以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る回転式計量装置の概略構成を示す平面図であり、図2は、図1の回転台2に対する計量器3の取付け状態を示す図である。この実施形態では、回転式計量装置として、重量選別機に適用して説明する。
この重量選別機1は、回転中心O回りに矢符A方向へ回転する回転台2を備え、この回転台2の周囲には、回転台2と一体に回転する複数、この例では16台の計量器3が設けられており、回転台2上には、制御ユニット8が設けられている。各計量器3は、被計量物13が載置される載台7と、載台7の荷重を検出するロードセル等からなる荷重センサ5とを備えている。
魚等の被計量物13は、供給装置としての供給コンベヤ4から計量器3に落下供給される。この供給コンベヤ4は、個別に被計量物13が載置される載置領域が桟等によって区切られており、矢符Bで示される方向へ被計量物13を搬送する。回転する計量器3の1台と供給コンベヤ4の載置領域の1個が同期して動作し、個々の載置領域に載置された1個の被計量物13が、供給コンベヤ4の搬送終端の下方位置に回転移動してきた各計量器3へ順次供給される。
図1に示す物品供給範囲において、供給コンベヤ4から計量器3に供給された被計量物13は、重量計量範囲内にてその重量が測定され、測定された重量測定値に応じて予め設定された境界重量値によって、重量ランクが判別され、円周方向に沿う(1)〜(8)の排出範囲の重量ランクに応じて定めた排出位置にて、載台7のゲートが開いて計量器3から被計量物13が排出される。以上の構成は、上記特許文献2等の従来例と基本的に同様である。
回転式計量装置では、回転台2に取付けられた計量器3は、被計量物13の供給によって計量器3自身に与えられる固有振動の他に、計量器3が設置される回転台2から与えられる振動を考慮しなければならない。
計量器3の基礎である回転台2に作用する基礎振動の振幅が大きければ、荷重センサ5は、大きい衝撃荷重が直接計量器3の載台7へ加えられた場合と略同じ状況になる。
回転台2は、回転に伴って回転支持部との間に発生する振動力によって或る振幅にて上下方向に揺動しながら回転するので、1回転の周期に応じて発生する振動は、回転台2の支持機構によって回転台2に作用し、回転台2に生じた振動が基礎振動として回転台2に取付けられた計量器3に伝達される。
上述の図2に示すように、この実施形態の回転式計量装置は、回転軸6に回転台2が取付けられ、回転台2の周囲に複数の計量器3の載台7が、荷重センサ5を介して取付けられている。
回転台2も計量器3と同様に質量・バネ系によって成り、固有振動数を有する。
一般に、質量・バネ系の持つ固有振動数ωは、質量をM、ばね定数をKとすると、
ω=2πf=(K/M)1/2 (rad/sec) ……(1)
で表される。
回転式計量装置では、図3に示すように回転台2の支持部に生じる振動が、計量器3の荷重センサ5から出力される荷重信号に現れるまでに、回転台2の質量・バネ系と、計量器3の質量・バネ系との2つの質量・バネ系を伝達される。
固有振動数ωm、減衰比ζmである回転台2が設置された基礎に、振幅Y、周波数ωの振動が作用すると、回転台2の変位(振幅)伝達率G1は、
と表される。同様に固有振動数ωn、減衰比ζnである計量器3が設置された基礎に、振幅X、周波数ωの振動が作用すると、計量器3の変位(振幅)伝達率G2は、
と表される。
したがって、回転台2の基礎に作用する振動信号の振幅Yと、計量器3の出力荷重信号の振幅Oとの間の関係は、
O/Y=G1・G2 ……(4)
で表される。
図4は、上記(2)式、(3)式に基づいて作成した振幅の伝達倍率を示す図である。
通常、計量器3の固有振動数ωnは、被計量物の載台7への供給に対する荷重信号の応答特性を高めるために30Hz以上になるように設計される。
一方、回転台2の方は、多くの計量器3が搭載されるので、質量Mは大きい値になるが、回転台2の剛性、すなわち、ばね定数に対応するものは、計量器3における質量に対するばね定数の関係に比べて小さくなり、回転台2の固有振動数ωmは、大体計量器3の固有振動数ωnの1/3程度に設計される場合が多い。この図4では、計量台2の固有振動数ωmの3倍の固有振動数ωnである計量器3の振幅の伝達倍率を併せて示しており、また、図4では、減衰比がζm=ζn=0.05の場合を示している。
