次に図面を使用して本発明に係る実施の形態を説明する。図1は本発明に係る電力変換装置を、エンジンとモータの両方を使用して走行するいわゆるハイブリッド用自動車に適用したシステム図である。本発明に係る電力変換装置はハイブリッド用車両のみならず、モータのみで走行するいわゆる電気自動車にも適用可能であり、また一般産業機械に使用されているモータを駆動するための電力変換装置としても使用可能である。しかし上述あるいは以下に説明のとおり、本発明に係る電力変換装置は特に上記ハイブリッド用自動車や上記電気自動車に適用すると、小型化の観点あるいは信頼性の観点、その他、いろいろの観点で優れた効果が得られる。ハイブリッド用自動車に適用した電力変換装置は電気自動車に適用した電力変換装置と略同じ構成であり、代表例としてハイブリッド自動車に適用した電力変換装置について説明する。
図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。エンジンEGNおよびモータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2は車両の走行用トルクを発生する。またモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMG1あるいはモータジェネレータMG2に外部から加えられる機械エネルギを電力に変換する機能を有する。モータジェネレータMG1あるいはMG2は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。
エンジンEGNの出力側及びモータジェネレータMG2の出力トルクは動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMG1に伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMG1が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータMG1に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述するように電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギとして使用される。また高電圧用のバッテリ136の蓄電している電力が少なくなった場合に、エンジンEGNが発生する回転エネルギをモータジェネレータMG2により交流電力に変換し、次に交流電力を電力変換装置200により直流電力に変換し、バッテリ136を充電することができる。エンジンEGNからモータジェネレータMG2への機械エネルギの伝達は動力分配機構TSMによって行われる。
次に電力変換装置200について説明する。インバータ回路140とインバータ回路142は、バッテリ136と直流コネクタ138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140あるいは142との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータMG1をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流コネクタ188を介してモータジェネレータMG1に供給する。モータジェネレータMG1とインバータ回路140からなる構成は第1電動発電ユニットとして動作する。同様にモータジェネレータMG2をモータとして動作させる場合には、インバータ回路142は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流端子159を介してモータジェネレータMG2に供給する。モータジェネレータMG2とインバータ回路142からなる構成は第2電動発電ユニットとして動作する。第1電動発電ユニットと第2電動発電ユニットは、運転状態に応じて両方をモータとしてあるいは発電機として運転する場合、あるいはこれらを使い分けて運転する場合がある。また片方を運転しないで、停止することも可能である。
なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータMG1の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジンEGNの動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
バッテリ136はさらに補機用モータ195を駆動するための電源としても使用される。補機用モータとしては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは冷却用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136から直流電力が補機用パワーモジュール350に供給され、補機用パワーモジュール350で交流電力を発生し、交流端子120を介して補機用モータ195に供給される。補機用パワーモジュール350はインバータ回路140や142と基本的には同様の回路構成および機能を持ち、補機用モータ195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。補機用モータ195の容量がモータジェネレータMG1やMG2の容量より小さいので、補機用パワーモジュール350の最大変換電力がインバータ回路140や142より小さいが、上述の如く補機用パワーモジュール350の基本的な構成や基本的な動作はインバータ回路140や142と略同じである。なお、電力変換装置200は、インバータ回路140やインバータ回路142、インバータ回路350Bに供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
電力変換装置200は上位の制御装置から指令を受けたりあるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。コネクタ21からの指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータMG1やモータジェネレータMG2、補機用モータ195の制御量を演算し、さらにモータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、ドライバ回路174や補機用パワーモジュール350のドライバ回路350Aへ、上記制御パルスを供給する。補機用パワーモジュール350は専用の制御回路を有しても良い、この場合はコネクタ21からの指令に基づいて上記専用の制御回路が制御パルスを発生し、補機用パワーモジュール350のドライバ回路350Aへ供給する。
上記制御パルスに基づいてドライバ回路174がインバータ回路140やインバータ回路142を制御するための駆動パルスを発生する。また補機用パワーモジュール350のインバータ回路350Bを駆動するための制御パルスをドライバ回路350Aが発生する。
