JP5946676B2 - 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形品の表面を硬化膜で被覆することにより、成形品の耐擦傷性を向上することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
従来から、プラスチック等からなる成形品の表面が樹脂組成物の硬化膜により被覆され、この硬化膜により成形品を保護し、その耐擦傷性を向上させることが行われている。上記樹脂組成物には、硬化体となった際に、成形品に優れた耐擦傷性を付与するだけではなく、成形品から剥がれたり、ずれたりせず、また、成形品が薄肉である場合にカール(反り返り)が起こらない、といった性質を有することが求められている。
また、このような樹脂を用いて成形品に耐擦傷性を付与するとき、成形品の表面に樹脂をコーティングするのではなく、離型性を有する他の基体シート上に、活性エネルギー線未照射の状態の樹脂からなる保護層を形成した転写材を作って、この転写材を成形品表面に接着させた後に、基体シートを剥離し、保護層を成形品の表面に転写する転写法があり、転写後に成形品表面の保護層に活性エネルギー線を照射することにより、この保護層を硬化させる方法が検討されている。このとき、上記保護層は室温(例えば、25℃±5℃)付近において、少なくとも、溶剤乾燥後には液状でなく、指で触ってべとべとしない程度には、タックのない被膜を形成することが求められる(以下、本発明内では、溶剤乾燥後に、液状でなく、指で触ってべとべとしない程度にタックのない被膜を形成可能であることを、「被膜形成能」ということがある)。
そのような樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物が提案されている。
即ち、特許文献1では、エポキシ当量が200〜1000g/eqかつ重量平均分子量が5千〜10万である共重合体に、アクリル酸等を反応させた後、これにシリカ微粒子等を混合させてなる活性エネルギー線硬化樹脂組成物が開示されており、耐擦傷性および耐熱性に優れた硬化体による被膜を形成し得るとされている。
特開2009−242647号公報
しかしながら、上記共重合体における200〜1000g/eqのエポキシ当量では、その後に導入できるアクリル酸等の量が少なくなり、最終的に得られる硬化膜の耐擦傷性が悪くなる。また、この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物では、シリカ微粒子は単に配合されているのみで、樹脂部分とは結合していないため、硬化膜となった際に、この硬化膜を擦るとシリカ微粒子が脱落するという問題が生じる。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、硬化膜となった際の耐擦傷性が高く、しかも、その硬化膜を擦ってもシリカ微粒子が脱落することもなく、カールの発生も抑制された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法の提供をその目的とする。
すなわち、本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法において、エチレン性不飽和基を側鎖に含有するアクリル系樹脂(A)とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とが下記の式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を用いると、上記無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)が、特定のアクリル系樹脂(A)の鎖の末端部分以外、特に中央付近でも無機酸化物微粒子(B)と結合し、上記特定のアクリル系樹脂(A)が無機酸化物微粒子(B)の全体を包むように覆っているような構造となるため、活性エネルギー線照射前の状態でも被膜形成能を有すること、および、活性エネルギー線照射後の硬化膜が、硬化による収縮が少なくなるとともに、この硬化膜を擦っても簡単にシリカ微粒子が脱落することがなく、耐擦傷性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、エチレン性不飽和基を側鎖に含有してなるアクリル系樹脂(A)と、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)、および光重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法であって、[I]エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1)を含有する単量体成分〔i〕を重合して得られ、かつエポキシ当量が180以下であるエポキシ基を有する重合体(a3)に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させてアクリル系樹脂(A)を製造する工程と、[II]この付加反応時に生じた水酸基に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)のイソシアネート基を反応させて反応生成物(A−a5)を製造する工程と、[III]この反応生成物(A−a5)中のアルコキシシリル基とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)中の水酸基とを反応させることにより、アクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが、上記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造する工程と、[IV]この無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)とともに、光重合開始剤(C)を混合する工程とを備えた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法を第1の要旨とする。
−O−Si−R1−NHCOO− ・・・(1)
〔上記式(1)中、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基である。〕
このように、本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、エチレン性不飽和基を側鎖に含有するアクリル系樹脂(A)とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とが上記の式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を含有し、この無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)が、上記特定のアクリル系樹脂(A)の鎖の末端部分以外、特に中央付近でも、上記無機酸化物微粒子(B)と結合が形成され、効果的に上記特定のアクリル系樹脂(A)により無機酸化物微粒子(B)が覆われているような構造となっている。このため、活性エネルギー線照射前の状態でも被膜形成能を有するようになる。
また、本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線照射後の硬化膜の硬化収縮量が少ないとともに、表面硬度が高く、上記硬化膜の表面を擦る等しても、シリカ微粒子が脱落しないため、耐擦傷性が飛躍的に向上する。
さらに、上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が、1万〜10万であると、塗工しやすい粘度となり、また充分に無機酸化物微粒子(B)を覆うことができ、無機酸化物微粒子(B)の凝集や得られる樹脂組成物のゲル化を防げる点で好ましい。
また、上記無機酸化物微粒子(B)の平均粒子径が、10〜100nmであると、その硬化膜の透明性を確保できる。
