以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。 なお、図2は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ(人体検知手段)404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500を操作すると、洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
ノズル473の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水口474が設けられている。そして、ノズル473は、その先端部に設けられた吐水口474から水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。
より具体的に説明すると、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、図2に表したように、水道や貯水タンクなどの給水源10から供給された水をノズル473の吐水口474に導く流路20を有する。流路20の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水の供給を制御する。なお、流路20は、電磁弁431から下流側の2次側とする。
電磁弁431の下流には、入水温度センサ481が設けられている。入水温度センサ481は、さらに下流の熱交換器ユニット440に導かれる水の温度を検知する。温水ヒータ441は、供給される電力に応じて加熱量が変化し、電磁弁431を通過した水を加熱して所定温度の温水にするものであって、例えば、シーズヒータやセラミックヒータなどを採用できる。
熱交換器ユニット440の下流側には温水温度センサ482が設けられている。温水温度センサ482は、熱交換器ユニット440の温水ヒータ441によって加熱された温水の温度を検知する。なお、温水の温度を所定値とするため、温水ヒータ441に供給する電力の大きさの決定は、入水温度センサ481にて検知される水の温度と、温水温度センサ481にて検知される加熱された水の温度との情報を制御部405が取り込むことによって、フィードフォワード制御とフィードバック制御の組合せにて行われる。
温水温度センサ482の下流には、殺菌水を生成可能な電解槽ユニット(電解槽)450が設けられている。ノズル473や、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、電解槽ユニット450において生成された殺菌水により殺菌される。電解槽ユニット450については、後に詳述する。
電解槽ユニット450の下流には、圧力変調装置460が設けられている。この圧力変調装置460は、流路20内の水の流れに脈動を与え、ノズル473の吐水口474から吐水される水に脈動を与えることができる。但し、本発明においては、圧力変調装置460は、必ずしも設けられていなくともよい。
圧力変調装置460の下流には、水勢(流量)の調整を行う流量切替弁471と、ノズル473やノズル洗浄室(ノズル洗浄手段)478への給水の開閉や切替を行う流路切替弁472と、が設けられている。なお、流量切替弁471および流路切替弁472は、1つのユニットとして設けられていてもよい。続いて、流量切替弁471および流路切替弁472の下流には、ノズル473が設けられている。
ノズル473は、前述したように、水を噴射して便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄できる。これに対して、電解槽ユニット450において生成された殺菌水を流路切替弁472から便器800のボウル801の表面に吐水する殺菌水吐水ノズルが、ノズル473とは別体として設けられていてもよい。この場合には、図示しない殺菌水吐水ノズルは、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に設けられる。衛生洗浄装置100は、一般的には、便器800の上に設置され利用される。そのため、ボウル801の表面に殺菌水を吐水する殺菌水吐水ノズルが設けられている場合には、衛生洗浄装置100は、便器800のボウル801の表面に存在する菌を殺菌する装置としても有効に利用され得る。
また、ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。つまり、ノズルモータ476は、制御部405からの指令に基づいてノズル473を進退させることができる。
そして、制御部405は、電源回路401から電力を供給され、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ(人体検知手段)402や、便座200の前方にいる使用者を検知する人体検知センサ(人体検知手段)403や、便座200への使用者の着座を検知する着座検知センサ404や、操作部500などからの信号に基づいて、電磁弁431や、温水ヒータ441や、電解槽ユニット450や、流量切替弁471や流路切替弁472や、ノズルモータ476の動作を制御することができる。
着座検知センサ404は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ404は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ404としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
