JP5966258B2 - リン含有硬化剤、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、支持体付き樹脂フィルム、金属箔張積層板、及び多層プリント配線板 - Google Patents

リン含有硬化剤、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、支持体付き樹脂フィルム、金属箔張積層板、及び多層プリント配線板 Download PDF

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本発明は、取り扱い性が良く、反応性が高く、更に高耐熱性を有するエポキシ樹脂組成物を得ることができるリン含有硬化剤に関する。また、本発明は、このリン含有硬化剤をエポキシ樹脂に配合して得られるプリント配線板用として好適なエポキシ樹脂組成物、これを用いて得られるプリプレグ、支持体付き樹脂フィルム、金属箔張積層板、及び多層プリント配線板に関する。
パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器の普及に伴ってこれらに搭載されるプリント配線板の小型化、高密度化が進んでいる。その実装形態はピン挿入型から表面実装型へさらにはプラスチック基板を使用したBGA(ボールグリッドアレイ)に代表されるエリアアレイ型へ進んでいる。BGAのようなベアチップを直接実装する基板では、チップと基板との接続は、熱超音波圧着によるワイヤボンディングで行われるのが一般的である。この熱超音波圧着時に、ベアチップを実装する基板は150℃以上の高温にさらされることになるため、電気絶縁性樹脂にはある程度の耐熱性が必要となる。
さらに、一度実装したチップを基板から外す、いわゆるリペア性も要求される場合がある。チップを基板から外す際には、チップ実装時と同程度の熱がかけられる。また、基板にチップが再度実装される際に、更に熱処理が施されることになる。この繰り返し加熱によって、従来の絶縁性樹脂系では、プリプレグの繊維基材と樹脂との間で剥離を起こすことがある。リペア性が要求される基板では、繰り返し高温に曝されることに対する耐性(耐熱衝撃性)が要求される。
エポキシ樹脂に臭素等のハロゲン元素を含むハロゲン化合物を添加することによって、難燃性を確保することができるが、燃焼によって一酸化炭素やシアン化水素が発生する場合がある。また、臭素等のハロゲン化合物が添加されたエポキシ樹脂では、加熱の際に臭素が分解し、耐熱性の低下や信頼性の低下が起こり得る。そのため、エポキシ樹脂にハロゲン化合物を添加せずに、難燃性を確保できる成形物の開発が望まれていた。
ハロゲン化合物を添加せずに、難燃性を確保する方法としては、窒素、珪素、水酸化アルミニウム等のフィラーを配合する方法が挙げられる。その中でもリン化合物を配合する方法が広く用いられている。例えば、リン酸エステル系の化合物であるトリフェニルホスフェート(TPP)やトリクレジルホスフェート(TCP)が用いられる。しかし、これらのリン化合物は、エポキシ樹脂中に添加されても、エポキシ樹脂と反応することがないため、得られた成形物の、吸湿後の耐熱性や耐薬品性等が低下するという問題が生じた。
これに対して、エポキシ樹脂とリン含有化合物を反応させてリン含有エポキシ樹脂を合成することにより、ハロゲン化合物を含有することなく、難燃性を確保するという方法が提案された(特許文献1参照)。しかし、硬化剤としてジシアンジアミド(DICY)を用いるためにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMAc)などのように、環境に高負荷の溶剤を使用せざるを得ないという問題があった。また、昨今に要求されている低吸湿性、高耐熱性などの特性に十分に対応できていないという問題があった。更に有機リン系難燃剤やその誘導体を硬化剤として用いる場合、分散性が悪化するためにプレ反応を必要とするなどの問題があった。
特開2009−185087号公報
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、取り扱い性に優れ、反応性が高く、更に高耐熱性を付与でき、難燃性、耐水性等の特性が付与されたエポキシ樹脂組成物を提供することが可能なリン含有硬化剤と、それを用いたプリント配線板用のエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、支持体付き樹脂フィルム、金属箔張積層板、及び多層プリント配線板とを提供するものである。
本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1]下記化学式(1)で示される化合物Aとフェノール性水酸基を有する化合物Bとを反応して得られるリン含有硬化剤。
(化学式(1)中、R1は炭素数0〜6の炭化水素基を表す。なお、R1における炭素数0の炭化水素基とは、ClがPに直接に結合していることを表す。)
[2]前記フェノール性水酸基を有する化合物Bが、ノボラック類である[1]に記載のリン含有硬化剤。
[3]前記フェノール性水酸基を有する化合物Bが、下記化学式(2)で表される化合物、化学式(3)で表される化合物、及び化学式(4)で示す構造を含む化合物の1種又は2種以上を含む[1]に記載のリン含有硬化剤。
