以下、添付図面を参照して、電力測定装置1、および電力測定装置1におけるベクトル図表示方法の実施の形態について説明する。
まず、電力測定装置1の構成について、図1を参照して説明する。なお、三相式配電線として三相4線式配電線の電力値Wを測定する例を挙げて説明する。
電力測定装置1は、図1に示すように、電圧測定部2、電流測定部3、処理部4、記憶部5および表示部6を備え、三相式配電線の電力を測定可能に構成されている。
電圧測定部2は、一例として、4本の電圧プローブ11,12,13,14と、不図示の3つのA/D変換器とを備え、各A/D変換器において、A/D変換器毎に予め設定された2つの電圧プローブを介して入力される交流電圧を測定電圧としてサンプリングして、電圧データDv1,Dv2,Dv3に変換して処理部4に出力する。
電流測定部3は、一例として、3本の電流プローブ(電線貫通型の電流センサを備えた電流プローブ)21,22,23と、不図示の3つのA/D変換器とを備えている。各電流プローブ21,22,23は、検出した交流電流を電圧に変換して対応するA/D変換器に出力する。各A/D変換器は、対応する電流プローブを介して入力される電圧を測定電流としてサンプリングして、電流データDi1,Di2,Di3に変換して処理部4に出力する。
処理部4は、CPUなどを備えて構成されて、電圧データDv1,Dv2,Dv3および電流データDi1,Di2,Di3についての記憶処理、電力値Wを算出する電力算出処理、各測定電圧の電圧基本波成分および各測定電流の電流基本波成分を抽出する基本波成分抽出処理、並びに表示処理を実行する。また、処理部4は、三相4線式配電線の電力値Wについての測定の際には、表示処理において、図2に示す各電圧基本波成分で構成される第1グループのベクトル線U1,U2,U3、および各電流基本波成分で構成される第2グループのベクトル線I1,I2,I3を表示部6に図3,4に示すようにベクトル図(電圧ベクトル図と電流ベクトル図とを統合した統合ベクトル図)Fとして表示させる。また、処理部4は、図示はしないが、表示処理において算出した電力値Wについても表示部6に表示させる。
記憶部5は、ROMやRAMなどの半導体メモリや、HDD(Hard Disk Drive )を備えて構成されて、電圧データDv1,Dv2,Dv3、電流データDi1,Di2,Di3および算出した電力値Wなどを記憶する。
表示部6は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されて、ベクトル図Fおよび電力値Wを画面上に表示する。
次に、電力測定装置1の動作について図面を参照して説明すると共に、電力測定装置1におけるベクトル図表示方法についても併せて説明する。
最初に、オペレータは、電圧測定部2の電圧プローブ11,12,13を三相4線式配電線のうちのR相、S相、T相の各配電線(不図示)に接続し、電圧プローブ14を三相4線式配電線のうちの中性線(不図示)に接続する。また、オペレータは、電流測定部3の電流プローブ21,22,23をR相、S相、T相の各配電線に取り付ける(クランプする)。
この状態において、処理部4は、電圧測定部2に対する制御処理を実行して、電圧測定部2に対して、電圧プローブ14を基準として各電圧プローブ11,14間に発生する交流電圧(R相の相電圧)を1つのA/D変換器に測定電圧として入力させ、電圧プローブ14を基準として各電圧プローブ12,14間に発生する交流電圧(S相の相電圧)を他の1つのA/D変換器に他の測定電圧として入力させ、電圧プローブ14を基準として各電圧プローブ13,14間に発生する交流電圧(T相の相電圧)を他の1つのA/D変換器に他の測定電圧として入力させる。
これにより、電圧測定部2は、R相の相電圧をサンプリングして得られる電圧データを電圧データDv1として、またS相の相電圧をサンプリングして得られる電圧データを電圧データDv2として、またT相の相電圧をサンプリングして得られる電圧データを電圧データDv3として、処理部4にそれぞれ出力する。