次に、図2を用いてインバータ回路140やインバータ回路142の電気回路の構成を説明する。図1に示す補機用パワーモジュール350のインバータ回路350Bの回路構成も基本的にはインバータ回路140の回路構成と類似しているので、図2においてインバータ回路350Bの具体的な回路構成の説明は省略し、インバータ回路140を代表例として説明する。ただし、補機用パワーモジュール350は出力電力が小さいので、以下に説明する各相の上アームや下アームを構成する半導体チップや該チップを接続する回路が補機用パワーモジュール350の中に集約されて配置されている。
さらにインバータ回路140やインバータ回路142は回路構成も動作も極めて類似しているので、インバータ回路140で代表して説明する。
なお以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。インバータ回路140は、上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アームの直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相からなる3相に対応して備えている。
これらの3相はこの実施の形態では、モータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、前記直列回路の中点部分である中間電極168から交流電流が出力され、この交流電流は交流端子159又は交流コネクタ188を通して、モータジェネレータMG1への交流電力線である以下に説明の交流バスバー802と接続する。上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504にそれぞれ電気的に接続されている。
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としてIGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
コンデンサモジュール500は、複数の正極側のコンデンサ端子506と複数の負極側のコンデンサ端子504とバッテリ正極側端子509とバッテリ負極側端子508とを備えている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して、バッテリ正極側端子509やバッテリ負極側端子508に供給され、コンデンサモジュール500の複数の正極側のコンデンサ端子506や複数の負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140やインバータ回路142、補機用パワーモジュール350へ供給される。一方交流電力からインバータ回路140やインバータ回路142によって変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサモジュール500に供給され、バッテリ正極側端子509やバッテリ負極側端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報として、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
図3は、本発明に係る実施の形態としての電力変換装置200の分解斜視図を示す。電力変換装置200は、後述するパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cとコンデンサモジュール500を収納するケースとして機能するとともに流路を形成する流路形成体12と、蓋8とを有する。なお、本実施形態の流路形成体12とは別にケース体を設けて、この流路形成体12をケースに収納する構成にしてもよい。
蓋8は、電力変換装置200を構成する回路部品を収納し、流路形成体12に固定される。蓋8の内側の上部には、制御回路172を実装した制御回路基板20が配置されている。蓋8の上面には、第1開口202と第3開口204aと第4開口204bと第5開口205が設けられる。さらに蓋8の側壁には、第2開口203が設けられる。
コネクタ21は、制御回路基板20に設けられるとともに第1開口202を介して外部に突出する。負極側電力線510と正極側電力線512は、直流コネクタ138とコンデンサモジュール500などを電気的に接続するとともに第2開口203を介して外部に突出する。
交流側中継導体802aないし802cは、パワー半導体モジュール300a〜300cと接続されるとともに第3開口204aを介して外部に突出する。交流側中継導体802dないし802fは、パワー半導体モジュール301a〜301cと接続されるとともに第4開口204bを介して外部に突出する。不図示の補機用パワーモジュール350の交流出力端子は、第5開口205を介して外部に突出する。
コネクタ21等の端子の嵌合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から嵌合面を上向きにして出すことが好ましい。例えば、電力変換装置200が、トランスミッションTMの上方に配置される場合には、トランスミッションTMの配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。
なお蓋8は、金属製であり、パワー半導体モジュール300a〜300c及び301a〜301cとドライバ回路基板22と制御回路基板20と金属製ベース板11を収納するケースとして機能する。
またコネクタ21は、第1開口202を介して、蓋8の収納空間から蓋8の外部に突出する。これによりコネクタ21が実装された制御回路基板20は、金属製ベース板11の上に取付けられているため、コネクタ21に外部から物理的な力が加わっても、制御回路基板20への負荷が抑えられるため、耐久性を含めた信頼性の向上が望める。
図4は、電力変換装置200の流路形成体12の内部に収納される構成の理解を助けるために分解した全体斜視図である。
流路形成体12は、冷却冷媒が流れる流路と繋がる開口部400a〜400c及び開口部402a〜402cを形成する。開口部400a〜400cは、挿入されたパワー半導体モジュール300a〜300cによって塞がれ、また開口部402d〜402fは挿入されたパワー半導体モジュール301a〜301cによって塞がれる。
流路形成体12は、パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cが収納される空間の側部に、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。
コンデンサモジュール500は、パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cとの距離が略一定となるので、平滑コンデンサとパワー半導体モジュール回路との回路定数が3相の各相においてバランスし易くなり、スパイク電圧を低減し易い回路構成となる。
