以下、本発明の実施の形態を具体的例を用いて説明する。
1.全体構成
本発明を、着脱可能な交換レンズとカメラボディから成るレンズ交換式ディジタルスチルカメラに応用した場合の例を、図1を用いて説明する。
図1は、レンズ交換式ディジタルスチルカメラを具体的な例として、本発明に関わるカメラ(撮像装置)を模式的に示したブロック図である。本カメラは、ボディ部501と、これに着脱可能なレンズ部701とから成る。ボディ部501のマウント面820およびレンズ部701のマウント面810にはそれぞれ複数の電気接点711、512が存在する。ボディ部501にレンズ部701を装着すると電気接点711と電気接点512とが接触し、後述するように相互に通信を行うことができるようになる。なお、この通信は電気接点等を用いた有線通信であってもよいし、電波等を用いた無線通信であってもよい。
以下、ボディ部501の構成について述べる。
ボディ制御部510は、ワンチップマイクロコンピュータ等で構成され、本ボディ部501の全制御を受け持つ。ボディ制御部510は、後述するレンズ部701のレンズ制御部710と通信を行い、相互の情報を授受することができる。
ボディ制御部510は、シャッタ駆動部517を用いてシャッタ508を制御し、必要なタイミングでシャッタ508の開閉を行う。撮像素子509は、被写体像を撮像し撮像信号(撮影結果)を出力する。ボディ制御部510は、撮像素子509から得られた撮像信号に画像処理を実行し、撮影画像を得る。ボディ制御部510は撮影画像等を外部液晶モニタ519に表示すると共に、必要に応じて撮影画像を記憶媒体531に記憶、或いは、記憶媒体531から記憶された撮影画像の読み出しを行う。
ボディ制御部510は、閃光回路部511を通じてキセノン管等を用いた閃光部506を発光させ、いわゆるフラッシュ撮影を行うことが可能である。
ボディ制御部510には、操作部518が接続されている。ユーザは、操作部518を操作することにより、撮影モード等の情報を入力(設定)可能である。ボディ制御部510は、ユーザにより設定された撮影モード等の情報を、外部液晶モニタ519に表示可能である。
ボディ制御部510は、集音部530から得られたカメラの周囲音を集音し、必要に応じて記憶媒体531に記憶、或いは、記憶媒体531から集音されたデータの読み出しを行う。
ボディ制御部510は内部にA/D変換器を備えている。このA/D変換器は3軸加速度センサ532に接続されている。3軸加速度センサ532は、3軸方向の加速度を検出して出力するセンサである。ボディ制御部510は上記のA/D変換器を介して3軸加速度センサ532の出力を読み込むことができる。
ボディ制御部510は、ファインダ用液晶モニタ507aとファインダ用光学系507bとから成るファインダ507に、外部液晶モニタ519と同様に、撮像素子509から得られた撮影結果を含む種々の情報を表示させることができる。
ボディ制御部510は、撮像素子509から得られた撮像信号に対して撮像素子509の撮像面に結像された被写体像のピント検出および合焦制御を行う。例えば、撮像信号のコントラスト量を検出し、コントラストが極値となるようにフォーカシングレンズ705(後述)の駆動指示をレンズ制御部710(後述)に送信する。後述の通り、この駆動指示を受信したレンズ制御部710は、フォーカシングレンズ705をフォーカシングレンズ駆動部715により駆動して、撮像素子509の撮像面における被写体像のピントが合うようにする。
以下、レンズ部701の構成について述べる。
レンズ制御部710は、ワンチップマイクロコンピュータ等で構成され、レンズ部701の全制御を受け持つ。レンズ制御部710は、振れ検出の信号等アナログ信号をディジタル値に変換するA/D変換器、各種時間を測定するタイマ等を内蔵する。以下では、レンズ制御部710がレンズ主制御部710aと振れ制御部710bとに機能上分かれている1つの制御手段であるものとして説明を行う。但し、本発明はこのような実施形態に限られるものではない。例えば、レンズ主制御部710aをさらにいくつかの制御ブロックとしたり、複数のワンチップマイクロコンピュータ等で構成することも可能であるし、振れ制御部710bを独立したワンチップマイクロコンピュータ等とし、それぞれの制御ブロックをシリアル通信等で通信可能な構成とすることにより、同様な動作を行うことも可能である。
レンズ部701は、複数のレンズから構成され、被写体からの光をボディ部501の撮像素子509に投影する撮影光学系を有する。この撮影光学系には、撮影光軸702と垂直平面の2軸方向(図1では、X軸、Y軸方向)にシフト可能な補正レンズ704と、ズーミングレンズ703と、フォーカシングレンズ705とが含まれる。
レンズ主制御部710aは、ズーミングレンズ位置検出部713によりズーミングレンズ703の位置を検出し、又、ズーミングレンズ駆動部712によりズーミングレンズ703を撮影光軸702方向に駆動することで、撮影焦点距離を可変する。
レンズ主制御部710aは、フォーカシングレンズ位置検出部716によりフォーカシングレンズ705の位置を検出し、又、フォーカシングレンズ駆動部715によりフォーカシングレンズ705を撮影光軸702方向に駆動することで、ボディ部501の撮像素子509の撮像面に結像された被写体像のピントを調整する。
レンズ主制御部710aは、絞り駆動部724を用いて絞り723を制御し、必要なタイミングで必要な絞りに制御する。
振れ制御部710bは、振れ補正回路部714を制御し、補正レンズ704をX軸、Y軸方向にシフトさせる。これにより、ボディ部501の撮像素子509の結像面に結像された被写体像の振れ(像振れ)が補正される。詳細は後述する。
1.1 ボディ部の操作部、各種モード設定
ボディ部501に関し、特に操作部518と、カメラの各種モードの設定に関して記す。
(1)操作部
図2は、ボディ部501を裏(非被写体)側から見たもので、本発明に関わる操作部518の各部材、及び、各種モードの設定に必要な外部液晶モニタ519の配置の例を示した図である。また、図3は、操作部518とボディ制御部510との接続を表した回路図である。
以下説明する通り、本操作部518を構成する各種釦は、それぞれが図3の各スイッチ(以下、SWと略す)に連動する。具体的には、各種釦が操作されるとその釦に対応するSWがオンする。図3に示される通り、各SWはボディ制御部510の電源VDDに抵抗でプルアップされ、かつ、ボディ制御部510に接続されている。これにより、各種釦が操作されていない場合、その釦に対応するSWはオフで、ボディ制御部510にはHighレベルが出力される。又、各種釦が操作されると、その釦に対応するSWがオンとなり、ボディ制御部510にはLowレベルが出力される。これにより、ボディ制御部510は、各種SWの信号レベルにより、そのSWに対応する釦に対する操作を認識可能となる。
レリーズ釦90は、その押し込みストロークの中程まで押し込むことにより、半押しSW190aがオンし、そこからさらに深く押し込むことによりレリーズSW190bがオンするよう構成されている。本レリーズ釦90を押し込むことにより、後述する撮影動作を開始する等の動作が行われる。
同様に、メイン釦91はメインSW191に、メニュー釦93はメニューSW193に連動し、AFスタート釦95はAFスタートSW195に、AFロック釦96はAFロックSW196に、AEロック釦97はAEロックSW197に、それぞれ連動する。
メイン釦91が押されると、ボディ制御部510は後述する通り本カメラのボディ部501の作動を開始、或いは、終了させる。メニュー釦93が押されると、ボディ制御部510は後述するように外部液晶モニタ519に設定メニューを表示させる。ユーザはこの設定メニューに対し、マルチセレクタ94により各種モード等の設定を行うことができる。
AFスタート釦95が押されると、ボディ制御部510はAF(オートフォーカス)作動を開始する。具体的には、まず撮像素子509から得られた撮像結果から被写体を測距する。そして、レンズ部701のレンズ制御部710にフォーカシングレンズ705を駆動させ、撮像素子509の撮像面のピント合わせを行う。
AFロック釦96が押されると、ボディ制御部510は、前記AF作動を止め、フォーカシングレンズ705の駆動を停止させる。
ボディ制御部510は、必要なタイミングで、撮像素子509から得られた撮像結果を基に自動測光(AE)動作を行っている。具体的には、被写体を測光し、撮像素子509の感度を変更したり、レンズ部701のレンズ制御部710に指示して絞り723の絞り値を調整したりして、撮像素子509面の輝度を最適に制御する。AEロック釦97が押されると、ボディ制御部510はこのAE作動を停止し、その時点のAE状態にロックする。
マルチセレクタ94は、複数の釦とそれに連動するSWにより構成される。具体的には、マルチセレクタ(中央)釦94aがマルチ選択(中央)SW194aに、マルチセレクタ(右)釦94bがマルチ選択(右)SW194bに、マルチセレクタ(上)釦94cがマルチ選択(上)SW194cに、マルチセレクタ(左)釦94dがマルチ選択(左)SW194dに、マルチセレクタ(下)釦94eがマルチ選択(下)SW194eにそれぞれ連動する。
(2)各種モード設定
ユーザは撮影モードを始めとする本発明に関する各種モード、各種撮影条件、及びその他の設定を、メニュー釦93、マルチセレクタ94、及び、外部液晶モニタ519を用いて行う。
図4は、外部液晶モニタ519に表示される設定メニューの具体的な一例を示す図である。ユーザによりメニュー釦93が押されると、ボディ制御部510は外部液晶モニタ519に図4に示す設定メニューを表示する。
次にユーザは、マルチセレクタ94の上下釦(マルチセレクタ(上)釦94c、マルチセレクタ(下)釦94e)を操作し、外部液晶モニタ519に表示されるカーソル41(現在選択されている部分を示す図形であって、図4の例では網掛けされた長方形である)を移動させ、変更したい項目を選ぶ。次にユーザは、マルチセレクタ94の左右釦(マルチセレクタ(右)釦94b、マルチセレクタ(左)釦94d)を操作し、選ばれている項目(図4の例では、"振れ補正作動")の設定を変更する。図4の例では、"振れ補正作動"は現在、四角形42で囲まれた"AUTO"が設定されている。ユーザは、マルチセレクタ(右)釦94b、マルチセレクタ(左)釦94dを押し込むことで、当該設定を"AUTO","ON","OFF"のうち任意のものに変えることができる。
ボディ制御部510は、以上に述べたメニュー釦93、マルチセレクタ94のユーザ操作を、それに連動した各SWのオン/オフから認識する。そして、外部液晶モニタ519に上述の表示をさせ、ユーザ操作に応じて各種モード、各種撮影条件、及びその他の設定を行う。
1.2 レンズ部
次に、振れ制御部710b、及び、振れ補正回路部714の作動を説明する。
図5は、振れ制御部710b及び振れ補正回路部714の構成を示すブロック図である。図5に示すように、振れ検出、補正レンズ位置検出、補正レンズ駆動等の作動は、X軸方向とY軸方向の2軸分必要である。以下の説明では、X軸方向とY軸方向とで作動が同一のものは、一方の軸についてのみ説明し、他方の説明を省略する場合がある。
(1)振れ検出部
本実施形態では、振動ジャイロ200aと振動ジャイロ処理部201aとを指して振れ検出部20aと称する。同様に、振動ジャイロ200bと振動ジャイロ処理部201bとを指して振れ検出部20bと称する。振動ジャイロ200a及び200bは、それぞれ前述の補正レンズ704の位置検出方向のX軸方向、Y軸方向の角速度を検出する。すなわち、振動ジャイロ200aがX軸方向用、振動ジャイロ200bがY軸方向用である。振動ジャイロ200a及び200bの出力は、それぞれ振動ジャイロ処理部201a(X軸方向用)、201b(Y軸方向用)により処理される。処理結果は検出された角速度に応じた信号として振れ制御部710bに出力される。つまり、振れ検出部20a及び20bは、本実施形態に係る撮像装置の振れを検出しこの振れに対応する信号を出力する。振れ制御部710bは、これらの信号を量子化し、振れ角速度ωを得る。
図6は、振れ検出関連部分のブロック図である。振動ジャイロ200aは、本実施形態の撮像装置に生じた手振れによる角速度を検出し、検出結果に応じた信号を出力する。振動ジャイロ200aの出力は、まずLPF(ローパスフィルタ)2により、振れとは無関係な高周波がカットされる。そして、オフセット電圧調整部3により、振動ジャイロ200aのオフセット電圧が調整された後、振れ制御部710bのA/D変換器4により量子化される。以下、この量子化値を振れ量子化値ω1と呼ぶ。その後、振れ角速度基準値算出部5は、振れ量子化値ω1から、振れ量子化値ω1の基準となる振れ角速度基準値ω0を算出(演算)する。減算器7は、振れ量子化値ω1から振れ角速度基準値ω0を差し引くことで、振れ角速度ωを算出する。
但し、振れ状態判定部6(後述)により振れ状態が構図変更中であると判定された場合、振れ角速度確定部11は振れ角速度ωをゼロとする。この場合、振れ補正は実質行われなくなる。これは、以下のような理由による動作である。ユーザが構図を変更する場合、本カメラに大きな振れ角速度が生じる。このときに振れ補正を行うと、補正レンズ704がその制御範囲リミットに到達し、それ以上振れ補正が行えなくなってしまう。このような動作は望ましいものではないため、本実施形態では、振れ状態判定部6により構図変更と判定されると、振れ角速度確定部11が振れ角速度ωをゼロとして、極力、補正レンズ704がその制御範囲リミットに到達しないようにする。
(1−1)LPF、オフセット電圧調整部
図7を用いて、図6のLPF2、オフセット電圧調整部3の部分をさらに詳細に説明する。
図7は、特開平10−228043号公報に記載されている従来技術を本実施形態に適用したものである。振動ジャイロ200aの出力は、2次LPF2により、手振れとは無関係な高周波がカットされ、オフセット電圧調整部3に出力される。オフセット電圧調整部3は、LPF2の出力を反転増幅すると共に、不要な振動ジャイロ200aのオフセット電圧を調整する。LPF2はオペアンプOP201、抵抗R201,R202、コンデンサC201、C202で構成される。また、オフセット電圧調整部3は、オペアンプOP301、抵抗R301,R302,R303、コンデンサC301、及び、D/A変換器3aにより構成される。オフセット電圧調整部3は、D/A変換器3aの出力電圧を調整することで、オフセット電圧調整部3の出力が、これに接続されるA/D変換器4の有効なレンジ内となるよう調整する。その調整方法等は、特開平10−228043号公報等に開示されている。
