第1実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る振れ検出装置の構成を示すブロック図である。本実施形態では、振れ強度分布によるブレの検出方法について述べる。なお、振れ検出装置を有するカメラの全体構成については、第6実施形態にて代表して説明を行い、ここでの説明を省略する。
図1に示すように、ジャイロセンサ1は、カメラに生じた振れによる角速度を検出し、検出値を出力する。ジャイロセンサ1の出力値は、LPF(ローパスフィルタ)2に入力され、振れとは無関係な高周波成分がカットされる。LPF2の出力値は、オフセット電圧調整部3に入力され、ジャイロセンサ1のオフセット電圧が調整される。オフセット電圧調整部3の出力値VgoutはA/D変換器4に入力され、ディジタル値に量子化される。量子化されたA/D変換器4の出力値を振れ量子化値ω1とする。A/D変換器4から出力された振れ量子化値ω1は、振れ角速度基準値算出部5および振れ状態判定部6に入力される。振れ角速度基準値算出部5では、振れ量子化値ω1の基準値(振れ角速度基準値ω0)が算出され、振れ状態判定部6では後述する撮影状態が判定される(第2〜第4実施形態にて説明を行う)。A/D変換器4の出力値ω1と振れ角速度基準値算出部5の出力値ω0はそれぞれ、減算器7に入力され、振れ量子化値ω1から振れ角速度基準値ω0が引算され、振れ角速度ωが算出される。この振れ角速度ωを用いて、第6実施形態にて説明する振れ補正動作が行われる。
図2を用いて、図1に示すLPF2とオフセット電圧調整部3の詳細について説明する。ジャイロセンサ1の出力値は、オペアンプOP201、抵抗R201,R202、コンデンサC201,C202から構成されるLPF2により、手振れとは無関係な高周波成分をカットされ、オフセット電圧調整部3に出力される。オフセット電圧調整部3は、オペアンプOP301、抵抗R301〜R303、コンデンサC301、及びD/A変換器3aから構成される。オフセット電圧調整部3は、LPF2の出力値を反転増幅すると共に、ジャイロセンサ1の不要なオフセット電圧をD/A変換器3aにより調整し、オフセット電圧調整部3に接続されるA/D変換器4の有効なレンジ内となるようLPF2の出力値を調整する。
図3に、図2に示すオフセット電圧調整部3を簡易的にし、さらにHPF(ハイパスフィルタ)を用いてオフセット電圧調整部3を構成した場合について示す。ジャイロセンサ1、LPF2は、図2と同様なので説明を省略する。LPF2の出力値は、抵抗R304とコンデンサC301から構成される1次HPF3cに入力され、DC成分が除去され、ジャイロセンサ1のオフセット電圧が除去され、非反転増幅部3dに入力される。非反転増幅部3dはオペアンプOP302、抵抗R305、R306、及び、基準電圧Vref0により構成される。非反転増幅部3dは1次HPF3cの出力信号を増幅し、A/D変換器4に出力する。尚、基準電圧Vref0では、例えば、定電圧レギュレータ等を用いた公知の技術により、安定した一定電圧が生成されている。
実際には、個々のジャイロセンサによりオフセット電圧が変化し、さらに、このオフセット電圧は、周囲の温度等により大きさが変化する。一方で、撮影時にカメラに生じる振れ角速度のレベルは、通常、数度/sec程度であり、ジャイロセンサの出力は、一般的に数mVレベルしか出力されない。これに対し、ジャイロセンサのオフセット電圧は、大きいもので、周囲温度の変化も含めると角速度に換算して100度/secを越える場合がある。こうしたジャイロセンサの現状を考慮し、図3に示すような回路構成をとる。
図3に示すLPF2のカットオフ周波数は、例えば、100Hz程度に設定する。また、HPF3cのカットオフ周波数は、例えば約0.1Hzに設定し、非反転増幅部3dの利得は、例えば100倍程度に設定する。HPF3cの時定数τは、HPF3cのカットオフ周波数fcに依存し、たとえば下記の数1に示される通りとなる。
(数1) τ=1/(2×π×fc)
図3に示す回路により、振れ信号レベルに対して無視できないレベルのオフセット電圧が生じるが、微少な信号レベルの出力しか得られないジャイロセンサ1の出力値に対し、HPF3cによりこのオフセット電圧が除去される。オフセット電圧が除去されることにより、非反転増幅部3dによって、HPF3cの出力値の増幅が可能となり、A/D変換器4で量子化された後に得られる検出分解能は、十分実用的な分解能となる。
次に、図1に示す振れ角速度基準値算出部5に関し、詳細に説明する。図1に示すA/D変換器4から出力された振れ量子化値ω1は、図4に示すように、振れ角速度基準値算出部5に入力される。振れ角速度基準値算出部5は、度数分布算出部5aと振れ角速度基準値特定部5bとを有する。振れ量子化値ω1は度数分布算出部5aに入力され、振れ量子化値ω1の度数分布His[ω1]が演算される。度数分布算出部5aで演算された度数分布His[ω1]は振れ角速度基準値特定部5bに入力され、振れ角速度基準値ω0が演算される。
次に、図5にて、度数分布算出部5aの作動を説明する。図1に示すA/D変換器4は、所定間隔tsでオフセット電圧調整部3の出力値をA/D変換し、振れ量子化値ω1を出力している。所定間隔tsは、振れの周波数成分に対して十分短い時間とし、例えば、1ms程度とする。図5に示すように、度数分布算出部5aは、得られた振れ量子化値ω1を、振れ量子化値ω1の大きさにより所定区間Δω1に区切り、区切られた各区間内のサンプリング点の数をカウントすることで、度数分布His[ω1]を得る。
ここで、上述した度数分布算出部5aの作動は、通常は、マイコン等のソフトウエアにより演算手段やハードロジック回路の演算手段を用いることにより作動するが、サンプリングされた振れ量子化値ω1が、一体どこの区間となるかを判定するための演算が複雑となる。そこで、本実施形態では、以下に述べる方法によって演算を行う。
図6aは、度数分布算出部5aで演算される振れ量子化値ω1が、上述した各区間Δω1のうち、どこの区間Δω1に位置するかを度数分布算出部5aが特定する方法を示している。具体的に説明する為に、図1に示すA/D変換器4の分解能を10ビットとし、度数分布His[ω1]の区間分割数を32とし、得たい度数分布の結果を配列His[i](i=0,1,2,…,31)に入れるものとする。この場合に、振れ量子化値ω1の取り得る範囲は、0〜1023の範囲であり、この振れ量子化値ω1データを5ビット右に論理シフトする。或いは、32で割ることにより、5ビットのデータ長のデータω1’を得ることができる。データω1’の取り得る範囲は0〜31であり、この値が例えばkである場合に、配列His[k]の値を+1する。配列His[i](i=0,1,2,…,31)からは、その初期値を0として、所定間隔ts毎に上述した作動を繰り返すことで、振れ量子化値ω1の度数分布の配列を得ることができる。この場合に、度数分布の区間長Δω1は、振れ量子化値ω1の32LSB相当となり、例えば、振れ量子化値ω1の分解能が、0.1度/secであれば、区間長Δω1は3.2度/secとなり、k番目の配列His[k]は、3.2×k度/sec以上、3.2×(k+1)度/sec未満の範囲内におけるサンプリング数となる。
尚、上述した図6aの説明では、具体的に述べる為に、A/D分解能、度数分布の区間長、および度数分布の区間分割数を限定した値としたが、これに限られるものではない。分解能や区間分割数などを、より細かく設定すれば、より細かな度数分布を得ることができる。
次に、図4に示す度数分布算出部5aにて演算された度数分布His[i]から振れ角速度基準値ω0を特定するための振れ角速度基準値特定部5bの作動を、図6bにて説明する。
図6b1および図6b2に示す例では、図1に示すA/D変換器4の分解能を10ビットとし、振れ量子化値ω1の分解能を0.1度/sec、度数分布の区間分割数を32、区間長Δω1を3.2度/secとしている。
まず、具体的な振れ波形について述べる。撮影時に、構図が決まった状態ならば、振れ角速度は、角速度0を中心にばらつくことが知られている。一方で、構図を変更した場合には、この構図が決まっている場合の分布とは異なる位置に分布が表れる。構図を変えている時間は、一瞬、例えば、1秒程度の短期間で終了するのが普通であるから、十分な時間の度数分布を得れば、図6b2に示すように、構図が決まった状態の分布の山Cが支配的な山となり、構図変更時の分布の山Dは、分布の山Cに比べ小さな山となる。
図6b2に示す構図変更時の小さな山Dは、従来技術においては、振れ角速度基準値ω0の演算に影響を及ぼし、大きな誤差が生じてしまう。例えば、振れ角速度基準値ω0を、得られた振れ角速度の平均値として求める場合に、誤差が生じる。あるいは、図3に示す回路構成で、HPF3cにより、ジャイロセンサの出力値に乗ったDC成分を除去することで得る場合にも、誤差が生じる。
このような問題に対し、本実施形態では、図4に示す振れ角速度基準値特定部5bが、振れ角速度基準値ω0を、図4に示す度数分布算出部5aにて演算された度数分布His[i]の最大度数近辺の値とする。図6b1の例では、i=17の区間(17.0度/sec以上18.0度/sec未満の区間)で、i=17の区間に相当する代表角速度は、17.5度/secであるから、17.5度/secを代表角速度とする。上述した例では、度数分布の区間ΔHisは十分な分解能といえないが、これを細分化できるシステムにおいては、この方法で十分使用に耐えることが可能となる。
また、度数分布の区間ΔHisを細分化できないシステムであっても、図6b1に示すように、最大値His[imax]近傍の値を用いて補間演算することで、さらに精度良く振れ角速度基準値ω0を算出することができる。具体的には、図6b1に示すように、度数分布His[i]の最大頻度を示す近傍で直線補間して求める。すなわち、図4に示す振れ角速度基準値特定部5bは、振れ量子化値ω1の度数が最大となる度数分布His[ω1]の区間Δω1、及び、量子化値ω1の度数が最大となる度数分布His[ω1]の区間Δω1の前後の区間を用いて、振れ角速度基準値ω0を算出する。
具体的には、例えば、図6b1に示すように、度数分布His[i]の最大区間imax=17の前の2区間の度数分布His[imax−1]およびHis[imax−2]の値を結んで得られる直線lと、度数分布His[i]の最大区間imaxの後の2区間の度数分布His[imax]およびHis[imax+1]の値を結んで得られる直線l‘との交点とし、その交点の区間値iを振れ角速度基準値ω0とする。
図6b1の場合、区間長Δω1が3.2度/secなので、値54.7度/secが補間結果であり、値54.7度/secを振れ角速度基準値ω0とする。上述した例では、度数分布His[i]の最大値が得られた前後それぞれ2区間の度数分布His[i]を用いて直線補間演算したが、これに限定されるものではない。すなわち、さらに最大度数分布近傍の複数点を用いて2次、3次等の高次式を用いることで、さらに補間精度を向上させることもできる。
なお、上述した説明では、度数分布His[i]として説明したが、iは元々、入力値である振れ量子化値ω1の関数なので、以降の説明ではω1とし、度数分布His[ω1]とする。
図7は、例えば流し撮りを行う場合に、従来技術における振れ角速度基準値ω0の振る舞いを模式的に示した図で、パンニング(流し撮り)時には、振れ量子化値ω1の変動により、振れ角速度基準値ω0は本来のレベルから大きく乖離し、パンニング終了後にも、振れ角速度基準値ω0が本来のレベルとなるまで長い時間を要する。従って、本来のレベルになるまでの間は、精度よく振れ補正を行うことができない。
次に、図4に示す振れ角速度基準値算出部5により得られた振れ角速度基準値ω0の検出開始からの振る舞いについて、図8(a)を用いて説明する。時刻t=0から、図4に示す度数分布算出部5aは作動を開始し、時間tが経過する程、強度分布His[ω1]にデータが蓄積され、強度分布His[ω1]の山もはっきりしてゆく。これにより、得られる振れ角速度基準値ω0の精度も高まる。また、図8(a)に示すように、途中の構図変更に引きずられることもない。
以上をまとめると、本実施形態では、従来技術におけるHPF、或いは、それに類する平均化等を用いずに済む。従来であれば、図8(b)に示すように、振れ角速度基準値ω0が構図変更により振られ、収束に長い時間を要していた。本実施形態によれば、振れ角速度基準値ω0、或いは、それを元にして得られる振れ角速度ωは、構図変更直後から十分な精度を得ることができる。さらに、構図変更の最中でも十分な精度を得ることができる。
図9では、上述した振れ角速度基準値ω0の演算方法について、さらに精度を高める方法について示す。図9に示すように、度数分布算出部5a0および振れ角速度基準値特定部5b0により大まかに得られる振れ角速度基準値ω00の近傍を、度数分布算出部5a1および振れ角速度基準値特定部5b1により、さらに詳細に算出して振れ角速度基準値ω0を得る。
すなわち、度数分布算出部5aは、大まかな第1区間に基づき第1度数分布R−Hisを算出する第1度数分布算出部5a0と、第1区間よりも細かな第2区間に基づき、第1度数分布R−Hisよりも高精度な度数分布F−Hisを算出する第2度数分布算出部5a1とを有する。そして、基準値特定部5bは、第1度数分布(R−His)に基づき第1振れ角速度基準値ω00を算出する第1振れ角速度基準値特定部5b0と、第2度数分布F−Hisに基づき、第1振れ角速度基準値ω00よりも高精度な第2振れ角速度基準値ω0を算出する第2振れ角速度基準値特定部5b1とを有する。
この場合には、第1度数分布算出部5a0で用いる度数分布His[ω1]の区間長Δω1を粗く設定することで、この演算に用いるデータ数を削減することができる。または、より広い角速度範囲に対して度数分布を取ることができる。第1度数分布算出部5a0および第1振れ角速度基準値5b0により得られる第1振れ角速度基準値ω00は、大まかなものであるが、この大まかな第1振れ角速度基準値ω00の近傍のデータから、さらに第2度数分布算出部5a1および第2振れ角速度基準値特定部5b1により、詳細に角速度基準値ω0が算出される為に、振れ角速度基準値ω0の検出精度をより向上させることができる。
図9に示す第1度数分布算出部5a0、第2度数分布算出部5a1は、検出開始からずっと度数分布を算出し続けるものとするが、図10に示す次の例では、度数分布算出部5aは、所定時間Th間隔で区切って度数分布を算出し、得られた度数分布His[ω1]から振れ角速度基準値ω0を算出する。このことにより、度数分布His[ω1]に蓄積されたデータ量が、時間と共に増大し、そのうちにオーバフローしてしまうことがない。
ただし、図10に示すように所定時間Th間隔で区切って度数分布を算出する場合には、得られる振れ角速度基準値ω0は、所定時間Th間隔毎に不連続な値となる。そこで、図11に示すように、振れ角速度基準値特定部5bの後にLPF5cを施すことで、滑らかな出力値を得ることができる。
図11に示すLPF5cは、例えば、図12に示すような構成とする。図12に示すLPF5cは、その作動開始時の初期値をV0とし、カットオフ周波数fcのLPFとして作動する。初期値V0に対しては、振れ補正装置の振れ検出間隔(例えば1ms)の所定間隔毎に繰り返し演算が行われ、入力Vinの高周波成分をカットするLPFとして作動する。図12に示す保持値1/Zとは、LPF5cによる前回の演算時の値V4(この例では1ms前の値V4)をLPF5cが保持している値であり、その保持値1/Zを使用する。
図13に、図11に示す振れ角速度基準値算出部5の各部の出力の様子を示す。図11に示す振れ角速度基準値特定部5bの出力値は不連続になっているのに対して、図11に示すLPF5cの出力値である振れ角速度基準値ω0は、滑らかになっている。
LPF5cの構成は、図12の説明で述べた以外の方法を用いても構わない。例えば、移動平均により不連続となった振れ角速度基準値特定部の出力を平滑化してもよい。
上述したように、図11に示す振れ角速度基準値算出部5は、所定時間Th間隔で振れ角速度基準値ω0を算出する。度数分布算出部5aは、その度数分布を算出する時間が長いほど、確からしい振れ波形の頻度度数分布が得られ、その結果から得られる振れ角速度基準値ω0の精度も向上する。従って、この所定時間Thは、振れ波形の周波数成分に対して十分低い周期(例えば2秒程度〜10数秒程度以上)に設定する。一方で、この度数分布の算出時間を長くすると、振れ角速度基準値ω0を得るのに時間がかかる。加えて、ジャイロセンサやその処理回路に生じる数秒から数10秒以上にわたって徐々に変化するドリフトにより、度数分布の算出間隔Thをあまり長く設定しても効果がない場合も有り得る。
そこで、図14に示す方法により、これを解決する。図14に示す振れ角速度基準値算出部5は、互いに検出タイミングがオーバラップした複数の度数分布算出部5a0、5a1、5a2を有し、度数分布算出間隔Thが経過して度数分布算出部の出力が得られたタイミングで、その度数分布算出部の結果から振れ角速度基準値ω0を更新する。すなわち、振れ角速度基準値算出部5は、振れ量子化値ω1の度数分布を算出する複数の度数分布算出部5a0,5a1,5a2と、度数分布算出部5a0,5a1,5a2にそれぞれ対応する複数の振れ角速度基準値特定部5b0,5b1,5b2とを有し、複数の度数分布算出部5a0,5a1,5a2は、度数分布を算出するタイミングをずらしたタイミングで、それぞれが度数分布His0[ω1],His1[ω1],His2[ω1]を算出する。
図14に示すように、振れ角速度基準値算出部5は、度数分布算出部と振れ角速度基準値特定部とのセットを3セット有し、シーケンシャル制御部5eは、これらの作動を制御し、度数分布算出間隔Thの1/3の時間だけ、各度数分布算出部5a0,5a1,5a2と各振れ角速度基準値特定部5b0,5b1,5b2の作動をずらす。
このことにより、度数分布算出間隔Thを十分長くした上で、振れ角速度基準値ω0が算出される間隔を縮めることができる。例えば、度数分布算出間隔Th=3秒とした場合に、振れ角速度基準値ω0が算出される間隔は、1秒となる。度数分布算出部と振れ角速度基準値特定部のセット数は、3セットに限定されず、さらにセット数を増やせば、さらに効果が上がる。
図15に、図14に示す振れ角速度基準値算出部5の作動の各部の出力の様子を示す。振れ角速度基準値特定部5b0の出力値Eと、振れ角速度基準値特定部5b1の出力値Fと、振れ角速度基準値特定部5b2の出力値Gとは、度数分布算出間隔Th=3秒とした場合には、1秒ずつずれている。最終的に得られるLPF5cの出力値Hは滑らかになっている。
このように、振れ角速度基準値ω0の精度を維持する為に度数分布の算出間隔を比較的長くしつつも、振れ角速度基準値ω0の算出される間隔を短くすることができる。このように、従来公知の手段で度数分布を算出するよりも正確に振れ角速度基準値(ω0)を算出することができる。したがって、撮影状態に応じた正確なブレ補正を行うことができる。
第2実施形態
本実施形態では、以下に述べる以外は前述した第1実施形態と同様である。本実施形態では、上述した振れ検出装置をカメラに応用し、そのカメラが今どんな状態にあるかを判定する方法について述べる。具体的には、図1に示す振れ状態判定部6が、撮影者が構図変更をしているか否か、撮影者が流し撮りをしているか否か、カメラが三脚に固定されているか否か、撮影者が乗り物に乗って撮影しているか否か、撮影者の熟達度、の少なくとも1つについて判定する。
従来、撮影者が意図的に行った構図変更の開始や終了などを振れ検出装置がブレと誤検出し、撮影者が意図しないブレ補正を行ってしまい、撮影者が不快感や違和感を覚えることがある。
一方で、カメラが三脚に固定されている状態か、手持ちの状態なのかについて検出する技術が知られている。すなわち、ブレ検出信号から、三脚に固定されているか手持ち状態なのかを検出し、三脚に固定されていることが検出された場合には、振れ補正を停止させるものである。
