以下に、本発明の実施形態について、図1〜4に基づいて説明する。
図1は、水噴射式織機1の全体構成を概略的に示すものである。水噴射式織機1では、経糸ビーム2からシート状に引き出された複数本の経糸3は、バックローラ4により織前10側へ向けて転向された後、経糸開口装置5における複数の綜絖枠6に取り付けられる複数の綜絖7にそれぞれ挿通され、筬打ち装置8における筬9を経て織前10に連なっている。なお、図示のように、本発明が前提とする水噴射式織機1では、経糸開口装置5及び筬打ち装置8は、織機の主軸11に連結されると共に、主軸11の回転運動によって駆動される、すなわち、主軸11を駆動源とするものとなっている。そして、経糸開口装置5における綜絖枠6及び筬打ち装置8における筬9は、製織中においては、主軸11の回転角度に関連付けて予め定められた動作パターンに従って駆動される。
製織中、経糸開口装置5の動作によって形成された経糸3の開口内には、緯入れ装置12によって緯糸13が緯入れされ、その緯入れされた緯糸13が経糸方向に沿って揺動する筬9によって織前10に打ち付けられる(筬打ちされる)ことにより、織布14が形成される。
緯入れ装置12について、本実施例では、織機フレーム15に固定配置された複数の緯入れノズルとしての4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4と、これらの緯入れノズルに対応して設けられて織機フレーム15に取り付けられた1以上のポンプとしての2つのポンプP1、P2とを備える。詳しくは、以下の通りである。
図2に示すように、4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4は、経糸方向に関し織前10よりも経糸列側で、経糸方向に位置が重複しないように並設された状態で配置されている。また、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4は、その軸線を織幅方向に向けた状態で、ブラケット等によって給糸側の織機フレーム15に対し固定的に支持されている。すなわち、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4の位置は、織機フレーム15に対し固定となっている。なお、図示の例では、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4は、最も反織前10側のものをN1とし、織前10側へ向けて順にN2、N3、N4としてある。
各緯入れノズルN1、N2、N3、N4は、詳細な図示は省略するが、織前10に対する軸線の向きを調整可能に織機フレーム15に支持されており、噴射方向を調整可能となっている。そして、その軸線の向きについては、本実施例では、図3に示すように、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4によって緯入れされた緯糸13の飛走経路が経糸方向においてほぼ同じ位置に向かうように設定されている。より詳しくは、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4によって緯入れされる各緯糸13の飛走経路をそれぞれH1、H2、H3、H4とすると、各飛走経路H1、H2、H3、H4は、反給糸側における経糸列外側の一点へ向かうように、前記軸線の方向が設定されている。
各緯入れノズルN1、N2、N3、N4へ圧力水を供給するためのポンプとして、本実施例では、前記のように2つのポンプP1、P2が設けられている。この2つのポンプP1、P2は、緯入れノズルN1、N2、N3、N4が支持される織機フレーム15の外側面に固定して設けられており(図示略)、給水管を介して対応する緯入れノズルN1、N2、N3、N4と接続されている。なお、本実施例では、図示のように、ポンプP1が緯入れノズルN1、N2に対応し、ポンプP2が緯入れノズルN3、N4に対応するものとなっている。従って、ポンプP1、P2からの圧力水を対応する2つの緯入れノズルN1、N2、緯入れノズルN3、N4のいずれか一方へ選択的に供給するために、ポンプP1と緯入れノズルN1、N2とを接続する給水管、及びポンプP2と緯入れノズルN3、N4とを接続する給水管のそれぞれの経路中には、3位置型の切替弁V1、V2が設けられている。そして、この切替弁V1、V2は、図示しない緯入れ制御装置における緯糸選択装置17から出力される緯糸選択信号Sに従って、その動作が制御される。