この図4に示されるように、計量器3の固有振動数ωn付近の周波数を有する振動信号の振幅は、回転台2の伝達特性による減衰作用で約1/5程度になる。
回転式計量装置では、回転台2に周波数ωの基礎振動である振動ノイズ信号が作用すると、図4に示されるように増幅されて出力荷重信号に現れることになる。
回転式計量装置の運転可能な全ての回転速度域において、前記基礎振動が、計量器3に損傷を与えるようなレベルまで増幅されるようなことがあってはならない。
また、計量器3が損傷する程でなくても、計量に使用する回転速度においては、基礎振動の振幅が増幅され、重量測定値のばらつきが増加し、精確な計量が行えないような回転速度での運転が可能であってはならない。
そこで、この実施形態では、回転台2の回転に伴う振動ノイズ信号の大きさを評価する評価指標を定め、その評価指標が、予め定めた評価基準を超えるか否かに基づいて、運転に不適切な運転速度帯域を決定する。更に、決定された不適切な運転速度帯域では、その運転を禁止できるようにしている。
評価指標として、この実施形態では、例えば、計量器3の荷重センサ5から出力される荷重信号の振幅、及び、前記荷重信号から取得される重量測定値のばらつきを用いている。
すなわち、計量器3の荷重センサ5から出力される荷重信号の振幅が、予め定めた評価基準としての許容振幅値を超える運転速度帯域、及び、前記荷重信号から取得される重量測定値のばらつきが、予め定めた評価基準としての許容ばらつきを超える運転速度帯域を、不適切な運転速度帯域と決定し、その運転速度帯域での運転を禁止できるようにしている。
具体的には、後述のように、回転台2の回転速度を変化させたときの、荷重センサ5から出力される荷重信号の振幅を測定し、予め定めた許容振幅値と比較し、また、前記荷重信号から重量値測定用フィルタを介して取得する重量測定値のばらつきを演算し、予め定めた許容ばらつきと比較し、各比較結果に基づいて、回転台2の回転速度、すなわち、運転速度の不適切な帯域を決定し、その不適切な帯域を、運転速度の禁止帯域として設定できようにしている。なお、この運転速度の禁止帯域の設定は、基本的に、回転式計量装置を製造するメーカ側において行われる。
この実施形態の回転式計量装置では、運転可能な最大の回転速度が、Pmax(rpm)、例えば20(rpm)に設計されており、1(rpm)単位で回転速度の設定が可能である。運転可能な回転速度範囲の中で、Pmin(rpm)〜Pmax(rpm)、例えば10(rpm)〜20(rpm)の回転速度範囲が計量運転に使用される計量運転速度域であるとする。
回転台2の支持部から与えられる基礎振動としての入力振動ノイズ信号は、回転速度0から立ち上がり、回転速度の増加によって回転台2と計量器3の振動信号の伝達特性に応じて周波数の増加と共に振幅が増加する。
次に、本実施形態の構成について更に詳細に説明する。
図5は、この実施形態の回転式計量装置としての重量選別機1の制御構成の要部を示すブロック図である。
各計量器3の荷重センサ5から出力されるアナログ荷重信号は、回転台2上に設置された制御ユニット8内の各測定回路9にそれぞれ入力される。各測定回路9は、アナログ荷重信号に対して、増幅、A/D変換等の処理を行なってデジタル荷重信号とし、計量器3の番号を示すコードと共に、各シリアルコントローラ10によってシリアルラインL1を介して本体に設置される操作ユニット11内のシリアルコントローラ12へ連続的に送信する。シリアルラインL1は、荷重信号のみならず、命令コード等も送受信される双方向通信方式のデータバスラインである。
稼働時の計量運転では、制御ユニット8の各シリアルコントローラ10から送られてきた各荷重センサ5の荷重信号が、操作ユニット11の演算制御部14において、計量器3の載台7上にある被計量物13の重量に変換され、予め設定された境界重量値に基づいて、重量ランクが判別される。
通常、操作ユニット11の入力設定部15から運転速度が設定されると、設定された運転速度に応じた回転駆動信号がモータ駆動制御部16に与えられ、モータ駆動制御部16は、設定された運転速度となるようにモータ17の駆動を制御して回転台2を回転させる。