しかし、強度の弱い三脚を使用した場合や、三脚の足場が柔らかい場合などにおいては、カメラが揺れ、手振れに近い振れ角速度を生じ、手持ちの状態と誤検出し、振れ補正を行ってしまう。この場合、基本的には振れが印加されているのであるから振れ補正しても良いと考えられるが、実際には、振れを検出するジャイロセンサの出力には無視できないレベルの出力電圧のドリフトや揺らぎが生じ、振れ補正を行ってしまうと撮影結果に悪影響を及ぼしてしまう場合がある。又、プロレベルの撮影者が手持ち撮影を行っている場合に、カメラが三脚に固定されたと誤検出してしまい、振れ補正が効かない場合がある。
本実施形態では、このように撮影状態の変化などに起因して生じる振れ補正の不都合を、以下に述べる方法によって低減する。
図1に示すように、A/D変換器4の出力値(振れ量子化値ω1)は、振れ角速度基準値算出部5および振れ状態判定部6に入力される。図16は、図1に示す振れ状態判定部6の詳細な構成を示すブロック図である。振れ状態判定部6は、BPF(バンドパスフィルタ)6d、絶対値算出部6c、度数分布算出部6a、振れ状態算出部6bを有する。
振れ量子化値ω1は、BPF6dに入力され、振れの支配的な周波数帯域(図16に示す例では、たとえば1〜10Hzとしている)を抽出する。BPF6dでは、カットオフ周波数が10Hzと高めのLPF6d0の出力値から、カットオフ周波数が1Hzと低めのLPF6d1の出力値を減算する。LPF6d0およびLPF6d1は、図12に示すLPFを用いる。或いは、他の方式のLPFを用いてもよい。また、BPF6dは、他の方式のBPFで構成してもよい。
BPF6dの出力値は絶対値算出部6cに入力され、BPF6dの出力値の絶対値が算出される。ここで絶対値を算出するのは、後述する度数分布算出および振れ状態検出の処理を簡略化(±の符号が無くなり簡略化される)する為であり、絶対値算出部6cは無くても構わない。
絶対値算出部6cの出力値ωabsは、度数分布算出部6aに入力され、度数分布算出部6aでは、絶対値算出部6cの出力値ωabsの度数分布を算出する。度数分布算出部6aの出力値His[ωabs]は振れ状態算出部6bに入力され、振れ状態が判定される。度数分布算出部6aは、第1実施形態で述べた振れ角速度基準値算出部5と同様の構成とする。さらに、所定間隔で初期化したり、時間的にオーバーラップさせることにより、常に最新で精度の良い度数分布を得るようにする。
振れ波形の高周波成分が支配的でないならば、図16に示す振れ状態判定部6bを簡略化し、さらに図17に示すように、BPF6dの代わりにHPF6eとしてもよい。又、図1に示すジャイロセンサ1や、その処理回路のドリフトが非常に小さい振れ補正システムでは、図16に示すBPF6dや図17に示すHPF6eを用いなくてもよい。BPF6dやHPF6eは、振れ状態の検出に関して特徴的な周波数帯域のみを抽出し、その後に行われる振れ状態の検出精度を高める為のものであり、簡易的には無くても構わない。
次に、図16および図17に示す度数分布算出部6aにより得られた度数分布His[ωabs]から、振れ状態算出部6bにて撮影状態を判定する方法について述べる。
図18に、度数分布算出部6aにより得られた度数分布His[ωabs]の波形の1例を示す。図18に示すように、カメラが三脚に固定された状態Iでは、度数分布His[ωabs]は、角速度ωabsの極小さい領域に集中する。一方で、手持ちで構図が決まっている状態Jでは、度数分布His[ωabs]は、比較的に角速度ωabsの小さい領域に集中している。構図を変更している最中(または流し撮りを行っている最中)の状態Kでは、角速度ωabsの小さい領域の分布が減少し、角速度ωabsの比較的大きな領域に分散してゆく。次に、車に乗って撮影しているような状態Lでは、大きな揺れがカメラに印加されるので、角速度ωabsの大きな領域に分布は集中する。
図19に、図18に示した度数分布His[ωabs]の波形の特徴を踏まえ、振れ状態の判定を行う方法を示す。まず、度数分布His[ωabs]の最大のピーク値の角速度(第1ピーク角速度ωpeak1とする)が、所定値ωth0未満である場合に(図19に示す)、図17に示す振れ状態判定部6は、カメラが三脚に固定されていると判定する。また、度数分布His[ωabs]の2番目に大きいピーク値の角速度を第2ピーク角速度ωpeak2とする。第1ピーク角速度ωpeak1がωth0≦ωpeak1<ωth1である場合に(図19に示す)、第1ピーク値の度数分布His[ωpeak1]と第2ピーク値の度数分布His[ωpeak2]の比(His[ωpeak2]/His[ωpeak1])が、所定値Rth0より小さい場合には、図17に示す振れ状態判定部6は、手持ちで構図が決まっている状態と判定する。比His[ωpeak2]/His[ωpeak1]が、所定値Rth0以上である場合には、振れ状態判定部6は、手持ちで構図が変更されているか、流し撮り中であると判定する。一方、第1ピーク角速度ωpeak1が、所定値ωth1以上である場合には、振れ状態判定部6は、車などの乗り物に乗った状態であると判定する。
次に、図16および図17に示す度数分布算出部6aにより得られた度数分布His[ωabs]を用いて、撮影者のカメラへの熟達度を見分ける方法について述べる。
図20は、カメラの扱いに慣れた人、そうでない人等を上級者・中級者・初心者に分類し、それぞれの場合に度数分布His[ωabs]がどのような傾向になるかを模式的に示した図である。上級者ほど度数分布の最大ピークが出現する角速度ωabsは低くなる傾向にある。
図21に、図20に示した傾向を基にして、撮影者のカメラへの熟達度の判定方法を示す。度数分布His[ωabs]の第1ピーク角速度ωpeak1を用い、ωpeak1≦ωth2である場合に、図17に示す振れ状態判定部6は、上級者と判定する。同様にして、ωth2≦ωpeak1<ωth3である場合には中級者、ωpeak1≧ωth3である場合には初級者と判定する。
ただし、熟達度の判定手段は、これに限定されるものではない。例えば、下記の数2に示すように、熟達度のような尺度として判定してもよい。下記の数2において、Kskillは定数である。
(数2) 熟達度=Kskill/ωpeak1
以上、振れ度数分布による振れ状態検出の基本的な例を説明したが、より判定精度を高める方法を以下に述べる。
図22は、図16または図17に示す振れ状態判定部6の構成を示したもので、振れ状態判定部6以外の構成は、図16または図17と同様とする。図22に示すように、度数分算出部6aは、度数分布算出期間の長い度数分算出部6a0と、度数分布算出期間の短い度数分算出部6a1とによって構成される。すなわち、振れ状態判定部6は、第1の所定間隔ごとに振れ検出信号からの度数分布His0[ωabs]を算出する度数分布算出部6a0と、第1の所定間隔とは間隔の異なる第2の所定間隔で、振れ検出信号から度数分布His1[ωabs]を算出する度数分布算出部6a1と、度数分布算出部6a0の出力値と度数分布算出部6a1の出力値とを用いて、振れ状態を判定する振れ状態判定部6b1とを有する。
図23は、図22に示す度数分算出部6a0および度数分算出部6a1の作動の様子を、振れ状態判定部6の作動開始(=振れ検出開始)から模式的に示している。図23に示す例では、度数分布算出部6a0の度数分布算出間隔Th0が、度数分布算出部6a1の度数分布算出間隔Th1の4倍になっている。例えば、Th0=8秒である場合には、Th1=2秒とする。
または、図24に示すように、度数分布算出部6a0を、検出開始から連続して検出し続けるように、又は、度数分布算出間隔Th0を有限の大きな値としてもよい。度数分布算出間隔Th1は、例えば、Th1=2秒とする。
または、図25に示すように、度数分布算出部6a0の度数分布算出間隔Th0と度数分布算出部6a1の度数分布算出間隔Th1とが同じ間隔になるようにし、互いに度数分布の算出タイミングをずらしてオーバラップさせる。度数分布算出間隔Th1は、例えば、Th1=Th0=2秒とする。
図22に示すように、上述のようにして算出された度数分布算出部6a0からの出力値His0[ωabs]は、正規化部6f0により正規化される。また、度数分布算出部6a1からの出力値His1[ωabs]は、正規化部6f1により正規化される。具体的には、度数分布算出部6a0、6a1により得られた度数分布His0[ωabs]、His1[ωabs]は、正規化部6f0、6f1で、それぞれの度数分布算出個数Nhis0、Nhis1で割り算され、正規化部6f0、6f1からの出力値は、振れ状態算出部6b1に入力され、振れ状態が判定される。
図22に示す振れ状態算出部6b1では、算出時間の長い正規化された度数分布His0’[ωabs]から、算出時間の短い正規化された度数分布His1’[ωabs]が引き算される。次に、2つの正規化された度数分布から、振れ状態算出部6b1により行われる振れ状態、特に、その状態変化を検出し、振れ状態判定部6が振れ状態を判定する方法について述べる。
図26〜図28に、振れ状態算出部6b1の作動を示す。図26に、構図が決まった状態から、パンニング等の急に構図が変更された場合の例を示す。この場合には、算出期間の短い正規化度数分布His1’[ωabs]が変化し、比較的に角速度ωabsの大きい領域の度数分布が増加する。
図27に、急に乗り物に乗った場合の例を示す。この場合には、算出期間の短い正規化度数分布His1’[ωabs]が変化し、少し大きい角速度ωabsの領域の度数分布が増加し、角速度ωabsの小さい領域が減少する。
図28に、急にカメラを三脚に固定した場合の例を示す。この場合には、算出期間の短い正規化度数分布His1’[ωabs]が変化し、ωabsの非常に小さい領域の度数分布が大きく増加している。
長い区間の正規化度数分布His0’(ωabs)に対して、算出期間の短い正規化度数分布His1’(ωabs)との差異が大きいほど、振れの状態変化が大きいことが分かる。図26〜図28に示す波形M〜Oは、算出期間の長い正規化度数分布His0’[ωabs]から算出期間の短い正規化度数分布His1’[ωabs]を引いた値である。これらの波形M〜Oを基にして、振れ状態算出部6b1による判定手段を示したのが図29である。
図29では、まず、算出期間の長い正規化度数分布His0’[ωabs]から算出期間の短い正規化度数分布His1’[ωabs]を引いた値M〜Oの絶対値P〜Rを図22に示す振れ状態判定部6が算出する。そして、角速度ωabsの所定値ωth5から所定値ωmaxまで積算した絶対値Pが、P≧Histh0であるか否かを、振れ状態判定部6が判定する。P≧Histh0である場合には、振れ状態判定部6は、カメラの構図変更が行われたか、撮影者が流し撮りを開始したと判定する。
絶対値P<Histh0である場合には、図22に示す振れ状態判定部6は、角速度ωabsの所定値ωth4から所定値ωth5まで積算した絶対値Qが、Q≧Histh1であるか否かを判定する。値Q≧Histh1である場合には、乗り物に乗った状態であると判定する。
絶対値Q<Histh1である場合には、図22に示す振れ状態判定部6は、角速度ωabsの所定値ωth0から所定値ωth4まで積算した絶対値Rが、R≧Histh2であるか否かを判定する。R≧Histh2である場合には、カメラが三脚に固定された状態であると振れ状態判定部6が判定する。R<Histh2である場合には、振れ状態判定部6は、カメラの状態の変化がないと判定する。なお、所定値ωth4、ωth5、ωmaxの大小関係は、ωth4<ωth5<ωmaxであるものとする。
以上、度数分布の算出期間が長いものと、短いものとの差から振れ状態の変化を判定する方法を述べたが、図25に示すように、図22に示す度数分布算出部6a0の度数分布算出間隔と図22に示す度数分布算出部6a1の度数分布算出間隔とが一致する場合にも、算出タイミングをずらすことにより、同様な検出が可能である。このように、図22に示す振れ状態算出部6b1にて、正規化度数分布His0’[ωabs]から正規化度数分布His1’[ωabs]を差分することにより、振れ状態判定部6が現在の撮影状態を判定する。これにより、撮影状況に応じた正確なブレ補正を行うことができる。
第3実施形態
以下に述べる以外は前述した第1および第2実施形態と同様であるが、本実施形態では、周波数分布によるブレの検出方法および装置の応用例について述べる。具体的には、図1に示す振れ状態判定部6が、撮影者が構図変更をしているか否か、撮影者が流し撮りをしているか否か、カメラが三脚に固定されているか否か、撮影者が乗り物に乗って撮影しているか否か、撮影者の熟達度、の少なくとも1つについて判定する。
図30は、図1に示す振れ状態判定部6の詳細な構成を示すブロック図である。振れ状態判定部6は、周波数分布算出部6pと振れ状態算出部6b2とを有する。図1に示すA/D変換器4の出力値(振れ量子化値ω1)は、図30に示す周波数分布算出部6pに入力され、周波数分布算出部6pでは周波数分布Specが算出され、周波数分布Specは振れ状態算出部6b2に入力され、振れ状態が判定される。
次に、周波数分布算出部6pの詳細について、図31を用いて説明する。図31に示す周波数分布算出部6p1は、周波数帯域の異なる複数のBPFで構成されている。複数のBPFは、各々がカットオフ周波数の異なる2つのLPFから構成される。具体的な数値を用いて説明すると、BPF6qは、例えばカットオフ周波数128HzのLPF6q0と、例えばカットオフ周波数64HzのLPF6q1とを有する。振れ量子化値ω1は、LPF6q0とLPF6q1に入力され、BPF6qにおいて、LPF6q0の出力値からLPF6q1の出力値を減算することにより、64〜128Hzの周波数帯域の強度(周波数分布)Spec0を得る。このようにして、64Hz〜128Hzの周波数帯域のBPFが構成されている。同様にして、カットオフ周波数を徐々に異ならした2つのLPFの組を決定し、図31に示す例では、0.5〜1Hz、1〜2Hz、2〜4Hz、…、32〜64Hz、64〜128Hzのそれぞれの周波数分布Spec7、Spec6、Spec5、…、Spec1、Spec0を得る。すなわち、周波数分布算出部6p1は、カットオフ周波数が異なる複数のローパスフィルタ6q0、6q1、…、6q8を有し、これらのローパスフィルタ6q0、6q1、…、6q8の任意の組合せにより、それぞれ通過帯域が異なる周波数分布Spec0、Spec2、…、Spec7が算出される。
上述した方法により、振れの周波数帯域のほぼ全体を8分割し、それぞれの周波数分布を求めることができる。それぞれの周波数分布Spec7、Spec6、Spec5、…、Spec1、Spec0は、さらに、所定のカットオフ周波数(図31の例では、0.1Hz)のLPF6r7、LPF6r6、LPF6r5、…、LPF6r1、LPF6r0が施され、平滑化された各周波数分布Spec7L、Spec6L、Spec5L、…、Spec1L、Spec0Lを得る。平滑化されていない帯域の強度を用いるか、平滑化された帯域の強度を用いるかは、用途により使い分ける。後述する振れ状態を検出する場合に、振れの状態変化の検出応答を優先するならば平滑化されていないものを用い、誤検出を避けたいのであれば、平滑化されたものを用いる。
なお、図31に示す例で用いるLPFは、図16および図17で述べたLPF6d0、6d1、5e1と同様のものを用いるが、これに限定されるものではない。また、図31に示す例では、周波数分布算出部6p1を、カットオフ周波数の異なる複数のLPFにより構成しているが、周波数分布算出部6p1を、カットオフ周波数の異なる複数のBPFにより構成してもよい。
次に、帯域ごとの周波数分布Specを得るための周波数分布算出部6pの別の構成について述べる。図31に示す例では、多数のBPF、或いはLPFを用いるが、これを電気ハードウエアで構成するならば回路規模は大きなものとなる。或いは、ソフトウエアで構成するならば、処理量が増大する。そこで、簡易的に周波数分布算出部6pを構成したのが図32に示す例である。
図32に示すように、振れ量子化値ω1は、カットオフ周波数fc0のLPF6t0と、カットオフ周波数fc1のLPF6t1に入力される。この場合に、カットオフ周波数fc0とカットオフ周波数fc1との関係は、fc0=2fc1となるようにする。カットオフ周波数fc1は、図32に示すカットオフ周波数変更部6uにより、時間と共にカットオフ周波数を可変させる。図32に示す例では、周期Tint0毎に、時間と共に0.5Hzから64Hzまで周波数を増加させている。すなわち、周波数分布算出部6p2は、カットオフ周波数fc1を時間と共に変更可能なバンドパスフィルタ6sを有し、バンドパスフィルタ6sは、互いにカットオフ周波数が異なる複数のローパスフィルタ6t0、6t1から構成されている。
図32に示す周期Tint0は、例えば4秒とする。カットオフ周波数fc1は、時間と共にリニアに変更(図32の点線で示す)するか、曲線的(例えば指数関数的)に変更(図32の実線で示す)する。その後に得られる周波数分布が異なってくるが、それを考慮し、図30に示す振れ状態算出部6b2の作動を変えれば良い。これにより、カットオフ周波数fc1が時間と共に可変され、それによってカットオフ周波数fc0も可変される。従って、カットオフ周波数fc0のLPF6t0の出力値からカットオフ周波数fc1のLPF6t1の出力値を引いた周波数分布Specは、時間と共に帯域(図32に示す例では、帯域0.5〜1Hzに始まり、帯域64〜128Hzまで時間と共に帯域)が変化するこれにより、周期Tint0毎に、振れ波形の帯域0.5〜128Hzの周波数分布が検出される。このような構成にすることにより、処理量が増大することなく、簡易的に周波数分布算出部6p2を構成することができる。
なお、図32に示す例では、BPF6sを2つのLPF6t0、LPF6t1により構成したが、時間と共にカットオフ周波数を可変できるBPFを用いてもよい。
図33に示す例では、さらに、図32におけるBPF6sを2セット設ける。すなわち、BPF6sは、BPF6s1とBPF6s2とを有する。BPF6s1とBPF6s2とは、カットオフ周波数の可変周期Tint0を同一とし、かつ、カットオフ周波数の可変タイミングを互いにずらす。例えば、1/2周期=0.5Tint0ずらす。周期Tint0は、例えば4秒とし、BPF6s1の出力値Spec0と、BPF6s2の出力値Spec1は、2秒ずれて算出される。
すなわち、図33に示す周波数分布算出部6p3は、所定の第1タイミングで周波数分布Spec0を算出するBPF6s1と、第1タイミングとずれた第2タイミングで周波数分布Spec1を算出するBPF6s2とを有する。
または、BPFのセットをさらに増やして、互いに算出間隔をオーバラップさせてもよい。これにより、カットオフ周波数の可変周期Tint0を十分長く保つことで周波数分布の算出精度を十分に確保しつつ、周波数分布の算出される間隔を短くすることができる。
次に、図30に示す周波数分布算出部6pから出力された周波数分布Specから振れ状態を検出する振れ状態算出部6b2の作動に関して述べる。図34は、図30に示す周波数分布算出部6pから出力された周波数分布Specの例を示す。カメラを手持ちして構図が決まった状態では、周波数の中低域から中高域に波形が分布し、手持ちで構図を変更した場合、および流し撮りをしている場合には、低周波帯域に大きなピークを有する分布となる。カメラを三脚に固定した状態では、基本的に全周波帯域で低いが、高周波帯域の特定の周波帯域に大きなピークが発生する場合もある。カメラを含めた三脚自体が特定の周波数で細かく振動している場合である。
図34に示すグラフを基にして、図30に示す振れ状態算出部6b2が行う振れ状態の判定手段について、図35を用いて説明する。図35では、得られた周波数分布の最大ピーク値となる周波数(最大ピーク周波数fpeakとする)を基にして、振れ状態の判定を行う。すなわち、得られた周波数分布Specにおけるfpeakが、fth1≦fpeakであれば、図30に示す振れ状態算出部6b2は、カメラが三脚に固定された状態であると判定する。また、得られた周波数分布Specにおけるfpeakが、fth0≦fpeak<fth1であれば、図30に示す振れ状態算出部6b2は、手持ちで構図が決まった状態であると判定する。そして、得られた周波数分布Specにおけるfpeakが、fpeak<fth0であれば、図30に示す振れ状態算出部6b2は、手持ちで構図を変更している状態か、流し撮り中であると判定する。ただし、fth1>fth0とする。
