JP5947221B2 - 情報記録媒体用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法に関し、特に、情報記録媒体の製造に用いられる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法に関する。
磁気ディスクなどの情報記録媒体は、コンピュータなどにハードディスクとして搭載される。情報記録媒体は、基板の表面上に、磁気、光、または光磁気などの性質を利用した記録層を含む磁気薄膜層が形成されて製造される。記録層が磁気ヘッドによって磁化されることによって、所定の情報が情報記録媒体に記録される。
情報記録媒体用の基板としては、従来アルミニウム基板が用いられてきたが、記録密度の向上に伴い、アルミニウム基板に比較して基板表面の平滑性および強度に優れるガラス基板に徐々に置き換わりつつある。このガラス基板には、一般に強度を向上させるため、化学強化されたガラス基板や、結晶化によって基板強度を上げた結晶化ガラス基板が用いられている。
ハードディスクドライブ装置においては、基板の表面に異物などの突起欠陥が存在すると、その突起欠陥がヘッドと接触してヘッドまたは基板が破壊される、いわゆるヘッドクラッシュとよばれる不良が起こるという問題がある。そのため、基板表面上の異物は、たとえ微小であっても問題になる場合が多い。近年、磁気ヘッドと磁気ディスクとの間の距離(フライングハイト、約10nm)が小さくなってきており、これにつれて、磁気ディスクとして形成したときの基板表面の異物の許容される大きさも、より小さくなってきている。
ガラス基板の端面の表面状態が平滑でないことが、基板表面に異物が存在する原因と考えられている。つまり、端面が平滑でない場合、基板搬送用の樹脂製ケースの壁面に端面が擦過し、これにより樹脂またはガラスの粒子が発生する。この発生した粒子、またはその他の微小粒子が、平滑でない基板の端面に捕捉され、基板の回転時に表面に付着することが、基板表面の異物の大きな要因となっている。そのため従来、基板の端面を平滑にするための研磨に関する種々の技術が提案されている(たとえば、特開2000−185927号公報(特許文献1)および特開2004−342307号公報(特許文献2)参照)。
特開2000−185927号公報 特開2004−342307号公報
近年、磁気ヘッドの機構として、DFH(Dynamic Flying Height)という新しい機構が導入されつつある。DFHとは、ヘッドの装着される箇所に特殊な金属を用い、ヘッドを熱膨張させて微細な距離で突起させる技術である。この技術を用いることで、圧力または温度の変動などの外的要因によらずディスクとヘッドとの距離を一定に保つことが可能となる。そのためDFHは、高密度記録方式への採用が広がっている。
DFHを採用した場合、フライングハイトは2nm未満にまで小さくなり、この場合、より小さい基板表面上の異物がヘッドクラッシュの発生の原因となる。このように基板表面の付着物の問題が顕著化されてきたことにより、基板の端面を平滑にすることが、一層重要視されている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、情報記録媒体に用いられるガラス基板の端面の表面状態を高いレベルで平滑にできる、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を提供することである。
本発明に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、円形ディスク形状のガラス基板の表面に磁気記録層が形成される情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、ガラス基板を成形する工程と、ガラス基板の端面に、遊離砥粒を含有した研磨液を供給するとともに、研磨ブラシを回転させながら接触させて、端面を研磨する工程と、を備える。研磨ブラシは、回転軸と、回転軸の外表面に放射状に取り付けられ軸方向に延在する複数の羽部と、を有する。研磨ブラシの、回転軸の周方向において隣接する羽部の間に、隙間が形成されている。
上記方法において、端面は、ガラス基板の外周端面であってもよい。または、ガラス基板の中心に円孔が形成されており、端面は、ガラス基板の内周端面であってもよい。
上記方法において、研磨する工程では、複数枚積み重ねられたガラス基板の端面を研磨してもよい。
上記方法において、研磨液は、ガラス基板の上方から端面に供給されてもよい。上方から供給された研磨液は、隙間を経由して下方へ流れてもよい。または、ガラス基板は、研磨液に浸漬されていてもよい。
上記方法において、遊離砥粒は、0.5μm以上2.0μm以下の平均粒径を有してもよい。
上記方法において、研磨ブラシは、回転軸の軸方向に往復運動するものであってもよい。
本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によると、ガラス基板の端面の表面状態を高いレベルで平滑にすることができる。
実施の形態におけるガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板を示す斜視図である。 実施の形態におけるガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板を備えた磁気ディスクを示す斜視図である。 実施の形態におけるガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。 本実施の形態に係る研磨装置を示す断面図である。 回転ブラシの構成を示す平面図である。 図5に示す回転ブラシの側面図である。 ガラス基板の外周端面を研磨する構造の概略を示す模式図である。 ガラス基板の端面の研磨時の、端面付近を拡大して示す模式図である。 実施の形態2の回転ブラシの構成を示す平面図である。 図9に示す回転ブラシの側面図である。 実施の形態3の研磨装置を示す断面図である。 従来の回転ブラシの構成を示す平面図である。 図12に示す従来の回転ブラシの側面図である。 従来のガラス基板の端面の研磨時の、端面付近を拡大して示す模式図である。 従来の回転ブラシが下方向に移動するときのブラシ毛の端面との接触を示す模式図である。 従来の回転ブラシが上方向に移動するときのブラシ毛の端面との接触を示す模式図である。