一方、処理部4は、電流測定部3に対しては、電流プローブ21によって検出されるR相を流れる交流電流(相電流)を電圧に変換して1つのA/D変換器に出力させ、電流プローブ22によって検出されるS相を流れる交流電流(相電流)を電圧に変換して他の1つのA/D変換器に出力させ、電流プローブ23によって検出されるT相を流れる交流電流(相電流)を電圧に変換して他の1つのA/D変換器に出力させる。
これにより、電流測定部3は、電圧に変換されたR相の相電流をサンプリングして得られる電圧データを電流データDi1として、また電圧に変換されたS相の相電流をサンプリングして得られる電圧データを電流データDi2として、また電圧に変換されたT相の相電流をサンプリングして得られる電圧データを電流データDi3として、処理部4にそれぞれ出力する。
処理部4は、この状態において、まず、記憶処理を実行して、各電圧データDv1,Dv2,Dv3および各電流データDi1,Di2,Di3を、電力測定に必要な数(例えば、相電圧の1周期分以上)だけ取得して、記憶部5に記憶させる。
次いで、処理部4は、基本波抽出処理を実行する。この基本波抽出処理では、処理部4は、記憶部5に記憶されている各電圧データDv1,Dv2,Dv3に基づいて、フーリエ変換を実行して、R相の相電圧、S相の相電圧およびT相の相電圧についての各電圧基本波成分Vr,Vs,Vtをそれぞれ抽出する。また、処理部4は、各電圧データDv1,Dv2,Dv3に基づいて、各電圧基本波成分Vr,Vs,Vtの実効値を算出する。また、処理部4は、記憶部5に記憶されている各電流データDi1,Di2,Di3に基づいて、フーリエ変換を実行して、R相の相電流、S相の相電流およびT相の相電流についての各電流基本波成分Ir,Is,Itをそれぞれ抽出する。また、処理部4は、各電流データDi1,Di2,Di3に基づいて、各電流基本波成分Ir,Is,Itの実効値を算出する。
このようにして抽出される各電圧基本波成分Vr,Vs,Vt、および各電流基本波成分Ir,Is,Itについての位相関係を、各電圧基本波成分Vr,Vs,Vtの各ベクトル線U1,U2,U3、および各電流基本波成分Ir,Is,Itの各ベクトル線I1,I2,I3を用いて、電圧基本波成分Vrの位相を基準とした(位相を0度とした)ベクトル図で表すと、図2に示すように表される。
この場合、各相電圧が平衡であり、かつ電圧測定部2および電流測定部3の三相4線式配電線に対する配線並びに三相4線式配電線自体の配線が正常であるときには、一例として図2に示すように、基準点Oから右方向に向かうように基準となるベクトル線U1を規定したときには、ベクトル線U2は、このベクトル線U1を基準として、共通の基準点Oを中心として時計回り方向に120度ずれた位置に現れ、ベクトル線U3は、ベクトル線U1を基準として、共通の基準点Oを中心として反時計回り方向に120度ずれた位置に現れる。また、各ベクトル線I1,I2,I3については、ベクトル線I1は、対応するベクトル線U1に対して位相差θ1が生じた状態で現れ、ベクトル線I2は、対応するベクトル線U2に対して位相差θ2が生じた状態で現れ、ベクトル線I3は、対応するベクトル線U3に対して位相差θ3が生じた状態で現れる。なお、上記の各位相差θ1,θ2,θ3は、R相、S相、T相の各負荷状態によって変化するものの、各相電圧が平衡であり、かつ上記の各配線が正常であるときには一定の角度範囲内で常に変化する。このため、各相電圧が平衡であり、かつ上記の各配線が正常であるときには、各ベクトル線I1,I2,I3は、図2に示すように、予め規定された角度範囲(許容範囲)E1,E2,E3内に含まれる。
続いて、処理部4は、電力算出処理を実行する。この電力算出処理では、処理部4は、基本波抽出処理で抽出したR相についての相電圧および相電流の各基本波成分(電圧基本波成分および電流基本波成分)Vr,IrからR相においての力率を算出し、この力率と基本波抽出処理で算出したR相についての相電圧および相電流の各実効値とからR相についての電力値(例えば、有効電力値)を算出する。処理部4は、R相のときと同様にして、S相およびT相についての各電力値を算出する。最後に、処理部4は、R相、S相およびT相についての各電力値の総和を算出して、三相4線式配電線の電力値Wを測定すると共に、記憶部5に記憶させる。これにより、電力算出処理が完了する。