なお、図34の説明において、所定周波数fth0〜fth1の帯域における周波数分布が、所定値Specth0未満である場合には、図30に示す振れ状態算出部6b2は、カメラが三脚に固定された状態であると判断してもよい。
なお、図30に示す周波数分布算出部6pの出力値(周波数分布Spec)は、図31で述べた例では、出力値Spec0〜7の8つの周波数領域に分割され、出力値Spec0〜7をLPF6r0〜6r7に通す場合には、Spec0L〜Spec7Lの8つの周波数領域に分割され、ヒストグラム状となる。図33に示す例では、分かり易く示す為に、十分に周波数分割がなされるものとして滑らかな曲線で示しているが、周波数分割が少なく、ヒストグラム状となっても本質的な問題ではない。
次に、図30に示す周波数分布算出部6pの出力値(周波数分布Spec)から、撮影者の手振れの特徴を判定する手段について述べる。
一般的に、手持ち撮影の場合には、手の細かい振動に起因する比較的高周波な振れと、体全体の揺れに起因する比較的低周波な振れが存在すると言われている。図36に示すように、撮影者がカメラを構えた時に、体全体の揺れによる振れが支配的な場合には低周波領域に、手の細かい振動が支配的な場合には高周波領域に、それぞれ分布が集中する傾向がある。
図36に示す傾向を踏まえ、図37を用いて、振れ状態算出部6b2が行う具体的な振れ状態の判定方法について述べる。まず、図36に示すように、低周波帯域の周波数分布と高周波帯域の周波数分布との比率U=T/Sを求め、比率Uの値から、撮影者特有の振れのタイプを区分する。すなわち、図36に示す所定周波数fminから所定周波数fth2(fmin<fth2)の間の周波数分布Specの積算値Sと、所定周波数fth2〜所定周波数fmax(fth2<fmax)の間の周波数分布Specの積算値Tとの比率Uを求める。そして、図37に示すように、比率Uと所定値Rth1、Rth2との関係により、低周波な振れが支配的(身体全体が揺れるタイプ)か、高周波な振れが支配的(カメラをホールディングする手の揺れが支配的なタイプ)か、それらの中間的な振れ(標準的な振れ)かの判定を、図30に示す振れ状態算出部6b2が行う。
なお、図31に示すLPF6r0〜6r7の出力値SpeckL(k=0,1,2,…,7)は、LPF6rk(k=0,1,2,…,7)により比較的低い周波数(図31の例ではカットオフ周波数0.1Hz)のLPFが施される為に、時間的に長い間の手振れの周波数分布を算出できる。この周波数分布SpeckL(k=0,1,2,…,7)を用いて、図34〜図37で述べた方法をとれば、さらに正確に振れ状態を判定することができる。具体的には、カメラが三脚に固定された状態なのか、手持ち撮影で構図が決まっている状態なのか、手持ち撮影で構図を変更している状態又は流し撮り中なのか、或いは、撮影者の振れの特徴から、低周波な振れが支配的か、高周波な振れが支配的か、それらの中間的な標準的な振れかを区分することができる。
次に、図38に示すように、長い間隔と短い間隔でそれぞれ周波数分布を算出し、それぞれの周波数分布の算出結果を比較することで、さらに正確に振れ状態を算出する方法について述べる。
図38に示すように、振れ状態判定部6は、周波数分布算出部6pと振れ状態算出部6p3とを有する。周波数分布算出部6pの構成は、図31に示す周波数分布算出部6p1と同様のものとする。周波数分布算出部6pの出力値Speck(k=0,1,2,…,7)が、短い間隔で算出された周波数分布に相当する。そして、周波数分布算出部6pの出力値Speckに対して、カットオフ周波数0.1HzのLPFを施した出力値SpeckL(k=0,1,2,‥‥7)は、時間的に長い間隔で算出された周波数分布に相当する。
図38に示すように、振れ状態算出部6b3は、得られる周波数分布(Spec0,Spec1,…,Spec7)と、得られる周波数分布にLPFを施すことにより得られる長い時間の平均値的な周波数分布との差分をとる。これにより、振れ状態を判定する。すなわち、撮影装置は、振れを検出し、振れ検出信号を出力するジャイロセンサ1(図1に示す)と、振れ検出信号に基づき、所定間隔で第1の周波数分布Speckを算出し、さらに所定間隔とは異なる間隔で第2の周波数分布SpeckLを算出する周波数分布算出部6pと、第1の周波数分布Speckと第2の周波数分布SpeckLとから、振れ状態を検出する振れ状態算出部6b3とを有する。周波数分布算出部6pはLPFを有し、LPFでは、第1の周波数分布Speckに基づき、第2の周波数分布SpeckLを算出する。図38に示す例では、簡略化して第1の周波数分布Speckと第2の周波数分布SpeckLとの差を算出しているが、正確には、個々のkに対して、第1の周波数分布Speckと第2の周波数分布SpeckLとの差を算出する。
ここで、第2の周波数分布SpeckL(k=0,1,2,…,7)からは、LPFにより、時間的に長い間の周波数分布すなわち撮影者の手振れの平均的な周波数分布が得られている。一方、Speck(k=0,1,2,…,7)は、比較的短期間の振れの変化(例えば、構図を変化させた、三脚に固定した等の振れの状態変化)に俊敏に応答する。従って、SpeckLとSpeckの差をとることにより、振れの状態変化が鮮明に反映される。
なお、上述した説明において、平均的な周波数分布を得るためにローパスフィルタを用いたが、長い時間平均を求めるために、例えば移動平均等の手段を用いてもよい。
また、図38における周波数分布算出部6pの構成は、図33に示すBPF6s1、6s2によって構成することもできる。一方のBPF6s1のカットオフ周波数の可変周期Tint1(例えば1秒程度にする)に対して、他方のBPF6s2のカットオフ周波数の可変周期Tint2を長く(例えば10秒程度に)設定し、BPF6s1とBPF6s2との出力値の差を算出することで、上記と同様の作動を行うことができる。すなわち、撮影装置は、振れを検出し、振れ検出信号を出力するジャイロセンサ1(図1に示す)と、振れ検出信号に基づき、所定間隔で第1の周波数分布Speckを算出する第1のバンドパスフィルタ6s1と、所定間隔とは異なる間隔で第2の周波数分布SpeckLを算出する第2のバンドパスフィルタ6s2と、第1の周波数分布Speckと第2の周波数分布SpeckLとから、振れ状態を検出する振れ状態算出部6b3とを有する。
図38に示す振れ状態判定部6による振れ状態の判定手段について、図39および図40を用いて説明する。図39(a)の波形Vは標準的な周波数分布SpeckLを示し、波形Wは、構図の決まった状態から急に構図を変更した場合、又は流し撮りを開始した場合の周波数分布Speckを示す。また、波形Xは、乗り物に乗車した場合の周波数分布Speckを示し、波形Yは、三脚に固定した場合の周波数分布Speckを示す。図39(b)では、図39(a)で示す波形W、X、Yで示す周波数分布Speckから、それぞれSpeckLを減算した結果の波形Wm、Xm、Ymを示す。
具体的には、図38に示す振れ状態算出部6b3は、図40に示すように振れ状態を判定する。まず、所定周波数fmin〜所定周波数fth3(fmin<fth3)の間のSpeck−SpeckLの積算値αが、所定値Specth4以上である場合には、図38に示す振れ状態算出部6b3は、構図が変更された、又は流し撮りを開始したと判断する。これは、構図が変更された場合や流し撮り撮影時には、比較的低周波の大きい振れが発生する為である。
次に、所定周波数fmin〜所定周波数fth3の間のSpeck−SpeckLの積算値αが、α<Specth4の場合について述べる。所定周波数fth3〜fth4(fth3<fth4)の間のSpeck−SpeckLの積算値βが、所定値Specth5以上である場合には、図38に示す振れ状態算出部6b3は、乗り物に乗車したと判定する。これは、乗り物に乗車した場合には、比較的高い特定の周波数の大きな振れが発生する為である。
積算値β<Specth5であり、所定周波数fth4〜fmax(fth4<fmax)の間のSpeck−SpeckLの積算値γが、所定値Specth7以上である場合には、図38に示す振れ状態算出部6b3は、カメラが三脚に固定されたと判断する。これは、比較的柔らかな三脚や、足場の悪い場所に設置された三脚にカメラを固定され、特定の高周波の周波数で比較的大きな振れが発生したことを想定している。積算値γが、所定値Specth7未満である場合には、図38に示す振れ状態算出部6b3は、振れ状態に変化なしと判断する。
積算値βが、所定値Specth6以上でない場合に、図38に示す振れ状態算出部6b3は、カメラが三脚に固定されたと判断する。これは、比較的がっしりした三脚に固定され、周波数全体的に振れが小さい場合を想定している。
なお、図38に示す第2の周波数分布SpeckLは、上述したように比較的算出時間の長い第1の周波数分布Speckを用いるのではなく、撮影者がある程度限定されるのであれば(例えば、比較的高価格な一眼レフカメラであって、使用ユーザがプロ、或いはハイアマチュアであれば)、所定の標準的な振れ周波数分布を用いることができる。この標準的な振れ周波数分布は、多人数の振れデータを収集し、その平均的な振れ周波数分布を求めることで決定する。また、コンパクトカメラであって、使用ユーザがアマチュアに代表されるのであれば、アマチュア用に所定の標準的な振れ周波数分布を用いることができる。この場合にも、標準的な振れ周波数分布は、多人数の振れデータを収集し、その平均的な振れ周波数分布を求めることで決定する。
本実施形態によれば、図30に示す周波数分布算出部6pは、ジャイロセンサなどの出力値から周波数分布Specを算出し、振れ状態判定部6b2は、周波数分布Specに基づいて現在の撮影状態を判定する。これにより、撮影状況に応じた正確なブレ補正を行うことができる。
第4実施形態
以下に述べる以外は前述した第1〜第3実施形態と同様であるが、本実施形態では、度数分布および周波数分布の組み合わせによるブレの検出方法および装置の応用例について述べる。具体的には、図1に示す振れ状態判定部6が、撮影者が構図変更をしているか否か、撮影者が流し撮りをしているか否か、カメラが三脚に固定されているか否か、撮影者が乗り物に乗って撮影しているか否か、撮影者の熟達度、の少なくとも1つについて判定する。
図41に、図1に示す振れ状態判定部6の詳細構成について示す。振れ量子化値ω1は、第2実施形態で述べた複数の度数分布算出手段のいずれかの手段により得られる度数分布His[ωabs](図41では、1例として図16に示す例を用いている)と、第3実施形態で述べた複数の周波数分布算出手段のいずれかの手段により得られる周波数分布Spec(図41では、1例として図30に示す例を用いている)から、振れ状態算出部6b5は、振れ状態を判定する。
次に、図42を用いて、振れ状態算出部6b5による判定手法を説明する。図42は、横軸右方向に周波数fを示し、縦軸下方向にその周波数分布Specを示す。そして、縦軸上方向に角速度ωabsを示し、横軸左方向にその度数分布His[ωabs]を示している。
図42における実線で示す波形は、カメラを手持ちしていて構図が決まった状態の波形である。点線で示す波形は、カメラを手持ち状態で構図を変更している、或いは流し撮りしている状態の波形である。一点鎖線で示す波形は、カメラを三脚に固定した状態の波形である。二点鎖線で示す波形は、乗り物に乗った状態の波形である。
カメラを手持ちしていて構図が決まった状態では、比較的低周波な、かつ比較的小さな振れが支配的で、周波数分布Specと度数分布His[ωabs]のそれぞれの最も大きなPeak値(これを第1Peak値とする)を結んだ交点は、領域aに位置する。また、領域aの中をさらに細分化すると、度数分布His[ωabs]の第1Peak値の大きさにより、図42に示すように、撮影者が上級者か中級者か初心者かを判定することができる。
カメラを手持ちしていて構図を変更した場合、又は流し撮り撮影時には、低周波領域に大きな頻度を有する分布となり、周波数分布Specと度数分布His[ωabs]のそれぞれの第1Peak値を結んだ交点は、図42の領域bに位置する。
カメラが三脚に固定されている場合に、度数分布His[ωabs]は、角速度ωabsが非常に小さい領域に集中し、周波数分布Specと度数分布His[ωabs]のそれぞれの第1Peak値を結んだ交点は、図42の領域cに位置する。また、柔らかな三脚を使用した場合や、足場が悪い場所に三脚を固定した場合、又はカメラに接触して三脚を振動させてしまった場合等には、三脚特有の高周波な振動が表れ、図42の領域cの特に点線で囲まれた領域ctに周波数分布Specと度数分布His[ωabs]のそれぞれの第1Peak値を結んだ点が位置する。
乗り物に乗った場合には、比較的高周波な特定の周波数の大きな振れが発生し、周波数分布Specと度数分布His[ωabs]のそれぞれの第1Peak値を結んだ交点は、図42の領域dに位置する。
本実施形態は、上述した通り、周波数分布と度数分布のそれぞれの第1Peak値を用いて振れ状態を判定する例を示したが、周波数分布と度数分布を用いたものであれば、他の手段もあり得る。例えば、周波数分布と度数分布の第1Peak値に加え、第1Peakの次に小さい第2Peak値を用いてよい。または、上述した度数分布による振れ状態検出方法のように、算出時間の異なる2つの度数分布の差と、算出時間の異なる2つの周波数分布の差とから、振れ状態(特に振れ状態の変化)を検出してもよい。
本実施形態では、度数分布算出部6a5は、図1に示すジャイロセンサなどの出力値から度数分布His[ωabs]を算出し、周波数分布算出部6p5は、ジャイロセンサなどの出力値から周波数分布Specを算出する。振れ状態判定部6b5は、度数分布His[ωabs]および周波数分布Specに基づいて現在の撮影状態を判定する。これにより、撮影状況に応じて、より正確なブレ補正を行うことができる。
第5実施形態
以下に述べる以外は前述した第1〜第4実施形態と同様であるが、本実施形態では、上述した方法で得られた振れ状態に応じて、振れ検出のHPFカットオフ周波数を振れ状態に合わせて最適な値に変更することにより、振れ検出精度を向上させる。
振れ検出用のHPFのカットオフ周波数は、低いほど振れ検出精度が向上するので、カットオフ周波数を低く設定したい。しかし、カットオフ周波数が低いと、上述したように、ジャイロセンサのオフセット電圧や、ジャイロセンサの出力ドリフトの影響を受けやすい。また、構図変更時に弱く、特に構図変更直後の収束時間が大きく、検出誤差も大きくなる。
逆に、HPFのカットオフ周波数が高いほど、ジャイロセンサのオフセット電圧や出力ドリフトの影響を受けづらい。また、構図変更時、特に構図変更直後の収束時間、検出誤差に対しても有利となる。しかし、HPFのカットオフ周波数が振れの帯域に近づき、検出誤差が増加することがある。例えば、HPFのカットオフ周波数を1Hzとした場合に、振れは1Hz程度、あるいはそれ以下の周波数帯域まで存在する為に、HPFの出力値は、印加された振れに対して振幅が減少し、位相は大きくずれる。
図43に、振れ状態とHPFカットオフ周波数との関係を示す。ただし、fc10≦fc11≦fc12≦fc13≦fc14とする。カメラを手持ちし、構図変更していない状態では、画角がほぼ一定な状態で、検出される振れも安定した状態にある。この場合には、HPFのカットオフ周波数を低く設定し、振れの検出精度を向上させる。図43に示す例では、HPFのカットオフ周波数を所定値fc10(例えば0.05Hz程度)に設定する。なお、カットオフ周波数を可変させる方法については、後述する。
次に、振れ状態が、乗り物に乗った状態である場合に、図39(a)等に示す通り、比較的高い周波数の大きな振れが発生していることを想定し、HPFのカットオフ周波数を、構図変更していない時のカットオフ周波数に比較して高めなカットオフ周波数fc11(例えば0.5Hz程度)に設定する。
次に、三脚に固定されるが、柔らかな三脚を使用した場合や、足場が悪い場所に三脚を固定した場合、またはカメラに接触して三脚を振動させてしまった場合等に発生する三脚特有の高い周波数が発生している場合には、図43に示すように高いカットオフ周波数fc14とする。また、三脚特有の高い周波数が発生していない場合には、カットオフ周波数fc14より低めのカットオフ周波数fc13とする。なお、得られた振れ状態から、三脚特有の高い周波数が発生しているか否かを検出できない場合には、三脚に固定された状態では、カットオフ周波数fc13とする。三脚固定時には、たとえ三脚特有の高い周波数が発生していても、手持ち撮影時に発生する手振れ周波数帯域(約1〜15Hzの帯域)の振れは極めて小さく、カットオフ周波数を十分高く、例えば数Hz程度にすることで、ジャイロセンサのオフセット電圧やドリフトの影響を十分に除去し、シャッタ速度を非常に低速にすることができる。
図43に示すように、構図変更している、または流し撮りを行っている最中では、HPFのカットオフ周波数を少し高めとする。図43に示す例では、所定値カットオフ周波数fc12(例えば1Hz程度)にする。構図変更している最中、または流し撮りを行っている最中では、乗り物に乗った状態と三脚に固定された状態との中間的なカットオフ周波数とすることで、ジャイロセンサのオフセット電圧やドリフトの影響を小さく抑えつつ、構図変更後の収束性を向上させる。
さらに、図44に示すように、振れ状態に基づいて構図変更していない状態であると判定される場合には、上述した図20、図21、図42などで述べた方法によって撮影者の熟達度を判定する。すなわち、図44に示すように、上級(カットオフ周波数fc10L)、中級(カットオフ周波数fc10M)、初級(カットオフ周波数fc10H)と分けることも可能である。ただし、fc10L<fc10M<fc10Hとする。こうすることにより、カメラに熟達し、振れの小さな上級者では、HPFのカットオフ周波数が比較的に低く設定されるため、振れ検出性能を上げることができる。そして、初心者等の振れが大きい撮影者では、HPFのカットオフ周波数が比較的に高く設定される。また、図44に示す例では、上級、中級、初級の3段階に分類する例を示したが、図20、図21、図42などに示す第1ピーク角速度に応じて、これを無段階の(あるいは、無段階と見なせる程度に細分化された)カットオフ周波数に変更してもよい。
次に、HPFのカットオフ周波数を可変させる方法について説明する。図45に示す例では、図2に示すA/D変換器4の出力値である振れ量子化値ω1が図45に示す振れ状態判定部6に入力され、振れ状態判定部6で振れ状態が判定され、振れ状態判定結果が出力される。振れ状態判定結果はカットオフ周波数変更部8に入力され、振れ状態判定結果に応じてHPF9のカットオフ周波数を変更するように出力する。図45に示す振れ状態判定部6は、第2〜第4実施形態で述べた手法により振れ状態の判定を行い、カットオフ周波数変更部8は、上述した図43・44に示す手段により、図45に示すHPF9のカットオフ周波数を変更する。HPF9は、HPF9a(図12に示すLPFで構成される)と減算器9bとを有する。
図45に示すHPF9をアナログハードウエアで置き換えることも可能であり、この場合の構成を図46に示す。図46は、HPF3eの構成が図3に示すHPF3cと異なるのみで、ジャイロセンサ1、LPF2、反転増幅部3d、およびA/D変換器4は図3に示すものと同一であり重複する説明を省略する。図46に示すHPF3eは、アナログSW301がオフの時には、コンデンサC301と抵抗R301aの値によりカットオフ周波数fcが決まり、アナログSW301がオンの時には、コンデンサC301と、抵抗R301、R301bの合成した抵抗値によりカットオフ周波数が決まる。アナログSW301がオンの時の抵抗R301a、R301bの合成抵抗値は、アナログSW301がオフの時の抵抗R301aの値より小さくなるので、アナログSW301がオフの時に比べ、カットオフ周波数を上げることができる。
