JP5955075B2

JP5955075B2 - シリコーン樹脂からなるすべり止め部材の製造方法とその方法により製造されたすべり止め部材及びこのすべり止め部材を取り付けた腰裏

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Publication number: JP5955075B2
Application number: JP2012098560A
Authority: JP
Inventors: 稔雄小川
Original assignee: Hassho Shoji Co Ltd
Current assignee: Hassho Shoji Co Ltd
Priority date: 2012-04-24
Filing date: 2012-04-24
Publication date: 2016-07-20
Anticipated expiration: 2032-04-24
Also published as: EP2842439A1; CN103906444B; EP2842439A4; JP2013227683A; CN103906444A; WO2013161151A1; US20140373254A1

Description

本発明は、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材の製造方法及びその方法により製造されたすべり止め部材に関するものである。また、このすべり止め部材を取り付けた腰裏に関するものである。

シリコーン樹脂からなるすべり止め部材に溶融状態の熱接着性樹脂を直接塗布すれば、熱接着性樹脂フィルムが貼着されたすべり止め部材を得ることができる。しかしながら、この方法は技術的には可能であるが、このすべり止め部材を衣類などに接着して使用した場合において、すべり止め部材が度重なる水洗いやドライクリーニングに耐え得るほどの接着性を有しているとはいい難かった。

この欠点を解消するために、すべり止め部材の成形前の溶融状態時ならびに熱接着性樹脂の溶融状態時に、織物もしくは編物からなる添片を用い、溶融状態のすべり止め部材ならびに溶融状態の熱接着性樹脂を前記添片の生地目に浸透させることで、成形・溶融後のすべり止め部材ならびに溶融後の熱接着性樹脂フィルムの接着性を増大させるようにしたものがある（例えば、特許文献１）。

特許第３４１７８３６号公報（特許請求の範囲、０００７段落等参照）。

この場合には、溶融状態のすべり止め部材ならびに溶融状態の熱接着性樹脂を浸透させる添片が必要であり、その分だけすべり止め部材が分厚くなるのみならず、コストも高くなるという欠点を有している。
そこで、このような添片を用いることなく、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材に直接熱接着性樹脂フィルムを貼着したものとすることができれば、上記欠点を容易に解消することができる。

本発明の目的は、この要望に応えることができるすべり止め部材の製造方法とその方法により製造されたすべり止め部材とを提供することである。また、本発明の他の目的は、このすべり止め部材を取り付けた腰裏を提供することである。

本発明のシリコーン樹脂からなるすべり止め部材の製造方法は、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１の一面に燃焼化学気相蒸着加工を施し、この加工を施した後のすべり止め部材１の表面に溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３を塗布し、このプライマー３を乾燥させるとともに、このプライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着することを特徴とするものである。

ここに、燃焼化学気相蒸着とは、Combustion Chemical Vapor Deposition（CCVD）のことで、高温の火炎の酸化力と火炎中の化学反応を利用し、すべり止め部材１の表面を酸化するとともに、火炎中に導入される有機化合物の熱分解、酸化、還元、重合などによる化学反応生成物を、前記すべり止め部材１の表面に付着させることをいう。

例えば、１０００℃程度の高温の火炎が吹き出るバーナーをすべり止め部材１の表面上において９００ｍｍ／ｓｅｃで４回移動（往復移動を２回）させ、処理するすべり止め部材１の表面に前記火炎を当てる。すると、バーナーの火炎が当たるすべり止め部材１の表面が一瞬８０℃程度まで上昇し、燃焼化学気相蒸着加工により化学反応生成物を前記すべり止め部材１の表面に付着させることができる。

この燃焼化学気相蒸着加工を施した後のすべり止め部材１の表面に溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３を塗布するが、このウレタン系二液硬化型のプライマー３は、主剤と硬化剤とが反応することでウレタン樹脂を合成することによって得られるものであって、主剤の主成分としてポリオール化合物を、また、硬化剤の主成分としてイソシアネート化合物を用いるのが最も一般的な合成方法である。そして、溶融状態のこのウレタン系二液硬化型のプライマー３を、燃焼化学気相蒸着加工した後のすべり止め部材１の表面に塗布し、このプライマー３を乾燥させるとともに、このプライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着することにより、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とを強固に接着することができる。

シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とが強固に接着されるのは、ウレタン系二液硬化型のプライマー３の乾燥による硬化塗膜が基材であるすべり止め部材１に対して優れた密着性を与えるとともに、硬化塗膜が優れた柔軟性を有するからであると思われる。溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３を乾燥させる温度と時間（乾燥時間）は、８０℃２０分程度が好ましい。

このプライマー３の具体例としては、例えば、セイコーアドバンス社製のＲＵＸ塗料、帝国インキ社製のＳＰ−３１００ＡＵクリアー、十条ケミカル社製のＡＰインキ、ＡＰＧインキなどを挙げることができる。これらは、いずれもウレタン系二液硬化型のプライマーに属するものである。なお、セイコーアドバンス社製のＲＵＸ塗料の主成分は、ポリウレタン樹脂、イソホロン、メチルエチルケトンを少なくとも含有しており、エステル系溶剤も多少含まれている。

この製造方法によれば、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１の一面に燃焼化学気相蒸着加工と称される表面処理加工を施し、この表面処理加工を施した後の表面に溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３を塗布し、このプライマー３を乾燥させるとともに、このプライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着するので、このプライマー３を使用しなかったすべり止め（ウレタン系二液硬化型でない他のプライマーを塗布したものなど）に比べて、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材の接着性（接着強度）が大幅に向上する。したがって、このすべり止め部材Ａをズボン又はスカートの腰の裏側やこの部分に装着する腰裏Ｂに取り付けることにより、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材が剥離しない。

この製造方法により製造されたすべり止め部材Ａを、アイロン、プレス機その他の器具を用いて生地に装着した試料（大きさ：１８ｍｍ×４５ｍｍ、以下、「本発明による試料」と略称する）を用意し、本発明による試料に対する「剥離強さ」及び「耐ドライクリーニング性」の試験結果を、表１に示す。これに対して、ウレタン系二液硬化型のプライマー３を使用しなかったすべり止め部材を、前記と同様の方法で生地に装着した試料（大きさ：１８ｍｍ×４５ｍｍ、以下、「従来品の試料」と略称する）を用意し、従来品の試料に対する「剥離強さ」及び「耐ドライクリーニング性」の試験結果を、表２に示す。

「剥離強さ」試験は、同じ大きさ（１８ｍｍ×４５ｍｍ）の「本発明による試料」と「従来品の試料」とを用意し、強度試験方法：ＪＩＳＬ１０８６（２００８年）に準じて行った。ＪＩＳ規格に準ずるこの強度試験方法は、各試料の一部であるすべり止め部材をあらかじめ端から５ｍｍだけ生地から剥がしておき、はがされた各部分（掴み間５ｍｍ×全巾）を「定速伸張型引っ張り試験機」で摘んで、均一の引張速度１０ｃｍ／ｍｉｎを掛けて剥がして行く操作を５回行い、そのデータを集計する（平均値を得る）試験方法である。

また、「耐ドライクリーニング性」の試験は、同じ大きさ（１８ｍｍ×４５ｍｍ）の「本発明による試料」と「従来品の試料」とを用意し、ドライクリーニング試験方法：ＪＩＳＬ０８６０（２００８年）Ｂ−１法（石油系ドライソルベント）に準じて行った。ＪＩＳ規格に準ずるこのドライクリーニング試験方法は、試験瓶に工業用ガソリン５号試験液１００ｍｌとステンレス鋼球２０個を入れ、試験液を３０±２℃に調整した後前記各試料を入れて密封し、試験機に取り付けて３０分運転し、各試料の商業ドライクリーニング（石油系ドライソルベント）に対する「変退色」及び「形状変化」の程度を外観判定するものである。この場合において、試料を乾燥させるに当っては、タンブル乾燥方式、すなわち、試料を熱とともに回転（一部ゆりかご動作）させながら乾燥する方式の下に行った。

