JP5949662B2 - 排気ガス浄化用触媒及びその製造方法 - Google Patents

排気ガス浄化用触媒及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、排気ガス浄化用触媒及びその製造方法に関し、特に、NO吸蔵材を含む排気ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、一般に酸化触媒(DOC)とその下流に配設されたディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)によって構成されている。DOCによって、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)が酸化浄化され、窒素酸化物(NO)のうちのNOがNOに酸化される。DOCでの触媒反応熱によりDPFの昇温が図れ、NOの有する強い酸化力によりDPFに堆積したパティキュレートマター(PM)の燃焼が促進される。エンジン始動直後はDOCの活性が低いことから、HCが未浄化のまま排出されないように、DOCにゼオライトをHCトラップ材として設けることが行われている。
一方、NOの浄化のために、リーンバーンガソリンエンジンやディーゼルエンジンではリーンNOトラップ触媒(LNT触媒)も利用されている。このLNT触媒は、NO吸蔵材によって排気ガスの空燃比がリーンであるときにNOを吸蔵する。そして、エンジンの空燃比をリッチに変調するリッチパージにより、NO吸蔵材からのNOの放出、及び未燃ガスによるNOの還元が行われる。NO吸蔵材としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属を利用することが可能である。但し、アルカリ金属は触媒担体を形成するコージェライトの粒界にガラス相を形成して担体強度を低下させることから、実際にはそのような問題がないアルカリ土類金属が一般に採用されている。
ところで、特許文献1に記載されているように、ガソリンエンジンの排気ガス浄化用触媒においては、一体構造型担体にゼオライト含有するHC吸着材層とNO吸蔵材を含有する触媒金属層とを積層状態に設けるという提案がある。この提案では、HC吸着材層にもNO吸蔵材が含まれ、重量比でHC吸着材層のNO吸着材量が触媒金属層のNO吸着材量の40/60から1/99とされている。
特開2001−113173号公報
ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化においても、一体構造型担体に、NO吸蔵材を含有するLNT触媒層とゼオライトを含有するDOC層とを層状に設けることが考えられる。しかし、特許文献1でも示唆されているが、排気ガス浄化用触媒の製造過程でNO吸蔵材がスラリー中に溶出してLNT触媒層からDOC層に浸透すると、そのDOC層の触媒性能低下を招く。例えば、NO吸蔵材の浸透によって、DOC層に含まれるゼオライトのHC吸着性能が低下し、或いは酸化触媒性能が低下する。
そこで、上記のようにLNT触媒層とDOC層とを層状に設けるのではなく、DOC層を担体の排ガス流れ方向の上流側に設け、LNT触媒層を下流側に分けて設けることにより、それらの接触面積を低減することで上記問題を解決することが考えられる。
しかしながら、図6に示すように、単純に所望の容量のDOC層102とLNT触媒層103をそれぞれ担体101の上流側と下流側とに塗布すると、ゼオライトを含むDOC層102がLNT層103よりも嵩高いため、DOC層102とLNT層103との間に段差が生じてしまう。このような段差があると、排ガスの拡散が不十分となってHCの浄化性能が低下したり、背圧の上昇が生じたり、また、触媒層の剥離が生じ易くなる。DOC層102をLNT触媒層103の厚さに合わせて薄くするために、その容量を減らすと、DOC層102の触媒性能が低下し、所望の性能が得られなくなってしまう。一方、LNT触媒層103をDOC層102の厚さに合わせて厚くするために、その容量を増やすと、オーバースペックとなり、またコストが増大することとなる。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、NO吸蔵材を含有する排気ガス浄化触媒において、そのNO吸蔵材がゼオライトなど他の触媒成分に悪影響を及ぼさないようにすると共に、担体上の触媒層の剥離を防ぎ、排気ガスの拡散を良好にして触媒の性能を十分に発揮できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明は、排気ガス浄化用触媒において、担体上の排ガス流れ方向上流側にゼオライトを含み、NOx吸蔵材を含まない酸化触媒層を設け、下流側にNOx吸蔵材を含み、ゼオライトを含まないLNT層を設け、酸化触媒層のゼオライトの平均粒径をLNT層のサポート材の平均粒径よりも小さくなるようにした。
