以下に添付図面を参照して、表示処理装置、表示処理システム、表示処理方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
まず、本実施の形態に係る画像形成システムの構成について図1を用いて説明する。本実施の形態においては、画像形成システム1は、ホスト装置10と、プリンタ制御装置(DFE:Digital Front End)50(以下、「DFE50」という。)と、インタフェースコントローラ(MIC:Mechanism I/F Contoroller)60(以下、「MIC60」という。)と、プリンタ機70と、後処理機としてグロッサ80及び低温定着機90とが接続されて構成される。DFE50は、MIC60を介してプリンタ機70と通信を行い、プリンタ機70での画像の形成を制御する。また、DFE50には、PC(Personal Computer)等のホスト装置10が接続され、DFE50は、ホスト装置10から画像データを受信して、当該画像データを用いて、プリンタ機70がCMYKの各トナー及びクリアトナーに応じたトナー像を形成するための画像データを生成してこれをMIC60を介してプリンタ機70に送信する。プリンタ機70には、CMYKの各トナーとクリアトナーとが少なくとも搭載されており、各トナーに対して感光体、帯電器、現像器及び感光体クリーナを含む作像ユニット、露光器及び定着機が各々搭載されている。
ここで、クリアトナーとは、色材を含まない透明な(無色の)トナーである。なお、透明(無色)とは、例えば、透過率が70%以上であることを示す。
プリンタ機70は、MIC60を介してDFE50から送信された画像データに応じて、露光器から光ビームを照射して各トナーに応じたトナー像を感光体上に形成して、これを記録媒体としての紙に転写しこれを定着機によって所定の範囲内の温度(通常温度)での加熱及び加圧で定着させる。これによって紙に画像が形成される。なお、紙は記録媒体の一例であり、記録媒体としてはこれに限定されるものではない。例えば、記録媒体として、合成紙やビニール紙等も適用することができる。
グロッサ80は、DFE50から指定されるオンオフ情報によりオン又はオフが制御され、オンにされた場合に、プリンタ機70により紙に形成された画像を高温及び高圧で加圧し、その後、冷却して本体から画像が形成された紙を剥離する。これにより紙に形成された画像全体において所定以上のトナーが付着した各画素のトナーの総付着量は均一に圧縮される。低温定着機90には、クリアトナー用の感光体、帯電器、現像器および感光体クリーナを含む作像ユニット、露光器及び当該クリアトナーを定着させるための定着機が搭載されており、低温定着機90を用いるためにDFE50が生成した後述のクリアトナー版の画像データが入力される。低温定着機90は、当該低温定着機90が用いるためのクリアトナー版の画像データ(クリアトナー版データ)をDFE50が生成した場合にはこれを用いてクリアトナーによるトナー像を形成して、グロッサ80が加圧した紙上に当該トナー像を重ねて、定着機によって通常よりも低い加熱または加圧で紙に定着させる。
ここで、ホスト装置10から入力される画像データ(原稿データ)について説明する。ホスト装置10では、予めインストールされた画像処理アプリケーション(後述する画像処理部120、版データ生成部122、印刷データ生成部123等)により画像データが生成されて、DFE50に送信される。このような画像処理アプリケーションでは、RGB版やCMYK版などの各色版における各色の濃度の値(濃度値という)を画素毎に規定した画像データに対して、特色版の画像データを取り扱うことが可能である。特色版とは、CMYKなどの基本的なカラーの他に、白、金、銀といった特殊なトナーやインクを付着させるための画像データであり、このような特殊なトナーやインクを搭載したプリンタ向けのデータである。特色版は色再現性を向上させるためにCMYKの基本カラーにRを追加することや、RGBの基本カラーにYを追加することもある。通常、クリアトナーも特色の1つとして取り扱われていた。
本実施の形態における画像形成システム1においては、CMYKの基本カラーのトナーである有色現像剤に加えて、特色としてのクリアトナーである透明現像剤を用いることとする。本実施の形態の画像形成システム1においては、クリアトナーを用いることにより、異なる複数種類の透明処理(クリア処理ともいう)を実行する。クリア処理の種類としては、クリアトナーを用いることにより、紙に付与する視覚的または触覚的な効果である表面効果を形成する処理と、紙に、上記表面効果以外のウォータマークやテクスチャ等のクリア画像(透明画像)を形成する処理とがある。
このため、ホスト装置10の画像処理アプリケーションは、入力された画像データに対して、有色版の画像データ(有色版画像データともいう)の他、特色版の画像データ(特色版画像データともいう)として、ユーザの指定により、光沢制御版の画像データ(光沢制御版画像データともいう)および/またはクリア版の画像データ(クリア版画像データともいう)とを生成する。
ここで、有色版の画像データとは、画素毎にRGBやCMYK等の有色の濃度値を規定した画像データである。この有色版の画像データでは、ユーザによる色の指定により、1画素を8ビットで表現される。図2は、有色版の画像データの一例を示す説明図である。図2において、ハートオブジェクト、四角形の領域に配置された写真オブジェクト等のオブジェクトごとにユーザが画像処理アプリケーションで指定した色に対応する濃度値が付与される。
また、光沢制御版の画像データとは、紙に付与する視覚的または触覚的な効果である表面効果に応じたクリアトナーを付着させる制御を行うため、当該表面効果の与えられる領域および当該表面効果の種類を特定した画像データである。
この光沢制御版の画像データは、RGBやCMYK等の有色版と同様に画素毎に8ビットで「0」〜「255」の範囲の濃度値で表され、この濃度値に、表面効果の種類が対応付けられる(濃度値は16ビットや32ビット、または0〜100%で表してもよい)。また、同一の表面効果を与えたい範囲には実際に付着するクリアトナーの濃度と関係なく同一の値が設定されるため、領域を示すデータがなくとも必要に応じて画像データから容易に領域が特定できる。即ち、光沢制御版の画像データによって、表面効果の種類と、表面効果を与える領域とが表される。
ホスト装置10は、ユーザが画像処理アプリケーションにより指定した描画オブジェクトに対する表面効果の種類を、描画オブジェクトごとに光沢制御値としての濃度値として設定してベクタ形式の光沢制御版の画像データを生成する。
この光沢制御版の画像データを構成する各画素は、有色版の画像データの画素に対応する。尚、各画像データにおいては各画素の表す濃度値が画素値となる。また、有色版の画像データ及び光沢制御版の画像データは共にページ単位で構成される。
表面効果の種類としては、大別して、光沢の有無に関するものや、表面保護や、情報を埋め込んだ透かしや、テクスチャなどがある。光沢の有無に関する表面効果については、図3に例示されるように、大別して4種類あり、光沢の度合い(光沢度)の高い順に、鏡面光沢(PG:Premium Gloss)、ベタ光沢(G:Gloss)、網点マット(M:Matt)及びつや消し(PM:Premium Matt)等の各種類がある。これ以降、鏡面光沢を「PG」、ベタ光沢を「G」、網点マットを「M」、つや消しを「PM」と呼ぶ場合がある。
鏡面光沢やベタ光沢は、光沢を与える度合いが高く、逆に、網点マットやつや消しは、光沢を抑えるためのものであり、特に、つや消しは、通常の紙が有する光沢度より低い光沢度を実現するものである。同図中において、鏡面光沢はその光沢度Gsが80以上、ベタ光沢は一次色あるいは二次色のなすベタ光沢度、網点マットは一次色、かつ網点30%の光沢度、つや消しは光沢度10以下を表している。また、光沢度の偏差をΔGsで表し、10以下とした。このような表面効果の各種類に対して、光沢を与える度合いが高い表面効果に高い濃度値が対応付けられ、光沢を抑える表面効果に低い濃度値が対応付けられる。その中間の濃度値には、透かしやテクスチャなどの表面効果が対応付けられる。透かしとしては、例えば、文字や地紋などが用いられる。テクスチャは、文字や模様を表すものであり、視覚的効果の他、触覚的効果を与えることが可能である。例えば、ステンドグラスのパターンをクリアトナーによって実現することができる。表面保護は、鏡面光沢やベタ光沢で代用される。尚、処理対象の画像データによって表される画像のどの領域に表面効果を与えるのかやその領域にどの種類の表面効果を与えるのかについては、画像処理アプリケーションを介してユーザにより指定される。画像処理アプリケーションを実行するホスト装置10では、ユーザにより指定された領域を構成する描画オブジェクトについて、ユーザが指定した表面効果に対応する濃度値がセットされることにより、光沢制御版の画像データが生成される。濃度値と表面効果の種類との対応関係については後述する。
図4は、光沢制御版の画像データの一例を示す説明図である。図4の光沢制御版の画像データ例では、ユーザにより、描画領域「ハートオブジェクト」および「写真オブジェクト」に表面効果「G(ベタ光沢)」が付与され、描画領域「リボンオブジェクト」に表面効果「M(網点マット)」が付与された例を示している。なお、各表面効果に設定された濃度値は、後述の濃度値選択テーブル(図9参照)で、表面効果の種類に対応して定められた濃度値である。
クリア版の画像データとは、上記表面効果以外のウォータマークやテクスチャ等の透明画像を特定した画像データである。図5は、クリア版の画像データの一例を示す説明図である。図5の例では、ユーザにより、ウォータマーク「Sale」が指定されている。
このように、特色版の画像データである、光沢制御版およびクリア版の画像データは、ホスト装置10の画像処理アプリケーションにより、有色版の画像データとは別のプレーンで生成される。また、有色版の画像データ、光沢制御版の画像データ、クリア版の画像データの各画像データの形式は、PDF(Portable Document Format)形式が用いられ、各版のPDFの画像データを統合して原稿データとして生成される。原稿データのデータ形式にも、PDF形式が用いられる。なお、各版の画像データのデータ形式は、PDFに限定されるものではなく、任意の形式を用いることができる。
次に、このような各版の画像データを生成するホスト装置10の詳細について説明する。図6は、ホスト装置10の概略構成例を示すブロック図である。図6に示すように、ホスト装置10は、I/F部11と、記憶部12と、入力部13と、表示部14と、制御部15とを含んで構成される。I/F部11は、DFE50との間で通信を行うためのインタフェース装置である。記憶部12は各種のデータを記憶するハードディスクドライブ装置(HDD)やメモリ等の記憶媒体である。入力部13は、ユーザが各種の操作入力を行うための入力デバイスであり、例えばキーボードやマウスなどで構成され得る。表示部14は、各種画面を表示するための表示デバイスであり、例えば液晶パネルなどで構成され得る。
制御部15は、ホスト装置10全体を制御し、CPU、ROMおよびRAMなどを含んで構成されるコンピュータである。図6に示すように、制御部15は、入力制御部124と、画像処理部120と、表示制御部121と、版データ生成部122と、印刷データ生成部123と、プレビュー画像処理部125とを主に備えている。これらの各部のうち入力制御部124および表示制御部121は、制御部15のCPUがROM等に格納されたオペレーティングシステムのプログラムを読み出してRAM上に展開して実行することにより実現される。画像処理部120、版データ生成部122、印刷データ生成部123およびプレビュー画像処理部125は、制御部15のCPUがROM等に格納された上述の画像処理アプリケーションのプログラムを読み出してRAM上に展開して実行することにより実現される。ここで、版データ生成部122は、例えば、画像処理アプリケーションにインストールされたプラグインの機能として提供される。なお、これらの各部のうちの少なくとも一部を個別の回路(ハードウェア)で実現することも可能である。
入力制御部124は、入力部13からの各種入力を受け付けて入力を制御する。例えばユーザは、入力部13を操作することにより、記憶部12に記憶された各種画像(例えば写真、文字、図形、これらを合成した画像等)のうち表面効果を与えるべき画像、すなわち有色版の画像データ(以下、「対象画像」と呼ぶ場合もある。)を指定する画像指定情報を入力することができる。なお、これに限らず、画像指定情報の入力方法は任意である。
表示制御部121は、表示部14に対する各種情報の表示を制御する。本実施の形態では、表示制御部121は、入力制御部124で画像指定情報を受け付けた場合、その画像指定情報で指定された画像を記憶部12から読み出し、その読み出した画像を画面上に表示するように表示部14を制御する。
ユーザは、表示部14に表示された対象画像を確認しながら、入力部13を操作することにより、表面効果を与える領域および当該表面効果の種類を指定する指定情報を入力することができる。なお、指定情報の入力方法は、これに限られるものではなく、任意である。