緯糸選択装置17は、予め設定された緯入れパターンで定められている緯入れ順序に従って、織機サイクル毎(主軸11の1回転毎)に、選択される緯糸13を示す緯糸選択信号Sを出力する。そして、この緯糸選択装置17からの緯糸選択信号Sに従って各切替弁V1、V2が切り替え動作を行う。具体的には、例えば、緯入れノズルN1によって緯入れされる緯糸13が選択された場合には、切替弁V1は、緯入れノズルN1とポンプP1とを連通状態にすると共に緯入れノズルN2とポンプP1とが非連通状態とされるように切り替えられ、一方、切替弁V2は、ポンプP2を図示しない排出流路へ連通させる(緯入れノズルN3、N4とは非連通状態)ように切り替えられる。これにより、選択された緯糸13に対応する緯入れノズルN1のみにポンプP1からの圧力水が供給され、緯入れノズルN1から圧力水(噴射水)が噴射される結果として、選択された緯糸13の緯入れが実行される。
以上の構成を有する水噴射式織機1において、本発明では、複数の緯入れノズルの各々に対応させるかたちで主軸11の回転数を記憶可能な記憶器19と、緯糸選択装置17から出力される緯糸選択信号Sに応じた緯入れノズルに対応する前記回転数を記憶器19から読み出すと共に読み出した前記回転数に従って主軸11の回転数を制御可能な回転数制御器20とを備える主軸11の回転数制御装置18を有する。
記憶器19は、回転数制御器20に対し通信可能に接続されている。また、記憶器19には、主軸11の回転数を設定するための入力・設定表示装置21が接続されている。そして、記憶器19は、入力・設定表示装置21によって設定(入力)される複数の緯入れノズルの各々に対応させた主軸11の回転数の設定値を記憶する。
入力・設定表示装置21は、例えば、タッチパネル式であり、前記の複数の緯入れノズルの各々に対応させて主軸11の回転数を設定するための設定画面、及び主軸11の回転数の設定値を数値入力するためのテンキー等を読み出して表示可能に構成されている。なお、この設定画面は、例えば、織機に搭載される複数の緯入れノズルと、その複数の緯入れノズルの各々に対応するかたちで設けられた入力設定欄であって前記した主軸11の回転数(以下、単に「回転数」ともいう。)を設定するための複数の入力設定欄とを含むように構成されている。なお、各入力設定欄に対する回転数の設定については、例えば、画面上で設定を行おうとする入力設定欄を選択(タッチ)し、数値入力可能な状態として、テンキーにより回転数の設定値を数値で入力する等によって行われる。また、テンキーには決定ボタンが含まれており、前記設定値の入力が完了した時点で決定ボタンを選択することにより、その設定値が記憶器19に送信され、記憶器19において記憶される。
回転数制御器20は、主軸11の回転数を制御すべく主軸11を回転駆動する主軸モータ22の駆動を制御するものであって、回転数制御器20には、記憶器19に加え、緯糸選択装置17が通信可能に接続されている。この回転数制御器20は、例えば、インバータ装置を含み、インバータ装置からの出力周波数を変更することにより、誘導電動機である主軸モータ22の回転速度(回転数)を制御するものである。
また、回転数制御器20は、緯糸選択装置17から出力される緯糸選択信号Sが入力されることにより、その緯糸選択信号Sに応じて、記憶器19から緯糸選択信号Sに対応する緯入れノズルに対し設定されている回転数の前記設定値を読み出すと共に、読み出した前記設定値に応じた周波数でインバータ装置が出力を行う。それにより、主軸モータ22は、前記設定値に従った回転数で駆動される。なお、緯糸選択装置17からの緯糸選択信号Sの出力は織機1サイクル毎に行われており、回転数制御器20は、この緯糸選択信号Sの入力毎に回転数の設定値の読み出しを行い、設定値が変更される場合には、それに伴って前記出力周波数の変更を行う。
以上で説明した回転数制御装置18について、本実施例では、前記した通り、水噴射式織機1が4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4を備えるものであることから、記憶器19には、4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4の各々に対応させたかたちで回転数の設定値が記憶される。
そして、前記した回転数の設定については、前述の背景技術で述べた各緯入れノズルN1、N2、N3、N4の緯入れ可能期間を考慮して設定されるものであり、本実施例では、前記した開口量による緯入れ可能期間及び筬運動による緯入れ可能期間のうちの後者を考慮して回転数が設定されるものとする。なお、この筬運動による緯入れ可能期間については、本実施例では、具体的には、次のようなものとなる。
