本発明の第一は、樹脂と、金属含有化合物と、加熱定着時の熱によって前記金属含有化合物と反応して着色剤化合物となる着色剤化合物前駆体と、を含む、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」とも称することがある)を提供する。
本発明は、樹脂と、金属含有化合物と、着色剤化合物前駆体とを含み、当該金属含有化合物と、当該着色剤化合物前駆体とが未反応の状態でトナーに含まれていることを特徴とする。当該トナーにより形成されたトナー像を加熱定着する時に加えられる熱によって、未反応の金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが反応して着色剤化合物を生成させることができる。なお、トナー中に含まれる金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが未反応の状態であることは、当該トナーに係る分光吸収スペクトルによる分析により確認することができる。より具体的には、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが反応した状態にあるトナーと、本発明のトナーの分光吸収スペクトルとをそれぞれ測定し、得られたスペクトルが相違すれば、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが未反応の状態にあることが確認できる。また、これらが未反応の状態であることは、トナーとしての色調を呈していないことからも、目視により確認することができる。
本発明者らは、上述のように、トナーにおいて、金属含有化合物と反応して着色剤化合物を生成する着色剤化合物前駆体が、金属含有化合物と反応していない状態で存在する形態とすることにより、トナーの流動性および保管性を向上させることができることを見出し、本発明に至った次第である。
上記の本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは、以下のように推測される。
特許文献1に開示されたトナーは、樹脂中で、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とを加熱して反応させることにより、着色剤化合物を生成させる工程を経て製造される。したがって、特許文献1の技術によれば、比較的小さな分子量の着色剤化合物前駆体および金属含有化合物を、樹脂の表層から内部にわたる広範な領域で反応させることができる。その結果、有機顔料等の比較的分子量の大きな化合物を着色剤として使用した場合と比較して、着色剤化合物がトナー粒子中に安定して存在するため、特許文献1に開示された製造方法によるトナーは、良好な色調を呈することができ、また、画像濃度の安定性が良好となる。
しかしながら、本発明者らは、特許文献1に開示された製造方法によって製造されたトナーは、流動性および保管性が必ずしも十分でないことを見出した。そして、このような流動性および保管性の低下は、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物との加熱反応に起因すると推察した。より詳細には、特許文献1により開示されるトナーの製造方法によれば、トナー母体粒子の製造過程において、樹脂中で着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とを加熱して反応させることにより着色剤化合物を生成させる。しかしながら、トナー中に含まれる着色剤化合物を生成させるために加熱することによってキレート化が起こり、着色剤化合物を含む樹脂が可塑化してしまうことがある。このように、トナーの製造工程において金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とを加熱すると、着色剤化合物を生成させることができる一方で、当該着色剤化合物を含む樹脂が可塑化して粘稠性が高くなり、結果として得られるトナーの流動性および保管性を低下させることがあると考えられる。
さらに、上記のような流動性が良好でないトナーを用いて画像形成する場合、現像機内に補給されたトナーが不均一に帯電されるため、画像濃度ムラが発生することがある。
これに対し、本発明のトナーには、金属含有化合物と、熱定着時の熱によって金属含有化合物と反応して着色剤化合物となる着色剤化合物前駆体とを含んでいる。すなわち、本発明のトナーには、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが未反応の状態で樹脂(樹脂粒子)中に分散されている。したがって、加熱定着を行う前、すなわち、保管状態にあるトナー中では金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とがそれぞれ固体の状態で存在し、かつ、これらは着色剤化合物(すなわち、反応生成物)となっていないため、トナーを構成する樹脂の可塑化が抑制される。その結果、トナーの流動性および保管性を良好に保持することができる。なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーに係る実施の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナーは、樹脂、着色剤化合物前駆体と、金属含有化合物とを必須に含む。以下、各構成材料について説明する。
(樹脂)
本発明のトナーにおいて、着色剤化合物となる着色剤化合物前駆体および金属含有化合物は、樹脂(結着樹脂)中に分散されている。本発明で使用可能な樹脂を構成する重合体は、少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られる重合体を構成成分とするものである。樹脂を構成する重合性単量体としては公知のものを使用することができる。
樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂等が好ましく、中でも、ビニル系単量体を単独あるいは複数種類組み合わせて作製した重合体である、ビニル系樹脂であると好ましい。
本発明において、樹脂は重量平均分子量Mwが1万以上10万以下のものが好ましく、1.5万以上8万以下がより好ましい。なお、本発明で使用される樹脂の分子量は、公知の方法で制御することが可能であり、たとえば、樹脂を形成する際、重合開始剤や連鎖移動剤の添加量を制御することにより上記範囲の重量平均分子量を有する樹脂を作製することが可能である。なお、本明細書における樹脂の重量平均分子量Mwとは、テトラヒドロフラン(THF)をカラム溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
また、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、ガラス転移温度が40〜70℃のものが好ましく、50〜65℃のものがより好ましい。以下で詳述するが、本発明のトナーは、その製造工程において、樹脂粒子を凝集させる際、当該樹脂粒子を構成する重合体のガラス転移温度以上の温度に保持することがある。したがって、ガラス転移温度が上記範囲である樹脂を用いると、トナーを構成する樹脂粒子の凝集が効果的に起こる一方で、着色剤化合物前駆体や金属含有化合物が反応することなく保持しやすくなるため好ましい。また、ガラス転移温度が上記範囲である樹脂を用いると、トナーの加熱定着時、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物との反応を十分に進行させることができるという効果もまた得られる。
以下、本発明のトナーを構成する樹脂の具体例について詳細に説明する。
・ビニル系樹脂
ビニル系樹脂は、ラジカル重合性単量体を重合することによって得られる重合体であって、以下の重合性単量体を用いることができる。
ビニル系樹脂を構成する前記重合性単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体などが挙げられる。上記重合性単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。上記重合性単量体を組み合わせた樹脂としては、スチレン−アクリル系共重合体が好ましい。
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
トナーを構成する樹脂は、前述の重合性単量体を重合して生成されるが、本発明に使用可能なラジカル重合開始剤には以下のものがある。具体的には、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができるが、油溶性重合開始剤としては、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド等の過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げられる。
ラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル等を挙げることができる。
また、乳化重合法を用いる場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、過酸化水素等を挙げることができる。
また、樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル等を用いることができる。
また、反応系中に重合性単量体等を適度に分散させておくために分散安定剤を使用することも可能である。分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
・ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、公知の多価カルボン酸と多価アルコールとを、触媒の存在下で重縮合反応させることにより形成するものである。ポリエステル系樹脂は、原料として使用される前述の多価カルボン酸や多価アルコールの誘導体を用いることも可能で、多価カルボン酸誘導体には多価カルボン酸のアルキルエステルや酸無水物、酸塩化物等がある。また、多価アルコール誘導体には、多価アルコールのエステル化合物やヒドロキシカルボン酸等がある。
以下、ポリエステル系樹脂の形成に使用可能な多価カルボン酸と多価アルコールの具体例について説明する。先ず、多価カルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸と呼ばれる公知の2価カルボン酸や3価以上のカルボン酸が挙げられる。2価のカルボン酸の具体例としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p'−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。また、3価以上のカルボン酸の具体例としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。これら多価カルボン酸は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
次に、多価アルコールの具体例について説明する。上記ポリエステル系樹脂の形成に使用可能な多価アルコールとしては、公知の2価アルコールや3価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。また、3価以上のアルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン等が挙げられる。これら多価アルコールは、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
ポリエステル系樹脂の形成方法としては、触媒の存在下で多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合反応させて形成する従来公知の方法が採用される。また、触媒も公知のものを使用することができる。
・スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂
「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂」とは、ポリエステル分子鎖(「ポリエステルセグメント」とも称する)に、スチレンアクリル共重合体分子鎖(「スチレンアクリル共重合体セグメント」とも称する)を分子結合させた構造のポリエステル分子より構成される樹脂のことである。すなわち、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂は、ポリエステルセグメントにスチレンアクリル共重合体セグメントを共有結合させた共重合体構造を有する樹脂である。
スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を構成するポリエステルセグメントは、上述のポリエステル系樹脂と同様の材料および方法によって製造されるため、詳細な説明は省略する。
スチレンアクリル共重合体セグメントを形成する化合物について説明する。本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を構成するスチレンアクリル共重合体セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレンアクリル共重合体セグメントの形成が可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体について概説するが、本発明で使用されるスチレンアクリル共重合体セグメントの形成に使用可能なものは以下に限定されるものではない。