具体的に、本発明に係る排気ガス浄化用触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属よりなるNOx吸蔵材とゼオライトとを含む排気ガス浄化用触媒であって、担体上における排ガス流れ方向上流側に、ゼオライト、アルミナ、Ce含有酸化物及び触媒金属を含み、前記NOx吸蔵材を含まない酸化触媒層が形成され、担体上における排ガス流れ方向下流側に、前記NOx吸蔵材、アルミナ、Ce含有酸化物及び触媒金属を含み、ゼオライトを含まないLNT(リーンNOxトラップ)層が形成され、酸化触媒層のゼオライトの平均粒径は、LNT層のアルミナ及びCe含有酸化物の混合物の平均粒径の1/10以上4/5以下であることを特徴とする。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、触媒温度が低いときは排気ガス中のHCが酸化触媒層のゼオライトに吸着され、触媒温度が上昇すると、ゼオライトからHCが放出される。放出されたHCは、排気ガス中のCOと共に温度上昇によって活性が高くなっている触媒金属により酸化浄化される。また、排気ガスの空燃比がリーンであるときは、NOがLNT層のNO吸蔵材に吸蔵され、その空燃比が理論空燃比近傍又はリッチになったときにNO吸蔵材からNOが放出される。放出されたNOは、触媒金属により還元浄化される。また、Ce含有酸化物によるNOの吸着によって全体のNO吸蔵、吸着量が増大するとともに、Ce含有酸化物を介する水性ガスシフト反応によってNO還元剤としての水素が生成し、NOの還元が促進される。さらに、空燃比をリッチ側にしたときに、Ce含有酸化物に吸蔵された酸素と還元剤(HC及びCO)との反応熱による触媒の活性促進が図れ、NO浄化率が向上する。
また、本発明に係る排気ガス浄化用触媒によると、ゼオライトとNO吸蔵材とは、酸化触媒層とLNT層とに分離してそれぞれ担体の排ガス流れ方向上流側と下流側とに設けられており、混合されていないため、NO吸蔵材とゼオライトとの相互作用によるNO吸蔵性能及びHC吸着性能の低下を抑制できる。さらに、酸化触媒層のゼオライトの平均粒径は、LNT層のアルミナ及びCe含有酸化物の混合物の平均粒径よりも小さいため、酸化触媒層とLNT層との境界に生じる段差を小さくできるので、排ガスの拡散が不十分となって触媒性能を十分に発揮できなかったり、背圧の上昇が生じてエンジン出力が低下したり、また、酸化触媒層又はLNT層の剥離が生じ易くなることを防止できる。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、酸化触媒層のゼオライトの平均粒径は、LNT触媒層のサポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下であることが好ましい。
また、本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、酸化触媒層のゼオライトの平均粒径は、0.5μm以上4.8μm以下であることが好ましい。
これらのようにすると、酸化触媒層とLNT層との境界に生じる段差を小さくでき、さらに、酸化触媒層が過剰に緻密になることを防止できる。このため、排ガスの拡散をより良好にでき、背圧の上昇を防止できる。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、担体は、セル断面形状が六角形である六角セルハニカム構造であることが好ましい。