次いで、処理部4は、表示処理を実行する。この表示処理では、処理部4は、ベクトル図F(図3参照)を表示部6に表示させるベクトル表示処理と、算出した電力値Wを表示部6に表示させる電力表示処理とを実行する。
最初に、ベクトル表示処理では、処理部4は、図3に示すように、表示部6の画面上における基準点Pを中心点とする円形の1つの表示領域A内に、各ベクトル線U1,U2,U3と各ベクトル線I1,I2,I3とを、この1つの基準点P(表示領域Aの中心)側から表示領域Aの外周縁側に向かうベクトル線としてそれぞれ表示させる。
具体的には、処理部4は、まず、この表示領域A内に、基準点Pを中心点とする円形領域Bと、この円形領域Bの外側に基準点Pを中心として形成された円環領域(斜線を付した領域)Cとを規定する。この際に、図3に示すように、処理部4が、円環領域Cを認識させるための輪郭線Lo1,Lo2を、円環領域Cの内周縁および外周縁に一致させて表示させる。なお、円形領域Bおよび表示部6の画面の背景色とは異なる色で円環領域Cを表示させることで、この輪郭線Lo1,Lo2を表示させない構成とすることもできる。
次いで、処理部4は、各ベクトル線U1,U2,U3を円環領域C内に表示させる。この場合、ベクトル線U1の円環領域C内への表示に際しては、処理部4は、まず、図3において破線で示すように、基準点Pを端点とする半直線であって図2におけるベクトル線U1と同様にして右方向に向かう半直線(基準半直線)L1を規定する。次いで、処理部4は、この半直線L1上に、半直線L1と円環領域Cの内周縁(本例では、上記した輪郭線Lo1)との交点P1sを始点としてこの円環領域Cの外周縁側に向かうベクトルをベクトル線U1として表示させる。本例では一例として、処理部4は、半直線L1と円環領域Cの外周縁(本例では、上記した輪郭線Lo2)との交点P1eを終点とするベクトルをベクトル線U1として表示させる。
また、残りのベクトル線U2,U3の円環領域C内への表示に際しては、処理部4は、まず、図3において破線で示すように、半直線L1に対して、図2におけるベクトル線U1に対するベクトル線U2,U3の各角度と同じ角度となるように基準点Pを端点とする半直線L2,L3を規定する。次いで、処理部4は、この半直線L2上に、半直線L2と円環領域Cの内周縁(輪郭線Lo1)との交点P2sを始点としてこの円環領域Cの外周縁側に向かうベクトルをベクトル線U2として表示させる。本例では一例として、処理部4は、半直線L2と円環領域Cの外周縁(輪郭線Lo2)との交点P2eを終点とするベクトルをベクトル線U2として表示させる。また、処理部4は、この半直線L3上に、半直線L3と円環領域Cの内周縁(輪郭線Lo1)との交点P3sを始点としてこの円環領域Cの外周縁側に向かうベクトルをベクトル線U3として表示させる。本例では一例として、処理部4は、この半直線L3と円環領域Cの外周縁(輪郭線Lo2)との交点P3eを終点とするベクトルをベクトル線U3として表示させる。
また、処理部4は、各ベクトル線I1,I2,I3を円形領域B内に、円形領域Bの中心点(基準点P)から円形領域Bの外周縁側に向かうベクトル線として表示させる。この場合、ベクトル線I1の円形領域B内への表示に際しては、処理部4は、図3に示すように、基準点Pを始点とし、かつ対応するベクトル線U1が位置する半直線L1に対して上記の位相差θ1だけずれ、かつ終点が円形領域Bの外周縁(本例では、円形領域Bの外周縁と円環領域Cの内周縁とが一致しているため、輪郭線Lo1)上に位置するベクトルをベクトル線I1として表示させる。
また、ベクトル線I2の円形領域B内への表示に際しては、処理部4は、図3に示すように、基準点Pを始点とし、かつ対応するベクトル線U2が位置する半直線L2に対して上記の位相差θ2だけずれ、かつ終点が円形領域Bの外周縁(輪郭線Lo1)上に位置するベクトルをベクトル線I2として表示させる。また、ベクトル線I3の円形領域B内への表示に際しては、処理部4は、同図に示すように、基準点Pを始点とし、かつ対応するベクトル線U3が位置する半直線L3に対して上記の位相差θ3だけずれ、かつ終点が円形領域Bの外周縁(輪郭線Lo1)上に位置するベクトルをベクトル線I3として表示させる。これにより、ベクトル図Fの表示が完了し、ベクトル表示処理についても完了する。
