以下に説明する本発明が適用された実施の形態に記載の電力変換装置およびこの装置を使用したシステムは、製品化のために解決することが望ましい色々な課題を解決している。これら実施の形態が解決している色々な課題の一つに、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した生産性向上の課題があり、また上述の発明の効果の欄に記載した生産性向上の効果がある。
また、上述の課題を解決するための手段の欄に記載した構成だけで無く、他の構成によっても上記課題が解決でき、上記効果を得ることができる。
すなわち低背化及び低コスト化の課題や効果に関して上述した構成以外の構成によって、大きくは低背化及び低コスト化に関する課題解決や効果達成につながるが、より具体的に見れば異なっている観点において課題が解決され、効果が得られている。以下その代表的なものを幾つか列挙する。さらにそれ以外については実施の形態の説明の中で述べる。
より低背化及び低コスト化が望ましい課題を解決するための構成1を次に記載する。構成1は、冷媒通路の側面からパワー半導体モジュールを挿入し、冷媒通路の下面に平滑用のコンデンサモジュールを配置し、冷媒通路の上面に交流バスバー、さらに回路基板を配置したものを組付けてモジュール化し、そのモジュールをハウジングに組付け、電気配線・冷媒配管・信号配線を組付ける構成である。
この構成により、電力変換装置の全体構成をより整然とした状態で配置でき、電力変換装置の小型化が可能となる。また冷媒流路を横切る横方向における、すなわち、電力変換装置の縦方向のサイズをより小さくできる低背化の効果を得ることができる。
上記効果は特にインバータの上下のアームの直列回路を内蔵したパワー半導体モジュールを使用する場合に大きな効果が得られるが、上下のアームのどちらか1つのアームを挿入したパワー半導体モジュールを使用する場合であっても効果が達成できる。
ただし、1つのアームを挿入したパワー半導体モジュールを使用する場合には、インバータの上アーム用と下用のパワー半導体モジュールを別々に使用するため、これらアーム接続するためのバスバー構成が増加する。
さらに上述の構成1において、平滑コンデンサモジュールの上面に沿って冷媒流路を形成する流路形成体を設け、前記平滑コンデンサモジュールを前記流路形成体に固定することで、前記冷媒流路により前記パワー半導体モジュールと前記平滑コンデンサモジュールとを合わせて冷却できる。さらに交流バスバーや回路基板を冷媒通路側に寄せて配置できるので効率的に冷却できる。
次に、図面を使用して本発明に係る実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る電力変換装置を、エンジンとモータの両方を使用して走行するいわゆるハイブリッド用自動車に適用したシステムである。本発明に係る電力変換装置はハイブリッド用車両のみならず、モータのみで走行するいわゆる電気自動車にも適用可能であり、また一般産業機械に使用されているモータを駆動する為の電力変換装置としても使用可能である。
しかし上述あるいは以下に説明のとおり、本発明に係る電力変換装置は特に上記ハイブリッド用自動車や上記電気自動車に適用すると、小型化の観点あるいは信頼性の観点、その他、いろいろの観点で優れた効果が得られる。ハイブリッド用自動車に適用した電力変換装置は電気自動車に適用した電力変換装置と略同じ構成であり、代表例としてハイブリッド自動車に適用した電力変換装置について説明する。
図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。エンジン(ENG)及びモータジェネレータ(MG)は車両の走行用トルクを発生する。またモータジェネレータは回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータに外部から加えられる機械エネルギを電力に変換する機能を有する。
モータジェネレータは、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。モータジェネレータを自動車に搭載する場合に、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジム(Nd)などの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また永久磁石型の同期電動機は、誘導電動機に比べて回転子の発熱が少なく、この観点でも自動車用として優れている。
エンジンの出力側の出力トルクは動力分配機構(TSM)を介してモータジェネレータ伝達され、動力分配機構からの回転トルクあるいはモータジェネレータが発生する回転トルクは、トランスミッションTM及びデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータに伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述するように電力変換装置100により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギとして使用される。
次に、電力変換装置100について説明する。インバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ部138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータをモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ部138を介してバッテリ136から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流コネクタ部188を介してモータジェネレータに供給する。
なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータの動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジンの動力或いは車輪からの動力によってモータジェネレータを作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
なお、電力変換装置100は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するための平滑コンデンサモジュール500を備えている。