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
(実施の形態1)
[ガラス基板1・磁気ディスク10]
図1および図2を参照して、まず、本実施の形態に基づく情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られるガラス基板1、およびガラス基板1を備えた磁気ディスク10について説明する。図1は、磁気ディスク10(図2参照)に用いられるガラス基板1を示す斜視図である。図2は、情報記録媒体として、ガラス基板1を備えた磁気ディスク10を示す斜視図である。
図1に示すように、磁気ディスク10に用いられるガラス基板1(情報記録媒体用ガラス基板)は、中心に円孔1Hが形成された環状の円板形状を呈している。円形ディスク形状のガラス基板1は、表主表面1A、裏主表面1B、内周端面1C、および外周端面1Dを有している。
ガラス基板1の大きさは、特に制限はなく、たとえば外径0.8インチ、1.0インチ、1.8インチ、2.5インチ、または3.5インチなどである。ガラス基板1の厚さは、破損防止の観点から、たとえば0.30〜2.2mmである。本実施の形態におけるガラス基板1の大きさは、外径が約64mm、内径が約20mm、厚さが約0.8mmである。ガラス基板1の厚さとは、ガラス基板1上の点対象となる任意の複数の点で測定した値の平均によって算出される値である。
図2に示すように、磁気ディスク10は、上記したガラス基板1の表主表面1A上に磁性膜が成膜されて、磁気記録層を含む磁気薄膜層2が形成されることによって、構成される。図2中では、表主表面1A上にのみ磁気薄膜層2が形成されているが、裏主表面1B上にも磁気薄膜層2が形成されていてもよい。
磁気薄膜層2は、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂をガラス基板1の表主表面1A上にスピンコートすることによって形成される(スピンコート法)。磁気薄膜層2は、ガラス基板1の表主表面1Aに対してスパッタリング法、または無電解めっき法などにより形成されてもよい。
ガラス基板1の表主表面1Aに形成される磁気薄膜層2の膜厚は、スピンコート法の場合は約0.3μm〜1.2μm、スパッタリング法の場合は約0.04μm〜0.08μm、無電解めっき法の場合は約0.05μm〜0.1μmである。薄膜化および高密度化の観点からは、磁気薄膜層2はスパッタリング法または無電解めっき法によって形成されるとよい。
磁気薄膜層2に用いる磁性材料としては、特に限定はなく従来公知のものが使用できるが、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金などが好適である。また、熱アシスト記録用に好適な磁性層材料として、FePt系の材料が用いられてもよい。
また、磁気記録ヘッドの滑りをよくするために磁気薄膜層2の表面に潤滑剤を薄くコーティングしてもよい。潤滑剤としては、たとえば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
さらに、必要により下地層や保護層を設けてもよい。磁気ディスク10における下地層は磁性膜に応じて選択される。下地層の材料としては、たとえば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、またはNiなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。
また、下地層は単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造としても構わない。たとえば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrVなどの多層下地層としてもよい。
磁気薄膜層2の摩耗や腐食を防止する保護層としては、たとえば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層などが挙げられる。これらの保護層は、下地層、磁性膜などと共にインライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一または異種の層からなる多層構成としてもよい。
上記保護層上に、あるいは上記保護層に替えて、他の保護層を形成してもよい。たとえば、上記保護層に替えて、Cr層の上にテトラアルコキシシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO)層を形成してもよい。
[ガラス基板の製造方法]
次に、図3に示すフローチャート図を用いて、本実施の形態におけるガラス基板(情報記録媒体用ガラス基板)の製造方法について説明する。図3は、実施の形態におけるガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。
本実施の形態におけるガラス基板の製造方法は、成形工程(ステップS10)、第一ラッピング工程(ステップS20)、形状加工工程(ステップS30)、内周研磨工程(ステップS40)、第二ラッピング工程(ステップS50)、外周研磨工程(ステップS60)、第一主表面研磨工程(ステップS70)、第二主表面研磨工程(ステップS80)、および化学強化工程(ステップS90)を経ることによって得られたガラス基板(図1におけるガラス基板1に相当)に対して、磁性膜形成工程(ステップS100)が実施されてもよい。磁性膜形成工程(ステップS100)によって、磁気ディスク10が得られる。
