JP5961842B2 - 地中熱利用のための場所打ち杭用鉄筋籠及び地中熱利用熱交換パイプの設置方法 - Google Patents

地中熱利用のための場所打ち杭用鉄筋籠及び地中熱利用熱交換パイプの設置方法 Download PDF

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この発明は、地中熱利用のための場所打ち杭用鉄筋籠及び地中熱利用熱交換パイプの設置方法に関し、より詳細には地中に築造される基礎構造物である場所打ち杭の杭体内部に熱交換パイプを設置して、構造物基礎としてのみならず地中熱を有効に利用する技術に関する。
季節によって変動する外気温に比べて、地中の温度は年間を通して約15度Cと一定であり、この地中熱を例えば夏期には冷熱として、冬期には温熱として利用することが従来から行われている。
杭基礎は、本来は地上構造物を支持するためのものであるが、地中に設置されるものであることから、この杭基礎を利用して熱交換設備を設置することも提案されている。例えば、特許文献1〜3には、場所打ち杭の鉄筋籠に熱交換パイプを取付け、場所打ち杭の築造に伴って杭体内部に熱交換パイプを埋め込む地中熱利用システムが開示されている。
しかしながら、これら特許文献に記載の技術は熱交換パイプを鉄筋籠に単に固定的に取り付けるものであることから、次のような問題点を指摘することができる。すなわち、場所打ち杭の築造にあたっては、地盤を掘削した杭穴に鉄筋籠を建て込んだ後、杭穴にコンクリートを打設するのであるが、一般には鉄筋籠の外周と杭穴壁との間にはコンクリートのかぶり厚を確保するために所定大きさの間隙が形成される。
したがって、熱交換パイプを鉄筋籠の内周に配置する場合はもちろん、外周に配置する場合であっても、熱交換パイプは杭穴壁から離間した位置に設置されることになる。その結果、熱交換パイプと杭穴壁すなわち地盤との間には熱伝導性が低いコンクリートが介在することになり、熱交換効率が悪いという問題がある。
鉄筋籠の外周に熱交換パイプを配置する場合、熱交換パイプを鉄筋籠から外方に離間させて杭穴壁近くに位置するように取り付けることも考えられる(特許文献2参照)。しかしながら、このような取付け形態とすると、鉄筋籠の杭穴への建て込み時に熱交換パイプが杭穴壁に摺接して損傷するおそれがあり、かかる場合はそのパイプを熱交換用として使用できなくなる。また、同時に杭穴壁も損傷するおそれがあり、それによってスライムの発生を招くことになる。
特開2004−324913号公報 特開2004−332330号公報 特開2004−333001号公報
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、場所打ち杭を用いた地中熱利用システムにおいて、熱交換パイプを損傷することなく杭穴壁近くに設置することができ、これによって熱交換効率を高めることができる、場所打ち杭用鉄筋籠及び地中熱利用熱交換パイプの設置方法を提供することにある。
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、杭穴に建て込まれる場所打ち杭用の鉄筋籠であって、
該鉄筋籠の外周に、その軸方向に延びる熱交換パイプを鉛直面に沿って揺動自在となるように、線条体あるいは索条体を介して軸方向に間隔を置いた複数箇所で取付けたことを特徴とする地中熱利用のための場所打ち杭用鉄筋籠にある。
また、この発明は、杭穴に建て込まれる場所打ち杭用の鉄筋籠であって、
該鉄筋籠の外周に、その軸方向に延びる熱交換パイプを鉛直面に沿って揺動自在となるように、リンク機構を介して軸方向に間隔を置いた複数箇所で取付けたことを特徴とする地中熱利用のための場所打ち杭用鉄筋籠にある
また、この発明は、杭穴に鉄筋籠を建て込んだ後、コンクリートを打設して築造される場所打ち杭の杭体内部に地中熱利用のための熱交換パイプを設置する方法であって、
前記鉄筋籠の外周に、その軸方向に延びる熱交換パイプを鉛直面に沿って揺動自在となるように、軸方向に間隔を置いた複数のリンク機構を介して取付けておき、