続いて、電力表示処理では、処理部4は、図示はしないが、一例として、表示部6の画面上における表示領域Aと異なる表示領域に、算出した電力値Wを表示させる。
このように、この電力測定装置1、および電力測定装置1におけるベクトル図表示方法では、三相4線式配電線についてのベクトル図Fの表示処理において、R相の相電圧、S相の相電圧およびT相の相電圧の各電圧基本波成分Vr,Vs,Vtについての第1グループを構成する各ベクトル線U1,U2,U3、およびR相の相電流、S相の相電流およびT相の相電流の各電流基本波成分Ir,Is,Itについての第2グループを構成する各ベクトル線I1,I2,I3のうちの一方のグループを構成する各基本波成分(本例では、電流基本波成分Ir,Is,It)については、1つの円形領域B内に、この円形領域Bの中心点(基準点P)を始点として円形領域Bの外周縁側に向かうベクトル線I1,I2,I3として表示部6の画面上にそれぞれ表示させ、他方のグループを構成する各基本波成分(本例では、電圧基本波成分Vr,Vs,Vt)については、円形領域Bの外側に基準点Pを中心として形成された1つの円環領域C内に、中心点(基準点P)から伸びる半直線L1,L2,L3と円環領域Cの内周縁(輪郭線Lo1)との交点P1s,P2s,P3sをそれぞれの始点としてこの円環領域の外周縁側に向かうベクトル(本例では、半直線L1,L2,L3と円環領域Cの外周縁(輪郭線Lo2)との交点P1e,P2e,P3eを終点とするベクトル)をベクトル線U1,U2,U3として画面上にそれぞれ表示させる。
したがって、この電力測定装置1、および電力測定装置1におけるベクトル図表示方法によれば、円形の1つの表示領域A内に第1および第2のグループのベクトル線U1,U2,U3およびベクトル線I1,I2,I3を表示させることで、表示部6の画面上でのベクトル図Fが占めるスペースを低減させつつ、第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3と第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3とが互いに異なる領域C,B内に表示される(つまり、同じ点を始点として表示されない)ため、対応するベクトル線U1とベクトル線I1同士、ベクトル線U2とベクトル線I2同士、およびベクトル線U3とベクトル線I3同士が近接して表示される場合(位相差θ1,θ2,θ3が小さい場合)であっても、各ベクトル線U1,U2,U3,I1,I2,I3を作業者に対して良好に認識させることができる。これにより、この電力測定装置1、および電力測定装置1におけるベクトル図表示方法によれば、各ベクトル線U1,U2,U3,I1,I2,I3の位置を目視にて確認することで、電圧測定部2および電流測定部3の三相4線式配電線に対する配線、並びに三相4線式配電線自体の配線、つまり、三相4線式配電線に関する配線状態が正常であるか否かを正確に判別することができる。
なお、上記の電力測定装置1、および電力測定装置1におけるベクトル図表示方法では、第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3と第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3の色(表示色)や、各ベクトル線U1,U2,U3,I1,I2,I3における線分の線種や矢印の形状などについては特に限定してはいないが、図示はしないが、第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3を共通の色で表示させると共に、第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3を第1グループの色とは異なる共通の色で表示させる構成を採用することができる。