JP5968772B2 - 多連モアのモアユニット昇降油圧回路 - Google Patents

多連モアのモアユニット昇降油圧回路 Download PDF

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本発明は、油圧シリンダにより昇降される複数のモアユニットを備えた多連モアにおいて、芝生面に対する各モアユニットの追随性を高めると共に、各モアユニットの踊り(連結部の隙間の存在により、上下に微動すること)を防止して、芝生面の山部又は谷部においても芝生の刈高の均一性を確保できる多連モアのモアユニット昇降油圧回路に関するものである。
多連モアは、油圧により自走する機体の各部に複数のモアユニットが昇降可能に装着され、各モアユニットは当該機体に、1本のリンクと1本の複動型の油圧シリンダを含むリンク装置を介して、当該機体に対する昇降が可能な作業位置、及び非作業時に当該機体に対して下降不能にロックされた持上げ位置のいずれかを選択可能に連結された構成である。
図1は、5連式の多連モアの正面図であり、図2は、図1のモアユニットU3 の部分の拡大図であり、図3は、多連モアの平面図であり、図4は、芝生面の山部の刈取りを行っている状態の側面図である。多連モアの機体31の前部に3基の各モアユニットU1 〜U3 が横方向に沿って所定間隔をおいて配置され、機体31の前後方向の中央部の下方には、2基の各モアユニットU4 ,U5 が、前記した3基の各モアユニットU1 〜U3 の未刈取部の後方に位置する状態で配置されて、機体31は、計5基のモアユニットU1 〜U5 を備えた5連モアである。各モアユニットU1 〜U5 は、リール式であって、その回転軸の一端部にそれぞれ油圧モータ32が連結されて、リール式の各モアユニットU1 〜U5 は、油圧により駆動回転される。なお、図1、図2及び図4において、33,34は、それぞれ機体31の一対の前輪及び後輪を示す。
各モアユニットU1 〜U5 は、いずれも1本のリンクと1本の複動型の油圧シリンダを備えたリンク装置Dによって、機体31に対して昇降可能に連結されて、前側の3基のモアユニットのうち両端の2基のモアユニットU1 ,U3 は、作業位置(B1)と、作業時の持上げ位置(B2)と、モア移動時の持上げ位置である非作業位置(B3)との3位置のいずれかを選択可能にして連結され、各モアユニットU1 ,U3 は、作業時の持上げ位置(B2)では、水平を維持しているが、非作業位置(B3)においては、大きく傾斜した姿勢となる。一方、残りの全てのモアユニットU2 ,U4 ,U5 は、機体31との干渉の関係で、作業時の持上げ位置(B2)と、非作業時の持上げ位置である非作業位置(B3)とがほぼ一致している。
例えば、モアユニットU3 について説明すると、リンクL3 と油圧シリンダS3 の基端部は、いずれも機体31のフレームに回動可能にヒンジ連結され、リンクL3 の先端部は、モアユニットU3 の上部フレーム21の長手方向に沿った中央部に設けられたブラケット22に回動可能に連結され、油圧シリンダS3 のロッドR3 の先端部は、前記リンクL3 の先端に近い部分に一体に設けられたブラケット23に回動可能に連結されている。このため、油圧シリンダS3 のロッドR3 を突出させるとモアユニットU3 は下降すると共に、逆に、当該ロッドR3 を引っ込めるとモアユニットU3 は上昇する。なお、各リンクL1 〜L5 及び各油圧シリンダS1 〜S5 の基端部の機体31に対する支持部の各軸心(CL1 〜CL5 ,CS1 〜CS5 )は、機体31の進行方向Qに沿っていて、各油圧シリンダS1 〜S5 は、平面視でいずれも機体31の幅方向(機体31の進行方向Qと直交する方向)に沿っているが、各リンクL1 〜L5 は、いずれも機体31に支持されている基端部よりもモアユニットU1 〜U5 を支持する先端部の方が機体31の進行方向Qに対して前方に位置するように、平面視において機体31の幅方向に対して傾斜して配置されている。なお、モアユニットU4 ,U5 に関連する軸心(CL4 ,CL5 ,CS4 ,CS5 )は、図示されていない。
