JP5968552B2 - 靴底側面の緩衝構造 並びにこれを適用したシューズ - Google Patents
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Description
本出願人も、これまで優れた緩衝性と軽量化とを両立させた実例としてEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等のミッドソール素材にゲル等の緩衝部材を組み合わせた独自の構造設計を採用することで、優れた緩衝性能を実現するに至っている(例えば特許文献1参照)。
一方、シューズ利用者(装着者)や購入検討者が看取したり触れることで緩衝性を実感できるようにするためには、可能な限りシューズ外観に柔らかい緩衝部材(緩衝素材)を広い面積で露呈させればよい。しかしながら、このような緩衝部材は、比較的大きな厚み寸法で構成すると、圧縮変形する際に安定性を低下させる要因や、面積の増加に伴いEVAに対し重くてコスト上昇の要因となることから、できる限り少ない使用量で構成することが望ましい一面も有する。
すなわち、本発明者らは、新たな緩衝構造としてゲル等の緩衝部材を、シューズ側面に適用することを前提としながらも、緩衝部材を圧縮変形させるのではなく、むしろ緩衝部材自体の撓みと張力によって着地時や蹴り出し時の強い衝撃を緩衝しつつ高い安定性を実現し、軽量化及びコスト面においても優れた効果を奏することを見出し本発明に至ったものである。
また、硬質骨部は、上方から見て両端が接続状態に形成される環状(無端状)のものだけでなく、その一部として断片状に形成される「U」字状や弧状等の両端を有するものでも構わず、これをミッドソールの側面に組み込むことが可能である(パーツ化してソールの一部に組み込むことが可能)。
なお、湾曲促進構造としては、例えば上下方向にほぼ沿うように部分的に開口されたスリット、部分肉薄構造(前記スリットの開口部を肉薄状に形成した構成)、穿孔などが挙げられる。また、スリットであれば、例えば開口部分の下端縁が完全に切り離された状態(いわゆる櫛形)も考えられるし、上下端がつながり上下端以外の中段(縦断面の中央付近)だけに開口部が窓状に形成されたものも考えられる。更には、硬質骨部(緩衝構造体)を縦断面視で複数段状(いわゆる多段腹タイプ)とすることも考えられる。
因みに、湾曲促進構造としてスリット(櫛状)を採用した場合には、硬質骨部を板状に形成した場合に比べ、受圧時にソール側面外方に沿って櫛の間隔が広がるように撓み、これがあたかも伸縮性軟質皮部が大きく膨らむようなイメージを与え、見た目の変化を大きく印象付けることができる。
また、受圧荷重の大きさが同じであれば、上記のように途中部分から変形する方が、全体を膨出させるよりもソール側方への張り出しを顕著に視認できるため、膨出位置(開始位置)によって湾曲度合い(張り出し度合い)を調整することができる(チューニングできる)。
なお、このような構造は、硬質骨部(緩衝構造体)を、縦断面視で複数段状に形成する際にも有効である。
また、取付構造の具体的形状にもよるが、受圧時、硬質骨部に形成される取付構造(受け入れ空間)は、上下方向から潰され、内部空間が狭くなるため、当該空間に伸縮性軟質皮部の一部を収容した保持状態で、この伸縮性軟質皮部の保持を確実に行うことができる。
なお、伸縮性軟質皮部を着脱自在とした場合には、伸縮性軟質皮部に、上記取付構造に加えて取り外し用のリブ(操作片)を設けておくと、着脱操作がより容易に行えるものである。
2 硬質骨部
3 伸縮性軟質皮部
4 補助体
5 湾曲促進構造
6 突出強調構造
7 取付構造
8 誘導構造
2 硬質骨部
21 可撓部
22 ソール受け部
23 返し
24 非変形部
5 湾曲促進構造
51 スリット
52 溝(リブ)
53 小孔
6 突出強調構造
61 凸部
62 凹部