[4][1]〜[3]のいずれか1項に記載のリン含有硬化剤とエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物。
[5][4]に記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
[6][4]に記載のエポキシ樹脂組成物を支持体に積層してなる支持体付き樹脂フィルム。
[7][5]に記載のプリプレグ又は請求項6に記載の支持体付き樹脂フィルムの一方又は両方の面に金属箔を配してなる金属箔張積層板。
[8][5]に記載のプリプレグよりなる層、[6]に記載の支持体付き樹脂フィルムよりなる層、及び[7]に記載の金属箔張積層板よりなる層の1層又は2層以上を含む多層プリント配線板。
本発明によれば、化学式(1)で示される化合物Aとフェノール性水酸基を有する化合物Bとを反応して得られるリン含有硬化剤を用いることによって、取り扱い性が良く、反応性が高く、更に高耐熱性を有し、難燃性、耐水性等の特性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、このプリント配線板用のエポキシ樹脂組成物を用いて前記特性を有するプリプレグ、支持体付き樹脂フィルム、金属箔張積層板、多層プリント配線板を得ることができる。
[リン含有硬化剤]
本発明に係るリン含有硬化剤は、下記化学式(1)で示される化合物Aとフェノール性水酸基を有する化合物Bとを反応して得られるものである。
このリン含有硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物は、フェノール性水酸基を有する特定のリン含有硬化剤とエポキシ樹脂とを含有するので、これから得られる成形品は、難燃性を有し、更に耐熱性、電気特性、耐水性等の特性も非常に良好である。
<化学式(1)で示される化合物A>
化学式(1)中のRは、炭素数0〜6の炭化水素基のうちいずれかを表す、なお、「Rは炭素数0」とは、ClがPに直接に結合していることを表す。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基、ビニレン基、アリレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基等のアルケニレン基、フェニレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
この化学式(1)で示される化合物Aとしては、HCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)の塩化物が挙げられる。この化合物は溶剤への溶解性が低いため、プレ反応を行ってから配合することが一般的である。
<フェノール性水酸基を有する化合物B>
フェノール性水酸基を有する化合物Bとしては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのフェノール類又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂(ノボラック類)、ポリパラビニルフェノール樹脂、フェノール類とジメトキシパラキシレンから合成されるキシリレン基を有するフェノール・アラルキル樹脂などがあり、単独又は2種類以上併用してもよい。
中でも、フェノール性水酸基を有する化合物Bとしては、下記化学式(2)で表される化合物、化学式(3)で表される化合物、及び化学式(4)で示す構造を含む化合物の1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
化学式(2)で示される構造を有する場合、該リン含有硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の耐熱性が向上する。また、反応系である溶媒へのリン含有硬化剤の溶解性が向上するため取扱性が向上する。化学式(3)で示される構造を有する場合、エポキシ樹脂との反応性が向上する。化学式(4)で示される構造を有する場合、このリン含有硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の耐熱性が向上する。特に、化学式(2)で示される構造を有する場合、該リン含有硬化剤が低粘度となって取扱性に優れたものとなり、生産性を向上することができる。
フェノール性水酸基を有する化合物Bは、分子量が180以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましい。分子量が180以上であると、リン硬化剤の溶剤溶解性が向上し、取り扱い性が向上する。
<反応方法>
上記化学式(1)で示される化合物Aと上記フェノール性水酸基を有する化合物Bとを反応させてリン含有硬化剤を製造する方法には特に制限はなく、例えば、溶媒中にこれら化学式(1)で示される化合物Aと上記フェノール性水酸基を有する化合物Bとを添加し、両者を反応させた後、溶媒を除去することにより、リン含有硬化剤を得ることができる。