そして、上記無機酸化物微粒子(B)の配合量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して5〜400重量部であると、成形品に対する密着性が高まり、また、その硬化膜の耐擦傷性がより向上するとともに、その硬化膜の長寿命化を図ることができる。
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルあるいはメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートあるいはメタクリレートを意味する。
本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、特定のアクリル系樹脂(A)と、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)および光重合開始剤(C)を含有してなるものである。以下に、これらの成分(A)〜(C)について詳述する。
−O−Si−R1−NHCOO− ・・・(1)
〔上記式(1)中、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基である。〕
<<特定のアクリル系樹脂(A)>>
本発明で用いる上記特定のアクリル系樹脂(A)は、エチレン性不飽和基を側鎖に含有するものであり、例えば、下記の単量体成分〔i〕を重合して得られたエポキシ基を有する重合体(a3)に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させて得ることができる。
なお、上記特定の重合体(a3)に上記特定の化合物(a4)を付加させるというのは、この重合体(a3)のエポキシ基と化合物(a4)のカルボキシル基を反応させることであり、これにより、化合物(a4)の(メタ)アクリロリル基をアクリル系樹脂(A)のエチレン性不飽和基とするものである。
上記単量体成分〔i〕を重合して得られたエポキシ基を有する重合体(a3)のエポキシ当量は200以下が好ましく、特に好ましくは190以下、更に好ましくは180以下であることが好ましい。エポキシ当量が高すぎると、上記特定の重合体(a3)にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させる際に、導入することのできる(メタ)アクリロイル基が少なくなり、その結果、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化膜における耐擦傷性の向上がみられなくなるおそれがあるためである。なお、上記エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して測定することができる。また、上記エポキシ基を有する重合体(a3)の重量平均分子量は、5千〜10万であることが好ましく、特に好ましくは6千〜9万である。
〔単量体成分〔i〕〕
エポキシ基を有する重合体(a3)を製造するための単量体成分〔i〕としては、以下のエポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1)と、1個のエチレン性不飽和基を有する他の単量体(a2)とがあげられる。
(エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1))
上記エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1)としては、エポキシ基をエステル基の一部に有する(メタ)アクリル酸エステルであればよく、上記エポキシ基としては、脂環エポキシ構造を有するものが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を光硬化させる際の反応が速いことから好ましい。このようなエポキシ基をエステル基の一部に有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等があげられ、具体的には、三菱レイヨン社製のアクリエステルG(グリシジルメタクリレート)、ダイセル化学工業社製のサイクロマーM100(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記単量体(a1)の含有量は、上述のエポキシ当量の好ましい範囲を満足するように設定されるが、具体的には、単量体成分〔i〕全体に対し、好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは75〜100重量%である。単量体(a1)の含有量が少なすぎると上述の特定の重合体(a3)にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させる際に、導入することのできる(メタ)アクリロイル基が少なくなり、その結果、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化膜における耐擦傷性が低下しやすい傾向がある。
(1個のエチレン性不飽和基を有する他の単量体(a2))
上記の単量体成分〔i〕としては、上記単量体(a1)と1個のエチレン性不飽和基を有する他の単量体(a2)を含有してもよく、かかる他の単量体(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等があげられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの場合には、アルキル基の炭素数が、通常1〜20、特には1〜12、更には1〜8であることが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線照射前でも高い被膜形成能を有するようになる点から、単独重合物のガラス転移点が高い単量体、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
上記他の単量体(a2)の含有量は、単量体成分〔i〕全体に対し、好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜25重量%である。他の単量体(a2)の含有量が多すぎると、上述の特定の重合体(a3)にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させる際に、導入することのできる(メタ)アクリロイル基が少なくなり、その結果、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化膜における耐擦傷性が低下しやすい傾向がある。
(カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4))
上記特定の化合物(a4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、カルボン酸およびその誘導体と水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物があげられる。
上記カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、コハク酸、無水コハク酸、フタル酸、無水フタル酸等があげられ、上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等があげられる。
なかでも、入手が容易で、耐擦傷性がより高まる点から、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の反応物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水フタル酸の反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと無水フタル酸の反応物を用いることが好ましい。
(特定のアクリル系樹脂(A)の製造方法)