7 取付構造
71 受入空間
72 嵌合部
73 掛止部
74 操作片
S 履物(シューズ)
S1 ソール
S11 インソール
S12 アウトソール
S2 アッパー
以下、緩衝構造が組み込まれるシューズSから説明する。
なお、緩衝構造をシューズSに組み込むにあたっては、緩衝性能を強くアピールする目的や意匠性向上等の観点から緩衝構造体自体が極力外部から目視できるように設置されることが望まれており、このため上記図1でもシューズSのソール側面のほぼ全外周縁から目視できるように取り付ける形態を例示している。しかしながら、緩衝構造をソールS1に組み込むにあたっては、例えばソールS1の内部に緩衝構造体1を収容する受入空間を予め形成しておき(図示略)、ここに緩衝構造体1を収容した後、この受入空間を透過部材(透明部材)で閉塞し、緩衝構造を外部から目視できるようにすること等も可能である。
本発明の緩衝構造(緩衝構造体1)は、例えばソールの着地時のように、インソールS11側とアウトソールS12側とで挟まれるように圧縮荷重が加えられた際(受圧時といい、このときの圧縮荷重を受圧荷重と称す)、この衝撃を緩衝するのが主目的であるものの、この緩衝が進行する適度な段階で(底突き現象を起こす前に)、緩衝しきれなかった衝撃力を反発力として装着者の足の蹴り出し動作へとスムーズに移行させるものである。なお、前記受圧荷重は、衝撃荷重が主であるが、静的荷重をも包含するものである。
このような緩衝構造体1としては、一例として図1に示すように、インソールS11とアウトソールS12との間に跨がるように設けられ、受圧時にソール側方に向かって張り出すように変形する硬質骨部2と、この硬質骨部2の外周側において例えば輪ゴム状に設けられる伸縮性軟質皮部3とを主な構成部材として成る。
このように、本実施例の緩衝構造体1は、例えばソールS1の外周面に設けられるものであり(必ずしもソールS1の全周である必要はない)、ミッドソールの位置に設けられる。
このような変形態様であるため、外部からはあたかも伸縮性軟質皮部3自身が膨出変形を起こしているかのように見え、例えば伸縮性軟質皮部3を極めて薄い膜状に形成しても、ゲル等の緩衝部材で形成されることが多い伸縮性軟質皮部3の存在ひいてはシューズSの緩衝性能を効果的にアピールすることができるものである。
また、このような変形構造を採るため、伸縮性軟質皮部3が硬質骨部2の変形(外方への張り出し)を規制する作用を担っているとも言える。
以下、硬質骨部2と、伸縮性軟質皮部3とについて更に説明する。
硬質骨部2は、上述したように受圧時に加わる、受圧荷重によって外周方向に張り出すように湾曲変形を起こすものであり、このため硬質骨部2は、受圧時に単に高さ寸法が縮小して
(潰れて)、体積を減少させる圧縮変形は起こさない(もしくは極めて起こし難い)素材で構成される。具体的には、合成樹脂製の成形品の適用が現実的であり、発泡体などは受圧時にそのまま潰れてしまうので適さないものである。なお当該合成樹脂の一例としてはポリエーテルブロックアミド共重合体(例えばPEBAX(登録商標))などが適用可能である。
因みに、硬質骨部2の外側に設けられる伸縮性軟質皮部3は、ゲル材や各種ゴム材等の粘弾性素材(ゲル等の緩衝部材)が適用され、硬質骨部2より低硬度であり、高い引っ張り強度を有し、受圧荷重が減少して行く除圧時には、自身の弾性で径方向に収縮し、硬質骨部2をも初期状態に復元させるものである。もちろん、伸縮性軟質皮部3の硬度等によって、自身の緩衝作用(膨出変形)はもちろん、硬質骨部2の変形を制限する規制力も変化するものである。
更に、本実施例では、当該ソール受け部22の外周端に、任意で上側への返し23が形成されインソールS11の下端周縁を覆うように形成されている。
なお、この返し23は、ソール側方に面した部分に形成する、すなわちインソールS11の下方に潜り込む部位(入り込む部位)では、インソールS11との接触を避けるために形成されないものである(図2(a)参照)。