この結果、持上げ位置(B2)及び非作業位置(B3)におけるモアユニットU1 〜U5 の持上げ高さは、油圧シリンダS1 〜S5 のロッドR1 〜R5 (油圧シリンダS4 ,S5 の各ロッドは図示されていない)の突出量によって自在に調整でき、後述の油圧回路によって、各油圧シリンダS1 〜S5 にロッド側のシリンダ室1aに対する圧油の供給量によって、各ロッドR1 〜R5 の突出量を自在に調整できる。なお、各モアユニットU1 〜U5 の持上げ時における上昇速度は、ロッド側のシリンダ室1aに対する圧油の供給速度、即ち、油圧ポンプ(以下、単に「ポンプ」と略することもある)Pの回転数により定められる。
図9〜図11は、それぞれ従来の多連モアにおけるモアユニット昇降油圧回路C’における各モアユニットU1 〜U5 の作業位置(B1)における「作業状態」、各モアユニットU1 〜U5 の「上昇状態」並びに作業時の持上げ位置(B2)及び非作業位置(B3)におけるモアユニットU1 〜U5 の下降が阻止された「ロック状態」を示すものである。なお、従来の油圧回路C’及び後述する本発明に係る油圧回路C1 ,C2 を示す図では、各管路を流れる油の圧力状態を視覚的に理解可能にするために、一般の油圧回路図と異なって、線種により上記圧力状態を識別する。ここで、太い実線は、ポンプの圧油が作用している管路を示し、通常の太さの実線は、ポンプPから吐出される油が循環していて、しかもポンプの圧力が作用している管路を示し、一点鎖線は、ポンプの圧力が作用していない管路を示す。
作業位置(B1)においては、図9に示されるように、各油圧シリンダS1 〜S5 のシリンダチューブ1のロッド側のシリンダ室1aには、ポンプPから吐出された圧油が作用する状態で、当該ポンプPから吐出された圧油は、タンクTを通って循環していると共に、反ロッド側の各シリンダ室1bは、ポンプPから吐出された圧油は作用せずに、タンクTに接続されている。このため、平坦な芝生面を刈り取る場合には、機体31に対する各モアユニットU1 〜U5 の上下方向に沿った配置位置は一定していて、換言すると、各油圧シリンダS1 〜S5 の各ロッドR1 〜R5 の突出長は一定していて、シリンダチューブ1に対するピストン2の位置は一定しており、芝生面の芝生は、各モアユニットU1 〜U5 で設定された通りの高さに刈り取られる。一方、例えば、図4に示されるように、芝生面の山部の頂部を乗り超えて芝生を刈り取る場合には、機体31に対する各モアユニットU1 〜U5 の配置位置は、機体31に対して昇降する。この結果、各モアユニットU1 〜U5 の上昇時には、ポンプPから吐出されて循環している油の圧力がピストン2のロッド側に作用しているため、ロッドR1 〜R5 がスムーズに引っ込むことにより、芝生面の芝生は、設定通りの高さに刈り取ることができる。
しかし、各モアユニットU1 〜U5 の下降時において、ロッドR1 〜R5 が突出する際には、ロッド側のシリンダ室1aの油が連続して排出されると共に、反ロッド側の各シリンダ室1bには、油が連続して供給されないと、ピストン2は、スムーズに移動しない。ここで、反ロッド側の各シリンダ室1bは、タンクTに接続されていて、当該各シリンダ室1bへの油の供給は、タンクT内の油を吸引する作用に依存するのみであって、積極的に供給する作用はないために、各ロッドR1 〜R5 の突出方向へのピストン2の移動によって、その背面側である反ロッド側の各シリンダ室1bは、負圧となり、当該負圧は、各ロッドR1 〜R5 の突出、即ち、各モアユニットU1 〜U5 の下降に対して抵抗力として作用し、その結果、自重による各モアユニットU1 〜U5 の下降がスムーズとならない現象が生ずる。この現象により、図4に示されるように、芝生面の山部のように、各モアユニットU1 〜U5 が下降する部分では、芝生の刈高は、設定刈高よりも高くなってしまい、刈高のむらが発生する。近時では、刈取能率の向上のために、機体31の速度は速くなっており、機体31の速度が速くなる程、刈高のむらの発生は顕著となって、刈り取られた芝生面の美観を害する一因となっていた。