より具体的には、表示制御部121は、例えば、図7に例示される画面を表示部14に表示させる。この図7は、Adobe System(R)社が販売しているIllustratorにプラグインを組み込んだ場合に表示される画面の例である。図7に示される画面では、処理対象である対象画像データ(有色版の画像データ)によって表される画像が表示され、ユーザが入力部13を介してマーカ追加ボタンを押下して、表面効果を与えたい領域を指定する操作入力を行うことで、表面効果を与える領域が指定される。ユーザは表面効果を与える全ての領域に対してこのような操作入力を行うことになる。そして、ホスト装置10の表示制御部121は、例えば、指定された領域毎に、図8に例示される画面を表示部14に表示させる。図8に示される画面では、表面効果を与えるものとして指定された各領域において当該領域の画像が表され、当該画像に対して与えたい表面効果の種類を指定する操作入力を入力部13を介して行うことで、当該領域に対して与える表面効果の種類が指定される。表面効果の種類として、図3の鏡面光沢やベタ光沢は図8では「インバースマスク」と表記されており、図3の鏡面光沢やベタ光沢を除く他の効果は、図8のステンドグラスや万線パターンや網目パターンやモザイクスタイルと、網点マット、ハーフトーンとして表記されており、各々の表面効果が指定可能であることが示されている。
図6に戻り、画像処理部120は、対象画像に対して、ユーザからの入力部13を介した指示に基づいて、各種画像処理を行う。
版データ生成部122は、有色版の画像データ、光沢制御版の画像データ、クリア版の画像データをそれぞれ生成する。すなわち、版データ生成部122は、入力制御部124で、対象画像の描画オブジェクトに対するユーザによる色指定を受け付けた場合、当該色指定に従って、有色版の画像データを生成する。
また、版データ生成部122は、入力制御部124で、表面効果以外のウォータマークやテクスチャ等の透明画像及び透明画像を付与する領域の指定を受け付けた場合、当該ユーザからの指定に従って、透明画像および透明画像を付与する紙における領域とを特定するためのクリア版の画像データを生成する。
また、版データ生成部122は、入力制御部124で指定情報(表面効果を与える領域および当該表面効果の種類)を受け付けた場合、当該指定情報に基づいて、紙において表面効果が与えられる領域および当該表面効果の種類を特定可能な光沢制御版の画像データを生成する。ここで、版データ生成部122は、光沢制御値で示す表面効果を付与する領域を、対象画像の画像データの描画オブジェクトの単位で指定した光沢制御版の画像データを生成する。
ここで、記憶部12には、ユーザにより指定された表面効果の種類と、当該表面効果の種類に対応する光沢制御版の濃度値とを記憶する濃度値選択テーブルが格納される。図9は、濃度値選択テーブルの一例を示す図である。図9の例では、ユーザによりクリア処理として表面効果「PG」(鏡面光沢)が指定された領域に対応する光沢制御版の濃度値は「98%」であり、「G」(ベタ光沢)が指定された領域に対応する光沢制御版の濃度値は「90%」であり、「M」(網点マット)が指定された領域に対応する光沢制御版の濃度値は「16%」であり、「PM」(つや消し)が指定された領域に対応する光沢制御版の濃度値は「6%」である。
この濃度値選択テーブルは、DFE50で記憶している表面効果選択テーブル(後述)の一部のデータであり、制御部15が所定のタイミングで表面効果選択テーブルを取得して、取得した表面効果選択テーブルから生成して記憶部12に保存する。なお、インターネット等のネットワーク上のストレージサーバ(クラウド)に表面効果選択テーブルを保存しておき、制御部15が当該サーバから表面効果選択テーブルを取得して、取得した表面効果選択テーブルから生成するように構成してもよい。ただし、DFE50で記憶している表面効果選択テーブルと記憶部12に保存されている表面効果選択テーブルとは同じデータである必要がある。
図6に戻り、版データ生成部122は、図9に示す濃度値選択テーブルを参照しながら、ユーザにより所定の表面効果が指定された描画オブジェクトの濃度値(光沢制御値)を、当該表面効果の種類に応じた値に設定することで、光沢制御版の画像データを生成する。例えばユーザにより、図2に示した有色版の画像データである対象画像のうち、「ハートオブジェクト(ハートの描画領域)および写真オブジェクト(写真の描画領域)に「G」を与え、有色版の画像データの下方に配置されたリボンオブジェクト(リボンの描画領域)に「M」を与えることが指定された場合を想定する。この場合、版データ生成部122は、ユーザにより「G」が指定された描画領域(ハートオブジェクトおよび写真オブジェクト)の濃度値を「90%」に設定し、「M」が指定された描画領域(「リボンオブジェクト」濃度値を「16%」に設定することで、光沢制御版の画像データを生成する。版データ生成部122で生成された光沢制御版の画像データは、点の座標と、それを結ぶ線や面の方程式のパラメータ、および、塗り潰しや特殊効果などを示す描画オブジェクトの集合として表現されるベクタ形式のデータである。図4は、この光沢制御版の画像データをイメージとして示した図である。版データ生成部122は、光沢制御版の画像データと、対象画像の画像データ(有色版の画像データ)と、クリア版の画像データとを統合した原稿データを生成して印刷データ生成部123へ渡す。
図10は、印刷データ生成部123により生成された原稿データ300を示す図である。原稿データは、同一ページ中に、複数の描画領域(オブジェクト)を示す描画情報を含んでいる。図10に示す原稿データの例においては、1ページ目において、オブジェクト1〜オブジェクト4の4つのオブジェクトがクリア処理の対象として指定されている。各オブジェクトは、有色版の画像データと光沢制御版の画像データとによって特定される。
図10に示す例では、オブジェクト1は、有色版の画像データによって特定される有色画像の描画領域である。すなわち、オブジェクト1は、有色版の画像データによって、対応する記録媒体に有色トナー(有色現像剤)により画像が形成されることが指定されている領域である。オブジェクト2〜オブジェクト4は、いずれも光沢制御版の画像データによって特定される描画領域である。すなわち、オブジェクト2〜オブジェクト4は、光沢制御版の画像データに対応するクリア処理が施され、光沢制御版の画像データにより、対応する記録媒体にクリアトナーにより画像が形成されることが指定されている領域である。
原稿データは、オブジェクト毎に、描画情報として、描画領域の位置や、色空間や、濃度を示す情報を含む。描画領域の位置は、例えば、座標情報または座標情報の集合によって示される。色空間とは、各描画領域(オブジェクト)が、有色画像、透明画像、及び光沢領域の何れであるかを示す。なお、図10中また後述する各図中では、透明画像を、R−clearと表記する場合がある。また、光沢領域を、R−effectと表記する場合がある。さらに、有色画像を、RGBと表記する場合がある。また、各オブジェクトの濃度として、濃度値(0〜100%)が設定されている場合を説明する。
なお、図10に示す例では、有色版画像データによって特定される有色画像の描画領域群を、1つのオブジェクト(描画領域)として扱う場合を示した。また、図10の例では、クリア版の画像データにより特定されたオブジェクトは含まれていないが、クリア版の画像データにより特定されたオブジェクトが存在する場合には、原稿データには、クリア版の画像データにより指定されたオブジェクトも含まれる。
印刷データ生成部123は、原稿データに基づいて印刷データを生成する。印刷データは、対象画像の画像データ(有色版の画像データ)と、光沢制御版の画像データと、クリア版の画像データと、例えばプリンタの設定、集約の設定、両面の設定などをプリンタに対して指定するジョブコマンドとを含んで構成される。図11は、印刷データの構成例を概念的に示す模式図である。図11の例では、ジョブコマンドとして、JDF(Job Definition Format)が用いられているが、これに限られるものではない。図11に示すJDFは、集約の設定として「片面印刷・ステープル有り」を指定するコマンドである。また、印刷データは、PostScriptのようなページ記述言語(PDL)に変換されてもよいし、DFE50が対応していれば、PDF形式のままでもよい。
プレビュー画像処理部125は、原稿データのプレビュー画像を生成する。プレビュー画像は、原稿データをユーザによって指定された光沢効果等のクリア処理が施された印刷結果を推定するイメージ画像であり、表示制御部121を介して表示部14に表示される。ユーザは、表示部14に表示されたプレビュー画像を確認することにより、印刷前に表面効果等の処理が施された原稿データの印刷物の仕上がりを確認することができる。
図12は、プレビュー画像の一例を示す図である。プレビュー画像処理部125は、図12に示すように、有色版の画像データの印刷結果を推定するイメージデータが表示された表示面である有色表示面と、クリア処理が施された印刷結果を推定するイメージデータが表示された表示面である複数のクリア表示面を3次元空間に配置した3次元モデルを2次元面に投影したプレビュー画像を生成する。ここで、3次元モデルは、表示部14としての表示画面の横方向をx軸、上下方向をy軸、表示画面に垂直な方向をz軸とする。有色表示面および複数のクリア表示面は、z軸方向に沿って、z軸方向に異なる位置に配置されている。なお、有色表示面および複数のクリア表示面のx,y軸方向の位置は同一である。
プレビュー画像処理部125は、原稿データにおいて指定されたクリア処理の種類の数だけクリア表示面を生成し、生成したすべてのクリア表示面を含むプレビュー画像を生成する。すなわち、プレビュー画像に含まれるクリア表示面の数は、ユーザから指定されたクリア処理の種類の数により定まるものである。すなわち、図12においては、2つのクリア表示面を含むプレビュー画像を示すが、クリア表示面の数はこれに限定されるものではない。
図13は、図6に示すプレビュー画像処理部125の詳細な機能構成を示すブロック図である。プレビュー画像処理部125は、分離部200と、クリア表示データ生成部201と、パラメータ設定部202と、プレビュー画像生成部203とを有している。ここで、プレビュー画像生成部203は、例えばopenGL(Open Graphics Library)などにより実現される。また、記憶部12は、反射度記憶部210と、決定ルール記憶部211とを有している。反射度記憶部210および決定ルール記憶部211は、プレビュー画像処理部125により参照される。
分離部200は、版データ生成部122から原稿データを取得する。分離部200は、原稿データに含まれている光沢制御版の画像データおよびクリア版の画像データで表現されている原稿データに含まれるオブジェクト群を抽出することにより、原稿データを、画像形成の対象となる対象画像に相当する有色版の画像データと、光沢制御版の画像データおよびクリア版の画像データで表現されているクリアトナー用データとに分離する。
ここで、クリアトナー用データは、光沢制御版の画像データおよびクリア版の画像データに含まれる濃度値(0〜100%)を8ビットの画素値(0〜255)にマッピングすることにより得られるラスタ形式のイメージデータである。すなわち、クリアトナー用データとしてのイメージデータの各画素値は、濃度値に対応するものである。また、濃度値は、図9を参照しつつ説明した濃度値選択テーブルにおいて、クリア処理の種類に対応付けられている値である。したがって、イメージデータの画素値を参照することにより、当該画素値にどのようなクリア処理が施されるかを特定することができる。
クリア表示データ生成部201は、分離部200により得られた有色版の画像データと、クリアトナー用データとに基づいて、クリア表示データを生成する。ここで、クリア表示データは、プレビュー画像に含まれるクリア表示面に描画されるデータである。クリア表示データは、所定のクリア処理が施される描画領域を示すデータと、施されるクリア処理の種類を示すデータとを含んでいる。クリア表示データ生成部201は、原稿データに含まれているクリア処理の種類毎の複数のクリア表示データを生成する。なお、複数のクリア表示データは、それぞれ異なる複数のクリア表示面に描画される。
クリア処理の種類としては、光沢制御版の画像データに対応する表面効果を付与する表面効果処理と、クリア版の画像データに対応する透明画像(クリア画像)を生成するクリア画像生成処理とに大別される。さらに、表面効果処理については、図3に示す4つの処理に分離されており、これらは種類の異なる処理として判断される。さらに図3に示す4つの処理は、異なる濃度を含んでおり、濃度の異なる処理は、種類の異なる処理として判断される。すなわち、表面効果処理においては、同一濃度の表面効果が同一の表面効果処理と判断され、濃度の異なる表面効果は異なる種類の表面効果処理と判断される。