もちろん、硬質骨部2は、必ずしもこのようなリング状(輪ゴム状)に形成される必要はなく、例えば図2(b)に示すように、両端部を有する断片状(ここでは平面視「U」字状)に形成されても構わないものである。なお、この場合も、その両端部を固定することで、輪ゴムと同様の伸張や収縮の作用が働き、衝撃緩衝や復元に寄与するものである。
因みに、硬質骨部2を断片状に形成した場合には、例えば図2(c)に示すように、ソールS1(ミッドソール)の側面に沿って取り付けられるものである。このように硬質骨部2は、リング状はもちろん断片状、より詳細には平面視「U」字状や、円弧の一部、あるいは直棒状などに形成しても構わないものである。ここで直棒状を除き、リング状やU字状あるいは円弧を「円弧状」と称するものである。
なお、硬質骨部2を上記図2(a)に示すように、リング状(輪ゴム状)に形成した場合には、アウトソールS12をインソールS11に接合する前の段階で、予め硬質骨部2の下方から伸縮性軟質皮部3を外嵌めした後、これを接着剤でソールS1に固定するのが緩衝構造体1を容易にソールS1に組み込む点で望ましい。
湾曲促進構造5は、一例として図3(a)に示すように、上下方向(受圧方向)にほぼ沿うように交互に切り欠かれたスリット51が挙げられる。ここで、当該スリット51は、開口下端部が完全に切り離された状態で図示されているが(いわゆる櫛形)、例えば図3(b)に示すように、各々のスリット51の下端部をつなげ(切り離されず)、可撓部21に開口部(スリット51)を窓状に開口しても構わない(これもスリット51に含む)。
なお、図3(a)に示すような下端部が切り離されたスリット51は、あたかも櫛形(湾曲櫛形)と言える状態を呈し、これは特に受圧時に櫛歯の一本一本(縦格子)が放射状に膨らむように変形し、あたかも伸縮性軟質皮部3自身が外方に膨らむように見せる点でより効果的である。
更に、他の湾曲促進構造5としては、例えば図3(d)に示すように、可撓部21に複数の小孔53を穿設することも可能である。
因みに、上記のような湾曲促進構造5としての溝52は、見方を変えて溝52が形成されていない部位の肉厚寸法が厚いと捉えれば、リブとも言える。なお、硬質骨部2の製造は、上述したように合成樹脂の成形によって得ることが想定されるので、このような肉厚の差異は、充分に考えられる。このため硬質骨部2(可撓部21)の肉厚を部分的に厚くする構成(リブ形成)も、リブを形成していない部位の変形を行い易くするものであるため湾曲促進構造5の一種と言える。
なお、スリット51や溝52は、形成する際の幅寸法で、硬質骨部2(可撓部21)の張り出し易さを調整できるものである。また、小孔53の場合は、その密度や大きさ等によって、可撓部21の張り出し易さを調整できるものである。
なお、突出強調構造6としては、一例として図4(a)に示すように、可撓部21の外表面に形成したドット状の凸部(突起)61が挙げられるが、この凸部61はライン状に突出させることも可能である。
因みに、突出強調構造6は、必ずしも可撓部21の外表面に形成するだけでなく、例えば図4(b)に示すように、可撓部21の内側部分に形成することも可能であり、ここでは内側部分を凹状に形成している(これを凹部62とする)。すなわち、この場合には、硬質骨部2
(可撓部21)は、受圧時に、この凹部62で強く屈曲しながら湾曲するものであり、これにより伸縮性軟質皮部3を当該部位で強く外側に屈曲させる(膨出が強く強調される)ものである。もちろん、この場合も、突出強調構造6としての凹部62は、上記凸部(突起)61と同様にドット状やライン状に形成することが可能である。