カットオフ周波数の変更は、アナログSW301のオン/オフを制御するカットオフ周波数変更信号により制御され、図45に示すカットオフ周波数変更部8の出力をこのカットオフ周波数変更信号に接続すればよい。図45におけるカットオフ周波数は2種類となるため、図45におけるカットオフ周波数変更部8では、図43・44に示す振れ状態とHPFカットオフ周波数との関係を簡略化し、例えば手持ちで構図変更していない状態の時に、図46に示すHPFのカットオフ周波数fcを低い値fc10とし、手持ちで構図変更していない状態以外の時を高めな値(例えばfc12)とする。また、図46に示すHPF3eの抵抗R301b、アナログSW301と同様な回路を1セット、または複数セットを、抵抗R301b、アナログSW301と並列に接続すれば、さらにもう1段階カットオフ周波数を可変可能である。さらに、同様の回路を複数セット設ければ、さらに複数段のカットオフ周波数を可変可能である。したがって、カットオフ周波数を無段階、あるいはそれに近い複数段数で変更することも可能である。
図47は、図3におけるHPF3cの抵抗R301を、ディジタルポテンショメータ等の抵抗値がディジタル値により可変可能な抵抗R301cに置き換えた場合を示す。図47に示す抵抗R301cのディジタル値のカットオフ周波数変更信号を図45に示すカットオフ周波数変更部8の出力に接続し、図43および図44に示す振れ状態とHPFカットオフ周波数との関係のように、図47に示すHPF3fのカットオフ周波数を可変させる。
第6実施形態
本実施形態では、第1〜第5実施形態で述べた振れ検出装置およびブレ検出方法をカメラに適用した応用例について説明する。
図48は、第1〜第5実施形態で述べた振れ検出装置およびブレ検出方法を応用したディジタルスチルカメラを具体的な例として示したブロック図である。なお、図48では、着脱可能な交換レンズとカメラボディとを有するディジタル一眼レフカメラ、またはコンパクトデジタルカメラを代表して説明している。図48に示す制御部60は、主制御部60aと振れ制御部60bとを有し、ワンチップマイクロコンピュータ等で構成され、カメラ51の全制御を受け持つ。制御部60は、実態は1つの制御手段であり、機能上、主制御部60aと振れ制御部60bに分かれるものとして以下の説明を行う。ただし、これに限定されるものではない。例えば、主制御部60aを、さらに複数の制御ブロックとしたり、複数のワンチップマイクロコンピュータ等で構成してもよい。また、振れ制御部60bを独立したワンチップマイクロコンピュータ等とし、それぞれの制御ブロックをシリアル通信等で通信し、同様な動作を行ってもよい。
カメラ51は、ボディ51aとレンズ鏡筒51bとを有する。カメラ51には、撮影光軸Zと垂直平面の2軸方向(X軸、Y軸方向)にシフト可能な補正レンズ54、ズーミングレンズ53、フォーカシングレンズ55等からなる撮影光学系を有し、被写体からの光を撮像素子59に投影する。
撮像素子59は、主制御部60aにより制御され、主制御部60aは、得られた撮影画像を処理し、撮影結果等を外部液晶モニタ69に表示すると共に、必要に応じて撮影画像を記憶媒体71に記憶、あるいは、記憶媒体71から、記憶された撮影画像の読み出しを行う。
主制御部60aは、ズーミングレンズ位置検出部63によりズーミングレンズ53の位置を検出し、又、ズーミングレンズ駆動部62によりズーミングレンズ53を撮影光軸Z方向に駆動することで、撮影焦点距離を可変する。
主制御部60aは、フォーカシングレンズ位置検出部66によりフォーカシングレンズ55の位置を検出し、又、フォーカシングレンズ駆動部65によりフォーカシングレンズ55を撮影光軸Z方向に駆動することで、撮像素子59面のピントを調整する。撮像素子59面のピント検出は、主制御部60aが、撮像素子59から得られた撮像画を、例えば、撮像面のコントラスト量を検出し、コントラストが極値となるフォーカシングレンズ55の位置がピント位置と判断する。
主制御部60aは、シャッタ駆動部67を用いてシャッタ58を制御し、必要なタイミングでシャッタ58の開閉を行う。主制御部60aは、絞り駆動部74を用いて絞り73を制御し、必要なタイミングで必要な絞り値に制御する。主制御部60aは、必要なタイミングで、閃光回路部71を通じてキセノン管等を用いた閃光部56を発光させるフラッシュ撮影を行うことが可能である。
また、主制御部60aには、操作部68が接続され、ユーザの撮影モード等の情報を入力により設定可能であり、また、設定した撮影モード等の情報を外部液晶モニタ69により、撮影者に表示可能になっている。
主制御部60aは、集音部70から得られたカメラ51の周囲音を集音し、必要に応じて記憶媒体71に記憶、あるいは、記憶媒体71から集音されたデータの読み出しを行う。
主制御部60aは、音圧ブザー、又はスピーカー、及びその駆動回路等を用いた操作音発生部72により、カメラ51の電源を起動した時や、操作部68を操作した場合や、セルフタイマ撮影時、あるいは、撮影時のシャッタ音等を発生させることができる。
カメラ51に生じたX軸方向およびY軸方向の振れをジャイロセンサ100が検出し、補正レンズ54を、ジャイロセンサ100で検出された振れに応じて撮影光軸Zと直交するX−Y平面上でシフトさせることで撮影光軸Zを変化させ、撮像素子59上の振れを補正する。
補正レンズ54のシフトメカニズムは、補正レンズ54の部材に取り付けられた滑り軸がカメラ本体の部材に対して直線的にスライドするように構成され、滑り軸には2つのコイルバネにより弾性的に中立位置付近に保持される。この様な構成の補正レンズシフトメカがこのシフト方向と直交する方向にもう一組構成され、光軸に直交するX−Y平面上を所定の可動範囲内で任意に移動が可能となっている。
次に、図48に示す補正レンズ54の駆動メカおよび補正レンズ54の位置検出機構に関して、図49〜51を用いて述べる。図49は、補正レンズ54を撮影光軸Zに垂直なX−Y平面に沿ってシフトさせる機構を示す模式図である。補正レンズ54を含む可動部81と、カメラ51の鏡筒部51bの部材に固定された固定部80の間に、摺動ボール82をサンドイッチし、付勢バネ83により可動部81と固定部80とを撮影光軸Z方向に付勢する。この摺動ボール82と付勢バネ83は、それぞれ3対設けられ、それぞれの摺動ボール82が、固定部材80および固定部材81の面を転がる、あるいは、摺動することで、補正レンズ54が滑らかに撮影光軸Zと垂直X−Y平面に沿って移動可能となる。
なお、可動部81には、摺動ボール82を取り囲むように可動部突起81a、81bを設け、摺動ボール82が所定の位置範囲内で止まるようにすると共に、可動部突起81a、81bに対して固定部80に設けられた固定部突起80a、80bとにより、可動部81の可動範囲を制限している。
図50は、この可動範囲を示している。図48に示す補正レンズ54の可動範囲は、図49に示す可動部突起81a、81b、および固定部突起80a、80bにより、一辺の長さを2×LCrange(このLCrangeを補正レンズ目標位置リミット範囲と呼ぶこととする)とする正方形内に移動を限定される。なお、本実施形態では、補正レンズの可動範囲の形状は、正方形としたが、これに限定されるものではなく、長方形型でもよいし、正8角形型等でも構わない。
次に、図51を用いて、補正レンズ54の位置検出機構、および補正レンズ54の撮影光軸Zに対して垂直平面に駆動する機構を説明する。図51は、補正レンズ54の駆動機構と位置検出機構を模式的に示した図である。可動部81に位置検出用マグネット85を、固定部80にホール素子89を対向するように配置し、補正レンズ54の移動にほぼ比例してホール素子89の感度軸方向の磁束が変化するよう構成する。一般的にホール素子は、磁束がゼロであるとき、出力がほぼゼロとなり、磁束の大きさに比例してその出力電圧が変化する。従って、ホール素子89の出力を確認することで、補正レンズ54の位置が検出可能となる。
次に、可動部81に駆動用マグネット87を、固定部80にコイル86を対向するように配置し、また、固定部80のコイル86とは逆面にヨーク88を配置する。コイルに流す電流に比例して可動部に電磁力が発生し、補正レンズ54を移動させる。
上述した構成の補正レンズ54の位置検出機構、および駆動機構をX軸、Y軸方向それぞれに設けることで、補正レンズ54を撮影光軸Zと直交する平面内で、前述の可動範囲内の任意の位置に駆動し、また、補正レンズ54の位置を検出可能となる。
次に、図48に示す操作部68と、カメラ51の各種モードの設定に関して記す。図52は、カメラ51を背面(撮影者)側から見たもので、操作部68の各部材、および各種モードの設定に必要な外部液晶モニタ69の配置の例を示したもので、図53は、操作部68と図48に示す主制御部60aを含む制御部60との接続を表した回路図である。
以下に説明する通り、操作部68を構成する各釦は、それぞれが図52に示す各スイッチ(以下、SWと略す)に連動し、各種釦が操作されると、該当するSWがオンする。各SWは、図53に示すように、主制御部60aと同一な電源VDDに抵抗でプルアップされ、かつ、各SWは、主制御部60aに接続されている。これにより、各種釦が操作されていない場合に、その該当するSWはオフで、主制御部60aにHighレベルを出力する。また、各種釦が操作されると、該当するSWがオンとなり、主制御部60aにLowレベルを出力する。これにより、主制御部60aは、各種SWの信号レベルにより、そのSWに該当する釦の操作を認識可能となる。
図52に示すレリーズ釦90は、撮影者が、押し込みストロークの中程まで押し込むことにより、図53に示す半押しSW190aがオンし、そこからさらに深く押し込むことにより全押しSW190bがオンするように構成する。レリーズ釦90を押し込むことにより、後述する撮影動作を開始する等の動作が行われる。
同様に、図52に示すメイン釦91はメインSW191に連動し、メニュー釦93はメニューSW193に連動し、ズームレバー92は、左に倒す(レバーWを押す)ことでズームダウンSW192aが、右に倒す(レバーTを押す)ことでズームアップSW192bがオンする。メイン釦91を押すことにより、後述する通り、カメラ51の作動を開始、あるいは終了する。メニュー釦93を押すことにより、後述するように外部液晶モニタ69に設定メニューが表示され、マルチセレクタ94により各種モード等の設定を行うことができる。ズームレバー92は、左に倒すことでズーミングレンズ53を駆動し、撮影焦点距離をワイド側に、右に倒すことでテレ側にする。
図52および図53に示すように、マルチセレクタ94は、複数の釦とそれに連動するSWにより構成され、マルチセレクタ(中央)釦94aが、マルチ選択(中央)SW194aに、マルチセレクタ(右)釦94bが、マルチ選択(右)SW194bに、マルチセレクタ(上)釦94cが、マルチ選択(上)SW194cに、マルチセレクタ(左)釦94dが、マルチ選択(左)SW194dに、マルチセレクタ(下)釦94eが、マルチ選択(下)SW194eに連動する。
次に、各種モード設定について説明する。撮影モードを始めとする各種モード、各種撮影条件、その他の設定および変更は、図52に示すメニュー釦93、マルチセレクタ94、及び、外部液晶モニタ69などにより行われる。
撮影者がメニュー釦93を押すと、外部液晶モニタ69には、図54に具体的に1例として示す設定メニューが表示される。次に撮影者は、マルチセレクタ94の上下釦(マルチセレクタ(上)釦94c、マルチセレクタ(下)釦94eを操作し、外部液晶モニタ69に表示される現在選択されている部分(図54の例では設定メニューの最上段で“振れ補正作動”が選択されている)を移動させ、変更、設定したい項目を選ぶ。次に撮影者は、図52に示すマルチセレクタ94の左右釦(マルチセレクタ(右)釦94b、マルチセレクタ(左)釦94d)を操作し、選ばれている項目(図54に示す例では、“振れ補正作動”)の設定を変更、設定する。図54に示す例では、現在、四角で囲まれた設定となっていて、マルチセレクタ(右)釦94b、マルチセレクタ(左)釦94dを撮影者が押し込むことで、“AUTO”、“ON”、“OFF”の設定を変えることができる。
以上のように、メニュー釦93、マルチセレクタ94の撮影者による操作を、主制御部60aは、それに連動した各SWのオン/オフを認識し、外部液晶モニタ69に上述したような表示をさせ、各種モード、各種撮影条件、その他の設定、及び、変更を行う。
次に、図48に示す振れ制御部60bの作動について、図55等を用いて説明する。以下に、図55の各部分について詳細に説明するが、以降説明する振れ検出、補正レンズ位置検出、補正レンズ駆動等の作動は、X軸方向とY軸方向の2軸分必要であるが、作動が同一のものは、片軸のみ代表して説明する。
図48に示すカメラ51に配置されたジャイロセンサ100は、図55に示すように、ジャイロセンサ100a(X軸方向用)とジャイロセンサ100b(Y軸方向用)とにより構成される。ジャイロセンサ100a、100bの検出信号を、ジャイロセンサ処理部201a(X軸方向用)、201b(Y軸方向用)により処理し、振れ制御部60bに内蔵されるA/D変換器(不図示)により量子化し、振れ角速度ωを得る。その具体的な回路および方法は、上述した通りである。
次に、振れ制御部60bで行われる、得られた振れ角速度ωから補正レンズ54の制御すべき目標となる補正レンズ目標位置LCの算出方法に関して述べる。図56は、図55に示す振れ制御部60bで行われる目標位置算出部600の作動を示したブロック図である。具体的には、振れ角速度ω(X)から補正レンズ目標位置LC(X)を算出する方法である。ω(X)、LC(X)の(X)は、X軸方向のそれぞれ振れ角速度、補正レンズ目標位置を意味し、以下用いられる記号の後の(X)も同様の意味である。
振れ角速度ω(X)は、角速度のディメンジョンを持ち、一方、補正レンズ54の制御目標となる補正レンズ目標位置LC(X)は、位置のディメンジョンを有する。従って、図56に示すように、振れ角速度ω(X)を積分部600bにより積分し、掛け算部600cにより、補正レンズ目標位置LCの単位に合わせる為の係数KLCを掛け算し、補正レンズ目標位置を算出する。ただし、補正レンズ目標位置LC(X)は、少なくとも補正レンズ54の可動範囲LRrange内であり、リンミット部600dは、図50に示す補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeの範囲に補正レンズ目標位置LC(X)を制限する。なお、積分部600bは、所定間隔で積算することにより積分の作動を行っても構わない。ここで言う所定間隔とは、前述した振れ角速度ωの算出間隔であり、例えば、1ms程度の時間間隔とする。また、図56に示す積分部600bの積分、または積算値の初期値は、振れ検出開始時に初期化(例えば、補正レンズ目標位置LC(X)が可動範囲の中央位置となるように初期化)する。
ここで、振れ角速度ω(X)には、誤差が生じる。具体的には上述した通り、基準となる振れ角速度基準値ω0には誤差が生じているから、振れ角速度ω(X)を積分部600bで積分した場合に、その誤差が累積し、急激に補正レンズ目標位置LC(X)が補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeを越えてしまう。そこで、極力、補正レンズ目標位置LC(X)が、補正レンズ54の可動中心となるよう現在の補正レンズ目標位置LC(X)の大きさに応じて変化する速度バイアス量ωbias(X)を与える。
図56に示す速度バイアス部600e、および減算器600aは、この作動を行う。補正レンズ54の可動範囲の中央の座標を0として補正レンズ位置LR(X)、および補正レンズ目標位置LC(X)を定義した場合に、速度バイアス部600eの出力値である速度バイアス量ωbias(X)は(数3)で、減算部600aの出力ω’は(数4)で示される。
(数3)ωbias(X)=Kbias×LC(X)^3
(数4)ω’=ω(X)−ωbias(X)
ここで、数3における^3は、補正レンズ目標位置LC(X)の3乗の意である。こうして得られるω’は、補正レンズ目標位置LC(X)が補正レンズ54の可動中心位置(=座標0)から離れる程に速度バイアス量ωbias(X)が大きく、かつ、補正レンズ目標位置LC(X)を可動範囲中心位置(=座標0)に戻すよう作用する。なお、(数3)における係数Kbiasは、大きくする程、補正レンズ目標位置LC(X)が、リミット部600dによりその値を制限されることは無くなるが、一方で、振れ補正の効果が劣化する為に、適切に決められる。
以上のような方法で、振れ角速度ω(X)が、補正レンズ目標位置LC(X)に変換される。また、補正レンズ目標位置LC(X)は、リミット部600dによりその値を制限されづらくなる。
次に、補正レンズ54の位置検出は、図55に示すように、ホール素子(X軸用)89a、およびホール素子(Y軸用)89bを、それぞれホール素子処理回路部202a、202bにより処理し、振れ制御部10bに出力する。振れ制御部10bは、ホール素子処理部202a、202bのアナログ信号をディジタル値に変換するA/D変換器(不図示)をその内部に備えていて、ホール素子処理部202a、202bからの出力をディジタル値に変換し、X軸方向、およびY軸方向の補正レンズ54の位置(以下、補正レンズ位置LR(X)、および補正レンズ位置LR(Y)と記す)を検出する。
ホール素子処理部202a、202bについて、具体的な回路図を用いてさらに説明する。図57は、X軸方向の検出用ホール素子89aのホール素子処理部202aの具体的な回路図の1例である。Y軸方向のホール素子処理部202bも同様である。
ホール素子89aは、等価的に図57に示される通り、抵抗4本(これをRh1、Rh2、Rh3、Rh4とする)のブリッジ回路として表すことができる。一般的にホール素子は、磁界がゼロの時に、抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4が一定のバランス状態にあり、出力Vhout−とVhout+の間の電位差は、ほぼゼロとなる。この状態で磁界を加えると、抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4の比率が変化し、出力Vhout−とVhout+の間に電位差が生じる。出力Vhout−とVhout+の間の電位差は、磁界の大きさに比例すると共に、ホール素子に流れる電流(具体的には、入力Vhin+からVhin−に流れる電流)にも比例する。
従って、図57に示すように、ホール素子89aは、演算増幅器OP301a、D/A変換器305a、トランジスタTr304a、抵抗R311aにより構成される定電流回路により、定電流駆動する。抵抗R311aの抵抗値をr331a、D/A変換器305aの出力電圧Vh_iとすると、(数5)に示すように、D/A変換器305aの出力電圧Vh_iに比例した一定電流ihでホール素子89aを駆動することができる。
(数5)ih≒vh_i/r331a
このことにより、製造上の個々に異なる感度特性を有する、かつ、温度により変化するホール素子94aの感度バラツキを、D/A変換器305aの出力電圧Vh_iを適切に設定することで思惑通りの感度に調整可能となる。
次に、基準電源Vhref、および演算増幅器OP302aで構成される回路は、例えば、三端子レギュレータ等により基準電源Vhrefを生成し、その電圧をvhrefとすると、基準電圧vhrefにホール素子89aの一方の出力電圧Vhout−を保つよう動作する。