流路形成体12の流路の主構造を流路形成体12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、流路は冷却効果に加え機械的強度を強くすることができる。またアルミ鋳造で作ることで流路形成体12と流路とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。なお、パワー半導体モジュール300a〜300cとパワー半導体モジュール301a〜301cを流路に固定することで流路を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用パワーモジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。このように、電力変換装置200の底部に流路形成体12を配置し、次にコンデンサモジュール500、補機用パワーモジュール350、基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
ドライバ回路基板22は、パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cやコンデンサモジュール500の上方に配置される。またドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。
さらに制御回路基板20の機械的な共振周波数を高める作用をする。すなわち金属ベース板11に制御回路基板20を固定するためのねじ止め部を短い間隔で配置することが可能となり、機械的な振動が発生した場合の支持点間の距離を短くでき、共振周波数を高くできる。例えばトランスミッションから伝わる振動周波数に対して制御回路基板20の共振周波数を高くできるので、振動の影響を受け難く、信頼性が向上する。
図5は流路形成体12を説明するための説明図で、図4に示す流路形成体12を下から見た図である。
流路形成体12には、1つの側壁12aに、入口配管13と出口配管14が設けられる。冷却冷媒は、点線で示す流れ方向417の方向に流入するとともに、入口配管13を通って流路形成体12の一方の辺に沿って形成された第1流路部19aを流れる。第2流路部19bは、折り返し流路部を介して第1流路部19aと接続され、かつ第1流路部19aと平行に形成される。第3流路部19cは、折り返し流路部を介して第2流路部19bと接続され、かつ第2流路部19bと平行に形成される。第4流路部19dは、折り返し流路部を介して第3流路部19cと接続され、かつ第3流路部19cと平行に形成される。第5流路部19eは、折り返し流路部を介して第4流路部19dと接続され、かつ第4流路部19dと平行に形成される。第6流路部19fは、折り返し流路部を介して第5流路部19eと接続され、かつ第5流路部19eと平行に形成される。つまり、第1流路部19aないし第6流路部19fは、1つに繋がった蛇行する流路を形成する。
第1流路形成体441は、第1流路部19aと第2流路部19bと第3流路部19cと第4流路部19dと第5流路部19eと第6流路部19fを形成する。第1流路部19a、第2流路部19b、第3流路部19c、第4流路部19d、第5流路部19e及び第6流路部19fは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。
第7流路部19gは、第6流路部19fと繋がっており、かつ図4で示されたコンデンサモジュール500の収納空間405と対向する位置に形成される。第2流路形成体442は、この第7流路部19gを形成する。第7流路部19gは、深さ方向よりも幅方向が大きく形成される。
第8流路部19hは、第7流路部19gと繋がっており、かつ後述する補機用パワーモジュール350と対向する位置に形成される。また第8流路部19hは、出口配管14と接続される。第3流路形成体444は、この第8流路部19hを形成する。この第8流路部19hは、幅方向より深さ方向が大きく形成される。
流路形成体12の下面には、1つに繋がった開口部404が形成される。該開口部404は、下カバー420によって塞がれる。シール部材409が、下カバー420と流路形成体12の間に設けられ、気密性を保っている。
また下カバー420には、流路形成体12から遠ざかる方向に向かって突出する凸部406aないし406fが形成される。凸部406aないし406fは、パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cに対応して設けられている。つまり、凸部406aは、第1流路部19aと対向して形成される。凸部406bは、第2流路部19bと対向して形成される。凸部406cは、第3流路部19cと対向して形成される。凸部406dは、第4流路部19dと対向して形成される。凸部406eは、第5流路部19eと対向して形成される。凸部406fは、第6流路部19fと対向して形成される。
第7流路部19gの深さ及び幅は、第6流路部19fの深さ及び幅から大きく変化する。この大きな流路形状の変更による冷却媒体の整流および流速の管理を行うことができるように、第2流路形成体442は第7流路部19gに突出するストレートフィン447を設けることが好ましい。
同様に、第8流路部19hの深さ及び幅は、第7流路部19gの深さ及び幅から大きく変化する。この大きな流路形状の変更による冷却媒体の整流および流速の管理を行うことができるように、第3流路形成体444は第8流路部19hに突出するストレートフィン448を設けることが好ましい。
図6乃至図10を用いてインバータ回路140に使用されるパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cの詳細構成を説明する。上記パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cはいずれも同じ構造であり、代表してパワー半導体モジュール300aの構造を説明する。尚、図6乃至図10において信号端子325Uは、図2に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは、図2に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また直流正極端子315Bは、図2に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは、図2に開示した負極端子158と同一のものである。また交流端子320Bは、図2に開示した交流端子159と同じものである。図6(a)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aの斜視図である。図6(b)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aを断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。図7は、理解を助けるために、図6に示す状態からネジ309および第2封止樹脂351を取り除いたパワー半導体モジュール300aを示す図である。図7(a)は斜視図であり、図7(b)は図6(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。また、図7(c)はフィン305が加圧されて薄肉部304Aが変形される前の断面図を示している。
図8は、図7に示す状態からさらにモジュールケース304を取り除いたパワー半導体モジュール300aを示す図である。図8(a)は斜視図であり、図8(b)は図6(b)、図7(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