1.まず、単量体成分〔i〕を重合し、エポキシ基を有する重合体(a3)を製造する。上記単量体成分〔i〕を重合させる方法としては、例えば、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等があげられる。なかでも、反応の制御の容易さの点から、溶液ラジカル重合による重合が好ましい。この溶液ラジカル重合は、例えば、溶媒中に、上記単量体成分〔i〕、重合開始剤を混合あるいは滴下し、加熱撹拌して行われる。上記加熱条件は、用いる溶媒、単量体成分〔i〕の種類、重合開始剤の種類により適宜設定されるが、通常、50〜150℃の範囲であり、反応時間は2〜20時間の範囲である。
上記重合開始剤としては、ラジカル重合剤を用いることができる。このようなラジカル重合剤としては、例えば、アソビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロキシパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤があげられる。
また、上記溶媒としては、得られる特定のアクリル系樹脂(A)を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、2−プロパノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサンノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1,2−ジアセトキシプロパン等のエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類があげられ、これらは単独でもしくは2種以上混合して用いることができる。
ただし、水酸基やアミンを有する溶媒を用いることは好ましくない。この後の工程で、特定のアクリル系樹脂(A)の水酸基に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)を反応させ、反応生成物(A−a5)を製造する際に、上記特定の化合物(a5)が、溶媒中の水酸基やアミンとも反応してしまうためである。
2.つぎに、上記で製造したエポキシ基を有する重合体(a3)に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させることにより、特定のアクリル系樹脂(A)を製造する。すなわち、上記で製造したエポキシ基を有する重合体(a3)を含む溶媒に、上記特定の化合物(a4)を混合あるいは滴下し、これらの加熱撹拌を行う。
このとき、特定の重合体(a3)内のエポキシ基のモル数と特定の化合物(a4)のモル数の比を、(a3)/(a4)=1〜10とすることが好ましく、(a3)/(a4)=1〜3とすることがより好ましい。(a4)に対する(a3)の比〔(a3)/(a4)〕が小さすぎると、未反応の特定の化合物(a4)が最終生成物として得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に残存することになり無駄が生じるとともに、未反応の酸を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に残すことによって、この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と接する成形品に、酸による腐食を生じさせるおそれがある。逆に、(a4)に対する(a3)の比((a3)/(a4))が大きすぎると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐擦傷性の向上が図れない傾向がある。
そして、上記特定の重合体(a3)に特定の化合物(a4)を付加させる際の反応は、通常、50〜120℃の温度において、3〜50時間行われる。この反応の進行は、系内のエポキシ当量または酸価を測定することにより確認することができる。反応はいずれの段階で終了させてもよいが、未反応の酸を残さないという点から、配合した特定の化合物(a4)の90モル%以上を反応させることが好ましい。なお、上記酸価は、JIS K5601−2−1に準拠した方法で測定することができる。
また、上記特定の重合体(a3)に特定の化合物(a4)を付加させる際の反応を促進するために、触媒を用いることができる。このような触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等があげられる。そして、この触媒の使用量は、特定の重合体(a3)と特定の化合物(a4)との合計重量に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜2重量%であることがより好ましい。
さらに、上記特定の重合体(a3)に特定の化合物(a4)を付加させる際の反応の際に、特定の化合物(a4)に含まれる(メタ)アクリロイル基が反応中に重合するのを防止するため、重合禁止剤を用いることができる。このような重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、p−t−ブチルカテコール、フェノチアジン等があげられる。また、重合禁止剤の使用量は、特定の重合体(a3)と特定の化合物(a4)との合計重量に対して、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.05〜0.5重量%であることがより好ましい。
このようにして得られる特定のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、1万〜10万であることが好ましく、より好ましくは、2万〜5万である。かかる重量平均分子量が大きすぎると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて均一な膜厚に塗布することが困難となる傾向がみられ、逆に、小さすぎると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜の形成能が低下したり、無機酸化物微粒子(B)を覆う効果が低くなって無機酸化物微粒子(B)の凝集や得られる樹脂組成物のゲル化が起こりやすくなる傾向がある。
上記特定のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、用いる重合開始剤の使用量、重合温度条件等により制御が可能であり、必要により連鎖移動剤を配合してさらに細かい制御をすることができる。上記重合開始剤としては、上述のラジカル重合開始剤を用いることができる。また、上記連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン類があげられる。
なお、上記重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用いることにより測定することができる。具体的には、日本Waters社製の高速液体クロマトグラフィー(本体「waters 2695」、検出器「waters 2414」、カラム「shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列」)を用いて測定することができる。
<<コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)>>
上記無機酸化物微粒子(B)は、コロイダルシリカを主成分とするものであればよく、水ガラスを原料として酸で中和したり、アルキルシリケートをアルカリで加水分解させる方法等の方法によって得ることができる。また、市販品として販売されているものを用いることもできる。なお、「コロイダルシリカを主成分とする」とは、通常、コロイダルシリカを50重量%以上含有するものを意味し、コロイダルシリカのみから構成されているものを含む趣旨である。
上記無機酸化物微粒子(B)の形状としては、球状、中空状、多孔質状、棒状、繊維状、板状あるいは不定形状等があげられるが、なかでも球状を用いることがより好ましい。なお、本発明でいう球状とは、厳密な球のみを意味するのではなく、実質的に球状になっているものを含む趣旨である。