これは、受圧時に硬質骨部2(可撓部21)を上下両端付近から全体的に湾曲させるのではなく、途中部分から湾曲変形を開始させる思想であり、換言すれば非変形部24によって湾曲開始位置を調整し得る思想である。因みに上記図5では、硬質骨部2の断面形状の工夫や、湾曲促進構造5としてのスリット51の上下寸法を短くすること(短寸化)などによって、非変形部24を形成するようにしている。もちろん、その他にも伸縮性軟質皮部3において膨出させたくない部位に、外側からカバー材を嵌め、非変形部24を形成することも可能であり、このようなカバー材については後述する。
なお、受圧荷重の大きさが同じであれば、途中部分から湾曲変形する本実施例の方が全体的に湾曲変形させるよりもソール側方への張り出し時の曲率半径が小さく、視覚的に膨出変形が顕著に観察されるため、膨出開始位置によって、この張り出し度合いを調整することができるものである。
また、このような構成は、硬質骨部2(緩衝構造体1)を、縦断面視で複数段状(いわゆる多段腹状)に形成する際にも有効である(適用され得る)。更に、一つの硬質骨部2において、どこから膨出変形を行わせるか(つまり、どこを非変形部24とするか)によって、種々のバリエーション展開が可能となる。
この取付構造7としては、同図に併せ示すように、硬質骨部2の一部を断面円形状に開口してもよいし(三次元的には球形状の開口)、このような開口をライン状に形成しても構わないものである(このような開口空間を受入空間71とする)。
もちろん、硬質骨部2に取付構造7(受入空間71)を形成した場合には、伸縮性軟質皮部3にも取付構造7として、上記受入空間71に対応した嵌合部72が形成されるものである。
なお、硬質骨部2の一部に取付構造7(受入空間71)を形成する上記技術思想は、接着剤などを用いずに、伸縮性軟質皮部3を硬質骨部2に固定する思想である。従って、シューズSを市場に出荷した後でも、伸縮性軟質皮部3を自由に着脱することができ、例えばユーザが自分の好み(硬さや緩衝性等)に応じて伸縮性軟質皮部3を自ら交換するような形態(商品展開)が可能となる。
また、取付構造7の形状(嵌め合い状況)にもよるが、硬質骨部2に形成された取付構造7(受入空間71)は、受圧時、上下方向から潰され、空間内部が狭くなるため、当該受入空間71に伸縮性軟質皮部3の一部(嵌合部72)を収容した固定状態では、伸縮性軟質皮部3の固定保持を強固に且つ確実に行うものである。
更に、伸縮性軟質皮部3の少なくとも一部が硬質骨部2の上端縁から下端縁まで連続して覆うように取り付けられ、且つ上記取付構造7が、硬質骨部2及び伸縮性軟質皮部3の上端縁と下端縁とに設けられる場合には、硬質骨部2の張り出しによって伸縮性軟質皮部3が押されたときに、両端が固定されていない場合に比べて伸縮性軟質皮部3が硬質骨部2の湾曲に追従して、上下に引っ張られるので(引き伸ばされるので)、ソール側方への張り出しをより顕著に視認させることができる。また伸張や収縮の作用を高めて衝撃緩衝や復元に寄与したり、肉厚をより薄くせしめ伸縮性軟質皮部3が顕著に膨らむように看取させることができるので、靴底の緩衝性能を充分にアピールすることができる。
伸縮性軟質皮部3は、上述したように、前記硬質骨部2の外周側に設けられるものであり、無荷重時に硬質骨部2と全面で接触する態様の他、部分的に接触する態様、更には非接触の態様とすることができる。
すなわち、例えば図7(a)に示すように、伸縮性軟質皮部3が無荷重時に硬質骨部2と、ほとんど接触していない状態(いわゆる浮いた状態)である場合や、例えば図7(b)に示すように、伸縮性軟質皮部3が無荷重時に硬質骨部2と、上下両端部分のみで接触している場合であっても、受圧時には、硬質骨部2がソール側方に張り出すように撓み変形するため、図7(c)に示すように、少なくとも硬質骨部2の一部が伸縮性軟質皮部3と接触し、これにより伸縮性軟質皮部3がソール側方に膨らむように弾性変形するものである。このとき接触部位では当該伸縮性軟質皮部3が硬質骨部2よりも大きな曲率を有してソール側方に膨らむように弾性変形するため、ゲル等の緩衝部材で形成されることが多い伸縮性軟質皮部3の存在、特に伸縮性軟質皮部3が薄い膜状に形成された場合でも、この少量の伸縮性軟質皮部3の存在を効果的にアピールすることができる。