(1−2)振れ角速度基準値算出部
次に、振れ角速度基準値算出部5の作動を記す。
図8は、図6に於ける振れ角速度基準値算出部5と減算器7の構成を示すブロック図である。振れ角速度基準値算出部5は、図6に於けるA/D変換器4が出力する振れ量子化値ω1の高周波成分をカットするLPF(ローパスフィルタ)5aで構成される。減算器7は、振れ量子化値ω1からLPF5aの出力(これが振れ角速度基準値ω0となる)を減算することで振れ角速度ωを算出する。
図9は、LPF5aの構成の一例を示すブロック図である。
図9に示されるLPF5aは、作動開始時の初期値をV0、カットオフ周波数をfcとするLPFである。初期値V0は、振れ検出部20aの作動開始時の振れ量子化値ω1とする。図9で示されるLPF5aの作動は、例えば、1msの所定間隔毎に繰り返し演算が行われ、入力Vinの高周波をカットするLPFとして作動する。1/Zとは、本LPF5aの前回の演算時のV4の値である。図9に示す例では1ms前のV4値を保持し、その保持値を使用する。
又、図9による構成のLPFの乗算部5a1の部分の係数:2πfc(fcは、本LPFのカットオフ周波数)を替えることで、本LPF5aのカットオフ周波数を可変可能である。LPF5aのカットオフ周波数は、通常のカメラに生じる手振れであれば、0.1〜1Hz程度にするのが一般的である。
又、カットオフ周波数を変更可能なLPFであれば、図9に示される構成以外のLPFでも構わない。
尚、振れ角速度基準値算出部5と減算器7による図8の構成は、振れ量子化値ω1の低周波成分をカットしており、実質的にHPF(ハイパスフィルタ)である。従って、振れ角速度基準値算出部5による振れ角速度基準値ω0を特に区分して得る必要がなければ、振れ量子化値ω1にHPFを施し、振れ角速度ωを求めても構わない。又、HPFも図8や図9の構成に限定する必要はない。
詳細は、後述するが、以上の様な構成の振れ角速度基準値算出部5(LPFで構成)、又は、振れ量子化値ω1に施すHPFのカットオフ周波数fcは、種々な条件で可変される。
(1−3)振れ状態判定部
次に、振れ状態判定部6は、本カメラ(ボディ部501とレンズ部701で構成される)の振れの状態、具体的には、本カメラが、三脚に固定された状態なのか、構図が安定した状態であるか、構図を変更している状態(流し撮り等も含む)であるか等を検出する。振れ状態判定部6の作動を具体的な振れ波形に対して話しを進めてゆく。
(構図変更検出)
図10は、構図が安定した状態から前と異なる被写体に構図を変更した場合の振れ量子化値ω1と、振れ角速度基準値ω0の様子を示した図である。
図10では、時刻t1の直前でカメラの構図を変更している。この例では、時刻t1に於いて、振れ量子化値ω1と振れ角速度基準値ω0の差が所定値ωth1(これを構図変更開始角速度閾値ωth1と呼ぶ)を超えたため、振れ状態判定部6は、振れ状態を構図変更中と判定している。その後、少なくとも構図変更が終了され、構図が決まったタイミングである時刻t4に於いて、振れ量子化値ω1と振れ角速度基準値ω0の差が所定値ωth2(これを構図変更終了角速度閾値ωth2と呼ぶ)内となったため、振れ状態判定部6は、振れ状態を構図安定状態(非構図変更中)と判定している。
以上で説明した構図変更検出の方法は、最も簡単な方法である。振れによっては、ユーザの意図した通りに構図変更が検出されず、構図変更の開始、終了が頻繁に繰り返されて検出される場合がある。例えば図10に於ける時刻t2〜時刻t3において、振れ状態判定部6は一旦構図変更が終了したと判定してしまう。
このような場合に対応するため、振れ状態判定部6の構図変更判定条件に時間の要素を取り入れてもよい。例えば、振れ量子化値ω1と振れ角速度基準値ω0の差が、所定時間以上の間構図変更開始角速度閾値ωth1を超えていた場合に構図変更が開始されたと判定するようにしてもよい。同様に、振れ量子化値ω1と振れ角速度基準値ω0の差が、所定時間以上の間構図変更終了角速度閾値ωth2以下であった場合に構図変更終了と判定するようにしてもよい。
前述の通り、振れ角速度基準値算出部5と減算器7による図8の構成は、実質的にHPFである。以下、当該箇所をHPFで構成した場合について説明する。
図11は、図10と同じ振れをカメラに印加した場合の振れ量子化値ω1にHPFを施して得られた振れ角速度ω(図8の振れ角速度基準値算出部5と減算器7で構成する場合には、ω1−ω0に相当する)を示す。
図11では、時刻t5の直前でカメラの構図が変更されている。この構図変更により、時刻t5に於いて、振れ角速度ωが構図変更開始角速度閾値ωth1を超えている。そして、この状態が構図変更開始時間閾値Tth1を超える時間だけ続いたため、振れ状態判定部6は時刻t6において構図変更が開始されたと判定する。すなわち、振れ状態判定部6は振れ状態を構図変更中と検出する。次に、図10に於いて誤検出していた時刻t2〜時刻t3に於いては、振れ角速度ωが構図変更終了角速度閾値ωth2以下となる時間が構図変更終了時間閾値Tth2を超えない為、振れ状態判定部6は構図変更が終了したと判定しない。その後、少なくとも構図変更を終了し、構図が決まったタイミングの時刻t9に於いて、振れ角速度ωが構図変更終了角速度閾値ωth2以下となり、この状態が構図変更終了時間閾値Tth2を超える時間だけ続いたため、振れ状態判定部6は時刻t10において構図変更が終了されたと判定する。すなわち、振れ状態判定部6は振れ状態を構図安定状態と検出する。
本発明では、種々なカメラの状態で、これらの構図変更検出閾値(構図変更開始角速度閾値ωth1、構図変更開始時間閾値Tth1、構図変更終了角速度閾値ωth2、及び構図変更終了時間閾値Tth2)を可変する。詳細は、後述する。
尚、後述する方法で、これら構図変更の各種閾値を変更するが、構図変更の開始、終了、或いは、構図変更しているか否かの判定に用いる閾値としては、上記の具体例に限定されるものではない。例えば、特開2002−99013号公報を始めとする従来技術に於いて、構図変更の検出に用いられている閾値を、後述する閾値の変更の対象としてもよい。
(三脚固定検出)
一方、カメラが三脚に固定されている状態か、手持ちの状態なのかについては、以下のような方法によりそれを検出する。
図12は、振れ状態判定部6の、三脚固定検出の部分を示したブロック図である。振れ状態判定部6は、カットオフ周波数の異なる2つのLPF(6a1、6a2)から構成されるBPF6aを備える。以下の説明では、LPF6a1のカットオフ周波数をfcH、LPF6a2のカットオフ周波数をfcLと呼ぶ。また、fcHはfcLよりも大きい。
振れ状態判定部6は、振れ量子化値ω1から、本実施形態のカメラを手持ちとした場合と三脚に固定した場合とで差異が大きく出る特徴的な周波数帯域をBPF6aにより抽出する。そして、抽出された波形の振幅が、所定値ωth3(この所定値を三脚固定検出角速度閾値ωth3と呼ぶ)で表される±ωth3の範囲内である継続時間を測定する。この継続時間が所定時間Tth3(この所定時間を三脚固定検出時間閾値Tth3と呼ぶ)以上となった場合に、振れ状態判定部6は手振れ状態を三脚固定状態と判定し、それ以外の場合には手持ち状態と判定する。
なお、上述の「特徴的な周波数帯域」を三脚固定検出帯域と呼ぶ。三脚固定検出帯域は例えば0.5Hz〜1.0Hz程度に設定される。すなわち、LPF6a1のカットオフ周波数fcHは1.0Hz程度、LPF6a2のカットオフ周波数fcLは0.5Hz程度に設定される。
図13は、図12に於けるBPF6aの出力の一例を示す波形図である。図13の例は手持ちの状態から始まり、時刻t11に於いてユーザがカメラを三脚に固定し始めている。その後、時刻t12に於いて三脚への固定が終了すると、BPF6aの出力は、所定範囲±ωth3内となる。振れ状態判定部6は、この状態が三脚固定検出時間閾値Tth3以上継続した時刻t13に於いて、振れ状態を三脚固定状態と判定する。本発明では、種々なカメラの状態で、これらの閾値(カットオフ周波数fcH、カットオフ周波数fcL、三脚固定検出角速度閾値ωth3、及び三脚固定検出時間閾値Tth3)を可変する。詳細は、後述する。
尚、本発明において利用可能な三脚固定検出方法は上述のものに限定されない。例えば、特開平10−161172号公報や特開平11−38461号公報、特開平11−64911号公報に記載されている、振れ検出センサの出力の大きさや周波数によって三脚等に固定されているか否かを判定する方法を利用してもよい。具体的には、何れの方法に於いても、カメラが三脚に固定されているか否かを判定する閾値が存在するので、そのような閾値を後述する可変の対象とすればよい。
尚、本実施形態では、振れ状態判定部6が手振れ状態として「構図安定状態と構図変更中状態」、及び、「手持ち状態と三脚固定状態」を判定するが、本発明はこのような手振れ状態に限定されない。例えば、構図変更中状態をさらに流し撮り中の状態とそれ以外の状態とに分けても構わないし、乗り物に乗っている状態を更に判定することもできる。但し、以下の説明では、例えば流し撮り中状態等は構図変更中の状態に含めるものとし、振れ状態判定部6が判定する振れ状態は、三脚固定状態、構図安定状態、構図変更中状態の3つであるとする。
(2)補正レンズ目標位置演算
次に、振れ制御部710bで行われる、振れ角速度ωから補正レンズ704の制御すべき目標となる補正レンズ目標位置LCの算出方法に関して述べる。
図14は、振れ制御部710bで行われる目標位置算出部600の作動を、具体的には、振れ角速度ω(X)から補正レンズ目標位置LC(X)を算出する方法を示したブロック図である。尚、ω(X)、LC(X)等の「(X)」は、X軸方向に関する値であることを意味する。例えば、ω(X)はX軸方向の振れ角速度、LC(X)はX軸方向の補正レンズ目標位置である。以下用いられる記号の後の(X)も同様の意である。
振れ角速度ω(X)は、角速度のディメンジョンを持ち、一方、補正レンズ704の制御目標となる補正レンズ目標位置LC(X)は、位置のディメンジョンを有する。従って、目標位置算出部600は、図14に示される通り、振れ角速度ω(X)を積分部600bにより積分し、乗算部600cにより補正レンズ目標位置LC(X)の単位に合わせる為の係数KLCを掛け算することにより、補正レンズ目標位置LC(X)を算出する。
但し、補正レンズ目標位置LC(X)は、少なくとも補正レンズ704の可動範囲LRrange内でなくてはならない。そこで、リミット部600dは、後述する所定範囲±LCsrangeの範囲に補正レンズ目標位置LC(X)を制限する。尚、積分部600bは、所定間隔で積算することにより積分の作動を行っても構わない。ここで言う所定間隔とは、前述した振れ角速度ωの算出間隔で、例えば1ms程度の時間間隔とする。又、積分部600bの積分、又は、積算値の初期値は、振れ検出開始時に初期化される。例えば、補正レンズ目標位置LC(X)が可動範囲の中央位置となるように初期化する。
ここで、振れ角速度ω(X)には、誤差が生じる。具体的には前述の通り、基準となる振れ角速度基準値ω0に誤差を生じているから、振れ角速度ω(X)を積分部600bで積分、又は、積算した場合、その誤差が累積し、あっと言う間に補正レンズ目標位置LC(X)が±LCsrangeを越えてしまう。そこで目標位置算出部600は、補正レンズ目標位置LC(X)が極力補正レンズ704の可動中心となるよう、今現在の補正レンズ目標位置LC(X)の大きさに応じて変化する速度バイアス量ωbias(X)を与える。
図14に於ける速度バイアス部600e、及び、減算部600aは、この作動を行う。今、補正レンズ704の可動範囲の中央の座標を0として補正レンズ位置LR(X)、及び、補正レンズ目標位置LC(X)を定義した場合、速度バイアス部600eの出力である速度バイアス量ωbias(X)は次式(1)で、減算部600aの出力ω’は次式(2)で示される。ここで係数Kbiasは、適切に設定される係数である。
ωbias(X)=Kbias×LC(X)3 … (1)
ω’=ω(X)−ωbias(X) … (2)
上述の式(2)で得られるω’には、補正レンズ目標位置LC(X)が補正レンズ704の可動中心位置(=座標0)から離れる程に速度バイアス量ωbias(X)が大きく、かつ、補正レンズ目標位置LC(X)を可動範囲中心位置(=座標0)に戻すよう作用する。尚、上式(1)に於ける係数Kbiasは、大きくする程、補正レンズ目標位置LC(X)が、リミット部600dによりその値を制限されることは無くなるが、一方、振れ補正の効果が劣化する為、適切に決められる。
以上のような方法で、振れ角速度ω(X)が、補正レンズ目標位置LC(X)に変換される。この際、速度バイアス部600e及び減算部600aによる速度バイアスにより、補正レンズ目標位置LC(X)の算出過程において、リミット部600dが値を制限する状態が発生することを、効果的に抑制することができる。
(3)補正レンズ駆動メカ、機構
図15は、補正レンズ704を撮影光軸702に垂直な平面の、お互いに該直交する方向にシフトさせる機構を示す模式図である。補正レンズ704を含む可動部81と、レンズ部701の部材に固定された固定部80の間に、摺動ボール82をサンドイッチし、付勢バネ83により可動部81と固定部80を撮影光軸702方向に付勢する。この摺動ボール82と付勢バネ83は、それぞれ3対設けられ、それぞれの摺動ボール82が、固定部80、可動部81の面を転がる、或いは、摺動することで、補正レンズ704が撮影光軸702と該垂直な平面内を滑らかに移動可能となる。
尚、可動部81には、摺動ボール82を取り囲むように可動部突起81a、81bを設け、摺動ボール82が思惑の位置範囲内に止まるようにしている。また、可動部突起81a、81bに対する固定部80に設けられた固定部突起80a、80bが、可動部81の可動範囲を制限している。
図16は、補正レンズ704の可動範囲を示す図である。補正レンズ704の可動範囲は、可動部突起81a、81b、及び、固定部突起80a、80bにより、一辺の長さを2×LCsrange(これを補正レンズ目標位置リミット範囲LCsrangeと呼ぶ)とする正方形内に移動を限定される。尚、本実施形態では、補正レンズの可動範囲の形状は正方形としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、長方形型であってもよいし、正8角形型等でも構わない。