先ず、スチレン単量体の具体例としては、上記ビニル系樹脂の項にて説明したスチレンが挙げられるため、ここでは詳細な説明を省略する。スチレン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、上記ビニル系樹脂の項にて説明したアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが挙げられるため、ここでは詳細な説明を省略する。
これらのアクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
スチレンアクリル共重合体セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
また、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントとを分子結合させる化合物を用いてもよい。この化合物は、ポリエステルセグメントに残存するカルボキシ基(−COOH)またはヒドロキシ基(−OH)等と縮合反応が行える官能基と、スチレンアクリル共重合体セグメントと付加反応が行える炭素−炭素二重結合等の不飽和構造とを有するものであることが好ましい。この様な化合物の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有するビニル化合物や無水マレイン酸等のカルボン酸無水物等がある。
(着色剤化合物前駆体)
本発明のトナーに含まれる着色剤化合物前駆体は、加熱定着時の熱により、以下で詳述する金属含有化合物と反応する化合物である。着色剤化合物前駆体は、樹脂粒子中(または樹脂粒子表面)に分散されており、室温(保管時)では金属含有化合物と反応しない状態で存在するが、加熱定着の際の熱により、金属含有化合物と反応して着色剤化合物を与える。このとき、着色剤化合物前駆体が金属含有化合物と反応して着色剤化合物を与える温度は、一般的な加熱定着温度であって、120〜200℃であると好ましく、140〜180℃であるとより好ましい。得られるトナーの流動性や保管性を向上させるために、使用する着色剤化合物前駆体は、室温で固体であるものが好ましい。
より具体的には、着色剤化合物前駆体は、一般式(1)または(2)で表される化合物であると好ましい。
以下、一般式(1)で表される化合物について説明する。なお、本明細書中、特別な記載のない限り、「ヘテロ」とは、N、O、SまたはPから選択されたヘテロ原子を1個以上含有することを意味する。また、「複素環」とは、N、O、SまたはPから選択されたヘテロ原子を1個以上含有する環状構造の総称である。
上記一般式(1)において、R1は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示し、R2は、−NR4R5基(但し、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示す。)または−OR6基(但し、R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示す。)を示し、R3は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示し、A1〜A3は、それぞれ独立に、−CR7=基(但し、R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示す。)または−N=基を示し、X1は、5員または6員の芳香族環または複素環を形成するために必要な原子団を示し、Z1は、少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の複素環を形成するために必要な原子団を示し、この原子団は無置換または置換基を有していてもよく、当該置換基によって縮環を形成していてもよい。L1は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示し、R3と結合して5員または6員の環構造を形成していてもよい。pは0〜3の整数である。
上記一般式(1)において、R1は、pが2または3である場合には、それぞれ独立の基であってもよい。
基R1を示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
また、基R1を示す1価の有機基としては、例えば、置換または無置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素原子数2〜20のアルケニル基(ビニル基、アリル基)、炭素原子数2〜20のアルキニル基(例えばエチニル基、プロパルギル基等)、炭素原子数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、炭素原子数2〜20のヘテロアリール基(例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリジミル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、炭素原子数2〜20のヘテロ環基(例えばピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基(例えばシクロペンチルオキシ基、シクロオヘキシルオキシ基等)、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、炭素原子数3〜20のシクロアルキルチオ基(例えばシクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、炭素原子数6〜20のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基(例えばメチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、炭素原子数7〜20のアリールオキシカルボニル基(例えばフェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、炭素原子数1〜20のスルファモイル基(例えばアミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、炭素原子数2〜20のアシル基(例えばアセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、炭素原子数2〜20のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、炭素原子数1〜20のアミド基(例えばメチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、トリフルオロメチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、炭素原子数1〜20のカルバモイル基(例えばアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、炭素原子数1〜20のウレイド基(例えばメチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドレシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、炭素原子数1〜20のアルキルスルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−メチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、炭素原子数6〜20のアリールスルホニル基(例えばフェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基(例えばエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、アミノ基、シアノ基およびニトロ基などが挙げられる。
上記の中でも、アルキル基、ヘテロアリール基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、ウレイド基およびシアノ基が好ましい。
また、一般式(1)において、R2は、−NR4R5基(但し、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示す。)または−OR6基(但し、R6は、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示す。)を示す。
この基R2は、モル吸光係数εの観点からは−NR4R5基であることが好ましく、また波長調整の観点からは−OR6基が好ましい。
基R2に係る−NR4R5基におけるR4およびR5、並びに−OR6基におけるR6を示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
基R2に係る−NR4R5基におけるR4およびR5、並びに−OR6基におけるR6を示す1価の有機基としては、基R1を示す1価の有機基として例示したものが挙げられる。
これらの基R4〜R6は、各々、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、カルバモイル基およびヘテロ環基であることが好ましく、特に水素原子、アルキル基、アリール基およびアシル基であることが好ましい。
また、一般式(1)において、R3は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示す。
この基R3は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、およびアルキルスルホニルアミノ基であることが好ましい。
基R3を示すアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、およびアリールスルホニルアミノ基としては、各々、基R1を示す1価の有機基の一種として例示したものが挙げられる。
また、一般式(1)において、A1〜A3は、それぞれ独立に、−CR7=基(但し、R7は、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示す。)または−N=基を示す。
基A1およびA2は、各々、−CR7=基であることが好ましい。
この基A1〜基A3に係る−CR7=基におけるR7を示す1価の有機基としては、基R1を示す1価の有機基として例示したものが挙げられる。
この基R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシカルボニル基であることが好ましく、特に水素原子、アルキル基およびアルコキシ基であることが好ましい。
一般式(1)において、X1は、5員または6員の芳香族環または複素環を形成するために必要な原子団を示す。
基X1を示す原子団によって形成される、5員または6員の芳香族環または複素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、チアゾール環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環およびチアゾール環である。
一般式(1)において、L1は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示す。
この連結基および環構造の一部は、基R3と結合して5員または6員の環構造を形成していてもよい。
基L1を示す炭素数1または2の連結基としては、無置換または置換基を有する、メチレン基、エチレン基およびエチン基が挙げられる。
また、基L1を示す環構造の一部としては、下記一般式(4)で表される基が挙げられる。
一般式(4)において、Z2は、5員または6員の芳香族環または複素環を示し、一方の結合手(一般式(4)中の「*」で示した部位)によって一般式(1)におけるZ1と結合し、他方の結合手(一般式(4)中の「**」で示した部位)によって一般式(1)におけるR3と結合する。
この一般式(4)において、Z2は、5員または6員の芳香族環または複素環を示すが、これらの芳香族環および複素環は、無置換であっても置換基を有するものであってもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基などが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基である。
また、置換基としてキレート可能な基を有していることも好ましい。このキレート可能な基とは、非共有電子対を有する原子を含有する置換基であり、具体的には、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、ヘテロオキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基および複素環チオ基が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、アルキルチオ基およびアリールチオ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基、カルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
一般式(1)において、Z1は、少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の複素環を形成するために必要な原子団を示す。