また、作業時において各モアユニットU1 〜U5 を持上げ位置(B2)又は非作業位置(B3)まで持ち上げるには、図10に示されるように、方向切替弁V’の接続位置を切り替えることにより、ポンプPから吐出される圧油を各油圧シリンダS1 〜S5 のロッド側のシリンダ室1aに供給して、各ロッドR1 〜R5 を引っ込めることにより、反ロッド側のシリンダ室1b内の油は、ピストン2の移動により排出されて、タンクTに戻される。なお、図9〜図11の油圧回路において、11は、各モアユニットU1 〜U5 の持上げ時において、各油圧シリンダS1 〜S5 のロッド側のシリンダ室1aに供給される圧油の逆流を防止する逆止弁であり、RV1 は、同じくシリンダ室1aに供給される圧油の圧力を設定する第1リリーフ弁である。
上記のようにして、各モアユニットU1 〜U5 を持ち上げた状態において、図11に示されるように、方向切替弁V’の接続位置を切り替えると、ポンプPから吐出される圧油は、方向切替弁V’を通った後に、直ちにタンクTに返送されて、この経路を循環しているのみとなり、各油圧シリンダS1 〜S5 のロッド側のシリンダ室1aに供給された油、及び当該シリンダ室1a及び途中の管路の油は、閉じ込められた状態となって、芝生面から持ち上げられたモアユニットU1 〜U5 は、作業時の持上げ位置(B2)又は非作業位置(B3)に配置されて下降が不能となった「ロック状態」を維持する。
上記したモアユニットU1 〜U5 のスムーズな下降が阻止される現象を避けるために、モアユニットU1 〜U5 の上部フレーム21に設けられたブラケット22に上下方向に沿った長孔を形成して、当該ブラケット22とリンクL1 〜L5 を連結するピンを前記長孔に挿通することにより、機体31に対するモアユニットU1 〜U5 の僅かな昇降を可能にする構造が採用されていた(特許文献1,2)。しかし、この長孔を用いた構造では、当該長孔の上下方向に沿った寸法の範囲内においては、芝刈作業中における機体31に対するモアユニットU1 〜U5 の下降時において、当該モアユニットU1 〜U5 のスムーズな下降には寄与するが、逆に、当該長孔の存在によって、芝刈作業中においてモアユニットU1 〜U5 が上下に踊ってしまい、この踊りが芝生面に対するモアユニットU1 〜U5 の追随性を低下させ、結果として、芝生の刈高品質を低下させると共に、モアユニットU1 〜U5 の寿命を低下させる原因となっていた。
特開平10−276532号公報 特開2000−245224号公報
本発明は、複数のモアユニットが複動型の油圧シリンダにより昇降される多連モアにおいて、芝生面に対する各モアユニットの追随性を高めると共に、機体に対する各モアユニットの踊りをなくして、芝生面の山部又は谷部における芝生の刈高の均一性を確保することを課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、油圧により自走する機体に複数のモアユニットが昇降可能に装着され、各モアユニットは当該機体に、1本のリンクと1本の複動型の油圧シリンダを含むリンク装置を介して、当該機体に対する各モアユニットの昇降が可能な作業位置、及び非作業時に当該機体に対して各モアユニットが下降不能にロックされた持上げ位置のいずれかを選択可能に連結された構成の多連モアにおいて、
単一の油圧ポンプから吐出された圧油が方向切替弁を通って当該単一のポンプの側に戻る圧油の循環路が油圧回路内に形成され、
前記各モアユニットの作業位置では、前記循環路を循環する圧油が、前記各モアユニットの各油圧シリンダにおけるピストンにより二分されたロッド側及び反ロッド側の各シリンダ室の双方に作用する構成であることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、単一の油圧ポンプから吐出された圧油が方向切替弁を通って当該単一のポンプの側に戻る圧油の循環路が油圧回路内に形成され、各モアユニットを昇降させる複動型の各油圧シリンダにおけるピストンにより二分されたロッド側及び反ロッド側の各シリンダ室には、前記循環路を循環している同一圧力の圧油が作用する結果、ピストンの両側には、「ほぼ同一」の力が作用し、しかも二分されたいずれのシリンダ室に対しても、前記循環路を循環している同一圧力の圧油が常に供給可能な状態となっているため、当該ピストンは、芝刈作業時において機体に対してモアユニットが昇降することにより、油圧シリンダのロッドに作用する力によって、いずれの方向にも自由に移動し得る構造が実現される。