次に、図17を用いて、補正レンズ704の位置検出機構、及び、補正レンズ704の撮影光軸702に対して垂直平面に駆動する機構を説明する。
図17は、補正レンズ704の駆動機構と位置検出機構を模式的に示した図である。補正レンズ704の位置検出機構は、可動部81に位置検出用マグネット85を、固定部80にホール素子89を対向するように配置し、補正レンズ704の移動にほぼ比例してホール素子89の感度軸方向の磁束が変化するよう構成する。一般的にホール素子は、磁束がゼロであるときほぼ出力がゼロとなり、磁束の大きさに比例してその出力電圧が変化する。従って、ホール素子89の出力を確認することで、補正レンズ704の位置が検出可能となる。
補正レンズ704の駆動機構は、可動部81に駆動用マグネット87を、固定部80にコイル86を対向するように配置し、又、固定部80のコイル86とは逆面にヨーク88を配置する構成とする。コイル86に流す電流に比例して可動部81に電磁力が発生し、補正レンズ704を移動させる。
上記構成の補正レンズ704の位置検出機構、及び、駆動機構を、直交する2軸(一方をX軸、他方をY軸とする)方向それぞれに設けることで、補正レンズ704を撮影光軸702と直交する平面内で、前述の可動範囲内の任意の位置に駆動すること、および、補正レンズ704の位置を検出することが可能となる。
(4)補正レンズ位置検出
次に、補正レンズ704の位置検出は、ホール素子(X軸用)89a、及び、ホール素子(Y軸用)89bを、それぞれ、ホール素子処理部202a、202bにより処理し、振れ制御部710bに出力することにより行われる(図5参照)。振れ制御部710bは、ホール素子処理部202a、202bのアナログ信号をディジタル値に変換するA/D変換器をその内部に備えていて、ホール素子処理部202a、202bからの出力をディジタル値に変換し、X軸方向、及び、Y軸方向の補正レンズ704の位置(以下、補正レンズ位置LR(X)、及び、補正レンズ位置LR(Y)と記す)を検出する。以下、ホール素子処理部202a、202bを具体的な回路図を用いてさらに説明する。
図18は、X軸方向の検出用ホール素子89aのホール素子処理部202aの具体的な回路図の一例である。なお、Y軸方向のホール素子処理部202bも同様の構成であるので、説明を省略する。ホール素子89aは、等価的に図18に示される通り、抵抗4本(これをRh1、Rh2、Rh3、Rh4とする)のブリッジ回路として表すことができる。一般的にホール素子は、磁界がゼロの時、抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4が一定のバランス状態にあり、出力Vhout−とVhout+の間の電位差は、ほぼゼロとなる。この状態で磁界を加えると、抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4の比率が変化し、出力Vhout−とVhout+の間に電位差が生じる。出力Vhout−とVhout+の間の電位差は、磁界の大きさに比例すると共に、ホール素子に流れる電流、具体的には、入力Vhin+からVhin−に流れる電流にも比例する。
従って、図18に示される通り、ホール素子89aは、演算増幅器OP301a、D/A変換器305a、トランジスタTr304a、及び、抵抗R311aにより構成される定電流回路により、定電流駆動される。今、抵抗R311aの抵抗値をr331a、D/A変換器305aの出力Vh_iの電圧をvh_iとすると、次式(3)で示されるようにD/A変換器305aの出力Vh_iの電圧vh_iに比例した一定電流ihでホール素子89aを駆動することができる。
ih≒vh_i/r331a … (3)
このことにより、製造上の個々に異なる感度特性を有する、かつ、温度により変化するホール素子89aの感度バラツキを、D/A変換器305aの出力Vh_iを適切に設定することで思惑の感度に調整可能となる。
次に、基準電源Vhref、及び、演算増幅器OP302aで構成される回路は、例えば、三端子レギュレータ等により基準電源Vhrefを生成し、その電圧(基準電圧)をvhrefとすると、ホール素子89aの一方の出力Vhout−の電圧を、基準電圧vhrefに保つよう動作する。
次に、演算増幅器OP303a、D/A変換器306a、抵抗R312a、R313a、R314a、及び、コンデンサC315aで構成される回路は、ホール素子89aの出力Vhout−とVhout+の間の電位差を作動反転増幅して出力すると共に、D/A変換器306aの出力Vh_offsetの電圧を、演算増幅器OP302aによって基準電圧vhrefに保たれた出力Vhout−を基準に反転加算増幅して出力する。今、抵抗R312a、R313a、R314aの抵抗値をそれぞれr312a、r313a、r314a、ホール素子89aの出力Vhout+の電圧、及び、D/A変換器306aの出力Vh_offsetの電圧をそれぞれ、基準電圧vhrefを基準としてvhout、vh_offsetとすると、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)の電圧vhout(X)は、次式(4)で示される。ここで、G0=r314a/r312a、G1=r314a/r313aである。
vhout(X)≒vhref−G0×(vhout−)−G1×vh_offset … (4)
以上のことから、D/A変換器306aを操作し、その出力Vh_offsetの電圧vh_offsetを可変させることで、本ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)のオフセット電圧を調整することができる。理想的なホール素子の出力電圧は、磁界がゼロである場合にゼロとなる。しかし、実際には、ホール素子89aを構成する抵抗Rh1、Rh2、Rh3、Rh4に製造上のアンバランスが生じ、又、使用温度の変化により、出力Vhout−とVhout+の間の電位差がゼロとならない。加えて、演算増幅器OP303aの入力オフセット電圧も生じる。加えて、補正レンズ704の位置検出メカの寸法バラツキにより、補正レンズ704の可動範囲中央でホール素子89aの感度軸方向の磁界が必ずしも0とならない。以上のことから、本ホール素子処理部202aの出力Vhoutが思惑の電圧とならない。こうした場合に、D/A変換器306aを操作し、その出力Vh_offsetの電圧vh_offsetを可変させることで、本ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)を思惑の電圧にオフセット調整することができる。
以上説明したD/A変換器305a、及び、306aは共に振れ制御部710bに接続されていて、振れ制御部710bにより制御される。このことにより、ホール素子駆動電流ihを調整し、ホール素子89aの感度バラツキ、温度変動による感度変化、及び、ホール素子89aのオフセット電圧を始めとする本ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)に含まれるオフセット電圧が調整可能となる。
図19は、補正レンズ位置LRとホール素子処理部202aの出力との関係を示す図である。振れ制御部710bは、D/A変換器305aを操作し、その出力Vh_iの電圧を可変することで、ホール素子処理部202aの出力電圧vhoutの補正レンズ位置LRに対する変化量(図19のグラフの傾きに相当)を変化させ、又、D/A変換器306aを操作し、その出力Vh_offsetの電圧を可変することで、ホール素子処理部202aの出力電圧vhoutをシフトさせることができる。これにより、ホール素子処理部202aから思惑の出力を得ることが可能となる。図19では、補正レンズ704の可動範囲(±LRrangeの範囲)に於いて、ホール素子処理部202aの出力Vhout(X)は、思惑の範囲Vadj−からVadj+の出力を得ている。
尚、抵抗R312aの抵抗値r312aを小さくし過ぎると、ホール素子89aの出力Vhout+から抵抗R312aに流れる電流が大きくなり、これが誤差となってホール素子出力の検出リニアリティに影響を与える為、適切な値にする。又、コンデンサC315aは、補正レンズ704の位置検出に不要な高周波ノイズを除去するためのもので、適切な容量値に設定する。
(5)補正レンズ駆動量演算、及び、補正レンズ駆動
次に、図5に戻り、補正レンズ704の駆動量D(X)(X軸駆動量)、駆動量D(Y)(Y軸駆動量)の算出方法に関して記す。補正レンズ704の駆動量D(X)、D(Y)は、前述(2)補正レンズ目標位置演算で算出された補正レンズ目標位置LCから算出される。
図20は、振れ制御部710bで行われる補正レンズ704の駆動量の演算を行う駆動量演算部610の作動を示したブロック図である。振れ制御部710bは、図20で示される駆動量演算を、補正レンズ704を制御する為に、十分短い間隔である所定時間間隔(これを制御サンプリング間隔tsと呼ぶ)で行う。この制御サンプリング間隔tsは、例えば1msとする。
まず減算部610aは、補正レンズ目標位置LC(X)(前項(2)補正レンズ目標位置演算で算出された)と補正レンズ位置LR(X)(前項(3)補正レンズ位置検出で算出された)との差ΔL(X)を算出する。すなわち、ΔL(X)は次式(5)で与えられる。
ΔL(X)=LR(X)−LC(X) … (5)
ここで、ΔL(X)は、目標位置に対する実際の補正レンズ704の位置との差であるから、いわゆる制御誤差に相当する。
次にこの制御誤差ΔL(X)から、乗算部610eが比例項駆動量Dprop(X)を、乗算部610dが積分項駆動量Dinte(X)を、乗算部610fが微分項駆動量Ddiff(X)をそれぞれ算出する。その後、加算部610gがそれらの加算値として補正レンズ704の駆動量D(X)を算出する。これらの各値は、次式(6)〜(9)により与えられる。
Dprop(X)=Kprop×ΔL(X) … (6)
Dinte(X)=Kinte×Σ(ΔL(X)) … (7)
Ddiff(X)=Kdiff×(今回のΔL(X)−前回のΔL(X))…(8)
D(X)=Dprop(X)+Dinte(X)+Ddiff(X) …(9)
ここで、上式(6)〜(9)で表される演算は、制御サンプリング間隔ts毎に行われる。すなわち、上式(7)に於けるΣΔL(X)とは、制御誤差ΔL(X)を所定間隔tsで積算することを意味し、これは積分と見なせる。同様に、上式(8)に於ける「前回のΔL(X)」とは、1制御サンプリング間隔ts前のΔL(X)を示し、「今回のΔL(X)−前回のΔL(X)」とは、所定間隔ts間の制御誤差ΔLの変化量を意味するが、これは微分と見なせる。従って、上式(6)〜(9)で駆動量を算出し、補正レンズ704を制御することをPID(比例−積分−微分)制御と言う場合がある。尚、ΣΔL(X)の初期値、及び、前回のΔL(X)の初期値は、駆動量演算部610の作動開始時、つまり、補正レンズ704の制御を開始する直前でゼロとする。
図21は、振れ制御部710bで行われる補正レンズ704の駆動量の演算を行う駆動量演算部611の作動を示したブロック図である。駆動量演算部611は、上述の駆動量演算部610の別の実施形態である。
減算部611aは、補正レンズ目標位置LC(前項(2)補正レンズ目標位置演算で算出された)と補正レンズ位置LR(X)(前項(3)補正レンズ位置検出で算出された)との差ΔL(X)を算出する。算出された制御誤差ΔL(X)は、ディジタルフィルタ部611bに送られる。ディジタルフィルタ部611bは、入力されたディジタル値に例えば図21で示される特性を有するディジタルフィルタを施す。乗算部611cはディジタルフィルタ部611bの出力に適正な制御ゲインGdを乗算し、補正レンズ704の駆動量D(X)として出力する。
図21で示されるディジタルフィルタの特性(ゲインと位相の周波数特性)、及び、制御ゲインGdは、図15、及び、図17で示される補正レンズ704の駆動メカニズムの特性に合わせ、その特性を設定する。一般的に、本実施形態に示されるような補正レンズ駆動メカニズムは、高周波に対して応用性が悪く、周波数が高くなるほどゲインが減少、位相が遅れる。図21の例では、これを補うべく、中域周波からゲインを上昇させると共に位相を進めている。
前述のような方法で、X軸、Y軸の補正レンズ704の駆動量D(X)、D(Y)が算出される。振れ制御部710bは、図5に於ける駆動部203a(X軸用)、駆動部203b(Y軸用)を通じて補正レンズ駆動用のコイル86a(X軸用)、コイル86b(Y軸用)を駆動し、補正レンズ704を補正レンズ目標位置LC(X)、LC(Y)の位置に制御する。尚、駆動部203a、203bには、電源VPが接続されている。駆動部203a、203bには、モータドライバが使用可能である。例えば、Hブリッジ型の汎用モータドライバを使用し、振れ制御部710bは、PWM(Pulse Width Modulation)回路(不図示)を内蔵するよう構成し、駆動量D(X)、D(Y)は、PWM波形のduty値とすることができる。振れ制御部710bに使用するようなワンチップマイクロコンピュータには、PWM波形が生成可能な回路が内蔵されるものが多く存在する。
2.ボディとレンズ間の通信
次に、ボディ部501とレンズ部701との間で行われる通信(正確には、レンズ側電気接点711及びボディ側電気接点512を介して、ボディ部501内のボディ制御部510と、レンズ部701内のレンズ制御部710との間で行われる通信であるが、分かり易いように以下、上記のように言うこととする)について記す。なお、本実施形態においては、コマンド及びパラメタの送受信を行う受信部及び送信部は、レンズ制御部710及びボディ制御部510にそれぞれ含まれるが、受信部及び送信部はこれに限定されず、レンズ制御部710及びボディ制御部510から独立していても良い。
(1)通信
図22は、ボディ部−レンズ部間で行われる通信波形の一例を示したタイミングチャートである。図22の例では、ボディ部501からレンズ部701の信号:CS(チップセレクト)信号、CLK(クロック)信号、SO(シリアルアウト)信号と、レンズ部701からボディ部501の信号:SI(シリアルイン)信号によるクロック同期式シリアル通信が行われるものとし、ボディ部501(正確にはボディ制御部510)、及び、レンズ部701(正確にはレンズ主制御部710a)には、こうしたシリアル通信のハードウエアを内蔵するものとしている。又、通信の主導権、つまり、ボディ部−レンズ部との通信を開始するのは、常にボディ部501とする。