クリア表示データは、クリア処理の種類名と、有色版の画像データと、アルファチャネルデータとを含んでいる。アルファチャネルデータは、画素単位で各描画領域にクリア処理が指定されているか否かを示す二値のデータである。具体的には、アルファチャネルデータにおいて、クリア処理が指定されている画素に対し非ゼロが与えられ、クリア処理が指定されていない画素に対しゼロが与えられている。
アルファチャネルデータは、有色板の画像データに適用される。これにより、アルファチャネルデータの値がゼロの画素に対応する有色版の画像データは透過される。すなわち、アルファチャネルデータの値がゼロの画素に対応する有色版の画像データは表示されない。一方、アルファチャネルデータの値が非ゼロの画素に対応する有色版の画像データは透過されず、すなわち対応する有色版の画像データが表示される。
図14は、アルファチャネルデータの一例を示す図である。図14のアルファチャネルデータは、ハートオブジェクトおよび写真オブジェクトに非ゼロが与えられ、これ以外の領域にゼロが与えられている。この場合には、図14に示すように、ハートオブジェクトおよび写真オブジェクトにおいて、光源からの光は反射し、これ以外の領域において、光は透過する。
図15は、クリア表示データの一例を示す図である。図15には、有色版の画像データ330と、この有色版の画像データ330に対して生成されたクリア表示データ310およびクリア表示データ320とを示している。
クリア表示データ310は、クリア処理の種類名311と、有色版の画像データ312と、アルファチャネルデータ313とを含んでいる。クリア処理の種類名311は、R−effect90%、すなわち濃度90%のベタ光沢の表面効果を示している。アルファチャネルデータ313においては、クリア処理の種類名311に示された表面効果、すなわち、濃度90%のベタ光沢の表面効果が指定された描画領域としてハートオブジェクトの描画領域および写真オブジェクトの描画領域に非ゼロが与えられ、これ以外の画素にはゼロが与えられている。
クリア表示データ320は、クリア処理の種類名321と、有色版の画像データ322と、アルファチャネルデータ323とを含んでいる。クリア処理の種類名321は、R−effect16%、すなわち濃度16%の網点マットの表面効果を示している。アルファチャネルデータ323においては、クリア処理の種類名321に示された濃度16%の網点マットの表面効果が指定された描画領域としてリボンオブジェクトの描画領域に非ゼロが与えられ、これ以外の画素にはゼロが与えられている。なお、有色版の画像データ312,322、いずれも有色版の画像データ330と同一のデータである。
図13に戻り、パラメータ設定部202は、クリア表示データ生成部201により生成された複数のクリア表示データと分離部200により得られた有色版の画像データとに基づいて、プレビュー画像を生成するためのパラメータをプレビュー画像生成部203に与える。
パラメータとしては、図12を参照しつつ説明した有色版の画像データを表示する有色表示面および各クリア表示データを表示する各クリア表示面の法線ベクトル、これらの表示面の光の反射度およびこれらの表示面の配置位置がある。
法線ベクトルは、有色表示面およびクリア表示面により定まる情報である。配置位置は、図12を参照しつつ説明した所定の3次元空間における配置位置である。x軸方向の位置およびy軸方向の配置位置は、パラメータ設定部202に予め設定されている。z軸方向の配置位置は、クリア表示データ生成部201により生成されたクリア表示データに対応するクリア処理の種類およびクリア表示データの数に基づいてパラメータ設定部202により決定される。
パラメータ設定部202は、記憶部12に記憶されている決定ルール記憶部211に記憶されている決定ルールに基づいて、各表示面のz軸方向の配置位置を決定する。決定ルールは、有色表示面および複数のクリア表示面それぞれのz軸方向の配置位置を決定するためのルールである。
図16を参照しつつ、決定ルールを説明する。決定ルールは、有色表示面のz軸方向の配置位置を第1位置に定めている。第1位置は、固定値である。決定ルールはさらに、クリア表示面については、第1位置に比べて、z軸方向において表示画面を観察する観察者位置により近い位置を定めている。さらに、複数のクリア表示面については、クリア処理の種類に基づいてz軸方向の配置位置を定めている。具体的には、表面効果の濃度が高くなるほどより観察者位置に近い位置を配置位置として定めている。さらに、クリア版の画像データに対応するクリア画像に対応するクリア表示データが描画されるクリア表示面は、最も観察者位置に近い位置を配置位置として定めている。さらに、各表示面間の間隔を所定の一定値に定めている。なお、他の例としては、表示面間の間隔を、濃度値に基づいて決定することとしてもよい。
図16に示す例においては、上述の決定ルールにしたがい、まず有色表示面の配置位置が第1位置に決定される。続いて、濃度の低い濃度が16%のクリア表示面の配置位置が第1位置に比べて観察者位置に近い位置である第2位置に決定される。なお、第2位置は、第1位置から上述の一定の間隔だけ観察者側の位置である。さらに、より濃度の高い濃度が90%のクリア表示面の配置位置が第2位置に比べて、一定の間隔だけ観察者位置に近い位置である第3位置に決定されている。
光の反射度は、有色表示面およびクリア表示面に照射された光の反射の程度を示す値である。光の反射度は、記憶部12に記憶されている反射度記憶部210を参照することにより、パラメータ設定部202により特定される。図17は、反射度記憶部210のデータ構成を模式的に示す図である。反射度記憶部210は、クリア処理の種類と、光の反射度とを対応付けて記憶している。反射度記憶部210はさらに、反射度として、鏡面反射度、拡散反射度および環境反射度を記憶している。各反射度は、クリア処理の種類毎に予め設定されている。反射度記憶部210はまた、有色板の画像データの光の反射度も記憶している。
これにより、パラメータ設定部202は、反射度記憶部210を参照し、クリア表示データのクリア処理の種類に基づいて、クリア表示データに対する反射度を特定することができる。さらに、パラメータ設定部202は、反射度記憶部210を参照し、有色版の画像データの反射度を特定することができる。
なお、本実施の形態にかかる反射度記憶部210においては、クリア処理の種類として、鏡面光沢(PG)、ベタ光沢(G)、網点マット(M)およびつや消し(PM)の4種類のみが設定されている。そして、これら4種類のクリア処理は、濃度毎の異なる種類のクリア処理を含むが、反射度記憶部210においては、クリア処理の種類として設定されている各クリア処理に対し、濃度によらず一定の反射度が対応付けられている。これは、ディスプレイ上において、3次元イメージを表示する際に光の反射度を濃度に応じて詳細に変更した場合に、その違いが視認できる程度に現れないためである。
図13に戻り、プレビュー画像生成部203は、パラメータ設定部202から与えられたパラメータを用いて、有色表示面および複数のクリア表示面を3次元空間に配置した3次元モデルを2次元面に投影したプレビュー画像を生成する。プレビュー画像生成部203により生成されたプレビュー画像は、図6を参照しつつ説明した表示制御部121を介して表示部14としての表示画面に表示される。
プレビュー画像生成部203は具体的には、有色版の画像データに対し、パラメータ設定部202から与えられた反射度に基づいて、有色版の画像データを編集し、編集後の有色版の画像データを有色表示面に描画する。プレビュー画像生成部203はさらに、各クリア表示データに対し、パラメータ設定部202から与えられた反射度に基づいて、各クリア表示データを編集し、編集後の各クリア表示データをそれぞれ異なるクリア表示面に描画する。
そして、プレビュー画像生成部203は、データが描画された有色表示面および複数のクリア表示面を、それぞれの法線パラメータおよび配置位置に基づいて、3次元空間に配置する。すなわち、プレビュー画像生成部203は、3次元空間の所定の位置に有色表示面を配置する。そして、プレビュー画像生成部203は、z軸上において、有色表示面よりも観察者側の位置に濃度が最も小さいクリア表示面を配置し、さらに配置したクリア表示面よりも観察者側の位置に、次に濃度の小さいクリア表示面を配置する。すなわち、複数のクリア表示面は、z軸方向において互いに異なる位置に配置される。プレビュー画像生成部203は、こうして生成された3次元モデルを2次元面に投影したプレビュー画像を生成する。
すなわち、プレビュー画像において、有色表示面が所定の位置に配置され、この有色色表示面上に複数のクリア表示面が重畳して配置されている。さらに、プレビュー画像において、複数のクリア表示面は、濃度順に重畳され、上述のz軸上の位置に対応し、2次元面においても互いに異なる位置に配置されている。
図18は、表示部14に表示されるプレビュー画像のイメージ図である。例えば、受付部としての入力制御部124が入力部13としてのマウスを右クリックするなどの指示を受け付けると、表示制御部121は、プレビュー画像とともに、図18に示すようなチェックボックスを表示する。ユーザがユーザインターフェースを利用してこのチェックボックスにおいて、クリア表示面毎に示されているチェックボタン「*」を外すと、入力制御部124は、非表示指示を受け付け、表示制御部121は、対応するクリア表示面を非表示にする。また、逆にチェックボタンが表示されない状態において、再び対応するチェックボタンを選択すると、入力制御部124は、表示指示を受け付け、表示制御部121は、対応するクリア表示面を非表示から表示に切り替える。
次に、上記のように構成されたホスト装置10による印刷データの生成処理について説明する。図19は、実施の形態1のホスト装置10による印刷データの生成処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理の例では、透明画像の指定がなく従ってクリア版の画像データを生成しない場合の例で説明する。
まず、入力制御部124が画像指定情報の入力を受け付けた場合(ステップS11:Yes)、表示制御部121は、受け付けた画像指定情報で指定された画像を表示するように表示部14を制御する(ステップS12)。次に、入力制御部124が表面効果の指定情報の入力を受け付けた場合(ステップS13:Yes)、版データ生成部122は、受け付けた指定情報に基づいて、光沢制御版の画像データを生成する(ステップS14)。
ここで、ステップS14における光沢制御版の画像データの生成処理の詳細について説明する。図20は、光沢制御版の画像データ生成処理の手順を示すフローチャートである。まず、版データ生成部122は、指定情報により対象画像に対して表面効果が付与された描画オブジェクトとその座標を特定する(ステップS31)。描画オブジェクトとその座標の特定は、例えば、画像処理部120が対象画像に描画オブジェクトを描画する際のオペレーティングシステム等で提供される描画コマンドおよび描画コマンドで設定された座標値等を用いて行われる。
次に、版データ生成部122は、記憶部12に保存されている濃度値選択テーブルを参照して、指定情報でユーザが付与した表面効果に対応する光沢制御値としての濃度値を決定する(ステップS32)。
そして、版データ生成部122は、光沢制御版の画像データ(当初は空データ)に、描画オブジェクトと、表面効果に対応して決定された濃度値とを対応付けて登録する(ステップS33)。
次に、版データ生成部122は、対象画像に存在する全ての描画オブジェクトに対して上記ステップS31からS33までの処理を完了したか否かを判断する(ステップS34)。そして、まだ完了していない場合には(ステップS34:No)、版データ生成部122は、対象画像中でまだ未処理の次の描画オブジェクトを選択して(ステップS35)、ステップS31からS33までの処理を繰り返し実行する。
そして、ステップS34において、対象画像中の全ての描画オブジェクトに対してステップS31からS33までの処理を完了したと判断された場合には(ステップS34:Yes)、版データ生成部122は、光沢制御版の生成を完了する。これにより図4に示す光沢制御版の画像データは生成される。図21は、図4の光沢制御版の画像データにおける、描画オブジェクト、座標および濃度値の対応関係を示す図である。
図19に戻り、光沢制御版の画像データが生成されたら、版データ生成部122は、光沢制御版の画像データと対象画像の画像データとを統合した原稿データを生成して印刷データ生成部123へ渡す。そして、印刷データ生成部123は、原稿データに基づいて印刷データを生成する(ステップS15)。以上により、印刷データが生成される。
図22は、プレビュー画像処理部125によるプレビュー画像生成処理の手順を示すフローチャートである。まず、分離部200は、版データ生成部122から原稿データを取得し、原稿データを光沢制御版の画像データおよびクリア版の画像データに示されるオブジェクト群を抽出することにより、有色版の画像データと、クリアトナー用データとに分離する(ステップS100)。次に、クリア表示データ生成部201は、有色版の画像データと、クリアトナー用データとに基づいて、クリア表示データを生成する(ステップS101)。