本発明においては、上記特定のアクリル系樹脂(A)との混合が容易であり、均一な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得やすいという点から、有機溶媒に分散されたオルガノシリカゾルの形になっているコロイダルシリカを用いることが好ましい。上記有機溶媒としては、例えば、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−プロパノン、4−メチル−2−ペンタノン等が好ましく用いられる。
そして、上記無機酸化物微粒子(B)の平均粒径は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化膜を透明性を考慮した場合、10〜100nmであることが好ましく、特に好ましくは10〜50nmである。平均粒径が大きすぎると、透明性が低下する傾向がみられ、逆に、小さすぎると、無機酸化物微粒子(B)が凝集しやすくなったり、得られる組成物の機械特性が低下する傾向がみられる。なお、上記平均粒径は、JIS R 1626に準拠してBET法により求めた粒子の平均比表面積と、粒子の真比重から計算して算出したものである。
上記無機酸化物微粒子(B)としては、具体的には、日産化学工業社製のIPA−ST(2−プロパノール分散,平均粒子径10〜15nm)、PGM−ST(1−メトキシ−2−プロパノール分散,平均粒子径10〜15nm)、MEK−ST(2−プロパノン分散,平均粒子径10〜15nm)等があげられる。
上記無機酸化物微粒子(B)の配合量は、前記特定のアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、5〜400重量部であることが好ましく、より好ましくは25〜150重量部であり、さらに好ましくは30〜100重量部である。無機酸化物微粒子(B)の配合量が多すぎると、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の活性エネルギー線照射前における被膜形成能が低下することとなり、そのため活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を有する転写材を製造し、この転写材を用いて上記樹脂組成物を成形品表面に転写することにより、上記成形品表面を被覆しようとする場合に、上記樹脂組成物の成形品表面への密着性が不足する傾向がみらる。逆に、無機酸化物微粒子(B)配合量が少なすぎると、充分な硬化膜の耐擦傷性の向上効果が得られなくなる傾向がある。
<<無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)>>
上記無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)は、上記特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなるものであり、この無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を含有することにより、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のポットライフが優れるようになり、さらには、これを硬化させてなる硬化膜の耐擦傷性の向上を図ることができる。
−O−Si−R1−NHCOO− ・・・(1)
〔上記式(1)中、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基である。〕
上記式(1)において、R1は炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基であり、アルキレン基の炭素数としては1〜4が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、、n−ブチレン基が好ましい。
上記特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とを上記式(1)で示される結合部位を介して結合させるには、1分子中にイソシアネート基とアルコキシシリル基の両方を有する化合物(a5)を用いる方法によって行うことができる。この特定の化合物(a5)は、そのイソシアネート基が上記特定のアクリル系樹脂(A)の有する水酸基と反応し、アルコキシシリル基が加水分解する際に、上記無機酸化物微粒子(B)を共存させることにより、この無機酸化物微粒子(B)とも結合することとなる。
(イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5))
上記特定の化合物(a5)としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランがあげられ、具体的には、信越化学工業社製のKBE−9007(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)があげられる。
そして、上記無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造する方法としては、例えば、以下に示すように、配合成分の混合順序の異なる2通りの方法があげられる。
すなわち、〔1〕:[I]エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1)を含有する単量体成分〔i〕を重合して得られたエポキシ基を有する重合体(a3)に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させてアクリル系樹脂(A)を製造する工程と、[II]この付加反応時に生じた水酸基に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)のイソシアネート基を反応させて反応生成物(A−a5)を製造する工程と、[III]この反応生成物(A−a5)中のアルコキシシリル基とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)中の水酸基とを反応させることにより、アクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造する工程と、[IV]この無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)とともに、光重合開始剤(C)を混合する工程とを備えた製造方法。
または、〔2〕:[I]エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1)を含有する単量体成分〔i〕を重合して得られたエポキシ基を有する重合体(a3)に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させてアクリル系樹脂(A)を製造する工程と、[V]上記無機酸化物微粒子(B)中の水酸基とイソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)中のアルコキシシリル基とを反応させて反応生成物(B−a5)を製造する工程と、[VI]この反応生成物(B−a5)中のイソシアネート基とアクリル系樹脂(A)中の水酸基とを反応させることにより、アクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造する工程と、[VII]この無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)とともに、光重合開始剤(C)を混合する工程とを備えた製造方法の2通りである。以下に、これらの方法を詳述する。
〔1〕無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)の製造方法
(反応生成物(A−a5)の製造)
特定のアクリル系樹脂(A)における、上記特定の重合体(a3)に特定の化合物(a4)を付加させた際に生じた水酸基に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)のイソシアネート基を反応させることにより、反応生成物(A−a5)を製造する。すなわち、上記特定のアクリル系樹脂(A)を製造した溶液に、この特定の化合物(a5)を混合あるいは滴下し、必要があれば加熱撹拌を行う。