ボディ部501は、レンズ部701との通信が必要となったタイミングである時刻t14にて、CS信号をHighからLowにする。これを受け、レンズ部701は、その後行われるシリアル通信の準備を行う。時刻t15〜時刻t16にてボディ部501は、CLKに同期してSO信号からコマンドに相当するデータをレンズ部701に送信する。コマンドに後述するパラメタがない場合(後述する防振準備開始コマンド等の場合)には、時刻t17〜時刻t18の作動を行わず、ボディ部501は時刻t19でCS信号をLowからHighとしてレンズ部701との通信を終了する。
一方、時刻t15〜時刻t16で送ったコマンドにパラメタがある場合、引き続いて時刻t17〜時刻t18に示される通り、このパラメタがボディ部501からレンズ部701への送信である場合、ボディ部501は、CLKに同期してSO信号からパラメタをレンズ部701に送信し、レンズ部701はこれを受信する。逆に、パラメタがレンズ部701からボディ部501への送信である場合、レンズ部701は、パラメタを、ボディ部501からのCLK信号に同期してSI信号からボディ部501に送信し、ボディ部501は、CLKに同期してSI信号からこれを受信する。パラメタが複数データである場合には、時刻t17〜時刻t18の動作を繰り返し、全てパラメタが通信し終えると、ボディ部501は、ボディ部501は、時刻t19でCS信号をLowからHighとしてレンズ部701との通信を終了する。
(2)コマンドとデータ
次に、ボディ部−レンズ部間通信のコマンドとそのパラメタを用いて述べる。
表1は、本発明に関わるボディ部−レンズ部間通信のコマンドとそのパラメタ一覧表である。
0:ボディ情報送信は、その後に続くパラメタによりレンズ部701で必要なボディ部501側の情報(ボディ情報)をボディ部501からレンズ部701に送信するコマンドである。ボディ情報の詳細は、後述する。1:レンズ情報は、その後に続くパラメタによりボディ部501で必要なレンズ部701側の情報(レンズ情報)をレンズ部701からボディ部501に送信するコマンドである。レンズ情報の詳細は、後述する。2:防振センタリングは、レンズ部701に、補正レンズ704をその可動中心にセンタリングさせるコマンドである。詳細は、後述する。3:動画防振開始は、レンズ部701に、動画撮影に最適な振れ補正を開始させるコマンドである。詳細は、後述する。
4:静止画防振開始は、レンズ部701に、静止画撮影に最適な振れ補正を開始させるコマンドである。詳細は、後述する。5:防振終了は、レンズ部701に、3:動画防振開始、又は、4:静止画防振開始の指示によりレンズ部701が行っている振れ補正の作動を終了させ、補正レンズ704をその可動中心にセンタリングさせるコマンドである。6:防振停止は、レンズ部701に、補正レンズ704をその可動端に落下させ、補正レンズ704の駆動を停止させるコマンドである。詳細は、後述する。7:防振像位置は、レンズ部701に、補正レンズ704を、本コマンド指示に続くパラメタで指示された位置に指示された速度で駆動させるコマンドである。詳細は、後述する。
(3)ボディ情報
次に、表2、3を用いて表1に於けるコマンド:0:ボディ情報送信でボディ部501からレンズ部701に送信するボディ情報を述べる。
図23は、ボディ部501において検出される重力Gの3軸方向を示す模式図である。ボディ姿勢情報とは、ボディ部501で検出された重力Gの3軸方向(3軸方向は図23に示される通り規定する)成分である。ボディ部501のボディ制御部510は、3軸加速度センサ532の出力を読み込み、3軸方向の加速度を検出し、ボディ姿勢情報としてレンズ部701に送信する。又、ボディ部501が、加速度センサを有しない、或いは、検出不能(加速度センサ電源が投入されていない場合や、破損した場合が想定される)である場合、及び、3軸の検出ができない場合(2軸加速度センサを用いた場合)、検出できない軸のデータを255(表2参照)とし、それがレンズ部701で認識可能なようにする。
尚、本発明は、ボディ姿勢情報として、上記通り、各軸の重力方向成分を用いることとしたが、これ以外にも、重力方向を重力の大きさと重力方向の方位角、或いは、簡略化して、ボディ部501の姿勢を正位置、縦位置(グリップ上)、縦位置(グリップ下)、下向き、上向き等の大ざっぱな状態をボディ姿勢情報としても構わない。
図24は、ボディ部501で検出された撮像面振れ量の検出タイミングとレンズ部701への送信タイミング等を示したタイミングチャートの一例である。ボディ部501の撮像素子509で検出された撮像面振れ量、及び、撮像面振れ量検出遅れ時間は、レンズ部701に送信される。撮像素子509としては、C−MOSセンサが用いられており、ライン露光順次読み出し方式(ローリングシャッター)が採用されているものとして以下述べる。
ボディ部501のボディ制御部510は、撮像素子509から、時刻t18〜時刻t27の間で画像aを、時刻t12〜時刻t29の間で画像bを得る。この2画像のズレから2画像:画像a、bの露光間隔間の撮像面に生じた撮像面振れ量を、図24の例では、時刻t30に於いて算出し、時刻t31のタイミングでボディ情報としてレンズ部701に送信する。
ここで、撮像面振れ量を算出する画像エリアの例を図24の四角43、44で示す。この例では、この撮像面振れ量算出エリアの画像aの露光タイミングは、時刻t19〜時刻t23であり、その中心時刻は、時刻t21である。同様、画像bの露光タイミングは、時刻t25〜時刻28であり、その中心時刻は、時刻t26である。従って、この2画像から得られる撮像面振れ量の基準となる時刻は、時刻t21と時刻t26の中間時刻t24(これを撮像面振れ量算出時刻と呼ぶ)となる。この撮像面振れ量算出時刻t24とt31でボディ情報として撮像面振れ量をレンズに送信するタイミングとの遅れ時間を、撮像面振れ量検出遅れ時間とし、これもボディ情報としてレンズ部701に送信する。このことで、ボディ部501とレンズ部701での検出遅れ時間の認識を一致させることができる。
尚、図24の例では、画像aと画像bの2画像から撮像面振れ量を算出したが、これに限定されない。3画像以上でも構わない。又、撮像素子509にC−MOSセンサを用いないで、他のタイプ、例えば、CCDエリアセンサを用いた場合には、画像a、画像bの露光中心時刻等が図24とは異なる場合があるが、その撮像素子の特性に合わせて撮像面振れ量算出基準時刻を設定し、撮像面振れ量検出遅れ時間をレンズ部701に送信すれば良い。
尚、図24の例では、撮像面振れ量の単位は、検出に用いた2画像間の振れ量と定義しているが、これに限定されるものではない。撮像素子509の撮像間隔(フレームレート)が変化する(暗い場合にフレームレートを下げる等)場合等を考慮し、一般的な単位、所定時間当たりの撮像面振れ量とするとさらに良い。
その他、半押状態(レリーズ釦90に連動し、レリーズ釦90の半押しによりオン、オフする半押しSW190aのオン、オフ状態)、AFスタート釦95のオン、オフ状態、AFロック釦96のオン、オフ状態、AEロック釦97のオン、オフ状態、露出モード(6:Pモード(長低速)、5:Pモード(低速)、4:Pモード(通常)、3:Pモード(高速)、2:Sモード、1:Aモード、0:Mモード)、撮影シーンモード(6:花火、5:夜景、4:クローズアップ、3:風景、2:ポートレート、1:子供/ペット、0:スポーツ)、シャッタ秒時、動画記録するか否かの情報、測光モード(2:スポット測光、1:中央重点測光、0:評価測光)、AFモード(1:シングルAF、0:コンテニュアスAF)、測距エリア選択モード(2:シングルエリア、1:多点エリア、0:エリア自動選択)、ストロボ発光モード(2:発光禁止、1:AUTO、0:強制発光)、ISO感度(5:ISO1600、4:ISO800、3:ISO400、2:ISO200、1:ISO100、:ISO50以下)、連写モード(1:連写、0:単写)、動画フレームレート(2:60フレーム/秒以上、1:30フレーム/秒、0:15フレーム/秒以下)、防振カスタム設定1、2、3、4(詳細は後述する)等を、ボディ情報としてレンズ部701に送信する。
ここで、シャッタ秒時、動画記録するか否かの情報は、前述の動画防振開始コマンド、及び、静止画防振開始コマンドのパラメタと重複するが、本発明の一例として示したもので、どちらか一方のみでも構わないし、ボディ部501とレンズ部701を含めたカメラシステムとして、最適な方法を選択すれば良い。
(4)レンズ情報
次に、表4を用いて表1に於けるコマンド:1:レンズ情報取得でボディ部501がレンズ部701から取得するレンズ情報を述べる。
防振機能有無は、レンズ部701が振れ補正機能を有するか否かを示す。
マイクロ時平行振れ補正機能有無は、レンズ部701にマイクロ時平行振れ補正機能を有するか否かを示す。本実施の形態(図1)には不図示であるが、近年、近接撮影を主とするマイクロレンズで、レンズ部701に3軸加速度センサを内蔵し、カメラに生じた平行振れを検出して補正する機能を有する一眼レフ用交換レンズが発売されている。図5に示されるような角速度センサ(振動ジャイロ200a、200b)のみを用いた場合には、カメラ(或いは、レンズ部701)に生じた角度振れは検出できるものの、カメラが光軸と直行する方向に移動した場合、角速度センサ(振動ジャイロ200a、200b)には出力が発生しないため、この振れの平行成分は検出できない。レンズ部701に加速度センサを内蔵し、カメラ(或いは、レンズ部701)に生じた平行振れ成分を検出し、それを補正するシステムをマイクロ時平行振れ補正と呼び、マイクロ時平行振れ補正機能有無は、そうした機能がレンズ部701に在るか否かを示す。
次に、防振世代情報は、レンズ部701の防振世代を示す。毎年毎年、振れ補正技術は進歩し、レンズ部701の振れ補正システムも、技術アップして一新される場合がある。ボディ部501には、そうした複数の振れ補正性能、技術の異なるレンズが装着されることとなり、これを技術レベルの世代として区別、ボディ部501に認識させるものである。
振れ状態は、前述の図6、図10〜13、及び、その説明で述べた振れ状態判定部6で検出された三脚に固定された状態なのか、構図が安定した状態であるか、構図を変更している状態(流し撮り等も含む)の状態を示す。尚、振れ検出関連の電源投入前と遮断後、或いは、その直前直後等、及び、振れ検出関連の回路に不具合が生じた等で振れ状態を検出できない場合には、本情報を、検出不可能状態とする。
次に、撮像面全振れ量、及び、について説明する。
図6に於けるレンズ部701の振れ制御部710bは、前述の通り、振動ジャイロ(200a、200b)により得られた信号から振れ角速度ωを出力する。振れ制御部710bは、この振れ角速度ωを積分(若しくは、所定間隔で振れ角速度ωを積算することで同様に求めても構わない)して撮像面振れ角θvを求める。すなわち、撮像面振れ角θvは次式(10)により与えられる。
撮像面振れ角θv=∫ωdt≒Σω … (10)
ここで、積分値(或いは、積算値)の初期値は、振れの検出を開始するタイミング等で初期化、或いは、所定値に設定する。振れ制御部710bは次に、算出式として、次式(11)により撮像面全振れ量Limage0を、次式(12)により撮像面残留振れ量Limage1をそれぞれ算出する。ここで次式(11)、(12)のfmmは、レンズ部701の撮影焦点距離で、次式(12)のθcは、図14に於ける積分部600bの出力である。
撮像面全振れ量Limage0=fmm×tanθv … (11)
撮像面残留振れ量Limage1=fmm×tan(θv−θc) … (12)
撮像面全振れ量Limage0は、レンズ部701で検出された全振れ量を示し、一方、撮像面残留振れ量Limage1は、レンズ部701に内蔵される振れ補正機能を作動させた後に残る残留振れ量を示す。図14からも分かるとおり、ファインダ像、撮像画像を手持ち時に長時間安定させるため、図14では、検出された振れ角速度ωに、速度バイアス部600eによる速度バイアス量ωbiasが施され、θcは、補正された角度に相当する。上式(12)は、撮像面振れ角θvからこの補正された角度θcをさっ引いた角度から撮像面振れ量を算出していて、算出されるのは、レンズ部701により振れ補正された後に残る撮像面残留振れ量Limage1である。
尚、正確には、図14に於けるリミット部600dにより、振れ補正範囲が制限される場合があり、この量も考慮して撮像面残留振れ量Limage1を算出しても構わない。
又、上式(11),及び、上式(12)は、一般的な式であり、撮影光学系や、特に、近距離撮影時には、誤差を生じる場合がある。そういった場合には、その撮影光学系に合わせて上式(11),及び、上式(12)を立てれば良い。
図25は、撮像面全振れ量Limage0と撮像面残留振れ量Limage1とをボディ部501に伝えるタイミングを示すタイミングチャートである。図25に示される通り、式(10)〜(12)から得られた撮像面全振れ量Limage0、撮像面残留振れ量Limage1は、時々刻々と変化している。図25の例では、時刻t33のボディ部501のレンズ情報取得コマンドと、その1回前の同レンズ情報取得コマンドの間に変化する撮像面全振れ量Limage0(及び、撮像面残留振れ量Limage1)の変化量をレンズ情報としてボディ部501に送信する。
詳細は後述するが、ボディ部501のレンズ部701との通信は、撮像素子509の撮像タイミングに同期して行われる為、撮像結果に含まれる振れ量と、レンズ部701から得られるレンズ情報による撮像面全振れ量Limage0、撮像面残留振れ量Limage1との相関を簡単に得ることができる。図25の例では、ほぼ画像cと画像dの間に振れた量が、それとほぼ同期間のレンズ部701で検出された振れ量として時刻t33に於いて、ボディ部501に送信される。
このことにより、ボディ部501は、レンズ部701から撮像面全振れ量Limage0と撮像面残留振れ量Limage1の2つから、カメラに生じた振れ量も、そこからレンズ部701が補正した振れ量も、レンズ部701により振れ補正した結果残る残留振れ量も認識できる。ボディ部501が振れ補正機能、例えば、撮影された画像から画像処理により振れ補正する(振れた量だけ撮影画像をシフトする方法)機能を備えている場合、ボディ部501に振れ検出機能を設けなくても、このレンズ部701からの撮像面全振れ量Limage0、撮像面残留振れ量Limage1から振れ補正が可能である。
3.シーケンス