なお、本図7(c)では、伸縮性軟質皮部3の膨らみ変形が一点で大きく突出(屈曲)するように示しているが(その意味では上記突出強調構造6と同じように見えるが)、ここでは受圧時に、伸縮性軟質皮部3が硬質骨部2と接触し、膨らみ変形を起こすことを主に示している。
ここで伸縮性軟質皮部3の取付構造7としては、例えば図8に示すように、硬質骨部2に向けて突出するように形成した爪などの嵌合部72が挙げられ、ここではこの爪(嵌合部72)を伸縮性軟質皮部3の左右両端に設けるように図示している。
なお、このような取付構造7を採用した場合には、上述したように当然、硬質骨部2にも、上記爪(嵌合部72)を嵌め込む受入空間71(取付構造7)が形成されるものであるが、伸縮性軟質皮部3の爪(嵌合部72)を、硬質骨部2のスリット51(湾曲促進構造5)に嵌め込むようにしても構わないものである。つまり、この場合には、スリット51(湾曲促進構造5)の一部が、伸縮性軟質皮部3を硬質骨部2に固定するための取付構造7(受入空間71)の作用を担うものである。
また、このような取付構造7を採用することにより、接着剤などを用いることなく、伸縮性軟質皮部3を硬質骨部2の外周側に取り付けることができ、伸縮性軟質皮部3を着脱自在とする態様が採り易くなる。従って、例えばユーザが自分の好み(硬さ等)や、長距離マラソンなどの長時間の走行や歩行による経時的な足のコンディション(足の浮腫や疲労に伴う走行性や歩行性の変化)に応じて、その場で緩衝性能をカスタマイズできるものである。そして、このようなニーズに応じて伸縮性軟質皮部3を取り替えるようにする商品展開が可能となるものである。
なお、伸縮性軟質皮部3を着脱自在に構成した場合には、上記嵌合部72に加え、一例として図8に併せ示すように、伸縮性軟質皮部3に、取り外し用(着脱操作用)のリブを形成すると、伸縮性軟質皮部3の着脱操作がより容易に行えるものである(このリブを操作片74とする)。
因みに、伸縮性軟質皮部3を着脱自在とする場合には、伸縮性軟質皮部3を断片状(非リング状に形成することが一般的であるが、伸縮性軟質皮部3をリング状(輪ゴム状)に形成した場合でも、このものに爪(嵌合部72)を形成することは可能であり、その場合には、爪が初期位置復元のズレ防止としても機能する。
まず前記硬質骨部2と伸縮性軟質皮部3とは、少なくとも一方が、シューズSの底面側または後方側に向かうほど受圧時に変形し易い構造に形成され得るものである。これは、足裏の部位によって緩衝構造体1の変形のし易さ(撓み易さ)を異ならせる思想の一種である。
具体的には、シューズSの後方側に向かうほど変形し易い構造としては、例えば図9(a)に示すように、シューズ後方側に向かうほど伸縮性軟質皮部3の肉厚寸法(平面から視た肉厚寸法)を徐々に小さくして行くことが挙げられる。つまり、肉厚寸法が薄い後方側ほど伸縮性軟質皮部3は変形し易いものである。
また、シューズSの底面側に向かうほど変形し易い他の構造としては、例えば図9(b)に示すように、シューズ底面側に向かうほど伸縮性軟質皮部3の肉厚寸法(断面視状態で視た肉厚寸法)を小さく形成して行くことが挙げられる。つまり、伸縮性軟質皮部3を断面で視た場合、外周側の外形線が下窄まりの傾斜状態となるように形成するものである。この場合も肉厚寸法が小さい底面側(下方)ほど伸縮性軟質皮部3が変形し易くなるものである。
また例えば図9(d)に示すように、硬質骨部2に湾曲促進構造5として小孔53を形成する場合には、この小孔53を可撓部21の下側のみに形成することも可能である。この場合も、シューズSの底面側に向かうほど硬質骨部2は変形し易い構造となる。なお、可撓部21に対し全体的に湾曲促進構造5として小孔53を形成する場合であっても、その形成密度によって変形のし易さを調整することは可能である。