従って、芝生面の山部又は谷部を刈り取る場合において、各モアユニットは、平坦な芝生面を走行する基準位置に対して上昇した後に下降したり、逆に下降した後に上昇することがあり、平坦な芝生面に達することにより、前記基準位置に戻る。ここで、機体に対してモアユニットが下降する場合には、油圧シリンダのロッド側のシリンダ室内の圧油が、油圧ポンプから吐出されて循環している循環路に放出されると共に、反ロッド側のシリンダ室に前記循環路を流れている圧油が供給されることにより、モアユニットは、自重により芝生面に追随してスムーズに下降する。なお、機体に対してモアユニットが上昇する場合には、各シリンダ室に対しては、上記の逆の方向に圧油が流れる。また、リンク装置を構成するリンクとモアユニットとの連結部には、遊びを設ける必要がないため、モアユニットの走行中において、当該モアユニットが踊ることもなくなる。この二つの作用が相乗して、多連モアが芝生面の山部又は谷部を走行する場合においても、機体に装着された各モアユニットは、傾斜した芝生面に正確に追随して、芝刈作業を行えるため、芝生の刈高の均一性が確保される。
しかも、請求項1の発明では、以下の特有の作用効果が奏される。上記においては、ピストンの両側に作用する力は、「ほぼ同一」と記述したが、正確には、ロッド側のシリンダ室にはロッドが挿入されているため、ピストンにおけるロッド側のシリンダ室の受圧面積は、反ロッド側のシリンダ室の受圧面積よりも、当該ロッドの断面積だけ小さくなっている。その結果、ピストンの両側に作用する圧油の圧力は同一であるので、ピストンには、ロッドを突出させる方向の力が常に作用する。ピストンに対してロッドの突出方向に作用する油圧力は、モアユニットを芝生面に対して押し付けるように作用するため、芝生面からモアユニットが浮上しようとするのを防止するように作用する。この現象も、芝生の刈高の均一性を高めるように作用する。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、モアユニット昇降油圧回路は、前記油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油を加圧する手段を備えていることを特徴としている。
請求項1の発明は、反ロッド側のシリンダ室とタンクとを連結する管路は、そのまま開放させても、本発明の上記作用と奏されるが、請求項2の発明によれば、油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油を加圧することにより、自重により上下動して芝生面に対して追随できる状態になっている各モアユニットの上下動時、特に上昇時の抵抗を大きくできる。前記圧油を加圧する手段としては、リリーフ弁、又は流入側の圧油の圧力がクラッキング圧を超えた場合にはじめて、圧油を流す構造のクラッキング圧作動型の逆止弁(チェック弁)が挙げられ、これらの弁は、管路におけるタンクに戻される直前の部分に組み込まれる。即ち、これらの弁の作用により、上記抵抗を大きくできて、芝生面に対する各モアユニットの追随性を確保した状態で、各モアユニットの上下動の応答性を低下させられる。油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油を加圧しないで、そのままタンクに流すと、前記抵抗が小さいために、各モアユニットの上下動の応答性が高くなって、例えば、小さな凸部が存在している部分において、各モアユニットが即座に上昇して踊ってしまうが、請求項2の発明によれば、この踊りを防止して、芝生面に対する追随性を高めることができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、モアユニット昇降油圧回路は、前記油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油の圧力を調整可能にしたことを特徴としている。