表１と表２とを対比すれば明らかなように、「本発明による試料」の場合には、５回の「剥離強さ」試験において、いずれも、「剥離困難のために測定不能」という試験結果であった。
これに対して、「従来品の試料」の場合には、５回の「剥離強さ」試験において、最大強力が３５５０、１７６８、１５５０、１５１４、１０８６（いずれも、単位：ｃＮ）で、平均値は１８９４（ｃＮ）であった。
この試験結果からも明らかなように、本発明による試料、換言すると、本発明により製造されたすべり止め部材は、「剥離強さ」試験で剥離しないことが実証された。

また、両表を対比すれば明らかなように、「耐ドライクリーニング性」の試験では、「変退色（級）」については、ともに「４−５」で両者同等であったが、「形状変化」については、「本発明による試料」の場合には、「変化が認められなかった」のに対し、「従来品の試料」の場合には、「剥離発生」が認められ、「耐ドライクリーニング性」試験で大きな差異が認められた。この試験結果からも明らかなように、本発明による試料、換言すると、本発明により製造されたすべり止め部材は、「耐ドライクリーニング性」試験でも剥離しないことが実証された。

また、本発明によるすべり止め部材の製造方法によれば、特許第３４１７８３６号などに使用されている添片と称する基材などを一切使用しないから、従来の場合に比べてすべり止め部材を飛躍的に薄く製造することができるから、利用者には違和感なく使用してもらうことができる。

プライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着するに当って、ローラその他の押圧部材により上下方向から押圧するのが望ましい。この製造方法によれば、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４との間に介在している溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３と熱接着性樹脂フィルム４の熱接着加工の加熱時に、２つの層を前記押圧部材により強い力で、しかも、均等に押圧することができるので、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とがより密着し、両層をより強固に接着することができる。また、プライマー３と熱接着性樹脂フィルム４の間にできた気泡をローラその他の押圧部材で押圧することで、気泡を取り除くことができるので、見た目の美しさも増す。なお、前記熱接着加工時における押圧部材によるプレス時間と温度は、１１０℃×１０ｓｅｃ程度が好ましい。

また、本発明のすべり止め部材は、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１の一面に燃焼化学気相蒸着加工２の層を、また、この層の表面にウレタン系二液硬化型のプライマー３層を有し、このプライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４層を有することを特徴とするものである。このすべり止め部材によれば、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とが強固に接着されているので、このすべり止め部材Ａをズボン又はスカートの腰の裏側やこの部分に装着する腰裏Ｂに取り付けることにより、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材が剥離しない。また、本発明のすべり止め部材は特許第３４１７８３６号などに使用されている添片と称する基材などを一切使用しないから、従来の場合に比べてすべり止め部材を飛躍的に薄くすることができ、その結果、利用者には違和感なく使用してもらうことができる。

すべり止め部材がシート状であり、このシート状の部材Ａ’を抜型、押型あるいはその他の機器により所定の大きさ、厚さに加工することを特徴とする、すべり止め部材の製造方法である。この製造方法によれば、シート状のものから比較的小さい単体のすべり止め部材Ａを極めて簡単かつ能率良く製造することができる。

一方、本発明による腰裏Ｂは、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１の一面に燃焼化学気相蒸着加工２の層を、また、この層の表面にウレタン系二液硬化型のプライマー３層を有し、このプライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４層を有するすべり止め部材Ａが、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付ける帯体５に装着されていることを特徴とするものである。この腰裏Ｂをズボン又はスカートの腰の裏側に取り付けた場合には、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材が剥離しない。

請求項１記載の製造方法によれば、ウレタン系二液硬化型のプライマーを塗布しないもの（ウレタン系二液硬化型でない他のプライマーを塗布したものなど）に比べて、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材の接着性（接着強度）が大幅に向上するので、このすべり止め部材Ａをズボン又はスカートの腰の裏側やこの部分に装着する腰裏Ｂに取り付けることにより、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材が剥離しない。また、請求項１記載の製造方法によれば、特許第３４１７８３６号などに使用されている添片と称する基材などを一切使用しないから、従来の場合に比べてすべり止め部材を飛躍的に薄く製造することができ、利用者に違和感なく使用してもらうことができる。

請求項２記載の製造方法によれば、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４との間に介在している溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３と熱接着性樹脂フィルム４の熱接着加工の加熱時に、２つの層を押圧部材により強い力で、しかも、均等に押圧することができるので、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とがより密着し、両層をより強固に接着することができる。また、プライマー３と熱接着性樹脂フィルム４の間にできた気泡をローラその他の押圧部材で押圧することで、気泡を取り除くことができるので、見た目の美しさも増す。