電力変換装置100は図示しない上位の制御装置から指令を受けたり、あるいは前記上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用の信号コネクタ21を備えている。信号コネクタ21からの指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータの制御量を演算し、さらにモータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、ドライバ回路174へ上記制御パルスを供給する。上記制御パルスに基づいてドライバ回路174がインバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
次に、図2を用いてインバータ回路140の電気回路の構成を説明する。なお以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。インバータ回路140は、上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アームの直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相からなる3相に対応して備えている。
これらの3相はこの実施の形態では、モータジェネレータの電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のIGBTのそれぞれの上下アームの直列回路150は、前記直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流が出力され、この交流電流は交流端子159及び交流コネクタ部188を通して、モータジェネレータへの交流電力線であるバスバー保持部材802と接続され伝達される。
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子157を介して平滑コンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子158を介して平滑コンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504にそれぞれ電気的に接続されている。
上述のように、制御回路172は上位の制御装置から信号コネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいてインバータ回路140を構成する各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を3相交流電力に変換し、この制御変換された交流電力はモータジェネレータに供給される。
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい。
この場合はダイオード156、ダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としてはIGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
平滑コンデンサモジュール500は、複数の正極側のコンデンサ端子506と複数の負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ部138を介して、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、平滑コンデンサモジュール500の複数の正極側のコンデンサ端子506や複数の負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140へ供給される。
一方、交流電力からインバータ回路140によって変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504から平滑コンデンサモジュール500に供給され、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ部138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報として、モータジェネレータに対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータに供給される電流値、及びモータジェネレータの回転子の磁極位置がある。目標トルク値は、図示されない上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180によって検出し、指令通りの電流になっているかフィードバックされたものである。磁極位置は、モータジェネレータに設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータのd、q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd、q軸の電流指令値と、検出されたd、q軸の電流値との差分に基づいてd、q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd、q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。
また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
また、制御部170は、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極155及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328、IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328、IGBT330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。
また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328、IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
図3は、本発明に係る実施の形態としての電力変換装置100の分解斜視図を示す。