図4は、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4によって緯入れされる各緯糸13の飛走経路H1、H2、H3、H4と、織機1サイクルにおいて揺動(往復運動)する筬9との関係を示すグラフである。なお、図4に示すグラフは、縦軸を経糸方向とし、横軸を主軸11の回転角度θ(以下、「クランク角度θ」とも言う。)とするものである。従って、飛走経路H1、H2、H3、H4を示す直線は、緯入れ開始後の各クランク角度θにおける各緯糸13の経糸方向における先端の位置を結んだものに相当する。また、筬9の揺動運動を示す曲線(R)は、各クランク角度θにおける筬9の経糸方向の位置を結んだものに相当する。
図4において、縦軸には、織前10の位置であって筬9の最前進位置がY1として、筬9の最後退位置がY2として示されている。また、図4には、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4が、その経糸方向の位置に応じて示されている。すなわち、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4は、経糸方向に関し、織前10(筬9の最前進位置/Y1)と筬9の最後退位置(Y2)との間に設けられ、前記のように、織前10に最も近い緯入れノズルから順にN4、N3、N2、N1となっているため、それに対応させたかたちで示されている。
また、横軸においては、クランク角度θ=0°から主軸11が1回転する(θ=360°)までの織機1サイクル分が示されており、この織機1サイクル中における各緯入れノズルN1、N2、N3、N4による緯入れ開始時点のクランク角度θがAとして、反給糸側の所定の位置に緯糸13の先端が到達する時点(緯糸到達時点)のクランク角度θがBとして示されている。なお、図示の例では、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4による緯入れ開始時点Aは、全て同じクランク角度θとしてある。すなわち、筬9との揺動位置との関係のみで考えると、織前10に近い緯入れノズルほど先行して緯入れを開始することが可能であるが、経糸3の開口タイミングとの関係等を考慮し、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4が全て同じ時点で緯糸13の緯入れを開始するものとなっている。
また、本実施例では、前述のように、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4の織前10に対する軸線の向き(噴射方向)は、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4によって緯入れされた緯糸13の飛走経路が経糸方向においてほぼ同じ位置に向かうように設定されており、図示の例では、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4によって緯入れされた緯糸13の先端が、全て同じタイミング(クランク角度θ=C)で、織前10へ向けて揺動する筬9と交錯するように設定されている。従って、各飛走経路H1、H2、H3、H4について、飛走経路H1、H2は、経糸方向における緯入れノズルN1、N2の位置から織前10側へ向けて傾斜するものとなり、飛走経路H3、H4は、経糸方向における緯入れノズルN3、N4の位置から反織前10側へ向けて傾斜するものとなっている。
また、曲線Rについて、筬9は、クランク角度θ=360°(0°)において緯糸13を織前10に対し筬打ちするものとなっており、従って、横軸に関する曲線Rの始点はクランク角度θ=0°となり、終点はクランク角度θ=360°となる。また、筬9は、クランク角度θ=180°で最後退位置に達するものであるため、縦軸に関し曲線Rはクランク角度θ=180°で位置Y2に達するものとなっている。
そして、このグラフから、本実施例における各緯入れノズルN1、N2、N3、N4の筬運動による緯入れ可能期間については、次のように理解される。
先ず、前記のように、本実施例では、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4は同じクランク角度θ=Aで緯入れを開始するように設定されるものであるため、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4の筬運動による緯入れ可能期間の始点は、いずれもクランク角度θ=Aとなる。