また、人体検知センサ403は、便器800の前方にいる使用者、すなわち便座200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ403は、トイレ室に入室して便座200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサ403としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
また、入室検知センサ402は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ402は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ402としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
図1に表したトイレ装置では、ケーシング400の上面に凹設部409が形成され、この凹設部409に一部が埋め込まれるように入室検知センサ402が設けられている。入室検知センサ402は、便蓋300が閉じた状態では、その基部付近に設けられた透過窓310を介して使用者の入室を検知する。そして、例えば、入室検知センサ402が使用者を検知すると、制御部405は、入室検知センサ402の検知結果に基づいて便蓋300を自動的に開くことができる。また、着座検知センサ404および人体検知センサ403は、ケーシング400の前方の中央部に設けられている。但し、着座検知センサ404、人体検知センサ403、および入室検知センサ402の設置形態は、これだけに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
また、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、ケーシング400の側面には、脱臭ユニットからの排気口407及び室内暖房ユニットからの排出口408が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
図3は、本実施形態のノズルユニットの具体例を例示する斜視模式図である。
本実施形態のノズルユニット470は、図3に表したように、基台としての取付台475と、取付台475に支持されたノズル473と、ノズル473を移動させるノズルモータ476と、を有する。ノズル473は、図3に表した矢印Aのように、ベルトなどの伝動部材477を介してノズルモータ476から伝達される駆動力により、取付台475に対して摺動自在に設けられている。すなわち、ノズル473は、ノズル473自身の軸方向(進退方向)に直進移動することができる。そして、ノズル473は、ケーシング400および取付台475から進退自在に移動できる。
また、本実施形態のノズルユニット470には、ノズル洗浄室478が設けられている。ノズル洗浄室478は、取付台475に対して固定され、その内部に設けられた吐水部479から殺菌水あるいは水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を殺菌あるいは洗浄することができる。すなわち、制御部405が電解槽ユニット450の一対の電極である第一電極454(図4参照)および第二電極455(図4参照)の間に電圧を印加することにより殺菌水を生成させる場合には、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される殺菌水により殺菌される。一方で、制御部405が電解槽ユニット450の第一電極454および第二電極455の間に電圧を印加しない場合には、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射される水により物理的に洗浄される。
より具体的には、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、ノズル473の吐水口474の部分はノズル洗浄室478の中にほぼ収容されている。そのため、ノズル洗浄室478は、その内部に設けられた吐水部479から殺菌水あるいは水を噴射することにより、収納された状態のノズル473の吐水口474の部分を殺菌あるいは洗浄することができる。また、ノズル洗浄室478は、ノズル473の進退時において吐水部479から水あるいは殺菌水を噴射することにより、吐水口474の部分だけではなく他の部分の外周表面を殺菌あるいは洗浄することができる。
また、本実施形態のノズル473は、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、ノズル473自身が有する吐水口474から殺菌水あるいは水を吐水することにより吐水口474の部分を殺菌あるいは洗浄することができる。さらに、ノズル473がケーシング400に収納された状態では、ノズル473の吐水口474の部分はノズル洗浄室478の中にほぼ収容されているため、ノズル473の吐水口474から吐水された殺菌水あるいは水は、ノズル洗浄室478の内壁により反射して吐水口474の部分にかかる。そのため、ノズル473の吐水口474の部分は、ノズル洗浄室478の内壁で反射した殺菌水あるいは水によっても殺菌あるいは洗浄される。
電解槽ユニット450は、図4に関して後述するように、制御部405からの電圧の印加によって、第一電極454と、第二電極455と、の間の空間(流路)を流れる水道水を電気分解できる。電解槽ユニット450において電気分解された水は、次亜塩素酸を含む液に変化する。
ここで、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、電解塩素やオゾンなどを含む溶液であってもよい。あるいは、電解槽ユニット450において生成される殺菌水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。これらの中でも、次亜塩素酸を含む溶液は、より強い殺菌力を有する。以下、電解槽ユニット450において生成される殺菌水が次亜塩素酸を含む溶液である場合を例に挙げて説明する。
