以下、本発明に係るパイロットバルブ装置の実施の形態について、図1ないし図17を参照して説明する。
ここで、図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。図において、1は第1の実施の形態で採用したパイロットバルブ装置で、該パイロットバルブ装置1は、例えば油圧ショベル等の建設機械の運転室(図示せず)内に配設され、後述の出力ポート7からパイロット圧を発生することにより方向制御弁(図示せず)の切換操作を行うものである。パイロットバルブ装置1は、その外殻を構成するケーシング2と、該ケーシング2内に収容された4個のパイロット弁21とから大略構成されている。
ここで、図3および図4に示すように、ケーシング2の下端部側には、パイロット油圧源としての油圧ポンプ3からの圧油が流入するポンプポート4と、タンク5と常時連通するタンクポート6と、前記方向切換弁の油圧パイロット部(図示せず)に接続される合計4個の出力ポート7(2個のみ図示)が設けられている。
そして、ケーシング2内には、各出力ポート7に連通する後述のスプール摺動孔8と、該スプール摺動孔8の上端側に連通するばね室15と、ばね室15の上方に位置するダンピング室16と、ばね室15とタンクポート6との間を連通する連通路19とが設けられている。
8はケーシング2内に上,下方向に伸長して設けられたスプール摺動孔を示し、該スプール摺動孔8は、後述のスプール22が摺動可能に挿嵌されるものである。ここで、スプール摺動孔8は、その下端側が出力ポート7と連通し、上端側は後述のばね室15に開口している。また、スプール摺動孔8の途中部位は、ポンプポート4に連通している。そして、ばね室15に開口するスプール摺動孔8の上端側の開口端の周囲には、後述の戻しばね25が当接するばね座8Aが形成されている。
一方、ケーシング2の上端側中央部には、有底な雌ねじ部9が設けられ、該雌ねじ部9の周囲には、後述するダンピング室16が4個設けられている。
10はオペレータにより傾転操作される操作レバーを示している。該操作レバー10は、パイロットバルブ装置1のケーシング2に付設されている。操作レバー10は、棒状のレバー本体11と、該レバー本体11に一体的に固定されたカム12と、十字継手等からなる連結部13と、ケーシング2の雌ねじ部9に螺着された取付部材14等とから構成され、レバー本体11の基端側は連結部13を介して取付部材14に揺動可能に連結されている。
ここで、カム12はレバー本体11の基端側から径方向外向きに突出し、その下面側が後述するプッシャ26の上端(突出端)側に当接している。そして、カム12は操作レバー10に対する傾転操作に応じて傾転し、これによってプッシャ26を中立位置と操作位置との間で押圧操作する。
15は各スプール摺動孔8の上方に形成された4個のばね室を示し、該各ばね室15は、スプール摺動孔8よりも大径な横断面円形に形成され、ケーシング2内を上,下方向に延びている。各ばね室15内には、油液が充満した状態で収容され下端側が後述する連通路19に連通している。これにより、各ばね室15は、連通路19を介してタンクポート6に常時連通している。そして、各ばね室15には、後述するプッシャ26のピストン部26Aが上,下方向に摺動可能に配設されると共に、後述のスプール22、圧力設定用ばね24、および戻しばね25が、上,下方向に延在して配設されている。
16はばね室15の上方で雌ねじ部9の周囲に形成された4個のダンピング室を示している。該各ダンピング室16は、後述するプッシャ26のピストン部26Aを介してばね室15と連通している。そして、ダンピング室16内には、後述するプッシャ26の軸部26Bが摺動可能に配設される。各ダンピング室16内も、タンクポート6からの油液により満たされている。
17はダンピング室16を上側から覆うようにケーシング2に嵌合して設けられたブッシングを示し、該ブッシング17は、ケーシング2内にダンピング室16を形成するための蓋部材を構成するものである。このブッシング17の内周側には、後述するプッシャ26の軸部26Bが摺動可能に挿嵌されている。即ち、ブッシング17は、プッシャ26に対する軸受部材として構成されている。
18は環状のシール部材を示し、該シール部材18は、ブッシング17の内周側に装着された状態で、ブッシング17とプッシャ26の軸部26Bとの間に配設され、これによって両者の間に外部から異物等が侵入するのを防止すると共に、ダンピング室16内の油液が外部に漏洩するのを防止している。