その上で、緯入れノズルN1、N2の筬運動による緯入れ可能期間について、緯入れノズルN1、N2によって緯入れされる緯糸13は、前述のようにその飛走経路H1、H2が織前10側へ向けて傾斜するものであるため、先端がクランク角度θ=Cにおいて筬9と交錯するよりも前に、後端側において筬9と干渉する。従って、緯入れノズルN1、N2の筬運動による緯入れ可能期間の終点は、その緯入れノズルN1、N2によって緯入れされて各緯入れノズルN1、N2に連なる緯糸13が後端側において筬9と干渉する時点となり、緯入れノズルN1、N2の経糸方向の位置に応じたものとなる。
そして、図4では、上記の各緯糸13が後端側で筬9と干渉する時点は、経糸方向における緯入れノズルN1、N2の位置において横軸と平行に引かれた点線と曲線Rとが緯糸到達時点側で交わる時点であり、その時点のクランク角度θは、それぞれX1、X2として示されている。すなわち、緯入れノズルN1、N2の筬運動による緯入れ可能期間は、緯入れノズルN1がクランク角度θにおいてA〜X1の期間であり、緯入れノズルN2がクランク角度θにおいてA〜X2である。なお、図示のように、クランク角度θにおけるX2はX1よりも後の時点であるため、筬運動による緯入れ可能期間は、緯入れノズルN2の方が緯入れノズルN1よりも長くなっている。
一方、緯入れノズルN3、N4の筬運動による緯入れ可能期間については、前述のように、緯入れノズルN3、N4によって緯入れされる緯糸13の飛走経路H3、H4が反織前10側へ向けて傾斜するものであるため、緯入れノズルN3、N4によって緯入れされる緯糸13は、後端側が干渉するよりも先に先端において筬9と干渉する。従って、緯入れノズルN3、N4の筬運動による緯入れ可能期間は、緯糸13の先端が筬9と交錯する時点、すなわち、クランク角度θ=Cが終点となり、クランク角度においてA〜Cの期間となる。なお、図示のように、クランク角度θ=Cは、前記した緯入れノズルN1、N2の筬運動による緯入れ可能期間の終点であるクランク角度θ=X1、X2よりも後の時点であるため、緯入れノズルN3、N4の筬運動による緯入れ可能期間は、緯入れノズルN1、N2の筬運動による緯入れ可能期間よりも長くなっている。
そこで、本実施例では、前記のような筬運動による緯入れ可能期間を考慮し、筬運動による緯入れ可能期間が緯入れノズルN3、N4よりも短い緯入れノズルN1、N2による緯入れにおいて、筬運動による緯入れ可能期間の時間的な長さを長くして緯入れが安定して行われるようにすべく、後述のように、緯入れノズルN1、N2により緯入れが行われる織機サイクルの主軸11の回転数を、緯入れノズルN3、N4によって緯入れが行われる織機サイクルよりも低く設定するものとする。
因みに、前述の背景技術で述べた開口量による緯入れ可能期間は、経糸方向における緯入れノズルの位置に比例するものであり、本実施例の場合では、経糸方向に関し、織前10に最も近い位置にある緯入れノズルN4が最も短く、織前10から最も遠い位置にある緯入れノズルN1が最も長くなる。すなわち、経糸3の開口量は、織前10に近いほど小さく、織前10側から遠ざかるにつれて大きくなるものであり、緯入れが安定して行われるような開口量が維持される期間が織前10に近いほど短くなるため、開口量による緯入れ可能期間は、緯入れノズルN4からN3、N2、N1の順に従って次第に長くなる。従って、開口量による緯入れ可能期間を考慮して主軸11の回転数を設定する場合には、少なくとも経糸方向に関し織前10から最も遠い位置にある緯入れノズルN1に対し設定される前記回転数が、織前10に最も近い位置にある緯入れノズルN4に対応させる前記回転数よりも高い値に設定される。
また、本実施例の水噴射式織機1では、前述のように、4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4のうちの緯入れノズルN1、N2が共通のポンプP1に接続され、緯入れノズルN3、N4が共通のポンプP2に接続されている。すなわち、4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4の経糸方向に関する配置との関係で言うと、最も反織前10側に位置する緯入れノズルN1とその緯入れノズルN1に隣接する緯入れノズルN2とがポンプP1に接続されており、最も織前10側に位置する緯入れノズルN4とその緯入れノズルN4に隣接する緯入れノズルN3とがポンプP2に接続される構成となっている。言い換えれば、ポンプP1に接続される緯入れノズルN1、N2は、ポンプP2に接続される緯入れノズルN3、N4よりも反織前10側に位置するものとなっている。
その上で、本実施例では、前記の回転数の設定について、ポンプP1に接続される緯入れノズルN1、N2に対し同じ回転数が設定され、ポンプP2に接続される緯入れノズルN3、N4に対し同じ回転数が設定されるものとする。