また、例えば図9(e)に示すように、硬質骨部2に湾曲促進構造5としてスリット51を形成する場合には、このスリット51の間隔を下側ほど広く形成することも可能である。この場合も、シューズSの底面側に向かうほど硬質骨部2が変形し易い構造となる。なお、スリット51を可撓部21の全体に形成するのではなく、可撓部21の下側のみに形成してもシューズSの底面側に向かうほど変形し易い構造が実現できる。
このように、変形のし易さを異ならせる構成は種々想定され、他にも、リブ等で部分的に凹凸を付与することも考えられる。
そして、係る構成(硬質骨部2や伸縮性軟質皮部3を、シューズSの底面側または後方側に向かうほど撓み易いように形成すること(変形のし易さを均一にしないこと))により、着地時の衝撃を硬質骨部2や伸縮性軟質皮部3の変形によって吸収しながら、蹴り出し時にはこの変形を反発力として生かすことができ、スムーズな足の運び(動作)に変換することができる。もちろん、衝撃緩衝性のみを重視した場合に起こり得る底付き感も防止でき、安定性向上に寄与するものである。
ここで、高さ寸法を低くする方向は、シューズSの前方側だけでなく、受圧時の荷重移動方向に設定することも可能である。なお、靴底(側面)のデザインによって例えば土踏まず部分の硬質骨部2と伸縮性軟質皮部3を高さのあるような外観にデザインしたいときであっても、非変形部24で見た目と異なる撓みのチューニングが自在となる。
そして、これらのように硬質骨部2及び伸縮性軟質皮部3の高さを一様にしないことにより、高い方から低い方(傾斜方向)に装着者の体重を移動させ易く、蹴り出し時の足の運び(動作)や荷重移動(体重移動)が行い易くなるものである。
ここで誘導構造8としては、例えば図11(a)に示すように、硬質骨部2(可撓部21)の断面形状の湾曲度合い(屈曲も含む)が挙げられる。より詳細には、可撓部21の断面を、例えばシューズ後方側に向かうに従い、徐々に湾曲度合いを強くして行くものである。この場合、湾曲度合いの強い方(後方側)がより変形し易いので、見かけ硬度としての差が生じ、倒れ易さに差異を付けることが可能となる(ここではシューズ後方側に向かうほど撓み易い)。
なお、倒れ易さを制御する誘導構造8としては、可撓部21等の断面形状だけでなく、表面から見た硬質骨部2の曲線を次第に大きく形成して行くことでも実現できる。また、表面から見た硬質骨部2の変形開始位置を変えれば曲線としては同じ状態に形成されていて倒れ方向を制御することができるものである。
この場合には、緩衝構造体1が、受圧荷重を受けるとスリット51の形成方向に沿って回転する(ねじれる)ように作動するため、ほぼ上下方向に沿った受圧荷重を、回転動作として誘導することができるものである(過内転や過外転の防止に寄与)。
このように、上記誘導構造8における「誘導」とは、シューズ前方側への荷重誘導、受圧方向にほぼ沿った剪断方向への誘導、足裏面における任意の方向への体重移動(荷重誘導)、受圧方向を軸として回転させるねじれ方向への誘導など種々の方向への誘導が想定される。
因みに、上記図9に示した構成(変形のし易さを各部によって異ならせる構成)や、上記図10に示した構成(高さ寸法を徐々に低下させて行く構成)なども、誘導構造8の一種と言えるが、ここでは特に高さ寸法が同じ場合であっても、誘導できる構成を主に示したものである。
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した実施例では、硬質骨部2と伸縮性軟質皮部3とによって受圧荷重による衝撃を緩衝するものであったが、靴底の硬質骨部2の内側は本発明の効果が発揮されればよく、とくに限定されるものではない。すなわち、例えば図12に示すように、硬質骨部2の内周側