[エポキシ樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のリン含有硬化剤と、エポキシ樹脂とを含むものである。
<エポキシ樹脂>
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、フェノールフェニレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を含有するフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて併用して用いてもよい。
なかでも、接着力等の良好な硬化物が得られる観点からはビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、流動性及び耐リフロー性、吸水率が低く、高Tgの硬化物が得られ易い観点からはビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性が得られやすい観点からはビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂及び硫黄原子含有エポキシ樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性及び低反り性、Tgが高い硬化物が得られる観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性の観点からはビフェニレン型エポキシ樹脂及びナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましい。
<リンの含有量>
難燃性の観点からは、エポキシ樹脂組成物中のリンが、樹脂組成物固形分全体の0.8〜5.0質量%であることが好ましい。リン含有量が、樹脂組成物固形分全体の0.8質量%以上であると、安定した難燃性が得られ易く、5.0質量%以下であると、硬化物の特性が良好なものとなる。この観点から、リン成分含有量は、より好ましくは1.0〜2.5重量%である。
ここでリン含有量とは、エポキシ樹脂組成物中に存在するリンの含有量であり、例えば、分子量620の物質にリン原子が1個あり、この物質を50質量%含む配合であれば、2.5質量%のリン成分含有量になる(リン原子の原子量が約31であるから、31/620×0.5=0.0250)。
<その他の添加剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物中に、添加剤として無機充填剤やカップリング剤を添加してもよい。無機充填剤を添加することによって、低熱膨張率化や難燃性向上に優れる材料を得ることができる。また、カップリング剤を添加することによって、無機充填剤の分散性を向上させ、耐薬品性やピール強度に優れる材料を得ることができる。
カップリング剤としては、エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、たとえば、1級及び/又は2級及び/又は3級アミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤としては、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上の効果があり、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、複合金属水酸化物、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
その他、紫外線等で蛍光を発する化学物質、または樹脂を含有することにより、樹脂組成物を用いて製造した多層プリント配線板の回路形成後の検査の際に、銅箔パターンをシルエット状に浮き立たせ、これによりパターン形状を認識し、外観検査が行いやすくなる。
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
これらのエポキシ樹脂組成物を得る際、溶媒を用いても良いし、また無溶媒で行っても良い。これらのエポキシ樹脂組成物を得る際、硬化促進剤、その他の特性付与剤を必要に応じて添加しても良い。
溶媒を用いたエポキシ樹脂組成物の製造方法の一例を説明する。メチルエチルケトン等の溶媒に、上記リン含有硬化剤、エポキシ樹脂、その他の硬化剤成分、リン化合物等を配合し、系が均一になるように撹拌する。この後、例えば、水酸化アルミニウムを上記溶媒によりスラリー状にしたものをフィラーとして加え、更に撹拌する。これにより、エポキシ樹脂組成物のワニスを作製することができる。
[プリプレグ、支持体付き樹脂フィルム、金属箔張積層板、及び多層プリント配線板]
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物を、コンマコータ、転写コータ、カーテンコータ、ダイコータ等を使用して銅箔、アルミ箔等の金属箔または樹脂フィルム等の支持体に塗布し、連続、又は非連続的に加熱乾燥してBステージ化することにより、絶縁層を形成して支持体付き樹脂フィルムを好適に得ることができる。
また、ガラスクロスやガラス不織布に前記エポキシ樹脂組成物を塗布・含浸させ、連続又は非連続的に加熱乾燥してBステージ化することにより、プリプレグを好適に得ることができる。