すなわち、共通のポンプP1に接続される緯入れノズルN1、N2については、互いに隣接して近接した配置となっており、且つ、同じ条件(噴射水の圧力、噴射開始時点)で緯入れを行うものであるため、1つのノズル群(ノズル群G1)とみなすことができる。同様に、共通のポンプP2に接続される緯入れノズルN3、N4についても、互いに隣接して近接した配置となっており、且つ、同じ条件(噴射水の圧力、噴射開始時点)で緯入れを行うものであるため、1つのノズル群(ノズル群G2)とみなすことができる。
そこで、本実施例では、前記の回転数の設定については、このノズル群単位で設定されるものとしてある。言い換えれば、本実施例では、ポンプ毎の緯入れノズルに対し同じ回転数で設定されるものとなっている。また、ノズル群G1(緯入れノズルN1、N2)、及びノズル群G2(緯入れノズルN3、N4)に対し設定される回転数については、経糸方向における各ノズル群の配置、及び前述の筬運動による緯入れ可能期間を考慮し、本実施例では、織前10から遠いノズル群G1に対しては回転数n1が設定され、織前10に近いノズル群G2に対しては回転数n2が設定されるものとする。但し、設定回転数n1については、設定回転数n2よりも低い回転数であって、緯入れノズルN1、N2のうちの筬運動による緯入れ可能期間が短い緯入れノズルN1による緯入れが安定して行われるものに設定される。一方、設定回転数n2については、設定回転数n1よりも高い回転数であって、緯入れノズルN3、N4のうちの筬運動による緯入れ可能期間が短い緯入れノズルN3による緯入れが安定して行われるものに設定される。
なお、本実施例の水噴射式織機1において、ノズル群G1とノズル群G2とは異なるポンプ(ポンプP1、P2)に接続されるため、噴射水の圧力を独立して設定することができる。そこで、本実施例では、生産性を考慮し、高い方の設定回転数n2に対する設定回転数n1の差をより小さいものとするべく、ポンプP1の噴射水の圧力p1がポンプP2の噴射水の圧力p2よりも高い圧力に設定されるものとする。
以上のように、本実施例では、筬運動による緯入れ可能期間を考慮して、4つの緯入れノズルN1、N2、N3、N4の各々に対応させるかたちで主軸11の回転数を記憶器19に記憶されるものとなっており、筬運動による緯入れ可能期間を考慮した結果として、織前10から遠い側に位置するノズル群G1に含まれる緯入れノズルN1及びN2に対しては相対的に低い設定回転数n1が設定・記憶され、織前10に近い側に位置するノズル群G2に対しては相対的に高い設定回転数n2が設定・記憶されている。すなわち、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4に対し設定・記憶される主軸11の回転数は、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4の経糸方向における位置関係を考慮した上で、ノズル群G1、G2単位で設定されている。
その上で、回転数制御器20は、緯糸選択装置17から出力される緯糸選択信号Sに応じて、緯糸選択信号Sが、緯入れノズルN1又はN2に対応するものである場合には記憶器19から設定回転数n1を読み出し、緯入れノズルN3又はN4に対応するものである場合には記憶器19から設定回転数n2を読み出す。そして、回転数制御器20は、記憶器19から読み出した前記回転数に従って主軸モータ22の駆動を制御し、主軸11の回転数を読み出した回転数となるように制御する。
従って、例えば、予め設定された緯入れパターンで定められている緯入れ順序が緯入れノズルN1、N2、N3、N4の順であるとすると、緯糸13を緯入れする緯入れノズルがN1からN2に、あるいは、N3からN4に切り換わる際には、主軸11の回転数の変更は行われないが、緯糸13を緯入れする緯入れノズルがN2からN3に切り換わる際には、反織前10側に位置する緯入れノズルN2に対応する相対的に低い設定回転数n1から織前10側に位置する緯入れノズルN3に対応する相対的に高い設定回転数n2へ主軸11の回転数が変更される。同様に、緯糸13を緯入れする緯入れノズルがN4からN1に切り換わる際には、織前10側に位置する緯入れノズルN4に対応する相対的に高い設定回転数n2から反織前10側に位置する緯入れノズルN1に対応する相対的に低い設定回転数n1へ主軸11の回転数が変更される。