このとき、特定の化合物(a5)の配合量は、上記特定のアクリル系樹脂(A)製造時に生じた水酸基量の0.1〜20モル%であることが好ましく、1〜5モル%であることがより好ましい。特定の化合物(a5)の配合量が少なすぎると、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)との間に結合部位のないものが生成され、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐擦傷性の向上が図れない傾向があり、逆に、多すぎると、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)間の架橋が、活性エネルギー線照射前に充分行われるのと同じこととなり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の取り扱いが難しくなる傾向がある。
なお、上記特定のアクリル系樹脂(A)製造時に生じた水酸基量は、特定の重合体(a3)に対して加えた特定の化合物(a4)の量と、系内のエポキシ当量または酸価の測定により確認することのできる反応の進行度合から見積もることができる。
上記反応生成物(A−a5)を製造する際の反応は、通常、室温〜90℃の温度で、1〜50時間行われる。この反応の際に、触媒を用いて反応を加速させることができる。このような触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ−n−ブチル錫等の有機金属化合物、オクトエ酸亜鉛、オクトエ酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン等のアミン触媒等があげられる。なかでも、入手が容易である点から、ジブチル錫ジラウレートが好ましく用いられる。
(無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)の製造)
つぎに、上記で製造した反応生成物(A−a5)とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とを水と加えて加水分解縮合反応させることにより、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造することができる。
−O−Si−R1−NHCOO− ・・・(1)
〔上記式(1)中、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基である。〕
このとき、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)との結合を、特定の化合物(a5)由来のアルコキシシリル基を利用して行っているが、このアルコキシシリル基は、特定のアクリル系樹脂(A)を製造した際に生じた水酸基に特定の化合物(a5)を反応させて得られるものである。そして、上記特定のアクリル系樹脂(A)の分子鎖中に水酸基が均等に存在することから、反応生成物(A−a5)の分子鎖中にアルコキシシリル基が均等に生じるものと推測される。したがって、上記反応生成物(A−a5)は、その分子鎖全体に均等に結合部位を有することとなるため、この分子鎖全体を使って無機酸化物微粒子(B)を覆うように結合するものと推察される。すなわち、上記反応生成物(A−a5)の分子鎖の中央部分に存在するアルコキシシリル基に、無機酸化物微粒子(B)が結合すると、その結合部の両側に延びている反応生成物(A−a5)の分子鎖がこの無機酸化物微粒子(B)を包むように覆い、結合すると考えられる。このため、特定のアクリル系樹脂(A)の分子鎖の末端部分にのみアルコキシシリル基が存在する場合よりも、特定のアクリル系樹脂(A)の分子鎖全体を有効に使うことができると推察される。
上記反応は、上記で製造した反応生成物(A−a5)を含有する溶液に、無機酸化物微粒子(B)を加えてもよいし、無機酸化物微粒子(B)に反応生成物(A−a5)を含有する溶液を加えてもよいが、いずれにしても、これらの混合物に水を添加することにより、反応が行われる。すなわち、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)由来のアルコキシシリル基が水で加水分解されてシラノール基が生成し、これが無機酸化物微粒子(B)表面の水酸基(オルガノシリカゾルの場合はシラノール基の形となっている)と縮合反応することにより、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが上記式(1)で示される結合部位を介して結合するようになる。上記添加する水の量は、上記特定の化合物(a5)由来のアルコキシシリル基の全てが加水分解しうる量以上であればよく、(a5)由来のアルコキシシリル基のモル数に対して100〜300モル%であることが好ましく、100〜200モル%であることがより好ましい。上記反応は、通常、室温〜100℃の温度で、1〜100時間行われる。
上記加水分解反応を促進するため、触媒を上記反応系に配合することができる。このような触媒としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセテート、アルミニウムジブトキシドエチルアセテート、ホウ酸ブトキシド、酢酸、プロピオン酸、塩酸、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド等があげられる。上記触媒の配合量は、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)と無機酸化物微粒子(B)の合計量100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。
〔2〕無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)の製造方法
上記〔1〕の製造方法と異なるのは、特定のアクリル系樹脂(A)にイソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)を反応させた反応生成物(A−a5)を製造せず、代わりに、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)中の水酸基と、上記特定の化合物(a5)中のアルコキシシリル基とを反応させて、反応生成物(B−a5)の製造を行うことである。
(反応生成物(B−a5)の製造)
上記反応生成物(B−a5)は、上記特定の化合物(a5)由来のアルコキシシリル基を水で加水分解してシラノール基を生じさせ、これに上記無機酸化物微粒子(B)表面の水酸基(オルガノシリカゾルの場合はシラノール基の形をとっている)を縮合反応させることにより、製造することができる。得られた反応生成物(B−a5)は、イソシアネート基が配合した水と反応するのを防止する点から、すぐに、特定のアクリル系樹脂(A)との反応に用いることが好ましい。
上記反応における特定の化合物(a5)の配合量は、のちに反応させる特定のアクリル系樹脂(A)に含まれている水酸基量の0.1〜20モル%であることが好ましく、1〜5モル%であることがより好ましい。特定の化合物(a5)の配合量が少なすぎると、特定のアクリル系樹脂(A)の分子量にもよるが、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)の間に結合部位がないものが生成されて、得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜の耐擦傷性の向上が図れない傾向がみられ、逆に、少なすぎると、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)との架橋が、活性エネルギー線照射前に充分行われることと同様となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の取り扱いが難しくなる傾向がある。