制御ユニット8の各測定回路9は、図6に代表的に示すように、アナログフィルタを兼用した増幅回路20と、この増幅回路20からのアナログ荷重信号をデジタル荷重信号に変換するA/D変換回路21と、演算回路23とを備えており、演算回路23は、重量値測定用フィルタ22と、A/D変換回路21の出力信号Wa及び重量値測定用フィルタ22の出力信号Wbが与えられる上述のシリアルコントローラ10を備えている。
増幅回路20は、機械系の振動ノイズ信号の周波数、すなわち、床振動や計量器3、回転台2の固有振動数とは十分大きい方向に離れた、例えば100Hz以上の周波数の信号(電気的な高周波ノイズ信号)を減衰させるアナログフィルタを兼用している。
A/D変換回路21では、機械系の振動ノイズ信号の周期に比べ十分短いサンプリング間隔、例えば、1msecのサンプリング間隔でA/D変換を行う。
この実施形態では、上述のように、計量器3の荷重センサ5から出力される出力荷重信号の振幅(評価指標)が、許容振幅値(評価基準)を超える運転速度帯域を、不適切な運転速度帯域と決定し、その不適切な運転速度帯域では、その運転を禁止する。また、重量測定値のばらつき(評価指標)が、許容ばらつき(評価基準)を越える運転速度帯域を、不適切な運転速度帯域と決定し、その不適切な運転速度帯域では、その運転を禁止する。
次に、評価基準としての許容振幅値及び許容ばらつきについて説明する。
この実施形態では、振動ノイズ信号によって計量器3が損傷を受けないようにするための、出力荷重信号の振幅値を、評価基準である許容振幅値Assとして、例えば、次のようにして決定する。
すなわち、回転台2が回転していない静止状態にあるときに、計量対象の平均的な重量のサンプル物品を、稼働運転時と同じように、供給コンベヤ4から計量器3の載台7に落下供給し、荷重信号の最大振幅値Wamaxを測定し、この最大振幅値Wamaxを許容振幅値Aasとする、あるいは、求めた最大振幅値Wamaxに1.0前後の係数kaを掛けるなどしてもよい。
計量運転中には、供給コンベヤ4から計量器3の載台7へ被計量物が落下供給されることによって、荷重センサ5や載台7に大きい振動が加えられる。本回転式計量装置において、他の要因でこれ以上に大きい振動が計量器3へ加えられることはなく、被計量物を落下供給した際の振動が、通常考えられる、計量器3が繰り返し受ける最大の振動である。
そこで、この実施形態では、振動の許容振幅値Aasを、被計量物が計量器3の載台7へ落下供給されたときの最大の振動振幅値Wamaxを用いて規定する。
なお、この許容振幅値Aasの決定方法は、一例であり、他の方法で許容振幅値を決定してもよい。
この実施形態では、許容振幅値Aasの取得は、図5のいずれか1台の計量器3を特定し、その計量器3に対応する測定回路9の図6に示される演算回路23で次のようにして行われる。
予め、図5に示される入力設定部15を操作して演算制御部14に対して、サンプル物品が計量器3の載台7へ供給されたタイミングを検知するために、荷重信号に対して零点重量値よりやや大きい重量値である閾値Wtを設定する。また、最大振幅値Wamaxを求めるための荷重信号のA/Dサンプリング値を継続的に読み取る読取り期間Ta、例えばTa=2secの値を設定すると共に、上記係数kaを設定する。設定された閾値Wt、読取り期間Ta、係数kaは、測定回路9へ送られる。
次に、入力設定部15の許容振幅値記憶操作スイッチを操作すると、許容振幅値記憶操作指令が測定回路9へ伝達される。測定回路9は、許容振幅値記憶操作モードとなる。
ここで、回転台2が回転していない静止状態において、供給コンベヤ4を駆動させ、計量対象の平均的な既知重量Wsのサンプル物品の1個を、1台の計量器3の載台7に供給する。この計量器3に対応する図6に示されるA/D変換回路21によって、荷重信号をA/D変換したA/Dサンプリング値である出力信号Waが、図7に示されるように閾値Wtを超えた時点から読取り期間Taが経過するまでの期間で最大となる最大振幅値Wamaxを求める。この最大振幅値Wamaxは、図7に示されるように、既知重量Wsからの最大の変位量である。
この実施形態では、求めた最大振幅値Wamaxを用いて次式によって評価基準となる許容振幅値Aasを算出する。
Aas=ka・Wamax
最大振幅値Wamaxと、係数kaの値(デフォルト値=1)と、許容振幅値Aasの値を表示部18へ表示させることができる。
また、上記の操作を複数回実施して平均値によって最大振幅値Wamaxを求め、許容振幅値Aasを算出してもよい。