電力変換装置100は、後述する電力変換モジュール200を核として、電力変換モジュール200を固定及び保護するハウジング10とカバー8とを有し、外部との接続は、直流電源の入力部及び交流電源の出力部であるコネクタモジュール120及び制御回路への信号を伝送する信号コネクタ21及び冷却媒体を流路形成体12へ導入・排出するための入口配管13及び出口配管14で構成される。流路形成体12とハウジング10は、図示の如く別部品である。電力変換装置100は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。なお、以下実施例では、ハウジング10の底面からカバー8への方向を上向き、その逆を下向きとし、上下方向を高さ方向とする。
流路形成体12は、後述するパワー半導体モジュール300及び平滑コンデンサモジュール500及び第1交流バスバー801及び回路基板20等の構成部品を保持するとともに、冷却媒体によってこれらを冷却する。
ハウジング10は、電力変換モジュール200を構成する回路部品を収納し、ハウジング10の側壁には開口部が設けられ、前記信号コネクタ21が固定される。開口を介して前記信号コネクタ21が外部の制御装置と接続され、回路基板20に設けられた制御回路172と上位の制御装置などの外部の制御装置との間で信号伝送を行う。電力変換装置100内の制御回路を動作させる低電圧の直流電力は、前記信号コネクタ21から供給される。
さらにハウジング10の側壁に設けられた他の開口部には、外部と直流及び交流電源を接続するためのコネクタモジュール120が固定される。コネクタモジュール120には、バッテリ136との間で直流電力を送受するための直流コネクタ部138が設けられており、電力変換装置100内部に高電圧直流電力を供給するための負極側電力線139bと正極側電力線139aは、バッテリ136と平滑コンデンサモジュール500などとを電気的に接続する。さらにコネクタモジュール120には、モータジェネレータとパワー半導体モジュール300との間で交流電流を送受するための交流コネクタ部188が設けられており、モータジェネレータに高電圧交流電力を供給するための交流配線189a〜189cは、モータジェネレータとパワー半導体モジュール300a〜300cとを電気的に接続する。
図4は、電力変換モジュール200の構成部品である流路形成体12に組込まれる構成部品及び水路構成の理解を助けるために分解した斜視図である。流路形成体12は、上下方向の寸法は他の方向の寸法に比べ小さく平たい形状を成しており、側面には入口配管13を接続する入口配管接続部12aと出口配管14を接続する出口配管接続部12bが設けられ、2つの配管を繋ぐ様に冷却流路19がU字形状に形成されており、冷却流路19の一方側の上面は開口している。
冷却媒体は入口配管13から流入し、パワー半導体モジュール300aが挿入される流路19a、パワー半導体モジュール300bが挿入される流路19b、折り返し流路部19c、パワー半導体モジュール300cが挿入される流路19d、流路19eを経て出口配管14で排出される。
前記開口面400は、流路カバー420及び流路カバー部シール部材405によって塞がれる。さらに流路形成体12の側面には、開口部402a〜402cが冷媒の流れに沿って形成されている。開口部402a〜402cは、挿入されたパワー半導体モジュール300a〜300c及びフランジ部シール部材406a〜406cによって塞がれ、パワー半導体モジュール300a〜300cは、冷却流路19を流れる冷却媒体によって冷却される。
本実施の形態によれば、パワー半導体モジュール300を収容する流路形成体12の高さ方向の寸法は、パワー半導体モジュール300に具備された後述するフランジ304Bの幅に流路カバー420の板厚を加えた寸法に押さえられるので低背化が可能となる。
また、流路19の上面に開口面400を設けることで、流路内に折り返し流路部19cを設けられ、冷却性能を低下させることなくパワー半導体モジュール300a〜300cのレイアウトの自由度が増し、小型化も可能となる。図4においては、往路である冷媒の流れ方向418aの冷却流路19にパワー半導体モジュール300a及び300bを設け、復路である冷媒の流れ方向418cの冷却流路19にパワー半導体モジュール300cを設けている。
また前記の構成のみならず、冷却冷媒の流れる方向を逆にした場合や、パワー半導体モジュール300a〜300cを一方の面に配置した構成や、パワー半導体モジュール300bを入口配管接続部12aおよび出口配管接続部12bの面と対向する面から挿入し冷却流路19cの位置に配置した構成や、パワー半導体モジュール300を3個を一方の面に配置し、さらに対向する面にパワー半導体モジュール300を3個を配置するモータジェネレータ2個を使用する構成でも、低背化及びそれに関わる効果は同様である。
また流路形成体12の冷却流路19の主構造を流路形成体12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、冷却流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで流路形成体12と冷却流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。なお、パワー半導体モジュール300a〜300cを冷却流路19に固定することで冷却流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。
図5は、電力変換モジュール200の構成を理解を助けるために分解した斜視図である。流路形成体12には、パワー半導体モジュール300が収容されている。流路形成体12の下面に近接した位置に平滑コンデンサモジュール500が組付けられている。
さらに、流路形成体12の流路19eの部分は、パワー半導体モジュール300が組付けられていないため、流路19eの部分は流路の深さを抑えることができ、流路形成体12の下面は凹んだ形状を成しており、その凹んだ部分に抵抗器450が固定されている。流路形成体12の上面を形成する流路カバー420の上面には、電流センサ180が固定され、さらにバスバーアッセンブリ800が固定されている。
バスバーアッセンブリ800は、交流電源を伝送するバスバー本体801a、801b及び801c、伝熱部材803、バスバー保持部材802から構成されており、その下部において流路カバー420と固定されており、その上部において回路基板20と固定されている。平滑コンデンサモジュール500に設けられた端子及び交流バスバー801a〜800cは、パワー半導体モジュール300a〜300cに電気的に接続されており、接続部は溶接にて接合されている。