19はケーシング2内のほぼ中央部に設けられた連通路を示し、該連通路19は、ケーシング内を横方向(ほぼ水平方向)に延び、各ばね室15とタンクポート6との間を連通している。
20はケーシング2の上端側を施蓋する上蓋で、該上蓋20はダンピング室16を上側から覆うブッシング17を抜止め状態に保持している。
一方、パイロット弁21は、後述のスプール22と、圧力設定用ばね24と、戻しばね25と、プッシャ26とから大略構成されている。なお、各パイロット弁21は同一の構造を有しているので、以下、1つのパイロット弁の構成についてのみ説明する。
22は出力ポート7をポンプポート4とタンクポート6とのいずれかに連通させるスプールを示し、該スプール22は、スプール摺動孔8内に摺動可能に挿嵌された大径部22Aと、該大径部22Aの先端に設けられ、ばね室15内に延在した小径部22Bとからなっている。
ここで、大径部22A内には、その径方向および軸方向に連通孔23が設けられており、これにより、スプール22の位置に応じて出力ポート7をポンプポート4とタンクポート6とのいずれかに連通させる構成となっている。また、大径部22Aと小径部22Bとの境界は、段差面となっており、この段差面は後述する圧力設定用ばね24のばね座22Cとして構成されている。
小径部22Bの先端側の頭部22B1は、後述するプッシャ26の軸部26Bに設けられたスプール挿入穴26B1内に挿入され、該スプール挿入穴26B1内を上,下方向に移動可能になっている。
24はばね室15内に配設された圧力設定用ばねを示し、該圧力設定用ばね24の上端部は、後述するプッシャ26のピストン部26Aの下面26A2に設けられた後述のばね受28の下面28C側中央部に当接され、圧力設定用ばね24の下端部は、ばね座22Cに当接されている。このように、圧力設定用ばね24は、プッシャ26とスプール22との間に配設されている。そして、圧力設定用ばね24は、プッシャ26の押圧操作に応じて出力ポート7からの吐出されるパイロット圧の圧力設定を行うものである。
25はばね室15内で圧力設定用ばね24の外周側に配設された戻しばねを示し、該戻しばね25は、その上端部が後述のばね受28の下面28C外周側に当接され、下端部がスプール摺動孔8のばね座8Aに当接されている。この戻しばね25は、プッシャ26を操作位置から中立位置(初期位置)に復帰させるべく、ばね受28を介してプッシャ26を軸方向上向きに常時付勢している。
26はばね室15内に摺動可能に設けられたプッシャを示し、該プッシャ26は、外部(操作レバー10)からの押圧操作により戻しばね25に抗してスプール22を摺動変位させるものである。これにより、プッシャ26は、スプール22を出力ポート7とポンプポート4とに連通させることができる。そして、プッシャ26は、ばね室15とダンピング室16とを画成し後述の油路29が設けられたピストン部26Aと、該ピストン部26Aからダンピング室16内を介してケーシング2外に突出する軸部26Bと、ピストン部26Aの外周縁部から下方に向けて延び円筒状に形成された円筒部26Cとにより大略構成されている。
ピストン部26Aは、軸部26Bの下端側から径方向外方に向けて突出する環状体として形成され、その外径寸法はばね室15の内径寸法とほぼ同じ寸法となっている。また、ピストン部26Aには、その上面26A1と下面26A2との間を上,下方向に貫通して延び、ばね室15とダンピング室16とを連通する後述の油路29が設けられている。
プッシャ26の軸部26Bは、ピストン部26Aの中央部からダンピング室16内を上方に延びる円柱体として形成され、シール部材18を介してブッシング17の内周側に摺動可能に挿嵌されている。軸部26Bの上端側は、ケーシング2から突出し、その突出端には、ボール27が転動可能に設けられ、該ボール27はカム12の下面に点接触に近い状態で当接している。そして、操作レバー10を傾転操作したときには、カム12によりプッシャ26が下向きに押動され、これに追従してスプール22が下向きに変位する。
一方、軸部26Bの下端側には、スプール挿入穴26B1が上,下方向に延びて設けられ、該スプール挿入穴26B1内には、スプール22の頭部22B1が相対移動可能に挿入されている。スプール挿入穴26B1は、後述するばね受28を介してばね室15に常時連通している。スプール挿入穴26B1内も、タンクポート6からの油液により満たされている。