このようにすると、六角セルでは、セルの角部の角度が大きくなる(120度前後になる)から、三角セルや四角セルに比べて、触媒層がセルの角部(隅部)において局部的に厚くなる度合が小さくなる。つまり、触媒層厚さの均一化に有利になり、排気ガスを触媒層に効率良く接触させることができる。また、このことは、所期の触媒効果を得るに必要な触媒量を減らすことができることを意味する。これにより、コスト低減が図れるとともに、セルにおける排気ガス流路が広くなり、エンジンの背圧上昇の防止に有利になる。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属よりなるNOx吸蔵材とゼオライトとを含む排気ガス浄化用触媒の製造方法であって、担体上における排ガス流れ方向上流側に、ゼオライト、アルミナ、Ce含有酸化物及び触媒金属を含み、前記NOx吸蔵材を含まない酸化触媒層を形成する工程と、担体上における排ガス流れ方向下流側に、アルミナ及びCe含有酸化物を含み、ゼオライトを含まないLNT用サポート材を形成する工程と、LNT用サポート材に前記NOx吸蔵材及び触媒金属を含浸担持することによりLNT層を形成する工程とを備え、酸化触媒層を形成する工程の前に、ゼオライトの平均粒径をLNT用サポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下であるように粒度調整することを特徴とする。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法によると、ゼオライトとNO吸蔵材とは、酸化触媒層とLNT層とに分離してそれぞれ担体の排ガス流れ方向上流側と下流側とに設け、混合されていないため、NO吸蔵材とゼオライトとの相互作用によるNO吸蔵性能及びHC吸着性能の低下を防止できる。さらに、ゼオライトの平均粒径をLNT用サポート材の平均粒径よりも小さくなるように粒度調整するため、酸化触媒層とLNT層との境界に生じる段差を小さくできる。このため、排ガスの拡散が不十分となったり、背圧の上昇が生じたり、また、酸化触媒層又はLNT層の剥離が生じ易くなることを防止できる。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法において、ゼオライトの平均粒径を0.5μm以上4.8μm以下で且つLNT触媒層のサポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下にすることが好ましい。
このようにすると、酸化触媒層とLNT層との境界に生じる段差を小さくでき、さらに、酸化触媒層が過剰に緻密になることを防止できる。このため、排ガスの拡散をより良好にでき、背圧の上昇を防止できる。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法において、担体として、セル断面形状が六角形である六角セルハニカム構造の担体を用いることが好ましい。
このようにすると、上述の通り、触媒層厚さの均一化に有利になり、排気ガスを触媒層に効率良く接触させることができ、所期の触媒効果を得るに必要な触媒量を減らすことができる。これにより、コスト低減が図れるとともに、セルにおける排気ガス流路が広くなり、エンジンの背圧上昇の防止に有利になる。
本発明に係る排気ガス浄化用触媒及びその製造方法によると、NO吸蔵材とゼオライトとの相互作用によるNO吸蔵性能及びHC吸着性能の低下を防止でき、さらに、酸化触媒層とLNT層との境界に生じる段差を小さくできるので、排ガスの拡散が不十分となって触媒性能が十分に発揮できなかったり、背圧の上昇が生じてエンジン出力が低下したり、また、酸化触媒層又はLNT層の剥離が生じ易くなることを防止できる。
本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向上流側を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の触媒層構成を示す断面図である。 HC浄化性能の評価試験における触媒から流出するガスのトータルHC濃度及び触媒入口温度の変化を示すグラフ図である。 本発明の実施例及び比較例のHC浄化率を示すグラフ図である。 本発明の実施例及び比較例のNO吸蔵量を示すグラフ図である。 本発明の課題を説明するための図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものでない。
まず、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の構成について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向上流側を示す断面図であり、図2は該排気ガス浄化用触媒の触媒層構成を示す断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒は、不図示のディーゼルエンジンから排出される排気ガス浄化用触媒であり、ハニカム担体のセル壁1の上における排ガス流れ方向の上流側に酸化触媒層であるDOC層2が形成され、その下流側にリーンNOトラップ触媒層であるLNT層3が形成されてなる。(図1ではLNT層3がDOC層2の後方に隠れている。)。また、それらの内側の空間が排気ガス通路4となっている。ハニカム担体は、そのセル断面形状が六角形である六角セルハニカム構造となっている。図1では、図の簡略化のため、1つのセルにのみ上記触媒層を描いているが、全てのセルに上記触媒層が形成されている。