次に、演算増幅器OP303a、D/A変換器306a、抵抗R312a、R313a、R314a、コンデンサC315aで構成される回路は、ホール素子89aの出力Vhout−とVhout+の間の電位差を作動反転増幅して出力すると共に、D/A変換器306aの出力Vh_offset電圧を、OP302aによって基準電圧vhrefに保たれた出力Vhout−を基準に反転加算増幅して出力する。抵抗R312a、R313a、R314aの抵抗値をそれぞれr312、r313a、r314aとし、ホール素子89aの出力Vhout+電圧、およびD/A変換器306aの出力Vh_offset電圧をそれぞれ、基準電圧vhrefを基準としてvhout、vh_offsetとすると、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)の電圧vhout(X)は、(数6)で示される。
(数6)vhout(X)≒vhref−G0×(vhout−)−G1×vh_offset
ここで、G0=r314a/r312a、G1=r314a/r313aである。
以上のことから、D/A変換器306aを操作し、その出力Vh_offset電圧vh_offsetを可変させることで、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)のオフセット電圧を調整することができる。理想的なホール素子の出力電圧は、磁界がゼロである場合にゼロとなる。しかし、実際には、ホール素子89aを構成する抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4に製造上のアンバランスが生じ、また、使用温度の変化により、出力Vhout−とVhout+の間の電位差がゼロとならない。加えて、演算増幅器303aの入力オフセット電圧も生じる。加えて、補正レンズ54の位置検出器の寸法バラツキにより、補正レンズ54の可動範囲中央でホール素子89aの感度軸方向の磁界が必ずしも0とならない。以上のことから、ホール素子処理部202aの出力Vhoutが思惑通りの電圧とならない。こうした場合に、D/A変換器306aを操作し、その出力Vh_offset電圧vh_offsetを可変させることで、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)を思惑通りの電圧にオフセット調整することができる。
図57に示すように、D/A変換器305a、306aは、共に振れ制御部60bに接続されていて、振れ制御部60bにより制御する。このことにより、ホール素子駆動電流ihを調整し、ホール素子89aの感度バラツキ、温度変動による感度変化、およびホール素子89aのオフセット電圧を始めとするホール素子処理部202aの出力Vhout(X)に含まれるオフセット電圧を調整可能となる。この様子を図58に示す。
図55に示す振れ制御部60bは、図57に示すD/A変換器305aを操作し、その出力電圧Vh_iを可変させることで、ホール素子処理部202aの出力電圧vhoutの補正レンズ位置LRに対する変化量(図58のグラフの傾きに相当)を変化させ、また、D/A変換器306aを操作し、その出力Vh_offsetの電圧を可変することで、ホール素子処理部202aの出力電圧vhoutをシフトさせることができ、これにより、ホール素子処理部202aから思惑通りの出力を得ることが可能となる。図58では、補正レンズ54の可動範囲(補正レンズ位置LR±LRrangeの範囲)において、図57に示すホール素子処理部202aの出力Vhout(X)は、思惑通りの範囲Vadj−からVadj+の出力を得ている。
なお、図57に示す抵抗R312aの抵抗値r312aを小さくし過ぎると、ホール素子89aの出力Vhout+から抵抗R312aに流れる電流が大きくなり、これが誤差となってホール素子出力の検出リニアリティに影響を与える為、適切な値にする。また、コンデンサC315aは、補正レンズ54の位置検出に不要な高周波ノイズを除去するためのもので、適切な容量値に設定する。
次に、図55に戻り、補正レンズ54の駆動量D(X)(X軸駆動量)、駆動量D(Y)(Y軸駆動量)の算出方法について述べる。上述した補正レンズ目標位置演算手法で算出された補正レンズ目標位置LCに、補正レンズ54を制御し、カメラ51に生じた振れを補正するよう補正レンズ54の駆動量D(X)、D(Y)を算出する。具体的には、図59を用いて説明する。
図59は、振れ制御部60bで行われる補正レンズ54の駆動量の演算を行う駆動量演算部610の作動を示したブロック図である。振れ制御部60bは、図59で示される駆動量演算を、補正レンズ54を制御する為に、十分短い間隔である所定時間間隔(これを制御サンプリング間隔tsと言うこととする)で行う。この制御サンプリング間隔tsは、例えば、1msとする。
図59に示す減算部610aにより、補正レンズ目標位置演算手段で算出された補正レンズ目標位置LCに対する補正レンズ位置検出で算出された補正レンズ位置LR(X)との差(数7)すなわちΔL(X)を算出する。
(数7)ΔL(X)=LC(X)−LR(X)
ここで、ΔL(X)は、目標位置に対する実際の補正レンズ54の位置との差であるから、制御誤差に相当する。
次に、この制御誤差ΔL(X)から、図59に示す乗算部610eによる(数8)の演算により比例項駆動量Dprop(X)を、乗算部610dによる(数9)の演算により積分項駆動量Dinte(X)を、乗算部610fによる(数10)の演算により微分項駆動量Ddiff(X)をそれぞれ算出し、加算部610gによる(数11)の演算により、それらの加算値として補正レンズの駆動量D(X)を算出する。
(数8)Dprop(X)=Kprop×ΔL(X)
(数9)Dinte(X)=Kinte×Σ(ΔL(X))
(数10)Ddiff(X)=Kdiff×(今回のΔL(X)−前回のΔL(X))
(数11)D(X)=Dprop(X)+Dinte(X)+Ddiff(X)
ここで、(数8)〜(数11)に示す演算は、制御サンプリング間隔ts毎に行われる為に、(数9)におけるΣΔL(X)とは、制御誤差ΔL(X)を所定間隔tsで積算することを意味し、これは積分と見なすことができる。同様に、(数10)における前回のΔL(X)とは、1つ制御サンプリング間隔ts前のΔL(X)を示し、今回のΔL(X)−前回のΔL(X)とは、所定間隔ts間の制御誤差ΔLの変化量を意味し、これは微分と見なすことができる。従って、上述した(数8)〜(数11)で駆動量を算出し、補正レンズ54を制御することをPID(比例−積分−微分)制御と言う場合がある。なお、ΣΔL(X)の初期値、および、前回のΔL(X)の初期値は、駆動量演算部610の作動開始時、つまり、補正レンズ54の制御を開始する直前でゼロとする。
なお、図59に示す駆動量演算部610は、以下に述べる図60に示す構成でもよい。図60は、振れ制御部60bで行われる補正レンズ54の駆動量の演算を行う駆動量演算部611の作動を示したブロック図である。
図60に示す減算部611aにより、補正レンズ目標位置演算手段で算出された補正レンズ目標位置LCに対する前項補正レンズ位置検出で算出される補正レンズ位置LR(X)との差をΔL(X)を算出する。算出された制御誤差ΔL(X)は、ディジタルフィルタ部611bに送られる。ディジタルフィルタ部611aでは、入力されたディジタル値に対し、例えば図60に示すような特性を有するディジタルフィルタを施し、次に乗算部611cにより適正な制御ゲインGdが乗算され、補正レンズ54の駆動量D(X)として出力する。
図60で示すディジタルフィルタの特性(ゲインと位相の周波数特性)、および制御ゲイン値Gdは、図49、図50で示す補正レンズ54の駆動メカニズムの特性に合わせ、その特性を設定する。一般的に、補正レンズ駆動メカニズムは、高周波に対して応用性が悪く、周波数が高くなるほどゲインが減少し、位相が遅れる。図60の例では、これを補うべく、中域周波からゲインを上昇させると共に、位相を進めている。
上述した方法で、X軸、Y軸の補正レンズ54の駆動量D(X)、D(Y)が算出され、図55に示す振れ制御部60bは、図55における駆動部203a(X軸用)、駆動部203b(Y軸用)を通じて補正レンズ駆動用のコイル86a(X軸用)、コイル86b(Y軸用)を駆動し、補正レンズ54を補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)の位置に制御する。なお、図55に示す駆動部203a、203bには、電源VPが接続されている。駆動部203a、203bには、公知のモータドライバが使用可能で、例えば、Hブリッジ型のモータドライバを使用し、振れ制御部60bは、PWM(Pulse Width Modulation)回路(不図示)を内蔵するよう構成し、駆動量D(X)、D(Y)は、PWM波形のduty値とすることができる。振れ制御部60bに使用するようなワンチップマイクロコンピュータには、PWM波形が生成可能な回路が内蔵されるものが多く存在する。
ここで、撮影者が行わなくてはならなかった撮影設定の従来の不都合な点について述べる。振れ補正を行う場合、振れを打ち消すよう補正レンズを制御するが、一般的に、補正レンズの制御のゲインを上げる程、または制御帯域を上げる程、制御性が改善し、振れ補正性能は向上する。しかし一方で、制御音が大きくなり、撮影者(ユーザー)に耳障りとなる為に、振れ補正の性能を優先させるか、静音を優先させるか、双方を両立させる中間的な設定とするのが一般的である。
また、レリーズ釦を全押しして行われる撮影動作時には、一旦、補正レンズをその可動範囲の略中央位置にセンタリングし、そのセンタリングされた略中央位置から検出された振れに応じて補正レンズを駆動制御、つまり、振れ補正を開始し、その後、撮影動作を開始する。これは、補正レンズを略中央位置にセンタリングすることで、撮影光学系の光学性能劣化を極力抑え、かつ、撮影時に補正レンズが可動範囲中央から振れ補正が開始される為に、より大きな振れに対して振れ補正が可能となる一方で、レリーズタイムラグが増加する。また、撮影終了後に補正レンズをその可動中心にセンタリングすることで、撮影後、即座に大きな振れに対応できるが、一方で、撮影結果と撮影後の画角が変化する等の不都合が生じる。これに対し、カメラの作動や撮影モードにより、この補正レンズのセンタリングを撮影前、および撮影後に行うか否かを自動的に切り替えることが可能な技術が知られている。しかし、全ての撮影シーンに対して有効に効くわけではなく、撮影シーンによっては、例えば、流し撮りや三脚に固定した場合、車に乗った状態、あるいは、撮影者が初心者であるか上級者であるか等によっては、必ずしも最適な切替えを行っているとは言えない。
また、一眼レフカメラ、あるいはコンパクトカメラでも高級なカメラには、被写体輝度に依存して決定される絞り値とシャッタ速度とを決定するプログラム線図を、より高速秒時となりやすくした高速プログラム線図、より低秒時になるような低速プログラム線図等の複数のプログラム線図を設け、撮影者にこれを選択させたり、スポーツモード、ポートレートモード、花火モードといった撮影シーンモードを設け、これを撮影者に選択させたりしている。撮影者は、この撮影状況に応じてどのモードを選択したら良いのか分からなかったり、モードが多すぎてどれを選択したらよいのか迷うことがある。また、撮影シーンには、流し撮りや三脚に固定した場合、車に乗った状態、あるいは、撮影者が初心者であるか上級者であるか等によっては、従来技術では常に最適なプログラム線図が設定されるとは言えない。
また、被写体の輝度を測光する測光モードとしては、例えば画角中央を重点的に測光し被写体の輝度を算出する“中央重点測光”モードと、画角全体を複数の領域に分け、複数領域から得られた輝度を適切に重み付けして測光結果を得る“多分割評価測光”モードなどがある。“中央重点測光”モードにおいては、撮影画角中央に被写体がない場合に、測光結果に誤差が生じ、あるいは、測光の為に被写体が撮影画角中央にくるようにカメラの向きを一旦変更させて測光させる必要がある。“多分割評価測光”モードでは、流し撮り時や、撮影画角内に輝度差の大きい物体(例えば太陽やランプ光)が入り込んだ場合、その輝度に振られやすい。
また、AFモードであるが、レリーズ釦が全押しされるまで、繰り返し被写体を測距し、フォーカシングレンズを動かして撮像素子面のピントを合わせ続ける“コンティニュアスAF”と、レリーズ釦の半押しにより起動し、被写体を測距し、フォーカシングレンズを動かして撮像素子面のピントを合わせた時点で、この被写体を測距しフォーカシングレンズを合わせる作動を終了する、つまり、その時点でピントを固定する“シングルAF”などがある。“コンティニュアスAF”は、動き続ける被写体に対してピントを合わせ続ける場合に有利で、また、“シングルAF”は、静止、または動きの遅い被写体に対してピントを合わせて、一旦ピントが合った後はそのピント位置を動かしたくない場合や、画角内に思惑とは別の被写体が飛び込んできても、そちらにピントを振られたくない場合等に使用する。シングルAFでは、レリーズ釦を半押しして一旦合焦した後に、被写体が移動する、あるいは、構図変更して被写体を変更する場合に、レリーズ釦を再度半押しなければならない。では、その場合にコンティニュアスAFすれば良いかというと、頻繁に被写体を追い続け、その度、フォーカシングレンズが駆動されるので、煩わしい。
また、測距エリアであるが、測距エリアとは、撮影画角内のピントを合わせる領域のことを言い、撮影画角中央の領域を使用したり、最近では、撮影画角全体に複数の測距エリアを設けたカメラがある。また、これら複数設けられた測距エリアのどこを測距するかをユーザが選択できる機能も搭載されている。一般的に、画角中央の1エリア、または、撮影者が選択した1エリアを測距する“1点エリア”モードと、画角全体の全エリアを測距し、その内の1点をカメラが自動で選択する“多点エリア”モード等がある。1点エリアAFであると、動く被写体に合わせづらく、また、画角中央にない被写体では、画角をずらして測距エリアに被写体を重ねなければならないし、多点測距では、思惑通りでない被写体に測距値が振られやすい。
また、フラッシュ撮影モードであるが、一般的なカメラには、フラッシュの発光を禁止して撮影を行う“発光禁止”モードや、常にフラッシュを発光させて撮影を行う“強制発光”モード、および、カメラが撮影状況に応じてフラッシュの発光/非発光を選択する“AUTO発光”モードのように、大きく分けて3種類のモードがあり、撮影者は、撮影シーンに応じてこの3種類の発光モードを選択する。設定し忘れて、発光させたいのに発光しない、あるいは、発光させてはならないシチュエーションで発光してしまう等の失敗が起きやすい。例えば、流し撮り等で、“強制発光”モードや“AUTO”モードに設定されていて、フラッシュを発光してしまう等の失敗などがある。また、フラッシュ撮影のモードには、撮影秒時を低速側にまで持ってゆく“スローシンクロ”モード等もあり、上述した3種類の発光モードと合わせると、複雑で設定するのが煩わしい。
また、ISO感度の設定であるが、一般的なカメラには、ISO感度をカメラが自動で設定する“AUTO”モードと、撮影者が設定する“手動”モードとを切り替えることができ、“手動”モード時には、ユーザがISO感度を設定する。一般的に、ISO感度が高ければ高速なシャッタ速度で撮影でき、手振れも発生しづらいが撮影画像に印加されるノイズが大きくなる。また、ISO感度が低ければシャッタ速度は低速となり、手振れが発生しやすいが、撮影画像のノイズが小さく高画質な画像を得ることができる。“AUTO”モードでは、カメラは、被写体の輝度に合わせて最適なISO感度を設定しているが、流し撮りや、三脚に固定して撮影するシーンなど、カメラ任せでは撮影者が意図する撮影ができず、撮影者はその場合に“手動”モードにより、逐一ISO感度を設定することとなる。
また、連写モードであるが、一般的に、レリーズ釦を全押ししている間に複数回の撮影が行われる“連写撮影”モードと、レリーズ釦の1回の全押しで一回の撮影が行われ、レリーズ釦を全押しし続けてもそれ以上の撮影を行うことができない“単写撮影”モードなどがある。ユーザは、この設定が煩わしかったり、設定し忘れて、連写したくないのに連写してしまったりという撮影の失敗がある。
また、動画撮影時のフレームレートであるが、一般的に動画撮影を行うカメラにおいては、1秒間に撮影が行われるフレーム数(これをフレームレートと呼ぶ)を変更可能なカメラがある。フレームレートを高速とすれば、撮像結果の振れ量は小さくなり、また、動きの大きい被写体を滑らかに撮影することができる。ただし、撮影結果の記憶容量が膨大になる。一方で、フレームレートを低速とすれば、撮影結果の記憶容量が小さくて済むが、動きの大きい被写体を滑らかに撮影することができなくなる。撮影者は、記憶容量と撮影品質とを天秤に掛け、フレームレートを設定することとなり、煩わしい。ユーザが望む撮影品質は、撮影シーンにより、撮影の度に異なることが多く、撮影の度にフレームレートの設定をするのは煩わしい。
また、撮影画像へのデータの写し込みであるが、撮影画像への撮影日時の情報を写し込むことのできるカメラがある。撮影日時を写し込むことはできるが、撮影後、時間が経過すると、撮影したシチュエーションを思い浮かべることができない。
以上、カメラの作動や撮影モードに関しての不都合を説明したが、全体を通して、撮影者は、撮影を行う時に、プログラム線図を例えば高速プログラムモードに設定し、測光モードを例えば評価測光モードに設定し、AFモードを例えばシングルAFに設定し、AFエリアを例えば多点エリアに設定し、ISO感度を例えばISO100に設定し、といった具合に、撮影シーンに合わせて幾つもの設定を行う必要があり、非常に煩雑な操作を要求される。あるいは、このような設定をあきらめて、カメラ任せの“AUTO”とする場合には、なかなか撮影シーンに合わせた撮影者の思惑通りには撮影ができないことが多い。
そこで、近年、コンパクトカメラや一眼レフカメラなどにおいて、撮影シーンを撮影者がカメラに設定し、設定された撮影シーンに応じて、カメラが上述したプログラム線図や測光方法やその他の細かい設定の変更を行い、撮影シーンに最も適した撮影を行うことを目的としたカメラが増加してきている。例えば、高速プログラム線図を用いたスポーツモードや、絞りをより明るく設定するポートレートモード、撮影打ち切り秒時を大きく低速シャッタ速度にした花火モード等である。しかし、実際には、予め用意されたこれらの撮影シーンと微妙に異なるシチュエーションである場合が多い。例えば、ポートレートモードでも、手持ちで撮影する場合や、三脚にカメラを固定する場合などの撮影状況に応じて、最適な絞り値やプログラム線図などは異なるはずである。
そこで、本実施形態では、第2〜第5実施形態で述べたような振れ状態に応じて、カメラの作動を最適なものに変更する具体例について説明を行う。図61〜図63に、検出された振れ状態に応じたカメラの作動についてまとめてある。ただし、本実施形態では、撮影状態の検出は第2〜第5実施形態で述べたような振れ状態を解析して撮影状態を判断する方法および装置に限定されず、その他の方法および装置により、撮影状態を検出しても良い。
まず、振れ状態に応じた振れ補正の作動切替えについて述べる。図52〜図54に示すように、撮影者が制御部68を操作することにより、振れ補正作動の“AUTO”、“ON”、“OFF”の何れかが選択されている。
振れ補正作動が“ON”の場合には、図61に示すように、振れ状態に関わらず、常に振れ補正を作動させる。具体的には、図55に示すジャイロセンサ100a、100b、およびジャイロセンサ処理部201a、201bによって得られる振れ信号を、振れ制御部60bに内蔵されるA/D変換器(不図示)により量子化し、上述した方法で振れ角速度ωを得る。そして、図56に示す方法で、補正レンズ目標位置LCを算出し、図57および図58に示す方法で補正レンズ位置LRを検出し、図59または図60に示す方法で補正レンズ駆動量Dを算出し、図55に示す補正レンズ駆動用コイル86a、86bを駆動させ、補正レンズ54を制御することにより振れ補正を行う。
振れ補正作動が“OFF”の場合には、図61に示すように、振れ状態に関わらず、常に振れ補正を非作動とする。具体的には、図55に示す振れ制御60bは、駆動量D(X)、D(Y)を共に0として、補正レンズ54を駆動しないか、あるいは、補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)を共に、補正レンズ54の可動中心位置に固定し、この可動中心位置に補正レンズ54を制御する。