前記熱交換パイプを上方に引き上げて上方位置に保持した状態で前記鉄筋籠を杭穴に建て込み、
鉄筋籠の建て込み後、前記保持を解除して熱交換パイプを下降させることによって該熱交換パイプを杭穴壁側に移動させることを特徴とする地中熱利用熱交換パイプの設置方法にある。
上記各設置方法において、揺動による前記熱交換パイプの水平方向移動大きさを、鉄筋籠外周から杭穴壁に当接することが可能な大きさ以上とすることが好ましい。
この発明によれば、熱交換パイプを鉄筋籠の外周に鉛直面に沿って揺動自在に取り付けたので、熱交換パイプを水平方向に移動させることにより杭穴壁すなわち地盤に当接する位置に設置することができる。したがって、地中熱との熱交換をコンクリートをほとんど介せずに直接行わせることができ、熱交換効率を高めることができる。しかも、鉄筋籠の建て込みの際は、熱交換パイプは鉄筋籠に沿うようにこれに接近して杭穴壁から離間した位置にあるので、建て込みによって杭穴壁に摺接することがなく損傷を防止することができ、熱交換機能を損なうことがない。また、杭穴壁も損傷することがない。
この発明の実施形態を示す鉛直方向断面図である。 同実施形態のものの水平方向断面図である。 熱交換パイプを鉄筋籠に揺動自在に取り付けるための手段の実施形態を拡大して示す正面図である。 熱交換パイプを鉄筋籠に揺動自在に取り付けるための手段の別の実施形態を拡大して示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。 打設コンクリートの挙動を模式的に示す図である。 受圧板を取り付けた熱交換パイプを示す正面図である。 熱交換パイプの設置方法の別の実施形態を示す鉛直方向断面図である。
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1,図2は、この発明による場所打ち杭用鉄筋籠の実施形態を示している。場所打ち杭工法には、主として掘削形態の違いによりオールケーシング工法、アースドリル工法、リバースサーキュレーション工法等の工法があるが、この発明はいずれの工法にも適用できる。図1,図2はベントナイト液等の安定液を満たしながら掘削した杭穴2に鉄筋籠1を建て込んだ状態を示している。この鉄筋籠1の建て込み後、トレミー管(後述する)を介して、杭穴2にコンクリートを打設して硬化させ、場所打ち杭が築造される。
鉄筋籠1は、全体として円筒形となるように周方向に間隔を置いて配置された多数の主筋3と、これら主筋3群を囲むように軸方向に間隔を置いて多数配置されたフープ筋4とで構成されている。この鉄筋籠1の外周に周方向に間隔を置いて、軸方向に延びる複数の熱交換パイプ5が取り付けられている。熱交換パイプ5は、地中熱と熱交換するための熱媒体の流路を形成するU字形のパイプであり、先端の曲管部を境に一方が送り管5a、他方が戻り管5bを形成している。
この発明によれば、熱交換パイプ5は鉄筋籠1に鉛直面に沿って揺動自在に取り付けられている。図1,図2に示す実施形態では熱交換パイプ5を揺動自在とするために、熱交換パイプ5は針金などの線条体6を介して、軸方向に間隔を置いた複数箇所で鉄筋籠1に取り付けられている。具体的には、図3に拡大して示すように、線条体6は一端がフープ筋4に結び付けられ、他端が熱交換パイプ5の送り管5a及び戻り管5bに結び付けられている。これにより、熱交換パイプ5は線条体6の長さ範囲で鉛直面に沿って揺動自在となる。熱交換パイプ5の鉄筋籠1への取付けは、線条体6に代えてワイヤーロープやチェーンなどの索条体を使用してもよい。
図4は、熱交換パイプ5を鉄筋籠1に揺動自在に取り付けるための手段の別の実施形態を示している。この実施形態では、熱交換パイプ5はリンク機構7を介して、軸方向に間隔を置いた複数箇所で鉄筋籠1に取り付けられている。リンク機構7は1対の分岐部8a,8bを有するリンクプレート8と、鉄筋籠1の主筋3(フープ筋でもよい)に取り付けられた支持部材9と、熱交換パイプ5の送り管5a,5bのそれぞれに取り付けられた支持部材10で構成されている。そして、リンクプレート8の一端は支持部材9にピン11を介して枢支され、分岐部8a,8b側の他端は支持部材10にピン12を介して枢支されている。これにより、熱交換パイプ5はリンクプレート8の長さ範囲で鉛直面に沿って揺動自在となる。