また、軸部26Bの外周側でピストン部26Aとの境界部分には、周方向に全周にわたって延び断面コ字形状に形成された環状の取付溝26B2が設けられている。該取付溝26B2には、後述するワッシャ32の内周側が抜止め状態で取付けられている。
円筒部26Cは、ピストン部26Aの端部から下方に向けて延びる筒状の円筒体として形成され、その外径寸法は、ばね室15の内径寸法とほぼ同じ寸法となっている。これにより、円筒部26Cは、ばね室15内を上,下方向に摺動可能になっている。また、円筒部26Cの内周側は、横断面円形状の空間部となり、この空間部の上端側は軸部26Bのスプール挿入穴26B1に連通している。そして、この空間部は、プッシャ26をケーシング2に組付けた状態でばね室15内に位置する。
28はプッシャ26の円筒部26C内に設けられたばね受を示し、該ばね受28は、段付きの円板状に形成されている。図10に示すように、ばね受28には、外周側から中央部に向けU字状をなして延び、かつ厚さ方向(上,下方向)に貫通して形成されたスプール挿通孔28Aが設けられている。スプール挿通孔28Aは、スプール22の小径部22Bが挿通されるものである。即ち、スプール22の小径部22Bをばね受28の外周側からスプール挿通孔28Aに挿入することにより、中央部でスプール22の頭部22B1が上,下方向で抜止めされる構成となっている。
また、スプール挿通孔28Aは、ばね室15とプッシャ26の軸部26Bに設けられたスプール挿入穴26B1とを連通している。これにより、油液は、ばね室15とスプール挿入穴26B1との間をスプール挿通孔28Aを介して移動可能となっている。
ばね受28の上面28Bは、プッシャ26のピストン部26Aの下面26A2に当接している。また、ばね受28の下面28Cの中央部には、圧力設定用ばね24の上端側が当接され、ばね受28の下面28Cの両端部には、戻しばね25の上端側が当接されている。これにより、プッシャ26が押圧されると、ばね受28は、戻しばね25を撓ませると共に、圧力設定用ばね24を介してスプール22を下方向に向けて移動させることができる構成となっている。そして、戻しばね25は、ばね受28を介してプッシャ26を軸方向上向きに常時付勢している。
次に、第1の実施の形態による逆止弁と絞りが設けられたプッシャ26の油路29について説明する。
29はプッシャ26のピストン部26Aに設けられた油路を示している。該油路29は、ばね室15とダンピング室16とを連通するもので、後述するボール弁体31が設けられた2個の大径油路29Aと、後述する絞りを構成する隙間34を形成する2個の小径油路29Bとにより構成されている。ここで、各大径油路29Aと各小径油路29Bとは、プッシャ26の軸部26Bから径方向外側に離間した同一の円周上に予め決められた間隔(例えば、90度の間隔)をもって配設されている。なお、大径油路29Aと小径油路29Bの個数は、それぞれ2個に限るものではなく、例えば1個または3個以上であってもよい。
大径油路29Aは、ダンピング室16側に位置する大径部29A1と、ばね室15側に位置する大径部29A1よりも内径寸法が小径な小径部29A2と、大径部29A1の下端側から小径部29A2の上端側に向けてテーパ状に形成され、後述するボール弁体31が離着座する弁座29A3とにより構成されている。一方、小径油路29Bは、上端側(ダンピング室16側)から下端側(ばね室15側)に内径寸法が同一な油孔として構成されている。
30は大径油路29Aに設けられた逆止弁を示し、該逆止弁30はダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。即ち、逆止弁30は、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて油液が流れるのを許し、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときにダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。そして、逆止弁30は、前記弁座29A3、ボール弁体31、およびワッシャ32を含んで構成され、この場合のワッシャ32は、大径油路29Aの大径部29A1からボール弁体31が抜け出すのを防止する抜止め部材を構成している。