図23は、クリア表示データ生成処理の手順を示すフローチャートである。クリア表示データ生成部201は、まずクリアトナー用データに含まれている複数のクリア処理の種類を特定する(ステップS110)。次に、所定のクリア処理の種類に対するアルファチャネルデータを生成する(ステップS111)。次に、クリア処理の名称、アルファチャネルデータおよび有色版の画像データを含むクリア表示データを生成し、生成したクリア表示データを記憶部12に格納する(ステップS112)。
ステップS110において特定されたすべてのクリア処理に対してステップS111およびステップS112のルーチン処理を実行することにより、すべてのクリア処理に対応するクリア表示データを生成し、記憶部12に格納すると、クリア表示データ生成処理が完了する。
図22に戻り、クリア表示データ生成処理が完了すると(ステップS101)、次に、パラメータ設定部202は、有色版の画像データが描画される有色表示面の法線ベクトルをプレビュー画像生成部203に与え、さらに、クリア表示データ生成処理(ステップS101)において生成された複数のクリア表示データそれぞれを描画する複数のクリア表示面それぞれの法線ベクトルをプレビュー画像生成部203に与える(ステップS102)。
パラメータ設定部202は、また決定ルール記憶部211に記憶されている決定ルールにしたがい、各表示面の3次元空間における配置位置を決定し、これをプレビュー画像生成部203に与える(ステップS103)。パラメータ設定部202はまた、反射度記憶部210を参照し、有色表示面の反射度を特定し、さらにクリア表示面に描画されるクリア表示データに含まれるクリア処理の種類に基づいて、各クリア表示面の反射度を特定する。そして、特定した各表示面の反射度をプレビュー画像生成部203に与える(ステップS104)。
なお、プレビュー画像生成部203にパラメータを与える処理の順番は、実施の形態に限定されるものではない。他の例としては、表示面毎に、法線ベクトル、配置位置および反射度を特定し、これをプレビュー画像生成部203に与えるルーチン処理としてもよい。
次に、プレビュー画像生成部203は、ステップS102〜ステップS104において取得したパラメータに基づいて、プレビュー画像を生成する(ステップS105)。以上で、プレビュー画像生成処理が完了する。
このように、本実施の形態にかかる画像形成システム1においては、3次元イメージ画像としてのプレビュー画像を生成することができる。さらに、プレビュー画像においては、有色版の画像データが描画された有色表示面をz軸方向において観察者位置から最も遠い位置に配置し、より観察者側の位置にクリア表示面を配置した3次元モデルを2次元面に投影された状態で表示するので、印刷結果の確認者は、印刷処理の対象となる対象画像のイメージと、クリア処理が施された印刷結果のイメージとを容易に把握することができる。
さらに、プレビュー画像においては、クリア表示面は、クリア処理の種類毎に生成され、複数のクリア処理それぞれが施されるオブジェクトが表示されたクリア表示面がz軸上の異なる位置に配置されているので、印刷結果の確認者は、クリアトナーを用いたクリア処理の種類毎の印刷結果を容易に把握することができる。
次に、DFE50の機能的構成について説明する。DFE50は、図24に例示されるように、レンダリングエンジン51と、si1部52と、TRC(Tone Reproduction Curve)53と、si2部54と、ハーフトーンエンジン55と、クリアプロセッシング56と、si3部57と、表面効果選択テーブル(不図示)とを有する。レンダリングエンジン51と、si1部52と、TRC(Tone Reproduction Curve)53と、si2部54と、ハーフトーンエンジン55と、クリアプロセッシング56と、si3部57とは、DFE50の制御部が主記憶部や補助記憶部に記憶されている各種プログラムを実行することにより実現されるものである。si1部52、si2部54及びsi3部57はいずれも、画像データを分離する(separate)機能と、画像データを統合する(integrate)機能とを有するものである。表面効果選択テーブルは例えば補助記憶部に記憶されるものである。
レンダリングエンジン51には、ホスト装置10から送信された画像データ(例えば、図11に示した印刷データ)が入力される。レンダリングエンジン51は、入力された画像データを言語解釈して、ベクタ形式で表現される画像データをラスタ形式に変換すると共に、RGB形式等で表現された色空間をCMYK形式の色空間に変換して、CMYKの色版の各8ビットの画像データ及び8ビットの光沢制御版を出力する。si1部52は、CMYKの各8ビットの画像データをTRC53に出力し、8ビットの光沢制御版をクリアプロセッシング56に出力する。ここで、DFE50は、ホスト装置10から出力されたベクタ形式の光沢制御版の画像データをラスタ形式に変換し、この結果、DFE50は、ユーザが画像処理アプリケーションにより指定した描画オブジェクトに対する表面効果の種類を、画素を単位として濃度値として設定して光沢制御版の画像データを出力する。
TRC53には、si1部52を介してCMYKの各8ビットの画像データが入力される。TRC53には、入力された画像データに対してキャリブレーションにより生成された1D_LUTのガンマカーブでガンマ補正を行う。画像処理としては、ガンマ補正の他にトナーの総量規制等がある。総量規制とは記録媒体上の1画素において、プリンタ機70でのせることが可能なトナー量に限界があるため、ガンマ補正後のCMYK各8ビットの画像データを制限する処理である。ちなみに、総量規制を越えて印刷した場合、転写不良や定着不良により画質が劣化してしまう。当実施例では関連するガンマ補正のみを取り上げて説明している。
si2部54は、TRC53でガンマ補正されたCMYKの各8ビットの画像データを、インバースマスク(後述する)を生成するためのデータとしてクリアプロセッシング56へ出力する。ハーフトーンエンジン55には、si2部54を介してガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データが入力される。ハーフトーンエンジン55は、入力された画像データをプリンタ機70に出力するための、例えばCMYKの各2ビット等の画像データのデータ形式に変換するハーフトーン処理を行い、ハーフトーン処理後のCMYK各2ビット等の画像データを出力する。なお、2ビットは一例であり、これに限定されるものではない。
クリアプロセッシング56には、レンダリングエンジン51が変換した8ビットの光沢制御版がsi1部52を介して入力されると共に、TRC53がガンマ補正を行ったCMYKの各8ビットの画像データがsi2部54を介して入力される。クリアプロセッシング56は、入力された光沢制御版を用いて、後述の表面効果選択テーブルを参照して、光沢制御版を構成する各画素の表す濃度値(画素値)に対する表面効果を判断して、当該判断に応じて、グロッサ80のオン又はオフを決定すると共に、入力されたCMYKの各8ビットの画像データを用いてインバースマスクやベタマスクを適宜生成することにより、クリアトナーを付着させるための2ビットのクリアトナー版の画像データを適宜生成する。そして、表面効果の判断の結果に応じて、クリアプロセッシング56は、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データとを適宜生成してこれらを出力すると共に、グロッサ80のオン又はオフを示すオンオフ情報を出力する。
ここで、インバースマスクとは、表面効果を与える対象の領域を構成する各画素上のCMYKのトナー及びクリアトナーを合わせた総付着量が均一になるようにするためのものである。具体的には、CMYK版の画像データにおいて当該対象の領域を構成する画素の表す濃度値を全て加算し、その加算値を所定値から差し引いた画像データがインバースマスクとなる。例えば、上述のインバースマスク1は以下の式1で表される。
Clr=100−(C+M+Y+K) 但し、Clr<0となる場合、Clr=0 ・・・(式1)
式1において、Clr,C,M,Y,Kは、クリアトナー及びC,M,Y,Kの各トナーのそれぞれについて、各画素における濃度値から換算される濃度率を表すものである。即ち、式1によって、C,M,Y,Kの各トナーの総付着量にクリアトナーの付着量を加えた総付着量を、表面効果を与える対象の領域を構成する全ての画素について100%にする。なお、C,M,Y,Kの各トナーの総付着量が100%以上である場合には、クリアトナーは付着させずに、その濃度率は0%にする。これは、C,M,Y,Kの各トナーの総付着量が100%を超えている部分は定着処理により平滑化されるためである。このように、表面効果を与える対象の領域を構成する全ての画素上の総付着量を100%以上にすることで、当該対象の領域においてトナーの総付着量の差による表面の凸凹がなくなり、この結果、光の正反射による光沢が生じるのである。但し、インバースマスクには、式1以外により求められるものがあり、インバースマスクの種類は複数有り得る。
例えば、インバースマスクは、各画素にクリアトナーを均一に付着させるものであってもよい。この場合のインバースマスクは、ベタマスクともいい、以下の式2で表される。
Clr=100・・・(式2)
尚、表面効果を与える対象の画素の中でも、100%以外の濃度率が対応付けられるものがあるようにしても良く、ベタマスクのパターンは複数有り得る。
また、例えばインバースマスクは、各色の地肌露出率の乗算により求められるものであってもよい。この場合のインバースマスクは、例えば以下の式3で表される。
Clr=100×{(100−C)/100}×{(100−M)/100}×{(100−Y)/100}×{(100−K)/100}・・・(式3)
上記式3において、(100−C)/100は、Cの地肌露出率を示し、(100−M)/100は、Mの地肌露出率を示し、(100−Y)/100は、Yの地肌露出率を示し、(100−K)/100はKの地肌露出率を示す。
また、例えばインバースマスクは、最大面積率の網点が平滑性を律すると仮定した方法により求められるものであってもよい。この場合のインバースマスクは、例えば以下の式4で表される。
Clr=100−max(C,M,Y,K)・・・(式4)
上記式4において、max(C,M,Y,K)は、CMYKのうち最大の濃度値を示す色の濃度値が代表値となることを示す。
要するに、インバースマスクは、上記式1〜式4の何れかの式により表されるものであればよい。
表面効果選択テーブルは、表面効果を示す光沢制御値としての濃度値と当該表面効果の種類の対応関係を示すと共に、これらと、画像形成システム1の構成に応じた後処理機に関する制御情報と、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データ及び後処理機で用いるクリアトナー版の画像データとの対応関係を示すテーブルである。画像形成システム1の構成は、様々に異なり得るが、本実施の形態においては、プリンタ機70に後処理機としてグロッサ80及び低温定着機90が接続される構成である。このため、画像形成システム1の構成に応じた後処理機に関する制御情報とは、グロッサ80のオン又はオフを示すオンオフ情報となる。また、後処理機で用いるクリアトナー版の画像データとしては、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データがある。図25は、表面効果選択テーブルのデータ構成を例示する図である。尚、表面効果選択テーブルは、異なる画像形成システム1の構成毎に、後処理機に関する制御情報と、プリンタ機70で用いるクリアトナー版1の画像データ及び後処理機で用いるクリアトナー版2の画像データと、濃度値及び表面効果の種類との対応関係を示すように構成され得るが、図25では、本実施の形態に係る画像形成システム1の構成に応じたデータ構成を例示している。同図に示される表面効果の種類及び濃度値の対応関係においては、濃度値の数値範囲毎に表面効果の各種類が対応付けられている。また、その濃度値の範囲の代表となる値(代表値)から換算される濃度の割合(濃度率)に対して2%単位で表面効果の各種類が対応付けられている。具体的には、濃度率が84%以上となる濃度値の範囲(「212」〜「255」)に対して光沢を与える表面効果(鏡面光沢及びベタ光沢)が対応付けられており、濃度率が16%以下となる濃度値の範囲(「1」〜「43」)に対して光沢を抑える表面効果(網点マット及びつや消し)が対応付けられている。また、濃度率が20%〜80%となる濃度値の範囲には、テクスチャや地紋、透かしなどの表面効果が対応付けられている。