本実施の形態によれば、流路形成体12の表面を構成する面において、上面及び下面、つまり面積が広い面の両面に発熱する部品を近接して配置することができるので、従来の構成に対し冷却効率が大幅に向上する。
また、平滑コンデンサモジュール500がレイアウトに使用できる面積は、流路形成体12と同等の面積を使用できるため、インバータ性能を確保するために必要なコンデンサ容量を確保しつつ高さ方向の寸法を抑えることができ低背化が可能となる。
また、回路基板20においても、従来の構成では基板をレイアウトに使用できる面積が小さかったため、ドライバ回路174の基板と制御回路172の基板を同一面に配置することができなかったが、本実施の形態によれば、ドライバ回路174と制御回路172を同一の回路基板20に配置でき低背化が可能となる。
さらに図5に示した電力変換モジュール200を構成する全ての部品は、全てハウジング10へ組込む前にサブアッシー状態で組立作業を行うことができるので、溶接を含めた組み立て作業は電力変換モジュール200の全方向から可能となり、結果として設計の自由度が増すので小型化及びコスト低減が可能となり、生産部署では生産性が向上する。
図3で説明した様に、流路形成体12とハウジング10は別部品のため、生産現場では電力変換モジュール200の状態で、検査を実施することができるので、検査で不合格となった場合に、ハウジング10等の部品を廃棄することがないので歩留低減に貢献することが可能となる。
図6は、流路形成体12をハウジング10に固定する手段について説明したものである。図6(a)は、入口配管13及び出口配管14近傍を断面した図である。また図6(b)は、出入口配管が取り付けられる面の対面側を断面した図である。
図6(a)において、流路形成体12には、図4で示す入口配管接続部12aと出口配管接続部12bが設けられ、さらに両接続部を含んだフランジ12cが形成されている。またハウジング10は流路形成体フランジ12cに合わせた開口部10aを備えている。このことにより冷却媒体は、入口配管13から直接流路形成体12に入り、冷却流路19を経て、直接出口配管14から排出される。
よって、冷却媒体がハウジング10には触れないこととなるので、ハウジング10への要求仕様が従来のハウジングに対し低くなる。例えば、アルミダイカストでハウジングを製作する場合、従来は冷却媒体の漏れを防ぐためにハウジングに機械加工や含浸処理などを施していたが、本実施の形態では不要となるのでコスト低減が可能となる。また本実施の形態ではハウジング10を、樹脂等の代替材を選択することもできるので、軽量化やコスト低減が可能となる。
先に述べた流路形成体12に設けられたフランジ12cにはめねじが設けられており、フランジ形状に合わせたシール部材407を組付けた後に、締結用ねじ31を用いてフランジ12cに垂直の方向から締付けることで、ハウジング10に固定される。一方、図6(b)出入口配管が取り付けられる面の対面側は、ハウジング10にはめねじ10cが設けられており、流路形成体12のフランジ12eを締結用ねじ32を用いて上下方向に締付ける。
出入口配管が取り付けられるフランジ12c側のねじ締結用ねじ31と対面側の締結用ねじ32の締付け方向が直角のため、車両で振動が加わると締結用ねじ31にはせん断方向の応力が発生し破断する恐れがある。破断を防止するために、フランジ12cの下部に支持部12dを設け、相対するハウジング10に支持部10bを設けることで上下方向の荷重を指示部12d及び支持部10を受ける構造とし、締結用ねじ31に発生するせん断方向の応力を抑制する働きをもつ。
図7は、理解を助けるために前記流路カバー420について説明したものである。図7(a)は、流路カバー420を流路形成体12の開口面400と接触する側から見た斜視図である。流路カバー420には、冷却流路19及びパワー半導体モジュール300に合わせて凸部420aが形成されており、パワー半導体モジュール300に設けられた放熱部とのクリアランスを均一かつ適正にできるため冷却効率が向上する。
図7(b)は、流路カバー420を流路形成体12上面から見た斜視図である。流路カバー420は、前記凸部420aに合わせて凹ませた形状420bを持ち、その凹んだ部分に交流バスバー保持部材取付ボス420cが設けられている。凹んだ部分に取付ボス420cを設けているため、ボスの高さを抑制することができ低背化が可能となる。
また、図7(b)で示した流路カバー420の流路形成体12上面から見た面には、回路基板用取付ボス420dが設けられている。この取付ボス420dは任意の位置に配置が可能なので、機械的な振動が発生した場合の支持点間の距離を短くでき、共振周波数を高くできるので信頼性が向上する。また、流路カバー420はパワー半導体モジュール300と回路基板20の間に位置するため、電磁シールドの効果も得ることができる。従来の構成では専用の金属板を用いていたが、本実施の形態では流路カバー420に統合できるので、コスト低減の効果がある。電磁シールド・基板冷却の効果が低い場合には、前記バスバーアッセンブリ800と回路基板20の間に薄い導電性の金属板を配置すれば電磁シールド・基板冷却が可能となるので、金属板を追加してもコスト低減の効果を得ることができる。
図8乃至図12を用いてインバータ回路140に使用されるパワー半導体モジュール300a〜300cの詳細構成を説明する。上記パワー半導体モジュール300a〜300cはいずれも同じ構造であり、代表してパワー半導体モジュール300aの構造を説明する。尚、図7乃至図11において信号端子325Uは、図2に開示したゲート電極154及び信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは、図2に開示したゲート電極164及びエミッタ電極165に対応する。また直流正極端子315Bは、図2に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは、図2に開示した負極端子158と同一のものである。また交流端子321は、図2に開示した交流端子159と同じものである。
図8(a)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aを説明し易い様に端子形状を変更した斜視図である。図8(b)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300aの断面図である。