この基Z1を示す原子団は、無置換または置換基を有していてもよく、当該置換基によって縮環を形成していてもよい。
基Z1を示す原子団によって形成される、少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の複素環としては、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、ピロリン環、ピラゾリン環、ピラゾール環、イミダゾリン環、イミダゾール環、ピロール環およびピラゾリジン環(例えば、ピラゾリジン−3,5−ジオンに由来の環)、並びにこれらの環に置換基を有するもの、この置換基によって縮環が形成されてなるものなどが挙げられる。
この基Z1の好ましい具体例としては、下記一般式(5)〜一般式(10)で表される基が挙げられる。
一般式(5)および一般式(6)において、各々、R11およびR13は、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示し、R12およびR14は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示し、L2およびL3は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示し、前記一般式(1)におけるA1と「*」で示した部位において結合する。
また、一般式(7)において、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示し、R17は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示す。L4は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示し、前記一般式(1)におけるA1と「*」で示した部位において結合する。
また、一般式(8)において、R18は、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示し、R19は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示す。L5は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示し、前記一般式(1)におけるA1と「*」で示した部位において結合する。
また、一般式(9)において、R20およびR21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示し、R22は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示す。L6は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示し、前記一般式(1)におけるA1と「*」で示した部位において結合する。
また、一般式(10)において、R23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を示し、R25は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を示す。L7は、炭素数1または2の連結基または環構造の一部を示し、前記一般式(1)におけるA1と「*」で示した部位において結合する。
一般式(5)および一般式(6)において、各々、R11およびR13を示す1価の有機基としては、上記一般式(1)におけるR1を示す1価の有機基として例示したものが挙げられる。
この基R11およびR13は、各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基であることが好ましく、更に好ましくは、アルキル基、カルボキシル基、アルコキシル基、カルバモイル基であり、特に好ましくは、アルキル基(特にメチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基)、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
一般式(5)および一般式(6)において、R12およびR14は、各々、上記一般式(1)におけるR3と同義であり、好ましい基についても同義である。
また、一般式(5)および一般式(6)において、L2およびL3は、各々、上記一般式(1)におけるL1と同義であり、好ましい基についても同義である。
一般式(7)および一般式(8)において、各々、R15、R16およびR18を示す1価の有機基としては、上記一般式(1)におけるR1を示す1価の有機基として例示したものを挙げることができる。
この基R15は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基であることが好ましく、更に好ましくはアリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基である。
また、基R16は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であることが好ましく、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基である。
また、基R18は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であることが好ましく、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アルコキシ基である。
一般式(7)および一般式(8)において、各々、R17およびR19は、一般式(1)におけるR3と同義であり、好ましい基についても同義である。
また、一般式(7)および一般式(8)において、L4およびL5は、各々、上記一般式(1)におけるL1と同義であり、好ましい基についても同義である。
一般式(9)および一般式(10)において、各々、R20、R21、R23およびR24を示す1価の有機基としては、上記一般式(1)におけるR1を示す1価の有機基として例示したものを挙げることができる。
この基R20および基R21は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはニトロ基であることが好ましく、更に好ましくはアルコキシカルボニル基、シアノ基である。
また、基R23は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基であることが好ましく、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
また、一般式(9)および一般式(10)において、R22およびR25は、各々、一般式(1)におけるR3と同義であり、好ましい基についても同義である。
また、一般式(9)および一般式(10)において、L6およびL7は、各々、上記一般式(1)におけるL1と同義であり、好ましい基についても同義である。
この一般式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1−1)〜式(1−20)で表される化合物が挙げられる。なお、下記実施例において、着色剤化合物前駆体を下記番号にて記載する。
以下、一般式(2)で表される化合物について説明する。
上記一般式(2)において、X2は、少なくとも1個の環が5〜7個の原子から構成されている芳香族の炭素環または複素環を形成するのに必要な原子団を示し、かつ複素環を形成するのに必要な原子団は、アゾ結合には炭素原子が結合し、この炭素原子の隣接位の少なくとも1個が窒素原子であるか、または炭素環における炭素原子が窒素原子、酸素原子あるいは硫黄原子で置換されてなる構造を有するものである。X3は、少なくとも1個の環が5〜7個の原子から構成されている芳香族の炭素環または複素環を形成するために必要な原子団を示し、Gは、ヒドロキシ基、アミノ基、メトキシ基、チオール基またはチオアルコキシ基を示す。
基X2を示す原子団は、無置換または置換基を有していてもよい。
基X2を示す原子団によって形成される、少なくとも1個の環が5〜7個の原子から構成されている芳香族の炭素環または複素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環およびキノリン環が好ましい。
また、基X2を示す原子団に係る好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アルコキシ基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基等)、シアノ基、ニトロ基、チオール基、チオアルコキシ基およびハロゲン原子が挙げられる。
また、一般式(2)において、X3は、少なくとも1個の環が5〜7個の原子から構成されている芳香族の炭素環または複素環を形成するために必要な原子団を示し、無置換であっても置換基を有していてもよい。
基X3を示す原子団によって形成される、少なくとも1個の環が5〜7個の原子から構成されている芳香族の炭素環または複素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、キノリン環が好ましい。また、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基およびハロゲン原子が好ましい。
また、一般式(2)において、Gは、ヒドロキシ基、アミノ基、メトキシ基、チオール基またはチオアルコキシ基を示す。
この一般式(2)で表される化合物の具体例としては、下記式(2−1)〜(2−5)で表される化合物が挙げられる。なお、下記実施例において、着色剤化合物前駆体を下記化合物番号にて規定する。
着色剤化合物前駆体は、反応後、マゼンタ色の着色剤化合物を与えるものであると好ましい。すなわち、着色剤化合物前駆体は、一般式(1)で表される化合物であると好ましい。特許文献1の方法により製造されるマゼンタトナーは、色調制御の観点で優れるが、一方で、上記のように、トナーの流動性や保管性が十分でないことがある。しかしながら、本発明のトナーの構成をマゼンタトナーに採用することによって、特に流動性および保管性を向上させることができる。
着色剤化合物前駆体の含有割合は、加熱定着後のトナー(トナー粒子)中の着色剤の含有割合が所望の範囲内となるように調整され、用いられる着色剤化合物前駆体によっても異なるが、トナー100質量部(後述する外添剤等、そのほかの成分を含む)に対して0.15〜4質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜3質量部である。
(金属含有化合物)
本発明のトナーに含まれる金属含有化合物は、加熱定着時の熱により、上記の着色剤化合物前駆体と反応する化合物である。金属含有化合物は、着色剤化合物前駆体と同様に、樹脂粒子(または樹脂粒子表面)に分散されており、室温(保管時)では着色剤化合物前駆体と反応しない状態で存在するが、加熱定着の際の熱により、着色剤化合物前駆体と反応して着色剤化合物を与える。したがって、得られるトナーの流動性や保管性を向上させるために、使用する金属含有化合物は、室温で固体であるものが好ましい。
金属含有化合物としては、金属配位化合物または有機金属化合物であることが好ましい。本発明のトナーに含まれる金属含有化合物は、着色剤化合物前駆体と反応して、金属キレート色素を形成するものである。したがって、金属含有化合物は、金属配位化合物であるとより好ましい。
金属含有化合物が有機金属化合物である場合には、有機金属化合物自体ではなく、有機化合物と共に、例えば硫酸銅などの無機金属塩を供することもできる。
金属配位化合物は、下記一般式(A)で表されるものであると好ましい。
一般式(A)において、Mは、金属原子を示し、nはその価数を示すものでMの種類によって一義的に決定されるものであるが、一般的には0〜8である。これらの中でも、金属含有化合物の色および着色剤化合物前駆体との反応により得られる着色剤化合物の色調を良好にするため、Mは、2価(n=2)の金属が好ましい。Xは、n価の金属イオンと錯体を形成することができる配位子を示す。配位子Xは、金属原子の価数に応じてアニオンであってもよいし、中性の配位子であってもよい。mは、配位子Xの数であり、1〜8であり、1〜4であると好ましく、1〜2であるとより好ましい。
より具体的には、着色剤化合物前駆体は、一般式(3)で表される化合物であると好ましい。
以下、一般式(3)で表される化合物について説明する。
一般式(3)において、Mは、2価の金属原子を示し、R8は水素原子または1価の有機基を示し、R9は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはシアノ基を示し、R10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基またはヘテロ環基を示す。
金属含有化合物を示す一般式(3)において、Mは、2価の金属原子を示し、好ましくは2価の遷移金属原子である。
Mとしては、2価の遷移金属原子の中でも、一般式(1)で表される化合物または一般式(2)で表される化合物よりなる着色剤化合物前駆体と金属配位化合物を生成すること、また最終的に得られるトナーの色調の安定性の観点から、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子が好ましく、最も好ましくは銅原子である。
一般式(3)において、R8は、水素原子または1価の有機基を示す。
