熱回収器38の液冷媒流路38Aの出口は冷媒配管7に接続されている。
一方、ショーケースユニット5A、5Bは、それぞれ店舗内等に設置され、冷媒配管7及び9にそれぞれ並列に接続されている。各ショーケースユニット5A、5Bは、冷媒配管7と冷媒配管9とを連結するケース側冷媒配管44A、44Bを有しており、各ケース側冷媒配管44A、44Bには、それぞれ電動膨張弁から成る膨張手段としての主膨張手段46A、46Bと、蒸発器47A、47Bが順次接続されている。各蒸発器47A、47Bには、それぞれ当該蒸発器に送風する図示しない冷気循環用送風機が隣接されている。そして、当該冷媒配管9は、上述したように冷媒戻し配管43と合流した後、冷媒導入管21を介して圧縮機11の第1の回転圧縮要素18の吸込側に接続されている。これにより、本実施例における冷凍装置Rの冷媒回路1が構成される。
冷凍装置Rの冷凍機ユニット3は、汎用のマイクロコンピュータにより構成される制御手段50を備えている。尚、各電気機器及びセンサは冷凍機ユニット3とショーケースユニット5A、5Bに設けられるものであり、制御手段もそれらにそれぞれ設けられるものであるが、ここでは冷凍機ユニット3の制御手段50について説明する。
制御手段50の入力側には、ガスクーラ28の出口配管32に設けられてガスクーラ28を出た冷媒の温度と圧力を検出するガスクーラ出口温度センサ51及びガスクーラ出口圧力センサ52の出力と、中圧膨張手段37の入口側のガス冷媒配管42に設けられて中圧膨張手段37に流入するガス冷媒の圧力を検出する中圧膨張手段入口圧力センサ53の出力が接続されている。また、制御手段50の入力側には冷媒導入管21に設けられて冷媒回路1の低圧側圧力を検出する低圧センサ54の出力が接続されている。
更に、制御手段50の出力側には、前記圧縮機11、ガスクーラ用送風機31、高圧膨張手段34、中圧膨張手段37が接続されている。制御手段50は各センサの出力に基づいてこれらの圧縮機11及びガスクーラ用送風機31の運転を制御し、各膨張手段34、37の弁開度を制御するものである。
以上の構成で次に動作を説明する。制御手段50により圧縮機11が運転されると、前述したように冷媒導入管21を介して圧縮機11の第1の回転圧縮要素18の低圧部に吸い込まれた低圧(LP:通常運転状態で2.5MPa程)の冷媒ガスは、当該第1の回転圧縮要素18により中間圧(MP:通常運転状態で5MPa程)に昇圧されて密閉容器12内に吐出される。これにより、密閉容器12内は中間圧(MP)となる。
そして、密閉容器12内の中間圧の冷媒ガスは中間圧吐出配管23からインタークーラ22に流入して放熱した後、中間圧吸入管24から圧縮機11の第2の回転圧縮要素20に吸い込まれる。第2の回転圧縮要素20の中圧部に吸い込まれた中間圧(MP)の冷媒ガスは、当該第2の回転圧縮要素20により2段目の圧縮が行われて高温高圧(HP:通常運転状態で8MPa程の超臨界圧力)の冷媒ガスとなり、高圧吐出配管26からオイルセパレータ27を経てガスクーラ28に流入する。
ガスクーラ28で放熱した冷媒は出口配管32から出て中圧制御装置29の入口配管33から高圧膨張手段34に至る。この高圧膨張手段34で冷媒は絞られ、一段目の膨張が行われて圧力は4.5MPa〜5MPaに下げられる。この一段目の膨張により冷媒は飽和液冷媒とガス冷媒となって出口配管39より中圧受液器36内に流入する。中圧受液器36に流入した飽和液冷媒はその内底部に貯留され、ガス冷媒は上部に移動して気液分離が行われる。