次亜塩素酸は、殺菌成分として機能し、その次亜塩素酸を含む溶液すなわち殺菌水は、アンモニアなどによる汚れを効率的に除去あるいは分解したり、殺菌することができる。ここで、本願明細書において「殺菌水」とは、次亜塩素酸などの殺菌成分を水道水(単に「水」ともいう)よりも多く含む溶液をいうものとする。
ここで、電解槽ユニット450が次亜塩素酸を含む溶液すなわち殺菌水を生成するために水道水を電気分解すると、炭酸カルシウム(CaCO3)などのスケールが生成される。スケールは、例えば、水に溶けているカルシウムイオン(Ca2+)と、炭酸(H2CO3)から生ずる炭酸イオン(CO3 2−)と、が結合することにより生成される。スケールが生成され、電解槽ユニット450の次亜塩素酸の生成効率が低下するおそれがある。以下、このスケール付着について詳述する。
図4は、本実施形態の電解槽ユニットにおいて生成されるスケールを説明するための平面模式図である。
また、図5は、pHの変化に基づく炭酸イオンおよび炭酸カルシウムの溶解量の変化を表すグラフ図である。
電解槽ユニット450は、図4に表したように、その内部に第一電極454および第二電極455を有し、制御部405からの制御によって、第一電極454と、第二電極455との間に電圧を印加し、そこ(流路)を流れる水道水を電気分解できる。図4(A)には、第一電極454が陽極となり、第二電極455が陰極となるように電圧が印加された状態が示されている。この際、第二電極455では、式(1)に表した反応が生ずる。
H++e− → 1/2H2↑ ・・・(1)
そのため、第二電極455においては酸(H+)が消費され、第二電極455の近傍ではpHが上昇する。pHが上昇すると、図5に表したように、炭酸イオン(CO3 2−)の溶解量は上昇する。pHの上昇に伴い炭酸(H2CO3)が水素イオン(H+)を放出し炭酸イオン(CO3 2−)を生成し、式(2)に表した反応が生ずる。そして発生した炭酸イオン(CO3 2−)と水道水中に存在するカルシウムイオン(Ca2+)が結合し、式(3)の反応が生ずる。つまり、pHの上昇が、図5に表したように炭酸カルシウム(CaCO3:スケール)生成(溶解度低下による析出)を引き起こす。
H2CO3 → 2H++CO3 2− ・・・(2)
Ca2++CO3 2− → CaCO3 ・・・(3)
一方、第一電極454では、式(4)に表した反応が生ずる。また、水道水は、塩素イオン(Cl−)を含んでいる。この塩素イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl2)として含まれている。そのため、式(5)に表した反応が生ずる。
2OH− → 2e−+H2O+1/2O2↑ ・・・(4)
Cl− → e−+1/2Cl2 ・・・(5)
式(5)において発生した塩素は、気泡としては存在しにくく、ほとんどの塩素は水に溶解する。そのため、式(5)において発生した塩素については、式(6)に表した反応が生ずる。このようにして、塩素イオンを電気分解することにより次亜塩素酸(HClO)が生成される。その結果、電解槽ユニット450において電気分解された水は、次亜塩素酸を含む液に変化する。なお、第一電極454においてはアルカリ(OH−)が消費されるため、第一電極454の近傍ではpHが下降する。
Cl2+H2O → HClO+H++Cl− ・・・(6)
図4(A)のように電圧を印加すると、陰極として機能する第二電極455では、炭酸カルシウム(スケール)が付着する。第二電極455に炭酸カルシウムが付着してしまうと、抵抗が増大し、殺菌水の生成能力が低下してしまう。
なお、第二電極455に付着した炭酸カルシウムを剥離させ、殺菌水の生成能力を回復させる方法として、図4(A)に示す状態から図4(B)に示す状態へと第一電極454、第二電極455の間に印加する電圧を反転させる、いわゆるポールチェンジがある。すなわち、図4(B)に示す状態へとポールチェンジを行うことにより、陰極として機能していた第二電極455が陽極となり、陽極として機能していた第一電極454が陰極となる。このため、炭酸カルシウムが付着していた第二電極455において酸が生成され、この酸により炭酸カルシウムが溶解するため、第二電極455に付着していた炭酸カルシウムを剥離させることができる。
しかしながら、このポールチェンジを頻繁に行うと、第一電極454および第二電極455の寿命が著しく低下することがわかっている。
本発明者は、検討の結果、水中に存在するカルシウムイオンの濃度が高いほど電気分解に伴ってスケールが発生しやすいだけでなく、電気分解する水の温度が高いと、スケールが生成しやすいことを見出した。以下、この点について詳述する。
図6は、温度変化に基づく炭酸カルシウムの溶解量の変化を表す表である。
例えば制御部405が温水ヒータ441への電力供給を開始させることにより、熱交換器ユニット440内の水温が上昇すると、炭酸は水中に溶けにくくなり、二酸化酸素(CO2)として空気中に放出される。そうすると、温水ヒータ441の近傍では、pHが上昇する。そのため、図4および図5に関して前述したように、スケールが生成されやすくなる。また、水温が上昇すると、図6に表したように、炭酸カルシウムの溶解量は下降する。つまり、水温が上昇すると、炭酸カルシウムは、水には溶解しにくくなる。そのため、水温が上昇すると、スケールは、生成されやすくなり、また析出されやすくなる。
つまり、温水ヒータ441で加熱された、より高温の水が電解槽ユニット450に供給され、その水を電気分解すると、スケールは生成されやすくなり、また、析出されやすくなる。