また、上記〔1〕の製造方法とは異なり、上記無機酸化物微粒子の分散媒として、水酸基を有するものは好ましくない。これは、特定のアクリル系樹脂(A)と反応させる際に、反応生成物(B−a5)のイソシアネート基が、特定のアクリル系樹脂(A)の水酸基だけでなく、上記分散媒の水酸基とも反応するためである。
(無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)の製造)
上記特定のアクリル系樹脂(A)と、反応生成物(B−a5)とを反応させることにより、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を得ることができる。すなわち、上記特定のアクリル系樹脂(A)は、特定の重合体(a3)に特定の化合物(a4)を付加させた際に生じた水酸基を有している。一方、上記反応生成物(B−a5)は、先に示した加水分解縮合反応により、イソシアネート基が導入されている。したがって、上記特定のアクリル系樹脂(A)の水酸基と反応生成物(B−a5)のイソシアネート基を反応させることで、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造することができる。
上記反応は、特定のアクリル系樹脂(A)を含有する溶液に、反応生成物(B−a5)を加えてもよいし、反応生成物(B−a5)含有する溶液に特定のアクリル系樹脂(A)を加えても良い。上記反応は、通常、室温〜90℃の温度で、1〜50時間行われる。
また、上記反応を促進するため、上記反応系に触媒を配合することができる。このような触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ−n−ブチル錫等の有機金属化合物や、オクトエ酸亜鉛、オクトエ酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン等のアミン触媒があげられ、なかでも、入手および取り扱いが容易である点から、ジブチル錫ジラウレートが好ましく用いられる。
<<光重合開始剤(C)>>
上記光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線を照射されることにより、ラジカル等を発生するものであり、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、通常の光重合開始剤を用いることができる。このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記光重合開始剤(C)の含有量は、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)と後述の多官能アクリレート(D)との合計100重量部に対し、0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が少なすぎると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線の照射によって充分に硬化せず、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜の耐擦傷性の向上が期待できない傾向がみられ、逆に多すぎると、硬化反応に寄与できなかった未反応物がのちに可塑剤として働いたり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化膜が、活性エネルギー線を受けて劣化しやすい傾向がある。
本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)と光重合開始剤(C)と、必要に応じて、多官能アクリレート(D)、溶媒(E)および添加剤(F)を含有することができる。以下に、これらの成分(D)〜(F)について詳述する。
<<多官能アクリレート(D)>>
上記多官能アクリレート(D)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記多官能アクリレート(D)の含有量は、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)100重量部に対して30重量部以下、特には20重量部以下であることが好ましい。多官能アクリレート(D)の含有量が多すぎると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を有する転写材を製造し、この転写材を用いて成形品表面に樹脂組成物を転写することにより、上記成形品表面を樹脂組成物で被覆する場合の、樹脂組成物の被膜形成能が充分でなく、タックのあるものとなる傾向がみられるためである。
<<溶媒(E)>>
本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、粘度調整や、これを塗布する対象の成形品への濡れ調整の点から、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)、光重合開始剤(C)、多官能アクリレート(D)を溶解させることが可能となる溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、例えば、2−プロパノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1,2−ジアセトキシプロパン等のエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類があげられる。
<<添加剤(F)>>
本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、その硬化膜の物性を改良する目的で、種々の添加物を用いることができる。このような添加物としては、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤等があげられる。
本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、対象とする成形品に塗布し、これを乾燥させた後、活性エネルギー線を照射することにより、硬化膜とすることができる。上記成形品としては、特に制限はないものの、加工の容易さの点から、プラスチックおよび紙を素材とするものが好ましく用いられる。上記プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ABS樹脂等があげられる。また、上記成形品の形状としては、特に制限はないものの、シート状、フィルム状等が好ましく用いられる。
そして、上記成形品への塗布は、種々の方法を用いて行うことができる。このような方法としては、例えば、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、スピンコート法、グラビアコート法、ロールコート法等があげられる。また、その乾燥方法についても、特に制限はなく、成形品の変形が生じない程度に、加熱または送風、あるいはこれらの組み合わせで行うことができる。このときの乾燥時間は、1〜30分の範囲で行うことが好ましい。
上記塗布される樹脂組成物の乾燥後の厚みは、1〜50μmの範囲にあることが好ましく、1〜20μmの範囲にあることがより好ましい。厚みが薄すぎると、硬化膜における耐擦傷性の向上を図ることができないおそれがあり、逆に、厚すぎると、活性エネルギー線の照射による硬化に時間がかかり過ぎる傾向がみられるためである。
上記乾燥後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、室温付近において、手指で触れてもべたつきがないようになっており、タックのない被膜形成能を有している。したがって、この状態で、塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含む成形品全体に、印刷、転写、エンボス加工等の加工処理を施すことができ、また、これをさらに別の形へ成形することもできる。例えば、上記樹脂組成物および成形品に印刷を施した後、これを真空成形、圧空成形、真空圧空成形等することができる。さらに、このようにして得られた成形品を、他の成形品等に転写することもできる。