例えば、管路におけるタンクの直前の部分にリリーフ弁を組み込むことにより、請求項3の発明を実施できる。油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油の圧力を調整することにより、前記抵抗の大きさを調整できて、芝生面の性状等に応じて、各モアユニットの上下動時、特に上昇時の抵抗を最適に調整できる。
本発明は、作業位置では、各モアユニットの各油圧シリンダにおけるピストンにより二分されたロッド側及び反ロッド側の各シリンダ室と油圧ポンプとは、それぞれ異経路を介して接続されて、前記各油圧シリンダの各シリンダ室には、前記油圧ポンプから吐出されて循環路を循環している同一圧力の圧油が作用する構成であるために、油圧シリンダのロッドの突出に対して障害となる圧力類は全く存在しなくなる。その結果、芝生面の山部又は谷部において、機体に対してモアユニットが下降する場合においても、当該モアユニットの自重により即座に下降が可能となって、芝生面に対するモアユニットの追随性が高められる。このため、モアユニットとリンク装置のリンクとの連結部に、上下方向に沿った遊びを設ける必要もなくなって、モアユニットの踊りがなくなる。これらの作用によって、芝生面における山部又は谷部の芝生の刈高の均一性を確保できる。
多連モアの正面図である。 図1のモアユニットU3 の部分の拡大図である。 多連モアの平面図である。 芝生面の山部の頂部において機体31に対してモアユニットU1 〜U5 が下降することを示す多連モアの側面図である。 モアユニットの「作業状態」における本発明の油圧回路C1 を示す図である。 同じく「モアユニットの上昇状態」における油圧回路C1 を示す図である。 同じく「モアユニットのロック状態」における油圧回路C1 を示す図である。 モアユニットの「作業状態」における本発明の別の油圧回路C2 を示す図である。 モアユニットの「作業状態」における従来の油圧回路C’を示す図である。 同じく「モアユニットの上昇状態」における油圧回路C’を示す図である。 同じく「モアユニットのロック状態」における油圧回路C’を示す図である。
以下、「背景技術」の項目で説明した事項をそのまま援用することにより重複説明を避けて、図1〜図7を参照して、本発明の独自の部分についてのみ更に詳細に説明する。
本発明のモアユニット昇降のための油圧回路C1 は、以下の構成において、従来の油圧回路C’と異なっている。本発明の油圧回路C1 に組み込まれる方向切替弁Vは、図5に示されるように、モアユニットU1 〜U5 の「作業状態」に対応するスライド位置において、ポンプPから吐出される圧油が、各油圧シリンダS1 〜S5 のロッド側及び反ロッド側の各シリンダ室1a,1bの双方に作用するような構造になっており、この点が、本発明の最大の特徴となる部分である。これにより、「作業状態」では、ポンプPから吐出された圧油は、各油圧シリンダS1 〜S5 の各シリンダ室1a,1bにそれぞれ作用した状態で、タンクTに排出されることにより、当該タンクTを通って、循環している。従って、各油圧シリンダS1 〜S5 のピストン2の両側には、「ほぼ同一」の力が作用するために、当該ピストン2は、いずれの方向に対しても自由に移動可能である。即ち、各油圧シリンダS1 〜S5 のロッドR1 〜R5 の突出、及び引っ込みは、いずれも同一の条件下でスムーズに行われ、この構成が、従来の油圧回路C’では、各油圧シリンダS1 〜S5 のロッドR1 〜R5 の引っ込みは、スムーズに行われるが、その突出は、ピストン2の背面に発生する負圧が抵抗となって、スムーズとならない(突出速度が遅れる)点を解消している。
即ち、多連モアに使用される複動型の油圧シリンダを含めて、一般産業で使用される油圧シリンダは、対象物に対して特定された一方向に力を作用させることを目的としているため、当然に、ピストンで二分された2つのシリンダ室の一方のみに圧油を作用させている。これに対して、本発明の油圧回路C1 の「作業状態」では、対象物に対して特定された一方向に力を作用させることを目的としておらず、モアユニットの下降時において、ピストンの反ロッド側のシリンダ室に背圧(負圧)が発生するのを防止することを目的としているため、ピストンで二分された各シリンダ室に同一圧力の圧油を作用させている。本発明のような油圧シリンダの使用方法は、油圧シリンダの本来の使用目的に対しては、マイナスに作用するために、極めて特殊な使用方法と言える。