上下アームの直列回路150を構成するパワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)が、図9乃至図11に示す如く、導体板315や導体板318によって、あるいは導体板316や導体板319によって、両面から挟んで固着される。これら導体板には、信号端子325Uや信号端子325Lである信号配線を一体成型して成る補助モールド体600が組付けられる。導体板315等は、その放熱面が露出した状態で第一封止樹脂348によって封止され、当該放熱面に絶縁シート333が熱圧着される。第一封止樹脂348により封止されたモジュール一次封止体302は、モジュールケース304の中に挿入して絶縁シート333を挟んで、CAN型冷却器であるモジュールケース304の内面に熱圧着される。ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。
モジュールケース304は、アルミ合金材料例えばAl、AlSi、AlSiC、Al−C等から構成され、一体もしくは複数の部品を接合し作成される。モジュールケース304は、挿入口306以外に開口を設けない構造であり、挿入口306は、フランジ304Bよって、その外周を囲まれている。
また、図8(a)に示されるように、他の面より広い面を有する第1放熱面307A及び第2放熱面307Bがそれぞれ対向した状態で配置され、当該対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bと繋ぐ3つの面は、当該第1放熱面307A及び第2放熱面307Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が図8(a)に示す如く曲面を成していても良い。
このような形状の金属性のケースを用いることで、モジュールケース304を水や油などの冷媒が流れる冷却流路19内に挿入しても、冷媒に対するシールをフランジ304Bにて確保できるため、冷却媒体がモジュールケース304の内部に侵入するのを簡易な構成で防ぐことができる。また、対向した第1放熱面307Aと第2放熱面307Bに、フィン305がそれぞれ均一に形成される。
さらに、第1放熱面307A及び第2放熱面307Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている湾曲部304Aが形成されている。湾曲部304Aは、フィン305を加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第二封止樹脂351を充填される。また、図9及び図10に示されるように、平滑コンデンサモジュール500と電気的に接続するための直流正極配線315A及び直流負極配線319Aが設けられており、その先端部に直流正極端子315B(157)と直流負極端子319B(158)が形成されている。モータジェネレータあるいは194に交流電力を供給するための交流配線320が設けられており、その先端に交流端子321(159)が形成されている。本実施形態では、直流正極配線315Aは導体板315と一体成形され、直流負極配線319Aは導体板319と一体成形され、交流配線320は導体板316と一体成形される。
上述のように導体板315等を絶縁シート333を介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、導体板とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305へ伝達できる。さらに絶縁シート333にある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁シート333で吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
図9(a)は、理解を助けるために、モジュールケース304と絶縁シート333と第一封止樹脂348と第二封止樹脂351を取り除いた内部断面図である。図9(b)は、内部斜視図である。
図10(a)は、図9(b)の構造の理解を助けるための分解図である。図10(b)は、パワー半導体モジュール300の回路図である。また、図11(a)は、インダクタンスの低減効果を説明する回路図であり、図11(b)は、インダクタンスの低減作用を説明するための電流の流れを示す斜視図である。
まず、パワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)と導体板の配置を、図10(b)に示された電気回路と関連付けて説明する。図9(b)に示されるように、直流正極側の導体板315と交流出力側の導体板316は、略同一平面状に配置される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板316には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。
同様に、交流導体板318と導体板319は、略同一平面状に配置される。交流導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えばはんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。
各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。図9(a)に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板316と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板316と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。また、導体板316と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。
直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、樹脂材料で成形された補助モールド体600を介して対向した状態で略平行に延びる形状を成している。信号端子325Uや信号端子325Lは、補助モールド体600に一体に成形されて、かつ直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。補助モールド体600に用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。