以下、これらの各ステップS10〜S100について順に説明する。以下には、各ステップS10〜S100間に適宜行なわれる簡易的な洗浄については記載していない。
(成形工程)
成形工程(ステップS10)においては、ガラス基板を構成するガラス素材が溶融される。ガラス素材は、たとえば一般的なアルミノシリケートガラスが用いられる。アルミノシリケートガラスは、58質量%〜75質量%のSiOと、5質量%〜23質量%のAlと、3質量%〜10質量%のLiOと、4質量%〜13質量%のNaOと、を主成分として含有する。溶融したガラス素材は、下型上に流し込まれた後、上型および下型によってプレス成型される。プレス成型によって、円盤状のガラスブランク材(ガラス母材)が成形される。
ガラスブランク材は、ダウンドロー法またはフロート法によって形成されたシートガラス(板ガラス)を、研削砥石で切り出すことによって形成されてもよい。またガラス素材も、アルミノシリケートガラスに限られるものではなく、任意の素材であってもよい。
(第一ラッピング工程)
次に、第一ラッピング工程(ステップS20)においては、プレス成型されたガラスブランク材の両方の主表面に対して、寸法精度および形状精度の向上を目的として、ラップ研磨処理が施される。ガラスブランク材の両方の主表面とは、後述する各処理を経ることによって、図1における表主表面1Aとなる主表面および裏主表面1Bとなる主表面のことである(以下、両主表面ともいう)。
ラップ研磨処理は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置を用いて行なわれる。具体的にはガラスブランク材の両主表面に上下からラップ定盤を押圧させ、研削液を両主表面上に供給し、ガラスブランク材とラップ定盤とを相対的に移動させて、ラップ研磨処理が行なわれる。ラップ研磨処理によって、ガラス基板としてのおおよその平行度、平坦度および厚みなどが予備調整され、おおよそ平坦な主表面を有するガラス母材が得られる。たとえば、粒度#400のアルミナ砥粒(粒径約40〜60μm)を含有する研削液を用い、上定盤の荷重を100kg程度に設定することによって、ガラス基板の両面を面精度0μm〜1μm、表面粗さRmaxで6μm程度に仕上げてもよい。
(形状加工工程)
次に、形状加工工程(ステップS30)においては、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、ガラスブランク材の中心部に対してコアリング(内周カット)処理が施される。コアリング処理によって、中心部に孔の開いた円環状のガラス基板が得られる。その後、中心部の孔に対向する内周端面、および、外周端面を、ダイヤモンド砥石によって研削し、外径を65mm、内径(中心部の円孔1Hの直径)を20mmとした後、所定の面取り加工が実施される。このときのガラス基板の端面の面粗さは、Rmaxで2μm程度である。なお、一般的に、2.5インチ型のハードディスクには、外径が65mmのガラス基板が用いられる。
(内周研磨工程)
次に、内周研磨工程(ステップS40)においては、ガラス基板1の内周端面1Cについて、ブラシ研磨による鏡面研磨が行なわれる。図4は、本実施の形態に係る研磨装置を示す断面図である。
図4に示す研磨装置は、研磨対象であるガラス基板1を多数収納する基板ケース20と、基板ケース20を回動自在に固定保持する回転保持台3と、複数枚積み重ねられたガラス基板1の円孔部分(内周穴部)に挿入された回転ブラシ4と、研磨液を供給する研磨液供給部5とを備える。
基板ケース20は、軸方向上部からカラー21を介して締め付けカバー22を締め込むことで、各ガラス基板1の主表面間の摩擦係数により、基板ケース20や回転ブラシ4の回転に影響されることなくガラス基板1を保持する機構を有する。
回転保持台3は、回転軸部31の回転軸32に結合され、その回転軸32を回転駆動する回転駆動装置34によって正逆の双方向に回転できるようになっている。なお、この回転駆動装置34はその回転数を可変できるようになっており、研磨目的に応じた適切な回転数を選定できるようになっている。また、回転軸部31における回転軸カバー33に設けられたエアー供給口35からエアー供給路36を通じてエアーを供給することにより、エアーシール部37あるいはエアーカーテンなどを形成して、研磨液が回転軸32に流入するのを防ぐ。
回転ブラシ4は、回転駆動装置41の回転軸42に接続されており、正逆の双方向に回転可能に構成されている。回転ブラシ4は、初期状態においては回転ブラシ4の回転中心の位置が、基板ケース20の回転中心と一致するように設定されている。また、回転ブラシ4は、ブラシ毛49のガラス基板1への接触長さを加減するため、エアシリンダなどを利用した機構(図示せず)によって、ガラス基板1の内周端面への押しつけ、つまりブラシの回転軸方向に対し垂直方向への押しつけ量が調整可能に構成されている。なお、回転ブラシ4は固定で、基板ケース20を移動させて押しつけ量を調整することもできる。回転ブラシ4は、カム機構(図示せず)によって、上記内周端面への押しつけと同時にブラシの回転軸方向に沿って往復しつつ揺動運動ができるように構成されている。
なお、回転ブラシ4は、図4に示すように、少なくとも回転駆動装置側の回転軸44とは反対側の回転軸45に回転軸を固定する軸受46を設け、この軸受に回転軸を挿入することにより、端面の研磨時においても回転軸がずれることがなく研磨することができ、表面粗さ、サイズにばらつきがない高精度な研磨を行うことができるので好ましい。軸受としては、べアリング、ボ−ル軸受、ころ軸受、すべり軸受など公知の軸受を使用することができる。なお、軸受は、回転ブラシを挿入する際のガイド部材としての役割も果たす。この場合、軸受の入口の内径を広くすることができ、これにより回転ブラシの回転軸を軸受に挿入し易くなるので好ましい。また、軸受は、複数設けることができ、回転駆動装置側の回転軸にも設けることができる。