従って、経糸方向において織前10から遠い側のノズル群G1に含まれる緯入れノズルN1、N2であって、筬9の揺動運動が緯入れ可能期間に与える影響がノズル群G2よりも大きい緯入れノズルN1、N2については、例えば、ノズル群G2に合せて主軸11の回転数が一定に設定されている場合と比べ、筬運動による緯入れ可能期間の時間的な長さが長くなるため、緯入れを安定して行うことができる。一方、経糸方向において織前10に近い側のノズル群G2に含まれる緯入れノズルN3、N4については、例えば、ノズル群G1に合せて主軸11の回転数が一定に設定されている場合と比べ、高い回転数で緯入れが行われるため、生産性を向上させることができる。そして、その結果として、水噴射式織機全体としては、各緯入れノズルN1、N2、N3、N4による緯入れが安定して行われると共に、生産性を向上させることができる。
また、本実施例では、ノズル群G1とノズル群G2とが異なるポンプ(ポンプP1、P2)に接続されており、ノズル群毎に噴射水の圧力を独立して設定することができるため、相対的に回転数を低く設定しなければならないノズル群G1(緯入れノズルN1、N2)の噴射水の圧力を高くすることにより、ノズル群G2と同じ噴射水の圧力で緯入れを行う場合と比べ、ノズル群G1による緯入れ時の主軸11の回転数を高めることができ、更なる生産性の向上を図ることができる。しかも、噴射水の圧力のみで前記緯入れ可能期間の時間的な長さに対応するものと比べると、噴射水の圧力を高める度合いを抑えることができるため、使用可能な緯糸13に制限を受けることなく、且つ、緯入れされる緯糸13に損傷を与えることなく、安定して緯入れを行うことができると共に、ポンプの短寿命化を防ぐことができる。
なお、本発明は、以上の実施例で説明したものに限定されるものではなく、以下の様に変形させた態様でも実施することができる。
先ず、前記実施例では、水噴射式織機1が4つの緯入れノズルを備えるものとしたが、本発明が前提とする水噴射式織機1における緯入れノズルの数はこれに限らず、複数の緯入れノズルであれば、3つ以下であっても良いし、5つ以上であっても良い。
また、前記実施例では、4つの緯入れノズルを、最も反織前10側に位置する緯入れノズルN1とそれに隣接して配置される緯入れノズルN2とをノズル群G1としてグループ化すると共に、最も織前10側に位置する緯入れノズルN4とそれに隣接して配置される緯入れノズルN3とをノズル群G2としてグループ化し、各グループに含まれる緯入れノズルに対し同じ回転数が設定されるものとしている。すなわち、前記実施例では、水噴射式織機1に備えられる複数の緯入れノズルのそれぞれに対応させて主軸11の回転数を設定するにあたり、複数の緯入れノズルを、織前10に対する位置順で、各グループに2以上の緯入れノズルが含まれるように2つずつでグループ分けし、各グループに含まれる緯入れノズルに対し同じ回転数が設定されるものとしている。
しかし、本発明による回転数の設定態様はこれに限らず、同じ回転数が設定される各グループに含まれる緯入れノズルの数を、グループ毎に同じ(又はほぼ同じ)としない場合であっても良い。また、複数の緯入れノズルを3つ以上のグループに分けるものとしても良い。但し、ここで言うグループは、複数の緯入れノズルで構成される場合に限らず、1つの緯入れノズルのみで構成される場合も含む。また、1つのグループが複数の緯入れノズルで構成される場合には、その同じグループに含まれる各緯入れノズルは、経糸方向において位置が連続する(他のグループの緯入れノズルが間に位置しない)ものとする。
例えば、前記実施例のように4つの緯入れノズルを備える場合において、織前10側又は反織前10側からの3つの緯入れノズルを1つのグループとし、残りの1つの緯入れノズルを他のグループとして、3つの緯入れノズルから成るグループの各緯入れノズルに対し同じ回転数を設定すると共に、残りの1つの緯入れノズルに対し異なる回転数を設定するものとしても良い。また、最も織前10側及び最も反織前10側に位置する各緯入れノズルをそれぞれ1つのグループとすると共に、残りの2つの緯入れノズルを1つのグループとして3つのグループを構成し、各グループのそれぞれに対し、その位置に応じて適宜に回転数を設定するものとしても良い。さらには、各緯入れノズルを全て別のグループとして、それぞれに対し回転数を設定する、すなわち、緯入れノズル毎に、その位置に応じて異なる回転数を設定するものとしても良い。
このように、本発明における緯入れノズルに対する主軸11の回転数の設定態様については、複数の緯入れノズルを各グループが1以上の緯入れノズルを含む複数のグループにグループ分けし、各グループに含まれる緯入れノズルに対し、グループ単位でその位置に応じて適宜に回転数を設定するものとすれば良い。