さらに、このプリプレグを1枚または複数枚積層しその一方又は両方の面に銅箔等の金属箔を配し、積層し、加熱成形することによって、金属箔張積層板を好適に得ることができる。
前記支持体付き樹脂フィルムの支持体の厚さ、エポキシ樹脂組成物からなる絶縁層の樹脂厚みは任意である。金属箔としては8μm〜80μm、絶縁層樹脂の厚みとしては20μm〜200μmが一般的である。
金属箔張積層板または回路パターン形成済みの内層用基板の両面又は片面に、上記支持体付き樹脂フィルム及び/又はプリプレグを介し樹脂面を対向させて積層し、加熱成形して、さらに外層の回路形成を施すことにより、多層プリント配線板を好適に得ることができる。
[合成例及び実施例]
(合成例1)
化学式(1)で示される化合物Aとフェノール性水酸基を有する化合物Bを反応して得られるリン含有硬化剤の製造方法の一例としては、次の方法が例示される。
化学式(1)で示される化合物Aとしては、HCA(三光化学株式会社商品名)の水素の一部を塩素置換した塩化物(クロロ-ジヒドロ-ジベンゾ-オキサホスフィン)を用いた。
撹拌機、温度計、冷却管及び滴下ロートを備えた3リットルのガラス反応器に,フェノール性水酸基を有する化合物Bとしてフェノールノボラック樹脂HP-850N(日立化成工業株式会社商品名)210g、メチルエチルケトン1L及びトリエチルアミン92gを仕込み、窒素気流下で撹拌、溶解、氷浴で内温10℃以下まで冷却した。撹拌下、内温10℃以下を保ちながら上記HCAの塩化物236gを2時間かけて投入し、終了後さらに2時間かけて反応を行った。反応終了後、反応溶液をろ過し、溶媒を除去して粗生成物を得た。この粗生成物を酢酸エチル5Lに溶解し、分液ロートを用いて十分に水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を除去することにより、ホスファイト化フェノールノボラック樹脂536gを得た。反応の進行はGPCにより確認した。
(実施例1〜5及び比較例1〜3)
(実施例1)
エポキシ樹脂としてN−673−70M(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社商品名)を143g(樹脂固形70質量%(100g))、硬化剤としてKA−1163(クレゾールノボラック樹脂、DIC株式会社商品名)を35g、2−フェニルイミダゾール0.2g、リン含有硬化剤として合成例1記載のリンフェノール樹脂20g、リン化合物としてPX200(芳香族縮合リン酸エステル、大八化学工業株式会社製商品名)5g、メチルエチルケトン100gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌したのち、フィラーとしてCL303(水酸化アルミニウム、平均粒径3μm、住友化学株式会社製商品名)を40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え更に一時間撹拌したのち、リン含有量を1.6質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(実施例2)
リン化合物としてPX200(大八化学工業株式会社製商品名)を添加せず、また、フィラーとしてCL303を添加しない以外は実施例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(実施例3)
フィラーとしてCL303の代わりにHP360(水酸化アルミニウム、昭和電工株式会社商品名)を添加した以外は実施例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(実施例4)
フィラーとしてCL303の代わりにBMT(ベーマイト、河合石灰工業株式会社商品名)を添加した以外は実施例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(実施例5)
フィラーとしてCL303の代わりにF05−30(破砕シリカ、平均粒径10μm、福島窯業株式会社商品名)を添加した以外は実施例1と同様の手順でエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(比較例1)
エポキシ樹脂としてN−673−70M(DIC株式会社商品名)を143g(樹脂固形70質量%(100g))、硬化剤としてKA−1163(DIC株式会社商品名)を35g、2−フェニルイミダゾール0.2g、リン化合物としてPX200(大八化学工業株式会社製商品名)40g、メチルエチルケトン100gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌したのち、フィラーとしてCL303を40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え更に一時間撹拌したのち、リン含有量を1.4質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(比較例2)