以下、回転ブラシ4の詳細について説明する。図5は、回転ブラシ4の構成を示す平面図である。図6は、図5に示す回転ブラシ4の側面図である。研磨ブラシとしての回転ブラシ4は、図5および図6に示すように、回転軸40と、回転軸40の外表面に取り付けられた羽部43と、を有する。回転軸40は円筒状に形成されており、当該円筒の外周面である回転軸40の外表面から羽部43が放射状に延在している。羽部43は、回転軸40の径方向に沿って延在している。また羽部43は、回転軸40の軸方向に延在している。回転軸40の周方向において隣接する羽部43の間には、隙間47が形成されている。羽部43は、回転方向に不連続に設けられている。
羽部43は、回転軸40の周方向に、複数設けられている。複数の羽部43は、図5に示すように、回転軸40の中心に対し点対称に配置されている。複数の羽部43が点対称に配置されることにより、後述するように回転ブラシ4が回転運動するときに、偏心が発生することが抑制されている。つまり、回転ブラシ4の回転運動中に、回転運動の中心がずれることを抑制できる。本実施の形態では、図5に示すように、4枚の羽部43が設けられており、羽部43の各々は、回転軸40の周方向に隣接する他の羽部43と90°の角度を形成するように配置されている。羽部43の枚数は4枚に限られるものではなく、任意の数の羽部43が設けられてもよい。
羽部43は、回転軸40の外周面に対して垂直に、かつ、回転軸40の軸方向に沿って連続的に密集して、後述するブラシ毛49が回転軸40の外周面に植毛されることにより、形成される。ブラシ毛49は、回転軸40の径方向に沿って延びるように、回転軸40の外周面に取り付けられる。このブラシ毛49の各々は、直線状に延びる形状でもよく、蛇行形にカールさせた形状を有してもよい。ブラシ毛49は、根元から先端まで一定の太さに形成されてもよいが、これに限るものではなく、先端先細り形状、先端先太り形状、または、先端もしくは根元を任意に変形させた形状など、任意の形状に形成されてもよい。カールさせ、かつ先端先細りした繊維は、窪みなどに対する接触性がよく、例えば、図4に示すガラス基板1の円孔1Hの面取り部をより効率よく研磨することが可能になるが、面取り部の研磨の効率をそれ程考慮しなければカールのない直線状の繊維を利用してもよい。
ブラシ毛49の形成材料は、たとえばナイロン繊維、塩化ビニル繊維、豚毛、ピアノ線、ステンレス製繊維などを用いてもよい。硬度が低い繊維、あるいは柔軟性の高い繊維を利用すれば、ブラシ毛の弾性変形によって擦る力が過大になることを防止でき、スクラッチなどの傷の発生をより良好に防止できる。なお、ブラシ毛49として、樹脂に研磨剤を混入しこれを成形してブラシ毛に研磨剤を含有したものを用いれば、研磨速度をさらに高めることができる。
ブラシ毛49の寸法は、直径0.1mm以上0.4mm以下、長さ4mm以上7mm以下であってもよい。
図4に戻って、研磨液供給部5は、ガラス基板1の円孔1Hに、遊離砥粒を含有した研磨液50をガラス基板1の上方から供給する。遊離砥粒としては、酸化セリウムが使用されているが、他にも酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガンなどの研磨剤を用いることもできる。好ましくは、被研磨物の材料(ガラス基板1)に近い硬さの遊離砥粒が望ましく、ガラス基板の場合、酸化セリウムが望ましい。遊離砥粒が硬すぎるとガラス基板端面に傷を与えることになってしまい好ましくない。また、遊離砥粒が軟らかすぎるとガラス基板端面を鏡面にすることができなくなるので好ましくない。
遊離砥粒の平均粒径としては、鏡面に仕上げるため0.5μm以上2.0μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5μm以上1.0μm以下である。粒径が0.5μm未満の場合、遊離砥粒がガラス基板を研削する力が弱く、回転ブラシの先端が直接ガラス基板端面に接触した状態で研磨されることが多くなるので、ガラス基板の面取り形状を制御することが難しく、端面(側壁面)と面取り部の間の箇所が、だれてしまうので好ましくない。また、粒径が2.0μmを超える場合、遊離砥粒の粒径が大きく、ガラス基板の表面粗さが大きくなるので好ましくない。
研磨液供給部5による研磨液50の供給の態様は特に制限されず、例えば、1本の水流、シャワー、水滴などによって、吹き掛け、吹き付け、放水、塗布する態様などが挙げられる。また本発明の研磨装置には、研磨液供給部5から供給した研磨液50を装置外部へ流通させる研磨液流通口23が形成されている。研磨液流通口23を経由して装置外部へ流出した研磨液50は、図示しない研磨液回収部により回収される。研磨液回収部で回収された研磨液50は、図示しない循環機構によって、清浄にされた後に再び研磨液供給部5へと循環される。
次に、上記研磨装置を用いた研磨方法の一例について説明する。まず、回転ブラシ4を基板ケース20の上から適当量退避させておき、基板ケース20に多数のガラス基板1を積層し、カラー21を上下に配置して締め付けカバー22を締め込むことによりクランプする。このとき、ガラス基板1の内周穴部の芯ずれは、基板ケース20の内周部とガラス基板1の外周部との寸法差によるクリアランスで決定される。このクリアランスについては、作業性、基板ケース内周部の真円度により調整が必要だが、JIS B 0401(1986)における、はめあいのすきまばめから中間ばめの範囲が適正である。
上記ガラス基板1を多数セットした基板ケース20を、回転保持台3にセットする。ここで、セットするガラス基板1は既に内外周の面取り加工などが済んだものである。