より具体的には、例えば、「238」〜「255」の画素値に対しては表面効果として鏡面光沢(PG:Premium Gross)が対応付けられており、このうち、「238」〜「242」の画素値、「243」〜「247」の画素値及び「248」〜「255」の画素値の3つの範囲に対して各々異なるタイプの鏡面光沢が対応付けられている。また、「212」〜「232」の画素値に対しては、ベタ光沢(G:Gross)が対応付けられており、このうち、「212」〜「216」の画素値、「217」〜「221」の画素値、「222」〜「227」の画素値及び「228」〜「232」の画素値の4つの範囲に対して各々異なるタイプのベタ光沢が対応付けられている。また、「23」〜「43」の画素値に対しては、網点マット(M:Matt)が対応付けられており、このうち、「23」〜「28」の画素値、「29」〜「33」の画素値、「34」〜「38」の画素値及び「39」〜「43」の画素値の4つの範囲に対して各々異なるタイプの網点マットが対応付けられている。また、「1」〜「17」の画素値に対しては、つや消し(PM:Premium Matt)が対応付けられており、このうち、「1」〜「7」の画素値、「8」〜「12」の画素値及び「13」〜「17」の画素値の3つの範囲に対して各々異なるタイプのつや消しが対応付けられている。これらの同一の表面効果の異なるタイプはプリンタ機70や低温定着機90で使用するクリアトナー版の画像データを求める式に違いがあり、プリンタ本体や後処理機の動作は同じである。尚、「0」の濃度値には、表面効果を与えないことが対応付けられている。
また、図25には、画素値及び表面効果に対応して、グロッサ80のオン又はオフを示すオンオフ情報と、プリンタ機70で用いるクリアトナー版1の画像データ(図1のClr−1)及び低温定着機90で用いるクリアトナー版2の画像データの内容とが各々示されている。例えば、表面効果が鏡面光沢である場合、グロッサ80をオンにすることが示されると共に、プリンタ機70で用いるクリアトナー版1の画像データは、インバースマスクを表すものであり、低温定着機90で用いるクリアトナー版2の画像データ(図1のClr−2)は、ないことが示されている。当該インバースマスクは、例えば上述した式1により求められるものである。尚、図25に示される例は、表面効果として鏡面光沢が指定された領域が、画像データによって規定される領域全体に相当する場合の例である。表面効果として鏡面光沢が指定された領域が、画像データによって規定される領域の一部に相当する場合の例については後述する。
また、濃度値が「212」〜「232」であり表面効果がベタ光沢である場合、グロッサ80をオフにすることが示されていると共に、プリンタ機70で用いるクリアトナー版1の画像データは、インバースマスクであり、低温定着機90で用いるクリアトナー版2の画像データは、ないことが示されている。
尚、当該インバースマスクは、上記式1〜式4の何れかの式により表されるものであればよい。これはグロッサ80がオフなので平滑化されるトナーの総付着量が異なるため、鏡面光沢により表面の凹凸が増え、その結果、鏡面光沢により光沢度が低いベタ光沢が得られる。また、表面効果が網点マットである場合、グロッサ80をオフにすることが示されていると共に、プリンタ機70で用いるクリアトナー版1の画像データは、ハーフトーン(網点)を表すものであり、低温定着機90で用いるクリアトナー版2の画像データは、ないことが示されている。また、表面効果がつや消しである場合、グロッサ80をオン又はオフのいずれにしても良いことが示されていると共に、プリンタ機70で用いるクリアトナー版1の画像データは、なく、低温定着機90で用いるクリアトナー版2の画像データは、ベタマスクを表すものであることが示されている。当該ベタマスクは、例えば上述の式2により求められるものである。
クリアプロセッシング56は、上述した表面効果選択テーブルを参照して、光沢制御版によって示される各画素値に対応付けられている表面効果を判断すると共に、グロッサ80のオン又はオフを判断して、プリンタ機70及び低温定着機90でどのようなクリアトナー版の画像データを用いるかを判断する。尚、クリアプロセッシング56は、グロッサ80のオン又はオフの判断を1ページ毎に行う。そして、上述したように、クリアプロセッシング56は、当該判断の結果に応じて、クリアトナー版の画像データを適宜生成してこれを出力すると共に、グロッサ80に対するオンオフ情報を出力する。
si3部57は、ハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データと、クリアプロセッシング56が生成した2ビットのクリアトナー版の画像データとを統合し、統合した画像データをMIC60に出力する。尚、クリアプロセッシング56は、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データ及び低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データのうち少なくとも一方を生成しない場合があるので、クリアプロセッシング56が生成した方のクリアトナー版の画像データがsi3部57で統合され、両方のクリアトナー版の画像データをクリアプロセッシング56が生成していない場合には、si3部57からはCMYKの各2ビットの画像データが統合された画像データが出力される。この結果、DFE50からは各々2ビットの4つ〜6つの画像データがMIC60へ送り出されることになる。また、si3部57は、クリアプロセッシング56が出力したグロッサ80に対するオンオフ情報もMIC60に出力する。
MIC60は、DFE50とプリンタ機70とに接続される。MIC60は、後処理機として搭載されている装置構成を示す装置構成情報をDEF50に出力する。また、MIC60は、色版の画像データ、クリアトナー版の画像データをDFE50から受信して各画像データを対応する装置に振り分けるとともに、後処理機の制御を行う。より具体的には、MIC60は、図26に例示されるように、DFE50から出力された画像データのうちCMYKの色版の画像データをプリンタ機70に出力し、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データがある場合にはこれもプリンタ機70に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオン又はオフにして、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データがある場合にはこれを低温定着機90に出力する。グロッサ80はオンオフ情報によって定着を行う経路と行わない経路とを切り替えても良い。低温定着機90はクリアトナー版の画像データの有無によってオン又はオフの切り替えやグロッサ80と同様の経路の切り替えをしても良い。
また、図26に示すように、プリンタ機70、グロッサ80、低温定着機90からなる印刷装置は、記録媒体を搬送する搬送路を備えている。なお、プリンタ機70は、詳細には、電子写真方式の複数の感光体ドラム、感光体ドラム上に形成されたトナー像を転写される転写ベルト、転写ベルト上のトナー像を記録媒体に転写する転写装置、及び記録媒体上のトナー像を該記録媒体に定着させる定着機を備える。記録媒体は、図示を省略する搬送部材によって搬送路を搬送されることで、プリンタ機70、グロッサ80、低温定着機90の設けられている位置を、この順に搬送される。そして、これらの機器によって順次処理が行われて画像形成及び表面効果が付与された後に、図示を省略する搬送機構によって搬送路を搬送されて、印刷装置の外部へと排出される。
次に、本実施の形態に係る画像形成システム1が行う光沢制御処理の手順について図27を用いて説明する。DFE50がホスト装置10から画像データを受信すると(ステップS1)、レンダリングエンジン51は、これを言語解釈して、ベクタ形式で表現される画像データをラスタ形式に変換すると共に、RGB形式で表現された色空間をCMYK形式の色空間に変換して、CMYKの色版の各8ビットの画像データ及び8ビットの光沢制御版の画像データを得る(ステップS2)。
ここで、ステップS2における、光沢制御版の画像データの変換処理の詳細について説明する。図28は、光沢制御版の画像データの変換処理の手順を示すフローチャートである。この変換処理では、図28の光沢制御版の画像データ、すなわち、図21で示したような、描画オブジェクトごとに表面効果を特定する濃度値が指定された光沢制御版の画像データを、描画オブジェクトを構成する画素ごとに濃度値が指定された光沢制御版の画像データに変換する。
レンダリングエンジン51は、図21で示される光沢制御版の描画オブジェクトに対応する座標の範囲の画素に対して、描画オブジェクトに対して設定された濃度値を付与することにより(ステップS41)、光沢制御版の画像データを変換する。そして、かかる処理を光沢制御版の画像データに存在する全ての描画オブジェクトに対して完了したか否かを判断する(ステップS42)。
そして、レンダリングエンジン51は、まだ完了していない場合には(ステップS42:No)、光沢制御版の画像データの中でまだ未処理の次の描画オブジェクトを選択し(ステップS44)、ステップS41の処理を繰り返す。
一方、ステップS42において、光沢制御版の画像データ中の全ての描画オブジェクトに対してステップS41の処理を完了している場合には(ステップS42:Yes)、変換された光沢制御版の画像データを出力する(ステップS43)。以上の処理により、光沢制御版の画像データは、画素ごとに表面効果が設定されたデータに変換されることになる。
図27に戻り、8ビット光沢制御版の画像データが出力されたら、DFE50のTRC53は、CMYKの色版の各8ビットの画像データに対してキャリブレーションにより生成された1D_LUTのガンマカーブでガンマ補正を行い、ハーフトーンエンジン55はガンマ補正後の画像データに対して、プリンタ機70に出力するためのCMYK各2ビットの画像データのデータ形式に変換するハーフトーン処理を行い、ハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データを得る(ステップS3)。
また、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の画像データを用いて、表面効果選択テーブルを参照して、光沢制御版の画像データによって示される各画素値に対して指定された表面効果を判断する。そして、クリアプロセッシング56は、光沢制御版を構成する全ての画素について、このような判断を行う。尚、光沢制御版の画像データにおいては、各表面効果を与える領域を構成する全ての画素について基本的に同一の範囲の濃度値を表す。このため、同一の表面効果であると判断した近傍の画素については、クリアプロセッシング56は、同一の表面効果を与える領域に含まれるものとして判断する。このようにして、クリアプロセッシング56は、表面効果を与える領域と、当該領域に対して与える表面効果の種類とを判断する。そして、クリアプロセッシング56は、当該判断に応じて、グロッサ80のオン又はオフを決定する(ステップS4)。
次に、DFE50のクリアプロセッシング56は、ガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データを適宜用いて、クリアトナーを付着させるための8ビットのクリアトナー版の画像データを適宜生成する(ステップS5)。そして、ハーフトーンエンジン56は、ハーフトーン処理により、8ビットの画像データを用いた8ビットのクリアトナー版の画像データを2ビットのクリアトナー版の画像データに変換する(ステップS6)。
次に、DFE50のSi3部57は、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データと、ステップS6で生成した2ビットのクリアトナー版の画像データとを統合し、統合した画像データと、ステップS4で決定したグロッサ80のオン又はオフを示すオンオフ情報とをMIC60に対して出力する(ステップS7)。
尚、ステップS5で、クリアプロセッシング56は、クリアトナー版の画像データを生成していない場合には、ステップS7では、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データのみが統合されてMIC60に出力される。