図9は、図8に示す状態からさらに第1封止樹脂348および配線絶縁部608を取り除いたパワー半導体モジュール300aの斜視図である。図10は、モジュール一次封止体302の組立工程を説明するための図である。上下アームの直列回路150を構成するパワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)が、図8および図9に示す如く、導体板315や導体板318によって、あるいは導体板320や導体板319によって、両面から挟んで固着される。導体板315等は、その放熱面が露出した状態で第1封止樹脂348によって封止され、当該放熱面に絶縁部材333が熱圧着される。第1封止樹脂348は図8に示すように、多面体形状(ここでは略直方体形状)を有している。
第1封止樹脂348により封止されたモジュール一次封止体302は、モジュールケース304の中に挿入して絶縁部材333を挟んで、CAN型冷却器であるモジュールケース304の内面に熱圧着される。ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第2封止樹脂351が充填される。
モジュールケース304は、電気伝導性を有する部材、例えばアルミ合金材料(Al、AlSi、AlSiC、Al−C等)で構成される。挿入口306は、フランジ304Bよって、その外周を囲まれている。また、図6(a)に示されるように、他の面より広い面を有する第1放熱面307A及び第2放熱面307Bがそれぞれ対向した状態で配置され、これらの放熱面に対向するようにして、各パワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)が配置されている。
当該対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面は、当該第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が図6(a)に示す如く曲面を成していても良い。このような形状の金属製のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷媒が流れる流路内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。また、対向した第1放熱面307Aと第2放熱面307Bに、フィン305がそれぞれ均一に形成される。さらに、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている薄肉部304Aが形成されている。薄肉部304Aは、フィン305を加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
上述のように導体板315等を絶縁部材333を介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、導体板315等とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305へ伝達できる。さらに絶縁部材333にある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁部材333で吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
モジュールケース304の外には、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための金属製の直流正極配線315Aおよび直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315Bと直流負極端子319Bがそれぞれ形成されている。また、モータジェネレータMG1あるいはMG2に交流電力を供給するための金属製の交流配線320Aが設けられており、その先端に交流端子320Bが形成されている。本実施形態では、図9に示す如く、直流正極配線315Aは導体板315と接続され、直流負極配線319Aは導体板319と接続され、交流配線320Aは導体板320と接続される。
モジュールケース304の外にはさらに、ドライバ回路174と電気的に接続するための金属製の信号配線324Uおよび324Lが設けられており、その先端部に信号端子325Uと信号端子325Lがそれぞれ形成されている。本実施形態では、図9に示す如く、信号配線324UはIGBT328と接続され、信号配線324LはIGBT330に接続される。
直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lは、樹脂材料で成形された配線絶縁部608によって相互に絶縁された状態で、補助モールド体600として一体に成型される。配線絶縁部608は、各配線を支持するための支持部材としても作用し、これに用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。補助モールド体600は、モジュール一次封止体302と接続部370において金属接合された後に、配線絶縁部608に設けられたネジ穴を貫通するネジ309によってモジュールケース304に固定される。接続部370におけるモジュール一次封止体302と補助モールド体600との金属接合には、たとえばTIG溶接などを用いることができる。
直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、配線絶縁部608を間に挟んで対向した状態で互いに積層され、略平行に延びる形状を成している。こうした配置および形状とすることで、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。なお、交流配線320Aや信号端子325U、325Lも、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。
モジュール一次封止体302と補助モールド体600が金属接合により接続されている接続部370は、第2封止樹脂351によりモジュールケース304内で封止される。これにより、接続部370とモジュールケース304との間で必要な絶縁距離を安定的に確保することができるため、封止しない場合と比較してパワー半導体モジュール300aの小型化が実現できる。
図9に示されるように、接続部370の補助モールド体600側には、補助モジュール側直流正極接続端子315C、補助モジュール側直流負極接続端子319C、補助モジュール側交流接続端子320C、補助モジュール側信号接続端子326Uおよび補助モジュール側信号接続端子326Lが一列に並べて配置される。一方、接続部370のモジュール一次封止体302側には、多面体形状を有する第1封止樹脂348の1つの面に沿って、素子側直流正極接続端子315D、素子側直流負極接続端子319D、素子側交流接続端子320D、素子側信号接続端子327Uおよび素子側信号接続端子327Lが一列に並べて配置される。こうして接続部370において各端子が一列に並ぶような構造とすることで、トランスファーモールドによるモジュール一次封止体302の製造が容易となる。
