JP5945237B2 - 衝撃吸収用防護パット - Google Patents

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本発明は、競技場または運動場に設置されているコンクリートフェンスに人が接触したときの衝撃を吸収するために前記構造物の表面に取り付けられる衝撃吸収用防護パットに関し、特に防護パットを設置する工事における手間を大幅に軽減することができ、また耐環境性にも優れた衝撃吸収用防護パットに関する。
現在、競技場または運動場に設置されているコンクリートフェンスに人が接触したときの衝撃を吸収するために前記構造物の表面に衝撃吸収用防護パットが取り付けられることが知られている。
図3は現在汎用されている衝撃吸収用防護パットの一例を示す断面図である。現在汎用されている衝撃吸収用防護パット60は、第一の工程として、図3に示す如くコンクリート61の表面に直にウレタンフォーム等による軟質発泡材料から形成された軟質発泡樹脂層62を接着剤により接着する。また場合によっては、軟質発泡樹脂層62におけるコンクリート61との当接面に背面基板を一定間隔で離間して配置することにより、排水用空間が設けられることもある。この際、コンクリート61と軟質発泡樹脂層62との接着は、軟質発泡樹脂層62が発泡性の高い材料であることから、コンクリート61との接着力が弱いため、コンクリート61の表面にプライマー処理を施した上で、接着剤を塗布した後に軟質発泡樹脂層62が接着されることも多い。
第二の工程として、図3に示す如く軟質発泡樹脂層62の外側に耐候性及び耐水性を有する防護シート64が積層される。防護ゴムシート64を積層する構造のものとしては、特許文献1等に記載されている。ここで防護ゴムシート64を軟質発泡樹脂層62に積層する際には、接着剤が使用される。
上記の方法は防護ゴムシート64の端部を固定するために、第三工程として、軟質発泡樹脂層62の上下端部にアルミニウム等によるフラットバー66を取り付けた上で、ホールインアンカ67を打ち込む必要がある。この工程については、特許文献2における実施例(段落番号[0009])に記載されている。
この他にも、図4に示す如く防護ゴムシートの代わりに耐候性及び耐水性を有したウレタン樹脂を軟質発泡樹脂層72に吹き付け、乾燥硬化させることによって防護層74を形成する工法も知られている。この方法では、ウレタン樹脂によって軟質発泡樹脂層72をコンクリート71に強固に接着するために、糊しろ75が必要になる。
現在施行されている上記の工法には、以下の3つの問題点が存在する。
第一の問題点としては、第二工程において防護ゴムシート64を軟質発泡樹脂層62に積層する工程は、雨天時には施行できない点にある。同様に、防護ゴムシートの代わりにウレタン樹脂を吹き付ける工法も、雨天時には施工することができない。また防護ゴムシートの積層やウレタン樹脂を均一に吹き付ける作業には、経験と技能が必要とされ、施工を行う人材の不足が問題となっている。
そのため、防護パットを取り付ける工程が、天候に左右されて、予め設定された工期通りには進行せず、工期が大幅に遅れたり、人件費が嵩む等の問題点が指摘されていた。
第二の問題点としては、図3に示す如く防護パットの上下端部に、ホールインアンカ67を打ち込むためのスペースが必要となる点が挙げられる。ホールインアンカ67を設置するスペースとしては、フェンス等の大きさにもよるが、略5〜20cmほどのスペースが必要となる。特に地面側における下部のスペースが問題となっており、そのスペースを覆うための別部材による被覆工事等が必要となっていた。同様に、防護ゴムシートの代わりにウレタン樹脂を軟質発泡樹脂層に吹き付けて防護層を形成する工法でも、図4に示す如く軟質発泡樹脂層72をコンクリート71に完全に接着させるために、糊しろ75となるスペースが必要となる。
第三の問題点としては、屋外に設置される防護パットにおいて、防護パットの上部側の端部より稀に雨水が侵入し、コンクリート61と軟質発泡樹脂層62との間の接着層を浸蝕するという問題が指摘されていた。そのためコンクリート61の表面に塗布されるプライマーや接着剤の材料を耐水性に強いものを使用する必要があり、結果的に施行費用が高騰する要因になっていた。
その他、ウレタン樹脂を吹き付ける工程を採用した場合、雨天時に作業ができない問題とともに、ウレタン樹脂の飛散により、構造物の周辺を汚染するという問題が指摘されていた。そのため、ウレタン樹脂を吹き付ける前に、構造物の周辺から物を別の場所へ移動させたり、飛散防止のためシートで覆う等、前処理の負担や環境汚染の問題が指摘されていた。
特開平10−165557号公報 実公平7−33816号公報
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とする。すなわち、第一に天候に左右されず、施工工程を単純化することによって構造物に防護パットを取り付ける工期を従来の半分以下に短縮することを目的とする。
本発明の第二の課題は、地面側にアンカーボルトのスペースを発生させることなく、構造物に防護パットを取り付けることを目的とする。
本発明の第三の課題は、構造物と防護パットの当接面における耐水性を向上させることを目的とする。
本発明の第四の課題は、耐環境性に優れた衝撃吸収用防護パットを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために以下の構成を有した衝撃吸収用防護パットを採用した。
(1)競技場または運動場に設置されている構造物に人が接触したときの衝撃を吸収するために前記構造物の表面に取り付けられる防護パットにおいて、当該防護パットが二層構造で形成されており、当該防護パットの内側である芯材が軟質発泡樹脂材料から形成された軟質発泡樹脂層であり、当該軟質発泡樹脂層の全表面が前記軟質樹脂層における発泡樹脂よりも硬い半硬質または硬質樹脂材料から形成された硬質樹脂層で被覆されていることを特徴とする衝撃吸収用防護パットである。