エポキシ樹脂としてFX298(リン原子含有エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜290、リン原子含有量2〜3質量%、東都化成株式会社商品名)を100g、硬化剤としてKA−1163(DIC株式会社商品名)を35g、2−フェニルイミダゾール0.2g、リン化合物としてPX200(大八化学工業株式会社製商品名)5g、メチルエチルケトン100gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌したのち、フィラーとしてCL303を40gをメチルエチルケトンのスラリーとして加え更に一時間撹拌したのち、リン含有量を1.5質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
(比較例3)
エポキシ樹脂としてFX298(東都化成株式会社商品名)を100g、硬化剤としてKA−1163(DIC株式会社商品名)を20g及びDICY(ジシアンジアミド)5g、2−フェニルイミダゾール0.2g、リン化合物としてPX200(大八化学工業株式会社製商品名)5g、メチルエチルケトン70g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)30gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌したのち、フィラーとしてCL303を40g、メチルエチルケトンのスラリーとして加え更に一時間撹拌したのち、リン含有量を1.5質量%としたエポキシ樹脂組成物ワニスを作製した。
上記の実施例1〜5及び比較例1〜3のエポキシ樹脂組成物をまとめて表1に示した。
評価
(1)プリプレグ及び銅張り積層板の作製
実施例1〜5及び比較例1〜3で作製したワニスを厚さ0.2mmのガラス布(旭シュエーベル株式会社製)に含浸後、120℃、20分間加熱、乾燥しプリプレグを得た。
プリプレグの両側に厚さ18μmの電解銅箔F2−WS−18(古河サーキットフォイル株式会社製商品名)を接着面がプリプレグと合わさるように重ね、180℃、30分間4MPaの真空プレス条件で加圧加熱し両面銅張り積層板を作製した。
(2)測定方法
(難燃性)
得られた両面銅張り積層板の銅箔をエッチングし取り除き、UL−94規格に基づき、垂直燃焼試験を行った。
(半田耐熱性)
得られた両面銅張り積層板を50mm角に切断し、288℃に溶融させた半田耐熱試験機に浮かべ、膨れなどの異常が確認されるまでの時間を測定した。評価は、「t分OK」は、t分まで膨れなどの異常がないことを示し、「t分異常」は、t分で膨れなどの異常が発生したことを示す。
(ガラス転移温度Tg)
TgはTMA(熱機械分析装置)(マックサイエンス株式会社製TMA−4000)を用いて昇温速度5℃/minの条件で測定を行った。昇温、降温を2回繰り返し、2回目の昇温の熱膨張曲線の屈曲点の温度をTgと定義した。
本発明のリン含有硬化剤を用いた実施例1〜5は、難燃性で、耐熱性が高くまた、Tgが高い積層板を提供することができる。また、実施例1〜5は、従来の潜在性硬化剤であるDICYを用いた比較例3と比較して十分な反応性を示し、半田耐熱性に優れ、Tgも高く耐熱性に優れる。更に実施例1〜5では、硬化剤として従来のDICYを用いることに代えて本発明のリン含有硬化剤を用いているため、DICYを溶解させるための高沸点且つ吸湿性を有するDMFを用いなくても、当該リン含有硬化剤を汎用溶剤であるMEKに溶解させることができる。
一方、本発明のリン含有硬化剤を用いない比較例1〜3は、半田耐熱性に劣り、また、Tgが低く耐熱性に劣る。

Claims (6)

  1. トリエチルアミンの存在下、10℃以下で、下記化学式(1)で示される化合物Aと、フェノール性水酸基を有する化合物Bとして下記化学式(4)で示す構造を含むフェノール性ノボラック樹脂とを反応させるリン含有硬化剤の製造方法。

    (化学式(1)中、Rは炭素数0〜6の炭化水素基を表し、Rは炭素数0である。なお、Rにおける炭素数0の炭化水素基とは、ClがPに直接に結合していることを表す。)
  2. 請求項1に記載の製造方法によって得られたリン含有硬化剤とエポキシ樹脂とを配合するエポキシ樹脂組成物の製造方法。
  3. 請求項2に記載の製造方法によって得られたエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させるプリプレグの製造方法。
  4. 請求項2に記載の製造方法によって得られたエポキシ樹脂組成物を支持体に積層させる支持体付き樹脂フィルムの製造方法。
  5. 請求項3に記載の製造方法によって得られたプリプレグ又は請求項4に記載の製造方法によって得られた支持体付き樹脂フィルムの一方又は両方の面に金属箔を配する金属箔張積層板の製造方法。
  6. 請求項3に記載の製造方法によって得られたプリプレグよりなる層、請求項4に記載の製造方法によって得られた支持体付き樹脂フィルムよりなる層、及び請求項5に記載の製造方法によって得られた金属箔張積層板よりなる層から選ばれる1層又は2層以上を積層する多層プリント配線板の製造方法。
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