(インソールS11とアウトソールS12の間)に、受圧荷重を受けて圧縮変形つまり緩衝を補う補助体4を設けることを否定しない。これにより靴底(側面)に要求されるアッパーソールとの接着強度を高めることができるし、硬質骨部2や伸縮性軟質皮部3に作用する荷重を小さくすることができるものである(分散化)。従って、この補助体4は、硬質骨部2のソール側方への湾曲度合い、ひいては伸縮性軟質皮部3のソール側方への膨らみ具合を調整するものとも言える。もちろん補助体4は、受圧時の硬質骨部2と伸縮性軟質皮部3の変形を阻害しないように設けられる。
なお、補助体4としては、バネ等を適用することが可能であるが、EVA等のソール素材で形成することも可能であり、その場合にはインソールS11またはアウトソールS12の一部を補助体4としてもよい。
また、補助体4に着色を施したり、補助体4の位置を移動や選択できるようにしておけば、硬質骨部2に形成するスリット51を通しての見え方が変わり、伸縮性軟質皮部3の伸び具合等をより積極的にアピールしてもよい。
因みに、スリット51の中段部分を連結する思想は、硬質骨部2の中段部分の剛性を高め、復元動作を素早く行わせ、また中段連結部分が外側に膨らむように湾曲するので伸縮性軟質皮部3もその連結部分が伸張され突出強調構造6となる思想である。従って、その意味では、例えば図14(a)に併せ示すように、伸縮性軟質皮部3においてもその中段部分に上記連結と同様の肉厚部を形成することが可能であり、これにより伸縮性軟質皮部3中段部分の剛性を高めて、復元動作を素早く行わせることができる。
具体的には、図14(b)に示すように、硬質骨部2を内側と外側との二重に形成し(ベルト通しのように部分的に外側に二重となるように形成し、外側の硬質骨部2がカバー材を兼ねるようにする)、その間(ベルト通し)に伸縮性軟質皮部3を通して、伸縮性軟質皮部3を硬質骨部2に固定するものである。
この場合、外側の硬質骨部2(カバー材)は、伸縮性軟質皮部3を押さえる作用を有するため、外側の硬質骨部2(カバー材)には、伸縮性軟質皮部3が膨らみ易いように、大きな開口部(スリット51)を形成することが好ましい。また挿入するだけで固定することも可能となる。
更に、硬質骨部2の内外の開口部(スリット51)を交互に配置すれば、開口部の伸縮性軟質皮部3が、より膨らみ易くなる(より目立つ)。
なお、このような構成(カバー材を設ける構成)により、ゲル等の緩衝部材を接着せずに交換することを可能としたり、復元時の伸縮性軟質皮部3の位置ズレ、特に伸縮性軟質皮部3の巻回方向とほぼ直交する受圧方向の位置ズレが防止できたりするものである。
因みに、上記図14(a)、(b)の構成を同時に採用することも可能であり、これが図14(c)に示した改変例である。
この場合、伸縮性軟質皮部3を図示のような矩形状断面で形成すれば、硬質骨部2と伸縮性軟質皮部3とは、屈曲部の一点で接触するため、受圧時に伸縮性軟質皮部3は、この接触部分で外方に大きく膨らむことになり、独特の緩衝性能が得られるとともに、その効果を視覚的にアピールすることができる。
Claims (13)
- シューズのインソールとアウトソールとの間に設けられ受圧時にソール側面外方に向かって張り出すように変形する硬質骨部と、
この硬質骨部の外周側に設けられる伸縮性軟質皮部とを具え、
着地時に装着者の脚に加わる衝撃を緩衝するようにした靴底側面の緩衝構造において、
前記硬質骨部は、少なくとも一部がソール側面に沿って設けられ、
且つ前記硬質骨部と伸縮性軟質皮部とは、
受圧時に、硬質骨部がソール側方に張り出すように縦断面に湾曲変形し、またこの変形を受けて伸縮性軟質皮部がソール側方に膨らむように弾性変形して受圧荷重の緩衝を図るものであり、