次いで、基板ケース20の回転中心と同一線上にある回転ブラシ4を図4のようにガラス基板1の内周部に挿入する。回転ブラシ4の停止位置は、セットされたガラス基板1の最下部から最上部までの範囲が回転ブラシ4のブラシ毛49の植毛範囲内に収まる位置とする。
続いて、研磨液供給部5からガラス基板1の内周端面1Cに向けて、500ml/min〜3000ml/minの流量の研磨液50を供給する。上方から回転ブラシ4に供給された研磨液50は、羽部43の間の隙間47を経由して下方へ流れ、回転ブラシ4の最下部にまで、すなわち、積み重ねられたガラス基板のうち下側のガラス基板にまで、速やかに到達する。
次に、回転ブラシ4のブラシ毛49がガラス基板1の内周端面に当接するように、回転ブラシ4の押し付け量を調整する。この調整は、ブラシ毛49がカールしたナイロン繊維の場合にあっては、ブラシ毛49の先端位置がガラス基板1の被研磨面に1〜5mm程度押しつけられた位置とする。なお、エアシリンダなどを利用した機構によって、ガラス基板1の内周端面への押しつけによるブラシの接触圧を調整することが好ましい。具体的には、例えば、強いブラシ毛ではエアシリンダの空気圧を0.05〜0.1MPaの範囲とすることが好ましく、弱いブラシ毛ではエアシリンダの空気圧を0.05〜1MPaの範囲とすることが好ましい。
次に、回転保持台3と回転ブラシ4とを互いに逆方向に回転させた状態で、研磨を行なう。この場合、好ましい回転ブラシ4の回転数は空転時で100〜15000rpmである。一定時間の回転ブラシ4の回転後に、回転保持台3と回転ブラシ4との回転方向を切り換え逆回転させてもよく、この回転方向の切り換えにより、回転軸40の径方向に対する羽部43の傾斜状態などの、回転ブラシ4のコンディションが整えられる。回転ブラシ4は、回転軸40の周方向への回転運動に加えて、回転軸40の軸方向に往復運動を行なう。ガラス基板1の内周端面1Cに回転ブラシ4を回転させながら接触させることにより、内周端面1Cを研磨する。
そして、所定量の研磨が終了したら、装置を止め、基板ケース20を取り出す。なお、この基板ケース20の取り外しの際は、回転ブラシ4を基板ケース20の脱着に干渉しない位置へ移動させておく必要がある。最後に、取り出した基板ケース20からガラス基板1をセットしたときと逆の順番で取り出す。
(第二ラッピング工程)
図3に戻って、次に、第二ラッピング工程(ステップS50)においては、ガラス基板の両主表面について、第一ラッピング工程(ステップS20)と同様に、ラップ研磨処理が施される。この第二ラッピング工程を行なうことにより、前工程のコアリングまたは端面加工においてガラス基板の両主表面に形成された微細なキズや突起物などの、微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後工程の主表面の研磨時間を短縮することができる。
(外周研磨工程)
次に、外周研磨工程(ステップS60)においては、ガラス基板の外周端面について、ブラシ研磨による鏡面研磨が行なわれる。図7は、ガラス基板1の外周端面を研磨する構造の概略を示す模式図である。
ガラス基板1の外周端面1Dの研磨のためには、図4〜6を参照して説明した回転ブラシ4が用いられる。外周端面の研磨用のブラシ毛49の寸法は、直径0.2mm以上0.6mm以下、長さ10mm以上25mm以下であってもよい。
複数枚積み重ねられた2組のガラス基板1を、一対の回転ブラシ4で挟み込み、その状態で、上述した遊離砥粒を含有した研磨液50をガラス基板の外周端面1Dに供給する。遊離砥粒としては、酸化セリウムが使用されている。遊離砥粒の平均粒径としては、鏡面に仕上げるため0.5μm以上2μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5μm以上1μm以下である。続いて、エアシリンダなどを利用した機構によって、回転ブラシ4のブラシ毛49がガラス基板1の外周端面に当接するように、回転ブラシ4の外周端面への押し付けによる回転ブラシ4の接触圧を調整する。続いて、図に示す矢印方向にガラス基板1と回転ブラシ4とを回転させ、ガラス基板1の外周端面1Dに回転ブラシ4を回転させながら接触させることにより、外周端面1Dを研磨する。
(第一主表面研磨工程)
図3に戻って、次に、ガラス基板の主表面研磨工程のうちの第一の工程である粗研磨工程として、第一主表面研磨工程(ステップS70)が行なわれる。第一主表面研磨工程は、前述のラッピング工程においてガラス基板の主表面に残留したキズを除去しつつ、ガラス基板の反りを矯正することを主目的とする。第一主表面研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により主表面の研磨が行なわれる。たとえば、硬質ベロア、ウレタン発泡、またはピッチ含浸スウェードなどの研磨パッドを用いて研磨が行なわれる。研磨剤としては、一般的な酸化セリウム砥粒が用いられる。
(第二主表面研磨工程)
次に、ガラス基板の主表面研磨工程のうちの第二の工程である精密研磨工程として、第二主表面研磨工程(ステップS80)が行なわれる。第二主表面研磨工程は、ガラス基板の主表面を被覆する際、またはガラス基板を分別する際などに、ガラス基板の主表面上に発生した微小欠陥などを解消して鏡面状に仕上げること、および、ガラス基板の反りを解消して所望の平坦度に仕上げることを目的とする。第二主表面研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により主表面の研磨が行なわれる。たとえば、スウェードまたはベロアを素材とする軟質ポリッシャである研磨パッドを用いて研磨が行なわれる。研磨剤としては、第一主表面研磨工程で用いた酸化セリウムよりも微細な、一般的なコロイダルシリカが用いられる。
(化学強化工程)
次に、化学強化工程(ステップS90)においては、上述した主表面研磨工程を終えたガラス基板に化学強化が施される。ガラス基板が洗浄された後、300℃に加熱された硝酸カリウム(70%)と硝酸ナトリウム(30%)との混合用液などの化学強化処理液中に、ガラス基板を30分間浸漬することによって、化学強化を行なう。