振れ補正作動が“AUTO”の場合には、図61に示すように、振れ状態により、振れ補正の作動を変更する。具体的には、構図変更していない場合であって三脚に固定されている場合、および乗り物に乗った状態が検出された場合には、振れ補正作動が“ON”の場合と同様の方法で振れ補正を行う。そして、構図変更中、または流し撮り撮影が検出された場合には、構図変更、または流し撮り方向については、振れ補正作動が“OFF”の場合と同様の方法で、振れ補正を行わず、非構図変更、または非流し撮り方向については、振れ補正作動が“ON”の場合と同様の方法で、振れ補正を行う。
このように、構図変更中、または流し撮り撮影が検出された場合に、構図変更、または流し撮り方向の振れ補正を非作動とすることで、撮影者が構図変更している時の不快感(例えば、構図を変更しようとしたのに、振れ補正が作動してしまい、構図を変更しづらいと言った不具合)や、あるいは、流し撮り時にも同様この不快感が発生し、また、流し撮り方向に振れ補正が行われてしまい流し撮りの効果が薄れるといった不都合を解消することができる。
なお、撮像面の振れは、撮影焦点距離に比例して大きく成るため、別の例として、撮影焦点距離が短いカメラである場合、同一の振れ量があっても撮像面の振れ量は小さく、許容できるとして、上記の三脚に固定されている場合には、振れ補正を行わなくしても構わない。
次に、振れ状態により、図56に示す目標位置演算部600のリミット部600dの作動を変えて補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeを変更することで、振れ補正時の補正レンズの制御範囲を変更する場合について述べる。
具体的には、図64に示す例を用いて説明する。図64に示す例では、撮影焦点距離fmmが長くなるほど補正レンズ目標位置リミット範囲LCsrangeを大きくして、振れ補正時の補正レンズの制御範囲を広げている。これは、撮影焦点距離が長いほど撮像面の振れ量が大きく、補正レンズ54の制御範囲も広げる必要があるためである。テレ端時とワイド端時のこの様子を図50に示す。また、図61および図64に示すように、振れ状態により、補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeを変更して振れ補正時の補正レンズの制御範囲を変更する。図61および図64に示す例では、補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeを広いタイプと狭いタイプの2種類設け、構図変更していないことが検出された場合と、構図変更中であることが検出された場合であって非構図変更方向または流し撮り時の非流し撮り方向と、乗り物に乗ったことが検出された場合には、広いタイプを使用する。また、構図変更中であることが検出された場合であって構図変更方向または流し撮り時の流し撮り方向と、三脚に固定されていることが検出された場合には、狭いタイプとする。
構図変更中の構図変更方向または流し撮り時の流し撮り方向の振れ補正時の補正レンズ54の制御範囲を狭めているのは、上述した振れ状態と振れ補正の作動切替えと同様に、振れ補正範囲を狭めることで、撮影者が構図変更している時の不快感、(例えば、構図を変更しようとしたのに振れ補正が作動してしまい、構図が変更しづらいと言った不具合)や、流し撮り時の同様の不快感、また、振れ補正が行われてしまい流し撮りの効果が薄れるといった不具合を軽減する為である。なお、この作動を行う場合に、上述した振れ状態と振れ補正の作動切替えで述べた構図変更中の構図変更方向または流し撮り時の流し撮り方向の振れ補正の非作動は行わない。
次に、振れ状態に応じて、図56に示す速度バイアス部600eの作動を変更する場合について説明する。図65は、補正レンズ目標位置LC(X)に対する速度バイアス量ωbiasの関係を示すグラフである。構図変更時等の大きい振れが発生した場合に、補正レンズ目標位置LCがそのリミット値の補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeに到達してしまい、それ以上振れ補正ができないようになってしまう。速度バイアス量ωbiasを大きくすることで、この頻度を減らすことができる。しかし一方で、図56示すように、振れ角速度ωに対して速度バイアス量ωbiasが減算されるため、構図変更時等の大きい振れが発生していない通常時の振れ補正の効果が減少する。そこで本実施形態では、振れ状態に最適な速度バイアス量ωbiasを設定する。具体的には、図65に示すように、“強い”(図65の点線で示す)、“中” (図65の一点鎖線で示す)、“弱い” (図65の実線で示す)の3種類の速度バイアスを用意する。
図61に示すように、構図変更していない場合、および、構図変更中の非構図変更方向、流し撮り中であって非流し撮り方向は、“弱い”速度バイアスとし、振れ補正の効果を効かせる。構図変更中であって構図変更方向、流し撮り中であって流し撮り方向は、“強い”速度バイアスとし、補正レンズ目標位置LCがそのリミット値の補正レンズ目標位置リミット範囲±LCsrangeに到達してしまい、それ以上振れ補正ができないようになってしまう頻度を減らす。
ここで、速度バイアスが小さい場合には、ジャイロセンサの出力ドリフトにより、ジャイロセンサの出力から最終的に得られる補正レンズ目標位置LCは、ゆらゆらと変動し、ファインダ像が安定しづらい。これは、ファインダ像を注視されやすい場合すなわちカメラが三脚に固定されている場合に発生する。そこで、振れ状態が、三脚に固定された状態では、“強い”速度バイアスとする。また、振れは比較的大きいが、構図変更時程ではない乗り物に乗った状態では、これらの中間的な“中”の速度バイアス量とする。
次に、振れ状態に応じて、図59に示す駆動量演算部610、または図60に示す駆動量演算部611のゲインを可変させる。一般的に、補正レンズ54の制御は、その制御ゲインを大きく設定することで、制御性、追従性が向上し、制御誤差が減少する。振れ補正の性能を向上させる為には、極力制御ゲインを大きく設定して制御性、追従性を向上させることが望ましいが、一方で、制御した時に制御音が大きくなる。図49に示す摺動ボール82が、相対する固定部80および可動部81の摺動面との摺動音、あるいは付勢バネ83、または可動部81が細かく変位する音、またはそれに誘発して他の部材から音が発生する等が上げられる。従って、振れ補正の性能を優先させるか、静音を優先させるか、双方を両立させる中間的な設定とするのが一般的である。
本実施形態では、図61に示すように、振れ状態に応じてこれ制御ゲインを変更する。構図変更していないと判定された場合には、比較的大きな振れは発生しないため、補正レンズ54の制御性は中間的で構わない。制御ゲインを“中”とし、振れ補正の性能、静音の双方を両立させる中間的な設定とする。構図変更中や流し撮り時と判定された場合には、比較的大きな振れが発生している為に、補正レンズ54の制御性を重視し、“高い”制御ゲインとする。三脚に固定されていると判定された場合、振れは小さいが、三脚に固定して撮影するのであるから、撮影者からは、一段と高い振れ補正性能を期待される。したがって、三脚に固定された状態である場合には、“高い”制御ゲインとする。乗り物に乗った状態と判定された場合では、振れは大きく、また、比較的高周波な振れが発生することもある。また、補正レンズ54の制御音が多少大きくても周囲の騒音により聞こえづらい。従って、乗り物に乗った状態である場合には、“最強”の制御ゲインとする。
具体的な制御ゲインの変更方法は、図59に示すような補正レンズ54の制御方法を用いた場合、図66の例1に示すように、振れ状態に応じて、図59における制御係数の比例項係数Kprop、積分項係数Kinte、および、微分項係数Kdiffを変更する。また、図60に示すような補正レンズ54の制御方法を用いた場合、図66の例2に示すように、振れ状態に応じて、図60における制御ゲインに相当する係数Gdを変更する。なお、図66におけるKprop0、Kinte0、Kdiff0、Gh0は、構図変更していない状態における各係数の最適値で、振れ状態が上述した以外では、分かり易くするために、その値に対して何倍といった示し方をしている。
次に、振れ状態に応じて図59に示す駆動量演算部610、または図60に示す駆動量演算部611の制御帯域を変更する。一般的に、補正レンズ54の制御は、その制御帯域を高帯域側に広く設定することで、制御性、追従性が向上し、制御誤差が減少する。振れ補正の性能を向上させる為には、極力制御帯域を大きく設定して制御性、追従性を向上させることが望ましいが、その一方で、制御帯域が増した高周波側で、補正レンズ54を細かく制御することとなり、耳障りな高周波側の制御音が増加することとなる。そこで、振れ補正の性能を優先させるか、静音を優先させるか、双方を両立させる中間的な設定とするのが一般的である。
本実施形態では、図61に示すように、撮影状況に応じて制御帯域を変更する。構図変更していないと判定された場合には、比較的大きな振れは発生しないため、補正レンズ54の制御性は普通で構わない。制御帯域を“中帯域”とし、振れ補正の性能、静音の双方を両立させる中間的な設定とする。構図変更中や流し撮り時であると判定された場合には、比較的大きな振れが発生している為に、補正レンズ54の制御性を重視し、“広帯域”な制御帯域とする。三脚に固定されていると判定された場合には、振れは小さいが、三脚に固定して撮影するのであるから、撮影者からは、一段と高い振れ補正性能を期待される。したがって、三脚に固定された状態である場合、“広帯域”な制御帯域とする。乗り物に乗っていると判定された状態では、振れは大きく、また、比較的高周波な振れが発生することもある。また、補正レンズ54の制御音が多少大きくても周囲の騒音により聞こえづらい。従って、乗り物に乗っていると判定された場合、“最広帯域”の制御帯域とする。
制御帯域の具体的な変更方法は、図59に示すような補正レンズ54の制御方法を用いた場合、図67に示すように、振れ状態に応じて、図59における制御サンプリング間隔tsを変更する。また、図60のような補正レンズ54の制御方法を用いた場合に、図60におけるディジタルフィルタ部611bを変更し、図68に示すように高周波側の周波数特性を変更し、広帯域化する。
次に、振れ状態に応じて、撮像作動の直前、および直後の補正レンズ54の可動中心へのセンタリングの有無を切り替える。まず、図69のタイミングチャートを用いて、撮像前後の補正レンズ54の可動中心へのセンタリングの有無を切り替える作動について説明する。
振れ制御部60bは、タイミングt30の以前は、上述した方法で図55に示すジャイロセンサ100a、100bの出力に基づく振れ角速度ω(X)、ω(Y)から図56に示す方法で補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)を算出し、一方で、図55に示すホール素子89a、89bの出力に基づく補正レンズ位置LR(X)、LR(Y)とから、図59または図60に基づく駆動量演算を行い、駆動量D(X)、D(Y)を算出し、図55に示す駆動部203a、203bを通じてコイル86a、86bを駆動することで振れ補正を行っている。一方、この間、主制御部60aは、撮像素子59から得られる撮像画像を取得し、外部液晶モニタ69にリアルタイムに表示(これを“モニタ画表示”と呼ぶことにする)を行い続けている。
主制御部60aは、図69に示すタイミングt30において、レリーズ釦の全押しSW190bがオンしたことを認識すると、タイミングt31において、外部液晶モニタ69による撮像素子59による画像のモニタ表示を停止し、タイミングt32にて撮像素子59の動作を一旦停止する。
次に、タイミングt32において、振れ制御部60bは、後述する振れ状態に応じて、撮像直前での補正レンズ54のセンタリングを行う場合(図69の“a”に相当)には、補正レンズ54の補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)を現在の補正レンズ目標位置LCを初期値として、所定の傾きVc0で可動範囲の略中央に向けて変化させる。このことにより、図59に示す駆動量演算部610、または図60に示す駆動量演算部611により、補正レンズ54は、徐々にその可動範囲略中央にセンタリングされてゆく。
逆に、後述する振れ状態に応じて、撮像直前での補正レンズ54のセンタリングを行わない場合(図69の“b”に相当)には、補正レンズ54のセンタリングを行わないで、後述するタイミングt34の動作を行う(図69では、センタリングするか否かを同一の図に記載したため、タイミングt33からタイミングt34の間を単に待っているように描かれているが、その必要はなく、タイミングt33からのセンタリングを行わず、直接、タイミングt34からの動作を行う)。
次に、振れ制御部60bは、補正レンズ54が可動範囲の略中央にセンタリングされると、図69に示すタイミングt34にて、振れ補正の動作を再開する。具体的には、上述した方法でジャイロセンサ100a、100bの出力に基づく振れ角速度ω(X)、ω(Y)から図56に示す方法で補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)を算出し、一方で、ホール素子89a、89bの出力に基づく補正レンズ位置LR(X)、LR(Y)とから、図59または図60に基づく駆動量演算を行い、駆動量D(X)、D(Y)を算出し、駆動部203a、203bを通じてコイル86a、86bを駆動することで振れ補正を行う。
次に、主制御部60aは、図69に示すタイミングt35において、撮像素子59による撮像動作を開始し、その後、必要な撮影秒時が終了すると、タイミングt36においてシャッタ58を閉じ始め、タイミングt38でシャッタ58が完全に閉じて撮像動作が終了する。このシャッタ58が閉じるまでの間(タイミングt36からタイミングt38の間)に、閃光部56を作動させフラッシュ撮影を行う場合には、必要なタイミング(図69の例では、タイミングt37)で、閃光回路部71を作動させ、閃光部56を発光させる。
次に、主制御部10aは、タイミングt38でシャッタ58が完全に閉じて撮像動作が終了すると、タイミングt39において撮像素子59の撮像動作を終了し、タイミングt40から撮像素子9の撮像画像の読み出しを開始する。
一方、振れ制御部60bは、少なくとも主制御部10aにより、シャッタ58が完全に閉じきって撮像が終了した後のタイミングt41にて、今まで行っていた振れ補正動作を終了、具体的には、補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)の今時点の値を保持させ、その位置に補正レンズ54を制御させる。
主制御部10aは、タイミングt40から開始した撮像素子59の撮像画像の読み出しがタイミングt42にて終了すると、次に、その撮像結果をタイミングt43から外部液晶モニタ69に表示(これを“撮影画表示”と言うこととする)させ、タイミングt44から、閉じているシャッタ58を開き始め、元の状態に戻し始める。
次に、主制御部60aは、タイミングt43から始められた“撮影画表示”を終了し、“モニタ画表示”に戻す(タイミングt49に相当)わけであるが、その前に振れ制御部60bは、タイミングt45において、後述する振れ状態に応じて、撮像終了後の補正レンズ54のセンタリングを行う場合(図69の“d”に相当)には、補正レンズ54の目標位置LC(X)、LC(Y)を現在の補正レンズ目標位置を初期値として、所定の傾きVc0で符号を可動範囲の略中央となるよう変化させる。このことにより、補正レンズ54はが、徐々にその可動範囲概中央にセンタリングされてゆく。
逆に、後述する振れ状態に応じて、撮像終了後の補正レンズ54のセンタリングを行わない場合(図69の“e”に相当)には、振れ制御部60bは、補正レンズ54のセンタリングを行わないで、後述するタイミングt46の動作を行う(図69では、センタリングするか否かを同一の図に記載しているため、タイミングt45からタイミングt46の間を単に待っているように描かれているが、その必要はなく、タイミングt45からのセンタリングを行わず、直接、タイミングt46からの動作を行って構わない)。
振れ制御部60bは、補正レンズ54のセンタリングを行った場合には、可動中心へのセンタリングが少なくとも完了したタイミングt46において、また、補正レンズ54のセンタリングを行わなかった場合には、タイミングt45とタイミングt46は同一タイミングとなるが、レリーズ釦90が全押しされる前(図69のタイミングt30以前)の状態に戻す。つまり、振れ補正の作動を再開する。具体的には、前述の方法でジャイロセンサ100a、100bの出力に基づく振れ角速度ω(X)、ω(Y)から図56に示す方法で補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)を算出し、一方で、ホール素子89a、89bの出力に基づく補正レンズ位置LR(X)、LR(Y)とから、図59または図60に基づく駆動量演算を行い、駆動量D(X)、D(Y)を算出し、駆動部203a、203bを通じてコイル86a、86bを駆動することで振れ補正を行う。
主制御部10aは、タイミングt46で振れ補正が再開されると、タイミングt47から撮像素子59の動作を再開し、タイミングt48から外部液晶モニタ69による“撮影画表示”を終了し、タイミングt49から撮像素子59の撮像画の“モニタ画表示”を再開させる。
以上説明した通り、レリーズ釦90が全押しされて行われる撮影動作時、振れ状態による撮影動作直前、および直後の補正レンズ54の可動中心へのセンタリングの有無の切替えを行うことが可能となる。
次に、振れ状態に応じて、上述したセンタリングするか否かの具体的切替えの例について説明する。撮影前の補正レンズ54のセンタリングの有無の切替えについては、補正レンズ54の可動中心へのセンタリングを行った場合(図69の“a”に相当)には、優れているとこととしては、撮像中の振れ補正が開始されるタイミングt34で、常に補正レンズ54が可動中心から振れ補正が行われるので、光学性性能を極力保ちつつ、かつ、大きな振れに対して振れ補正が可能となっている。欠点としては、レリーズ直前に光学ファインダ57や、外部液晶モニタ69によりモニタしていた画像の画角と、実際に撮影した画像の画角が変化する。
一方で、補正レンズ54の撮像前のセンタリングをしない場合(図69の“b”に相当)は、優れているとこととしては、補正レンズ54を可動中心にセンタリングする時間(図69のタイミングt33からタイミングt34までの時間Tr1)が不要になり、レリーズ釦90をレリーズしてから実際に撮像されるまでの時間(図69のタイミングt30からタイミングt35までの時間Tr0)、つまり、レリーズタイムラグが大幅に縮まり、シャッタチャンスを逃しにくくなる。加えて、レリーズ直前に光学ファインダ57や、外部液晶モニタ69によりモニタしていた画像の画角と、実際に撮影した画像の画角が変化しない。欠点としては、撮像中の補正レンズ54の移動範囲が可動中心から下側に偏り、光学性能が劣化し、また、図69に示す例では、撮像素子59による撮像動作を行っている最中に、補正レンズ54は、その制御可能な下限(具体的には、補正レンズ54の制御目標となる補正レンズ目標位置LCの図56のリミット部600dにより制限された範囲の補正レンズ目標位置リミット範囲LCrangeに)制限され、これ以上振れ補正できない状態となっていて(図69の“c”の部分)、大きな振れに対して対応しきれない。