このように、水の温度が上昇すると、電解槽ユニット450においてスケールが生成されやすくなる。そのため、スケールの生成の増加を抑え、次亜塩素酸の生成効率の低下を抑えるためには、電解槽ユニット450におけるスケールの生成の増加を抑える必要がある。
一般に、水中に存在するカルシウム、ナトリウム、マグネシム等の濃度が大きくなると、その水の電気伝導率が大きくなるという傾向がある。すなわち、水の電気伝導率が大きいほど、水中には多量のカルシウムが存在し、その水を電気分解した際にスケールが生成されやすい状態にあるといえる。
図7は、カルシウムイオン濃度に基づく水の電気伝導率の変化を表すグラフ図である。
図7は全国177か所の水道水をサンプリングし、電気伝導率計を用いて測定した電気伝導率とイオンクロマトグラフィーによって定量したカルシウムイオン濃度の実測値をプロットした図である。
このプロットより、水の電気伝導率と水中のカルシウムイオン濃度には正の相関があることが判る。例えば、水の電気伝導率が高い時、水中のカルシウムイオン濃度も高くなっている。カルシウムイオン濃度が高いほどスケール生成のリスクは高まるので、水の電気伝導率を測定することで、スケールの生成しやすさを検知することができる。
そこで、本実施形態では、制御部405は、電解槽ユニット450にて水の電気分解を行う際には、予め測定しておいた水の電気伝導率に基づいて、温水ヒータ441に供給する電力を決定する。本実施形態にかかる衛生洗浄装置100の動作の概略について、図8を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の動作と流路の状態との概略を表す概念模式図である。
なお、図8に表した流路の状態は、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部の状態を表している。
まず、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知すると、制御部405は、電磁弁431を開き、流路20に上水を供給させる(タイミングt101)。このとき、制御部405は、温水ヒータ441への電力の供給を開始する。そのため、流路20内の水は、便器800ボウル801に排出され、温水ヒータ441により加熱された温水に置換される。つまり、制御部405は、温水ヒータ441を動作させ、吐水口474から水を排出させる温水準備を開始させる(タイミングt101)。なお、温水準備の実行時間は、例えば約6〜15秒程度である。また、本願明細書において「上水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
続いて、使用者が操作部500に設けられた図示しない「おしり洗浄スイッチ」を押すと(タイミングt102)、制御部405は、身体洗浄を実行する信号を受信する。そして、制御部405は、まず上水により「前洗浄」を実行する(タイミングt102〜t103)。より具体的には、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から上水を吐水させ、それらの吐水口474を洗浄させる。このときには、制御部405は、電解槽ユニット450には通電させず殺菌水を生成させない。そのため、複数の吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した上水(ノズル洗浄室478の内壁で反射した上水を含む)により物理的に洗浄される。なお、前洗浄の実行時間は、例えば約2〜7秒程度である。
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することによりノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から上水を噴射させつつ、ノズル473をボウル801内に進出させる。そのため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射された上水により洗浄される(タイミングt103〜t104)。このときにも、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。そのため、ノズル473の胴体は、吐水部479から噴射された上水により物理的に洗浄される。なお、ノズル473の進出時間は、例えば約1.2〜2.5秒程度である。
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより「おしり洗浄」用の吐水口474から上水を噴射させ、便座200に着座した使用者の「おしり」を洗浄させる(タイミングt104〜t105)。このとき、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。そのため、殺菌水が使用者の身体に噴射されることはない。また、温水ヒータ441が動作しているため、使用者の身体は、温水ヒータ441により加熱された温水で洗浄される。
続いて、使用者が操作部500により図示しない「止スイッチ」を押すと(タイミングt105)、制御部405は、圧抜きの制御を実行する(タイミングt105〜t106)。そして、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することによりノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から上水を噴射させつつ、ノズル473をケーシング400内に収納させる(タイミングt106〜t107)。つまり、制御部405は、ノズルの進出時と同様に、吐水部479から噴射された上水によりノズル473の胴体を物理的に洗浄させる。なお、ノズル473の収納時間は、例えば約1.2〜2.5秒程度である。