ここで、表面効果の種類に応じた具体例について説明する。ここでは、光沢を与えるための鏡面光沢及びベタ光沢と、光沢を抑えるための網点マット及びつや消しとの各種類について具体的に説明する。また、ここでは、1ページ内で同一種類の表面効果が指定された場合について説明する。ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の各画素の表す濃度値を用いて、図25に例示される表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「238」〜「255」である画素に対して指定された表面効果は、鏡面光沢であると判断する。この場合、更に、DFE50のクリアプロセッシング56は、表面効果として鏡面光沢が指定された領域が、画像データによって規定される領域全体に相当するか否かを判断する。当該判断結果が肯定的である場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、ガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データにおいて当該領域に対応する画像データを用いて、例えば式1によりインバースマスクを生成する。当該インバースマスクを表すものが、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとなる。尚、当該領域に対して低温定着機90ではクリアトナー版の画像データを用いないため、DFE50は、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成しない。そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データと統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオンを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。MIC60は、DFE50から出力された画像データであるCMYKの色版の画像データ及びプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データをプリンタ機70に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオンにする。プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データ及びクリアトナー版の画像データを用いて、露光器から光ビームを照射して各トナーに応じたトナー像を感光体上に形成してこれを紙に転写しこれを通常温度での加熱及び加圧により定着させる。これによって紙に、CMYKのトナーの他クリアトナーが付着されて、画像が形成される。その後、グロッサ80が当該紙を高温及び高圧で加圧する。低温定着機90に対してはクリアトナー版の画像データは出力されていないため、低温定着機90では、クリアトナーが付着されずに、当該紙が排紙される。この結果、画像データによって規定された領域全体でCMYKの各トナー及びクリアトナーの総付着量が均一に圧縮されているため、当該領域の表面から強い光沢が得られる。
一方、表面効果として鏡面光沢が指定された領域が、画像データによって規定される領域の一部に相当する場合は次のような事態がおこりうる。まず、鏡面光沢が指定された領域には、上述したインバースマスクを表すクリアトナー版の画像データが用いられる。しかし、それ以外の全ての画素に対してCMYKトナーの総付着量が所定以上セットされていた場合には、グロッサ80で加圧されると、結果的に、鏡面光沢が指定された領域とCMYKトナーの総付着値が所定以上セットされている領域のCMYKの各トナー及びクリアトナーの総付着量が均一になってしまう。
例えば、当該画像データによって規定される領域を構成する全ての画素に対してCMYKトナーの総付着値が所定以上セットされていた場合には、画像データによって規定される領域全体に、鏡面光沢が指定されたのと同じ結果となる。
このため、表面効果として鏡面光沢が指定された領域が、画像データによって規定される領域の一部に相当する場合、DFE50は、画像データによって規定される領域全体に対して鏡面光沢が指定されたのと同じクリアトナー版の画像データを生成し、紙にクリアトナーが付着された後、グロッサ80で加圧する。次に、グロッサ80で加圧された紙に対して表面効果として鏡面光沢が指定された領域以外の領域に対してつや消しの表面効果を与えるべく、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成する。
具体的には、DFE50は、上述と同様にして式1によるインバースマスクを、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。更に、DFE50は、表面効果として鏡面光沢が指定された領域以外の領域に対して式2によってベタマスクを、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データ及び低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データとを統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオンを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。
MIC60は、DFE50から出力された画像データのうちCMYKの色版の画像データ及びプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データをプリンタ機70に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオンにし、DFE50から出力された画像データのうち低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを低温定着機90に出力する。プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データ及びクリアトナー版の画像データを用いて、紙に、CMYKのトナー及びクリアトナーを付着させた画像を形成する。その後、グロッサ80が当該紙を高温及び高圧で加圧する。低温定着機90は、MIC60から出力されたクリアトナー版の画像データを用いてクリアトナーによるトナー像を形成して、グロッサ80を通過した紙上に当該トナー像を重ねて、低温での加熱及び加圧により紙に定着させる。この結果、鏡面光沢が指定された領域では、CMYKの各トナー及びクリアトナーの総付着量が均一に圧縮されているため、当該領域の表面から強い光沢が得られる。一方、鏡面光沢が指定された領域以外では、グロッサ80での加圧後にベタマスクによるクリアトナーの付着によって表面の凹凸が生じて、当該領域の表面の光沢が抑えられる。
また、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の各画素の表す濃度値を用いて表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「212」〜「232」である画素に対して指定された表面効果は、ベタ光沢であると判断し、特に、濃度値が「228」〜「232」である画素に対しては、ベタ光沢タイプ1であると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、ガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データにおいて当該領域に対応する画像データを用いて、インバースマスク1を生成する。当該インバースマスク1を表すものが、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとなる。尚、当該領域に対して低温定着機90ではクリアトナー版の画像データを用いないため、DFE50は、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成しない。そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データと統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオフを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。MIC60は、DFE50から出力された画像データであるCMYKの色版の画像データ及びプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データをプリンタ機70に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオフにする。プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データ及びプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データを用いて、紙に、CMYKのトナー及びクリアトナーを付着させた画像を形成する。グロッサ80はオフにされているため、その後、紙は、高温及び高圧で加圧されることはない。また、低温定着機90に対してはクリアトナー版の画像データは出力されていないため、低温定着機90では、クリアトナーが付着されずに、当該紙が排紙される。この結果、表面効果としてベタ光沢が指定された領域には、CMYKの各トナー及びクリアトナーの総付着量が比較的均一になり、当該領域の表面からやや強い光沢が得られる。
また、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の各画素の表す濃度値を用いて表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「23」〜「43」である画素に対して指定された表面効果は、網点マットであると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、ハーフトーンを表す画像データを、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。尚、当該領域に対して低温定着機90ではクリアトナー版の画像データを用いないため、DFE50は、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成しない。そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データとを統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオフを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。MIC60は、DFE50から出力された画像データであるCMYKの色版の画像データ及びプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データをプリンタ機70に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオフにする。プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データ及びクリアトナー版の画像データを用いて、紙に、CMYKのトナー及びクリアトナーを付着させた画像を形成する。グロッサ80はオフにされているため、その後、紙は、高温及び高圧で加圧されることはない。また、低温定着機90に対してはクリアトナー版の画像データは出力されていないため、低温定着機90では、クリアトナーが付着されずに、当該紙が排紙される。この結果、表面効果として網点マットが指定された領域にはクリアトナーにより網点が付加されることにより、表面の凹凸が生じて、当該領域の表面の光沢がやや抑えられる。
また、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の各画素の表す濃度値を用いて表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「1」〜「17」である画素に対して指定された表面効果は、つや消しであると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、グロッサ80のオンまたはオフは1ページ内に他の表面効果が指定されている場合(後述)はその設定に従い、オン又はオフのいずれにしても、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データを生成せず、ベタマスクを、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データを統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオン又はオフを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。MIC60は、DFE50から出力された画像データのうちCMYKの色版の画像データをプリンタ機70に出力し、DFE50から出力された画像データのうち低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを低温定着機90に出力する。プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データを用いて、紙に、CMYKのトナーを付着させた画像を形成する。グロッサ80がオンにされた場合には、紙は、グロッサ80で高温及び高圧で加圧され、グロッサ80がオフにされた場合には、紙は、高温及び高圧で加圧されない。低温定着機90は、MIC60から出力されたクリアトナー版の画像データを用いてクリアトナーによるトナー像を形成して、グロッサ80を通過した紙上に当該トナー像を重ねて、低温での加熱及び加圧により紙に定着させる。この結果、表面効果としてつや消しが指定された領域には、ベタマスクによるクリアトナーの付着によって表面の凹凸が生じて、当該領域の表面の光沢が抑えられる。