ここで、ロッド側のシリンダ室1aには、ロッドR1 〜R5 が挿入されているため、正確には、ピストン2の両側の受圧面積は、ロッド側の方が反ロッド側よりもロッドR1 〜R5 の断面積分だけ小さくなる。ピストン2の各受圧面に作用する圧力は同一であるので、ピストン2には、各シリンダ室1a,1b内の圧油によって、ロッドR1 〜R5 を突出する方向の力が作用し、当該力は、芝生面に対してモアユニットU1 〜U5 を押し付けるように作用する。この作用も、作業中におけるモアユニットU1 〜U5 の持ち上げを阻止するように働くので、芝刈作業中における当該モアユニットU1 〜U5 の踊りの防止に寄与する。本発明の油圧回路C1 に用いられる各油圧シリンダS1 〜S5 の各ロッドR1 〜R5 の断面積を通常のロッドに比較して大きくすることにより、上記作用が顕著に奏される。
また、「作業状態」の圧油の循環路におけるタンクTの直前の部分には、当該循環路を流れる圧油の圧力を加圧した状態で調整可能な第2リリーフ弁RV2 が組み込まれている。本発明の実施には、第2リリーフ弁RV2 を組み込まずに、ポンプPから吐出された圧油をそのままタンクTに戻してもよいが、この場合には、循環路を流れる圧油の圧力が小さくなってしまい、その結果として、各油圧シリンダS1 〜S5 の各シリンダ室1a,1bに作用する圧油の圧力が小さくなって、各ロッドR1 〜R5 の突出、及び引っ込みが同一条件下で行われることは確保されるが、突出時及び引込み時における圧油による各ロッドR1 〜R5 の移動抵抗が小さ過ぎて、芝生面の僅かな凸部の存在により、各モアユニットU1 〜U5 が即座に応答して持ち上げられ、その結果として、踊ってしまうことがある。第2リリーフ弁RV2 を組み込んだ理由は、上記不具合を防止すべく、ポンプPから吐出される圧油の圧力を、そのまま圧油をタンクTに戻す場合に比較して、高く設定可能として、各シリンダ室1a,1b内の圧力不足に起因する上記踊りを防止するためである。第2リリーフ弁RV2 により、ポンプPから吐出される圧油の圧力の設定により、各油圧シリンダS1 〜S4 の各ロッドR1 〜R4 の出入りがスムーズとなるように確保された状態で、当該各ロッドR1 〜R4 の圧油による移動抵抗を大きくできて、上記踊りを防止できる。
このため、図4に示されるように、芝生面の山部の頂部の刈取りを行う場合においては、芝生面の形状に応じて、機体31に対して各モアユニットU1 〜U5 が昇降するが、機体31に対する各モアユニットU1 〜U5 の上昇及び下降に際しては、上記したように、油圧シリンダS1 〜S5 の各シリンダ室1a,1b内の圧油は、同一に作用するので、芝生面に対する各モアユニットU1 〜U5 の下降の応答性は高いので、芝生の刈高の均一性を確保できる。
また、作業中において、各モアユニットU1 〜U5 を所定位置まで上昇させて、その位置で停止させて、所定時間の経過後に再度下降して芝刈作業を行う場合、或いは非作業時に道路等を走行する際に、各モアユニットU1 〜U5 を最上位置まで上昇させて、その位置で停止させる場合には、図6の「モアユニットの上昇状態」に示されるように、方向切替弁Vの作動位置をスライドさせて、各油圧シリンダS1 〜S5 のロッド側のシリンダ室1aのみにポンプPからの圧油が作用して、反ロッド側のシリンダ室1bには、ポンプPからの圧油が作用しないようにする。ポンプPからの圧油は、逆止弁11を通って各シリンダ室1aに供給されることにより、各モアユニットU1 〜U5 の上昇途中における下降を防止していると共に、各シリンダ室1aには、第1リリーフ弁RV1 で設定された圧力の圧油が作用すべく、当該圧油が設定圧を超えた場合には、第1リリーフ弁RV1 から圧油の一部が放出されるようになっている。また、各モアユニットU1 〜U5 の上昇により、各シリンダ室1bから排出された圧油、及び前記第1リリーフ弁RV1 から放出された圧油は、合流されて、第2リリーフ弁RV2 を通ってタンクTに戻される。