上記活性エネルギー線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線等を用いることができ、このような活性エネルギー線は、例えば、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等を用いることにより得ることができる。
このように、本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線が照射され、硬化膜となる際に、エチレン性不飽和基を側鎖に含有する特定のアクリル系樹脂(A)のエチレン性不飽和基が重合反応を起こすため、架橋点が密となり、硬化膜における耐擦傷性に優れるようになっている。そして、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)が、Si−O−のような金属−酸素結合を密に有しているため、その硬化膜は、一層耐擦傷性に優れている。また、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合しているため、擦られた際にシリカ微粒子が硬化膜から脱落することがなく、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とをただ混合する場合に比べ、耐擦傷性が飛躍的に向上している。
−O−Si−R1−NHCOO− ・・・(1)
〔上記式(1)中、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基である。〕
さらに、活性エネルギー線照射時に、上記特定のアクリル系樹脂(A)および無機酸化物微粒子(B)のいずれも、主鎖の部分は硬化収縮に寄与しない。このため、組成物を硬化膜とする際、これが塗布された成形品が薄肉のシートからなる場合であっても、カールの発生を抑制することができる。また、成形品がシートでない場合であっても、硬化膜のずれや剥がれの発生を効果的に防止できる。
つぎに、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」は、重量基準を意味する。
〔実施例1〕
(特定のアクリル系樹脂(A)の製造)
撹拌機、還流冷却機、窒素の吹き込み口、温度計、滴下ロートを備えた500mLフラスコに、単量体成分〔i〕として、エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1):グリシジルメタクリレート(三菱レイヨン社製、アクリエステルG)50部、1個のエチレン性不飽和基を有する他の単量体(a2):メチルメタクリレート1部、溶媒として、酢酸ブチル75部を仕込み、窒素置換した後、連鎖移動剤として、ラウリルメルカプタン1.6部、重合開始剤として、2,2−アゾビスジメチルバレロニトリル(大塚化学社製、ADVN)0.52部を加えて、65℃の温度で反応を開始させた。3時間後、上記重合開始剤0.26部を追加して、さらに3時間反応させた後、100℃に昇温しこの状態を0.5時間保った後、70℃にまで冷却したところで、1−メトキシ−2−プロピルアセテート78部を追加し、単量体成分〔i〕を共重合して得られたエポキシ基を有する重合体(a3)を得た。このエポキシ基を有する重合体(a3)のエポキシ当量は、150であった。
これを、空気にバブリングさせつつ、重合禁止剤として、4−メトキシヒドロキノン0.06部を加えて100℃に昇温し、触媒として、トリフェニルホスフィン0.77部を加え反応系とし、これに、滴下ロートに入れたカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)として、アクリル酸25部を30分間で滴下した。滴下終了後、反応系を115℃の温度に昇温して、上記特定の重合体(a3)に、アクリル酸を付加させる反応を行った。この反応は、反応系内のアクリル酸の量を酸価を測定することで追跡し、仕込んだアクリル酸の97モル%以上が消費されたところで反応を終了させ、室温にまで冷却するものである。なお、このようにして得られたアクリル系樹脂(A)は、アクリル酸の付加により、上記特定の重合体(a3)に、347ミリモルの97〜100モル%(337〜347ミリモル%)の水酸基が生成されたものと考えられ、後述する評価法による測定では、数平均分子量3.7×103、重量平均分子量1.7×104であった。
(反応生成物(A−a5)の製造)
つぎに、上記特定のアクリル系樹脂(A)を製造した反応系に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)として、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、KBE−9007)0.86部を1−メトキシ−2−プロピルアセテート1.5部に溶かしたものを加え、触媒として、ジブチル錫ジラウレート0.03部を追加し、80℃の温度で2時間反応させることにより、反応生成物(A−a5)を得た。なお、反応終了後の液をアミンで滴定したところ、イソシアネート基は認められなかった。
(無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)の製造)
上記反応生成物(A−a5)を有する反応系を室温にまで徐冷した後、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)として、4−メチル−2−ペンタノンに分散させたコロイダルシリカ(日産化学工業社製、MIBK−ST、平均粒子径10〜15nm、固型分30重量%)168部、水0.065部、触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート0.010部、重合禁止剤として、4−メトキシフェノール0.06部を加え、70℃の温度で4時間加水分解することにより、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を得た。
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造)
上記無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)10部に、光重合開始剤(C)として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバジャパン社製、イルガキュア184)0.064部を加えて、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
〔比較例1〕
反応生成物(A−a5)を製造せず、単に、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)を混合させた他は、実施例1と同様にして比較例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。すなわち、比較例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、無機酸化物微粒子(B)を有しているものの、特定のアクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とは、上記式(1)で示される結合部位を介して結合していないものである。
〔比較例2〕
反応生成物(A−a5)を製造せず、無機酸化物微粒子(B)を用いなかった他は、実施例1と同様にして比較例2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。すなわち、比較例2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、無機酸化物微粒子(B)を含有していないものである。