次に、ボディ部501のシーケンスに応じて行われるボディ部−レンズ部間通信とレンズ部701の作動について記す。
3.1 通信タイミング
ボディ部501は、時々刻々と変化するレンズ情報を、必要なレスポンス性を確保して取得する必要がある。又、レンズ部701は、ボディ部501のこれも時々刻々と変化するボディ情報を、必要なレスポンス性を確保して取得する必要がある。
ここでは、必要なレスポンスを確保する為、所定間隔で、それも、ボディ部501の撮像素子509の作動タイミングに同期して取得する方法を記す。
図26は、撮像素子509の作動とボディ部−レンズ部間通信の関係の一例を示すタイミングチャートである。ボディ部501は、時刻t34a、t34b、t34c、t34d、…のタイミングで撮像素子509を露光作動させ、それぞれ撮像結果を得る。時刻t34aと時刻t34bとの間隔をフレームレートと呼ぶ。動画画像を得るために、通常、フレームレートは、約1/15秒、又は、約1/30秒、又は、約1/60秒に設定される。
ボディ部501は、この撮像素子509の作動に同期して、つまり、撮像素子509のフレームレートと同一周期で、レンズ部701に対して、0:ボディ情報送信、及び、1:レンズ情報取得(表1等参照)を行う。
又、ボディ部501は、これとは別に、レンズ部701の作動を伴うコマンド(2:防振センタリング、3:動画防振開始、4:静止画防振開始等(図1参照))は、撮像素子509の作動に必ずしも同期させる必要はなく(同期させても構わない)、ボディ部501のシーケンス、詳細は後述するが、例えば、レリーズ釦90の半押しや全押し等に応じて、必要なタイミングでレンズ部701に指示を行う。
3.2 防振センタリング
図27は、補正レンズ704をその可動中心にセンタリングし、撮影可能な状態とするためのボディ部501のレンズ部701への指示、及び、レンズ部701の作動を示すタイミングチャートである。ボディ部501は、必要なタイミング(図27の時刻t38)で、レンズ部701に"防振センタリング"を指示する。必要なタイミングとは、例えば、ボディ部501のメイン釦91がオンした等である。
レンズ部701は、これに従い、補正レンズ704をその可動範囲中央にセンタリングし、その後、センタ位置に保持制御する。
補正レンズ704が可動範囲中央にセンタリングされた時刻t39以降は、概最も光学性能が得られる状態(逆に、補正レンズ704が重量により、重力方向に落下している時刻t38以前では、光学性能は劣化する)となり、ボディ部501は、撮像素子509を用いて撮影が行える状態となる。
3.3 レンズの電源遮断時シーケンス
次に、ボディ部501のメイン釦91がオフした等で、少なくとも振れ補正関連の回路を含むカメラ全般の電源を遮断する必要が生じた場合のシーケンス例を図28を用いて説明する。
図28は、振れ補正関連の回路電源を遮断する動作を示すタイミングチャートである。ボディ部501は、時刻t40にて、これから行われる作動により、撮影が行えなくなる為、行っている撮像画像の表示(ファインダ用液晶モニタ507a、及び、外部液晶モニタ519による撮像結果の表示)を終了し、時刻t41にて、レンズ部701に、防振停止を指示する。
これを受け、レンズ部701は、補正レンズ704をゆっくりと重力方向に落下させる。重力方向は、ボディ部501から得たボディ姿勢情報により重力方向を認識し、その方向にゆっくりとした所定の速度で補正レンズ704を制御し、落下させる。
必要最小限の作動としては、時刻t41において、補正レンズ704の通電を停止させれば良い。しかしながら、このようにした場合、補正レンズ704が重力方向に落下し、可動範囲端にぶち当たり、不愉快な衝突音と振動をユーザに与える。又、補正レンズ704を落とす方向を常に一定とし、例えば、カメラを正位置に構えた時に重力方向となる方向にゆっくりと落とすこともできるが、カメラを縦位置で構えた場合には、この効果はない。ボディ情報:ボディ姿勢情報(表2参照)により、レンズ部701は、重力方向を誤ることが防ぐことができ、補正レンズ704をその方向にゆっくりと落下させることができるので、この不具合を確実に防ぐことができる。
3.4 動画防振開始/終了
次に、動画防振の開始、終了のシーケンス例を記す。
図29は、レリーズ釦90を半押しした時のボディ部501とボディ部501のレンズ部701への指示について記したタイミングチャートである。ここで、レリーズ釦90を半押しした時に振れ補正を開始し、半押しをオフした時に振れ補正を終了するものとする。又、ボディ部501は、図4に於けるメニュー画面で、レリーズ釦90を半押しした時に、動画記録を開始するか否かを選択でき、図29は、動画記録をしない場合(時刻t43〜時刻t46)と動画記録を開始する場合(時刻t47〜時刻t52)とについて記す。
まず、動画記録しない場合、ボディ部501は、時刻t43にてレリーズ釦90の半押しオンを検出すると、時刻t44に於いて、ボディ部501は、レンズ部701に動画防振開始の指示を行う。この時、ボディ部501は、表5に従い、動画防振開始コマンドに付随したパラメタをレンズ部701に指示する。
レンズ部701は、これに従い、図6〜図13とその説明で述べた方法で振れ角速度ωを検出し、図14、及び、その説明で述べた方法で、補正レンズ目標位置LCが算出され、算出された補正レンズ目標位置LCと、図17〜図19、及び、その説明で示される方法で補正レンズ位置LRを検出し、これらから、図20〜図21、及び、その説明で示される方法で補正レンズ704を駆動し、撮像面の振れを補正する。
次に、ボディ部501は、時刻t45にてレリーズ釦90の半押しオフを検出すると、時刻t46に於いて、ボディ部501は、レンズ部701に防振終了の指示を行う。
レンズ部701は、これに従い、補正レンズ目標位置LCを補正レンズ可動範囲中央のセンタ位置に変化させ、図17〜図19、及び、その説明で示される方法で補正レンズ704の位置:LRを検出し、これらから、図20〜図21、及び、その説明で示される方法で補正レンズ704を駆動し、補正レンズ704をその可動中心位置にセンタリングする。
次に、動画記録する場合、ボディ部501は、時刻t47にてレリーズ釦90の半押しオンを検出すると、時刻t48に於いて、ボディ部501は、レンズ部701に動画防振開始の指示を行う(図29等)。この時、ボディ部501は、表5に従い、動画防振開始コマンドに付随したパラメタ(表5に記載の通り、前述動画記録しない場合とこのパラメタは異なる)をレンズ部701に指示する。
これに従うレンズ部701の作動は、前述時刻t44での作動と同様であるが、ボディから指示されるパラメタが異なる為、詳細は異なり、後述する。
次に、時刻t49において撮像素子509で得られた撮像画像の記憶媒体531への記憶を開始する。
次に、ボディ部501は、時刻t50にてレリーズ釦90の半押しオフを検出すると、時刻t51にて撮像画像の記憶媒体531への記憶を終了し、時刻t52に於いて、ボディ部501は、レンズ部701に防振終了の指示を行う。
これに従うレンズ部701の作動は、前述時刻t46での作動と同一である。
次に、表5に基づいてボディ部501のレンズ部701への動画防振開始の指示パラメタの、動画記録するか否かによる差異と、それによるレンズ部701の作動の相違を詳しく説明する。
(1)動画防振種別(動画記録するか否か)
動画記録を行わない場合、ボディ部501は、表5に基づき図29に於ける時刻t44にて動画防振開始コマンドと共にそのパラメタ「動画防振種別」で0:動画記録を伴わない動画防振であることをレンズ部701に指示し、逆に、動画記録を行う場合、ボディ部501は、表5に基づき図29に於ける時刻t48にて動画防振開始コマンドと共にそのパラメタ「動画防振種別」で1:動画記録を伴う動画防振であることをレンズ部701に指示する。これにより、レンズ部701は、これから行われる動画防振が、動画記録するか否かを認識し、それぞれに最適な作動を行う。
一般的に、補正レンズ704の制御は、その制御ゲインを大きく設定することで、制御性、追従性が向上し、制御誤差が減少する。無論、振れ補正の性能を向上させる為には、極力制御ゲインを大きく設定して制御性、追従性を向上させることが良いが、一方で、制御した時に制御音が大きくなる。図15に於ける摺動ボール82が、相対する固定部80、及び、可動部81の摺動面との摺動音、或いは、付勢バネ83、或いは、可動部81が細かく変位する音、乃至、それに誘発して他の部材から音が発生する等が上げられる。
動画記録を伴う場合、同時にカメラ周囲音を同時録音する場合が多い。本発明に於いても、ボディ部501は、集音部530を有し、時刻t49から開始される動画記録時、集音部530により得られたカメラの周囲音を集音し、得られた動画と同時に記憶媒体531に記憶する。動画と同時録音される為、静音性が必要となる。その一方で、動画記録する場合には、極端なパンニング等は避けられ、カメラを動かす場合には、ゆっくりとした動きにとどめられる。従って、それほど補正レンズ704の制御性を重視する必要もない。
一方、動画記録しない場合、録音はされない為、静音性はそれほど重視しなくても良く、逆に、主用途が静止画撮影であるため、それよりは、精度良く補正レンズ704を制御し、ファインダ用液晶モニタ507a、或いは、外部液晶モニタ519の撮像画像の振れによる画像の乱れをきちっと止めることを重視すべきである。
本発明では、動画記録する場合には、静音を優先させ、しない場合には、補正レンズ制御性を上げ、振れ補正の性能を優先させる。
具体的には、以下のような方法を取る。
具体的には、表6に基づき、動画記録するか否かにより、補正レンズ704を、図20の方法で制御する場合には、図20で示される駆動量演算部610の制御係数の比例項係数Kprop、積分項係数Kinte、及び、微分項係数Kdiffを変える。又は、図21のような補正レンズ704の制御方法を用いた場合、図21の駆動量演算部611の制御ゲインに相当する係数Gdを変える。
尚、表6に於けるKprop0、Kinte0、Kdiff0、及び、Gd0は、分かり易くするため、動画記録しない場合の動画防振時を1として、それ以外では、その値に対して何倍かといった示し方とした。
尚、表6には、静止画防振時の設定も記載されているが、これは後述する。
(1−2)補正レンズ制御帯域の可変
次に、図20で示される駆動量演算部610、又は、図21で示される駆動量演算部611の制御帯域を変更する。
一般的に、補正レンズ704の制御は、その制御帯域を(高帯域側に)広く設定することで、制御性、追従性が向上し、制御誤差が減少する。無論、振れ補正の性能を向上させる為には、極力制御帯域を大きく設定して制御性、追従性を向上させることが良いが、一方で、制御帯域が増した高周波側で、補正レンズ704を細かく制御することとなり、耳障りな高周波側の制御音が増加することとなる。
図30は、動画記録の有無に応じた周波数特性の変更動作を示す図である。具体的な制御帯域の変更方法は、図20のような補正レンズ704の制御方法を用いた場合、表7に示される通り、動画記録するか否かにより、図20に於ける制御サンプリング間隔tsを変える。又、図21のような補正レンズ704の制御方法を用いた場合、図21に於けるディジタルフィルタ部611bを変更し、図30に示されるように高周波側の周波数特性を変更、広帯域化する。
これにより、動画記録する場合には、制御帯域は低くなり、補正レンズ704の制御性はやや劣化するものの、耳障りな高周波側の制御音が低減され、静音化が実現でき、動画記録しない場合には、制御帯域は高くなり、補正レンズ704の静音性はやや劣化するものの、補正レンズ704の制御性は向上する。
尚、表7、図30には、静止画防振時の設定も記載されているが、これは後述する。
次に、図12、図13、及び、その説明で記載される三脚固定検出の閾値を動画記録するか否かによりどう変更するかを表8に示す。
三脚固定検出は、前述の図13、及び、その説明で示される通り、三脚固定された状態と手持ち状態とを検出する。動画記録するか否かによる差異は、ユーザのカメラの使用方法に明確な差がある。
動画記録する場合、素速く構図を変更する様な操作は希で(動画を後で再生してみると分かるが、急速な構図変更は、画像を乱れさせ、又、不快感を与える)、ゆっくりと画角を変更する(比較的低周波な振れとなる)場合が多い。一方、動画記録しない場合は、静止画撮影を前提とした撮影準備であり、狙った被写体に素速く構図を変更(比較的高周波な振れで振幅も大きくなる傾向にある)して静止画撮影するといった一連の操作が主体である。
従って、レンズ部701は、まず、手持ち状態と三脚固定状態での差異が大きく出る特徴的な周波数帯域から決められる図12に於けるBPF6aの三脚固定検出帯域fcL〜fcHは、表8に示される通り、動画記録しない場合に比較して低周波とし、又、図13、及び、その説明で示される三脚固定検出閾値(三脚固定検出角速度閾値ωth3、及び、三脚固定検出時間閾値Tth3)を動画記録しない場合に比較して小さく設定する。
尚、三脚固定を検出する同様な前述の技術に於いても、同様であり、動画記録するか否かによりこの検出閾値をそれぞれ最適化して設定すればよい。
尚、表8には、静止画防振時の設定も記載されているが、これは後述する。
(2)動画防振補正角変更
次に、動画記録するか否かにより、動画防振開始のパラメタ:動画防振補正角の表5に基づく可変について記す。
図31は、ボディ部501の動画防振開始のパラメタ:動画防振補正角の値に対して、レンズ部701が、振れ補正時の補正角をどう変化させるかを示す図である。図31は、正確には、図14に於ける補正レンズ目標位置算出部600のリミット部600dの補正レンズ目標位置リミット範囲LCsrangeを示し、これに比例して変化する振れ補正時の補正角が変わる。
補正レンズ目標位置リミット範囲LCsrangeは、撮影焦点距離fmmにより可変すると共に、ボディ部501の動画防振開始のパラメタ:動画防振補正角の値に応じて変化させる。
動画記録しない場合には、静止画撮影を前提とした撮影前準備であり、そのレンズの最大補正量を使用しない。レリーズ釦90をオンして静止画撮影を行う時に、極力、補正レンズ704がセンタ位置に近いところで静止画撮影を行うことができ、又、本状態、つまり、半押しオンしている状態では、AF作動が行われ、補正レンズのシフト量が大きいと、測距結果に影響する。これを抑える為、表5に示される通り、動画記録しない場合には、動画防振補正角を小さく設定する。