請求項３記載のすべり止め部材によれば、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とが強固に接着されているので、このすべり止め部材Ａをズボン又はスカートの腰の裏側やこの部分に装着する腰裏Ｂに取り付けることにより、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材Ａが剥離しない。また、請求項３記載のすべり止め部材によれば、特許第３４１７８３６号などに使用されている添片と称する基材などを一切使用しないから、従来の場合に比べてすべり止め部材を飛躍的に薄くすることができ、その結果、利用者には違和感なく使用してもらうことができる。

請求項４記載の製造方法によれば、シート状のものから比較的小さい単体のすべり止め部材Ａを極めて簡単かつ能率良く製造することができる。

請求項５記載の腰裏Ｂをズボン又はスカートの腰の裏側に取り付けた場合には、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材が剥離しない。

本発明によるすべり止め部材の製造方法の一例を工程順に示す拡大概略図である。本発明によるすべり止め部材の製造方法により製造されたすべり止め部材の層構造の一例を示す拡大断面図である。本発明によるすべり止め部材の製造方法により製造されたすべり止め部材を腰裏に適用した場合の一例を示す拡大正面図で、その一部のみを示す。図３に示す腰裏を、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付けた状態を示す拡大断面図である。本発明によるすべり止め部材の製造方法により製造されたすべり止め部材を、ズボン又はスカートの腰の裏側に相当する部分に直接取り付けた状態を示す拡大断面図である。

本発明によるシリコーン樹脂からなるすべり止め部材の製造方法とその方法により製造されたすべり止め部材及びこのすべり止め部材を取り付けた腰裏のそれぞれの実施形態について、図１〜図５を参照しながら詳細に説明する。

本発明によるシリコーン樹脂からなるすべり止め部材の層構造の一例を、図２に拡大して示す。この層構造を有するすべり止め部材は、まず、図１(a)に示すように、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１を成形し、このすべり止め部材１の一面に全体にわたって図１(b)に示すように燃焼化学気相蒸着加工２を施し、この加工２を施した後のすべり止め部材１の表面に図１(c)で示すように溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３を塗布し、このプライマー３を乾燥させるとともに、このプライマー３の層上に図１(d)で示すように熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着することで容易に製造できる。

上述したように、すべり止め部材１の一面に燃焼化学気相蒸着加工２を施してある。図１(b)〜(d)及び図２では、燃焼化学気相蒸着加工２を太い実線で示してある。そして、この加工２を施した後のすべり止め部材１の表面全体にわたって図１(c)で示すように溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３を塗布し、このプライマー３を乾燥させるとともに、このプライマー３の層上に図１(d)で示すように熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により全体にわたって貼着する。

溶融状態で塗布した前記プライマー３を乾燥させるとともに、このプライマー３の層上に熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着すると、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とが強固に接着される。その接着強度の試験結果、すなわち、「剥離強さ」及び「耐ドライクリーニング性」の試験については、すでに説明したので、さらなる説明は省略するが、要するに、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とが強固に接着されていることが実証された。その理由として考えられるのは、ウレタン系二液硬化型のプライマー３の乾燥による硬化塗膜が基材であるすべり止め部材１に対して優れた密着性を与えるとともに、硬化塗膜が優れた柔軟性を有するからであると思われる。

このように、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とが強固に接着されているから、このすべり止め部材Ａをズボン又はスカートの腰の裏側やこの部分に装着する腰裏Ｂに取り付けることにより、極めて良好なすべり止め効果を長く維持できる。しかも、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材Ａが剥離しない。

図面ではすべり止め部材Ａが拡大して示されているが、通常の大きさを例えば縦十数ｍｍ、横四十数ｍｍ程度とするのが最適である。また、すべり止め部材Ａの全体の厚さを、１ｍｍ程度とするのが最適である。ただし、すべり止め部材Ａをズボン又はスカートの腰の裏側やこの部分に装着する腰裏Ｂに取り付けるに当って、すべり止め部材Ａの大きさを多少大きくし、あるいは、逆に多少小さくすることは自由であり、また、すべり止め部材Ａの全体の厚さを多少厚くし、あるいは、逆に多少薄くすることも自由である。