続いて、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から上水を吐水させ、それらの吐水口474の「後洗浄」を実行する(タイミングt107〜t108)。このときには、制御部405は、電解槽ユニット450には通電せず殺菌水を生成させない。そのため、複数の吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した上水(ノズル洗浄室478の内壁で反射した上水を含む)により物理的に洗浄される。なお、前洗浄の実行時間は、例えば約3秒程度である。
続いて、着座検知センサ404が便座200に着座した使用者を検知しなくなってから所定時間(ここでは、例えば約25秒間程度)が経過すると、制御部405は、電解槽ユニット450への通電を開始させ、電解槽ユニット450において殺菌水を生成する殺菌洗浄を開始する(タイミングt109)。
ここで、制御部405は、使用者の着座を検知してから殺菌洗浄を開始するまでの間(タイミングt107〜t108)に温水ヒータ441に供給する電力の大きさは、使用者がリモコン500で設定する温度(約30〜40℃程度)に基づいて決定されるものである。すなわち、前述したように、入水温度センサ481にて検知される水の温度と、温水温度センサ481にて検知される加熱された水の温度との情報を制御部405が取り込むことによるフィードフォワード制御とフィードバック制御の組合せによって、温水温度センサ481にて検知される温度が、使用者が設定した値となるよう、印加する電圧が決定される。
一方、制御部405は、電解槽ユニット450において殺菌水を生成する殺菌洗浄を開始すると(タイミングt109)、予め測定しておいた水の電気伝導率に基づいて決定した電力を温水ヒータ441に供給する。水の電気伝導率の測定と、供給電力の決定の詳細については後述する。
制御部405が電解槽ユニット450における水の電気分解を開始させる際に、電解槽ユニット450内に温水がある場合には、制御部405は、電磁弁431を開くことにより電解槽ユニット450の温水を排出させ、加熱されていない水に置換させた後に電解槽ユニット450への通電を開始させる。
さらに、制御部405は、電磁弁431を開き、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20に殺菌水を供給させる(タイミングt109)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20は、殺菌水により殺菌される。また、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から殺菌水を吐水させ、それらの吐水口474の「前殺菌」を実行する(タイミングt109〜t110)。そのため、複数の吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した殺菌水(ノズル洗浄室478の内壁で反射した殺菌水を含む)により殺菌される。なお、前殺菌の実行時間は、例えば約3秒程度である。
続いて、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することによりノズル洗浄室478に設けられた吐水部479から殺菌水を噴射させつつ、ノズル473をノズル473をボウル801内に進出させ、その後にケーシング400に収納させる(タイミングt110〜t111)。つまり、制御部405は、吐水部479から噴射された殺菌水によりノズル473の「胴体洗浄」を行う(タイミングt110〜t111)。これにより、電解槽ユニット450よりも下流側の流路20の内部およびノズル473の胴体は、殺菌水により殺菌される。なお、殺菌水による胴体洗浄の実行時間は、例えば約5秒程度である。
続いて、ノズル473がケーシング400に収納された状態において、制御部405は、流量切替弁471および流路切替弁472を制御することにより、複数の全ての吐水口474から殺菌水を吐水させ、それらの吐水口474の「後殺菌」を実行する(タイミングt111〜t112)。そのため、複数の吐水口474の部分は、吐水口474自身が吐水した殺菌水(ノズル洗浄室478の内壁で反射した殺菌水を含む)により殺菌される。なお、後殺菌の実行時間は、例えば約3秒程度である。
続いて、制御部405は、電磁弁431を閉じ、その後、流路切替弁472閉じて、電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20の内部に所定時間保持する(タイミングt112〜t113)。これにより、使用者が「おしり洗浄」を実行した後において、流路20の内部を殺菌することができる。そして、ここにいう所定時間とは、例えば約60分程度である。このように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、流路20の内部に殺菌水をより長い時間保持するため、流路20の内部に生存する細菌をより確実に殺菌することができる。
続いて、所定時間が経過すると、制御部405は、「水抜き」を行う(タイミングt113〜t114)。つまり、制御部405は、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にさせる。この「水抜き」の実行時間は、例えば約30秒程度である。このように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、流路20の内部に殺菌水を所定時間保持した後に、流路20の内部の殺菌水を抜き、流路20の内部を空にさせるため、殺菌水の殺菌力が経時変化により低下した場合でも、その殺菌水が細菌の栄養源となることを抑制することができる。