これにより、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aと信号端子325Uと信号端子325Lとの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。さらに、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aを略平行に対向するように配置したことにより、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。
低インダクタンス化が生じる作用について、図11(a)を用いて説明する。図11(a)において、下アーム側のダイオード166が順方向バイアス状態で導通している状態とする。この状態で、上アーム側IGBT328がON状態になると、下アーム側のダイオード166が逆方向バイアスとなりキャリア移動に起因するリカバリ電流が上下アームを貫通する。
このとき、各導体板315、316、318、319には、図11(b)に示されるリカバリ電流360が流れる。リカバリ電流360は、点線で示されるとおり、直流負極端子319B(158)と対向に配置された直流正極端子315B(157)を通り、続いて各導体板315、316、318、319により形成されるループ形状の経路を流れ、再び直流正極端子315B(157)と対向に配置された直流負極端子319B(158)を介して実線に示すように流れる。
ループ形状経路を電流が流れることによって、モジュールケース304の第1放熱面307A及び第2放熱面307Bに渦電流361が流れる。この渦電流361の電流経路に等価回路362が発生する磁界相殺効果によって、ループ形状経路における配線インダクタンス363が低減する。
なお、リカバリ電流360の電流経路がループ形状に近いほど、インダクタンス低減作用が増大する。本実施形態では、ループ形状の電流経路は点線で示す如く、導体板315の直流正極端子315B(157)側に近い経路を流れ、IGBT328及びダイオード156内を通る。そしてループ形状の電流経路は実線で示す如く、導体板318の直流正極端子315B(157)側より遠い経路を流れ、その後、点線で示す如く導体板316の直流正極端子315B(157)側より遠い経路を流れ、IGBT330及びダイオード166内を通る。さらにループ形状の電流経路は実線で示す如く、導体板319の直流負極配線319A側に近い経路を流れる。このようにループ形状の電流経路が、直流正極端子315B(157)や直流負極端子319B(158)に対して、近い側や遠い側の経路を通ることで、よりループ形状に近い電流経路が形成される。
図12(a)は補助モールド体600の斜視図、図12(b)は補助モールド体600の透過図である。
補助モールド体600は、信号導体324をインサート成形により一体化している。ここで、信号導体324は、上アーム側のゲート電極端子154やエミッタ電極端子155及び上アーム側のゲート電極端子164やエミッタ電極端子165(図2参照)、さらにはパワー半導体素子の温度情報を伝達するための端子が含まれる。本実施形態の説明では、これらの端子を総称して、信号端子325U、325Lと表現する。
信号導体324は、一方の端部に信号端子325Uや325Lを形成し、他方の端部に素子側信号端子326Uや326Lを形成する。素子側信号端子326Uや326Lは、パワー半導体素子の表面電極に設けられた信号パッドと、例えばワイヤにより接続される。第1封止部601Aは、図10(a)に示された直流正極配線315Aや直流負極配線319Aあるいは交流配線320の形状の長軸に対してこれを横切る方向に延びる形状を成す。
一方、第2封止部601Bは、直流正極配線315Aや直流負極配線319Aあるいは交流配線320の形状の長軸に対して略平行な方向に延びる形状を成す。また、第2封止部601Bは、上アーム側の信号端子325Uを封止するための封止部と、下アーム側の信号端子325Lを封止するための封止部とにより構成される。
補助モールド体600は、その長さが、横に並べられた導体板315と316との全体の長さ、あるいは横に並べられた導体板319と320との全体の長さより長く形成される。つまり、横に並べられた導体板315と316の長さ、あるいは横に並べられた導体板319と320の長さが、補助モールド体600の横方向の長さの範囲内に入っている。
第1封止部601Aは、窪み形状を成しておりかつ当該窪みに直流負極配線319Aを嵌合するための配線嵌合部602Bを形成する。また第1封止部601Aは、窪み形状を成しておりかつ当該窪みに直流正極配線315Aを嵌合するための配線嵌合部602Aを形成する。さらに第1封止部601Aは、配線嵌合部602Aの側部に配置されており、かつ窪み形状を成し、さらに当該窪みに交流配線320を嵌合するための配線嵌合部602Cを形成する。これら配線嵌合部602A〜602Cに各配線が嵌合されることにより、各配線の位置決めが為される。これにより、各配線を強固に固定した後に樹脂封止材の充填作業を行うことが可能となり、量産性が向上する。
また、配線絶縁部608が、配線嵌合部602Aと配線嵌合部602Bの間から、第1封止部601Aから遠ざかる方向に突出する。板形状を成す配線絶縁部608が直流正極配線315Aと直流負極配線319Aの間に介在することにより、絶縁性を確保しながら、低インダクタンス化のための対向配置が可能となる。
また、第1封止部601Aには、樹脂封止する際に用いられる金型と接触する金型押圧面604が形成され、かつ金型押圧面604は、樹脂封止する際の樹脂漏れを防止するための突起部605が第1封止部601の長手方向の外周を一周して形成される。突起部605は、樹脂漏れ防止効果を高めるために、複数設けられる。さらに、これら配線嵌合部602Aと配線嵌合部602Bにも突起部605が設けられているので、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aの周囲から樹脂封止材が漏れるのを防止できる。ここで、第1封止部601A、第2封止部601B、及び突起部605の材料としては、150〜180℃程度の金型に設置されることを考慮すると、高耐熱性が期待できる熱可塑性樹脂の液晶ポリマーやポリブチレンテレクタレート(PBT)やポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)が望ましい。