ここでは、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１のすべり止め面（図１(d)及び図２の下面、ならびに、図４、図５の右側面）を平坦とした場合を例示する。すべり止め面を単に平坦にしても、シリコーン樹脂が粘着性を有するため、一定のすべり止め効果を発揮することができるが、前記すべり止め面に凹凸加工を施せば、すべり止め効果がより増大する。

シリコーンとは、有機酸を有するケイ素がシロキサン結合（Ｓｉ−Ｏ−Ｓｉ）により連なってできたポリマーで、人工的に合成することができる。シリコーンの性状はゴム、オイル、レジンの３つの基本形に分類されるが、ここでは、いわゆるゴム（液状ゴム）に分類される形態で用いられる。特に、この液状シリコーンゴムは容易に弾性体とすることができるのみならず、施工や加工が容易であるところから、様々な分野で利用されている。ここでは、この液状シリコーンゴムを腰裏用すべり止め部材の素材として利用し、溶融状態の液状シリコーンゴムから、上述したように、すべり止め部材Ａを極めて容易に製造することができる。

ウレタン系二液硬化型のプライマー３は、主剤と硬化剤とが反応することでウレタン樹脂を合成することによって得られるものであって、主剤の主成分としてポリオール化合物を、また、硬化剤の主成分としてイソシアネート化合物を用いるのが最も一般的な合成方法である。このプライマー３の具体例として、上では、セイコーアドバンス社製のＲＵＸ塗料、帝国インキ社製のＳＰ−３１００ＡＵクリアー、十条ケミカル社製のＡＰインキ、ＡＰＧインキなどを挙げたが、これらのみに限定されるものではない。ポリウレタン樹脂、イソホロン、メチルエチルケトンを少なくとも含有しているウレタン系二液硬化型のプライマーであれば、同等の効果を有するものと思われる。

プライマー３の層上に全体にわたって熱接着性樹脂フィルム４を熱接着加工により貼着するに当って、ここでは、ローラその他の押圧部材により上下方向から押圧した。このようにすると、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４との間に介在している溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー３と熱接着性樹脂フィルム４の熱接着加工の加熱時に、２つの層を前記押圧部材により強い力で、しかも、均等に押圧することができるので、２つの層内に気泡（空気）が入ることがなく、その結果、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１と熱接着性樹脂フィルム４とをより強固に接着することができる。

なお、熱接着性樹脂フィルム４には、一般的に知られているＥＶＡ系（エチレン酢酸ビニル共重合体）、ＰＯ（ポリオレフィン）系、ＰＡ（ポリアミド）系、ＳＲ（合成ゴム）系、ＡＣＲ（アクリル）系、ＰＵＲ（ポリウレタン・湿気硬化型）系その他のものを使用することができる。

図２に示す層構造のすべり止め部材は、符号Ａ’で示すように、シート状の形で製造し、このシート状の部材Ａ’を抜型、押型あるいはその他の機器により所定の大きさ、厚さに加工すると良い。この製造方法によれば、シート状のものから比較的小さい単体のすべり止め部材Ａを極めて簡単かつ能率良く製造することができる。なお、熱接着性樹脂フィルム４の外面に、離型紙６を貼着しておけば、必要に応じて離型紙６を剥がすことで、後述するようにすべり止め部材Ａを帯体５に装着するときに便利である。

前記熱接着性樹脂フィルム４は、アイロン、プレス機その他の器具ですべり止め部材Ａを所定温度に加熱したとき溶融するものであって、その溶融温度を例えば１２０〜１５０℃とすることができる。アイロン、プレス機その他の器具ですべり止め部材Ａを１２０〜１５０℃に加熱すると、熱接着性樹脂フィルム４が溶融せしめられて熱接着層になり、例えば、図３に示すように、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付ける帯体５に、すべり止め部材Ａを極めて簡単に接着することができる。この帯状物を腰裏といい、図３、図４において符号Ｂで示されている。