31は逆止弁30の弁体を構成するボール弁体を示し、該ボール弁体31は、大径油路29Aの大径部29A1の内径寸法よりも小さく、小径部29A2の内径寸法よりも大きな直径寸法を有する球体として形成されている。ボール弁体31は、大径油路29Aの弁座29A3に着座することにより大径油路29Aを遮断し、弁座29A3から離座することにより大径油路29Aを開放する。
即ち、ボール弁体31は、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座29A3から離座することにより大径油路29Aを開放する。この場合、ボール弁体31は、大径油路29Aからダンピング室16内に抜け出さないように、後述のワッシャ32により抜止めされている。一方、ボール弁体31は、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座29A3に着座することにより大径油路29Aを遮断する。
32はプッシャ26の軸部26Bに設けられた環状板としてのワッシャを示し、該ワッシャ32の内周側は、プッシャ26の軸部26Bに形成された前記取付溝26B2に嵌合して固定されている。ワッシャ32の外周側は、プッシャ26のピストン部26Aの上面26A1に沿って径方向外側へと延び、各大径油路29Aと各小径油路29Bとの開口を部分的に閉塞している。
図5ないし図7に示すように、ワッシャ32は、プッシャ26の軸部26Bに固定された状態で、大径油路29Aの上端側(ダンピング室16側)の開口の一部を塞いでいる。これにより、ボール弁体31は、大径油路29Aの弁座29A3から離座したときに、ワッシャ32に当接する。従って、ワッシャ32は、ボール弁体31が大径油路29Aから抜け出すのを抑制することにより、逆止弁30の一部を構成している。また、ワッシャ32は、小径油路29Bの上端側(ダンピング室16側)の開口の一部を塞ぐことにより、後述する絞り33の一部も構成している。即ち、この場合のワッシャ32は、逆止弁30と絞り33との両方に兼用して設けられている。
33はばね室15とダンピング室16との間を流れる油液の流量を制限する絞りを示している。該絞り33は、前述したワッシャ32と、該ワッシャ32と各小径油路29Bとの間に形成された流路面積の小さい隙間34とにより構成されている。該隙間34は、ワッシャ32がプッシャ26の軸部26Bに取付溝26B2を介して固定された状態で、各小径油路29Bの上端側(ダンピング室16側)の開口の一部を塞ぐことにより、ワッシャ32の外周側と各小径油路29Bの内周面との間に形成されるものである。
これにより、小径油路29Bの上端側の開口は、流路面積の小さい隙間34として形成される。従って、プッシャ26が、戻しばね25により操作位置から中立位置に戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の流量を、各小径油路29Bとワッシャ32との隙間34により制限することができる。プッシャ26が操作位置から中立位置に復帰するときに、大径油路29Aはボール弁体31により遮断されているので、ダンピング室16からばね室15に流れる油液の流量を小さくする(抑える)ことができる。このように、前記隙間34からなる絞り33は、プッシャ26が戻しばね25により操作位置から中立位置に戻される中立復帰時に、ダンピング効果を利かせることができる。
本実施の形態によるパイロットバルブ装置1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、操作レバー10が中立位置(初期位置)にあるときには、スプール22の連通孔23が、ポンプポート4と出力ポート7とを遮断し、タンクポート6と出力ポート7とを連通させるから、出力ポート7は低圧状態におかれる。この結果、前記メイン回路の方向切換弁は中立位置に保持される。
次に、オペレータが操作レバー10を傾転操作すると、カム12は連結部13を支点として傾転することによりプッシャ26を中立位置から操作位置に向けて軸方向下向きに押圧操作し、このときの押圧操作量に応じて、スプール22が圧力設定用ばね24を介して軸方向下向きに摺動変位する。これにより、スプール22の連通孔23が、ポンプポート4と出力ポート7とを連通させ、タンクポート6と出力ポート7とを遮断する。