(2)前記軟質樹脂層がウレタンフォームまたはウレタンフォームを基材とした複合体によって形成されており、前記硬質樹脂層がポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂によって形成されていることを特徴とする上記(1)に記載された衝撃吸収用防護パットである。
(3)前記衝撃吸収用防護パットが前記構造物と当接する面に接着層を有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載された衝撃吸収用防護パットである。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、屋外に設置する前に工場内にて予め完成品化されているため、天候に左右されず、施工工程を単純化することによって構造物に防護パットを取り付ける工期を従来の半分以下に短縮する優れた効果を奏する。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、地面側にアンカーボルトのスペースを発生させることなく、構造物に防護パットを取り付けることができる。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、軟質発泡樹脂層の全表面が完全防水化されているため、構造物と防護パットの当接面における耐水性を向上させることができる。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、耐環境性に優れた衝撃吸収用防護パットを提供するという効果を奏する。
本発明の実施形態1に係る衝撃吸収用防護パットを示す斜視図である。 本発明の実施形態1に係る衝撃吸収用防護パットの断面図である。 従来の防護パットの一例を示す断面図である。 従来の防護パットの一例を示す断面図である。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、二層構造で形成されている。ここで前記防護パットの内側である芯材は、軟質発泡樹脂材料を使用して形成する。軟質発泡樹脂材料としては、ウレタンフォームやウレタンフォームを基材とした複合体を用いることができる。例えば、エーテル系またはエステル系ウレタンフォーム、ポリオールとポリイソシアネートを主成分として発泡剤、製泡剤、触媒、着色剤等を混合し、樹脂化してから発泡させたものが挙げられる。これらの連続気泡発泡体が好ましい。この軟質発泡樹脂材料によって形成される軟質発泡樹脂層は、柔軟性に優れている必要があり、硬度(JIS−K6401)。5〜50kgf/314cm2とするのが好ましい。勿論、構造物に衝突したときの衝撃を緩和するものであれば、上記の材料以外の軟質発泡樹脂材料を用いても良い。例えば、プラスチック樹脂発泡体、プラスチック樹脂板、木質ボード、二種以上のプラスチック樹脂板やプラスチック繊維、ウレタンフォームと木質ボードを積層した複合体等であっても衝撃吸収性を有するものであれば、何れの材料を用いても良い。
また前記軟質発泡樹脂層の全表面は、前記軟質樹脂層における発泡樹脂よりも硬い半硬質または硬質樹脂材料から形成された硬質樹脂層で被覆されている。硬質樹脂層は、ポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂によって形成されるのが好ましい。その他、複数のプラスチック樹脂からなる複合体等も耐候性、耐水性を有する材料については使用することができるし、他の材料であっても上記軟質発泡樹脂材料より硬質なものであれば、何れの材料を用いても良い。
中でもポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂は、繰り返し衝撃に対しても割れたりすることがなく、同時に、適度の硬さと柔軟性を有するとともに、耐候性、耐水性及び速乾性を有するので好ましい。ここでポリウレタン樹脂としては、ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。またポリウレア樹脂は、イソシアネートとアミノ基の化学反応によって形成されたウレア結合が主体となった化合物であり、硬化時間がきわめて短く、無溶剤、無触媒により環境性に優れるとともに、耐酸、耐アルカリ性等の耐薬品性や耐久性にも優れている。
これらのポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂を使用すれば、高伸び率の硬質樹脂材料を得ることができるため、スプレーガン等により軟質発泡樹脂層の全表面に被膜を均一に施工することができる。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、上述の構成を採用することによって、工場内にて予め完成品を製造することができる。従来の衝撃吸収用防護パットは、現場にて、コンクリートに直に軟質発泡樹脂層を接着剤により接着した後、防護ゴムシートを積層するか、軟質樹脂材料を吹き付け、乾燥硬化させることによって耐候性及び耐水性を有する防護層を形成していた。そのため、雨天時には施工を行うことができなかった。本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、天候に左右されず屋内で完成品を製造することができるため、施工現場においては、コンクリートに接着するだけで衝撃吸収用防護パットを取りつけることが出来るため、天候に左右されず、施工工程も単純化することができ、構造物に防護パットを取り付ける工期を従来の半分以下に短縮することができる。
また本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、予め施工する場所の面積にあわせて完成品を製造しておけば、地面側にアンカーボルトのスペースを発生させることなく防護パットを取り付けることができる。