また、第1封止部601Aの短手方向のパワー半導体素子側には、図12(b)に示される貫通孔606が長手方向に複数設けられる。これにより、貫通孔606に第一封止樹脂348が流入して硬化することにより、アンカー効果が発現して、補助モールド体600は第一封止樹脂348に強固に保持され、温度変化や機械的振動によって応力がかかっても両者は剥離しない。貫通孔の変わりに凸凹の形状としても剥離しがたくなる。また、第1封止部601Aにポリイミド系のコート剤を塗布するか、あるいは表面を粗化することでもある程度の効果が得られる。
モジュール一次封止体302における第1封止樹脂348の封止工程では、まず各配線を支持した補助モールド体600を、150〜180℃程度に余熱された金型に挿入する。本実施形態では、補助モールド体600、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320、導体板315、導体板316、導体板318、導体板319が、それぞれ強固につながっているため、補助モールド体600を所定の位置に設置することで主要回路及びパワー半導体素子が所定の位置に設置される。従って生産性が向上すると共に、信頼性が向上する。
また、第2封止部601Bは、モジュールケース304近傍からドライバ回路基板近傍まで延ばされるように形成される。これにより、強電配線の間をかいくぐってドライバ回路基板との配線を行う際に、高電圧にさらされても正常にスイッチング制御信号を伝達できるようになる。また、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320、信号端子325U及び信号端子325Lが、モジュールケース304から同一方向に突出しても、電気的絶縁を確保することができ、信頼性を確保できる。
図13は、平滑コンデンサモジュール500の内部構造を説明するための分解斜視図である。積層導体板501は、板状の幅広導体で形成された負極導体板505及び正極導体板507、さらに負極導体板505と正極導体板507に挟まれた絶縁シート(不図示)により構成されている。積層導体板501は以下に説明の如く、各相の上下アームの直列回路150を流れる電流に対して磁束を互いに相殺しあうので、上下アームの直列回路150を流れる電流に関して低インダクタンス化が図られる。積層導体板501は、略四角形形状を成す。負極側の電源端子508及び正極側の電源端子509は、積層導体板501の一辺から立ち上げられた状態で形成され、それぞれ正極導体板507と負極導体板505に接続されている。正極側の電源端子509及び負極側の電源端子508には、図2で説明した如く、直流コネクタ部138を介して直流電力が供給される。
コンデンサ端子503cは、負極側の電源端子508及び正極側の電源端子509と同じ一方の辺から立ち上げられ、コンデンサ端子503a及び503bは、コンデンサ端子503cとの対辺から立ち上げられ状態で、各パワー半導体モジュール300の正極端子157(315B)及び負極端子158(319B)に対応して形成される。コンデンサ端子503a〜503cは、パワー半導体モジュール300a〜300cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503aを構成する負極側コンデンサ端子504aと正極側コンデンサ端子506aとの間には、絶縁シート(不図示)の一部が設けられ、絶縁が確保されている。他のコンデンサ端子503b及び503cも同様である。なお、本実施形態では、負極導体板505、正極導体板507、バッテリ負極側端子508、バッテリ負極側端子509、コンデンサ端子503a〜503fは、一体に成形された金属製板で構成され、上下アームの直列回路150を流れる電流に対してインダクタンス低減の効果を有する。
コンデンサセル514は、積層導体板501の下方である平滑コンデンサモジュール500の内部側に、複数個設けられる。本実施の形態では、4個のコンデンサセル514が積層導体板501の一方の辺に沿って一列に並べられ、かつさらに別の12個のコンデンサセル514が積層導体板501の他方の辺に沿って四列に並べられ、合計16個のコンデンサセルが設けられる。本実施形態では、平滑コンデンサモジュール500の上面に近接した状態で冷媒流路が設けられており、冷却効率が向上する。
コンデンサセル514は、平滑コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にアルミなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極、負極としたフィルムコンデンサを用いる。コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極、負極電極となり、スズなどの導電体を吹き付けて製造される。
コンデンサケース502は、コンデンサセル514を収納するための収納部511を備え、上記収納部511は、図に記載の上面及び下面が略長方形状を成す。コンデンサケース502には、平滑コンデンサモジュール500を流路形成体12に固定するための固定手段例えば螺子を貫通させるための孔520a〜520dが設けられる。収納部511の底面部513は、円筒形のコンデンサセル514の表面形状に合わせるように、なめらかな凹凸形状若しくは波形形状を成している。これにより、積層導体板501とコンデンサセル514が接続されたモジュールをコンデンサケース502に位置決めさせることが容易になる。また、積層導体板501とコンデンサセル514がコンデンサケース502に収納された後に、コンデンサ端子503a〜503fと負極側の電源端子508及び正極側の電源端子509を除いて、積層導体板501が覆われるようにコンデンサケース502内に充填材(不図示)が充填される。底面部513がコンデンサセル514の形状に合わせて波形形状となっていることにより、充填材がコンデンサケース502内に充填される際に、コンデンサセル514が所定位置からずれることを防止できる。
また、コンデンサセル514は、スイッチング時のリップル電流により、内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜、内部導体の電気抵抗により発熱する。そこで、コンデンサセル514の熱を、コンデンサケース502を介して逃がし易くするために、コンデンサセル514を充填材でモールドする。さらに樹脂製の充填材を用いることにより、コンデンサセル514の耐湿も向上させることができる。