基R8を示す1価の有機基としては、例えば置換または無置換の、炭素原子数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチル基等)、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素原子数2〜20のアルケニル基(例えばビニル基、アリル基等)、炭素原子数2〜20のアルキニル基(例えばエチニル基、プロパルギル基等)、炭素原子数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基等)、炭素原子数2〜20のヘテロ環基(例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、炭素原子数7〜20のアリールオキシカルボニル基(例えばフェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、炭素原子数1〜20のスルファモイル基(例えばアミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、炭素原子数2〜20のアシル基(例えばアセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、炭素原子数1〜20のカルバモイル基(例えばアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、炭素原子数1〜20のアルキルスルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、炭素原子数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、シアノ基などが挙げられる。
基R8は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基であることが好ましく、最も好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、シアノ基である。これらの好ましいものとして例示した1価の有機基は、無置換のものであってもよく、また置換基を有するものであってもよい。
一般式(3)において、R9は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはシアノ基を示す。
基R9を示す有機基の各々の具体例を以下に例示する。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、メトキシエチルなどが挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基などが挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニルなどが挙げられる。
ヘテロ環基としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
カルバモイル基としては、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基などが挙げられる。
スルファモイル基としては、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基などが挙げられる。
スルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基などが挙げられる。
アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基などが挙げられる。
アリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル、2−ピリジルスルホニルなどが挙げられる。
基R9は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、シアノ基であることが好ましく、最も好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基である。これらの好ましいものとして例示した1価の有機基は、無置換のものであってもよく、また置換基を有するものであってもよい。
一般式(3)において、R10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、またはヘテロ環基を示す。
基R10を示す有機基の各々の具体例を以下に例示する。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基などが挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基、p−フルオロ
フェニル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基などが挙げられる。
基R10は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基であることが好ましく、最も好ましくは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基である。これらの好ましいものとして例示した1価の有機基は、無置換のものであってもよく、また置換基を有するものであってもよい。
また、一般式(3)において、R8とR9、あるいはR9とR10は、それぞれ互いに連結して5〜6員の環を形成してもよい。
更に、この一般式(3)においては、R8およびR9のいずれか一方は、電子吸引性基であることが更に好ましく、R8およびR9のσρ値の合計が0.2〜2.0であることが最も好ましい。
ここに、「電子吸引性基」とは、ハメット則に係る置換基定数ρが正の値をとり得る置換基のことであり、ハメット則の置換基定数とは、芳香族化合物のメタ置換体またはパラ置換体において、無置換の化合物と置換基を有する化合物との反応速度定数を、それぞれk0およびkとした時に成立するハメット式:log(k/k0)=ρσにおけるσと定義される。
なお、上記ハメット式においては、安息香酸およびその誘導体の25℃の水溶液中における解離反応をρ=1としている。また、ハメットの置換基定数に関しては、Journal of MedicinalChemistry,1973,Vol.16,No.11,1207-1216等を参考することができる。
電子吸引性基の具体例としては、置換基を有するアルキル基(例えばハロゲン置換アルキル基等)、置換基を有するアルケニル基(例えばシアノビニル基等)、無置換または置換基を有するアルキニル基(例えばトリフルオロメチルアセチレニル基、シアノアセチレニル基等)、置換基を有するアリール基(例えばシアノフェニル等)、無置換または置換基を有するヘテロ環基(例えばピリジル基、トリアジニル基、ベンゾオキサゾリル基等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(例えばアセチル基、トリフルオロアセチル基、ホルミル基等)、チオアセチル基(例えばチオアセチル基、チオホルミル基等)、オキサリル基(例えばメチルオキサリル基等)、オキシオキサリル基(例えばエトキサリル基等)、チオオキサリル基(例えばエチルチオオキサリル基等)、オキサモイル基(例えばメチルオキサモイル基等)、オキシカルボニル基(例えばエトキシカルボニル基等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(例えばエチルチオカルボニル基等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(例えばエトキシスルホニル基等)、チオスルホニル基(例えばエチルチオスルホニル基等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(例えばメトキシスルフィニル基等)、チオスルフィニル基(例えばメチルチオスルフィニル基等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(例えばN−アセチルイミノ基等)、N−スルホニルイミノ基(例えばN−メタンスルホニルイミノ基等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基などが挙げられる。
これらのうちでは、置換基を有するアルキル基、置換基を有するアリール基、シアノ基、アシル基、オキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基が好ましく、具体的には、シアノ基、ニトロ基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、クロロメチル基、トリブロモメチル基、ジブロモメチル基、ブロモメチル基、アルコキシアシル基、アシル基、およびこれらの有機基が置換した芳香環であることが好ましい。
このような一般式(3)で表される金属配位化合物は、下記一般式(11)で表される化合物を合成し、この化合物を2価の金属を含有する化合物と反応させることによって得られるものであることが好ましい。
ここに、これらの金属配位化合物の合成方法は、「キレート化学(5)錯体化学実験法[I](南江堂編)」等に記載の方法に準じて合成することができる。この合成に供される2価の金属を含有する化合物としては、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化チタン(II)、塩化鉄(II)、塩化銅(II)、塩化コバルト、塩化マンガン(II)、塩化鉛、酢酸鉛、塩化水銀、酢酸水銀などが挙げられるが、前述の通り、一般式(1)で表される化合物または一般式(2)で表される化合物よりなる着色剤化合物前駆体と金属配位化合物を生成すること、またトナーの色調の安定性の観点から、好ましくは塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化銅、酢酸銅であり、最も好ましくは酢酸銅である。
一般式(11)において、R8〜R10は、一般式(3)におけるR8〜R10と同様であるため、その説明を省略する。
この一般式(3)で表される金属配位化合物の具体例としては、下記式(3−1)〜式(3−14)で表される化合物が挙げられる。なお、下記実施例において、金属含有化合物を下記番号にて記載する。
金属含有化合物の含有割合は、加熱定着後のトナー(トナー粒子)中の着色剤の含有割合が所望の範囲内となるように調整され、用いられる金属含有化合物によっても異なるが、トナー100質量部(後述する外添剤等、その他の成分を含む総質量)に対して0.1〜4質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜3質量部である。また、トナーを構成する樹脂100質量部に対して0.1〜4質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜3質量部である。
上述の着色剤化合物前駆体と金属含有化合物との割合は、10:90〜90:10であると好ましく、30:70〜70:30であるとより好ましい。かような比率とすることにより、加熱定着時に生成する着色剤化合物を良好な色調で得ることができる。
(その他の成分)
本発明のトナーは、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体との反応を阻害しない限り、上記成分以外に、離型剤、荷電制御剤、外添剤等をさらに含んでいてもよい。
・離型剤
本発明に係るトナーには、必要に応じて公知の離型剤を添加することができる。
離型剤(オフセット防止剤)としては、炭化水素系ワックス類、エステル系ワックス類、天然物系ワックス類、アミド系ワックス類等が挙げられる。
炭化水素系ワックス類としては、低分子量のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの他、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。
エステル系ワックス類としては、ベヘン酸ベヘニル、エチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールベヘン酸エステル、クエン酸ステアリル、クエン酸ベヘニル、リング酸ステアリル、リング酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコール類とのエステル等を挙げることができる。これら離型剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
離型剤の融点は、好ましくは40〜160℃であり、より好ましくは50〜120℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成を行うことができる。また、トナー中の離型剤の含有量は、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
・荷電制御剤
本発明のトナーには、必要に応じて公知の荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシ化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。この荷電制御剤粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
・外添剤