ここで、モジュール一次封止体302の第1封止樹脂348から外側に延出している部分をその種類ごとに1つの端子として見た時の各端子の位置関係について述べる。以下の説明では、直流正極配線315A(直流正極端子315Bと補助モジュール側直流正極接続端子315Cを含む)および素子側直流正極接続端子315Dにより構成される端子を正極側端子と称し、直流負極配線319A(直流負極端子319Bと補助モジュール側直流負極接続端子319Cを含む)および素子側直流正極接続端子315Dにより構成される端子を負極側端子と称し、交流配線320A(交流端子320Bと補助モジュール側交流接続端子320Cを含む)および素子側交流接続端子320Dにより構成される端子を出力端子と称し、信号配線324U(信号端子325Uと補助モジュール側信号接続端子326Uを含む)および素子側信号接続端子327Uにより構成される端子を上アーム用信号端子と称し、信号配線324L(信号端子325Lと補助モジュール側信号接続端子326Lを含む)および素子側信号接続端子327Lにより構成される端子を下アーム用信号端子と称する。
上記の各端子は、いずれも第1封止樹脂348および第2封止樹脂351から接続部370を通して突出しており、その第1封止樹脂348からの各突出部分(素子側直流正極接続端子315D、素子側直流負極接続端子319D、素子側交流接続端子320D、素子側信号接続端子327Uおよび素子側信号接続端子327L)は、上記のように多面体形状を有する第1封止樹脂348の1つの面に沿って一列に並べられている。また、正極側端子と負極側端子は、第2封止樹脂351から積層状態で突出しており、モジュールケース304の外に延出している。このような構成としたことで、第1封止樹脂348でパワー半導体素子を封止してモジュール一次封止体302を製造する時の型締めの際に、パワー半導体素子と当該端子との接続部分への過大な応力や金型の隙間が生じるのを防ぐことができる。また、積層された正極側端子と負極側端子の各々を流れる反対方向の電流により、互いに打ち消しあう方向の磁束が発生されるため、低インダクタンス化を図ることができる。
補助モールド体600側において、補助モジュール側直流正極接続端子315C、補助モジュール側直流負極接続端子319Cは、直流正極端子315B、直流負極端子319Bとは反対側の直流正極配線315A、直流負極配線319Aの先端部にそれぞれ形成されている。また、補助モジュール側交流接続端子320Cは、交流配線320Aにおいて交流端子320Bとは反対側の先端部に形成されている。補助モジュール側信号接続端子326U、326Lは、信号配線324U、324Lにおいて信号端子325U、325Lとは反対側の先端部にそれぞれ形成されている。
一方、モジュール一次封止体302側において、素子側直流正極接続端子315D、素子側直流負極接続端子319D、素子側交流接続端子320Dは、導体板315、319、320にそれぞれ形成されている。また、素子側信号接続端子327U、327Lは、ボンディングワイヤ371によりIGBT328、330とそれぞれ接続されている。図10に示すように、直流正極側の導体板315および交流出力側の導体板320と、素子側信号接続端子327Uおよび327Lとは、共通のタイバー372に繋がれた状態で、これらが略同一平面状の配置となるように一体的に加工される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板320には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。IGBT328、330およびダイオード156、166の上には、導体板318と導体板319が略同一平面状に配置される。導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えば半田材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。図10に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板320と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板320と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。また、導体板320と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。上述したように、導体板315と導体板318の間にIGBT328及びダイオード156を挟み込むと共に、導体板320と導体板319の間にIGBT330及びダイオード166を挟み込み、導体板320と導体板318を中間電極329を介して接続する。その後、IGBT328の制御電極328Aと素子側信号接続端子327Uとをボンディングワイヤ371により接続すると共に、IGBT330の制御電極330Aと素子側信号接続端子327Lとをボンディングワイヤ371により接続する。
図11(a)は、コンデンサモジュール500の外観を示す斜視図である。図11(b)は、コンデンサモジュール500の内部構造を説明するための分解斜視図である。積層導体板501は、板状の幅広導体で形成された負極導体板505及び正極導体板507、さらに負極導体板505と正極導体板507に挟まれた絶縁シート550により構成されている。積層導体板501は、各相の上下アームの直列回路150を流れる電流に対して磁束を互いに相殺しあうので、上下アームの直列回路150を流れる電流に関して低インダクタンス化が図られる。
バッテリ負極側端子508及びバッテリ正極側端子509は、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成され、それぞれ正極導体板507と負極導体板505に接続されている。補機用コンデンサ端子516及び517は、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成され、それぞれ正極導体板507と負極導体板505に接続されている。
中継導体部530は、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。コンデンサ端子503a〜503cは、中継導体部530の端部から突出しており、各パワー半導体モジュール300a〜300cに対応して形成される。また、コンデンサ端子503d〜503fも、中継導体部530の端部から突出しており、各パワー半導体モジュール301a〜301cに対応して形成される。中継導体部530及びコンデンサ端子503a〜503cのいずれも、絶縁シート550を挟んだ積層状態により構成され、上下アームの直列回路150を流れる電流に関して低インダクタンス化が図られる。また、中継導体部530は、電流の流れを妨げるような貫通孔等が全く形成されないか、できるだけ少なくなるように構成される。
このような構成により、相毎に設けられたパワー半導体モジュール300a〜300c間にスイッチング時に生じる還流電流が中継導体部530に流れ易くなり、積層導体板501側に流れにくくなる。よって、還流電流による積層導体板501の発熱を低減することができる。