DOC層2は、ゼオライト、活性アルミナ及びCe含有酸化物の混合物にPt及びPd等の触媒金属が担持されてなり、NOx吸蔵材となるアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有しない。一方、LNT層3は、活性アルミナ及びCe含有酸化物に前記NOx吸蔵材並びに触媒金属としてPt及びRh等が担持されてなり、ゼオライトを含有しない。ここで、DOC層2のゼオライトの平均粒径は、LNT層3の活性アルミナ及びCe含有酸化物からなるLNT用サポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下にされている。なお、図2では、DOC層2及びLNT層3はハニカム担体の排ガス流れ方向の中間位置を境界として、上流側にDOC層2が形成され、下流側にLNT層3が形成されており、すなわち、互いに担体の排ガス流れ方向長さの1/2の長さで構成されているがこれに限られず、所望の触媒性能に従って適宜調整することができる。
次に、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。
まず、担体のセル壁の上に形成するDOC層2の材料となるDOC粉末の調製について説明する。DOC粉末の調製としては、まず、ゼオライト、活性アルミナ及びCe含有酸化物を混合し、その混合物にPt及びPd等の触媒金属を蒸発乾固法により担持する。具体的に、ゼオライト、活性アルミナ及びCe含有酸化物の混合物に水を加え、撹拌してスラリー状にする。このスラリーを撹拌しながら、これに触媒金属の硝酸塩水溶液を滴下する。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。得られた乾固物を大気中で焼成し、粉砕することにより、DOC粉末が得られる。ここで、DOC粉末の粉砕は、ゼオライトの平均粒径が後に調製するLNT用サポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下になるまで行う。ゼオライトの粉砕は、後に形成されるDOC層とLNT層との間に大きな段差が生じない程度にまで粉砕することが好ましく、例えば、ゼオライトの平均粒径(D50)を0.5μm以上4.8μm以下程度にまで粉砕することが好ましい。
上記のように調製したDOC粉末を用いて、ハニカム担体のセル壁1の上における排ガス流れ方向の上流側にDOC層2を形成する。そのために、まず、得られたDOC粉末をバインダー及び水と混合し、さらにスラリー粘度調整用の硝酸水溶液を添加して撹拌することにより、スラリー状にする。このスラリーをハニカム担体のセル壁1の上における排ガス流れ方向の上流側の1/2の領域にコーティングし、乾燥し、その後に焼成する。これにより、担体のセル壁の上における排ガス流れ方向の上流側の1/2の領域にDOC層2が形成される。
次に、担体のセル壁の上における排ガス流れ方向の下流側にLNT用サポート材を形成する。LNT用サポート材の形成のために、まず、活性アルミナとCe含有酸化物とを混合する。この混合物にバインダーと水とを加え、撹拌してスラリー状にする。このスラリーをハニカム担体のセル壁1の上における排ガス流れ方向の下流側の1/2の領域(DOC層2が形成されていない領域)にコーティングし、乾燥し、その後に焼成する。これにより、担体のセル壁の上における排ガス流れ方向の下流側の1/2の領域にLNT用サポート材が形成される。なお、LNT用サポート材の平均粒径(D50)は、上記ゼオライトの平均粒径よりも大きくなるように調整されていることが好ましい。特に、ゼオライトの平均粒径が、LNT用サポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下となるように調整することが好ましい。このようにすると、DOC層2と後に形成するLNT層3との境界に生じる段差を小さくでき、さらに、DOC層が過剰に緻密になることを防止できる。このため、排ガスの拡散をより良好にでき、背圧の上昇を防止できる。