本発明のトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤(「外部添加剤」ともいう。)を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものではなく、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナなどの種々の無機酸化物粒子を使用することが好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されていることが好ましい。また、有機微粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などの重合体を使用することができる。滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を用いることができ、具体的には、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩;オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩などが挙げられる。
これらの外添剤の添加割合は、外添剤の添加量は、トナー全体において0.1〜4.5質量部であることが好ましい。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
(トナーの軟化点温度)
本発明のトナーは、その軟化点温度(Tsp)が90〜140℃であることが好ましく、特に100〜130℃であることが好ましい。
軟化点温度を上記の範囲とすることにより、加熱定着時に加えられる熱を金属含有化合物および着色剤化合物前駆体に対して加えることができ、これらの反応を十分に進行させることができる。また、上記範囲であれば、着色剤に大きな負担をかけることなく画像を形成することができるため、形成される可視画像において、より広く安定した色再現性を得ることができる。
また、定着温度が極めて低温であっても、弊害を伴うことなく画像形成を行なうことができるため、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を行なうことが可能となる。
本発明のトナーの軟化点温度は、例えば(1)樹脂を構成する重合性単量体の種類や組成比を調節すること、(2)トナーの製造工程において、例えば樹脂を得る過程に連鎖移動剤を用い、その種類や使用量により、樹脂の分子量を調整すること、(3)離型剤などの構成材料の種類や使用量を調節すること、あるいはこれらの(1)〜(3)の手法を組み合わせることなどによって制御することができる。
本明細書において、トナーの軟化点温度は、「フローテスターCFT−500」(島津製作所社製)を用い、トナーにより、高さ10mmの円柱形状体を形成し、この円柱形状体を、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーによって1.96×106Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより、プランジャーからの降下量と温度との関係を示す軟化流動曲線を得ることによって測定されるものであり、降下量5mmにおける温度を軟化点温度として採用する。
(トナー粒子のメジアン径)
本発明のトナーは、その粒径が、体積基準のメジアン径(D50v)で3μm以上であって8μm以下であることが好ましい。
体積基準メジアン径を上記の範囲とすることにより、例えば1200dpi(1インチ(2.54cm)当たりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することが可能となる。その結果、写真画像として、印刷インクによって形成された画像と同等あるいはそれ以上の高精細性を有するものを形成することができ、したがって可視画像として写真画像を形成した場合にもその画像に高い色再現性を得ることができる。而して、特に軽印刷分野においては、高精細写真画像を含むフルカラー画像を、数百部〜数千部レベルの少量であっても容易に形成することができる。
本発明のトナーの体積基準のメジアン径は、例えば、「コールターマルチサイザーTA−III」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出することができる。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
(トナーのCV値)
本発明のトナーは、その体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が、2%以上であって21%以下であることが好ましく、特に5%以上であって15%以下であることが好ましい。
体積基準の粒度分布における変動係数は、トナー粒子の粒度分布における分散度を体積基準によって示したものであり、下記数式(1)によって算出される。
このCV値は、その値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、したがってトナー粒子の大きさが揃っていることを意味する。
CV値を上記の範囲とすることにより、トナーがトナー粒子の大きさの揃ったものとなるため、デジタル画像形成において求められるような繊細なドットや細線をより高精度に再現することが可能となる。また、写真画像として、印刷インクによって形成された画像と同等あるいはそれ以上の高精細性を有するものを形成することができる。
(トナーの構造)
本発明のトナーにおいて、着色剤化合物前駆体および/または金属含有化合物は樹脂粒子および/または樹脂粒子表面に分散されているが、当該樹脂は、コア部(「コア粒子」とも称することがある)とシェル部(「シェル層」とも称することがある)を備えたコアシェル構造であってもよい。
本発明のトナーは、樹脂粒子(トナー母体粒子)中に、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが未反応の状態で含有されていればよく、下記のような含有形態をすべて包含するものである。
樹脂粒子が単層樹脂粒子である場合、着色剤化合物前駆体は、トナー母体粒子を構成する樹脂粒子中に分散されていると好ましく、金属含有化合物はトナー母体粒子を構成する樹脂粒子の表面に分散されていると好ましい(すなわち、上記表1におけるA−2)。すなわち、本発明のトナーは、樹脂粒子および該樹脂粒子中に分散された着色剤化合物前駆体を有するトナー母体粒子と、該トナー母体粒子の表面に分散された金属含有化合物を含んでいると好ましい。このような構成とすることにより、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが均一に樹脂粒子中に分散している場合と比較して、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とがその保管中において反応しにくくなる。その結果、得られるトナーの流動性および保管性を向上させることができる。
樹脂粒子の構造としてコアシェル構造を採用した場合、コア部とシェル部において、それぞれ着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とを分離した状態とすることができる(すなわち、上記表1におけるB−4〜B−9)。その結果、製造過程および保管時におけるトナー母体粒子中で、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体の反応が抑えられ、保持されやすくなる。その結果、トナーの流動性や保管性を良好に保持することができる。また、コアシェル型のトナー母体粒子を形成する場合、コア部において着色剤化合物前駆体を含んでいる(すなわち、上記表1におけるB−4およびB−5)と好ましい。このように、コア部に着色剤化合物前駆体を含んでいる場合、分散性が高く、より高い発色性を備えたトナーを得ることができる。
また、金属含有化合物は、後述する外添剤とともに樹脂粒子表面上に分散した形態であると好ましい(すなわち、上記表1におけるB−5およびB−6)。金属含有化合物を樹脂中に分散させる場合は、トナー製造時の高温によって反応が多少進行してしまう虞があるが、このように、金属含有化合物を外添剤と共に樹脂粒子表面上に分散した形態とすると、外添処理時は低温で進行させることができるため、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体との反応が抑制されるため、特に好ましい。
したがって、トナー母体粒子において、樹脂粒子は、コアシェル構造であると好ましく、コアシェル構造の樹脂において、そのコア部分に、着色剤化合物前駆体を含み、かつ、金属含有化合物は、外添剤と共にトナー母体粒子表面に分散されていると好ましい(すなわち、上記表1におけるB−5)。換言すると、本発明のトナーは、コア粒子および該コア粒子の表面に凝集したシェル層を有する樹脂粒子と、前記コア粒子中に分散された着色剤化合物前駆体と、前記シェル層の表面に分散された金属含有化合物とを含んでいると好ましい。このように、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とがシェル層を介して配置されることにより、トナーの保管中において、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが反応しにくくなるため、トナーの流動性および保管性がより向上する。
(現像剤)
本発明のトナーは、磁性または非磁性の1成分用現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合した2成分現像剤のトナー(2成分用現像剤)として使用されてもよい。本発明のトナーは、流動性に優れるため、2成分現像剤として使用する場合、トナーとキャリアとの分散性に優れる。
本発明のトナーを1成分用現像剤として用いる場合は、非磁性1成分用現像剤、またはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させて磁性1成分用現像剤としたものが挙げられ、いずれも使用することができる。
また、本発明のトナーを2成分用現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、トナーに対し相対的に正帯電性を示すものが好ましく、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
好ましいキャリアとしては、外添剤の離脱防止や耐久性の観点から、被覆樹脂としてアクリル系樹脂で被覆したコートキャリアが挙げられる。
キャリアは、その体積基準におけるメジアン径(D50)が20〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。キャリアの体積基準におけるメジアン径(D50)は、たとえば、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明は、上記トナーの製造方法もまた提供する。すなわち、本発明の第二は、前記樹脂および前記着色剤化合物前駆体を有するトナー母体粒子と、前記金属含有化合物と、を混合する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法を提供する。
本発明のトナーは、混練工程、粉砕工程および分級工程をこの順に経る粉砕法や、例えば乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等の重合法(湿式法)などによって製造することができるが、製造コスト、製造安定性を考慮すると、以下のような方法が好ましく用いられる。すなわち、予め樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する乳化会合法が好ましいものとして挙げられる。乳化会合法では、樹脂粒子の凝集・融着工程の条件を制御して、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが、互いに反応することなくトナー中に分散させることができる。
より具体的には、本発明のトナーの製造方法は、樹脂と、着色剤化合物前駆体(または金属含有化合物)とを含む混合体を得て、これを加熱して凝集・融着させて中間体を得て、その後、金属含有化合物を(先に樹脂と金属含有化合物との混合体を得た場合は、着色剤化合物前駆体を)さらに添加する工程を有していると好ましい。
以下、乳化会合法によるトナーの作製例について説明する。乳化会合法では、概ね以下の様な工程を経てトナーを作製する。なお、以下では先に樹脂と着色剤化合物前駆体とを含む中間体(コア粒子)を得た後、金属含有化合物を混合する方法を例示するが、トナーの製造工程において、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが反応しない条件であれば、他の方法であっても構わない。たとえば、先に樹脂と金属含有化合物を含む中間体(コア粒子)を得た後、着色剤化合物前駆体を混合する方法であってもよい。
以下では、乳化会合法によるトナーの製造方法として、好ましい形態について説明する。本発明のトナーの好ましい製造方法の一例は、以下の工程(a)〜(e)を備える。
(a)樹脂粒子の分散液を得る工程;
(b)樹脂粒子の分散液と、着色剤化合物前駆体(またはその分散液)とを混合し、樹脂粒子を凝集させる工程(凝集・融着工程);
(c)冷却工程;
(d)濾過、洗浄、乾燥工程;および
(e)金属含有化合物を添加する工程(外添処理工程)。
以下、各工程について説明する。
(a)樹脂粒子の分散液を得る工程
この工程では、上記で説明したトナーを構成する樹脂粒子の分散液を得る。
分散液を得る方法としては、特に制限されないが、例えば、上述の界面活性剤および重合開始剤の存在下、上述の重合性単量体を水系媒体中で重合することにより樹脂粒子分散液を得ることができる。また、上記以外の方法としては、必要に応じて樹脂を粉砕した後、界面活性剤の存在下、超音波ホモジナイザーなどを用いて水系媒体中に樹脂粒子を分散させる方法などが挙げられる。