なお、本実施形態では、負極導体板505、正極導体板507、バッテリ負極側端子508、バッテリ正極側端子509、中継導体部530及びコンデンサ端子503a〜503fは、一体に成形された金属製の板で構成され、上下アームの直列回路150を流れる電流に対してインダクタンス低減の効果を有する。
コンデンサセル514は、積層導体板501の下方に複数個設けられる。本実施の形態では、3つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べられ、かつさらに別の3つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べられ、合計6個のコンデンサセルが設けられる。
積層導体板501の長手方向のそれぞれの辺に沿って並べられたコンデンサセル514は、図11(a)に示される点線A−Aを境にて対称に並べられる。これにより、コンデンサセル514によって平滑化された直流電流をパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cに供給する場合に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化され、積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができる。また、電流が積層導体板501にて局所的に流れることを防止できるので、熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
コンデンサセル514は、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にアルミなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極、負極としたフィルムコンデンサを用いる。コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極、負極電極となり、スズなどの導電体を吹き付けて製造される。
コンデンサケース502は、コンデンサセル514を収納するための収納部511を備え、収納部511は上面及び下面が略長方形状を成す。コンデンサケース502は、コンデンサモジュール500を流路形成体12に固定するための固定手段例えば螺子を貫通させるための孔520a〜520d設けられる。本実施形態のコンデンサケース502は、熱伝導性を向上させるために、高熱伝導性の樹脂により構成されるが、金属等で構成されていてもよい。
また、積層導体板501とコンデンサセル514がコンデンサケース502に収納された後に、コンデンサ端子503a〜503fとバッテリ負極側端子508及びバッテリ正極側端子509を除いて、積層導体板501が覆われるようにコンデンサケース502内に充填材551が充填される。
また、コンデンサセル514は、スイッチング時のリップル電流により、内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜、内部導体の電気抵抗により発熱する。そこで、コンデンサセル514の熱を、コンデンサケース502を介して逃がし易くするために、コンデンサセル514を充填材でモールドする。さらに樹脂製の充填材を用いることにより、コンデンサセル514の耐湿も向上させることができる。
本実施形態では、コンデンサモジュール500の収納部511の長手方向に沿って第7流路部19gが設けられており(図5参照)、冷却効率が向上する。
また、ノイズフィルタ用コンデンサセル515aは、正極導体板507と接続され、正極とグランドと間に発生する所定ノイズを除去する。ノイズフィルタ用コンデンサセル515bは、負極導体板505と接続され、負極とグランドと間に発生する所定ノイズを除去する。ノイズフィルタ用コンデンサセル515a及び515bは、コンデンサセル514よりも容量が小さくなるように設定される。またノイズフィルタ用コンデンサセル515a及び515bは、コンデンサ端子503a〜503fよりもバッテリ負極側端子508及びバッテリ正極側端子509に近づけて配置される。これにより、バッテリ負極側端子508及びバッテリ正極側端子509に混入する所定ノイズを早期に除去することができ、パワー半導体モジュールに対するノイズの影響を小さくできる。
図12は、図3のA−A面で切った電力変換装置200の断面図である。
パワー半導体モジュール300bは図5にて示された第2流路部19b内に収納される。モジュールケース304の外壁は、第2流路部19b内に流れる冷却冷媒と直接接触する。他のパワー半導体モジュール300aと300c及びパワー半導体モジュール301aないし301cも、パワー半導体モジュール300bと同様に、各流路部の内部に収納される。
パワー半導体モジュール300bはコンデンサモジュール500の側部に配置される。コンデンサモジュールの高さ540は、パワー半導体モジュールの高さ360よりも小さく形成される。ここでコンデンサモジュールの高さ540は、コンデンサケース502の底面部513からコンデンサ端子503bまでの高さであり、パワー半導体モジュールの高さ360はモジュールケース304の底面部から信号端子325Uの先端までの高さである。
そして第2流路形成体442は、コンデンサモジュール500の下部に配置される第7流路部19gを設ける。つまり第7流路部19gは、パワー半導体モジュール300bの高さ方向に沿って、コンデンサモジュール500と並べて配置される。この第7流路部の高さ443は、パワー半導体モジュールの高さ360とコンデンサモジュールの高さ540との差分よりも小さくなる。なお、第7流路部の高さ443は、パワー半導体モジュールの高さ360とコンデンサモジュールの高さ540との差分と同じであってもよい。
パワー半導体モジュール300bとコンデンサモジュール500が互いに隣接することにより、接続距離を短くなるので、低インダクタンス化及び低損失化が可能となる。
また一方で、パワー半導体モジュール300bとコンデンサモジュール500とが、同一面での固定、接続作業が可能となるため、組立性の向上が可能となる。
また一方で、コンデンサモジュールの高さ540を、パワー半導体モジュールの高さ360よりも低く抑えることにより、第7流路部19gをコンデンサモジュール500の下部に配置することができるため、コンデンサモジュール500の冷却も可能となる。また、コンデンサモジュール500の上部とパワー半導体モジュール300bの上部の高さが近距離となるので、コンデンサ端子503bがコンデンサモジュール500の高さ方向に長くなることを抑制することができる。
また一方で、第7流路部19gをコンデンサモジュール500の下部に配置することで、コンデンサモジュール500の側部に冷却流路を配置することを避けて、コンデンサモジュール500とパワー半導体モジュール300bを近づけて、コンデンサモジュール500とパワー半導体モジュール300bとの配線距離を長くなることを抑制することができる。