上記では、1ページ内に同一の表面効果が指定された場合について説明したが、1ページ内で異なる種類の表面効果が指定された場合についても、上述した処理で同様に実現可能である。すなわち、1ページ内で複数の表面効果が指定されている場合、光沢制御版の画像データでは、図25に示す表面効果の種類に対応する各濃度値が、各種類の表面効果を付与する領域内の画素に設定されている。すなわち、光沢制御版では、表面効果の種類ごとに、当該表面効果を付与する領域を指定しているため、DFE50では、この光沢制御版の画像データにおいて、同一の濃度値が設定された画素の範囲を、同一の表面効果を付与する領域として判断すればよく、各表面効果を1ページ内で容易に実現することが可能となっている。
しかし、光沢制御版の画像データにおいて濃度値によって1ページに複数種類の表面効果が指定された場合、同一ページにおいてグロッサ80のオン又はオフを切り替えることができないため、同時に実現することができる種類の表面効果と、同時に実現することができない種類の表面効果がある。
図1に示したように、プリンタ機70とグロッサ80と低温定着機90とを備えた構成を採用している本実施の形態において、1ページ内で鏡面光沢(PG)とつや消し(PM)の表面効果が指定された場合には、図25により、鏡面光沢(PG)ではグロッサ80をオンとし、つや消し(PM)ではグロッサ80のオンオフはページ内の他の表面効果の指定に従うことから、これらの2種類の表面効果を1ページ内で同時に実現することができる。
この場合において、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の各画素の表す濃度値を用いて、図25に例示される表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「238」〜「255」である画素の領域に対して指定された表面効果は、鏡面光沢(PG)であると判断する。そして、DFE50のクリアプロセッシング56は、ガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データにおいて当該領域に対応する画像データを用いて、例えば式1によりインバースマスクを生成する。当該インバースマスクを表すものが、鏡面光沢(PG)の表面効果が指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとなる。尚、当該鏡面光沢が指定された領域に対して低温定着機90ではクリアトナー版の画像データを用いないため、DFE50は、鏡面光沢が指定された領域に対して低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成しない。
また、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、上記と同一ページ内において、同様に表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「1」〜「17」である画素の領域に対して指定された表面効果は、つや消し(PM)であると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、1ページ内に他の表面効果である鏡面光沢の設定に従ってグロッサ80をオンとし、つや消しが指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データを生成せず、つや消しが指定された領域に対してベタマスクを、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。
そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、鏡面光沢が指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、つや消しが指定された領域に対して低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データを統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオンを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。
MIC60は、DFE50から出力された画像データのうちCMYKの色版の画像データと、プリンタ機70で用いる鏡面光沢が指定された領域に対するクリアトナー版の画像データとをプリンタ機70に出力する。また、MIC60は、DFE50から出力された画像データのうち、つや消しが指定された領域に対して低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを低温定着機90に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオンにする。
プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データ及び鏡面光沢が指定された領域に対するクリアトナー版の画像データを用いて、露光器から光ビームを照射して各トナーに応じたトナー像を感光体上に形成してこれを紙に転写しこれを通常温度での加熱及び加圧により定着させる。これによって紙に、CMYKのトナーの他クリアトナーが付着されて、画像が形成される。その後、グロッサ80が当該紙を高温及び高圧で加圧する。
低温定着機90は、MIC60から出力された、つや消しが指定された領域に対するクリアトナー版の画像データを用いてクリアトナーによるトナー像を形成して、グロッサ80を通過した紙上に当該トナー像を重ねて、低温での加熱及び加圧により紙に定着させる。この結果、表面効果として鏡面光沢が指定された領域の表面から強い光沢が得られ、表面効果としてつや消しが指定された領域には、ベタマスクによるクリアトナーの付着によって表面の凹凸が生じて、当該領域の表面の光沢が抑えられる。
また、この他、本実施の形態の構成において、1ページ内で、ベタ光沢(G)と網点マット(M)とつや消し(PM)の表面効果が指定された場合には、図25により、ベタ光沢(G)および網点マット(M)ではグロッサ80をオフとし、つや消し(PM)ではグロッサ80のオンオフはページ内の他の表面効果の指定に従うことから、これらの3種類の表面効果を1ページ内で同時に実現することができる。
この場合について、より具体的に説明する。ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、8ビットの光沢制御版の各画素の表す濃度値を用いて表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「212」〜「232」である画素の領域に対して指定された表面効果は、ベタ光沢であると判断し、特に、濃度値が「228」〜「232」である画素に対しては、ベタ光沢タイプ1であると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、ガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データにおいて当該領域に対応する画像データを用いて、インバースマスク1を生成する。当該インバースマスク1を表すものが、ベタ光沢が指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとなる。尚、ベタ光沢が指定された領域に対して低温定着機90ではクリアトナー版の画像データを用いないため、DFE50は、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成しない。
また、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、上記と同一ページ内において、同様に表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「23」〜「43」である画素の領域に対して指定された表面効果は、網点マット(M)であると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、ハーフトーンを表す画像データを、網点マットが指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。尚、この網点マットが指定された領域に対して低温定着機90ではクリアトナー版の画像データを用いないため、DFE50は、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを生成しない。
さらに、ステップS4では、DFE50のクリアプロセッシング56は、上記と同一ページ内において、同様に表面効果選択テーブルを参照して、濃度値が「1」〜「17」である画素の領域に対して指定された表面効果は、つや消し(PM)であると判断する。この場合、DFE50のクリアプロセッシング56は、グロッサ80のオンまたはオフは1ページ内に指定されている他の表面効果であるベタ光沢、網点マットの設定に従いオフとし、つや消しが指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データを生成せず、つや消しが指定された領域に対してベタマスクを、低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する。
そして、ステップS7では、DFE50のsi3部57は、ベタ光沢が指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、網点マットが指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データと、つや消しが指定された領域に対して低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データと、ステップS3で得たハーフトーン処理後のCMYKの各2ビットの画像データとを統合し、統合した画像データと、グロッサ80のオフを示すオンオフ情報とをMIC60に出力する。
MIC60は、DFE50から出力された画像データであるCMYKの色版の画像データ、ベタ光沢が指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データおよび網点マットが指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データをプリンタ機70に出力し、DFE50から出力されたオンオフ情報を用いて、グロッサ80をオフにする。また、MIC60は、DFE50から出力された画像データのうち、つや消しが指定された領域に対して低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データを低温定着機90に出力する。
プリンタ機70は、MIC60から出力されたCMYKの色版の画像データ、ベタ光沢が指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データおよび網点マットが指定された領域に対してプリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データを用いて、紙に、CMYKのトナー及びクリアトナーを付着させた画像を形成する。グロッサ80はオフにされているため、その後、紙は、高温及び高圧で加圧されることはない。
また、低温定着機90は、MIC60から出力された、つや消しが指定された領域に対するクリアトナー版の画像データを用いて、つや消しの領域に対してクリアトナーによるトナー像を形成して、紙上に当該トナー像を重ねて、低温での加熱及び加圧により紙に定着させる。
以上の結果、1ページ内において表面効果としてベタ光沢が指定された領域には、CMYKの各トナー及びクリアトナーの総付着量が比較的均一になり、当該領域の表面からやや強い光沢が得られる。また、1ページ内において表面効果として網点マットが指定された領域にはクリアトナーにより網点が付加されることにより、表面の凹凸が生じて、当該領域の表面の光沢がやや抑えられる。さらに、1ページ内において表面効果としてつや消しが指定された領域には、ベタマスクによるクリアトナーの付着によって表面の凹凸が生じて、当該領域の表面の光沢が抑えられる。
このように同一ページ内において複数の種類の異なる表面効果が指定され、表面効果に応じてグロッサ80のオン又はオフを切り替える必要がない場合には、複数の異なる表面効果を1ページ内で実現することができるが、同一ページにおいてグロッサ80のオン又はオフを切り替える必要のある複数の異なる表面効果は、1ページ内で実現することができない。