また本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、軟質発泡樹脂層の全表面が完全防水化されているため、構造物と防護パットの当接面における耐水性を向上させることもできる。
本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、耐環境性に優れた衝撃吸収用防護パットを提供するという効果を奏する。
さらに本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、現場で軟質樹脂材料を吹き付ける必要がないことから、軟質樹脂材料の飛散により、構造物の周辺を汚染することがない。また、従来施工前に行っていた、施工場所の付近に駐車されている車等を別の場所へ移動させたり、飛散防止のため車等をシートで覆うといった、前処理を行う必要もなくなるため、工期の大幅な短縮化につながることになる。
また、本発明に係る衝撃吸収用防護パットは、構造物との当接面に接着層を有しても良い。接着層を形成する接着剤としては、変成シリコーン系弾性接着剤、クロロプレンゴムを主成分とした接着剤、その他ブチルゴム等の溶剤系のものやアクリルゴム等を主原料とするエマルジョン系等の接着剤を用いることができる。もちろん本発明に係る衝撃吸収用防護パットと構造物とを接着できる材料であれば何を用いても良い。
以下に本発明に係る実施の形態を示す。以下に示される実施の形態は、本発明の実施態様の一例であって、本発明を下記の実施形態に限定するものではない。
実施形態1
図1は、本発明の実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10を示す斜視図である。
本発明の実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10は、図1に示す如く、競技場または運動場に設置されているコンクリートフェンスに人が接触したときの衝撃を吸収するためのものであり、コンクリート1の表面上部に引っ掛けるように被せて接着剤を使用して表面に取り付けられる。
本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10を設置することにより、コンクリート1の上部から略グラウンドレベル(GL)までカバーすることができる。
図2は、本発明の実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10を示す断面図である。
図2に示す如く、本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10は、二層構造で形成されている。本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10における芯材である軟質発泡樹脂層12は、ウレタンフォームにより形成されている。
また前記軟質発泡樹脂層12の全表面は、図2に示す如く、前記軟質樹脂層12におけるウレタンフォームよりも硬い超速硬化ウレタン樹脂により形成された硬質樹脂層11によって被覆されている。かかる硬質樹脂層11は、耐候性及び耐水性に優れている。硬質樹脂層11の形成方法は、スプレーにより超速硬化ウレタン樹脂を軟質発泡樹脂層12の全表面上に約3.0mm程度以下で均一に吹きつけることにより行う。
さらに本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10は、コンクリート1と衝撃吸収用防護パット10との当接面に接着層15が形成されている。本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10では、変成シリコーン系弾性接着剤を用いた。また、本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10は、コンクリート1と衝撃吸収用防護パット10の接着強度を向上させるため、特に取りつけ初期における接着強度を補完するために、ホールインアンカ17が打設されている。
本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10は、予め完成品を工場内で製造しておく。その後現場にて、コンクリート1に本実施形態1に係る衝撃吸収用防護パット10を接着層15を介して接着した後、ホールインアンカ17によって固定する。このような構造を採用したことによって、天候に左右されず屋内で完成品を製造することができるため、施工現場においては、天候に左右されず、施工工程を単純化することができ、構造物に防護パットを取り付ける工期を従来の半分以下に短縮することができるのである。
1 構造物(コンクリート)
10 衝撃吸収用防護パット
11 硬質樹脂層
12 軟質発泡樹脂層
15 接着層

Claims (2)

  1. 競技場または運動場に設置されている構造物に人が接触したときの衝撃を吸収するために前記構造物の表面に取り付けられる防護パットにおいて、当該防護パットが前記構造物の上部に引っ掛けられ、かつ、前記構造物の表面下部まで防護される形状を有した二層構造で形成されており、当該防護パットの内側である芯材が硬度(JIS−K6401)5〜50kgf/314cm2の軟質発泡樹脂材料から形成された軟質発泡樹脂層であり、当該軟質発泡樹脂層の全表面が前記軟質樹脂層における発泡樹脂よりも硬い半硬質または硬質樹脂材料から形成された硬質樹脂層で被覆され、前記防護パットが前記構造物と当接する面に接着層及び打設されたホールインアンカを有することを特徴とするコンクリートフェンスの衝撃吸収用防護パット。
  2. 前記軟質樹脂層がウレタンフォームまたはウレタンフォームを基材とした複合体によって形成されており、前記硬質樹脂層がポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載された衝撃吸収用防護パット。
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