このようにして得られた実施例1、比較例1および2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のポットライフおよび被膜形成性(タック)、これらの硬化膜の鉛筆硬度および耐擦傷性、さらには、この硬化膜により被覆されたフィルムにおけるカール(そりの程度)を、下記の方法によって測定し、評価した。これらの結果を後記の表1に併せて示す。
〔ポットライフ〕
各活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を暗所下、室温(25℃)にて保管し、目視によりゲル化が認められるまでの期間を測定した。
〔被膜形成性(タック)〕
各活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、PETフィルム基材(東レ社製、ルミラー、厚み100μm)に、#16バーコーターを用いてその乾燥後の厚みが7μmとなるよう塗布し、これを80℃の温度下で2分間乾燥させた。乾燥させた後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の表面を指で触ってタックの有無を確認し、タックのないものを被膜形成性良好(○)とし、タックのあるものを被膜形成性不良(×)と評価した。
〔鉛筆硬度〕
上記被膜形成性の評価を行った後、各活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に対し波長365nmでの照射エネルギーが250または500mJ/cm2となるように紫外線を照射し、これらを硬化させてなる硬化膜を製造した。そして、これらの硬化膜の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4に従って測定した。
〔耐擦傷性〕
上記鉛筆硬度の項で製造した硬化膜のうち、波長365nmでの紫外線照射エネルギーが250mJ/cm2となるように紫外線を照射したものについて、磨耗試験前後の硬化膜のヘーズを測定し、その差(Δヘーズ)で評価した。磨耗試験は、JIS K−5600−5−9による磨耗輪法を用い、磨耗輪CS−10F、荷重1kg、回転数200回の条件で行った。そして、硬化膜のヘーズは、JIS K−7105に従って測定し、磨耗試験前後のヘーズの差を算出して、Δヘーズとした(単位:%)。なお、Δヘーズの値が小さいほど、耐擦傷性に優れていることを示している。
〔カール〕
各活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、予めその上に錘を置いて1日放置し平坦としたPETフィルム基材(東洋紡績社製、コスモシャインA4300、厚み38μm、A4サイズ)に、#10バーコーターを用いてその乾燥後の厚みが4μmとなるように塗布し、80℃の温度下で3分間乾燥させた後、波長365nmでの照射エネルギーが500mJ/cm2となるよう紫外線を照射し硬化させた。これにより、硬化膜によってフィルムの一方の面が被覆されているハードコートフィルムを製造した。このハードコートフィルムを温度23℃、湿度50RH%の条件下で一晩放置した後、10cm×10cmの大きさに切り出し、フィルムの四隅の中央部に対するそりを定規を用いて測定し、各隅のそりの平均をカール値(mm)とした。なお、カール値が小さいほど、そりが小さく、紫外線照射による硬化収縮が少なかったことを示している。
Figure 0005946676
上記結果から、エチレン性不飽和基を側鎖に含有してなる特定のアクリル系樹脂(A)とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とが、上記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を含有してなる実施例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、被膜形成性(タック)に優れるとともに、その硬化膜が、鉛筆硬度が高く、耐擦傷性および低カール性に優れていることがわかる。
これに対し、無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を含有していない比較例1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる硬化膜は、耐擦傷性および低カール性に劣ることがわかる。また、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)自体を有していない比較例2では、被膜形成性(タック)が不良であり、また、その硬化膜の耐擦傷性が実施例1品に比べて極端に劣る結果となった。
本発明により得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ポットライフおよび被膜形成性(タック)に優れ、しかも鉛筆硬度が高く、耐擦傷性および低カール性に優れる硬化膜を形成することができる。したがって、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種コーティング剤として有用である。

Claims (5)

  1. エチレン性不飽和基を側鎖に含有してなるアクリル系樹脂(A)と、コロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)、および光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
    [I]エポキシ基と1個のエチレン性不飽和基とを有する単量体(a1)を含有する単量体成分〔i〕を重合して得られ、かつエポキシ当量が180以下であるエポキシ基を有する重合体(a3)に、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a4)を付加させてアクリル系樹脂(A)を製造する工程と、
    [II]この付加反応時に生じた水酸基に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物(a5)のイソシアネート基を反応させて反応生成物(A−a5)を製造する工程と、
    [III]この反応生成物(A−a5)中のアルコキシシリル基とコロイダルシリカを主成分とする無機酸化物微粒子(B)中の水酸基とを反応させることにより、アクリル系樹脂(A)と無機酸化物微粒子(B)とが、下記式(1)で示される結合部位を介して結合してなる無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)を製造する工程と、
    [IV]この無機酸化物−アクリル系樹脂複合体(α)とともに、光重合開始剤(C)を混合する工程
    とを備えたことを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法
    −O−Si−R1−NHCOO− ・・・(1)
    〔上記式(1)中、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基である。〕
  2. 単量体成分〔i〕が、上記単量体(a1)および1個のエチレン性不飽和基を有する他の単量体(a2)を含有するものであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法
  3. アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が、1万〜10万であることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法
  4. 無機酸化物微粒子(B)の平均粒子径が、10〜100nmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法
  5. 無機酸化物微粒子(B)の配合量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して5〜400重量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法
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