次に、Pt及びRh等の触媒金属とアルカリ土類金属からなるNO吸蔵材との混合溶液を、上記LNT用サポート材が形成された担体の排ガス流れ方向の下流側の1/2の領域に含浸させる。その後、上記混合溶液が含浸されたハニカム担体を乾燥し、焼成する。これにより、LNT用サポート材に触媒金属及びNO吸蔵材が含浸担持されたLNT層3が形成される。なお、このとき、NO吸蔵材には、アルカリ土類金属の酢酸塩又は硝酸塩の水溶液を用いる。上記製造方法において、乾燥は、例えば大気雰囲気において100℃〜250℃程度の温度に所定時間保持することによって行うことができる。また、焼成は、例えば大気雰囲気において400℃〜600℃程度の温度に数時間保持することによって行うことができる。また、本実施形態では、DOC層2とLNT層3とをそれぞれハニカム担体の排ガス流れ方向において1/2ずつ形成したがこれに限られず、所望の触媒性能に従って適宜調整することができる。
上記のような排気ガス浄化用触媒の製造方法によると、ゼオライトとNO吸蔵材とは、DOC層とLNT層とに分離してそれぞれ担体の排ガス流れ方向上流側と下流側とに設け、混合されていないため、NO吸蔵材とゼオライトとの相互作用によるNO吸蔵性能及びHC吸着性能の低下を防止できる。さらに、ゼオライトの平均粒径をLNT用サポート材の平均粒径よりも小さくなるように粒度調整するため、DOC層とLNT層との境界に生じる段差を小さくできる。このため、排ガスの拡散が不十分となったり、背圧の上昇が生じたり、また、DOC層又はLNT層の剥離が生じ易くなることを防止できる。
以下に、本発明に係る排気ガス浄化用触媒を詳細に説明するための実施例を示す。本実施例では、セル壁の厚さが4.5mil(1.143×10−1mm)であり、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数が400のコージェライト製六角セルハニカム担体(直径24.5mm、長さ50mm)を用いて、上記排気ガス浄化用触媒の製造方法により排気ガス浄化用触媒を調製した。その触媒に対して、HC浄化性能及びNO吸蔵性能を評価した。
以下に、実施例1〜5及び比較例1に係る排気ガス浄化用触媒の構成について説明する。実施例1〜5において、DOC層の触媒成分の担持量は、100g/Lのゼオライト、60g/Lの活性アルミナ、40g/LのCe含有酸化物、1.6g/LのPt、0.8g/LのPdである。また、LNT層の触媒成分の担持量は、50g/Lの活性アルミナ、50g/LのCe含有酸化物、4.3g/LのPt、0.5g/LのRh、NO吸蔵材として30g/LのBa及び10g/LのSrである。ここで、Ce含有酸化物としては、Ce−Pr複合酸化物(質量比で、CeO:Pr11=90:10)を用い、ゼオライトとしては、β−ゼオライトを用いた。実施例1〜5では、ハニカム担体の排ガス流れ方向の上流側1/2の領域にDOC層を形成し、下流側1/2の領域にLNT層を形成した。
実施例1〜5において、各触媒粉末の調製における焼成、触媒粉末のコーティング後の焼成、及び触媒金属及びNO吸蔵材の含浸後の焼成は、いずれも大気中で行い、いずれも焼成温度を500℃、焼成時間を2時間とした。
実施例1〜5は、それぞれDOC層のゼオライトの粒度調整を行っており、それぞれゼオライトの平均粒径(D50)が異なる。それらの平均粒径を表1に示す。
Figure 0005949662
一方、比較例1は、上記各実施例と比較して、DOC層とLNT層とが、ハニカム担体上において排ガス流れ方向の上流側と下流側とに分けて形成されているのでなく、それらが層状に形成され、すなわちDOC層の上にLNT層が形成されている。具体的に、比較例1の触媒において、DOC層を上記各実施例と同様の方法で調製し、その構成成分の担持量は、上記各実施例と同様に100g/Lのゼオライト、60g/Lの活性アルミナ、40g/LのCe含有酸化物、1.6g/LのPt、0.8g/LのPdとした。但し、各実施例と異なり、粒度調整は行っておらず、DOC層をハニカム担体のセル壁上の上流側の1/2の領域でなく全面に設けた。また、上記各実施例と同様に50g/Lの活性アルミナ及び50g/LのCe含有酸化物によりLNT用サポート材を調製し、それをDOC層の上にコーティングした。その後、上記方法により、4.3g/LのPt、0.5g/LのRh、30g/LのBa及び10g/LのSrを含浸担持させた。但し、含浸はハニカム担体の下流側1/2の領域だけでなく、全体を含浸させた。これにより、比較例1の触媒であるDOC層とLNT層との2層構造の触媒を作製した。