ここに、前記水系媒体とは、主成分(50質量%以上100質量%以下)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
本工程において、水系媒体中で重合性単量体を重合することにより樹脂粒子を分散する手法としては、乳化重合法を用いることが好ましい。また、樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。このような構成の樹脂粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調整し、この分散液に重合開始剤と重合性モノマーとを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。このとき、同様に、さらに第3段重合を行ってもよい。
本工程で得られる分散液には、ワックスなどの内添剤をさらに含んでいてもよい。
(b)樹脂粒子の分散液、着色剤化合物前駆体(またはその分散液)を混合し、樹脂粒子を凝集させる工程(凝集・融着工程)
この工程は、水系媒体中、前述の樹脂粒子および着色剤化合物前駆体を含む分散液中で、樹脂粒子を凝集・融着させ、結着樹脂を得る工程である。
この工程では、樹脂粒子と、着色剤化合物前駆体とを混合させた水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等を凝集剤として添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。
具体的には、前述の手順で作製した、樹脂粒子の分散液と、着色剤化合物前駆体(またはその分散液)とを混合し、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加することにより、樹脂粒子と、着色剤化合物前駆体とを凝集させると同時に粒子同士が融着して結着樹脂が形成される。そして、凝集した粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
本工程で用いられる凝集剤は、特に制限されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これら凝集剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
凝集工程においては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
また、凝集工程においては、凝集剤を添加した後、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は0.3℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。また、樹脂粒子を凝集させる工程においては、温度調節によって系の温度を50〜90℃とすることが好ましく、特に60〜80℃とすることが好ましい。
さらに、凝集用分散液がガラス転移点温度以上の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積基準のメジアン径が4.5〜7.0μmになるまで保持することにより、融着を継続させることが肝要である(第1の熟成工程)。また、熟成中の粒子の平均円形度を測定し、好ましくは0.900〜1.000になるまで第1の熟成工程を行うことが好ましい。なお、平均円形度は、実施例に記載の方法により測定される。
これにより、粒子の成長(樹脂粒子および着色剤化合物前駆体の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上させることができる。
なお、着色剤化合物前駆体は、上記(a)工程で得られた樹脂粒子の分散液に対し、固体の状態で加えてもよいし、予め分散液の状態としてから添加してもよい。着色剤化合物前駆体の分散液は、上記(a)における水系媒体および界面活性剤と同様のものをそれぞれ使用して、界面活性剤水溶液を調製した後、当該溶液に着色剤化合物前駆体を添加することにより調製されると好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザー、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力吐出型ホモジナイザーなどの加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機等公知の分散機を用いることができる。
(b')シェル部分を形成する工程(シェル化工程)
本発明のトナーをコアシェル構造とする場合には、上記(b)工程に続き、さらに、シェル部分を形成する工程が行われると好ましい。このように、コアシェル構造の結着樹脂を得る場合には、コア粒子表面に均一にシェル層を形成させるため、乳化凝集法を採用するのが好ましい。すなわち、上記の第1の熟成工程において、シェル部を形成するシェル用樹脂の水系分散液をさらに添加し、上記で得られた単層構造の結着樹脂の粒子(コア粒子)の表面にシェル用樹脂を凝集、融着させる。これにより、コアシェル構造を有する結着樹脂が得られる(シェル化工程)。この際、シェル化工程に引き続き、コア粒子表面へのシェルの凝集、融着をより強固にし、かつ粒子の形状が所望の形状になるまで、さらに反応系の加熱処理を行うとよい(第2の熟成工程)。この熱処理時、系の温度は65〜95℃とすることが好ましく、特に70〜90℃とすることが好ましい。また、第2の熟成工程は、5〜35時間とすることが好ましく、特に10〜30時間とすることが好ましい。
この第2の熟成工程は、コアシェル構造を有するトナー母体粒子の平均円形度が、上記平均円形度の範囲になるまで行えばよい。そして、凝集した粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
凝集工程での分散液は、添加剤として、分散安定剤、離型剤(オフセット防止剤)、界面活性剤、荷電制御剤等公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、添加剤の分散液として本工程において添加してもよいし、着色剤化合物前駆体の分散液や結着樹脂の分散液中に含有させてもよい。離型剤、界面活性剤、および荷電制御剤の具体例は、上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。
前記分散安定剤は、樹脂粒子の調製時、重合性単量体等を適度に分散させておくために用いられる分散安定剤と同様のものを用いることができるため、ここでは説明を省略する。
(c)冷却工程
この冷却工程は、上記のトナー母体粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理における冷却速度は、特に制限されないが、0.2〜20℃/分が好ましい。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(d)濾過、洗浄、乾燥工程
濾過工程では、トナー母体粒子の分散液からトナー母体粒子を濾別する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
次いで、洗浄工程で洗浄することにより濾別されたトナー母体粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー母体粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。乾燥処理されたトナー母体粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
また、乾燥処理されたトナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、解砕処理を行ってもよい。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(e)金属含有化合物を添加する工程(外添処理工程)
この工程は、上記工程を経て調製されたトナー母体粒子に金属含有化合物を添加、混合する工程である。
本工程では、金属含有化合物をトナー母体粒子と共に撹拌混合すればよい。撹拌混合の方法としては特に制限はなく、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ロッキングミキサー、Qミキサーなどをいずれも使用できる。金属含有化合物およびトナー母体粒子はこれらの混合機に同時に投入してもよいし、順次投入してもよい。より具体的には、例えば、ヘンシェルミキサを用い、撹拌羽根周速を20〜60m/秒にして撹拌混合すると好ましく30〜50m/秒とするとより好ましい。また、このとき、系内の温度を20〜50℃とすると好ましく、25〜45℃とするとより好ましい。20℃以上とすると、金属含有化合物をトナー母体粒子表面に完全に付着させることができるため、好ましい。また、50℃以下とすると、トナー母体粒子に含まれる着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが反応することなく、流動性および保管性に優れたトナーを得ることができる。
さらに、撹拌混合は、5〜30分程度であると好ましく、10〜25分とするとより好ましい。
このとき、金属含有化合物とともに、他の外添剤を添加、混合してもよい。外添剤の具体例は、上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。上述したように、外添剤を加えることにより、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。このとき、金属含有化合物は、固体の状態で添加されると好ましい。
なお、各種の改変により、上記工程(a)〜(d)までの過程において、既に金属含有化合物を添加した場合は、金属含有化合物を添加する必要はないが、金属含有化合物は、本工程のように、外添剤と共に添加されると好ましい。金属含有化合物を外添剤と共に外添処理することで、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが未反応の状態で含有されたトナーを簡単な方法で得ることができる。また、金属含有化合物を添加してから高温で加熱処理する必要がないため、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが製造工程において反応することがなく、得られるトナーの流動性および保管性が向上する。
また、金属含有化合物は、当該化合物をそのまま使用してもよいが、予め、下記の処理を行っておくと好ましい。すなわち、界面活性剤水溶液に金属含有化合物を分散させて粒径を小さくした後、固液分離し、得られたウェットケーキを洗浄して乾燥したものを用いると好ましい。
上記の通り、本発明のトナーの好ましい製造方法の一例を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の改変をなしえることはもちろんである。
たとえば、トナー母体粒子がコアシェル構造を有する場合は、上記工程(b)の後に、工程(b')が行われるとき、シェル部分に金属含有化合物が分散されるように、シェル用樹脂および金属含有化合物を含む分散液を調整し、これを凝集させてもよい。この場合は、上記(e)の工程を行う必要はない。また、このとき、金属含有化合物は、予め分散液を調製し、これをシェル用樹脂の分散液中に添加してもよいし、あるいは、固体の状態のままシェル用樹脂の分散液中に添加してもよい。ただし、シェル部分に金属含有化合物を分散させてシェル部分を形成する場合、上記第2の熟成工程は、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが反応してキレート化する温度未満で行われる。これにより、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体とが未反応の状態でトナー母体粒子中に分散される。
本発明のトナーは、上記工程(a)〜(e)によって製造することができるが、本発明のトナーの製造方法は、以下の工程によって行われるとさらに好ましい。
(i)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子の分散液を調製する工程;
(ii)樹脂粒子の分散液と、着色剤化合物前駆体(またはその分散液)とを混合して加熱し、樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子を形成する工程;
(iii)コア粒子の分散系(水系媒体)中でコア粒子表面にシェル部を形成し、トナー母体粒子を形成する工程;
(iv)トナー母体粒子の分散系を冷却する工程;
(v)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、洗浄し、トナー母体粒子を乾燥する工程;および
(vi)金属含有化合物および外添剤を添加する工程(外添処理工程)。
このように、本発明のトナーは、予め着色剤化合物前駆体とコア粒子を形成する樹脂粒子の混合物を加熱して、着色剤化合物前駆体を含むコア粒子を形成した後、シェル部分を形成して加熱熟成し、その後、金属含有化合物を外添処理することにより、製造されると好ましい。かような工程を経ることにより、金属含有化合物と、加熱定着時の熱によって前記金属含有化合物と反応して着色剤化合物となる着色剤化合物前駆体とを含むトナーを簡便な方法で得ることができ、流動性および保管性に優れたトナーを得ることができる。