また、図示はしないが、第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3の線分を共通の線種(実線、破線、一点鎖線など)で表示させると共に、第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3の線種を第1グループのベクトル線U1,U2,U3の線種とは異なる共通の線種で表示させる構成を採用することもできる。また、図4,5に示すように、第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3の矢印を共通の形状で表示させると共に、第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3の矢印を第1グループの矢印とは異なる共通の形状で表示させる構成を採用することもできる。
これらの構成のうちのいずれかの構成を採用することにより、第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3と第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3とをさらに明確に区別させることができるため、各ベクトル線U1,U2,U3,I1,I2,I3を作業者に対して一層良好に認識させることができる。なお、図3と同じ構成については同じ符号を付して重複する説明を省略した。後述する説明についても同じ符号を使用して重複する説明を省略する。
また、上記のように第1グループを構成するベクトル線U1,U2,U3の色や線種や矢印の形状を共通にして表示させると共に、第2グループを構成するベクトル線I1,I2,I3の色や線種や矢印の形状を共通にして表示させる構成に代えて、図示はしないが、同じ相の相電圧および相電流についての各ベクトル線を同色または同系色であって、かつ他の相の相電圧および相電流についての各ベクトル線の色とは相違する色で表示部6の画面上に表示させる構成を採用することもできる。
具体的には、R相の相電圧についての電圧基本波成分Vrを示すベクトル線U1およびR相の相電流についての電流基本波成分Irを示すベクトル線I1を同色(例えば、赤色)で表示させ、S相の相電圧についての電圧基本波成分Vsを示すベクトル線U2およびS相の相電流についての電流基本波成分Isを示すベクトル線I2を同色(例えば、黄色)で表示させ、T相の相電圧についての電圧基本波成分Vtを示すベクトル線U3およびT相の相電流についての電流基本波成分Itを示すベクトル線I3を同色(例えば、青色)で表示させる構成を採用することができる。この構成を採用することにより、同じ相の相電圧および相電流の各基本波成分を示すベクトル線を、他の相のベクトル線と明確に区別して認識させることができる。
また、R相についてのベクトル線U1およびベクトル線I1を同系色内の異なる色(例えば、赤色とより淡い赤色)で表示させ、S相についてのベクトル線U2およびベクトル線I2をR相とは異なる色系であって同色系内の異なる色(例えば、黄色とより淡い黄色)で表示させ、T相についてのベクトル線U3およびベクトル線I3をR相やS相とは異なる色系であって同色系内の異なる色(例えば、青色とより淡い青色)で表示させる構成を採用することができる。この場合、例えば、相電圧についての各ベクトル線U1,U2,U3については、赤色、黄色および青色で表示させると共に、相電流についての各ベクトル線I1,I2,I3については、淡い赤色、淡い黄色および淡い青色で表示させる。この構成を採用することにより、同じ相の相電圧および相電流の各基本波成分を示すベクトル線を、他の相のベクトル線と明確に区別して認識させつつ、相電圧についてのベクトル線U1,U2,U3と相電流についてのベクトル線I1,I2,I3とについても明確に区別して認識させることができる。
また、図6に示すように、各ベクトル線I1,I2,I3についての許容範囲E1,E2,E3を円形領域B内に表示させたり、各ベクトル線U1,U2,U3についての許容範囲G1,G2,G3を円環領域C内に表示させたりする構成を採用することもできる。この場合、同じ相の相電流のベクトル線および相電圧のベクトル線についての各許容範囲を同じ色で表示させる。この構成を採用することにより、各ベクトル線I1,I2,I3,U1,U2,U3が同図に示すように、対応する許容範囲内にすべて入っているときには、各相電圧が平衡であり、かつ電圧測定部2および電流測定部3の三相4線式配電線に対する配線並びに三相4線式配電線自体の配線が正常であることを一目で判別することができる。