この処理の結果、ガラス基板の内周端面および外周端面に存在するアルカリ金属イオン(たとえば、アルミノシリケートガラス使用の場合、リチウムイオンおよびナトリウムイオン)が、化学強化処理液中に含まれる、これらのイオンに比べてイオン半径の大きいナトリウムイオンおよびカリウムイオンにそれぞれ置換される(イオン交換法)。イオン半径の違いによって生じる歪みにより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス基板の両主表面が強化される。たとえば、ガラス基板の両主表面において、ガラス基板表面から約5μmまでの範囲に化学強化層を形成し、ガラス基板の剛性を向上させてもよい。このようにして、図1に示すガラス基板1に相当するガラス基板が得られる。
(磁性膜形成工程)
最後に、磁性膜形成工程(ステップS100)においては、化学強化処理が完了したガラス基板を洗浄した後に、図1に示すガラス基板1に相当するガラス基板の両主表面(またはいずれか一方の主表面)に対し、磁性膜が形成されることにより、磁気薄膜層2が形成される。磁気薄膜層2は、Cr合金からなる密着層、CoFeZr合金からなる軟磁性層、Ruからなる配向制御下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、C系からなる保護層、およびF系からなる潤滑層が順次成膜されることによって形成される。磁気薄膜層の形成によって、図2に示す磁気ディスク10に相当する垂直磁気記録ディスクを得ることができる。
本実施の形態における磁気ディスクは、磁気薄膜層から構成される垂直磁気ディスクの一例である。磁気ディスクは、いわゆる面内磁気ディスクとして磁性層などから構成されてもよい。
[作用・効果]
図8は、ガラス基板1の端面の研磨時の、端面付近を拡大して示す模式図である。ガラス基板1の端面には、研削加工され形状が整えられた後に、所定の面取り加工が施される。そのため、ガラス基板1の端面(内周端面1Cと外周端面1Dとの両方)は、ガラス基板1の厚み方向に延びるストレート部11と、ガラス基板1の表主表面1Aとストレート部11との間に形成された面取り部12と、裏主表面1Bとストレート部11との間に形成された面取り部13と、を有する。
回転ブラシ4は、回転運動とともに、回転軸40の軸方向への往復運動を行なう。図8中の両矢印は、回転ブラシ4の往復運動の方向を示す。回転ブラシ4の回転軸40はガラス基板1の積層方向と平行に配置され、回転ブラシ4のブラシ毛49は、回転軸40の外表面に垂直に植毛されている。そのため、ブラシ毛49はガラス基板1の端面のストレート部11の延びる方向に対し傾斜せず垂直に延在し、複数のブラシ毛49の先端部49aはストレート部11の延びる方向に沿って揃えられて配置されている。
そのため、回転ブラシ4の往復移動の際に、各々のガラス基板1の端面へのブラシ毛49の接触状態が均一となり、端面の各箇所への研磨作用が均一となる。したがって、ガラス基板1の端面を高品質に研磨することができ、磁気ディスクなどの情報記録媒体用のガラス基板1の内周端面1Cおよび外周端面1Dの表面状態を、高いレベルで平滑にすることができる。その結果、情報記録媒体を形成したときの、異物の表面付着によるヘッドクラッシュ不良の発生を抑制できる、情報記録媒体を得ることができる。
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2の回転ブラシ4の構成を示す平面図である。実施の形態1の回転ブラシ4の羽部43は回転軸40の軸方向に沿って連続する一列状に形成されていたが、実施の形態2では、図9および図10に示すように、各々の羽部43は複数列のブラシ列43a,43b,43cを有する。各ブラシ列間には、隙間48が形成されている。複数のブラシ列43a,43b,43cおよび隙間48によって羽部43が形成され、回転軸40の周方向における羽部43間には隙間47が形成されている。
図10は、図9に示す回転ブラシ4の側面図である。図10に示すように、ブラシ列43a,43b,43cは、回転軸40に植毛された複数のブラシ毛49により形成されている。ブラシ列43aに含まれるブラシ毛49は、回転軸40の周方向に一列または複数列並べられている。図10では、回転軸40の周方向に3列のブラシ毛49が並べられブラシ列43aを形成した例が示されている。また、ブラシ列43aを形成するブラシ毛49は、回転軸40の軸方向に、一定間隔の隙間tを介して隣接している。軸方向に隣接するブラシ毛49の間には、隙間tが存在する。回転軸40の軸方向におけるブラシ毛49のピッチは、最小でブラシ毛49の直径と隙間tとの和となる。たとえば、ブラシ毛49のピッチを0.5mm以上3mm以下の範囲としてもよい。
このような構成を有する実施の形態2の回転ブラシ4を使用して研磨を行なっても、実施の形態1と同様に、回転ブラシ4の軸方向の往復移動の際に、各々のガラス基板1の端面へのブラシ毛49の接触状態が均一となり、端面の各箇所への研磨作用が均一となる。したがって、ガラス基板1の端面を高品質に研磨することができ、端面の表面状態を高いレベルで平滑にすることができる。
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3の研磨装置を示す断面図である。図4に示す実施の形態1の研磨装置と異なり、実施の形態3の研磨装置は、円板状の底板51の外周部に筒状の側壁52が気密的に取り付けられた研磨液供給部5を備える。槽状の研磨液供給部5の内部空間に、研磨液50が収容されている。ガラス基板1と、回転ブラシ4とは、研磨液50中に浸漬されている。