[画像形成方法]
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができる。したがって、本発明は、上記トナーを用いた画像形成方法もまた提供する。すなわち、本発明の第三は、上記静電荷像現像用トナーにより形成されたトナー像を加熱定着し、前記着色剤化合物前駆体と前記金属含有化合物とを反応させて着色剤化合物を生成させる工程を含む、画像形成方法を提供する。
図1は、本発明に係るトナーを使用してトナー画像を形成することが可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。本発明のトナーを用いて、典型的には以下の工程を含む画像形成方法を実施することができる。すなわち、
(I)感光体を露光して静電潜像を形成する工程;
(II)静電潜像が形成された感光体にトナーを供給してトナー画像を形成する工程;
(III)感光体に形成されたトナー画像を画像支持体に転写する工程;および
(IV)画像支持体に転写されたトナー画像を加熱定着する工程;
を経てプリント物を作成するものである。そして、上記(IV)の工程において、加熱定着の熱により、トナーに含まれる着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが反応し、着色剤化合物前駆体が生成する。
図1において、31Y、31M、31C、31Bkは感光体、34Y、34M、34C、34Bkは現像手段、35Y、35M、35C、35Bkは1次転写手段としての1次転写ロール、36Y、36M、36C、36Bkはクリーニング手段、37は無端ベルト状中間転写体ユニット、370は中間転写体を示す。
この画像形成装置3は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部30Y、30M、30C、30Bkと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット37と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段41及び定着手段としての熱ロール式定着装置50とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部30Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体31Y、該感光体31Yの周囲に配置された帯電手段32Y、露光手段33Y、現像手段34Y、1次転写手段としての1次転写ロール35Y、クリーニング手段36Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部30Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体31M、該感光体31Mの周囲に配置された帯電手段32M、露光手段33M、現像手段34M、1次転写手段としての1次転写ロール35M、クリーニング手段36Mを有する。
また、さらに別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部30Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体31C、該感光体31Cの周囲に配置された帯電手段32C、露光手段33C、現像手段34C、1次転写手段としての1次転写ロール35C、クリーニング手段36Cを有する。また、さらに他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部30Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体31Bk、該感光体31Bkの周囲に配置された帯電手段32Bk、露光手段33Bk、現像手段34Bk、1次転写手段としての1次転写ロール35Bk、クリーニング手段36Bkを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット37は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体370を有する。
画像形成部30Y、30M、30C、30Bkより形成された各色の画像は、1次転写ロール35Y、35M、35C、35Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体370上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット40内に収容された転写材として用紙等の画像支持体Pは、給紙搬送手段41により給紙され、複数の中間ロール42A、42B、42C、42D、レジストロール43を経て、2次転写手段としての2次転写ロール45Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置50により定着処理され、排紙ロール45に挟持されて機外の排紙トレイ46上に載置される。
一方、2次転写ロール45Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体370は、クリーニング手段36Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール35Bkは常時、感光体31Bkに圧接している。他の1次転写ロール35Y、35M、35Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体31Y、31M、31Cに圧接する。
2次転写ロール35Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体370に圧接する。
画像形成部30Y、30M、30C、30Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体31Y、31M、31C、31Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット37が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット37は、ロール371、372、373、374、376を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体370、1次転写ロール35Y、35M、35C、35Bk及びクリーニング手段36Aとからなる。
このように感光体31Y、31M、31C、31Bk上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体370上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、定着装置50で加圧および加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体31Y、31M、31C、31Bkは、クリーニング装置36Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の画像形成が行われる。
上記の定着装置50によって加圧および加熱を行うことによりトナー像を定着させる際、その定着温度(定着装置の加熱部材の表面温度)は120〜200℃が好ましく、140〜180℃がより好ましい。このように、本発明のトナーを用いた画像形成方法によれば、加熱定着することによってはじめて着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが反応し、着色剤化合物となる。そして、本発明の画像形成方法によれば、着色剤化合物前駆体および金属含有化合物を適宜選択することにより、その定着温度が比較的低温であっても、良好な色相の着色剤化合物を生成させることができる。
このような化合物の組み合わせとしては、上記一般式(1)または(2)で表される着色剤化合物前駆体と、一般式(3)で表される金属含有化合物との組み合わせが好ましく、さらに、一般式(1)で表される着色剤化合物前駆体と、一般式(3)で表される金属含有化合物との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせであれば、上記範囲のように定着温度が比較的低温であっても、反応が十分に進行し、良好な色調を呈する着色剤化合物を加熱定着時に生成させることができる。
流動性の低いトナーを用いると、現像機内に補給されたトナーが不均一に帯電され、濃度ムラが生じる虞があるが、上記のように、本発明のトナーは流動性に優れるため、画像形成時における濃度ムラを低減することができる。かような効果は、特に二成分現像方式においてもっともよく発揮される。
さらに、本発明のトナーは、流動性に優れるため、静電潜像担持体の線速が100〜500mm/secとされる高速機においても好適に用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
≪実施例1≫
(1)着色剤化合物前駆体分散液の調製
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に撹拌溶解することによって界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液に、着色剤化合物前駆体として式(1−16)で表される化合物20質量部を徐々に添加し、次いで、分散機「クレアミックス(登録商標)WモーションCLM−0.8」(エムテクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤化合物前駆体の粒子が分散された着色剤化合物前駆体分散液(以下、「着色剤化合物前駆体分散液(1)」とする)を調製した。
この着色剤化合物前駆体分散液(1)における着色剤化合物前駆体の粒子の粒子径について、体積基準のメジアン径を測定したところ、221nmであった。
なお、体積基準のメジアン径は、「MICROTRAC UPA−150」(HONEYWELL社製)を用い、サンプル屈折率1.59、サンプル比重1.05(球状粒子換算)、溶媒屈折率1.33、溶媒粘度0.797(30℃)および1.002(20℃)の測定条件により、測定セルにイオン交換水を投入することによって0点調整を行なうことによって測定した。
(2)金属含有化合物粒子の調製
上記の着色剤化合物前駆体分散液の調製において、式(1−16)で表される化合物(着色剤化合物前駆体)に代えて金属含有化合物としての式(3−4)で表される金属配位化合物を19.4質量部用いたこと以外は、上記の着色剤化合物前駆体分散液の調製と同様の手法によって金属含有化合物の粒子が分散された金属含有化合物分散液(以下、「金属含有化合物粒子分散液(1)」とする)を調整した。
この金属含有化合物分散液(1)における金属含有化合物の粒子の粒子径について、上記の着色剤化合物前駆体分散液の調製における測定と同様の測定条件によって体積基準のメジアン径を測定したところ、121nmであった。
そして、バスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械社製)を用いて固液分離し、金属含有化合物粒子のウェットケーキを形成し、このウェットケーキを、バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、「VU型振動乾燥機」(中央化工機株式会社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、金属含有化合物粒子(1)を得た。
(3)コア粒子用樹脂粒子の調製
(3−1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム(C10H21(OCH2CH2)2SO3Na)よりなるアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を仕込み、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、液温を75℃に昇温させた後、スチレン532質量部、アクリル酸n−ブチル200質量部、メタクリル酸68質量部およびn−オクチルメルカプタン16.4質量部よりなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子(1h)を含有する樹脂粒子分散液(1H)を調製した。
なお、得られた樹脂粒子(1h)の重量平均分子量は16500であった。
(3−2)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、スチレン101.1質量部、アクリル酸n−ブチル62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部およびn−オクチルメルカプタン1.75質量部からなる重合性単量体溶液を仕込み、その後パラフィンワックス「HNP−57」(日本製蝋社製)93.8質量部を添加し、内温を90℃に加温して溶解させることによって単量体溶液を調製した。
一方、第1段重合において用いたアニオン系界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を仕込み、内温が98℃となるよう加熱した。この界面活性剤水溶液に、第1段重合において得られた樹脂粒子(1h)32.8質量部(固形分換算)を添加し、更に、パラフィンワックスを含有する単量体溶液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エムテクニック社製)を用い、8時間かけて混合分散することにより、分散粒子径340nmの乳化粒子(油滴)を含有する乳化粒子分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたって加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い、樹脂粒子(1hm)を含有する樹脂粒子分散液(1HM)を調製した。