鉄筋籠1は熱交換パイプ5が図3,図4に示すように下方に垂れ下がった状態で杭穴2に建て込まれる。この建て込みの際、杭穴2に満たされている安定液によって熱交換パイプ5に浮力が生じて浮き上がらないようにする。熱交換パイプ5に浮力に抗する自重があればそのままでもよいが、一般には熱交換パイプ5に水等の液体を入れるか、あるいは重錘を取り付けるようにする。
鉄筋籠1の建て込み後、杭穴2にコンクリートを打設するのであるが、図5はそのときのコンクリートの様子を模式的に示している。コンクリートは杭穴2の中心に挿入配置されるトレミー管13を上方に徐々に引き上げながら、杭穴2の底部から打設される。このため、打設されたコンクリート14は当初、山形形状を呈するがその後、杭穴2の中心から側方(杭穴2の半径方向外方)に向けて矢印Aで示すように流動する。このコンクリートの流動圧によって、鉄筋籠1に揺動自在に取り付けられた熱交換パイプ5は杭穴2の穴壁側に水平方向に移動する(図1,図2参照)。水平移動した熱交換パイプ5はその位置でコンクリートの硬化によって固定される。
熱交換パイプ5内の熱媒体と地中熱との熱交換効率を高めるには、熱交換パイプ5が杭穴2の穴壁に近ければ近いほうがよく、穴壁に当接しているのが最もよい設置形態である。このような設置形態にするには、熱交換パイプ5の揺動による水平方向移動大きさが、鉄筋籠1の外周から杭穴2の穴壁に当接することが可能な大きさ以上となるように、線条体6あるいはリンクプレート8の長さを設定すればよい。そして、線条体6やリンクプレート8は、その長さを長くするほど穴壁に当接するまでの鉛直方向の変位を小さくすることができる。
図6は、熱交換パイプ5に受圧板15を設けた実施形態を示している。受圧板15は熱交換パイプ5の高さ方向に間隔を置いた複数箇所に取り付けられる。各箇所の受圧板15は2枚の板からなり、これらの板は送り管5a,5bの双方を挟み込むように配置されて、ボルト16等で互いに固定されている。このような受圧板15を取り付けることにより、コンクリートの流動圧を受ける面積が大きくなり、熱交換パイプ5を側方に移動させる力を大きくすることができる。
図7は、熱交換パイプをリンク機構を介して鉄筋籠に取り付けた場合の、設置方法の別の実施形態を示している。この実施形態では、熱交換パイプ5を上方に引き上げ、その上端を鉄筋籠1の頂部に仮止めする等して上方位置に保持し、その状態で鉄筋籠1を杭穴2に建て込む。鉄筋籠1の建て込み後、熱交換パイプ5の保持を解除すると、熱交換パイプ5は自重や重錘の作用により下降するが、下降に伴って水平方向に移動し、杭穴2の穴壁に当接してその位置に留まることになる。したがって、この場合はコンクリートの打設による流動圧の利用は不要であり、受圧板15も不要である。
以上のように、この発明によれば、場所打ち杭において熱交換パイプ5を杭穴壁すなわち地盤に当接する位置に設置することができ、地中熱との熱交換をコンクリートをほとんど介せずに直接行わせることができ、熱交換効率を高めることができる。しかも、鉄筋籠の建て込みの際は、熱交換パイプ5は鉄筋籠1に接近して杭穴壁から離間した位置にあるので、建て込みによって杭穴壁に摺接することがなくその損傷を防止することができる。また、杭穴壁も損傷することがない。
1 鉄筋籠
2 杭穴
3 主筋
4 フープ筋
5 熱交換パイプ
6 線条体
7 リンク機構
11 トレミー管
15 受圧板

Claims (1)

  1. 杭穴に建て込まれる場所打ち杭用の鉄筋籠であって、
    該鉄筋籠の外周に、その軸方向に延びる熱交換パイプを鉛直面に沿って揺動自在となるように、線条体あるいは索条体を介して軸方向に間隔を置いた複数箇所で取付けたことを特徴とする地中熱利用のための場所打ち杭用鉄筋籠。
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