実施の形態1で説明した遊離砥粒を含有した研磨液50を上方から供給する構成に替えて、図11に示すように、ガラス基板1が研磨液50に浸漬した状態で回転ブラシ4へ研磨液50を循環供給して、ガラス基板1の端面の研磨を行なうことも可能である。この場合、端面に常に十分な研磨液50を供給することができるので、液切れによる研磨不良の問題を解消することができる。
以下、本発明の実施例1について説明する。まず、比較例として使用した従来の螺旋状の回転ブラシ104について説明する。図12は、従来の回転ブラシ104の構成を示す平面図である。図13は、図12に示す従来の回転ブラシ104の側面図である。図12および図13に示すように、比較例として用いられる従来の回転ブラシ104は、回転軸140と、回転軸140の外周面に螺旋状に植毛されたブラシ毛により構成される羽部143と、を含む。羽部143は、回転軸140の径方向に対し、2°〜30°の角度を形成して傾斜している。
ガラス基板の内周端面を研磨するための内径ブラシとして使用される場合、回転ブラシ104は、直径0.1〜0.3mmの直径と、5〜10mmの長さと、を有する。ガラス基板の外周端面を研磨するための外径ブラシとして使用される場合、回転ブラシ104は、内径ブラシと同等の直径と、10〜30mmの長さと、を有する。
図14は、従来のガラス基板101の端面の研磨時の、端面付近を拡大して示す模式図である。ガラス基板101の端面には、上述したガラス基板1と同様に、ストレート部111と面取り部112,113とが形成されている。ブラシ毛149は、回転軸に対して2°〜30°の角度を形成して傾斜している。
図15は、従来の回転ブラシ104が下方向に移動するときのブラシ毛149の端面との接触を示す模式図である。図15中に示す矢印方向に回転ブラシ104が移動した場合、ブラシ毛149の先端部149aは、ガラス基板101aの面取り部112、ガラス基板101bのストレート部111、ガラス基板101cの面取り部113にそれぞれ接触する。その結果、ブラシ毛149がガラス基板101a,101bに及ぼす研磨作用は大きく、一方ガラス基板101cに及ぼす研磨作用は小さい。
図16は、従来の回転ブラシ104が上方向に移動するときのブラシ毛149の端面との接触を示す模式図である。図16に示す矢印方向に回転ブラシ104が移動した場合、ブラシ毛149の先端部149aは、ガラス基板101aの面取り部112、ガラス基板101bのストレート部111、ガラス基板101cの面取り部113にそれぞれ接触する。その結果、ブラシ毛149がガラス基板101aに及ぼす研磨作用は極小であり、ガラス基板101bに及ぼす研磨作用は中程度、ガラス基板101cに及ぼす研磨作用は大である。
このように、回転軸に対して傾斜する螺旋状の回転ブラシ104を使用することにより、研磨中のガラス基板101の端面へのブラシ毛149の接触状態は、回転ブラシ104の上下移動時に異なっている。回転ブラシ104の下方または上方への移動の際に、ガラス基板101の端面の各箇所へのブラシ毛149の作用が異なる挙動を示す。この不均一性が、研磨後の端面の表面にスクラッチなどの微小傷が発生する原因となる。
本発明の実施例の回転ブラシ4と、上述した比較例の回転ブラシ104との比較を表1に示す。なお、ガラス基板の内周端面1Cの研磨に使用される実施例の回転ブラシ4の回転軸40の外径は6mm、ブラシ毛49の直径は0.15mm、長さは4.5mmとし、内周端面1Cを研磨する際の回転保持台3の回転数は15rpm、回転ブラシ4の回転数は3500rpm、研磨時間は約20分とし、回転ブラシ4の上下方向の揺動速度は400mm/s、揺動量は20mmとした。また、ガラス基板の外周端面1Dの研磨に使用される実施例の回転ブラシ4の回転軸40の外径は6mm、ブラシ毛49の直径は0.3mm、長さは15mmとし、外周端面1Dを研磨する際の回転ブラシの回転数は700〜1000rpm、ガラス基板の回転数は60rpmとし、研磨時間は約20分間とした。
Figure 0005947221
表1に示すように、比較例の螺旋ブラシは、回転軸の周方向である軸回転方向に連続した形状を有し(図12参照)、ブラシ毛149は常にガラス基板の端面に接触しながら回転し、連続的に研磨作用を及ぼす。その結果、研磨時の熱の発生度合いが大きくなるので、発熱により加工レートおよび品質などの加工特性が不安定となる。一方、実施例の羽ブラシは、回転軸の周方向である軸回転方向に不連続な形状を有し(図5参照)、ガラス基板の端面へ及ぼす研磨作用も不連続になる。その結果、研磨時の熱の発生度合いが相対的に小さくなり、加工特性が安定する。
また、研磨時の機能を比較すると、比較例の螺旋ブラシは軸回転方向に連続した形状であるために、研磨時に発生した研磨クズがブラシ上に残存し、研磨クズの排出効率が小さい。そのため、研磨クズのまきこみによるガラス基板1の端面のクラックが発生する可能性がある。これに対し、実施例の羽ブラシは、羽部43の間の隙間47から研磨クズを落下させることができ、研磨クズの排出効率が大きい。そのため、研磨クズのまきこみによるクラックは発生しないので、加工品質が良好になる。
さらに、比較例の螺旋ブラシでは、研磨液は螺旋状の羽部143を上から順に伝って下方へ供給され、羽部143の最下部まで流れるのに時間がかかるので、研磨対象物であるガラス基板の端面への研磨液の供給量が相対的に小さくなる。その結果、回転ブラシと研磨対象物とが直接接触して、端面のクラックが発生する可能性がある。これに対し、実施例の羽ブラシでは、上方から供給された研磨液は隙間47を経由して速やかに下方へ流通する。その結果、研磨対象物への研磨液の供給量を相対的に大きくできるので、加工品質が良好になる。
比較例の螺旋ブラシを使用して研磨したガラス基板と、実施例の羽ブラシを使用して研磨したガラス基板とのRa(算術平均粗さ)を、AFM(Atomic Force Microscope)を用いて1μm範囲を任意で10点測定し平均化して算出し、比較した。結果、端面の表面粗さRaは、共に0.5〜1.5nmの範囲であり良好であった。しかし、各基板1000枚の端面状態(ストレート部および面取り部)を光学顕微鏡による表面観察で検査した結果、実施例の羽ブラシを使用したガラス基板にはスクラッチなどの微小傷が発生していなかったのに対し、比較例の螺旋ブラシを使用したガラス基板には微小傷が発生していた。