また、図6での各許容範囲E1,E2,E3については、一例として、隣接する許容範囲同士が部分的(約60度ずつ)に重なる円弧状領域として表示される構成を採用している。この許容範囲E1,E2,E3の帯状領域について、その概要を説明する。各許容範囲E1,E2,E3は、表示角度は相違するものの基本的な構成は同一である。
この場合、許容範囲E1,E2,E3を表す円弧状の各帯状領域は、各測定電圧および各測定電流がそれぞれ平衡であり、相毎の力率が1であり、かつ電圧測定部2および電流測定部3の三相4線式配電線に対する配線並びに三相4線式配電線自体の配線が正常であるときに表示される3つのベクトル線I1,I2,I3の各位置のうちの対応するベクトル線の表示位置(図6の各半直線L1,L2,L3)を中心として±60度を超え±90度以下の角度範囲に規定して表示させると共に、第1帯状領域(幅広の領域)と、この第1帯状領域の両端に連なる2つの第2帯状領域(幅狭な領域)とに分けて表示させる。この第1帯状領域については、各帯状領域における他の帯状領域についての上記の角度範囲に含まれない領域として、他の帯状領域についての他の第1帯状領域とは異なる色(表示色)で表示させる。また、この第2帯状領域については、各帯状領域における他の帯状領域についての上記の角度範囲に含まれる領域として、同じ帯状領域における第1帯状領域と同じ色(表示色)で、かつ他の帯状領域における他の前記第2帯状領域の内周側および外周側のいずれか一方の側にそれぞれ表示させる。
なお、各許容範囲E1,E2,E3については、隣接する許容範囲同士が重ならない円弧状領域として表示させる構成を採用することもでき、この構成を採用したときには、図示はしないが、許容範囲G1,G2,G3のように独立した円弧状領域として表示させる。
また、上記の各ベクトル図Fでは、円形領域B内に相電流についての各ベクトル線I1,I2,I3を表示させ、かつ円環領域C内に相電圧についての各ベクトル線U1,U2,U3を表示させる構成を採用しているが、図示はしないが、円形領域B内に相電圧についての各ベクトル線U1,U2,U3を表示させ、かつ円環領域C内に相電流についての各ベクトル線I1,I2,I3を表示させる構成を採用することもできる。
また、各ベクトル線I1,I2,I3,U1,U2,U3の近傍に、各ベクトル線I1,I2,I3,U1,U2,U3を示す項目名(例えば、ベクトル線I1の場合には、符号「I1」、ベクトル線U1の場合には、符号「U1」)を表示させる構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、各ベクトル線I1,I2,I3,U1,U2,U3の種類を作業者に直接的に認識させることができる。
また、円形領域Bの外周縁と円環領域Cの内周縁とを一致させて表示させる構成について上記したが、図7に示すように、円環領域Cの内周縁の直径を円形領域Bの外周縁の直径よりも大径に規定することにより、円形領域Bと円環領域Cとの間に円環状の隙間Hを形成してベクトル図Fを表示させる構成を採用することもできる。この構成によれば、円形領域B内に表示させる各ベクトル線と、円環領域C内に表示させるベクトル線とをさらに一層明確に区別して作業者に認識させることができる。
また、1つの円形の表示領域A内に、1つの基準点Pを中心として円形領域Bと、その外側に位置する円環領域Cとを形成し、円形領域B内に各電圧基本波成分で構成される第1グループのベクトル線U1,U2,U3、および各電流基本波成分で構成される第2グループのベクトル線I1,I2,I3のうちの一方のグループを構成するベクトル線を表示させると共に円環領域C内に他のグループを構成するベクトル線を表示させることで、第1グループのベクトル線U1,U2,U3と第2グループのベクトル線I1,I2,I3とを明確に区別して作業者に識別させる好ましい構成を採用した例について上記したが、従来の技術と同じ構成を採用した場合であっても、つまり、図8に示すように、第1グループのベクトル線U1,U2,U3、および第2グループのベクトル線I1,I2,I3をそれぞれ円形領域Bの中心点(基準点P)を始点として、円形領域Bの外周縁側に向かうベクトル線として表示させる構成を採用したとしても、第1グループのベクトル線U1,U2,U3、および第2グループのベクトル線I1,I2,I3のうちの一方のグループを構成するベクトル線と、他方のグループを構成するベクトル線とを、線種、矢印の形状および色の少なくとも1つを相違させて表示部6の画面上に表示させることで、両グループのベクトル線を作業者に区別して認識させることができる。