一方、動画記録する場合には、表5に示される通り、そのレンズの最大補正量を使用する。動画記録時には、補正レンズ704を大きくシフトすることによる光学性能劣化(具体的には、画角周辺の解像が劣化し、歪みが増大する)をそれほど気にする必要はないから、それよりは、より大きな振れにまで対応させ、安定して振れ補正をさせるため、補正角を動画記録しない場合に比べ、大きくする。
(3)動画防振効き具合1
次に、動画記録するか否かに伴う、動画防振開始のパラメタ:動画防振効き具合1の表5に基づく可変について記す。
(3−1)速度バイアス変更
図32は、ボディ部501の動画防振開始のパラメタ:動画防振効き具合1の値に対して、レンズ部701が、図14に於ける目標位置算出部600の速度バイアス部600eの速度バイアス量ωbiasをどう変化させるかを示す図である。
速度バイアス量ωbiasは、図14からも分かるとおり、補正レンズ目標位置LCを0、つまり、補正レンズ704の可動中心に極力近づけるよう作用する(補正レンズ目標位置LCが0から離れるほど、補正レンズ目標位置LCの絶対値を小さくする(補正レンズ704を可動中心に近づける)方向に、より大きく作用する)。
振れ補正中、大きな振れがカメラに印加されると、その最大補正範囲にリミットされ、振れ補正が効かなくなる。これを避ける為に速度バイアス部600eは存在し、速度バイアス量ωbiasを大きく設定すれば、より大きい振れに対してもその最大補正範囲にリミットされて振れ補正が効かなくなる頻度が減少し、その振れ補正が効かない状態からの復帰時間も短縮できる。一方で、しっかりとカメラを構え、振れを小さく抑えているにもかかわらず、速度バイアス量ωbias(これは振れ補正に対しては誤差に相当)があるために、ちゃんと止まらない状態が生じ、振れ補正効果が減少する。
これを使用感で言い換えると、速度バイアス量ωbiasを小さくすると、大きな振れに対して不安定となる一方、振れ補正効果は大きくなり、速度バイアス量ωbiasを大きくすると、大きな振れに対して安定し、長時間安定して振れ補正効果が得られる一方、振れ補正効果は低下する。
本発明では、表5に基づいて動画記録するか否かに応じて、この速度バイアス量を最適値に可変する。
具体的には、動画記録する場合には、動画記録を比較的長時間継続して行われることを想定し、大きな振れが生じても、振れ補正効果が極端に劣化、最大補正範囲にリミットされて振れ補正効果がゼロとなるようなことを避けるため、大きな振れに対しても有効で、長時間の振れ補正像の安定が得られるよう速度バイアス量を大きめに設定する。
一方、動画記録しない場合には、静止画撮影を行う場合が大多数で、ファインダ用液晶モニタ507a、又は、外部液晶モニタ519による撮像結果の像の安定を確認してレリーズすることを前提とする為、速度バイアス量を小さめにして防振効果を高める。
(3−2)振れ検出HPFカットオフ変更
速度バイアスと同様な効果を得る別の方法を記す。図8に於けるHPF9のカットオフ周波数を変更する。
具体的には、図8に於ける振れ角速度基準値ω0を算出するためのLPF5aのカットオフ周波数(さらに具体的には、図9の乗算部5a1の係数を変えることにより)を、動画防振開始のパラメタ:動画防振効き具合1に基づいて可変する。
図33は、ボディ部501の動画防振開始のパラメタ:動画防振効き具合1の値に対して、レンズ部701が、図8に於ける振れ角速度基準値ω0を算出するためのLPF5aのカットオフ周波数(振れ角速度基準値算出部5のLPF5aの時間遅れ出力と減算器7とにより、実質的にHPF9が構成され、そのHPFカットオフ周波数と考えても良い)を可変する一例を示す図である。
図8に示される通り、結果的に振れ量子化値ω1にHPF9が施され、振れ角速度ωが得られる。得られた振れ角速度ωは、上記設定されたカットオフ周波数以下のDC成分を含む低周波成分がカットされ、振れが安定していれば一定の値近辺に収束し、その後、図14に示される目標位置算出部600により得られる補正レンズ目標位置LCは、補正レンズ704の可動中心近辺に収束する。この収束の急峻さは、上記カットオフ周波数に依存して決まり、カットオフ周波数を高くすれば、大きな振れが入力した時の収束が早くなり、大きな振れに対して安定し、長時間安定して振れ補正効果が得られるが、手振れ成分(通常の手振れ周波数帯域は0.1〜10数Hz程度であることが知られている)までカットされる為、振れ補正効果は低下する。逆に、カットオフ周波数を低くすれば、手振れ成分を犠牲にすることがなく、振れ補正効果は向上するが、大きな振れが入力した時の収束が遅くなり、長時間の振れ安定性が低下する。つまり、前述の速度バイアスを変更した場合とほぼ同様な効果を与えることができる。
表1及び表5の例で考えると、動画記録しない場合には、動画防振効き具合1の値が小さく設定される。この場合、レンズ部701では、図33に示される様にカットオフ周波数が低く設定され、振れ補正効果が向上する。逆に動画記録する場合には、動画防振効き具合1の値が大きく設定される。この場合、図33に示される様にカットオフ周波数が高く設定され、大きな振れに対して安定し、長時間安定して振れ補正効果が得られる。
又、図8に於けるHPF9を、アナログハードウエアで置き換えることも可能で、これを図34に示す。
図34は、図7に示される振れ検出回路のオフセット電圧調整部3の部分をHPFと非反転増幅部で構成したものである。
HPF3eは、アナログスイッチSW301がオフしている時、コンデンサC301と抵抗R301aの値によりカットオフ周波数が決まり、アナログスイッチSW301がオンしている時、コンデンサC301と、抵抗R301a、R301bの合成される抵抗値によりカットオフ周波数が決まる。アナログスイッチSW301がオンしている時の抵抗R301a、R301bの合成抵抗値は、抵抗R301aの抵抗値より小さくなり、アナログスイッチSW301がオフしている時に比べ、カットオフ周波数を上げることができる。
さらに、カットオフ周波数を無段階、或いは、それに近い複数段数で変更することも可能である。
図35は、図34に於ける抵抗R301aおよび抵抗R301bと、アナログスイッチSW301とを、ディジタルポテンショメータ等で呼ばれる抵抗値がディジタル値により可変可能な抵抗R301cに置き換え、抵抗R301cのディジタル値のカットオフ周波数変更信号により、図33に示されるようカットオフ周波数を変更する。
尚、図34に於けるカットオフ周波数変更信号も、図35に於けるカットオフ周波数変更信号も、何れも振れ制御部710bから送信されるものであり、振れ制御部710bは、これらのカットオフ周波数を制御する。
(4)動画防振効き具合2
次に、動画記録するか否かに伴う、動画防振開始のパラメタ:動画防振効き具合2の表5に基づく可変について記す。
図36は、表5に基づく動画防振効き具合2の設定値に対して、レンズ部701は、前述図10、図11、及び、その説明で述べた構図変更開始角速度閾値ωth1を、そのレンズの標準値を1.0として動画防振効き具合2に対してどう変化させるかを示す図である。動画防振効き具合2の値を小さく設定すると、構図変更開始角速度閾値ωth1は、小さく設定され、大きく設定すると、大きく設定される。
構図変更開始角速度閾値ωth1は、小さくする程、小さな振れで構図変更を検出し、前述の図6の振れ角速度確定部11、及び、その説明で明らかなように、振れ角速度ωをゼロとし、実質振れ補正が中止される。この場合、ユーザの使用感としては、きちきちとした感触となる。動画記録しない場合、静止画撮影を前提とした撮影準備であり、狙った被写体に素速く構図を変更して静止画撮影するといった一連の操作に対し、構図変更に機敏に反応し、使用感が増す。逆に、構図変更開始角速度閾値ωth1を大きくすると、大きな振れでも構図変更が検出されなくなり、ユーザの使用感としては、きちきち感はなく、動画記録時に行うゆっくりとした構図変更時に違和感を感じさせなくなる。
尚、図36の例1、例2で示されるように、動画防振効き具合2の設定値に対して、構図変更開始角速度閾値ωth1の変化のさせ方を直線的にしても、曲線で設定しても構わない。
又、構図変更開始角速度閾値ωth1について述べたが、構図変更終了角速度閾値ωth2、構図変更開始時間閾値Tth1、構図変更終了時間閾値Tth2についても図36と同様に、動画防振効き具合2の設定値に対して変更し、動画記録しない場合、静止画撮影に最適なように、又、動画記録する場合、ゆっくりとした構図変更時に違和感を感じさせないよう最適値を設定する。
以上、表5等に基づいて、ボディ部501からの指示により、レンズ部701の主に使用感や振れ補正性能について可変できることを述べてきたが、もっと言えば、ボディからは、この設定を自由に替えることができるということである。例えば、カメラに生じる振れ(振れの大きさや周波数)には、ボディとレンズの重量バランスのファクタが大きく関与していて、例えば、ボディが非常に軽いボディであった場合や非常に重い場合には、振れは大きく変化する。ボディとレンズの総重量が軽いほど、カメラに生じる振れは、低周波でかつ、大きくなることが予想され、重い場合、高周波な振れが生じやすくなる。又、ボディとレンズの重量バランスが悪いと大きな振れが発生し、振れ易い。表5に於けるレンズ部701に指示するパラメタを、ボディの製品毎に変更したり、又、ボディとレンズの組み合わせにより変更し、最適な値に設定する様な応用が可能となることは言うまでもない。
(5)応用例
このことを、さらに積極的に応用し、使用するユーザがカスタマイズすることもできる。
一般的に、こうした交換レンズ式カメラの撮影時の振れ角速度のレベルとしては、上手な人で±2°/sec程度であり、下手な人になると10°/secを超える人もいる。又、カメラの構え方によっても両手でしっかりと構える場合、片手でファインダも覗かず構える場合等で変化する。又、撮影するシチュエーションが何なのかによっても、例えば、風景写真であるかスポーツ写真であるか等により大きく変化する。
そこで、ユーザが自分の使用感に合わせ、表5に従い前述可変した動画防振開始コマンドに付随したパラメタ、具体的には、動画防振効き具合1、動画防振効き具合2をボディ部501の設定メニューによりカスタマイズ設定し、これを動画防振開始コマンドに付随したパラメタとしてレンズ部701に指示する。
図37は、外部液晶モニタ519に表示される動画防振パラメタの設定メニューの一例を示す図である。設定方法は、前述の図2、図3、及び、図4とその説明で示される方法による。図37に示されるような動画防振パラメタの設定画面で、効き具合1(動画防振効き具合1に相当)、又は、効き具合2(動画防振効き具合2に相当)をユーザに選択させる。
図38は、外部液晶モニタ519に表示される動画防振効き具合1の設定画面の一例を示す図であり、図39は、外部液晶モニタ519に表示される動画防振効き具合2の設定画面の一例を示す図である。次に、効き具合1が選択されたならば、図38、効き具合2が選択されたならば図39の設定画面を外部液晶モニタ519に表示させ、マルチセレクタ94により、ユーザは、動画防振開始コマンドに付随したパラメタ:動画防振効き具合1、動画防振効き具合2を設定させる。
ボディ部501は、前述の方法で、この設定されたパラメタ:動画防振効き具合1、動画防振効き具合2を動画防振開始コマンドに付随したパラメタとしてレンズ部701に指示する。
このことにより、レンズ部701は、指示された動画防振効き具合1、動画防振効き具合2に応じて、前述の方法で、速度バイアスや振れ検出部のHPF9のカットオフ周波数、構図変更検出に関わる閾値を変更することで、ユーザの使用感にあった振れ補正を行うことが可能となる。
上記では、動画防振効き具合1、動画防振効き具合2に関して詳しく説明したが、これ以外にも、動画防振開始コマンドに付随したパラメタ:動画防振補正角も同様な方法でユーザ設定することが可能だし、さらにこれら動画防振補正角、動画防振効き具合1、動画防振効き具合2といった設定を、動画記録しない場合と動画記録する場合に分けてユーザが設定できるようにしても構わないし、動画記録しない場合に対して、それらパラメタ設定値を所定倍して動画記録する場合のパラメタ設定値としても構わない。
3.5 静止画撮影
次に、静止画撮影のシーケンス例を記す。本発明は、種々な撮影シチュエーションに合わせて色々な撮影シーケンスに応用可能であり、それらの例を順を追って説明する。以下に示すシーケンスでは、ボディ部501における撮影の制御のうち、静止画が撮影中であるか否かにより、防振開始コマンドに付随してレンズ部701へ送られるパラメタを変化させる。
3.5.1 光学性能優先シーケンス(標準シーケンス)
最も標準的な静止画撮影シーケンスであり、光学性能を優先して露光前に振れ補正レンズ704をセンタリングする。
図40は、光学性能優先シーケンスの一例を示したタイミングチャートである。尚、現時点で、図29、及び、その説明で記載の方法で、既にレンズ部701は、動画防振が開始されていて、ボディ部501は、撮像素子509を作動させ、得られた撮像結果を、ファインダ用液晶モニタ507aによりファインダ507に、或いは、外部液晶モニタ519にリアルタイムに表示(以降、このファインダ507、乃至、外部液晶モニタ519への表示画像をスルー画と呼ぶ)させているものとする。
ボディ部501は、時刻t53でレリーズ釦90が全押しされ、レリーズSW190bがオンすると、時刻t54で今まで行われていた撮像素子509により得られた撮像画像によるスルー画表示を終了し、時刻t55でレンズ部701に静止画防振開始コマンドを指示する。ボディ部501は、時刻t55で静止画防振開始をレンズ部701に指示する前に、時刻t54でスルー画表示を終了しているが、これは、後述する補正レンズ704の可動中心へのセンタリングにより、スルー画が乱れることを防止する為である。
時刻t55で、ボディ部501が、レンズ部701に指示する静止画防振開始コマンドのパラメタを表9の光学優先の欄に示す。
静止画防振開始コマンドのパラメタ:静止画防振種別は、0:静止画撮影直前センタリング許可、同パラメタ:静止画防振効き具合は、0:最大の振れ補正効果を、露光開始までの時間は、本静止画防振開始コマンド指示(図40の時刻t55)から、撮像素子509を用いた静止画撮影の露光を開始する(図40の時刻t57)までの時間(図40のTR0に相当)を、シャッタ秒時は、これから行われる静止画撮影の撮影秒時をそれぞれレンズ部701に送る。
ここで、パラメタ:露光開始までの時間は、レンズ部701が、補正レンズ704をその可動中心に少なくともセンタリング可能な時間であり、種々なボディとレンズとの組み合わせに於いて、補正レンズ704をセンタリングできる時間であり、所定時間(例えば、50ms)以上の値に設定される。