次に、計量を行う計量運転の回転速度範囲Pmin≦Px≦Pmaxにおいては、精確な計量が行えるように、ノイズ信号によって生じる重量測定値のばらつきが、評価基準である許容ばらつきを超えないようする。
この許容ばらつきを求めるには、図6に示される重量値測定用フィルタ22の出力信号Wbから取得する従来と同様の重量測定値を用いる。
重量値測定用フィルタ22において、A/D変換回路21からの出力信号Waが入力される度に、フィルタリング処理が行われ、出力信号Wbが算出される。新しい出力信号Wbが算出される時間間隔は、A/D変換回路21からの出力信号Waが入力される時間間隔、つまり、A/D変換のサンプリング間隔であり、例えば1msecになっている。
許容ばらつきを求めるには、予め、図5に示される入力設定部15を操作して演算制御部14に対して、所定の安定待ち時間Tsと、後述の係数kbと、ばらつき求めるための重量測定値の個数nを設定する。設定された安定待ち時間Ts、係数kb、及び、個数nは、測定回路9へ送られる。閾値Wtは、上記の許容振幅値Aasの場合と兼用する。
次に、入力設定部15の許容ばらつき記憶操作スイッチを操作すると、許容ばらつき記憶操作指令が測定回路9へ伝達される。測定回路9は、許容ばらつき記憶操作モードとなる。
ここで、回転台2が回転していない静止状態において、供給コンベヤ4を駆動させ、例えば、計量対象の平均的な重量よりもやや大きい重量のサンプル物品を、1個だけ載置領域に載置し、供給コンベヤ4を駆動して或る1台の計量器3の載台7上に落下供給する。サンプル物品が供給された計量器3に対応する重量値測定用フィルタ22の出力信号Wbが、閾値Wtを超えてから安定待ち時間Tsだけ経過した時点の重量値測定用フィルタ22の出力信号Wbを重量測定値とする。
同じ操作をn回行い、n個の重量測定値を得ると、その標準偏差σbを算出し、この標準偏差σbを許容ばらつきσbsとする、あるいは、求めた標準偏差値σbに1.0前後の係数kbを掛けてもよい。本実施形態では、評価基準となる許容ばらつきσbsを、次式のように定める。
σbs=kb・σb
標準偏差σbと、係数kbの値(デフォルト値=1)と、許容ばらつきσbsの値を表示部18へ表示させることができる。
なお、許容振幅値Aas及び許容ばらつきσbsを決定する際に使用するサンプル物品としては、実際に計量対象とされる被計量物を用いることが好ましい。
次に、上述のようにして求めた許容振幅値Aas及び許容ばらつきσbsを用いた不適切な運転速度帯域の決定、及び、それに基づく運転速度禁止帯域の設定について説明する
運転に不適切な運転速度帯域の決定に際し、回転台2に発生する振動ノイズ信号の周波数が、回転台2の固有振動数とほぼ一致し、大きな振幅の共振振動を起こすことによって載台7の取付け部や載台7が損傷を受ける可能性があるので、不適切な運転速度帯域の決定に際しては、回転台2に搭載する荷重センサ5に対して、載台7の代わりに、載台7の重量と計量対象となる物品の平均的な重量との和の質量を持つ物品を取付けるのが好ましい。
この不適切な回転速度帯域の決定では、被計量物を供給することなく、すなわち、計量器3の載台7は空の状態で、回転速度1(rpm)〜Pmax(rpm)の全ての運転速度範囲において、各回転速度別に運転する。各回転速度において、図6に示されるA/D変換回路21から出力される荷重信号Waの最大振幅値と上述の許容振幅値Aasとを比較し、運転に不適切な回転速度帯域を決定する。計量器3の載台7には、被計量物が供給されない空の状態で回転させるので、最大振幅値は、零点荷重からの最大の変位量となる。
また、回転速度Pmin≦Px≦Pmaxの範囲においても運転速度毎に、荷重信号Waの最大振幅値と許容振幅値Aasとを比較し、不適切な回転速度帯域を定める。更に、回転速度Pmin≦Px≦Pmaxの範囲は、計量運転を行う回転速度帯域であるので、図6に示される重量値測定用フィルタ22の出力信号Wbから取得される重量測定値についてのばらつきσb<Px>と、許容ばらつきσbsとを比較することによって、不適切な回転速度帯域を定める。
最初に、入力設定部15を操作して、重量測定用の回転速度の最小値=Pminと最大値Pmaxとを設定し、更に、回転速度値Pxを設定したときに、回転台2が実際に回転速度Pxで回転するようになるまでの回転駆動系の応答待ち時間Tdを設定する。設定された最小値Pmin、最大値Pmax及び回転駆動系の応答待ち時間Tdは、測定回路9へ送られる。