なお、前記実施例では、主軸11の回転数の設定について、筬運動による緯入れ可能期間を考慮し、織前10に近い側のグループに対し織前10から遠い側のグループよりも高い回転数を設定するものとしたが、本発明による回転数の設定態様はこれに限らず、例えば、前述した開口量による緯入れ可能期間を考慮し、織前10から遠い側のグループに対し、より高い回転数が設定されるものとしても良い。これは、前記したいずれのグループ分けについても同様である。
また、前記実施例では、2つのグループのそれぞれに含まれる2つの緯入れノズルを同じポンプに接続する、言い換えれば、複数の緯入れノズルで構成されるグループに含まれる各緯入れノズルを同じポンプに接続するものとし、水噴射式織機1が前記グループと同じ数のポンプを備えるものとしたが、本発明が前提とする水噴射式織機1における緯入れノズルとポンプとの組み合わせについてはこのような形態に限らず、例えば、同じグループに含まれる複数の緯入れノズルの一部(1つ又は全数よりも少ない数)が他の緯入れノズルとは異なるポンプに接続される構成であっても良い。従って、本発明では、水噴射式織機1に備えられるポンプの数は、最大で緯入れノズルの数と同数となる。
すなわち、前記のように同じグループに含まれる複数の緯入れノズルによる緯入れは同じ回転数で行われるものであるが、同じグループに含まれていても、経糸方向の位置が異なっていて前述の緯入れ可能期間が異なるため、緯入れ条件(噴射圧力、噴射タイミング等)を異ならせた方が好ましい場合がある。そこで、同じグループに含まれる複数の緯入れノズルのうちの一部の緯入れノズルについては、その位置に応じて他の緯入れノズルとは異なる緯入れ条件で緯入れを行うように、他の緯入れノズルと異なるポンプに接続されるものとしても良い。
また、緯入れノズルとポンプとの組み合わせについて、グループ単位でポンプを対応させるものに限らず、異なるグループに含まれる緯入れノズルが同じポンプに接続される構成としても良い。従って、本発明の水噴射式織機1においては、全ての緯入れノズルが1つのポンプに接続されるものであっても良い。さらには、1つのグループに含まれる複数の緯入れノズルのうちの一部の緯入れノズルを、他のグループの緯入れノズル(全部又は一部)が接続されるポンプに接続する構成としても良い。
例えば、前記実施例の場合のように4つの緯入れノズルN1〜N4を備えると共に、緯入れノズルN1、N2と緯入れノズルN3、N4とがそれぞれグループ化されて各グループに同じ回転数が設定される場合において、緯入れされる緯糸の種類及び/又は前述の緯入れ可能期間、並びに織布の生産性の面を考慮した結果として、主軸11の回転数の設定(変更)のみで所望の製織が可能な場合には、全ての緯入れノズルが1つのポンプに接続され、同じ緯入れ条件で緯入れが行われる構成であっても良い。
また、前記実施例の場合において、緯入れノズルN2、N3を同じポンプに接続し、緯入れノズルN1、N4をそれぞれ別のポンプに接続する構成としても良く、さらには、反織前10側又は織前10側から3つの緯入れノズル(N1〜N3又はN2〜N4)を同じポンプに接続し、残りの1つの緯入れノズルを別のポンプに接続する構成としても良い。この場合でも、前記した同じグループに含まれる緯入れノズルを異なるポンプに接続する場合と同様に、同じグループに含まれる緯入れノズルの緯入れ条件を、その緯入れノズルの位置に関係する緯入れ可能期間等を考慮し、異なるものとすることができる。
このように、本発明が前提とする水噴射式織機1における緯入れノズルとポンプとの組み合わせについては、特定の形態に限定されるものではなく、緯入れノズルの位置(緯入れ可能期間)、緯入れされる緯糸の種類、織布の生産性等を考慮して適宜に設定されるものであれば良い。
また、本発明では、複数の緯入れノズルのうちの最も織前10側に位置する緯入れノズルと最も反織前10側に位置する緯入れノズルとでは異なる回転数が設定されるものであるが、前記実施例では、入力・設定表示装置21は、各緯入れノズルに対する主軸11の回転数の設定が作業者によって任意の設定値(回転数)を入力・設定可能な構成となっており、上記の異なる回転数の設定については、作業者に依存するものとなっている。しかし、このような構成の場合、作業者のミスにより、最も織前10側の緯入れノズルと最も反織前10側の緯入れノズルとに対し同じ回転数が設定されてしまう場合も有り得る。そこで、そのような作業者による設定ミスを回避するために、入力・設定表示装置21に対し、回転数の入力・設定に関する制限機能を持たせるものとしても良い。