また、上昇時における各モアユニットU1 〜U5 の停止位置は、運転者が方向切替弁Vを図7に示される「モアユニットのロック状態」にスライドさせることにより行う。なお、前側の左右両端の各モアユニットU1 ,U3 のみは、非作業位置において傾斜配置される位置まで上昇されるが、残りの各モアユニットU2 ,U4 ,U5 は、作業姿勢のままで、ほぼその直上の非作業位置まで持ち上げられて停止する。なお、モアユニットU1 〜U5 の「上昇状態」及び「ロック状態」の各作用は、従来の油圧回路C’と同一である。
図8に示される本発明に係る油圧回路C2 は、前記油圧回路C1 の第2リリーフ弁RV2 を、流入側の圧油の圧力がクラッキング圧を超えた場合にはじめて、圧油を流す構造のクラッキング圧作動型の逆止弁(チェック弁)12に換えたものであって、「作業状態」の図である。この逆止弁12の使用によっても、ポンプPから吐出されて、各油圧シリンダS1 〜S5 の各シリンダ室1a,1bに作用する圧油の圧力は、前記クラッキング圧に保持されることにより、当該逆止弁12を使用しない場合に比較して加圧される。
本発明の上記各実施例の油圧回路C1 ,C2 は、本発明の課題を達成するための手段の一例であって、多連モアの各モアユニットを昇降させる油圧シリンダのピストンにより二分される各シリンダ室に、ポンプから吐出されて循環路を循環している圧油の圧力が作用する構造を有する限り、いかなる油圧回路も本発明に含まれる。
また、上記実施例は、本発明を5連モアに実施した例であるが、本発明は、モアユニットの数とは無関係に実施可能であるので、3連モア又は7連モアに対しても実施できる。
また、上記実施例のモアユニットは、リール構造の刈取刃が水平軸を中心にして回転されるリール式であるが、反転椀状のハウジング内において刈取ナイフが垂直軸を中心にして回転するロータ式のものに対しても実施可能である。
1 :モアユニットの作業位置
2 :作業時のモアユニットの持上げ位置
3 :モアユニットの非作業位置
1 ,C2 :モアユニット昇降油圧回路
D:リンク装置
1 〜L5 :リンク
P:油圧ポンプ
1 〜R5 :油圧シリンダのロッド
RV2 :第2リリーフ弁(リリーフ弁)
1 〜S5 :油圧シリンダ
T:タンク
1 〜U5 :モアユニット
1:シリンダチューブ
1a:ロッド側のシリンダ室
1b:反ロッド側のシリンダ室
12:クラッキング圧作動型の逆止弁
31:機体

Claims (3)

  1. 油圧により自走する機体に複数のモアユニットが昇降可能に装着され、各モアユニットは当該機体に、1本のリンクと1本の複動型の油圧シリンダを含むリンク装置を介して、当該機体に対する各モアユニットの昇降が可能な作業位置、及び非作業時に当該機体に対して各モアユニットが下降不能にロックされた持上げ位置のいずれかを選択可能に連結された構成の多連モアにおいて、
    単一の油圧ポンプから吐出された圧油が方向切替弁を通って当該単一のポンプの側に戻る圧油の循環路が油圧回路内に形成され、
    前記各モアユニットの作業位置では、前記循環路を循環する圧油が、前記各モアユニットの各油圧シリンダにおけるピストンにより二分されたロッド側及び反ロッド側の各シリンダ室の双方に作用する構成であることを特徴とする多連モアのモアユニット昇降油圧回路。
  2. 前記油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油を加圧する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の多連モアのモアユニット昇降油圧回路。
  3. 前記油圧ポンプから各油圧シリンダの各シリンダ室に作用する圧油の圧力を調整可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の多連モアのモアユニット昇降油圧回路。
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