前記腰裏Ｂは、例えば、図４に示すように、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付けられる。図４では、ズボン又はスカートの腰の表地７の裏側であって腰の裏側に相当する部分に縫着８により腰裏Ｂが取り付けられている。なお、図４において、符号９は芯地、符号１０はバイアスその他の生地である。
前記すべり止め部材Ａを、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付ける帯体５に装着することにより、１つの腰裏Ｂを作製することができ、図４に示すように、この腰裏Ｂをズボン又はスカートの腰の裏側に取り付けた場合には、極めて良好なすべり止め効果が得られる。また、図５に示すように、ズボン又はスカートの腰の表地７の裏側であって腰の裏側に相当する部分に直接取り付けることもでき、この場合にも極めて良好なすべり止め効果が得られる。

また、本すべり止め部材の製造方法によれば、特許第３４１７８３６号などに使用されている添片と称する基材などを一切使用しないから、従来の場合に比べてすべり止め部材を飛躍的に薄く製造することができ、利用者に違和感なく使用してもらうことができる。
さらに、本発明によるすべり止め部材によれば、特許第３４１７８３６号などに使用されている添片と称する基材などを一切使用しないから、従来の場合に比べてすべり止め部材を飛躍的に薄くすることができ、その結果、利用者には違和感なく使用してもらうことができる。

シリコーン樹脂からなる前記すべり止め部材１及び前記熱接着性樹脂フィルム４をともに透明色とすれば、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付ける帯体５に、あるいは、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付けられている腰裏Ｂに、さらに、ズボン又はスカートの腰の表地６の裏側であって腰の裏側に相当する部分に直接取り付けた場合においても、すべり止め部材Ａが非常に目立ちにくいので、擬態性の面でも優れている。

なお、従来のゴムあるいはビニール製のすべり止め部材では通気性がないから、これに蒸気や熱を加えてズボン又はスカートの腰の裏側などに接合しようとしても完全に接合させることはむつかしく、周囲を縫い付ける等の補助作業が必要であるが、本発明により製造されたすべり止め部材および本発明によるすべり止め部材を用いれば、シリコーン樹脂からなるすべり止め部材１側から熱を加えるだけで、熱接着性樹脂フィルム４が溶融してズボン又はスカートの腰の裏側などに容易に接合することができるのみならず、その接合状態は極めて強固であり、水洗いやドライクリーニングしてもすべり止め部材Ａが剥離しない。

１…すべり止め部材、２…燃焼化学気相蒸着加工、３…プライマー、４…熱接着性樹脂フィルム、５…帯体、Ａ…すべり止め部材、Ｂ…腰裏。

Claims

シリコーン樹脂からなるすべり止め部材（１）の一面に燃焼化学気相蒸着加工を施し、この加工を施した後のすべり止め部材（１）の表面に溶融状態のウレタン系二液硬化型のプライマー（３）を塗布し、このプライマー（３）を乾燥させるとともに、このプライマー（３）の層上に熱接着性樹脂フィルム（４）を熱接着加工により貼着することを特徴とするシリコーン樹脂からなるすべり止め部材の製造方法。
プライマー（３）の層上に熱接着性樹脂フィルム（４）を熱接着加工により貼着するに当って、ローラその他の押圧部材により上下方向から押圧することを特徴とする請求項１記載のシリコーン樹脂からなるすべり止め部材の製造方法。
シリコーン樹脂からなるすべり止め部材（１）の一面に燃焼化学気相蒸着加工（２）の層を、また、この層の表面にウレタン系二液硬化型のプライマー（３）層を有し、このプライマー（３）の層上に熱接着性樹脂フィルム（４）層を有することを特徴とするシリコーン樹脂からなるすべり止め部材。
すべり止め部材がシート状であり、このシート状の部材を抜型、押型あるいはその他の機器により所定の大きさ、厚さに加工することを特徴とする請求項３記載のすべり止め部材の製造方法。
シリコーン樹脂からなるすべり止め部材（１）の一面に燃焼化学気相蒸着加工（２）の層を、また、この層の表面にウレタン系二液硬化型のプライマー（３）層を有し、このプライマー（３）の層上に熱接着性樹脂フィルム（４）層を有するすべり止め部材（Ａ）が、ズボン又はスカートの腰の裏側に取り付ける帯体（５）に装着されていることを特徴とする腰裏。