この結果、出力ポート7内が高圧状態におかれ、該出力ポート7内の圧力はフィードバック圧力としてスプール22に作用するから、該スプール22は圧力設定用ばね24のばね荷重に抗して軸方向上向きに摺動変位し、このとき圧力設定用ばね24はプリセット状態から圧縮されて撓む。
そして、スプール22の連通孔23が、再びポンプポート4と出力ポート7とを遮断し、タンクポート6と出力ポート7とを連通させると、出力ポート7内の圧力が低下するから、圧力設定用ばね24が圧縮された状態から伸長するようになり、該圧力設定用ばね24のばね荷重によって、スプール22は再び軸方向下向きに摺動変位する。この結果、スプール22の連通孔23が、ポンプポート4と出力ポート7とを連通させ、タンクポート6と出力ポート7とを遮断するから、出力ポート7内の圧力が上昇する。
即ち、プッシャ26に対する押圧操作量に対応したばね荷重が圧力設定用ばね24に発生し、このばね荷重に対応して出力ポート7内の圧力が制御される。これにより、メイン回路内の方向切換弁に対して操作レバー10の操作量に応じたパイロット圧が供給され、方向制御弁は、出力ポート7内の圧力(パイロット圧)に応じたストローク量をもって中立位置から切換位置へと切換えられる。
この結果、メイン回路に接続された各油圧シリンダ、旋回モータ等(いずれも図示せず)のアクチュエータを、操作レバー10の操作量に応じた作動速度もって作動させることができ、油圧ショベルのブーム、アーム、およびバケット等を回動(俯仰動)させたり、上部旋回体を旋回させたりすることができる。
この場合、オペレータが操作レバー10を操作位置から中立位置に向けて戻すときには、オペレータが操作レバー10から手を離すと、プッシャ26が戻しばね25によって急に押し上げられるので、操作レバー10が中立位置に戻るときに振動が生じ易く、揺れ戻しが発生することがある。その結果、操作レバー10の揺れがパイロット弁21に伝わり、パイロット弁21の操作量が変動する虞がある。
そこで、第1の実施の形態では、操作レバー10(プッシャ26)が操作位置から中立位置に向けて戻るときに、ダンピング効果を利かせてプッシャ26に揺れ戻し等が発生するのを抑制している。
具体的には、プッシャ26が作業位置から中立位置に戻るとき(図6の状態から図5の状態)に、ダンピング室16内の油液は、プッシャ26のピストン部26Aに設けられた油路29を通じてばね室15へと流れる。この場合、油路29を構成する大径油路29Aには、逆止弁30が設けられているので、大径油路29A内のボール弁体31は、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座29A3に着座することにより大径油路29Aを遮断する。
また、油路29を構成する小径油路29Bには、絞り33が設けられている。即ち、絞り33は、ワッシャ32と、該ワッシャ32と各小径油路29Bとの間に形成された流路面積の小さい隙間34とにより構成されている。これにより、小径油路29Bの上端側の開口は、流路面積の小さい隙間34として形成されているので、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の流量を、各小径油路29Bとワッシャ32との隙間34により制限することができる。
油液は、ばね室15内およびダンピング室16内に充満しているので、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の流量が制限されると、プッシャ26のピストン部26Aは、戻しばね25の上向きの付勢力に抗した抵抗を受けることになる。これにより、プッシャ26に大きな揺れ戻しを発生させることなく、操作レバー10を操作位置から中立位置へと滑らかに戻すことができる。
一方、オペレータが操作レバー10を中立位置から操作位置に傾転させたとき(図5の状態から図6の状態)には、大径油路29A内のボール弁体31は、ばね室15からダンピング室16に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座29A3から離座することにより大径油路29Aを開放する。これにより、ダンピング効果は発生しないので操作レバー10の操作が重くなることがなく、操作フィーリングを向上することができる。