その後、除圧に伴い、今度は伸縮性軟質皮部がソール内側に縮むように弾性変形し、これに伴いソール側方に張り出していた硬質骨部が初期状態に復元する構造であることを特徴とする、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部は、踵、母指球、小指球のうち、少なくともいずれかの下に位置するように設けられ、
また上方から見てソール側面外方に沿って硬質骨部の全体または一部が円弧状に配置されることを特徴とする請求項1記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部は、受圧時にソール側方に張り出す湾曲変形を促す湾曲促進構造を具えることを特徴とする請求項1または2記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部の外周側に設けられる伸縮性軟質皮部の外側には、更にカバー材を設けるものであり、このカバー材によって伸縮性軟質皮部のソール側方への膨らみ変形を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部と伸縮性軟質皮部とには、伸縮性軟質皮部の少なくとも一部を、硬質骨部の外表面側に保持する取付構造が具えられることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記伸縮性軟質皮部は、少なくとも一部が硬質骨部の上端縁から下端縁まで連続して硬質骨部を覆うように取り付けられ、且つ上記取付構造は、硬質骨部及び伸縮性軟質皮部の上端縁と下端縁とに設けられるものであり、
受圧時に硬質骨部がソール側方に湾曲することによって伸縮性軟質皮部が上端と下端側とに引っ張られることを特徴とする請求項5記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記伸縮性軟質皮部の少なくとも一部は、無荷重時に硬質骨部の外表面に非接触であり、受圧時に当該伸縮性軟質皮部の内側表面の少なくとも一部が、硬質骨部の外表面に接触し、この接触部位では伸縮性軟質皮部が硬質骨部よりも高さ方向に大きな曲率を有してソール側方に膨らむように弾性変形することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部と伸縮性軟質皮部とのうち少なくとも一方は、シューズの底面側または後方側に向かうほど受圧時に変形し易い構造に形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部と伸縮性軟質皮部とは、シューズの前方側または受圧時の荷重移動方向に向けて、高さ寸法が徐々に低くなるように形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部と伸縮性軟質皮部とのうち少なくとも一方には、受圧荷重をシューズの前方側または受圧時の荷重移動方向に案内する誘導構造を具えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記硬質骨部の内側には、受圧荷重を受けて圧縮変形を行い衝撃の緩衝を補う補助体を設けることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 前記伸縮性軟質皮部は、着脱自在であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の、靴底側面の緩衝構造。
- 着地時に装着者の脚に加わる衝撃を緩衝する緩衝構造をソールに組み込んで成るシューズであって、
前記緩衝構造は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の緩衝構造が適用されることを特徴とするシューズ。
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