これらの実施例1〜5及び比較例1の触媒に対して行ったHC浄化性能の測定試験及びNO吸蔵量の測定試験とそれらの結果とについて、以下に説明する。
HC浄化性能の測定試験において、まず、実施例1〜5及び比較例1の各ハニカム触媒に対して、Oが2%、HOが10%、残部がNのガス雰囲気において750℃の温度に24時間保持するエージング処理を行った。そのハニカム触媒をモデルガス流通反応装置に取り付け、ハニカム触媒にNガスを流通させた状態で触媒入口ガス温度を100℃に保持し、次いでHC浄化性能評価用のモデルガスを導入した。
モデルガス組成は、n−オクタンが600ppmC、エチレンが150ppmC、プロピレンが50ppmC、COが1500ppm、NOが30ppm、Oが10%、HOが10%、残部がNであり、空間速度は72000/hである。
モデルガス導入開始後、2分を経過した時点から触媒入口ガス温度を上昇させていき、ハニカム触媒から流出するガスのトータルのHC濃度(THC)を測定した。その結果の一例を図3に示す。
モデルガスの導入開始から暫くは触媒温度が低いため、モデルガス中のHCがゼオライトに吸着される。そのため、流出ガスのTHCは、モデルガスのTHCである800ppmCよりも低い。そうして、触媒温度の上昇に伴ってゼオライトによるHCの吸着量が漸減する。触媒入口ガス温度が200℃近くになると、ゼオライトへのHCの吸着量よりHCの脱離量が多くなり、THCが急増して800ppmCよりも高くなる。触媒温度が上昇していくと、触媒が活性を呈するようになり、脱離するHCのDOC層による浄化が始まる。このため、THCが急減して800ppmCよりも低くなる。
そうして、上記実施例1〜5及び比較例1の各ハニカム触媒の、モデルガス導入開始から当該ガス温度が300℃になるまでのHC浄化率を求めた。HC浄化率は、図3に示すHCの吸着に伴うTHC低減量(A)とHCの浄化に伴うTHC低減量(B)との和から、HC脱離量(C)を差し引いて計算した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例1〜5及び比較例1の触媒のHC浄化率をみると、DOC層のゼオライトの平均粒径をLNT層のLNT用サポート材の平均粒径よりも小さくし、DOC層とLNT層とをハニカム担体の排ガス流れ方向の上流側と下流側とに分けて配設することにより、2層構造の比較例1と比較して、HC浄化率が高くなることがわかる。また、実施例1〜5を互いに比較すると、LNT用サポート材の平均粒径6.23μmに対して、ゼオライトの平均粒径が2.51μmである実施例3が最もHC浄化率が高く、ゼオライトの平均粒径がそれよりも大きくなる、又は小さくなるにつれてHC浄化率が低下する傾向が見られる。
一方、NO吸蔵性能の測定試験においては、実施例1〜5及び比較例1の各ハニカム触媒に対して、上記HC浄化率測定の場合と同じエージング処理を行った後、ハニカム触媒をモデルガス流通反応装置に取り付けた。ハニカム触媒に空燃比リッチのモデルガスを流通させた状態で触媒入口ガス温度を200℃に保持し、該温度を保った状態で空燃比リーンのモデルガスに切り替え、このモデルガスの切替えから180秒間のNO吸蔵量を測定した。また、触媒入口ガス温度を250℃として、同様に空燃比リッチのモデルガスから空燃比リーンのモデルガスに切り替えてから180秒間のNO吸蔵量を測定した。
リッチモデルガスの組成は、NOが220ppm、HCが3400ppmC、COが1.0%、Oが0.5%、COが6%、HOが10%、残部がNである。リーンモデルガスの組成は、NOが220ppm、HCが400ppmC、COが0.15%、Oが10%、COが6%、HOが10%、残部がNである。NO吸蔵性能の測定試験の結果を図5に示す。
図5に示すように、実施例1〜5及び比較例1の触媒のNO吸蔵量をみると、DOC層のゼオライトの平均粒径をLNT層のLNT用サポート材の平均粒径よりも小さくし、DOC層とLNT層とをハニカム担体の排ガス流れ方向の上流側と下流側とに分けて配設することにより、2層構造の比較例1と比較して、NO吸蔵量が高くなることがわかる。また、実施例1〜5を互いに比較すると、上記のHC浄化率と同様に、ゼオライトの平均粒径が2.51μmである実施例3が最もNO吸蔵量が高く、ゼオライトの平均粒径がそれよりも大きくなる、又は小さくなるにつれてNO吸蔵量が低下する傾向が見られる。