パワー半導体モジュール300の交流端子321(159)の先端は交流バスバー801a〜cの先端とは溶接により接続される。
バスバーアッセンブリ800は、交流バスバー801a〜c、伝熱部材803、バスバー保持部材802によって構成される。交流バスバー801a〜c、伝熱部材803は、バスバー保持部材802によって流路カバー420に固定される。交流バスバー801a〜cの通電によって発生した熱は、伝熱部材803を介し流路形成体12に伝達されるので、交流バスバー801a〜cの冷却の効果がある。
図14は、コネクタモジュール120の全体構成を説明するために構成要素に分解した斜視図である。
直流バスバー814a、814bは、直流バスバー保持部材818によって保持され、コネクタハウジング121に固定される。直流バスバー814a、814bの一端は、平滑コンデンサモジュール500に具備された、正極側の電源端子509及び負極側の電源端子508にそれぞれ接続される。
第2交流バスバー804a〜cは、交流バスバー保持部材817によって保持され、コネクタハウジング121に固定されている。第2交流バスバー804a〜cの一端は、電力変換モジュール200に具備された、第1交流バスバー801a〜cにそれぞれ接続される。
前述の直流バスバー814a、814b及び第2交流バスバー804a〜cの他端は、一般的には車両側に具備された直流配線139及び交流配線189に接続される。本実施の形態では、直流配線139をコネクタハウジング121の直流コネクタ部138に挿入後に、直流バスバー814と直流配線139を、図15で示す締結用ねじ36で締結し、直流コネクタカバー822で封止する。同様に、交流配線189をコネクタハウジング121の交流コネクタ部188に挿入後に、第2交流バスバー804と交流配線189を、図15で示す締結用ねじ35ねじで締結し、交流コネクタカバー821で封止する構成としている。尚、本実施の形態ではコネクタモジュール120は、直流コネクタ部138と交流コネクタ部188は一体となっているが、それぞれ別体で製作しハウジング10に固定してもよいし、また、本実施の形態では直流配線139及び交流配線189の接続はねじで締結しているが、金属のスプリング力を利用し電気的接触を確保する方法でも、上記で説明した効果を同様に得ることができる。
図15は、電力変換装置100からカバー8を外した状態の上面からの図である。また、図16は、図15に示した電力変換装置100の側面に取り付けた部品を見易く示した斜視図である。電力変換モジュール200は、構成部品はモジュールの状態で組み立てられ、ハウジング10に締結用ねじ31、32で固定される。締結用ねじ32は、ハウジング10の開口部より締結作業を行い、締結用ねじ31は、外部側面から締結作業を行う。本実施の形態によれば、電力変換モジュール200変えずに、ハウジング10のみを変更することで、例えばハウジング10の車両への固定位置を自在に設定することができるので、部品の標準化、ハウジング10を製作するときの型の費用低減、生産設備の標準化、設計工数の低減等の効果を得ることができる。
さらに、入口配管13、出口配管14、コネクタモジュール120、信号コネクタ21を、締結用ねじ33、34、37にて締結し、直流バスバー814と電源端子508、509を締結用ねじ36にて、第1交流バスバー801と第2交流バスバー804を締結用ねじ35で接続する。さらに、信号コネクタ21の基板用コネクタ38を回路基板20に挿入することで、各部の接続が完了する。本実施の形態によれば、上記の効果に加え、外部とのインターフェースである冷却媒体の接続用配管13、14、信号コネクタ21、直流コネクタ部138、交流コネクタ部188のみを変更することで、幅広い対応をすることができるので、部品の標準化、構成部品の型の費用低減、生産設備の標準化、設計工数の低減等の効果を得ることができる。
図17は、流路形成体とパワー半導体モジュール300の冷却媒体通路の断面図である。図17(a)は、従来の構成の断面図であり、図17(b)は、本実施の形態の断面図である。流路形成体は、強度・放熱性・冷却冷媒のシール性、コスト等を考慮して一般的にはダイカストのアルミニウムを使用する。ダイカストは、金属製の金型に溶融したアルミニウムを高圧で射出し、冷却後に金型から製品を取り出す製法である。よって、製品を取り出す際に金型と製品を分離し易いように、型の抜き方向に平行な面にテーパを付けている。
図17(a)に示した従来の構成は、パワー半導体モジュール300は、流路形成体901の上面から挿入し、流形成体901の下面は、下カバー902で封止される構成となっている。この構成において、流路形成体901をダイカストで製作する場合、型の抜きは型分割面911を境に上方向のダイカスト型抜き方向912と下方向のダイカスト型抜き方向913の方向に抜かれる。この時、抜き方向と平行な面は金型との分離を容易にするため、テーパー面914が必要となる。この状態で、パワー半導体モジュール300を流路形成体901に組付けると、パワー半導体モジュール300に設けられた放熱用のフィン305とテーパー面914の間のクリアランス916は場所によって違うため、クリアランス916が大きい部分を冷却冷媒が通過するので、冷却性能が不均一となりパワー半導体モジュール300の性能低下の懸念があった。性能低下を防ぐ為、テーパー面914に機械加工を施しクリアランス916を均一にすることは可能であるが、機械加工が必要となるためコストアップの要因となっていた。
一方、図17(b)に示した本実施の形態の構成は、パワー半導体モジュール300は、流路形成体12の側面から挿入し、流路形成体12の上面は、流路カバー420で封止される構成となっている。この構成において、流路形成体12をダイカストで製作する場合、型の抜きは、上方向のダイカスト型抜き方向922の方向に抜かれる。この時、抜き方向と平行な面であるテーパー面924は、パワー半導体モジュール300の放熱用のフィン305と直角を成す面であるパワー半導体モジュール300の側面に近接する。一方、パワー半導体モジュール300に設けられた放熱用のフィン305と近接する面は、テーパーを必要としない面925となるので、均一かつ最小の値のクリアランス926を確保することができる。このことは、パワー半導体モジュール300の性能向上、および機械加工が不要のためコスト低減の効果も得ることができる。