なお、図8では、一例として、第1グループのベクトル線U1,U2,U3を破線で表示させ、第2グループのベクトル線I1,I2,I3を実線で表示させた例を示している。
また、図示はしないが、第1グループのベクトル線U1,U2,U3、および第2グループのベクトル線I1,I2,I3をそれぞれ円形領域Bの中心点(基準点P)を始点として、円形領域Bの外周縁側に向かうベクトル線として表示させる場合において、色を相違させる構成(図8に示す構成)を採用するときには、上記したように、例えば、R相についてのベクトル線U1およびベクトル線I1を同系色内の異なる色(例えば、赤色とより淡い赤色)で表示させ、S相についてのベクトル線U2およびベクトル線I2をR相とは異なる色系であって同色系内の異なる色(例えば、黄色とより淡い黄色)で表示させ、T相についてのベクトル線U3およびベクトル線I3をR相やS相とは異なる色系であって同色系内の異なる色(例えば、青色とより淡い青色)で表示させる構成を採用し、かつ相電圧についての各ベクトル線U1,U2,U3については、赤色、黄色および青色で表示させると共に、相電流についての各ベクトル線I1,I2,I3については、淡い赤色、淡い黄色および淡い青色で表示させる構成を採用するのが好ましい。
この構成を採用することにより、同じ相の相電圧および相電流の各基本波成分を示すベクトル線を、他の相のベクトル線と明確に区別して認識させつつ、相電圧についてのベクトル線U1,U2,U3と相電流についてのベクトル線I1,I2,I3とについても、作業者に対して明確に区別して認識させることができる。
また、電力測定装置1は、三相3線式配電線の電力値Wについても測定することができるが、この場合には、3つの電圧基本波成分のベクトル線U1,U2,U3および3つの電流基本波成分のベクトル線I1,I2,I3を表示部6に表示させる上記の構成に代えて、図示はしないが、例えば、2つの電圧基本波成分のベクトル線U1,U2を円環領域C内に表示させると共に、2つの電流基本波成分のベクトル線I1,I2を円形領域B内に表示させる。この構成により、三相3線式配電線の電力値Wについての測定の際にも、表示部6の画面上でのベクトル図Fが占めるスペースを低減させつつ、第1グループを構成するベクトル線U1,U2と第2グループを構成するベクトル線I1,I2とが互いに異なる領域C,B内に表示されるため、対応するベクトル線U1とベクトル線I1同士、およびベクトル線U2とベクトル線I2同士が近接して表示される場合(位相差θ1,θ2が小さい場合)であっても、各ベクトル線U1,U2,I1,I2を作業者に対して良好に認識させることができる。
また、ベクトル線U1,U2,U3について、それぞれの始点から終点までの長さを一定(同じ長さ)として表示し、またベクトル線I1,I2,I3についても、それぞれの始点から終点までの長さを一定(同じ長さ)として表示する構成について上記したが、電圧基本波成分Vr,Vs,Vtの大きさ(電圧値)に応じて対応するベクトル線U1,U2,U3の終点の位置を変えて(つまり、ベクトル線U1,U2,U3の長さを変えて)表示し、電流基本波成分Ir,Is,Itの大きさ(電流値)に応じて対応するベクトル線I1,I2,I3の終点の位置を変えて(つまり、ベクトル線I1,I2,I3の長さを変えて)表示する構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、各ベクトル線U1,U2,U3,I1,I2,I3に基づいて、各電圧基本波成分Vr,Vs,Vtおよび各電流基本波成分Ir,Is,Itの大きさを確認することができる。