かくして、第1の実施の形態によるパイロットバルブ装置1によれば、プッシャ26には、該プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときにダンピング室16からばね室15に向けて流通する油液に抵抗を与える逆止弁30と、このときダンピング室16からばね室15に向けて流通する油液の流量を制限する絞り33とを設けている。これにより、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻るときにだけ逆止弁30を利かせ、ダンピング室16からばね室15に向けて流通する油液の流量を制限する絞り33によりダンピング効果を利かせている。この結果、プッシャ26を操作位置から中立位置へと戻すときにだけダンピング効果を利かせることができるので、プッシャ26や操作レバー10に揺れ戻し等が発生するのを抑制することができる。
また、オペレータが操作レバー10を介してプッシャ26を中立位置から操作位置に向けて押圧操作するときには、ダンピング効果を利かせないので、操作レバー10の操作が重くなることがなく、操作フィーリングを向上することができる。
また、逆止弁30を構成するボール弁体31は、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに大径油路29Aを開放し、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに大径油路29Aを閉じる。また、絞り33は、プッシャ26の軸部26Bに固定して設けられたワッシャ32と、該ワッシャ32と小径油路29Bとの間に形成された流路面積の小さい隙間34とにより構成されている。これにより、プッシャ26を操作位置から中立位置へと戻すときにだけダンピング効果を利かせることができるので、中立復帰時の揺れ戻しや振動を抑制することができる。
さらに、ばね室15とダンピング室16とを画成するプッシャ26のピストン部26Aに油路29を設けている。該油路29を構成する大径油路29Aには、逆止弁30としてのボール弁体31を設け、油路29を構成する小径油路29Bには、絞り33としてのワッシャ32および隙間34を設けるという簡単な構成としているので、部品点数が少なくコストを低減させることができる。
次に、図11ないし図13は、本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、逆止弁は油路を上側から塞ぐ可動ワッシャとして構成し、絞りは可動ワッシャと油路との間に形成された隙間により構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
41は第1の実施の形態によるプッシャ26に代えて用いられるプッシャを示し、該プッシャ41は、外部(操作レバー10)からの押圧操作により戻しばね25に抗してスプール22を摺動変位させるものである。そして、プッシャ41は、ばね室15とダンピング室16とを画成し後述の油路43が設けられたピストン部41Aと、該ピストン部41Aからダンピング室16内を介してケーシング2外に突出する軸部41Bと、ピストン部41Aの外周縁部から下方に向けて延び円筒状に形成された円筒部41Cとにより大略構成されている。
ピストン部41Aは、軸部41Bの下端側から径方向外方に向けて突出する環状体として形成され、その外径寸法はばね室15の内径寸法とほぼ同じ寸法となっている。また、ピストン部41Aには、その上面41A1と下面41A2との間を上,下方向に貫通して延び、ばね室15とダンピング室16とを連通する後述の油路43が設けられている。
プッシャ41の軸部41Bは、ピストン部41Aの中央部からダンピング室16内を上方に延びる円柱体として形成され、シール部材18を介してブッシング17の内周側に摺動可能に挿嵌されている。軸部41Bの上端側は、ケーシング2から突出し、その突出端には、ボール27が転動可能に設けられ、該ボール27はカム12の下面に点接触に近い状態で当接している。そして、操作レバー10を傾転操作したときには、カム12によりプッシャ41が下向きに押動され、これに追従してスプール22が下向きに変位する。
一方、軸部41Bの下端側には、スプール挿入穴41B1が上,下方向に延びて設けられ、該スプール挿入穴41B1内には、スプール22の頭部22B1が相対移動可能に挿入されている。スプール挿入穴41B1は、ばね受28を介してばね室15に常時連通している。スプール挿入穴41B1内も、ばね室15内やダンピング室16内と同様にタンクポート6からの油液により満たされている。