なお、得られた樹脂粒子(1hm)の重量平均分子量は23000であった。
(3−3)第3段重合
第2段重合において得られた樹脂粒子分散液(1HM)に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン293.8質量部、アクリル酸n−ブチル154.1質量部およびn−オクチルメルカプタン7.08質量部からなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却しコア粒子用樹脂粒子(1)を含有する樹脂粒子分散液を得た。
得られたコア粒子用樹脂粒子(1)の重量平均分子量は26800であった。
(4)シェル用樹脂粒子の調製
前記の第1段重合において、重合性単量体として、スチレン624質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル120質量部、メタクリル酸56質量部およびn−オクチルメルカプタン16.4質量部を用いたこと以外は第1段重合と同様の手法により、重合を行い、これにより、シェル用樹脂粒子(1)を得た。
得られたシェル用樹脂粒子(1)の重量平均分子量は42500であった。
(5)トナー粒子の調製
(5−1)コア粒子の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、コア粒子用樹脂粒子(1)420.7質量部、イオン交換水900質量部および着色剤化合物前駆体分散液(1)42質量部(固形分換算で7質量部)を仕込んで撹拌し、内温が30℃となるよう調整した後、濃度5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加することによってpHを9に調整した。
次いで、塩化マグネシウム6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。
その後、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の平均粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に、液温度70℃にて1時間にわたって加熱、撹拌することにより融着を継続させることにより、コア粒子(1)を含有するコア粒子含有液(1)を得た。
得られたコア粒子(1)について、「FPIA2100」(シスメック社製)を用い、平均円形度を測定したところ、0.912であった。
(5−2)シェル部の形成
コア粒子含有液(1)を65℃に調整した後、シェル用樹脂粒子(1)96質量部を添加し、更に、塩化マグネシウム6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加し、70℃にまで昇温して1時間にわたって撹拌することにより、コア粒子(1)の表面にシェル用樹脂粒子(1)を融着させた後、液温度75℃にて20時間にわたって熟成処理を行なうことにより、シェル部を形成した。
(5−3)冷却、濾別、乾燥
その後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加することによって熟成処理(シェル形成)を停止させた後、8℃/分の条件で30℃にまで冷却し、生成した粒子を濾過し、更に45℃のイオン交換水による洗浄を繰り返し、40℃の温風で乾燥することにより、コア粒子表面にシェルが形成されてなる構成のトナー母体粒子(1)を得た。
(5−4)外添処理(金属含有化合物の添加)
得られたトナー母体粒子(1)に、金属含有化合物粒子(1)7質量部、ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm)0.6質量部およびn−オクチルシラン処理したチタニア(平均一次粒径24nm)0.8質量部よりなる外添剤を添加し、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)を用い、撹拌羽の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分間の条件で混合する外添処理を行なうことにより、マゼンタトナー(1)を得た。
なお、トナー粒子は、外添剤の添加によっては、その形状および粒径は変化しなかった。
≪実施例2〜17≫
着色剤化合物前駆体および金属含有化合物をそれぞれ表2に示される化合物に変更したこと以外は、上記実施例1と同様にしてマゼンタトナー(2)〜(17)を得た。
≪比較例1≫
(1)着色剤化合物前駆体分散液の調製
上記実施例1における着色剤化合物前駆体分散液の調製方法と同様にして、比較着色剤化合物前駆体分散液(1)を得た。この比較着色剤化合物前駆体分散液(1)における着色剤化合物前駆体の粒子の粒子径について、上記実施例1と同様の測定条件により、体積基準のメジアン径を測定したところ、221nmであった。
(2)金属含有化合物分散液の調製
上記実施例1における金属含有化合物粒子の調製において、金属含有化合物粒子のウェットケーキを形成する前の段階まで行い、比較金属含有化合物分散液(1)を調製した。
すなわち、式(1−16)で表される化合物(着色剤化合物前駆体)に代えて金属含有化合物としての式(3−4)で表される金属配位化合物を19.4質量部用いたこと以外は、上記実施例1における着色剤化合物前駆体分散液の調製と同様の手法によって金属含有化合物の粒子が分散された金属含有化合物分散液(以下、「比較金属含有化合物分散液(1)」とする。)を調製した。
この比較金属含有化合物分散液(1)における金属含有化合物の粒子の粒子径について、上記実施例1と同様の測定条件により、体積基準のメジアン径を測定したところ、121nmであった。
(3)コア粒子用樹脂粒子の調製
上記実施例1におけるコア粒子用樹脂粒子の調製方法と同様にして、比較コア粒子用樹脂粒子(1)を得た。
得られた比較コア部用樹脂粒子(1)の重量平均分子量は26800であった。
(4)シェル用樹脂粒子の調製
上記実施例1におけるシェル用樹脂粒子の調製の調製方法と同様にして、比較シェル用樹脂粒子(1)を得た。
得られた比較シェル用樹脂粒子(1)の重量平均分子量は42500であった。
(5)トナー粒子の調製
(5−1)コア粒子の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、比較コア粒子用樹脂粒子(1)420.7質量部、イオン交換水900質量部および比較着色剤化合物前駆体分散液(1)42質量部(固形分換算で7質量部)を仕込んで撹拌し、内温が30℃となるよう調整した後、濃度5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加することによってpHを9に調整した。
次いで、塩化マグネシウム6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。
上記の状態で、さらに比較金属含有化合物分散液(1)42質量部(固形分換算で7質量部)を添加し、引き続き撹拌を行なった。
その後、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の平均粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に、液温度70℃にて1時間にわたって加熱、撹拌することにより融着を継続させることにより、比較コア粒子(1)を含有する比較コア粒子含有液(1)を得た。この時、溶液の吸収スペクトルより、着色剤化合物前駆体と金属含有化合物とが反応し、着色剤化合物が生成していることを確認した。
得られた比較コア粒子(1)について、「FPIA2100」(シスメック社製)を用い、平均円形度を測定したところ、0.912であった。
(5−2)シェル部の形成
上記実施例1における「(5−2)シェル部の形成」と同様にして、コア粒子表面にシェル部を形成した。
(5−3)冷却、濾別、乾燥
上記実施例1における「(5−3)冷却、濾別、乾燥」と同様の処理を行うことにより、コア粒子表面にシェルが形成されてなる構成の比較トナー母体粒子(1)を得た。
(5−4)外添処理
上記実施例1における「(5−4)外添処理」において、金属含有化合物粒子(1)を添加したかったこと以外は、上記実施例1と同様にして比較マゼンタトナー(1)を得た。
なお、トナー粒子は、外添剤を添加しても、その形状および粒径は変化しなかった。
≪比較例2〜6≫
着色剤化合物前駆体および金属含有化合物をそれぞれ表2に示される化合物に変更したこと以外は、上記比較例1と同様にして比較マゼンタトナー(2)〜(6)を得た。
≪トナーの評価≫
上記実施例および比較例で得られたトナーについて、以下の評価を行った。評価結果を、表2に示す。
(1)流動性評価
流動性の指標として川北式かさ密度測定機(IH2000型)により嵩密度を求めた。
具体的な嵩密度の測定法は以下の通りである。
画像評価する前のトナーを用いて、120メッシュの篩い上にトナーを載置し、振動強度6で90秒落下させた後、振動を停止し30秒静置したのちすり切り嵩密度(トナー重量/容積)を求めた。
(嵩密度)/(真密度)が大きいほど流動性が良好であり、複写機内においてもハンドリング性、転写性が良好となることを示す。以下に評価基準を示す。
(評価基準)
0.370以上:良好
0.340を超えて0.370未満:実用可
0.340以下:実用不可(高温高湿下において転写不良が発生する)。
(2)保管性評価
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサーKYT−2000(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながら載置し、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定した。
トナー凝集率は下記式により算出される値である。
(トナー凝集率(%))=(篩上の残存トナー質量(g))/0.5(g)×100
下記に記載の基準によりトナーの耐熱保管性の評価を行った。以下に評価基準を示す。
(評価基準)
トナー凝集率が15質量%未満:トナーの耐熱保管性が極めて良好
トナー凝集率が15質量%以上20質量%以下:トナーの耐熱保管性が良好
トナー凝集率が20質量%超:トナーの耐熱保管性が悪く、使用不可。
(3)画像濃度ムラ評価
画像の四隅と中央部の合計5ヶ所に原稿反射濃度1.30のベタ画像を設定した原稿を複写し、白紙に対する出力画像の相対反射濃度を5ヶ所について測定した。なお、濃度測定には反射濃度計RD−917(マクベス社製)を使用した。上記の方法にて求めた5ヶ所の画像反射濃度の最大値と最小値の差分を濃度ムラとした。また、評価は複写終了時に行った。以下に評価基準を示す。
(評価基準)
濃度の差分が0.05未満:画像ムラが極めて良好
濃度の差分が0.05以上0.1未満:画像ムラが良好であり、問題ないレベル
濃度の差分が0.1以上:画像ムラが悪く、実害があるレベル。
(4)彩度評価
画像形成装置として、市販の複合機「bishub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、熱ローラ定着方式による定着装置の加熱部材の表面温度を150℃として、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、「POD128gグロスコート(128g/m2)」(王子製紙社製)上に、転写紙上のトナー量4g/m2に設定したベタ画像を形成した。得られた画像の彩度を測定した。マクベスカラーアイ7000にて、光源ASTM−D65 2度視野を用いて、作製した紙上の画像の彩度を測定し、評価を行った。以下に評価基準を示す。
(評価基準)
彩度の値が80以上:着色剤化合物前駆体と金属含有化合物の反応が極めて良好
彩度の値が75以上80未満:着色剤化合物前駆体と金属含有化合物の反応が良好
彩度の値が75未満:着色剤化合物前駆体と金属含有化合物の反応が悪い。
なお、彩度評価において、表中の「−」は、測定していないことを示す。
(5)軟化点温度
上記に記載した方法により、得られたトナーの軟化点温度を測定した。
表2より、本発明のトナーは、保管性がきわめて向上することが示された。また、本発明のトナーは、流動性にも優れることが確認された。また、本発明のトナーは、比較例のトナーと比較して、軟化点温度がやや高いことが確認された。これは、比較例のトナーにおいては、金属含有化合物と着色剤化合物前駆体との反応により樹脂の可塑化が起こるためであると考えられる。さらに、本発明のトナーを用いた画像形成方法によれば、画像濃度ムラが抑制されることもまた示された。なお、従来技術に相当する比較例1および2は、彩度の値は良好であるが、トナーの流動性および保管性が十分でなく、また、画像濃度ムラも比較的大きい。これに対し、同じ着色剤化合物前駆体と金属含有化合物の組み合わせを用いた本発明の実施例1および2のトナーは、彩度の値が同等の値を保持しつつ、トナーの流動性および保管性、画像形成時の画像濃度ムラを低減することができることが示されているといえる。
また、上記実施例の中でも、実施例13および6が良好であり、着色剤化合物前駆体(1−10)と金属含有化合物(3−3)の組み合わせ、着色剤化合物前駆体(1−11)と金属含有化合物(3−10)の組み合わせが特に良好であることがわかった。