またドライバ回路基板22は、ドライバ回路の駆動電源を生成するトランス24を搭載する。このトランス24の高さは、ドライバ回路基板22に搭載された回路部品の高さよりも大きく形成される。ドライバ回路基板22とパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cとの間の空間は、信号端子325Uや直流正極端子315Bが配置される。一方、ドライバ回路基板22とコンデンサモジュール500との間の空間には、トランス24を配置する。これにより、ドライバ回路基板22とコンデンサモジュール500との間のスペースを有効利用が可能となる。またドライバ回路基板22のトランス24が配置された面とは反対側の面には、高さを揃えた回路部品を実装することで、ドライバ回路基板22と金属ベース板11との距離を抑えることができる。
図13は、蓋8と制御回路基板20を取り除き、ドライバ回路基板22と金属ベース板11を分解した斜視図である。
ドライバ回路基板22は、パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cの上部に配置される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22を挟んでパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cとは反対側に配置される。
ドライバ回路基板22は、交流側中継導体802aを貫通する貫通孔22aを、交流側中継導体802bを貫通する貫通孔22bを、交流側中継導体802cを貫通する貫通孔22cを、交流側中継導体802dを貫通する貫通孔22dを、交流側中継導体802eを貫通する貫通孔22eを、交流側中継導体802fを貫通する貫通孔22fを、それぞれを形成する。なお、本実施形態では電流センサ180aは貫通孔22aに嵌め合わされており、電流センサ180cは貫通孔22cに嵌め合わされており、電流センサ180dが貫通孔22dに嵌め合わされており、電流センサ180fは貫通孔22fに嵌め合わされている。しかしながら全ての貫通孔22a〜22fに対して電流センサを設けても良い。
ドライバ回路基板22に貫通孔22a〜22fを設けることにより、電流センサをドライバ回路基板22に直接配置することができ、交流側中継導体802a〜802fの配線を簡素にでき、小型に寄与する。
また電流センサ180a等は、ドライバ回路基板22とパワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cとの間の空間に配置される。パワー半導体モジュール300a〜300c及びパワー半導体モジュール301a〜301cは直流正極端子315B等を有し、これら直流正極端子315B等はドライバ回路基板22との間に十分な絶縁距離を確保する必要がある。
その絶縁距離を確保するための空間内に電流センサ180a等を配置することにより、電力変換装置内の空間を絶縁空間及び電流センサの配置空間を共用することができる。よって電力変換装置の小型化に繋がる。
金属ベース板11は、貫通孔22a〜22cと対向する位置に貫通孔11aが形成され、貫通孔22d〜22fと対向する位置に貫通孔11bが形成される。また図3に示されるように蓋8は、貫通孔11aと対向する位置に第3開口204aを形成して、交流コネクタ188を形成する。また蓋8は、貫通孔11bと対向する位置に第4開口204bを形成して、交流コネクタ159を形成する。
これにより、交流コネクタ188とパワー半導体モジュール301a〜301cとの間にドライバ回路基板22を配置する場合であっても、交流側中継導体802a〜802fの配線の複雑化を抑制し、電力変換装置200の小型化を図ることができる。
また、パワー半導体モジュール300a〜300c及び301a〜301cのそれぞれは、長手方向の辺と短手方向の辺を有する短形状である。同様にコンデンサモジュール500は、長手方向の辺と短手方向の辺を有する短形状である。そして、パワー半導体モジュール300a〜300c及び301a〜301cは、それぞれの短手方向の辺がコンデンサモジュール500の長手方向の辺に沿って一列に並ぶように配置される。
これにより、パワー半導体モジュール300a〜300cとの間の距離が近づき、コンデンサ端子503a〜503間の距離を短くすることができるため、パワー半導体モジュール300a〜300c間に流れる還流電流による発熱を抑制することができる。パワー半導体モジュール301a〜301cについても同様である。
また、貫通孔22a〜22cは、交流側中継導体802a〜802fの配列方向に沿って、ドライバ回路基板22に設けられる。またドライバ回路基板22は、コンデンサモジュール500の長手方向の辺を一辺とし、コンデンサモジュール500の短手方向の辺とパワー半導体モジュール300a〜300c及び301a〜301cの長手方向の辺を合わせた長さをもう一辺とした、長方形状を有している。
これにより、貫通孔22a〜22cは、ドライバ回路基板22の一辺に沿って配置されるため、貫通孔を複数有していても、広い範囲の回路配線面積を確保することが可能となる。
金属製の支持部材803は、流路形成体12から突出するとともに流路形成体12と接続される。金属ベース板11は、支持部材803の先端部に支持される。流路形成体12は、電気的なグランドに接続される。漏洩電流の流れ804は、ドライバ回路基板22から金属ベース板11、支持部材803、さらに流路形成体12の順に流れる漏洩電流の流れ方向を示す。また、漏洩電流の流れ805は、制御回路基板20から金属ベース板11、支持部材803、さらに流路形成体12の順に流れる漏洩電流の流れ方向を示す。これにより、効率よく制御回路基板20とドライバ回路基板22の漏洩電流をグランドに流すことができる。
図3に示すように、制御回路基板20は、第1開口202を形成する蓋8の一面と対向して配置される。そしてコネクタ21は、制御回路基板20に直接実装され、かつ蓋8に形成された第1開口202を介して外部に突出する。これにより、電力変換装置200内部の空間を有効的に利用することが可能となる。
また、コネクタ21が実装された制御回路基板20は、金属ベース板11に固定されているため、コネクタ21に外部から物理的な力が加わっても、制御回路基板20への負荷が抑えられるため、耐久性を含めた信頼性の向上が望める。
図14は、図13の面Bで切った断面斜視図である。接続部23aは、パワー半導体モジュール300aの信号端子325Uとドライバ回路基板22との接続部である。接続部23bは、パワー半導体モジュール300aの信号端子325Lとドライバ回路基板22との接続部である。接続部23a及び23bは、半田材により形成される。
金属ベース板11の貫通孔11aは、接続部23a及び23bと対向する位置まで形成される。これにより、ドライバ回路基板22が金属ベース板11に固定された状態で、金属ベース板11の貫通孔11aを介して接続部23a及び23bの接続作業を行うことができる。
また制御回路基板20は、電力変換装置200の上面から投影した場合に、制御回路基板20の射影部が貫通孔11aの射影部と重ならないように配置される。これにより制御回路基板20が接続部23a及び23bの接続作業に干渉しないとともに制御回路基板20は、接続部23a及び23bからの電磁ノイズの影響を小さくすることができる。