この中圧受液器36内に貯留された飽和液冷媒は、液冷媒配管41を経てガス冷熱回収器38の液冷媒流路38Aに流入し、そこを通過して冷媒配管7に流出する。一方、中圧受液器36内上部のガス冷媒は、ガス冷媒配管42を経て中圧膨張手段37に至る。そして、この中圧膨張手段37で低圧まで圧力が下げられて膨張する。
ガス冷媒は、低圧に膨張されると、低温の液冷媒とガス冷媒とになる。この気液混合冷媒はガス冷媒配管42からガス冷熱回収器38のガス冷媒流路38Bに流入し、液冷媒は蒸発する。このときのガス冷媒の冷熱及び液冷媒の蒸発に伴う吸熱作用で、液冷媒流路38Aを通過する飽和液冷媒は過冷却されることになる。
そして、このガス冷熱回収器38で過冷却された飽和液冷媒は分流して各主膨張手段46A、46Bに至り、そこで最終的な膨張が行われて蒸発器47A、47Bに流入し、そこで蒸発する。このときの吸熱作用で冷気を生成し、送風機で庫内に循環することでショーケースユニット5A、5Bの庫内を冷蔵温度に冷却する。
各蒸発器47A、47Bを出た冷媒は合流して冷媒配管9に入る。一方、ガス冷熱回収器38のガス冷媒流路38Bを通過した冷媒は冷媒戻し配管43を経て冷媒配管9に至る。そこで、蒸発器47A、47Bからの冷媒と合流して冷媒導入管21から圧縮機11の第1の回転圧縮要素18に吸い込まれることになる。
制御手段50は、ガスクーラ出口温度センサ51及びガスクーラ出口圧力センサ52の出力に基づき、ガスクーラ28内の冷媒の流速が速くなり過ぎないように高圧膨張手段34の弁開度を制御する。この高圧膨張手段34の弁開度を開け過ぎると、ガスクーラ28内の冷媒の流速が速くなり、ガスクーラ28において十分な放熱を得られなくなる。制御手段50はガスクーラ出口温度と圧力を監視し、ガスクーラ28における所要の放熱能力を維持するように高圧膨張手段34の弁開度を制御する。また、この高圧膨張手段34の弁開度により、中圧受液器36内のガス冷媒の量が決まる。
また、制御手段50は中圧膨張手段入口圧力センサ53の出力に基づき、中圧膨張手段37に流入するガス冷媒の圧力(中間圧)が下がり過ぎないように中圧膨張手段37の弁開度を制御する。即ち、制御手段50は中圧膨張手段37に流入するガス冷媒の圧力が一定の目標値となるように中圧膨張手段37の弁開度を制御する。
尚、各ショーケースユニット5A、5Bも庫内温度を検出する図示しない庫内温度センサと制御手段を備えており、この制御手段により庫内温度に基づいて主膨張手段46A、46Bの弁開度を制御し、庫内温度を所定の冷蔵温度に維持する。冷凍機ユニット3の制御手段50は、低圧センサ54の出力に基づき、低圧側圧力が所定の値より高い場合に圧縮機11の運転周波数を制御して運転する。そして、各主膨張手段46A、46Bが閉じられ、低圧側圧力が所定の値に低下したことで圧縮機11を停止し、主膨張手段46A或いは46Bが開放されて低圧側圧力が上昇したことで圧縮機11を起動する。
図2は係る本発明の冷凍装置Rのp−h線図である。図2の冷媒回路中に(a)〜(m)の符号で示した箇所が、図1中の(a)〜(m)に対応している。ガス冷熱回収器38における過冷却は図2中の(g)から(h)で示す部分であり、その分(i)から(a)までの冷凍効果が増大される効果がある。また、この図からも明らかな如く、−10℃の蒸発温度における冷媒の乾き度(i)は、図5における乾き度(h)よりも著しく低くなっている。
このように、本発明ではガスクーラ28から出た冷媒を膨張させてその圧力を中間圧に下げ、その後、飽和液冷媒とガス冷媒とに分離し、飽和液冷媒を主膨張手段46A、46Bに供給する。そして、気液分離したガス冷媒を中圧膨張手段37で膨張させて低温の液冷媒とガス冷媒にし、それをガス冷熱回収器38にて主膨張手段46A、46Bに向かう飽和液冷媒と熱交換させるようにしたので、ガス冷媒の冷熱を利用して主膨張手段46A、46Bに向かう液冷媒を過冷却することができるようになる。