また、図5の入力設定部15を操作して、図8に示す回転速度Pxに応じた最大振幅値Wa<Px>及び重量測定値のばらつきσb<Px>のテーブルに、回転速度Px毎に最大振幅値と重量測定値のばらつきとを登録するためのテーブル作成モードをセットする。
図8に示すように、計量運転を行う回転速度帯域であるPmin≦Px≦Pmaxでは、回転速度Px毎に、最大振幅値Wa<Px>及び重量測定値のばらつきσb<Px>を登録し、それ未満の回転速度帯域0<Px<Pminでは、回転速度Px毎に、最大振幅値Wa<Px>のみを登録する。
このテーブル作成モードにおいて、回転速度設定値=Px(rpm)の値が図5の入力設定部15より回転速度決定手段としての演算制御部14へ設定されると、設定された速度値Pxを測定回路9へ転送する。
図9のフローチャートに基づいて、その処理を説明する。先ず、テーブル作成モードであることを示すフラグFt´=1であるか否かを判断し(ステップS1)、フラグFt´=1でないときには、テーブル作成モードでないとして終了し、フラグFt´=1であるときには、テーブル作成モードであるとして、ステップS2に移る。
ステップS2では、演算制御部14から回転速度Pxが、測定回路9へ転送されたか否かを判断し、転送されていないときには、ステップS1に戻り、転送されているときには、転送された回転速度Pxを読み込む(ステップS3)。
次に、読み込んだ回転速度Pxが、0又はPmaxより大きいか否かを判断し(ステップS4)、回転速度Pxが、0又はPmaxより大きいときには、動作させないように、ステップS17に移る。ステップS4において、回転速度Pxが、0又はPmaxより大きくないときには、ステップS5に移り、A/D変換回路21から1msecの間隔で出力される出力信号Waの入力があったか否かを判断し、入力があったときには、回転駆動系の応答待ち時間Tdを計測するためのカウンタCaをインクリメントしてステップS7に移る(ステップS6)。ステップS7では、カウンタCaの計数値が、応答待ち時間Tdになったか否かを判断し、応答待ち時間Tdになったときには、ステップS8に移り、カウンタCaをリセットしてステップS9に移る。
A/D変換回路21では、精確に1msecのサンプリングの時間間隔でA/D変換が行われるので、上記ステップS5〜S8に示すように、A/D変換回路21からの出力信号Waが入力される回数をカウンタCaで計数し、出力信号Waの入力回数値をもって、回転駆動系の応答待ち時間Tdに代替している。
回転速度Pxへの駆動制御の処理は省略しているが、回転駆動系の応答待ち時間Tdが経過し、回転台2が速度Pxの回転速度に到達したステップS9では、A/D変換回路21からの出力信号Waの入力があるか否かを判断する。出力信号Waの入力があったときには、最大振幅値を算出する演算を実施する(ステップS10)。これは、最初に読み込んだ出力信号Waの値をメモリに記憶させ、次に読み込んだ出力信号Waと先に記憶した出力信号Waとの大小を比較し、次に読み込んだ出力信号Waの方が大きい場合は、先の出力信号Waと置き換えるようにすればよい。
次に、ステップS11では、上述の読取り期間Taを計測するためにカウンタNaをインクリメントし、カウンタNaの計数値が、読取り期間Taに対応する所定数になったか否かを判断し(ステップS12)、所定数になったときには、ステップS13に移り、所定数でないときには、ステップS9に戻る。
本例では、読取り期間Taの間に読み込んだ出力信号Waの中で最大振幅値Wa<Px>を求める。出力信号Waは、上記のように1msec毎に読み込まれるので、出力信号Waの読み込み個数Naの値でもって読取り期間Taを代替させている。
ステップS13では、カウンタNaをリセットし、ステップS14に移り、図8のテーブルの回転速度Pxの欄に、最大振幅値Wa<Px>をセットし、ステップS15に移る。
以上によって回転速度Pxにおける最大振幅値Wa<Px>が求まったので、 ステップS15では、回転速度Pxが、Pminよりも小さいか否かを判断し、小さいときには、計量運転の回転速度の範囲ではないので、最大振幅値Wa<Px>の値を、図5の演算制御部14へシリアルコントローラ10,12を介して転送させ(ステップS16)、新たな回転速度Pxの設定値の受付を承認する回転速度Pxデータ受付OK指令を、図5の演算制御部14へシリアルコントローラ10,12を介して転送させる(ステップS17)。