例えば、プリンタ機70とグロッサ80と低温定着機90とを備えた構成を採用している本実施の形態において、鏡面光沢(PG)とベタ光沢(G)とが1ページ内で指定されている場合、図25により、鏡面光沢(PG)ではグロッサ80をオンとし、ベタ光沢(G)ではグロッサ80をオフとすることから、鏡面光沢(PG)とベタ光沢(G)の2種類の表面効果を1ページ内で実現することはできない。
このように、1ページ内で異なる種類の表面効果が指定されたが、1ページ内で実現することができない場合には、本実施の形態では、DFE50は、同時に実現できない表面効果のうち一部の種類の表面効果については、指定された表面効果以外の表面効果で代用して実現させるようにする。
例えば、図29に例示されるように、同一ページにおいて鏡面光沢(PG)、ベタ光沢(G)、網点マット(M)、つや消し(PM)の4つの効果が指定されていた場合、DFE50はグロッサ80をオフにさせると共に、光沢制御版において濃度値によって、表面効果がベタ光沢であると判断した領域、表面効果が網点マットであると判断した領域及び表面効果がつや消しであると判断した領域については、各表面効果を実現させ、表面効果が鏡面光沢であると判断した領域については、ベタ光沢を代替の表面効果として選択する。そして、DFE50は、表面効果が鏡面光沢であると判断した領域に対して、ベタ光沢の場合と同様にして、ガンマ補正後のCMYKの各8ビットの画像データにおいて当該領域に対応する画像データを用いて、インバースマスクA、B、Cのいずれかを、プリンタ機70で用いるクリアトナー版の画像データとして生成する(図29のINVに該当する)。低温定着機90で用いるクリアトナー版の画像データは生成しない。図25において、濃度値が「248」〜「255」のとき、その効果はDFE50で鏡面光沢タイプAと判断され、インバースマスクAが用いられる。また、図29のINV−mは図25のインバースマスク1〜4、図29のhalftone−nは図25のハーフトーン1〜4と対応している。そして、上述したようにしてプリンタ機70、オフにされたグロッサ80及び低温定着機90を経て排紙された紙において、鏡面光沢が指定された領域及びベタ光沢が指定された領域には、ベタ光沢としての表面効果が与えられ、網点マットが指定された領域には、網点マットとしての表面効果が与えられ、つや消しが指定された領域には、つや消しとしての表面効果が与えられる。尚、表面効果を与える領域として指定されていない領域には、いずれの表面効果も与えられない。
以上のように、DFE50が、ユーザが指定した表面効果に種類に応じて濃度値がセットされた光沢制御版を用いて、プリンタ機70に後続するグロッサ80や低温定着機90などの後処理機の有無やその種類に応じて、後処理機での後処理の有無を判断し、クリアトナーを付着させるためのクリアトナー版の画像データを適宜生成する。これにより、様々な構成の画像形成システム1においても共通の表面効果を与えるためのクリアトナー版の画像データを生成することができ、当該クリアトナー版の画像データを用いて、CMYKのトナー像により形成された画像に対してクリアトナーを付着させることにより、各種表面効果を与えることが可能になる。従って、ユーザは手間を掛けることなく、画像が形成される印刷物に対してクリアトナーによる所望の表面効果を与えることが可能になる。
また、本実施の形態では、光沢制御版の画像データの画素毎に表面効果を特定する濃度値を設定しているので、紙内の1ページにおいて複数の種類の表面効果を与えることができる。
なお、本実施の形態にかかる画像処理システムにおいては、プレビュー画像処理部125は、版データ生成部122により生成された原稿データに基づいて、プレビュー画像を生成したが、第1の変更例としては、印刷データ生成部123により生成された原稿データに基づいて、プレビュー画像を生成してもよい。なお、この場合には、印刷データから原稿データを抽出し、原稿データに対し、実施の形態において説明したのと同様の処理を施すことにより、プレビュー画像を生成する。
また、本実施の形態においては、版データ生成部122及び印刷データ生成部123は、同一装置が備えることとしたが、第2の変更例としては、これらはそれぞれ別個の装置が備えることとしてもよい。
また、第3の変更例としては、ホスト装置10にかえて、DFE50がプレビュー画像処理部を備えることとしてもよい。この場合には、プレビュー画像処理部は、ホスト装置10から入力された印刷データに含まれる画像データに基づいて、プレビュー画像を生成する。
また、第4の変更例としては、本実施の形態の画像形成システム1の一の装置で行っていた処理の一部を、当該装置とネットワークを介して接続するクラウド上の一以上の装置で行ってもよい。
図30は、そうしたシステムの一例として、ネットワークを介してホスト装置410と接続するサーバ装置400を備えた画像形成システムを示す図である。図30に示す画像形成システムにおいては、サーバ装置400は、ネットワークを介してホスト装置410と通信する通信部403と、分離部401と、クリア表示データ生成部402とを備えている。ホスト装置410は、実施の形態において説明した構成に加えて、通信部16を備えている。また、ホスト装置410のプレビュー画像処理部126は、パラメータ設定部202およびプレビュー画像生成部203を備えている。
本変更例においては、サーバ装置400の分離部401は、通信部403を介して、ホスト装置410から原稿データを受信し、原稿データを分離する。そして、クリア表示データ生成部402により生成されたクリア表示データは、通信部403を介してホスト装置410に送信される。
ホスト装置410では、通信部16を介してサーバ装置400からクリア表示データを受信する。そして、プレビュー画像処理部126のパラメータ設定部202およびプレビュー画像生成部203は、サーバ装置400から受信したクリア表示データを利用して、プレビュー画像を生成する。
なお、サーバ装置が行う処理は本例に限定されるものではなく、サーバ装置は、本実施の形態にかかる画像形成システム1が行う処理の一部を行うことができる。そうした他の例としては、サーバ装置はさらにパラメータ設定部を備え、ホスト装置が備えるプレビュー画像生成部に与えるパラメータを特定してもよい。この場合には、ホスト装置が備えるプレビュー画像生成部は、サーバ装置から受信したパラメータを利用して、プレビュー画像を生成する。なお、この場合には、サーバ装置は、反射度記憶部および決定ルール記憶部を備えるものとする。
また、画像形成システムは、2以上のサーバ装置を備えてもよい。この場合には、実施の形態にかかる画像形成システムが行う処理の一部を、各サーバ装置に分散させる。さらに、各サーバに分散させる処理については、任意に設定することができる。
上述した実施の形態のホスト装置10,410、DFE50、サーバ装置400のハードウェア構成について説明する。図31は、ホスト装置10,410、DFE50、サーバ装置410のハードウェア構成図である。ホスト装置10,410、DFE50、サーバ装置410は、ハードウェア構成として、装置全体を制御するCPUなどの制御装置2901と、各種データや各種プログラムを記憶するROMやRAMなどの主記憶装置2902と、各種データや各種プログラムを記憶するHDDなどの補助記憶装置2903と、キーボードやマウス等の入力装置2905と、ディスプレイ装置等の表示装置2904とを主に備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
上記実施の形態のホスト装置10,410で実行される画像処理プログラム(画像処理アプリケーションを含む。以下同。)は、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供される。
また、上記実施の形態のホスト装置10,410で実行される画像処理プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施の形態のホスト装置10,410で実行される画像処理プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、上記実施の形態のホスト装置10,410で実行される画像処理プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
上記実施の形態のホスト装置10,410で実行される画像処理プログラムは、上述した各部(画像処理部、版データ生成部、印刷データ生成部、入力制御部、表示制御部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から画像処理プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、画像処理部、版データ生成部、印刷データ生成部、入力制御部、表示制御部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
また、上記実施の形態のDFE50で実行される印刷制御処理は、ハードウェアで実現する他、ソフトウェアとしての印刷制御プログラムで実現してもよい。この場合において、上記実施の形態のDFE50で実行される印刷制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
上記実施の形態のDFE50で実行される印刷制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供するように構成してもよい。
さらに、上記実施の形態のDFE50で実行される印刷制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施の形態のDFE50で実行される印刷制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
上記実施の形態のDFE50で実行される印刷制御プログラムは、上述した各部(レンダリングエンジン、ハーフトーンエンジン、TRC、si1部、si2部、si3部、クリアプロセッシング)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMから印刷制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、レンダリングエンジン、ハーフトーンエンジン、TRC、si1部、si2部、si3部、クリアプロセッシングとして主記憶装置上に生成されるようになっている。
また、上記実施の形態のサーバ装置410で実行される各データの生成処理は、ハードウェアで実現する他、ソフトウェアとしての生成プログラムで実現してもよい。この場合において、上記実施の形態のサーバ装置410で実行される生成プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
上記実施の形態のサーバ装置410で実行される各データの生成処理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供するように構成してもよい。
さらに、上記実施の形態のサーバ装置410で実行される各データの生成処理プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施の形態のサーバ装置410で実行される各データの生成処理プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
上記サーバ装置410で実行される各データの生成処理プログラムは、上述した各部(版データ生成部、印刷データ生成部、クリアプロセッシング)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMから生成プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、版データ生成部、印刷データ生成部、クリアプロセッシングとして主記憶装置上に生成されるようになっている。
なお、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、以下に例示するような種々の変形が可能である。
上述した実施の形態において、画像形成システム1は、ホスト装置10,410、DFE50、MIC60、プリンタ機70、グロッサ80及び低温定着機90を備えるように構成したが、これに限らない。例えば、DFE50、MIC60及びプリンタ機70を一体的に形成して1つの画像形成装置として構成するようにしても良いし、更に、グロッサ80及び低温定着機90を備えた画像形成装置として形成するようにしても良い。
上述した実施の形態の画像形成システム1においては、CMYKの複数の色のトナーを用いて画像を形成するようにしたが、1色のトナーを用いて画像を形成するようにしても良い。
なお、上述した実施の形態のプリンタシステムは、MIC60を備えた構成としているが、これに限定されるものではない。上述したMIC60が行う処理、機能をDFE50等の他の装置にもたせて、MIC60を設けない構成としてもよい。