これにより、ガスクーラ28から出た冷媒の状態に拘わらず、過冷却状態で主膨張手段46A、46Bに十分な量の冷媒を供給し、蒸発器47A、47Bに流入する冷媒の乾き度を小さくすることができるようになり、二酸化炭素冷媒を用いた冷凍装置Rの蒸発器47A、47Bにおいて大きな冷却効果を得ることが可能となる。
特に、分離したガス冷媒が有する冷却能力を蒸発器47A、47Bでの冷却能力に置換することができるようになるので、ガスクーラ28から出た冷媒のガス比率が高い場合でも、蒸発器47A、47Bにおける冷却効果の向上を図ることが可能となる。
更に、ガスクーラ28から出た冷媒を高圧膨張手段34にて膨張させてその圧力を中間圧に下げ、その後、中圧受液器36に貯留して飽和液冷媒とガス冷媒とに分離するので、中圧受液器36にて冷媒量の調整効果も得ることができるようになり、冷媒回路1内に多めに冷媒を充填することも可能となる。更にまた、中圧受液器36にて高圧側圧力の変動も吸収することが可能となるので、一定の中間圧にて飽和液冷媒を主膨張手段46A、46Bに供給することができるようになり、蒸発器47A、47Bにおける安定した過熱度制御を行うことができるようになる。
このとき、高圧膨張手段34と、中圧受液器36と、ガス冷熱回収器38と、中圧膨張手段37を有する中圧制御装置29を構成し、この中圧制御装置29を冷凍機ユニット3に設けているので、ショーケースユニット5A、5B側における設置スペースを削減することが可能となる。
また、ガス冷熱回収器38のガス冷媒流路38Aを出た冷媒を、蒸発器47A、47Bを出た冷媒と共に圧縮機11の第1の回転圧縮要素18に吸い込ませるようにしているので、中圧受液器36内のガス冷媒の圧力を中圧膨張手段37により低圧まで落とすことができるようになり、ガス冷媒による高い過冷却効果を期待できる。
更に、中圧膨張手段37に流入するガス冷媒の圧力を検出する中圧膨張手段入口圧力センサ53を設け、制御手段50により、中圧膨張手段37に流入するガス冷媒の圧力が下がり過ぎないように、一定の目標値となるよう中圧膨張手段37を制御しているので、ガス冷熱回収器38における飽和液冷媒の過冷却効果を維持することが可能となる。
更にまた、ガスクーラ28から出た冷媒の温度と圧力を検出するガスクーラ出口温度センサ51及びガスクーラ出口圧力センサ52を設け、制御手段50により、ガスクーラ28内の冷媒の流速が速くなり過ぎないように高圧膨張手段34を制御しているので、ガスクーラ28における冷媒の放熱能力を確保することが可能となる。
尚、実施例では中圧制御装置29を冷凍機ユニット3に設けたが、それに限らず、スペースが許すならばショーケースユニット5A、或いは、5B側に設けても良い。そのようにすれば、冷凍機ユニット3とショーケースユニット5A、5Bとを接続する長い冷媒配管7を高圧で冷媒搬送することができるようになるので、充填冷媒量を削減することができるようになる。
また、実施例で示した各値はそれに限られるものでは無く、冷凍装置の容量、使用目的に応じて適宜設定されるべきものである。更に、実施例では利用側ユニットとしてショーケースユニットを例に採りあげて本発明を説明したが、それに限らず、家庭用冷蔵庫や業務用冷蔵庫、プレハブ冷蔵庫、空気調和機等にも本発明は有効である。更にまた、冷媒も二酸化炭素に限らず、高圧側が超臨界圧力で運転される各種冷媒に対して本発明の冷凍装置は有効である。