次に、ボディ部501からの指示を受け、レンズ部701は、静止画防振開始コマンドのパラメタ:「露光開始までの時間」により知り得た露光開始タイミング(図40の時刻t57)から逆算して、少なくとも、その後行われる振れ補正の為の補正レンズ704の制御が安定するのに要する時間:「TR1」前の時刻t56までの間は、補正レンズ704をその可動中心にセンタリングする。
レンズ部701の補正レンズ704のセンタリング方法については、図27、及び、その説明で記載したように行うが、例えば、以下の様な方法を用いる。
補正レンズ704の制御すべき位置である補正レンズ目標位置LCは、図40に示される通り、現在(時刻t55に相当)の補正レンズ位置LR若しくは補正レンズ目標位置LCを起点として、所定の傾きで可動中心に向かう直線で表される位置となるように変えられ、可動中心へ到達したらその位置(可動中心位置)を保持するよう変えられる(センタリングにより変更された補正レンズ目標位置LCを図40の点線で示す)。設定された補正レンズ目標位置LCに対し、前述の図17〜図19、及び、その説明で記載される様な方法で、補正レンズ704の位置LRを算出し、図20、若しくは、図21、及び、その説明で記載される様な方法で補正レンズ704を制御する。なお、この間、駆動量演算部610,611は、目標位置算出部600で算出された補正レンズ目標位置LC(X),LC(Y)を、駆動量D(X),D(Y)の算出に用いない(図14,図20,図21等参照)。すなわち、センタリング動作の間、補正レンズ704の位置LRは、振動ジャイロ(X)200a及び振動ジャイロ(Y)200bの出力とは無関係に決定される。
以上の様な方法で補正レンズ704は、可動中心にセンタリングされ、その後、レンズ部701は、静止画防振開始コマンドのパラメタ:「露光開始までの時間」により知り得た露光開始タイミング(図40の時刻t57)より時間TR1前の時刻t56において、静止画撮影の為の振れ補正の作動を開始する。具体的には、図6〜図13、及び、その説明で示される方法で振れ角速度ωを検出し、図14、及び、その説明で示される方法で補正レンズ目標位置LCを算出し、図17〜図19、及び、その説明で記載される様な方法で、補正レンズ704の位置LRを算出し、図20、若しくは、図21、及び、その説明で記載される様な方法で補正レンズ704を制御する。
この時、時刻t55にてボディ部501から送信された静止画防振開始コマンドには、表9に示すパラメタ:「静止画防振効き具合」があり、レンズ部701は、パラメタ:「静止画防振効き具合」で指示された値に応じて、図14に於ける速度バイアス部600eによる速度バイアス量ωbiasを変える。
図41は、ボディ部501から静止画防振開始コマンドに付随したパラメタ:静止画防振効き具合の値に対して、レンズ部701が、図14に於ける速度バイアス部600eによる速度バイアス量ωbiasをどう変化させるかを示す図である。図41では、その一例として、指示された静止画防振効き具合に応じて、速度バイアス量ωbiasを大きくしている。前述の通り、速度バイアス量ωbiasを小さくすると、大きな振れに対して不安定となる一方、振れ補正効果は大きくなり、速度バイアス量ωbiasを大きくすると、大きな振れに対して安定し、長時間安定して振れ補正効果が得られる一方、振れ補正効果は低下する。
表9によれば、ボディ部501から指示される静止画防振効き具合は、0:最大の振れ補正効果であり、図41によれば、速度バイアス量ωbiasは、ゼロとなる。従って、図6、及び、その説明にてのべた方法で検出された振れ角速度ωに、振れ補正性能的には不要な速度バイアス量ωbiasを付加せずに振れ補正が行われ、最大の振れ補正効果を得ることができる。
尚、ボディ部501から指示される静止画防振効き具合は、0に限らず、小さい値として、図14に於ける速度バイアス部600eによる速度バイアス量ωbiasを若干残しても構わない。
現実的には、振動ジャイロ200aやその処理回路等の出力の時間的な変動(ドリフトと呼ぶ)が存在し、この影響が大きいと、この出力を基にして得られる振れ角速度ωがドリフトし、そこから算出される補正レンズ目標位置LCがドリフトし、それによって特に撮影秒時が長い場合に、振れ補正性能を劣化させる場合がある。この場合、静止画防振効き具合を0とせず、速度バイアス量ωbiasを若干残すことによりこれを改善する。
次に、図40に戻って、ボディ部501は、時刻t57に於いて、撮像素子509による静止画撮影の為の露光を開始し、必要な露光時間の露光を継続し、露光が終了(時刻t58)すると、時刻t59にてレンズ部701に、動画防振開始コマンドを指示する。これに従い、レンズ部701は、動画防振を開始する。この動画防振開始のボディ部501、及び、レンズ部701の作動は、前述の図29、及び、それに関連する説明の通りである。
次に、ボディ部501は、図40の例では、時刻t57〜時刻t58で行われた静止画の撮像結果を撮像素子509から読み出し、ファインダ用液晶モニタ507aによりファインダ507に、或いは、外部液晶モニタ519に、若しくは、その両方に表示(この表示をスチル画表示と呼ぶ)を行い(時刻t60〜時刻t61)、その後(時刻t62以降)、時刻t53以前の状態、つまり、撮像素子509の撮像画像のスルー画表示を行っている状態にする。
尚、補正レンズ704の制御に関して、表6、表7、図30、表8に、動画撮影時と比較した静止画撮影時の各パラメタを示す。静止画撮影時には、高い振れ補正性能を求められ、この補正レンズ704の制御性も要求される。一方で、通常は、短い期間の撮影となり、制御音についてはあまり気にならない。従って、静止画撮影時には、表6に示される通り、制御ゲインを動画時と比較して上げ、表7、図30に示される通り、制御サンプリング間隔を動画時に比べ短くし、或いは、制御帯域を上げ(図30の点線で示す)て、補正レンズ704の制御性を優先させる。
又、静止画撮影時には、レリーズショックと呼ばれる、ボディ部501のシャッタ508のメカ作動により、或いは、本実施形態では不図示であるが、ミラーアップ、ミラーダウン等のメカ衝撃でこの三脚固定検出が誤動作するのを避ける為、表8に示される通り、三脚固定検出角速度閾値ωth3、及び、三脚固定検出時間閾値Tth3を何れも大きく設定する。
ここで、本発明の様な振れ補正機能を有する交換レンズは、補正レンズ704がシフトした時にでも、一定の光学性能を得るよう光学設計がなされるが、やはり、補正レンズ704のシフト量が増すほど光学性能は劣化し、特に周辺の解像、収差特性が犠牲となる。
これに対し、以上説明した通り本光学性能優先シーケンスでは、静止画撮影前に補正レンズ704を可動中心にセンタリングし、これにより、その後行われる静止画撮影の振れ補正時、補正レンズ704は、その可動中心位置近辺で移動しながら振れ補正する為、上記のような光学性能の劣化を防止することができる。
一方で、露光時間が長い場合(例:1/4秒以下等)、上記のように静止画露光前に補正レンズ704を可動中心位置にセンタリングしても、振れ補正中に補正レンズ704のシフト量が大きくなり、この効果は薄れる。
又、図40に於ける時刻t55から行われる補正レンズ704の可動中心へのセンタリングに要する時間のために、レリーズSW190bのオンから露光開始までの時間(これをレリーズタイムラグと呼ぶ)を、ある一定値以下にはできない、加えて、レリーズ前の構図と、実際に撮影された静止画の構図が変化するという不具合もある。そこで、本発明によるボディ部501とレンズ部701からなるカメラシステムに於いては、それを補うバリエーションとして以下説明するような撮影シーケンスを設ける。
3.5.2 構図優先シーケンス
レリーズ直前の構図を変更せず静止画撮影を行う。露光前に補正レンズ704のセンタリングを禁止し、本静止画防振開始指示から露光開始まで時間の制約もない。
図42は、構図優先シーケンスの一例を示したタイミングチャートである。尚、現時点(時刻t64)より前に、光学性能優先シーケンスと同様に、ボディ部501から動画防振の開始が指示されており、現時点で、レンズ部701は動画防振を継続しており、ボディ部501は、スルー画を表示している。
ボディ部501は、時刻t64でレリーズ釦90が全押しされ、レリーズSW190bがオンすると、時刻t65で今まで行われていたスルー画表示を終了し、時刻t66でレンズ部701に静止画防振開始コマンドを指示する。時刻t66で、ボディ部501が、レンズ部701に指示する静止画防振開始コマンドのパラメタを表9の構図優先の欄に示す。
静止画防振開始コマンドのパラメタ:静止画防振種別は、1:静止画撮影直前センタリング禁止、同パラメタ:静止画防振効き具合は、0:振れ補正効果大を、露光開始までの時間は、光学性能優先シーケンスと同様、本静止画防振開始コマンド指示(図42の時刻t66)から、撮像素子509を用いた静止画撮影の露光を開始する(図42の時刻t68)までの時間(図42のTR0に相当)を、シャッタ秒時は、これから行われる静止画撮影の撮影秒時を、それぞれレンズ部701に送る。
ここで、パラメタ:露光開始までの時間は、前述の光学性能優先シーケンスでは、レンズ部701が、補正レンズ704をその可動中心に少なくともセンタリング可能な時間である必要があったが、本構図優先シーケンスでは、この制約はなく、ゼロでも構わない。ボディ部501は、ボディ部501のみの制約(例:撮像素子を連続撮影のモードから静止画撮影のモードに変更する時間等)で本値を決定でき、ボディ部501の設計の自由度が向上する。
レンズ部701は、ボディ部501からの指示を受け、静止画防振開始コマンドのパラメタ:露光開始までの時間により知り得た露光開始タイミング(図42の時刻t68)の、少し手前(時間:TR1前)の時刻t67までは、現在行っている動画防振の作動を継続し、時刻t67からは、静止画撮影の為の振れ補正の作動を開始する。これ以降の作動は、前述の光学性能優先シーケンスと同様である。
本シーケンスのメリットは、光学性能優先シーケンスとは異なり、静止画撮影前に補正レンズ704を可動中心にセンタリングしない。この補正レンズ704の可動中心へのセンタリングに要する時間がない為、この時間をボディ部501側が待つなどの設計の制約がなくなり、又、レリーズタイムラグが減少する。又、レリーズ前の構図と、実際に撮影された静止画の構図が変化することもほとんどなくなる。
逆に、シーケンスのデメリットは、静止画撮影時に補正レンズ704がその可動中心位置近辺にいる確立が減少し、補正レンズ704が大きくシフトしている場合には、光学性能が劣化し、特に周辺の解像、収差特性が劣化する。
3.5.3 高速連続静止画1シーケンス
高速連続静止画1シーケンスでは、静止画露光が連続的に行われる場合のケースである。
図43は、高速連続静止画1シーケンスの一例を示したタイミングチャートである。尚、光学性能優先シーケンスと同様に、現時点(時刻t75)より以前に、ボディ部501から動画防振の開始が指示されており、時刻t75において、レンズ部701は動画防振を継続している。
ボディ部501は、高速連続静止画撮影を開始する必要の生じた時刻t75にて、レンズ部701に、動画防振開始コマンドを指示し、その後、時刻t76にて連続静止画撮影を開始する。時刻t75で、ボディ部501が、レンズ部701に指示する動画防振開始コマンドのパラメタを表10に示す。
表10で示されるレンズ部701に指示する動画防振開始コマンドのパラメタを、通常の動画防振時の指示パラメタである表5の動画記録しない場合のパラメタと比較すると、動画防振補正角は、より大きい値である128:そのレンズの動画防振補正角標準値に設定し、図31で示される通り、そのレンズの最大補正角が得られるようにする。又、動画防振効き具合1は、通常の動画防振時に比較して小さい値に設定し、動画記録を伴わない動画防振時より防振効果を向上させる(図32,図33参照)。又、動画防振効き具合2は、動画記録を伴わない動画防振時より小さい値に設定し、構図変更に機敏に反応させる(図36参照)。
これにより、ボディ部501からレンズ部701へ指示するコマンドは、動画防振であるが、防振効果を、前述の光学性能優先シーケンスや構図優先シーケンスでの効果までは到達できないが、動画防振効き具合1で決定される速度バイアスが、それなりに効果を効かせ、ある程度長時間の振れ補正像の安定も得られる。
次に、別の実施の形態を述べる。図43の時刻t76に於いてボディ部501は、静止画防振開始コマンドを指示し、そのパラメタを表10の高速連続静止画1の欄に示す。それ以外は、上記動画防振開始コマンドを用いる場合と同様である。
通常の静止画撮影時の指示パラメタである表10の光学優先、若しくは、構図優先に比べ、静止画防振効き具合の値を大きくし、防振効果は若干低下するが、ある程度長時間の振れ補正像の安定を得ることができる。
このように、ボディ部501は、高速連続静止画撮影を開始する必要の生じた時刻t75において、それまでの動画防振とは異なるパラメタを伴う動画防振コマンドを送信しても良いし、静止画防振開始コマンドを送信しても良い。
3.5.4 高速連続静止画2シーケンス
高速連続静止画2シーケンスでは、静止画露光が断続的に行われる場合のケースである。例えば、動画と同様の撮像作動を行い、得られた連続的な複数画像の何枚かに1枚の割合で、静止画画像として保存するような場合である。
図44は、高速連続静止画2シーケンスの一例を示したタイミングチャートである。尚、光学性能優先シーケンスと同様に、現時点(時刻t77a)より前に、ボディ部501から動画防振の開始が指示されており、時刻t77aの時点において、レンズ部701は動画防振を継続している。
本シーケンスは、ボディ部501の撮像素子509の作動間隔に同期してレンズ部701に指示を与える。又、図44の時刻t77a以降に示される通り、静止画、動画、動画、静止画、動画、動画、静止画‥‥と、撮像素子509の3つの露光の内、1つを静止画として取得し、この静止画を必要ならば、前述のように記憶媒体531に記憶するという様なサイクル(図44の時刻t77a〜時刻t77b、時刻t77b〜時刻t77cが1つのサイクルに相当し、その1周期をTR2、静止画の露光の時間をTR3とする)を繰り返す。図44では、3つに1つを静止画としたが、これに限定されるものではない。複数枚に1枚であれば良く、又、静止画を複数枚連続で撮影し、動画を複数毎といったバリエーションも可能である。