これにより、従来の螺旋ブラシと比較して、複数の羽部43を有する回転ブラシ4を使用すると、ガラス基板の端面をより高いレベルで平滑にすることができ、より高品質な端面が得られることが明らかになった。
実施例1で作製した、比較例の螺旋ブラシを使用して研磨したガラス基板と、実施例の羽ブラシを使用して研磨したガラス基板と、を用いて、磁気ディスクを作成した。作製した磁気ディスクを、ロード/アンロード方式のハードディスクドライブ装置に搭載して、磁気ディスクの耐久試験を行なった。
耐久性試験は、DFH機構を用いた磁気ヘッドを使用し、磁気ヘッドの浮上量は約2nmとして、ロード/アンロード動作の繰り返しを行なった。
結果、実施例の羽ブラシを使用して研磨したガラス基板で作製した磁気ディスクは、300万回のロード/アンロード動作後にも故障することなく耐久した。一方、比較例の螺旋ブラシを使用して研磨したガラス基板で作製した磁気ディスクは、100万回のロード/アンロード動作でヘッドクラッシュなどの不具合が生じた。したがって、複数の羽部43を有する回転ブラシ4を使用してガラス基板の端面をより高いレベルで平滑にすることにより、異物の表面付着によるヘッドクラッシュの発生を抑制できることが明らかになった。
実施例3では、回転ブラシ4の最適な羽部43の枚数について検討した。他の条件は同一とし、羽部43の枚数のみを変更した回転ブラシ4を準備した。羽部43の枚数は1枚〜8枚の8通りとした。これら8種類の回転ブラシ4を使用して研磨した時の、加工レートと、研磨対象物であるガラス基板の端面へのクラックの発生状況と、を比較した。結果を表2に示す。
Figure 0005947221
表2に示すように、加工レートは、羽数が3以上6以下のときに特に良好であった。これは、羽数が少ないとブラシによる研磨作用が小さくなり、一方羽数が多すぎると隙間47の幅が小さくなるために研磨液の供給量が少なくなることが原因と考えられる。
また、端面へのクラックの発生状況は、羽数が2以上6以下または8のときに特に優れていた。これは、羽数が1および7のときには、回転ブラシ4の軸中心対称の配置が不可能または困難であるため、研磨時に回転ブラシ4のぶれが発生することが原因と考えられる。
これらの結果より、回転軸40の周方向に配置される羽部43の数は、3以上6以下が好ましいということが明らかになった。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ガラス基板、1A 表主表面、1B 裏主表面、1C 内周端面、1D 外周端面、1H 円孔、2 磁気薄膜層、4 回転ブラシ、5 研磨液供給部、10 磁気ディスク、11 ストレート部、12,13 面取り部、40 回転軸、43 羽部、43a,43b,43c ブラシ列、47,48 隙間、49 ブラシ毛、49a 先端部、50 研磨液。

Claims (8)

  1. 円形ディスク形状のガラス基板(1)の表面(1A)に磁気記録層(2)が形成される情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
    前記ガラス基板(1)を成形する工程(S10)と、
    前記ガラス基板(1)の端面(1C,1D)に、0.5μm以上2.0μm以下の平均粒径を有する遊離砥粒を含有した研磨液(50)を供給するとともに、回転軸(40)と、前記回転軸(40)の外周面に前記回転軸(40)の軸方向に沿って連続的に密集して植毛されたブラシ毛(49)により形成され、前記回転軸(40)の外表面に放射状に取り付けられ軸方向に延在する複数の羽部(43)と、を有し、前記回転軸(40)の周方向において隣接する前記羽部(43)の間に前記ブラシ毛(49)が植毛されない隙間(47)が軸方向に延びる研磨ブラシ(4)を回転させながら接触させて、前記端面(1C,1D)を研磨する工程(S40,S60)と、を備える、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記端面は、前記ガラス基板(1)の外周端面(1D)である、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記ガラス基板(1)の中心に円孔(1H)が形成されており、
    前記端面は、前記ガラス基板(1)の内周端面(1C)である、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記研磨する工程(S40,S60)では、複数枚積み重ねられた前記ガラス基板(1)の前記端面(1C,1D)を研磨する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記研磨液(50)は、前記ガラス基板(1)の上方から前記端面(1C,1D)に供給される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記研磨液(50)は、前記隙間(47)を経由して下方へ流れる、請求項5に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記ガラス基板(1)は、前記研磨液(50)に浸漬されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  8. 前記研磨ブラシ(4)は、前記回転軸(40)の軸方向に往復運動する、請求項1から請求項7のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
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