次に、撮影後の補正レンズのセンタリングの有無の切替えについては、撮影後の補正レンズのセンタリングを行った場合(図69の“d”に相当)には、その後(図69のタイミングt46から)に再開される振れ補正が補正レンズ54の可能中心の位置から再開されるので、タイミングt49から再開される“モニタ画表示”の見栄えが良い。図69の例では、撮像後の補正レンズ54のセンタリングを行わなかった場合(図69の“e”に相当)は、補正レンズ54の位置が上側に偏り、大きな振れが発生した場合に、図69の“f”において、その制御範囲上限を超えて振れ補正がそれ以上できなくなっている。撮影後の補正レンズ54のセンタリングを行わない場合(図69の“e”に相当)には、図69における補正レンズ54の可動中心へのセンタリング(タイミングt45からタイミングt46まで)が必要なくなり、特に撮影を連続的に繰り返す連写時には、この連写速度(単位時間当たりの撮影枚数)が向上すると共に、撮影した画像の画角と撮影終了後の画角の変化が小さい(例えば、図69におけるタイミングt43からタイミングt48まで行われる外部液晶モニタ69の“撮影画表示”とその後、タイミングt49からの“モニタ画表示”のズレが小さくなる)。撮影後の補正レンズのセンタリングを行った場合には、このズレは大きくなって、不快感を与える場合がある。
以上説明したように、撮影動作直前、および、直後の補正レンズ54の可動中心へのセンタリングの有無は、それぞれ優れている点と欠点とを両方持ち合わせている。そこで、図61に示すように、振れ状態により、このセンタリングの有無を最適となるよう設定する。
構図変更していない状態であると判定された場合に、極力振れ補正効果を得るために、光学性性能を極力保ちつつ、かつ、大きな振れに対して振れ補正を可能とするため、撮影前センタリングを行い、また、撮影直後に撮影後センタリングも行い、振れ補正可能な範囲を大きく確保し、いつでも次の撮影が可能なようにする。
構図変更中と判定された場合に、構図変更方向、または、流し撮りの流し撮り方向は、特に流し撮り時のユーザがレリーズ前から被写体を追いながら撮影を行うことを考慮し、センタリングすることによる撮影画像の不連続性を損なうことを避ける為に、撮影前センタリングも、撮影後センタリングも行わないようにする。構図変更中と判定された場合の非構図変更方向、または、流し撮りと判定された場合の非流し撮り方向の振れは、構図変更していない状態である場合と同レベルであるため、同様の考え方から、極力振れ補正効果を得るために、光学性性能を極力保ちつつ、かつ、大きな振れに対して振れ補正が可能とするため、撮影前センタリングを行い、また、撮影後センタリングも行い、振れ補正可能な範囲を大きく確保し、いつでも次の撮影が可能なようにする。三脚に固定された状態と判定された場合は、極力光学性性能を得るために撮影動作直前でのセンタリングを行い、外部液晶モニタ69による撮影した画像の表示と撮影後のモニタ画像との画角が変化しないように、撮影後センタリングを行わない。乗り物に乗った状態と判定された場合は、振れが大きい為、大きな振れに対して振れ補正が可能とするため撮影前センタリングを行い、また、撮影後センタリングも行い、振れ補正可能な範囲を大きく確保し、いつでも次の撮影が可能なようにする。
なお、以上の説明では、補正レンズ54を可動範囲の略中央位置へセンタリングすると述べたが、さらに踏み込んで、光学性能が最も得られる補正レンズ54の位置が、この可動中心と異なる場合、その光学性能が最も得られる補正レンズ54の位置(これを光学中心位置と呼ぶこととする)に補正レンズをセンタリングしてもよい。例えば、製品個々に異なる光学中心位置を、製品個々で工場出荷調整時に調整しておいて、その光学中心位置に補正レンズ54を、撮影の直前、あるいは、直後にセンタリングさせても構わない。
次に、振れ状態に応じて、プログラム線図を変更する場合について説明する。一眼レフカメラ等の一般的なカメラでは、撮影者が絞り値とシャッタ秒時の両方を設定する“マニュアル”モードと、ユーザが絞り値を設定し、被写体の輝度からカメラがシャッタ秒時を自動で設定する“絞り優先”モードと、ユーザがシャッタ秒時を設定し、被写体の輝度(図70におけるEV値に相当)からカメラが絞り値を自動で設定する“シャッタ秒時優先”モードと、カメラが被写体輝度から、最適なシャッタ秒時と絞り値を自動で設定する“プログラム”モードなどがある。図70は、本実施形態において、“プログラム”モード時の被写体輝度(EV値)と、カメラが自動で設定する絞り値とシャッタ秒時との関係を示したプログラム線図である。図70の例では、高速プログラム線図70A、通常プログラム線図70B、低速プログラム線図70C、超低速プログラム線図70Dの具体例を示したもである。
図61および図70に示すように、構図変更していないと判定された場合には、通常プログラム線図70Bとする。これに対し、構図変更中で、流し撮りと判定された場合には、これよりシャッタ秒時が低速となる低速プログラム線図70Cを選択し、流し撮りの効果を得る。三脚に固定されていると判定された場合は、絞りを小さくしてシャープな写真を得るため、また、絞り値が小さくなり、三脚に固定された状態では手持ち時に比べて振れがかなり小さくなるため、シャッタ秒時が長くなっても影響が小さいことから、さらにシャッタ秒時が低速となる超低速プログラム線図70Dを選択する。振れ状態が、乗り物に乗った状態である場合には、振れが非常に大きいことが想定され、高速なシャッタ秒時となる高速プログラム線図70Aを選択する。
また、上述した方法で、撮影者の熟達度を検出し、上級、中級、初級と区分し、それに合わせて、図71に示すようにプログラム線図を変更することもできる。
振れ状態(熟達度)が“上級”である場合には、振れが非常に小さい為にシャッタ秒時を低速にすることができ、低速プログラム線図70Cにし、振れ状態(熟達度)が“初級”である場合には、振れが非常に大きい為にシャッタ秒時を高速にし、高速プログラム線図70Aを選択し、振れ状態(熟達度)が“中級”である場合には、その中間的な通常プログラム線図70Bを選択する。
また、これに限定されず、上述した熟達度(上級、中級、初級)と、“構図変更していない状態”、“構図変更中”、“流し撮り”の状態、“三脚に固定されている”状態、“乗り物に乗った”状態等を相互に組み合わせてプログラム線図を変更すれば、よりカメラの撮影状況や振れの状態に最適化されたプログラム線図を設定することができる。
なお、上述したプログラム線図の選択は、主制御部60aが行い、被写体輝度は、図48に示すカメラの例では、撮像素子59から得られる撮像情報などから主制御部60aが公知の技術を用いて行い、また、主制御部60aは、絞り駆動部74を通じて絞り73を制御し、必要な絞り値に設定し、シャッタ駆動部を通じて必要なタイミングでシャッタ58を制御する。
次に、振れ状態に応じて測光モードを変更する場合について説明する。図48に示すカメラの例で、主制御部60aは、被写体輝度を、撮像素子59から得られる撮像情報などから公知の技術を用いて行うが、本実施形態では、振れ状態により測光エリアを切替える場合について述べる。
一般的には、撮影画角をいくつかの複数領域に分けて、各領域の輝度値を適切に重み付けして撮影画角全体を測光する“評価測光”モード、撮影画角の中央近辺を重点的に測光して測光する“中央重点測光”モード等が知られている。本実施形態では、この“評価測光”モードと“中央重点測光”モードを、振れ状態に応じて切り替える。
図72に示す例では、撮影画角に対して、測光エリアをA領域、B領域、C領域、D領域、E領域の5つに分割する。主制御部60aは、撮像領域を図72に示す5領域に分割し、“評価測光”モード時には、各領域の各画素の出力の平均値から各領域の輝度を求め、各領域の輝度値を適切に重み付けして露出を決定する。また、“中央重点測光”モード時には、撮影画角中央に位置する“E領域”の輝度の重み付けを大きくし、その周辺のA領域、B領域、C領域、D領域の重み付けを小さくして測光する。
図61に示すように、主制御部60aは、構図変更中で、流し撮りの状態と判定された場合は、撮影画角中央近辺に流し撮りのターゲットとなる被写体が存在する可能性が高いとして、“中央重点測光”モードにより露出を決定する。これは、流し撮り時に撮影画角内に輝度差の大きい物体、例えば太陽やランプ光などが入り込んだ場合にも、その輝度に振られないようにするためである。構図変更していない場合、三脚に固定されている場合、および、乗り物に乗った状態と判定された場合は、いずれも、著しい画角の変化はなく、上述したような輝度差の大きい物体が撮影画角内に入り込んだりはしないと考えられるため、画角全体の輝度を適切に判断して測光する“評価測光”モードにより測光し、露出を決定する。
なお、上述したように撮像素子59から被写体輝度を得るのではなく、一般的な一眼レフのようなカメラで、撮影レンズを通過した光束を、ミラー等で測光専用の素子に導くようなカメラシステムである場合に、測光専用の素子から得られる出力を用いてもよい。
次に、振れ状態に応じてAFの作動を切り替える場合の例について説明する。一般的なカメラのAFモードには、レリーズ釦の半押し中に、レリーズ釦を全押しされるまで繰り返し被写体を測距し、フォーカシングレンズ55を動かして撮像素子面のピントを合わせ続ける“コンティニュアスAF”と、レリーズ釦の半押しにより起動し、被写体を測距し、フォーカシングレンズを動かして撮像素子面のピントを合わせた時点で、この被写体を測距、フォーカシングレンズを合わせる作動を終了する、つまりその時点でピントを固定する“シングルAF”などがある。“コンティニュアスAF”は、動き続ける被写体に対してピントを合わせ続ける場合に有利で、また、“シングルAF”は、静止、または動きの遅い被写体に対してピントを合わせて、一旦ピントがあった後はそのピント位置を動かしたくない場合や、画角内に思惑とは別の被写体が飛び込んできても、そちらにピントを振られたくない場合等に使用する。本実施形態では、これら撮影シーンにより優位・不利が異なるAFモードを、振れ状態に応じて最適なAFモードに切り替える。
図61に示す例では、AFモードを3つ設ける。“コンティニュアスAF”モードと、“シングルAF”モードとに加え、カメラが完全に自動で“コンティニュアスAF”モードと“シングルAF”モードとを切り替える“AUTO”モードである。
図61に示すように、AFモードが“コンティニュアスAF”モードでは、ユーザの意図を優先し、振れ状態に関わらず常に“コンティニュアスAF”とする。AFモードが“シングルAF”モードである場合に、主制御部60aは、構図変更中で流し撮りと判定された場合のみ、“コンティニュアスAF”とし、それ以外の場合には“シングルAF”とする。構図変更の場合、ピントを合わせようとする思惑の被写体が替わり、構図変更が終了した時点で、再度、レリーズ釦90を半押ししてピントを合わせなければならないが、本実施形態では、構図変更中には、“コンティニュアスAF”に自動的に切り替わるので、被写体に常にピントが合っている。構図変更が終了した時点で、“シングルAF”に自動的に切り替わり、ピントがロックされる。従って、ユーザが再度、レリーズ釦90を半押ししてピントを合わせる必要もないので、ピントが合うまでのタイムラグを短縮することができる。
図61に示すように、AFモードが“AUTO”モードである場合に、主制御部60aは、構図変更していない状態、三脚に固定されている状態と判定された場合時には、被写体は、静止しているか、動きが遅い場合が想定される為に、“シングルAF”とする。被写体が画角内で動きがあることが想定される構図変更中、流し撮り、および、大きな振れが生じ、被写体が画角内で揺れ動くことが想定される乗物に乗った状態と判定された場合は“コンティニュアスAF”とする。
AFモードが“AUTO”モードである場合に関して、実際に想定される使用方法に即し、さらに詳細に説明する。図73は、AFモードが“AUTO”モードである場合に、構図が決まった状態から、別の動きのある被写体に構図を変更し、さらに別の被写体にピントを合わせた場合の1例で、横軸に経過時間tをとり、その時の振れ量子化値ω1、振れ状態、AFモード、合焦状態、およびフォーカシングレンズ55の位置を分かり易く表した図である。一般に、ピントの検出方法としては、大きく分けると、撮影レンズを通過した被写体からの空間的に隔てられた少なくとも2つの光束の位相差からデフォーカス量を検出する位相差AF方式と、フォーカシングレンズを少なくとも合焦近傍で移動させて、撮像結果のコントラストが最も大きくなる位置を検出し、合焦点を検出するコントラストAF方式とがある。本実施形態では、コントラストAF方式を用いて説明するが、位相差AF方式でも同様に応用が可能である。
図73に示すタイミングt60からタイミングt65の間は、構図が決まった状態で、静止した被写体にピントを合わせている。この間、振れ量子化値ω1は、比較的安定した波形となり、振れ制御部60bは、構図変更していない状態であると判定し、主制御部60aは、図61で示すように、AFモードを“シングルAF”に設定する。
主制御部60aは、図73に示すタイミングt60から図48に示すフォーカシングレンズ駆動部65を通じ、フォーカシングレンズ55の+方向への駆動(図73に示す)を開始する。次第に撮像面のコントラストが高まり、タイミングt61からタイミングt62の間、許容できるピント精度内と判断される合焦の状態となり、さらにフォーカシングレンズ55を繰り出した為、タイミングt62以降は、非合焦状態となる。主制御部60aは、タイミングt63でフォーカシングレンズ55を一旦停止し、今度は、−方向に駆動(図73に示す)を開始し、タイミングt64で再び合焦の状態となり、フォーカシングレンズ55の駆動を停止する。AFモードが“シングルAF”であるから、これ以降、主制御部60aは、フォーカシングレンズ55の駆動は行わず、このピント位置にフォーカスロックされる。
次に、タイミングt65近辺から構図を変更し始め、タイミングt67近辺まで動く被写体を追い続ける。タイミングt65で、今まで合焦していた被写体は測距エリアから外れ、合焦状態から外れる。これ以降、従来の技術では、この外れた被写体にピントがあった状態にフォーカスロックされたままで、レリーズ釦90を再度半押ししない限り、新たな動く被写体にフォーカスを合わせには行かない。
振れ制御部60bは、タイミングt66で、振れ量子化値ω1から上述した方法で構図変更(流し撮り)を検出し、振れ状態を構図変更中(流し撮り)の状態に切替え、主制御部60aは、図61に示すように、AFモードを“コンティニュアスAF”に自動的に切り替えると共に、フォーカスロックを解除し、再びフォーカシングレンズ55を駆動し始め、合焦点を探しにゆく。構図変更(流し撮り)を続けているタイミングt66からタイミングt67近辺までは、AFモードが“コンティニュアスAF”であるため、タイミングt60からタイミングt64と同様の作動を繰り返し、移動する被写体にフォーカシングレンズ55を駆動し、ピントを合わせ続ける。
次に、図73に示すタイミングt67近辺から構図変更(流し撮り)が終了すると、振れ制御部60bは、タイミングt68で、振れ量子化値ω1から構図変更していない状態と検出し、主制御部60aは、図61に示すように、AFモードを“シングルAF”に切り替える。
図73に示す例では、その後、主制御60aは、フォーカシングレンズ55を駆動して、ピントを探し続け、タイミングt69にて再び被写体に合焦し、AFモードが“シングルAF”であるため、その位置でフォーカスロックされた状態となる。
以上説明した通り、本実施形態によれば、振れ状態により、自動的にAFモードを切り替えているため、構図変更、流し撮りにより、一旦、以前の被写体に合焦していたフォーカスロックを解除し、新しい被写体にピントを合わせることができ、また、構図変更、流し撮りが終了した後は、振れ状態からAFモードを再度切り替え、新しい被写体に合焦、フォーカスロックすることができる。
次に、振れ状態に応じて測距エリアを変更する場合の例について説明する。測距エリアとは、撮影画角内のピントを合わせる領域のことを言い、撮影画角中央の領域を使用したり、撮影画角全体に複数の測距エリアを設けるものもある。また、これらの複数設けられた測距エリアのどこを測距するかを撮影者が選択できる機能も知られている。一般的に、画角中央の1エリア、または、ユーザが選択した1エリアを測距する“1点エリア”モードと、画角全体の全エリアを測距し、その内の1点を自動で選択する“多点エリア”モードとがあり、本実施形態では、全てをカメラが自動で行う“AUTOエリア”モードをこれに追加する。
“1点エリア”モードは、その限られたエリアのみ測距する為、複数のエリアを測距しなければならない“多点エリア”モードに比べて、測距時間が短く、また、測距するエリアが始めから分かった上でユーザは使用する為、被写体がそのエリアに来るよう画角を合わせて測距させることができ、確実に思惑の被写体を測距させることができる。
逆に“多点エリア”モードは、測距のために画角を変更せずに済むという利便性がある一方で、複数のエリアを測距しなければならない為に、測距時間が長く、また、撮影画角内の測距エリアに他の被写体に振られ、ユーザの思惑の被写体になかなかピントを合わせてくれないといった不都合が発生する場合がある。
振れ状態を検出することで、これらそれぞれの測距エリアモードが持つ双方の欠点を補い、長所が発揮できるように改善する。
図74に、撮影画角と測距エリアとの関係を示す。なお、説明を分かり易くする為に、“1点エリア”モード時には、画角中央の1点エリアを測距するものとして、以下、各測距エリア選択モードに分けて説明する。
図61に示すように、測距エリア選択モードが“1点エリア”モード時には、振れ状態が、構図変更していない状態、三脚に固定されている状態、乗り物に乗った状態と判定された場合は、主制御部60aは、撮影者の意志を尊重し、撮影者が選択したエリア(この場合、中央の1エリア)を用いて測距を行う(図75(a))。構図変更中、流し撮り中の状態と判定された場合は、撮影者が被写体を追いきれず、選択したエリアから被写体を逃してしまうことを想定し、主制御部60aは、図75(b)に示すように、ユーザが選択したエリア近辺(この場合、画角中央のエリアの左右上下の測距エリア)も選択し、広い測距エリアを用いて測距を行わせる。このことにより、確実に被写体を捕捉することができる。
図61に示すように、測距エリア選択モードが“多点エリア”モード時には、構図変更していない状態、三脚に固定されている状態、乗り物に乗った状態と判定された場合は、主制御部60aは、ユーザの意志を尊重し、多点(この場合、全測距エリア)を用いて測距を行う(図76(a))。
構図変更中、流し撮りの状態と判定された場合は、撮影者が被写体を追いきれず、選択したエリアから被写体を逃してしまうことを想定し、主制御部60aは、構図変更方向、流し撮り方向の測距エリアを広く、非構図変更方向、非流し撮り方向の測距エリアを狭くし(水平方向に構図変更、流し撮りを行った場合の例を図76(b)に、垂直方向に構図変更、流し撮りを行った場合の例を図76(c)に示す)、選択されたエリアを用いて測距を行わせる。このことにより、撮影者が、確実に被写体を捕捉することができる。また、流し撮り等では、撮影画角周辺、特に、水平方向に流し取りするのであれば、画角上下近辺に、思惑の被写体とは異なる不要な被写体が表れ、その不要な被写体に測距結果が振られる場合がある。この場合にも、非構図変更方向、非流し撮り方向の測距エリアを狭くしている為に、こうしたことも防ぐことができる。また、測距するエリア数を絞った為、測距演算の時間が短く済む。また、構図変更、流し撮り時には、振れが大きく、撮像素子59から得られるコントラストも低下し、測距誤差も大きくなる。この場合、短縮された測距演算の時間を、絞られた測距エリアの測距の演算に費やすことができ、例えば、複数回測距を行い、測距精度を向上させることもできる。
図61に示すように、測距エリア選択モードが“AUTOエリア”モード時には、構図変更していない状態、三脚に固定されている状態と検出された場合は、主制御部60aは、多点(この場合、全測距エリア)を用いて測距を行う(図77(a))。