ボディ部501は、高速連続静止画撮影を開始する必要の生じた時刻t77aにて、レンズ部701に、静止画防振開始コマンドを指示し、その直後から静止画の為の露光を開始する。この静止画防振開始コマンドのパラメタを表9の高速連続静止画2の欄に示す。次に、時刻t78aにて静止画の露光が終了すると、ボディ部501は、動画防振開始コマンドを表11に示すパラメタと共にレンズ部701に指示し、次の静止画の露光開始直前の時刻t77b以降は、時刻t77aと同じ作動を繰り返す。
このように、ボディ部501は、ボディ部501の撮像素子の作動に同期して、レンズ部701への指示を行う。以下に、これらの指示に対して行われるレンズ部701の作動を説明する。
時刻t77a、時刻t77b、時刻t77cでのボディ部501からの静止画防振開始コマンド、及び、そのパラメタ指示は、表9の高速連続静止画2に示される通りである。表9に示される通り、静止画防振種別は、1:静止画撮影直前センタリング禁止であるから、レンズ部701は、補正レンズのセンタリングを禁止する。また、パラメタ:露光開始までの時間がゼロであるから、レンズ部701は、ボディ部501からの静止画防振開始コマンドの指示をうけると即座に静止画防振を開始する。又、パラメタ:静止画防振効き具合が、0:最大の振れ補正効果を指示される為、これによって図41により決定される速度バイアス量ωbiasは、最小で、図41の例では、0となる為、時刻t77a〜時刻t78aで行われる静止画は、そのレンズの最大の振れ補正効果のある画像を得ることができる。
一方、時刻t78a、時刻t78bにてボディ部501から送られる動画防振開始コマンド、及び、そのパラメタ指示は、表11に示される通りである。レンズ部701は、表11に示される通り、通常の動画防振のそれ(表5の動画記録しない場合の欄)に比べ、動画防振補正角が拡大されて、より大きな振れにまで対応する。又、動画防振効き具合1は、表5の動画記録しない場合と動画記録する場合の中間の値に設定(128)される。そのため、表5の動画記録しない場合や、表9の高速連続静止画2の場合に比べて、図32により、速度バイアス量ωbiasが大きくなり、或いは、図33により振れ検出に関わるLPF5aのカットオフ周波数が高くなるため、防振効果はやや劣化するが、それら図32等の説明でも明らかなように、長時間の振れ補正像の安定性が向上する。
図44に示すように、静止画防振開始コマンド及びそのパラメタ指示を受けてレンズ部701の振れ制御部710bが行う防振動作(第2振れ補正制御)は、動画防振開始コマンド及びそのパラメタ指示を受けて振れ制御部710bが行う防振動作(第1振れ補正制御)より、振れ補正の補正効果が高い。上述の説明では、第1振れ補正制御と、第2振れ補正制御とで、速度バイアス量ωbias(図32)や、LPF5aのカットオフ周波数(図9,図34,図35)を変更しているが、補正効果を変更する方法としては、これに限定されない。例えば、振れ制御部710bは、第1振れ補正制御と、第2振れ補正制御とで、制御ゲインや制御帯域等を変更しても良い。
ここで、図44の時刻t77a以降のシーケンスに於いて、静止画撮影している時間(時刻t77a〜時刻t78a、又は、時刻t77b〜時刻t78bに相当し、この時間はTR3)と、静止画、動画、動画の繰り返しの1サイクルの時間(時刻t77a〜時刻t77b、又は、時刻t77b〜時刻t77cに相当し、この時間はTR2)の比率は、ほぼ1:2であり、1サイクルの内の約半分が速度バイアス量ωbiasがゼロである静止画防振を行い、動画防振を行っている期間が残りの約半分である。動画防振時の速度バイアス量ωbiasを大ざっぱに言って通常の約2倍としているのは、マクロ的に見れば(具体的には、長い時間、例えば、数100ms以上等)、平均して、通常(この場合、その例である表5の動画記録しない場合の欄に相当)と同じ速度バイアス量ωbiasとなるようにしている。
また、レンズ部701の振れ制御部710bは、静止画撮影している時間TR3等が図44に示す例とは異なる場合でも、静止画撮影している時間TR3が静止画取得の周期TR2に占める割合に応じて、動画防振時(第1振れ補正制御)の速度バイアス量ωbiasを変化させることができる。すなわち、振れ制御部710bは、周期TR2における時間TR3の割合が大きくなるほど(第1振れ補正制御の時間が短くなるほど)、第1振れ補正制御における速度バイアス量ωbiasを大きくすることができる。第1振れ補正制御における速度バイアス量ωbias(ωbias1)の大きさは、特に限定されないが、例えば、次式(13)に示すように、動画記録しない場合の速度バイアス量ωbias(ωbias0)に、1周期(TR2)に占める第1振れ補正制御の時間(TR2−TR3)の割合の逆数を乗じた値としても良い。
ωbias1=ωbias0 × TR2/(TR2−TR3) … (13)
なお、このような制御を行う場合、時間TR2や時間T3は、動画防振開始コマンド及び静止画防振開始コマンドのパラメタとして、レンズ部701に送ることができる。
このことにより、使用するユーザは、通常の動画防振をさせている場合と本作動をしている場合で、違和感なく(振れ補正効果と長時間の振れ補正像の安定性に相違を感じなく)使用することができると共に、得られた静止画は、通常の静止画撮影(光学性能優先シーケンス、又は、構図優先シーケンスに相当)と同等な、そのレンズの最大の振れ補正効果を得た撮像結果を得ることができる。また、本動作では、第1振れ補正制御及び第2振れ補正制御のいずれの制御においても、図40に示すような補正レンズのセンタリング(3.5.1「光学性能優先シーケンス」参照)は行わないものの、非静止画撮影時におけるセンタバイアスによって、静止画撮影時に補正レンズを可動中心付近に位置させることができる。これにより、レンズ部701は、静止画撮影時における光学性能の劣化を防止することができる。
以上、幾つかの具体例を用いて、ボディ部501からの指示により、レンズ部701の静止画撮影時の振れ補正に関して、主に使用感や光学性能や振れ補正性能について可変できることを述べてきたが、もっと言えば、ボディからは、この設定を自由に替えることができるということである。
例えば、ボディ部501は、撮影の制御に関する情報(表2及び表3において「ボディ情報」として説明されているものを含む)に応じて、防振開始コマンドと共に送るパラメタ:静止画防振種別(図9参照)を変更し、静止画撮影前に補正レンズ704を可動中心にセンタリングするか否かを変更しても良い。表12は、ボディ部501の各情報(撮影の制御に関する情報)に対して、補正レンズ704を可動中心にセンタリングするか否かを、どのように変化させるのかを表したものである。
表12に示す例では、ボディ部501は、ISO感度、連写モード、撮影シーンモード、露出モードなどの各情報に応じて、撮影前に補正レンズ704を可動中心にセンタリングするか否かを変更する。ISO感度が高い場合、連写である場合、撮影シーンモードが子供/ペット及びスポーツである場合、露出がPモード(高速)である場合には、ボディ部501は、構図優先の撮影状況を想定し、撮影前のセンタリングを禁止する。この場合の撮影シーケンスは、「3.5.2構図優先シーケンス」において説明したとおりである。それ以外の場合では、ボディ部501は、「3.5.1光学性能優先シーケンス」で説明したように、光学性能を優先して露光前に振れ補正レンズ704をセンタリングする。
3.5.5 応用例(ユーザカスタマイズ)
このことを、さらに積極的に応用し、使用するユーザがカスタマイズすることもできる。その幾つかを説明する。
図45は、ボディ部501の外部液晶モニタ519の設定画面の例を示す。静止画防振パラメタ1では、光学優先か構図優先かが選択可能である。ボディ部501は、このユーザ設定に合わせ、図40、及び、その説明で示される光学優先シーケンスか、図42、及び、その説明で示される構図優先シーケンスかのどちらかの作動を行い、前述の指示をレンズ部701にする。
次に、静止画防振パラメタ2では、防振の効き具合を設定する。
図46は、外部液晶モニタ519に表示される静止画防振効き具合の設定画面の一例を示す図である。静止画防振パラメタ2の防振の効き具合は、例えば、高速連続静止画1シーケンスで静止画防振開始を指示する場合等で用い、図46の様な静止画防振効き具合の設定メニューを表示させ、ユーザに設定させる。
ボディ部501は、前述の例えば高速連続静止画1シーケンスで、この設定されたパラメタ:静止画防振効き具合を静止画防振開始コマンドに付随したパラメタとしてレンズ部701に指示する。
このことにより、レンズ部701は、指示された静止画防振効き具合に応じて、前述の方法で、速度バイアスを変更することで、ユーザの使用感にあった振れ補正を行うことが可能となる。
以上、動画防振で大きく分けて2つ、静止画撮影の具体例を4つ上げて説明してきたが、本カメラシステムは、ボディ部501が動画防振開始コマンド、静止画防振コマンド指示時にそのパラメタを用いて、レンズ部701の振れ補正の作動を指示出来る為、これら具体例の組み合わせ等で、ボディ部501側の多くのシチュエーションに合わせてきめ細かい振れ補正の指示が可能となる。
3.5.6 シャッタ秒時のレンズ応用例
前述の通り、ボディ部501は、静止画防振開始コマンドに付随して、これから行われる静止画撮影のシャッタ秒時をレンズ部701に指示する。以下、このシャッタ秒時をレンズ部701で使用する使用例を記す。
図47は、図6で示される振れ検出関連部分のブロック図に対して、静止画防振開始コマンドに付随するパラメタ:シャッタ秒時の応用例部分を追加したブロック図である。振れ角速度確定部11の出力に、振れ状態判定部6により検出された振れ状態と静止画防振開始コマンドに付随するパラメタ:シャッタ秒時によりゲイン値Gsyが可変される振れ補正ゲイン部10を追加し、その出力を振れ角速度ωとする。
表13に、ボディ部501からの指示コマンドと、振れ状態判定部6で検出される振れ状態と、ボディ部501からの指示が静止画防振開始コマンドであった場合のそのパラメタ:シャッタ秒時と、これらの情報から決定される振れ補正ゲイン部10のゲイン値Gsyの関係を示す。
ボディ部501からの指示が動画防振開始コマンドであった場合、及び、ボディ部501からの指示が静止画防振開始コマンドであって振れ状態が三脚固定状態でない場合、及び、ボディ部501からの指示が静止画防振開始コマンドであって振れ状態が三脚固定状態であっても静止画防振開始コマンドのパラメタ:シャッタ秒時が低速秒時(この例では、1/125秒以下)である場合には、振れ補正ゲイン部10のゲイン値Gsyは1.0であり、前述の通り振れ補正を行う。ボディ部501からの指示が静止画防振開始コマンドであって振れ状態が三脚固定状態であって静止画防振開始コマンドのパラメタ:シャッタ秒時が高速秒時(この例では、1/125秒以上)である場合には、振れ補正ゲイン部10のゲイン値Gsyを0とし、実質的に振れ補正を行わない。これをより細かく行ったものを、図48に示す。
図48は、シャッタ秒時とゲイン値Gsyとの関係を示す図である。ボディ部501からの指示が静止画防振開始コマンドであって振れ状態が三脚固定状態であった場合、パラメタ:シャッタ秒時に応じて振れ補正ゲイン部10のゲイン値Gsyを図48に示される通り変更する。
従来、本発明の様なカメラにおいて、三脚に固定されて撮影が行われる場合、ボディのレリーズショック(ミラーアップやシャッタ開閉時のメカ振動)により、手振れと比較して非常に高周波(数10Hzから200Hz程度)な振れと、さらにカメラを含めた三脚全体が揺れる比較的低周波(数Hz〜20,30Hz程度)な振れが発生することが知られている。後者の振れは、本発明の様な振れ補正カメラにより補正は可能であるが、前者の高周波な振れについては、補正出来ないばかりか、逆に振れ補正したことによる悪化も発生する。
具体的には、図6等、及び、その説明で示される振れ検出方法で検出された振れと、実際に撮像面でぶれる量に差異を生じる。高周波な振動であり、レンズ部701とボディ部501とで、もっと言うと、構成部材の各部分でそれぞれ振動の振幅や位相に相違を生じる。従って、振動ジャイロ200a、200bで検出された振れと撮像面の振れは必ずしも一致しない。加えて、図20,図21により制御される補正レンズ704の制御帯域は、高々、100Hz程度であり、高周波になるほど制御誤差が増す。従って、前者の高周波な振れに対しては、振れ補正することで逆に撮像面の振れを悪化させていた。後者の低周波な振れには振れ補正の効果は十分ある。よって、従来から、高速秒時には振れ補正を行わないという提案は、なされていた。
しかし、本発明の様なレンズ交換式カメラの場合、装着されるレンズによっては、例えば、焦点距離はまちまちであり、どの秒時以上で振れ補正を効かせ、どの秒時以下で効かしたほうが良いかが装着されるレンズによりまちまちであり、ボディ部501は、個々のレンズ毎に、この振れ補正するか否かの限界秒時を設定するか、この限界秒時を全ての装着レンズで一律、所定秒時(例:1/125秒)とするかして、レンズ部701に振れ補正するかしないかを指示していた。これだと、ボディ部501が開発された後に開発されたレンズには対応出来ないのと、技術が向上して補正性能がアップして、より高速秒時で振れ補正効果が得られるレンズが発売されても対応がつかない。
本発明によれば、ボディ部501からのシャッタ秒時に応じて、レンズ部701が振れ補正するか否かを判断出来るため、例えば、図48に示されるようにレンズ製品Aと、その後に、振れ補正性能が向上したレンズ製品Bで異なった秒時で切り替える等が可能となる。
以上、着脱可能な交換レンズとカメラボディから成るカメラシステムであるレンズ交換式ディジタルスチルカメラの実施形態について説明してきたが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)上述の実施形態では、交換レンズであるレンズ部701は静止画と動画の両方を撮影可能なカメラボディであるボディ部501に着脱可能であったが、交換レンズは静止画のみを撮影可能なカメラボディに着脱可能なものであってもよいし、動画のみを撮影可能なカメラボディに着脱可能なものであってもよい。
(2)上述の実施形態で用いていた振れ角速度ω等の代わりに、振れに基づく他の信号を用いてもよい。例えば振れの速度、加速度、位置情報等であってもよい。
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。