ステップS15において、回転速度Pxが、Pminよりも小さくない、すなわち、回転速度Pxが、Pmin≦Px≦Pmaxの計量運転の回転速度範囲の場合は、重量測定値のばらつきσb<Px>を求めて、図8のテーブルへ登録するために、図10の処理へ移行する。
すなわち、図10のステップS18では、重量測定値の個数nを計数するカウンタNbをリセットし、重量値測定用フィルタ22によって出力信号Wbが生成されたか否かを判断する(ステップS19)。すなわち、A/D変換回路21から出力された1msecの間隔で読み込まれる信号Waに応じて1msecの間隔で生成される出力信号Wbの生成があったか否かを判断する。
出力信号Wbの生成があったときには、その出力信号Wbを読み込み(ステップS20)、カウンタNbの値に基づくアドレスメモリに出力信号Wbの値を記憶させ(ステップS21)、ステップS22に移る。
ステップS22では、カウンタNbの計数値をイクリメントし、カウンタNbの計数値がnになったか否かを判断し(ステップS23)、nになっていないときには、ステップS24に移り、出力信号Wbの生成があったか否かを判断する。出力信号Wbの生成があったときには、カウンタCbをインクリメントし(ステップS25)、カウンタCbの計数値が、所定の時間時間Tfになったか否かを判断し(ステップS26)、カウンタCbの計数値が所定の時間間隔Tfになっていないときには、ステップS24に戻る、
ステップS26において、カウンタCbの計数値が所定の時間間隔Tfになったときには、カウンタCbをリセットし(ステップS27)、ステップS19に戻り、新しい出力信号Wbの生成があったときには、その出力信号Wbを読込んで記憶する(ステップS19,20,21)。
すなわち、所定の時間間隔Tfをおいて、重量測定値Wbを取得し、n個の重量測定値Wbを取得する。
このように所定の時間間隔Tfを設けて重量測定値Wbを取得する理由は、重量値測定用フィルタ22は、機械振動を平滑した出力信号Wbを得るため、所定の時間間隔の間にA/D変換回路21から出力される信号Waを使用して計算するが、出力信号Wb相互間でのばらつきの大きさを評価する上で、或る出力信号Wbと次の出力信号Wbとの間で、共通の信号Waを使用しないためである。例えば数百msec程度の時間間隔Tfを設け、相互の出力信号Wbの間で、異なる信号Waによって計算された出力信号Wbを取り込むためである。
なお、この所定の時間間隔Tfの計測は、出力信号Wbの生成されるタイミングである1msecを、カウンタCbによって計数することによって行っている。
ステップS23において、カウンタNbの計数値がnになったときには、現在の速度Pxにおける重量測定値Wbのばらつきを表す値として、n個の重量測定値の標準偏差σb<Px>を演算し(ステップS28)、最大振幅値Wa<Px>と標準偏差σb<Px>とを、図5の演算制御部14へ転送し(ステップS29)、図9のステップS17に移り、回転速度Pxデータの受付OK指令を、図5の演算制御部14へ転送する。
なお、最大振幅値Wa<Px>と標準偏差σb<Px>の転送は、これらの数値に加えて、これらのデータの種類を特定するコードと回転速度値Pxとを一体にセットにして転送する。
図5の演算制御部14では、図11において、テーブル作成モードであることを示すフラグFt=1であるか否かを判断し(ステップS40)、フラグFt=1でないときには、テーブル作成モードでないとして終了し、フラグFt=1であるときには、テーブル作成モードであるとしてステップS41に移る。
このステップS41では、測定回路9からテーブル用データ、すなわち、最大振幅値Wa<Px>、または、最大振幅値Wa<Px>及び重量測定値のばらつきσb<Px>を受信したか否かを判断し、受信していないときには、ステップS40に戻り、受信したときには、ステップS42に移る。
ステップS42では、受信したテーブル用データによって、図8のテーブルにおける回転速度Pxの欄の最大振幅値Wa<Px>及び重量測定値のばらつきσb<Px>を更新し、ステップS43に移る。