具体的には、上記制限機能を実現すべく、入力・設定表示装置21が、最も織前10側及び最も反織前10側の緯入れノズルに対し入力・設定された回転数の設定値を比較する比較器を有するものとする。そして、入力・設定表示装置21において各緯入れノズルに対し回転数が入力・設定された時点(例えば、前記実施例における決定ボタンが選択された時点)で、その比較器が、最も織前10側の緯入れノズルに対し入力・設定された回転数の設定値と最も反織前10側の緯入れノズルに対し入力・設定された回転数の設定値とを比較するものとする。そして、その比較の結果、両設定値が同じ場合には、比較器が設定ミスを示す異常信号等を出力し、この比較器からの異常信号の出力に伴い、入力・設定表示装置21の設定画面上にエラー表示等がなされるようにすれば良い。
また、本発明では、前述のように、複数の緯入れノズルを複数のグループにグループ分けし、同じグループに含まれる複数の緯入れノズルに対し同じ回転数が設定されると共に、各グループに含まれる緯入れノズルの緯入れ可能期間等を考慮してグループ毎に異なる回転数が設定されるものであるが、この場合でも、前記と同様に、作業者による設定ミスにより、複数の緯入れノズルで構成されるグループに含まれる各緯入れノズルに対し異なる回転数が設定されたり、あるいは異なるグループの緯入れノズルに対し同じ回転数が設定されるといった設定ミスを生じる場合が懸念される。そこで、入力・設定表示装置21に対し、このような誤った設定を制限する制限機能を持たせるものとしても良い。
例えば、入力・設定表示装置21において、各緯入れノズルに対しグループを割り当てる設定が行えるようにしておき、予め各緯入れノズルに対しグループを割り当てる設定を行っておく。その上で、入力・設定表示装置21において各緯入れノズルに対し回転数が入力・設定された時点で、前記比較器が、同じグループを割り当てられた複数の緯入れノズルに対し設定された回転数の設定値を比較し、その比較の結果、異なる設定値が入力・設定されている場合に、入力・設定表示装置21の設定画面上にエラー表示等がなされるようにしても良い。あるいは、異なるグループを割り当て設定された緯入れノズルをグループ毎に1つずつ抽出し、それらの緯入れノズルに対し設定された回転数の設定値を比較すると共に、同じ回転数が設定されている場合に、入力・設定表示装置21の設定画面上にエラー表示等がなされるようにしても良い。
また、前記実施例では、主軸11の回転数の設定について、複数の緯入れノズルに対し個別に回転数を設定するものとしたが、本発明において複数の緯入れノズルに対する回転数の設定態様はこれに限らない。
例えば、水噴射式織機1が3つ以上の緯入れノズルを備えると共に、その3つ以上の緯入れノズルを、各グループが1以上の緯入れノズルを含む複数のグループにグループ分けし、グループ毎に回転数を異ならせる場合において、グループ単位で回転数を設定する、すなわち、入力・設定表示装置21における回転数の設定態様を、各グループに対応させて回転数を入力・設定するものとしても良い。具体的には、前記実施例の場合で言うと、入力・設定表示装置21において、グループの数を設定すると共に、4つの緯入れノズルN1〜N4に対し、対応するグループ(ノズル群G1、G2)を割り当てる設定が行えるものとしておき、予め各緯入れノズルN1〜N4に対しグループを割り当てる設定を行っておくと共に、主軸11の回転数を設定するための設定画面においては、各グループに対応させて回転数の入力設定欄が表示される(設けられる)ものとしても良い。
また、上記のように水噴射式織機1に備えられる3つ以上の緯入れノズルが複数のグループにグループ分けされる場合であって、前記実施例のように、水噴射式織機1が前記グループの数と同数のポンプを備え、各ポンプを前記グループに対応させるかたちで緯入れノズルとポンプとが接続される場合において、入力・設定表示装置21における回転数の設定態様を、ポンプ単位で設定する、すなわち、各ポンプに対応させて回転数を入力・設定するものとしても良い。
なお、本発明の実施において、主軸11の回転数を切り換えるに際し、切り換え前後の各回転数の設定値によっては、その切り換えが複数サイクルに亘る場合がある。この場合において、過渡回転状態(主軸11の回転数が切り換え前の設定値から切り換え後の設定値に移行する間の状態)で緯入れが実行されると、その緯入れは、緯入れ可能期間を考慮して設定された回転数で成されるものではないため、緯入れが適正に行われない場合がある。そこで、本発明を実施するにあたり、上記のように回転数の切り換えが複数サイクルに亘る場合には、上記過渡回転状態の織機サイクルにおいては、緯入れを伴わない空打ち運転とするのが好ましい。
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。