JP5612884B2 - 耐震外壁構造および耐震外壁工法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、断面T字型長尺金物(T桁状金物)の基部が外装板材の取り付け下地壁面に垂直に固設され、また前記断面T字型長尺金物の左右の天板部(平行板部)に、上下又は左右端面に全長溝を有する外装板材の全長溝が嵌合・固定され、かつ前記外装板材の裏面と取り付け下地壁面との間には弾力性の緩衝材板が挟装・接合されてなることを特徴とする外装板材の壁面取り付け構造が開示されている。
特許文献1の壁面取り付け構造は、外装板材の取り付け下地壁面に断面T字型長尺金物の基部を固定し、断面T字型長尺金物に外装板材を固定するとともに、下地壁面と外装板材の間にプラスチックフォームからなる緩衝材板を挟装・接合した構造である。この壁面取り付け構造において外装材は、断面T字型長尺金物によって連続的に固定されているため、地震時に既存外壁(下地壁面)が想定以上に変形した場合、外装材が変形に追従できず、外装材にひび割れを生じてしまう恐れがあった。
前記既存外壁の外面側に、合成樹脂発泡成形体からなる断熱パネルの一方の面側が接着され、前記断熱パネルの他方の面側に外装材が接着されてなることを特徴とする耐震外壁構造を提供する。
また、既存外壁の外面側に合成樹脂発泡成形体からなる断熱パネルを介して外装材を接着固定しているので、地震時に建築物に発生する変形を断熱パネルで緩衝し、外装材の変形を抑制することができ、外装材のひび割れ発生を低減できる。
図1は、本発明の耐震外壁構造の一実施形態を示す斜視図であり、また図2は、同じ耐震外壁構造の一実施形態を示す(a)断面図、(b)要部拡大図である。また図3は、本発明の耐震外壁構造を構築する前の既存外壁の構造を示す(a)断面図、(b)要部拡大図である。
なお、本実施形態では、建築物の既存外壁1として、木造住宅の外壁を例示しているが、本発明はこれに限定されることなく、他の外壁構造を有する木造住宅やビル、マンションなどの他の建築物の既存外壁にも適用可能である。
また、既存外壁1の外面側に合成樹脂発泡成形体からなる断熱パネル3を介して外装材4を接着固定しているので、地震時に建築物に発生する変形を断熱パネル3で緩衝し、外装材4の変形を抑制することができ、外装材4のひび割れ発生を低減できる。
本発明の耐震外壁工法において、使用する接着剤2や外装材4は、従来周知の建設資材を用い、既存外壁を作る場合と同様の工法を用いて構築可能であり、また断熱パネル3は軽量であることから搬送や施工が容易であり、従来の耐震補強工事と同様に施工可能である。また、断熱パネル3が軽量で搬送が容易であることから、住宅密集地など狭い作業スペースが求められる建築物でも耐震補強工事が可能である。
建築基準法施行令第46条第4項表1の(ハ)の認定に係る性能評価として、JIS A1414に準拠したタイロッド式の試験を行った。以下の実施例1〜3及び比較例1にそれぞれ記した試験体材料を用いて層間変位角評価用の試験体を作製した。
試験体形状は、910mm×2730mm(芯々)とした。
作製した試験体の土台部を試験機の床に固定し、試験体の梁部に水平載荷を実施した。試験体の層間変形角が1/50,1/30,1/20radとなる時に、試験体の外装材に発生した幅0.1mm以上のひび割れを確認した。評価基準は、それぞれの層間変形角について、次の通りとした。
良好(○):外装材にひび割れは確認されなかった。
不良(×):外装材にひび割れが確認された。
試験体材料:
柱、土台 :杉材 105mm×105mm
梁 :米松 105mm×180mm
既存外壁 :サイディング 455×910mm厚さ12mm
接着剤 :モルタル:厚さ2mm
断熱パネル:積水化成品工業社製のポリスチレン系樹脂発泡成形体、商品名「ESダンマット」、密度17kg/m3、厚さ25mm
座金つきビス:固定間隔300mm
外装材:ガラスメッシュ入りモルタル、厚さ5mm
厚さ50mmの断熱パネルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
厚さ20mmの断熱パネルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
断熱パネル及び接着剤を用いず、サイディング(既存外壁)の外面に直接外装材(ガラスメッシュ入りモルタル、厚さ5mm)を設けたこと以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
特に、断熱パネルの厚さを25mm、及び50mmとした実施例1,2では、層間変形角1/20radでも外装体にひび割れを生じなかった。
一方、断熱パネルを用いない比較例1は、層間変形角1/50、1/30及び1/20radの全てで外装材にひび割れを生じた。
Claims (12)
- 建築物の既存外壁に取り付けて建築物の耐震性能を向上させる耐震外壁構造であって、
前記既存外壁の外面側に、合成樹脂発泡成形体からなる断熱パネルの一方の面側が接着され、前記断熱パネルの他方の面側に外装材が接着されてなり、
前記断熱パネルを貫通して一端側が前記既存外壁側に固定された固定部材の他端側が前記外装材に固定され、
前記固定部材が、前記既存外壁側に一端側が固定されるビスと、該ビスの他端側に係止され前記外装材と固定される座金とを含むことを特徴とする耐震外壁構造。 - 前記既存外壁と前記断熱パネルとが実質的に全面接着され、かつ前記断熱パネルと前記外装材とが実質的に全面接着された請求項1に記載の耐震外壁構造。
- 前記断熱パネルの厚みが20mm以上である請求項1又は2に記載の耐震外壁構造。
- 前記既存外壁と前記外装材とを固定する前記固定部材の配置間隔が200mm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐震外壁構造。
- 前記外装材が前記断熱パネルの他方の面に塗布されたモルタルを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐震外壁構造。
- 前記既存外壁と前記断熱パネルとがモルタルによって接着された請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐震外壁構造。
- 建築物の既存外壁に接着剤を介して合成樹脂発泡成形体からなる断熱パネルの一方の面側を接着し、続いて該断熱パネルの他方の面側に外装材を接着して耐震外壁構造を構築する耐震外壁工法であって、
前記既存外壁に前記断熱パネルの一方の面側を接着した後、固定部材の一端側を前記既存外壁側に固定し、前記固定部材の他端側と前記外装材とを固定し、
前記固定部材が、前記既存外壁側に一端側が固定されるビスと、該ビスの他端側に係止され前記外装材と固定される座金とを含むことを特徴とする耐震外壁工法。 - 前記既存外壁と前記断熱パネルとを接着剤を介して実質的に全面接着するとともに、前記断熱パネルと前記外装材とを実質的に全面接着する請求項7に記載の耐震外壁工法。
- 前記断熱パネルの厚みが20mm以上である請求項7又は8に記載の耐震外壁工法。
- 前記既存外壁と前記外装材とを固定する前記固定部材の配置間隔を200mm以上とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の耐震外壁工法。
- 前記外装材が前記断熱パネルの他方の面に塗布されたモルタルを含む請求項7〜10のいずれか1項に記載の耐震外壁工法。
- 前記既存外壁と前記断熱パネルとをモルタルで接着する請求項7〜11のいずれか1項に記載の耐震外壁工法。
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