続いて、制御部405は、タイミングt112〜t113に関して前述した動作と同様に、電解槽ユニット450において生成した殺菌水を流路20の内部に所定時間保持する(タイミングt114〜t115)。
続いて、衛生洗浄装置100が最後に使用されてから所定時間(ここでは、例えば8時間程度)が経過すると、制御部405は、タイミングt109〜t110およびタイミングt111〜t112に関して前述した動作と同様に、「前殺菌」および「後殺菌」を実行する(タイミングt115〜t116およびタイミングt116〜t117)。
本実施形態によれば、前述のように、電解槽ユニット450において殺菌水を生成する殺菌洗浄を行う際には、制御部405は、予め測定しておいた水の電気伝導率に基づいた量の電力を温水ヒータ441に供給する。これにより、スケールの生成の増加を抑えることができる。
続いて、水の電気伝導率の測定と、それに基づく温水ヒータ441へ供給する電力の決定の態様について、図9、10および再び図2を用いて詳述する。
図9は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置が電気伝導率の測定を行う際のフローチャートであり、図10は、測定した電気伝導率に基づいて温水ヒータに供給する電力を決定するための電圧テーブルである。
制御部405は、衛生洗浄装置100に商用電源からの電力供給が開始された時(コンセント接続時、停電からの復帰時)など、所定のタイミングにおいて、図2に示した給水源10から供給される水の電気伝導率の測定を行う。電気伝導率の測定を行うために、制御部405は、まず電磁弁431を開動作させ、給水源10から水を流路20に導く(S1)。
続いて、制御部405は、電解槽ユニット450の第一電極454および第二電極455の間に電圧Vcを印加する(S2)。これは、より正確に水の電気伝導率を測定するため、第一電極454および第二電極455のうち、前回の電圧印加時に陰極として機能した方に付着したスケールを除去するステップである。すなわち、このときの第一電極454および第二電極455のそれぞれの極性は、前回の電圧印加時から反転させたものとなっている。電圧Vcの値や、それを印加する時間については、付着したスケールを十分に除去できる程度のものに設定される。
続いて、制御部405は、入水温度センサ481によって水の温度を検知する(S3)。これにより、電磁弁431の開動作によって流路20に導かれた水の温度を検知する。
続いて、制御部405は、S3で検知した水の温度に基づいて、温水ヒータ441に供給する電力Prを決定する(S4)。これは、水の温度が異なる条件では正確な電気伝導率の測定が困難であるため、測定時は一定の温度(例えば40℃)となるよう、温水ヒータ441で加熱して調整するため、入力する電力Prを決定するステップである。ここでは、上記一定温度をTrとする。
続いて、制御部405は、温水ヒータ441に電力Prを供給する(S5)。そして、この電力Prを供給した結果、温水温度センサ482で検知した水の温度がTrに達したか否かを判断する(S6)。
制御部405は、温水温度センサ482で検知した水の温度がTrに達したと判断した場合(S6:Yes)には、第一電極454および第二電極455の間に電圧V0を印加し(S7)、さらに、このときに第一電極454および第二電極455の間に流れた電流I0を検知する(S8)。このときの第一電極454および第二電極455の極性については特に制約は無く、S2で電圧Vcを印加したときと同様でもよいし、反転させたものでもよい。
続いて、制御部405は、S7で印加した電圧V0と、S8で検知した電流I0に基づいて、水の電気伝導率σを計算する(S9)。そして、この水の電気伝導率σに基づいて、後述する電圧テーブルから、温水ヒータ441へ供給する電力であるPrを決定する(S10)。
図10に示すように、電圧テーブルは、水の電気伝導率σと温水ヒータ441へ供給する電力Phが対応するよう構成されている。すなわち、水の電気伝導率σの値が大きいほど、水の中に含まれるカルシウムイオンの濃度が高く、第一電極454および第二電極455のうち、陰極として機能する側にスケールが多量に付着するおそれがある。このため、水の電気伝導率σの値が大きいほど、スケール付着のリスクをより低減させるため、電気分解する際の水の温度は低い状態とすべきである。本実施形態によれば、水の電気伝導率σの値が大きいほど、温水ヒータ441による加熱量が小さくなるよう、温水ヒータ441への供給電力Phは小さくなるよう設定されているため、電解槽ユニット450における水の電気分解時のスケール付着を軽減することができる。
また、本実施形態によれば、電解槽ユニット450の第一電極454および第二電極455を、水の電気分解だけでなく、水の電気伝導度の測定にも兼用するものである。したがって、製造コストの抑制や装置の小型化にも寄与している。
また、本実施形態では、測定した水の電気伝導率σに基づいて、温水ヒータ441へ供給する電力Phを細かく選択できるよう、水の電気伝導率σと電力Phは複数の組合せが用意されているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、電気伝導率に関する所定の閾値を設定し、測定した水の電気伝導率σが当該閾値を超えた場合に、温水ヒータへの電力供給を停止(Ph=0)とするような簡便な制御でもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部405は、電解槽ユニット450
で水を電気分解をするときの温水ヒータ441の加熱量を、測定した水の電気伝導率σに基づいて決定する。これにより、水の中に存在するカルシウムイオンの濃度に基づいて水の温度調整を行い、第一電極454および第二電極455へのスケール付着を軽減することが可能となる。