以上の通り、図4のHC浄化率及び図5のNO吸蔵量の結果から、実施例1〜5の触媒のように、DOC層のゼオライトの平均粒径をLNT層のLNT用サポート材の平均粒径よりも小さくし、DOC層とLNT層とを担体上における排気ガス流れ方向の上流側と下流側とに分けて設けることで、HC浄化性能及びNO吸蔵性能を向上できることが示唆された。これは、DOC層とLNT層との接触面積が小さくなり、DOC層に混入するNO吸蔵材の量が低減され、そのDOC層の触媒性能が低下することが抑制され、また、ゼオライトの粒度調整により、DOC層とLNT層との間の段差が小さくなり、排ガスの拡散性が向上したことによると考えられる。
また、特に、実施例3の触媒が最もHC浄化性能及びNO吸蔵性能が高く、これは、LNT用サポート材の平均粒径6.23μmに対して、ゼオライトの平均粒径を2.51μmにすることで、DOC層とLNT層との厚さがほぼ同等となり、また、DOC層が過剰に緻密になっていないため、排ガスの拡散性が向上したためであると考えられる。
なお、上記実施例においては、ゼオライトとしてβ−ゼオライトを用いたが、これに限らずZSM−5を初めとするアルミノシリケート化合物等も用いることが可能である。
以上の通り、本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法を用いると、高い酸化触媒性能及びNO吸蔵性能の両方を有する触媒を得ることができる。
1 担体(セル壁)
2 DOC(酸化触媒)層
3 LNT(リーンNOトラップ)層
4 排気ガス通路

Claims (6)

  1. アルカリ金属又はアルカリ土類金属よりなるNOx吸蔵材とゼオライトとを含む排気ガス浄化用触媒であって、
    担体上における排ガス流れ方向上流側に、ゼオライト、アルミナ、Ce含有酸化物及び触媒金属を含み、前記NOx吸蔵材を含まない酸化触媒層が形成され、
    前記担体上における排ガス流れ方向下流側に、前記NOx吸蔵材、アルミナ、Ce含有酸化物及び触媒金属を含み、ゼオライトを含まないLNT層が形成され、
    前記酸化触媒層のゼオライトの平均粒径は、前記LNT層のアルミナ及びCe含有酸化物の混合物の平均粒径の1/10以上4/5以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
  2. 前記酸化触媒層のゼオライトの平均粒径は、0.5μm以上4.8μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
  3. 前記担体は、セル断面形状が六角形である六角セルハニカム構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排気ガス浄化用触媒。
  4. アルカリ金属又はアルカリ土類金属よりなるNOx吸蔵材とゼオライトとを含む排気ガス浄化用触媒の製造方法であって、
    担体上における排ガス流れ方向上流側に、ゼオライト、アルミナ、Ce含有酸化物及び触媒金属を含み、前記NOx吸蔵材を含まない酸化触媒層を形成する工程と、
    前記担体上における排ガス流れ方向下流側に、アルミナ及びCe含有酸化物を含み、ゼオライトを含まないLNT用サポート材を形成する工程と、
    前記LNT用サポート材に前記NOx吸蔵材及び触媒金属を含浸担持することによりLNT層を形成する工程とを備え、
    前記酸化触媒層を形成する工程の前に、前記ゼオライトの平均粒径を前記LNT用サポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下であるように粒度調整することを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
  5. 前記ゼオライトの平均粒径を0.5μm以上4.8μm以下で且つ前記LNT用サポート材の平均粒径の1/10以上4/5以下にすることを特徴とする請求項4に記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
  6. 前記担体として、セル断面形状が六角形である六角セルハニカム構造の担体を用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
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