本実施形態においては、ドライバ回路基板22が、パワー半導体モジュール300a等及びコンデンサモジュール500と対向するように大きく形成される。このような場合でも、交流端子320Bは、コンデンサモジュール500に対して直流正極端子315Bよりも遠くに配置される。また制御端子325Lは、直流正極端子315Bと交流端子320Bとの間に配置される。また接続部23bは、制御端子325Lと対向する位置に配置される。
これにより、貫通孔22bはドライバ回路基板22上において図17に示されたドライバ回路25よりもドライバ回路基板22の縁辺に近い側に配置されることになる。よって、貫通孔22bが形成されることによるドライバ回路基板22の強度の低下を抑制することができ、耐振動性能を向上させることができる。
図17は、ドライバ回路基板22の下面図である。
図3に示されるように、交流側中継導体802a〜802fは、ドライバ回路基板22を介してパワー半導体モジュールとは反対側に配置された第3開口204a又は第4開口204b側に伸びる。交流側中継導体802a〜802fの配線距離を短くするために、ドライバ回路基板22には、交流側中継導体802a〜802fを通すための貫通孔22a〜22fが必要となる。またドライバ回路基板22は、強電側配線28や弱電側配線27を有している。このような場合、ドライバ回路基板22は、貫通孔22a〜22fが必要である一方で、強電側配線28や弱電側配線27を配置するための一定のスペースも必要となる。このため、ドライバ回路基板22において、強電側配線28や弱電側配線27が貫通孔22a〜22fを迂回するように実装されることによって、配線距離の増大やドライバ回路基板の面積増大に繋がってしまう。
そこで本実施形態においては、ドライバ回路25は、接続部23a及び接続部23bの周辺に配置される。トランス24は、ドライバ回路25を挟んで貫通孔22a〜22fとは反対側に配置される。トランス24は、低い電圧から高い電圧に変圧し、ドライバ回路25に変圧された電圧を供給する。コネクタ26は、制御回路基板20とハーネス等を介して電気的に接続される。また弱電側配線27は、コネクタ26とトランス24とを接続する。また強電側配線28は、トランス24とドライバ回路25とを接続する。
これにより、貫通孔22a〜22fと強電側配線28又は弱電側配線27の干渉を回避できる。さらに、強電側配線28又は弱電側配線27の周囲に、広いスペースを確保することが可能となるため、ドライバ回路基板22の回路配線が容易となる。
また弱電側配線27を介して入力されるトランス入力電圧は、交流側中継導体802a〜802fを流れる交流電圧等よりもかなり小さい電圧である。そこで本実施形態においては、トランス24は、ドライバ回路25を挟んで貫通孔22a〜22fと反対側に配置される。
これにより、ドライバ回路25が緩衝領域となるため、トランス24の弱電系回路は交流側中継導体802a〜802fを流れる交流電圧の電圧変動の影響を受けにくくなり、電力変換装置の信頼性を向上させることができる。
なおトランス24は、一方のドライバ回路25の実装領域と他方のドライバ回路25の実装領域の間の領域に配置されていてもよい。この領域は、強電側配線28の配線領域が少ない領域である。そこでトランス24をこの領域に実装して、弱電側配線27の電位の安定化させることができる。
図15は、図5に示された流路形成体12の面Cで切った断面図である。流路形成体12は、第1流路部19aないし第6流路部19fを形成する第1流路形成体441と、第7流路部19gを形成する第2流路形成体442とを一体に形成する。第1流路形成体441は、第2流路形成体442の側部に配置される。第2流路形成体442は、第7流路部19gの上方にコンデンサモジュール500を収納する収納空間405を形成する。また、流路形成体12は、収納空間405の側壁と第7流路部19gの一部を形成するための壁445を有する。つまり、第1流路部19aないし第6流路部19fは壁445と対向する位置に形成される。
これにより、コンデンサモジュール500は第7流路部19gによってコンデンサモジュール500の底面が冷却されるだけでなく、コンデンサモジュール500の高さ方向の側面も第1流路部19aないし第6流路部19fによって冷却されることになり、コンデンサモジュール500の冷却性が増大する。
また、壁445は、収納空間405の一部と第7流路部19gの一部と第4流路部19dの一部を形成する。これにより、冷却すべき収納空間を壁445によって区切ることができるため、コンデンサモジュールやパワー半導体モジュール毎のモジュール単位で冷却が可能となる。この結果、冷却されるべき優先度が収納空間毎に選択できるようになる。
さらに流路形成体12は、第1流路形成体441と、第2流路形成体442と、第8流路部19hを形成する第3流路形成体444を一体に形成する。第3流路形成体444は、第2流路形成体442の側部に配置される。流路形成体12は、収納空間405の側壁と第8流路部19hの一部を形成するための壁460を有する。つまり、第8流路部19hは壁460と対向する位置に形成される。これにより、コンデンサモジュール500は第7流路部19gによってコンデンサモジュール500の底面が冷却されるだけでなく、コンデンサモジュール500の高さ方向の側面も第8流路部19hによって冷却されることになり、コンデンサモジュール500の冷却性がさらに増大する。
また流路形成体12は、第8流路部19hを形成する第3流路形成体444とを一体に形成され、更なる構造の簡素化を図っている。
また、図12に示されるようにコンデンサ端子503aないし503fは、壁445の上部を跨ぐように形成される。これにより、コンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの間に伝達される熱の影響を緩和することができる。
なお、図12に示されるように絶縁部材446が壁445の上端に配置されるとともに図11に示される中継導体部530と接触する。これにより、更にコンデンサモジュールとパワー半導体モジュールとの間に伝達される熱の影響を緩和することができる。
図16は、蓋8と制御回路基板20と金属ベース板11とドライバ回路基板22とを取り除いた電力変換装置200の上面図である。
電力変換装置200の上面から投影した場合に、441sは第1流路形成体441の射影部を示し、442sは第2流路形成体442の射影部を示し、444sは第3流路形成体444の射影部を示す。補機用パワーモジュール350は、第3流路形成体444の射影部444sと重なるように配置される。これにより、補機用パワーモジュール350は、第8流路部19hを流れる冷却媒体によって冷却が可能となる。
また、第1流路形成体441及び第2流路形成体442は、空気層を有する空隙部12eを介して、流路形成体12の側壁12bと側壁12cと側壁12dと対向して配置される。これにより、第1流路形成体441及び第2流路形成体442に流れる冷却媒体と外環境温度に差がある場合でも、空隙部12eが断熱層となって、第1流路形成体441及び第2流路形成体442は電力変換装置200の外環境温度の影響を受け難くすることができる。