次に、振れ状態が、構図変更中、流し撮りの状態では、ユーザが被写体を追いきれず、選択したエリアから被写体を逃してしまうことを想定し、主制御部60aは、構図変更方向、流し撮り方向の測距エリアを広く、非構図変更方向、非流し撮り方向の測距エリアを狭くし(水平方向に構図変更、流し撮りを行った場合の例を図77(b)に、垂直方向に構図変更、流し撮りを行った場合の例を図78(c)に示す)、選択されたエリアを用いて測距を行わせる。振れ状態が、構図変更中、流し撮りの状態のこのような動作は、前述の多点エリア”モード時と同様で、このようにする意図も、それによる効果も同様である。
次に、乗り物に乗った状態と判定された場合は、主制御部60aは、水平方向の測距エリアを広く、垂直方向は中くらいの測距エリアとする。これを図77(d)に示す。乗り物に乗った状態では、振れが大きく、撮像素子59から得られるコントラストも低下し、測距誤差も大きくなる。測距するエリア数を制限し、短縮された測距演算の時間を、絞られた測距エリアの測距の演算に費やすことができ、例えば、複数回測距を行い、測距精度を向上させることもできる。但し、振れが大きい為、測距エリアを狭くし過ぎた場合(撮影画角中央の1エリアのみ使用する等)、ユーザが被写体を測距エリアに捕捉できない場合も生じる為、少し広めの測距エリアとする。
次に、振れ状態に応じてフラッシュ撮影モードを変更する場合の例について説明する。図48に示す閃光部56(以下、フラッシュと呼ぶ)を発光させて撮影を行うフラッシュ撮影に関して述べる。
カメラ51には、フラッシュの発光を禁止して撮影を行う“発光禁止”モード、基本的に常にフラッシュを発光させて撮影を行う“強制発光”モード、および、カメラ51が撮影状況に応じてフラッシュの発光/非発光を選択する“AUTO発光”モードの3種類のモードがあり、操作部68の操作、および、外部液晶モニタ69、および、主制御部60aによる上述したような方法で、ユーザがこの3種類の発光モードを選択できる。
本実施形態では、ユーザが設定したこの発光モード毎に、振れ状態に応じてさらに細かなモードを切り替える。発光モードが“発光禁止”モードである場合には、図61に示すように、主制御部60aは、振れ状態によらず常にフラッシュの発光をしないで撮影を行う。
発光モードが“強制発光”モードである場合には、図61に示すように、主制御部60aは、振れ状態が構図変更中、流し撮りの状態と判定された場合以外では、フラッシュを発光させて通常シンクロの撮影を行うが、構図変更中、流し撮りの状態と判定された場合は、フラッシュの発光をしないで撮影を行う。これは、レリーズをしてしまった等の撮影者のミスでフラッシュが発光するようなことを避けるためである。構図変更中や、流し撮りでのフラッシュを発光させた撮影はほとんどなく、誤って発光させるケースが大多数だからである。
発光モードが“AUTO発光”モードである場合には、図61に示すように、主制御部60aは、構図を変更していないと判定された場合には、構図が安定していて振れ補正の効果も期待できるとしてシャッタ秒時を低速にできるのでスローシンクロで撮影を行う。振れ状態が構図変更中、流し撮りの状態と判定された場合は、フラッシュの発光をしないで撮影を行う。これは、発光モードが“強制発光”モードである場合と同様で、そのようにする意図も、それによる効果も同様である。三脚に固定された状態と判定された場合は、振れは小さく、シャッタ秒時を低速とできるので、スローシンクロで撮影を行う。乗物に乗った状態と判定された場合は、想定されるケースとして、自家用車の車内から外を撮影するケースや、バス、船等の公共交通の車内等の撮影等、フラッシュ撮影を控えるべきケースが多く、フラッシュを発光せずに撮影する。
ここで、以上説明で使用した“通常シンクロ”、“スローシンクロ”、“発光せず”について、図78を用いて具体的に説明する。“通常シンクロ”は、撮影秒時が所定秒時(図78の例では1/60秒)より遅い場合にフラッシュを発光させた撮影を行い、この時の撮影秒時の下限(リミット秒時)は、手振れが生じにくい控えめな秒時(図78の例では1/16秒)とする。これに対し、“スローシンクロ”では、発光モードが“AUTO発光”モード時の振れ状態が構図を変更していない場合、および、三脚に固定された状態で用いられるように、撮影秒時の下限(リミット秒時)を遅く設定している。“発光せず”は、常にフラッシュの発光をせずに撮影を行う。
次に振れ状態に応じたISO感度の設定の例について述べる。図48に示すカメラ51には、上述したような方法で、操作部68の操作、および、外部液晶モニタ69、および、主制御部60aにより、ISO感度設定モードを切替える。具体的には、ISO感度をカメラが自動で設定する“AUTO”モードと、撮影者が設定する“手動”モードとを切り替えることができ、“手動”モード時には、撮影者がISO感度を設定できる。
ISO感度設定モードが、“手動”モードである場合、主制御部60aは、図61に示すように、振れ状態が、構図変更中、流し撮り時には、十分な流し撮りの効果を得るために、結果として撮影秒時が低速秒時となるように、撮影者が設定したISO感度より所定感度(図61の例では−1段)低感度とし、乗り物に乗った状態では、振れが大きく、振れ易いとして、結果として撮影秒時が高速秒時となるように、ユーザが設定したISO感度より所定感度(図61の例では+1段)高感度とする。振れ状態が、これ以外の場合には、ユーザが設定したISO感度とする。
次に、ISO感度設定モードが、“AUTO”モードである場合、主制御部60aは、図61に示すように、振れ状態が、構図変更中、流し撮り時には、十分な流し撮りの効果を得るために、結果として撮影秒時が低速秒時となるように、図61の例では、ISO100とし、乗り物に乗った状態では、振れが大きく、振れ易いとして、結果として撮影秒時が高速秒時となるように、図61の例では、例えばISO400とする。振れ状態が、これ以外の場合には、ユーザが設定したISO感度とする。振れ状態が、三脚に固定された状態では、風景撮影等の撮影画像のノイズを極力抑えたい撮影が多く、ISO感度を低感度(図61の例では、ISO100で、一般的にISO感度を低感度とするほど撮影素子59から得られる画像のノイズは低くなる)とする。振れ状態が、乗り物に乗った状態では、振れが大きく、振れ易いとして、結果として撮影秒時が高速秒時となるように、ISO感度を高感度(図61の例では、ISO400としている)とする。また、構図変更していない状態では、振れは乗り物に乗った状態ほど大きくはなく、かといって三脚に固定された状態ほど小さくもない標準的なレベルであり、中間的なISO感度(図61の例では、ISO200としている)とする。
なお、説明を分かり易く簡略化する為に、上述した通り振れ状態と設定するISO感度を1:1に対応させたが、被写体の明るさを考慮して、設定されるISO感度を、たとえば下記の数12に示すように、振れ状態と被写体の明るさとの関数としても構わない。
(数12)ISO感度=f(振れ状態、被写体の明るさ)
なお、上記の数12において、fは、関数の意味である。
次に、振れ状態に応じて連写モードを変更する場合の例について述べる。一般的に、レリーズ釦を全押ししている間、複数毎撮影が行われる“連写撮影”モードと、レリーズ釦の1回の全押しで一回の撮影が行われ、レリーズ釦を全押しし続けてもそれ以上の撮影を行うことができない“単写撮影”モードとがある。
図48に示すカメラ51には、上述したような方法で、操作部68の操作、および、外部液晶モニタ69、および、主制御部60aにより、“連写撮影”モードと“単写撮影”モードとを切り替えることができる“手動”モードと、カメラ51が撮影状況に応じて自動で“連写撮影”モードと“単写撮影”モードを自動で選択する“AUTO”モードとを有する。
“手動”モード時には、主制御部60aは、図61に示すように、ユーザの意図を優先し、振れ状態によらず、ユーザの設定した“連写撮影”モードか“単写撮影”モードのどちらかとする。
“AUTO”モード時には、主制御部60aは、振れ状態が構図変更中、流し撮り時には、図61に示すように“連写撮影”モードとする。流し撮り等の撮影は、移動する被写体を撮影画角内に追い続け、連写する場合が多いからであり、また、これを“単写撮影”モードとすると、連写したい場合、レリーズ釦90の全押しを解除し、再度、全押しする必要があり、そのレリーズ釦90の再全押しの押し込みにより、大きく振れたり、被写体を追い続ける精度が落ちたりする。これに対し、これ以外の場合、つまり、構図変更していない場合、三脚に固定されている状態、および、乗り物に乗った状態では、連写するようなシチュエーションは少ない。
このように、本実施形態では、振れ状態に応じて、撮影シーンに合わせて“連写撮影”モードと“単写撮影”モードのどちらか最適なモードを設定することができる。
次に、振れ状態に応じて動画撮影時のフレームレートを変更する場合の例について述べる。一般的に、動画撮影可能なカメラにおいては、1秒間に撮影するフレーム数(これをフレームレートと呼ぶ)を変更可能な場合がある。フレームレートを高速とすれば、撮像結果の振れ量は小さくなり、また、動きの大きい被写体を滑らかに撮影することができる。ただし、撮影結果の記憶容量が膨大になる。一方、フレームレートを低速とすれば、撮影結果の記憶容量が小さくて済むが、動きの大きい被写体を滑らかに撮影することができなくなる。
本実施形態においても、図48に示すカメラ51には、上述したような方法で、操作部68の操作、および、外部液晶モニタ69、および、主制御部60aにより、動画撮影時のフレームレートを変更することができる。“手動”モードでは、ユーザが“60フレーム/秒”、“30フレーム/秒”、“15フレーム/秒”を選択でき、“AUTO”モードでは、撮影状況に応じて、フレームレートをカメラ51が自動的に設定する。以下、この“AUTO”モード時の具体的な説明を記す。
図61に示すように、主制御部60aは、構図変更していないと判定された場合には、標準的なフレームレートとして、“30フレーム/秒”として、振れ状態が構図変更中、流し撮り時と判定された場合は、流し撮りの効果を得る為に、“15フレーム/秒”とし、三脚に固定されている状態では、振れは小さく、動きのある被写体を撮影する頻度は少ないとして、撮影結果の記憶容量が小さくて済むようフレームレートを抑えて“15フレーム/秒”とする。また、乗り物に乗った状態と判定された場合は、振れは大きく、カメラに対する被写体の動きが大きくなる場合が多いとして、フレームレートを上げ、“60フレーム/秒”で動画撮影を行うようにする。
次に、振れ状態に応じて撮影画像のデータ写し込みを行う場合の例について述べる。撮影画像に撮影日時等の写し込みを行う場合、振れ状態の情報も写し込みを行う。
図48に示すカメラ51には、上述したような方法で、操作部68の操作、および、外部液晶モニタ69、および、主制御部60aにより、撮影画像への撮影日時等の情報を写し込むモードを設定できる。この写し込みモードは、撮影画像への写し込みを行わない“off”モード、撮影画像への撮影日時の写し込みを行う“撮影日時”モード、および、撮影画像への撮影日時と撮影シーンの写し込みを行う“撮影日時+撮影シーン”モードとを有する。
本実施形態では、“撮影日時+撮影シーン”モード時の作動を説明する。主制御部10aは、図62に示すように、構図変更していない状態である場合、撮影画像に“撮影日時”と“手持ち撮影”の文字を写し込む。構図変更中、流し撮りの状態である場合、撮影画像に“撮影日時”と“流し撮り”の文字を写し込む。三脚に固定されている状態である場合、撮影画像に“撮影日時”と“三脚撮影”の文字を写し込む。乗り物に乗った状態である場合、撮影画像に“撮影日時”と“車窓より”の文字を写し込む。
図79は、撮影画像に振れ状態に応じて文字が書き込まれた1例である。撮影された日付と時間に続いて、この場合、振れ状態が、三脚に固定された状態であった為に、“三脚撮影”の文字が写し込まれている。
これにより、撮影から時間を隔てた後々に、写し込まれたこれらの文字により、どういったシチュエーションで撮影が行われたのか、撮影者(ユーザー)が撮影状況をより鮮明に蘇らせることもできる。なお、画像に写し込むのではなく、Exifデータなどのデータとして上述した撮影シーンなどを記録してもよい。
以上の振れ状態により、カメラの各種モード、カメラの作動を変更する例を説明したが、以下、これらを組み合わせた具体例について説明する。
例えば、振れ状態に応じて各種設定をその撮影状況に最適な設定にする。主制御部10aは、図62に示すように、構図変更していない状態である場合、プログラム線図を“通常”、測光(AE)モードを“評価測光”、AFモードを“シングルAF”、測距(AF)エリアを“多点”、ISO感度をユーザが設定した値とする。
構図変更中、流し撮りの状態である場合、主制御部10aは、プログラム線図を“低速”、測光(AE)モードを“中央重点測光”、AFモードを“コンティニュアスAF”、測距(AF)エリアを構図変更方向、流し撮り方向は“広い”エリアに、非構図変更方向、非流し撮り方向は“狭い”エリアに、ISO感度をユーザが設定した値−1段低速側とする。
三脚に固定された状態では、主制御部10aは、プログラム線図を“低速”、測光(AE)モードを“評価測光”、AFモードを“シングルAF”、測距(AF)エリアを“多点”エリアに、ISO感度を例えばISO100に設定する。
乗物に乗った状態では、主制御部10aは、プログラム線図を“高速”、測光(AE)モードを“評価測光”、AFモードを“コンティニュアスAF”、測距(AF)エリアを水平方向に“広い”エリアに、垂直方向に“中くらいの”エリアにそれぞれ設定する。
なお、これら各モードに対して振れ状態に応じて設定される詳細内容や、その意図する意味等は、図61の説明で述べた通りである。
次に、振れ状態に応じて撮影シーンモードを変更する場合の例について説明する。近年、撮影シーンを撮影者がカメラに設定し、カメラが設定された撮影シーンに応じて、プログラム線図、測光方法や細かい設定の変更を行い、撮影シーンに最も適した撮影を行うようなカメラが増加してきている。本実施形態では、上述したような方法で得られた振れ状態をこれに加え、さらにきめ細かく、撮影シーンに最適な撮影を行う例について示す。
図48に示すカメラ51には、上述したような方法で、操作部68の操作、および、外部液晶モニタ69、および、主制御部60aにより、撮影シーンモードを設定できる。図63に示すように、全てをカメラ任せで行う“おまかせ”モードと、“手動”モードがあり、手動モードは、さらに、“スポーツ”モード、“ポートレート”モード、“子供/ペット”モード、“夕焼け/夜景”モード、“花火”モードなどを切り替えることができる。
図63に示すように、各撮影シーンモードに合わせ、かつ、振れ状態に応じて、プログラム線図、測光(AE)モード、AFモード、測距(AF)エリア、発光モード、ISO感度、連写モード等を、それぞれ最適、かつ、きめ細かく設定することが可能となる。
以上、振れ状態に応じてカメラの作動を変更する例を説明してきたが、分かり易くする為に、振れ状態を、“構図変更していない”状態、“構図変更中、流し撮り”の状態、“三脚に固定されている”状態、“乗り物に乗った”状態に絞って説明した。振れ状態は、これ以外にも、上述した撮影者の熟達度(上級、中級、初級)等もあり、それに対して、図61〜63に示すような作動の変更を容易に行うことができる。これらも本実施形態の適応範囲である。
以上説明してきたカメラは、図48を基にしたディジタルスチルカメラを中心に説明してきたが、それに限定されるものではない。銀塩カメラにも本実施形態を適用可能である。
なお、図80に、図48に示すディジタルスチルカメラの変形例を示す。ここでは、異なる構成のみ説明を行い、重複する説明は省略する。図80に示すレンズ制御部710とボディ主制御部810が、図48に示す制御部60に、図80に示すレンズ主制御部710aとボディ主制御部810が図48に示す主制御部60aに、図80に示す振れ制御部710bが図48に示す振れ制御部60bに対応している。図48のカメラ51における制御部60は、図80におけるカメラ701では、レンズ部701b内の機能を制御するレンズ制御部710と、ボディ部701a内の機能を制御するボディ主制御部810に分かれ、レンズ制御部710、および、ボディ主制御部810は、ワンチップマイクロコンピュータ等により構成でき、レンズ制御部710とボディ主制御部810とは、例えばシリアル通信等により双方のデータ等を交換し、図48における制御部60と同様の機能を実現している。
以上の説明では、ジャイロセンサ100a、100bにより得られた振れに応じ、撮影光学系の一部で構成される補正レンズ54を、撮影光軸Zに対して直交するX−Y平面に沿ってシフトさせ、撮像素子59に生じた振れを打ち消すことで振れ補正の機能を実現するカメラを代表して説明を行ったが、これに限定されない。すなわち、ジャイロセンサにより得られた振れに応じ、振れにより撮影光軸Zが変化して生じた撮像素子面の振れ量分だけ、CCD,C−MOSセンサ等に代表される撮像素子自体をシフト移動させることにより振れ補正を実現しても構わない。
図81は、このような撮像素子シフト式の場合のカメラを模式的に示したブロック図である。図48に示すカメラ51の構成と同一部分は、同一の符号で示す。図48に示すカメラ51と重複する部分の説明を省き、異なる部分のみ説明する。図81に示すカメラ51では、振れ補正回路部は、撮像素子59を撮影光軸Zと直交するX−Y平面に沿ってシフト駆動させる。撮像素子59をX−Y平面に沿ってシフト駆動させる機構は、本実施形態で述べたシフト機構を応用可能である。具体的には、図49・図51における補正レンズ54の替わりに撮像素子59を配置し、摺動ボール82が、固定部80および可動部81の面を転がる、あるいは、摺動することで、撮像素子59が滑らかに撮影光軸Zと垂直なX−Y平面に沿って所定の範囲内で可動可能とする。また、図51に示すコイル86に電流を流すことにより、可動部に電磁力が発生し、撮像素子59を駆動可能となり、また、ホール素子89からは、撮像素子59の位置変化に応じた信号が得られ、これを処理することで撮像素子59の位置を検出することができる。
また、図48〜図79までの説明内容における補正レンズ位置LRを、撮像素子位置と読み替えれば、撮像素子59を検出された振れに応じてシフト駆動する振れ補正カメラにも応用可能なことが分かる。
本実施形態は、これ以外にも種々多岐な応用が可能である。撮像結果をカメラ51の外部に表示させる手段としては、本実施形態では、外部液晶モニタ69を用いたが、これは、液晶モニタに限定されるものではない。例えば、エレクトロクロニズム表示素子、プラズマ表示素子、その他の平面型ディスプレイ等を使用することもできる。また、光学ファインダ57の替わりに、液晶モニタ等を組み込んだファインダ等を用いることもできる。
また、ジャイロセンサ100a、100bによりカメラ51に生じた振れによる角速度を検出したが、これに限定されない。検出部であるジャイロセンサの替わりに加速度センサを使用し、カメラ51に生じた加速度を検出し、これを例えば2回積分することでカメラ51に生じた位置のディメンジョンの振れを検出するよう構成することもできる。あるいは、撮像素子59により得られた撮像結果により直接撮像面に生じた振れを検出するような技術を用い、得られた撮像面振れ量を打ち消すように補正レンズ54、あるいは、撮像素子59をシフト駆動することもできる。また、検出部は、加速度センサ以外にも、姿勢センサ(角度検出センサ)等を用いて構成することもできる。
なお、第1実施形態において、図6b1に示す例では、度数分布His[i]の最大区間imax=17の前後それぞれ複数区間の度数分布His[i]を用いて直線補間演算する例を示したが、度数分布His[i]のピーク値を中心として補間演算する方法に限定されない。例えば、最大のピーク値、2番目に大きいピーク値、3番目に大きいピーク値などのように、複数のピーク値を検出し、この複数のピーク値を用いて演算をすることができる。すなわち、検出された複数のピーク値に重みをつけて、重みに応じてピーク値を選択し、選択されたピーク値を用いて演算してもよい。
上述した実施形態以外にも、ビデオカメラ、携帯電話などに本実施形態を応用することも可能である。