ステップS43では、図8のテーブルにおけるPxの最大振幅値Wa<Px>及び重量測定値のばらつきσb<Px>を、上述の許容振幅値Aas及び許容ばらつきσbsをそれぞれ比較し、図12のテーブルの回転速度Pxの欄の論理値AとBを更新させ、ステップS44に移る。なお、この図12では、回転速度Pxを、具体的な数値で示しており、運転可能な最大の回転速度Pmax=20(rpm)であり、計量運転速度範囲が、10(rpm)≦Px≦20(rpm)である。
図12のテーブルの回転速度Pxの欄の論理値A,Bについては、
Wa<Px> > Aas であれば、A=1
Wa<Px> ≦ Aas であれば、A=0
の値を登録する。
最大振幅値Wa<Px>が、許容振幅値Aasを超えると、計量器3に損傷が生じる可能性があるとして、運転に不適切な回転速度と決定し、その回転速度の設定を禁止する、すなわち、論理値A=1とする。
そして、
σb<Px> > σbs であれば、B=1
σb<Px> ≦ σbs であれば、B=0
の値を登録する。
重量測定値のばらつきσb<Px>が、許容ばらつきσbsを超えると、重量測定値のばらつきが大きく精確な計量が行えないとして、運転に不適切な回転速度と決定し、その回転速度の設定を禁止する、すなわち、論理値B=1とする。
次に、ステップS44では、図12のテーブルの回転速度Pxの欄の論理値A,Bの論理和Cを更新し、運転に不適切な回転速度帯域を決定し、設定禁止の速度帯域を設定して終了する。
Cは、論理和A+Bであり、C=1となった回転速度Pxは、許容振幅値Aas及び許容ばらつきσbsの少なくともいずれか一方の許容値を超えているので、運転に不適切な回転速度であって、運転を禁止する速度である。
同様にしてテーブル作成モードにおいて、Px=1〜Pmaxまで順番に1(rpm)毎に回転速度を設定してそれぞれの回転速度における最大振幅値 Wa<Px>と、重量測定値のばらつきσb<Px>とを求めてテーブルに登録させれば、図12に示すように、全ての回転速度範囲のいずれかの運転速度についての運転速度禁止帯域が、C=1の値で表される。
なお、図13(a),(b)は、図5の演算制御部14のテーブル作成モードのセット及びリセットの場合の各処理を示すフローチャートである。
図13(a)に示すように、入力設定部15のテーブル作成モードのセットキーがONされたか否かを判断し(ステップS50)、ONされないときには終了し、ONされたときには、ステップS51に移る。ステップS51では、テーブル作成モードにし、フラグFtを1にセットし、ステップS52に移り、テーブル作成モード指令を測定回路9へ転送して終了する。
また、図13(b)に示すように、入力設定部15のテーブル作成モードのリセットキーがONされたか否かを判断し(ステップS60)、ONされないときには終了し、ONされたときには、テーブル作成モードをリセットし、フラグFtを0にリセットし(ステップS61)、ステップS62に移る。ステップS62では、テーブル作成リセット指令を測定回路9へ転送して終了する。
また、図14(a),(b)は、上記図13(a),(b)に対応する測定回路9の処理を示すフローチャートである。
図14(a)に示すように、演算制御部14からテーブル作成モードの指令があったか否かを判断し(ステップS70)、指令がなかったときには終了し、指令があったときには、テーブル作成モードフラグFt´を1にセットして終了する(ステップS71)。
また、図14(b)に示すように、演算制御部14からテーブル作成モードのリセット指令があったか否かを判断し(ステップS80)、指令がなったときには、テーブル作成モードフラグFt´を0にリセットして終了する(ステップS81)。
また、図15(a),(b)は、図5の演算制御部14の運転速度禁止帯域の設定処理を示すフローチャートである。
図15(a)に示すように、回転速度値Pxの設定があったか否かを判断し(ステップS90)、設定がなかったときには終了し、設定があったときには、テーブル作成モードであるか否かを判断し(ステップS91)、速度設定値受付OKの状態であるか否かを判断する、具体的にはフラグFp=0であるか否かを判断し(ステップ92)、速度設定値受付OKの状態でないときには終了し、速度設定値受付OKの状態であるときには、ステップS93へ移る。
ステップS93では、設定された回転速度値Pxを測定回路9へ転送し、回転速度Pxの受付禁止フラグFpに1をセットして終了する(ステップS94)。
また、図15(b)に示すように、測定回路から回転速度Pxの設定値受付OK指令があるか否か判断し(ステップS100)、設定値受付OK指令がないときには、終了し、設定値受付OK指令があったときには、回転速度Pxの受付禁止フラグを0にリセットして終了する(ステップS101)。このようにして或る回転速度値Pxを入力すると、テーブルデータを得るまでは、次の速度値の受付を許可しない。
以上のようにしてメーカ側において、演算制御部14によって、図12に示される不適切な運転速度帯域が決定され、その運転速度帯域が、演算制御部14に、運転速度禁止帯域として設定される。ユーザ側では、運転速度禁止帯域の回転速度は、入力設定部15から設定できないようにしている。
ユーザ側において、稼動運転に際して、作業者が設定手段としての入力設定部15から運転速度禁止帯域の運転速度、すなわち、図12のテーブルのC欄の値が「1」である回転速度を設定しようとすると、運転速度を制限する制限手段としての演算制御部14は、表示部18に設定禁止帯域であって設定できない旨の表示を行い、設定できないようにする。また、作業者が入力設定部15から許容される運転速度、すなわち、図12のテーブルのC欄の値が「0」である回転速度を設定しようとすると、その設定を有効とし、モータ駆動制御部16を制御して、設定された回転速度に制御する。
あるいは、図12のテーブルにおけるC欄の値が「1」である回転速度を設定無効速度として、その値、本実施例であれば、7,8,9,10,11,12,17,18rpmの値を、表示部18へ表示させることによって作業者に設定できない旨を案内したり、反対に、設定有効速度として、1〜6と13〜15と19,20rpmを表示部18へ表示させることによって作業者に案内してもよい。
また、回転速度の設定が、直接の回転速度値でなく所定量の1ステップずつ徐々に増減させる方式であれば、速度増加設定の過程にあれば、設定が運転禁止帯域の下限値に到達すると、次の1ステップで運転禁止帯域の上限値までジャンプし、速度減少設定の過程にあれば、設定が運転禁止帯域の上限値に到達すると、次のステップで運転禁止帯域の下限値までジャンプさせ、運転速度禁止帯域の運転速度の設定をできないようにする。
(他の実施形態)
また、本発明の他の実施形態として、回転速度に応じた重量測定値のばらつきσbを、許容ばらつきσbsと共に、表示部18に表示出力するようにしてもよい。これによって、作業者は、回転速度に応じて、評価指標である重量測定値のばらつきσbが、評価基準である許容ばらつきσbsに対してどの程度の大きさになるかを把握できる、すなわち、計量運転速度帯域における振動ノイズ信号の計量器3への影響を認識することができ、適切な回転速度を選択することができる。更に、回転速度に応じた振幅値を、許容振幅値と共に、表示出力するようにしてもよい。
上述の実施形態では、重量測定値のばらつきとして、複数の重量測定値の標準偏差を用いたけれども、本発明の他の実施形態として、複数の重量測定値のレンジ(範囲)を用いてもよい。すなわち、予め上述の実施形態と同様にして複数の重量測定値を取得し、その最小値と最大値とに基づいても、許容レンジを決定し、不適切な回転速度帯域の決定では、上述の実施形態と同様に、各回転速度において、複数の重量測定値を取得し、その重量測定値のレンジが、許容レンジを超えるか否かによって、不適切な回転速度を決定すればよい。
上述の実施形態では、重量選別機1に適用して説明したけれども、本発明は、複数の計量器が回転体に設けられた他の回転式計量装置、例えば、計量器に載置される瓶等の風袋に被計量物が充填される重量式充填装置等にも適用できるものである。
上述の実施形態では、計量器回転時のA/D変換回路21の出力信号Waの振幅値を評価指標とし、評価基準である許容振幅値Aasと比較して不適切な回転速度を決定したけれども、本発明の他の実施形態として、計量器回転時の重量値測定用フィルタ22の出力信号Wbの振幅値を評価指標とすると共に、その評価基準を定め、計量器回転時の出力信号Wbの振幅に基づいて、回転速度を決定するようにしてもよい。
また、上記の出力信号Wbによる振幅を評価指標として使用し、回転速度範囲0<Px<10と、回転速度範囲10≦Px≦20とで、許容振幅値として、第1許容振幅値Aas1と、第2許容振幅値Aas2(Aas1>Aas2)との2つの振幅許容値をそれぞれ用いるようにしてもよい。