また、軸部41Bの外周側でピストン部26Aの近傍部分には、周方向に全周にわたって延び断面コ字形状に形成された環状の取付溝41B2が設けられている。該取付溝41B2には、後述のストッパ板42の内周側が抜止め状態で取付けられている。
円筒部41Cは、ピストン部41Aの端部から下方に向けて延びる筒状の円筒体で、その外径寸法は、ばね室15の内径寸法とほぼ同じ寸法となっている。これにより、円筒部41Cは、ばね室15内を上,下方向に摺動可能になっている。また、円筒部41Cの内周側は、横断面円形状の空間部となり、この空間部の上端側は軸部41Bのスプール挿入穴41B1に連通している。そして、この空間部は、プッシャ41をケーシング2に組付けた状態でばね室15内に位置する。
42はプッシャ41の軸部41Bの取付溝41B2に固着して設けられたストッパ板を示し、該ストッパ板42は、例えば剛性材料により環状体に形成されている。ストッパ板42の外周側は、プッシャ41のピストン部41Aの上面41A1に沿って径方向外側へと延び、後述の可動ワッシャ45がプッシャ41の軸部41Bの上方へ移動(摺動)するのを規制するものである。
43はプッシャ41のピストン部41Aに設けられた油路を示している。該油路43は、ばね室15とダンピング室16とを連通するもので、上端側(ダンピング室16側)から下端側(ばね室15側)に内径寸法が同一な油孔として構成されている。油路43は、プッシャ41の軸部41Bから径方向外側に離間した同一の円周上に予め決められた間隔(例えば、90度の間隔)をもって4個配設されている。なお、油路43の個数は、4個に限るものではなく、例えば1個または2個以上であってもよい。また、油路43の上端側の開口は、後述の可動ワッシャ45が着座する弁座43Aとして構成されている。
44は油路43に設けられた逆止弁を示し、該逆止弁44はダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。即ち、逆止弁44は、プッシャ41が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて油液が流れるのを許し、プッシャ41が操作位置から中立位置に向けて戻されるときにダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。そして、逆止弁44は、前記ストッパ板42、前記弁座43A、および可動ワッシャ45を含んで構成されている。
45は逆止弁44の弁体を構成する可動板としての可動ワッシャを示し、該可動ワッシャ45は、例えば剛性材料により環状体に形成され、プッシャ41の軸部41B外周側に上,下方向に移動可能に設けられている。可動ワッシャ45の外周側は、プッシャ41のピストン部41Aの上面41A1に沿って径方向外側へと延び、各油路43の開口を部分的に閉塞している。そして、可動ワッシャ45は、プッシャ41が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに油路43を開放し、プッシャ41が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに油路43を上側から塞ぐものである。
即ち、可動ワッシャ45は、プッシャ41が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座43Aから離座することにより油路43を開放する。この場合、可動ワッシャ45は、ストッパ板42に当接するまでプッシャ41の軸部41Bの外周側を上方に向けて摺動する。一方、可動ワッシャ45は、プッシャ41が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座43Aに着座することにより油路43の開口を部分的に遮断する。
この場合、可動ワッシャ45は、弁座43Aとストッパ板42との間をプッシャ41の軸部41Bに沿って上,下方向に摺動する。ストッパ板42は、油路43の近傍に設けられているので、可動ワッシャ45が必要以上に上方に摺動移動するのを抑制することができる。これにより、可動ワッシャ45は、プッシャ41の軸部41Bで斜めになって引っ掛かるのを抑制することができ、弁座43Aとストッパ板42との間を滑らかに摺動することができる。また、可動ワッシャ45は、各油路43の上端側(ダンピング室16側)の開口の一部を塞ぐことにより、後述する絞り46の一部も構成している。即ち、この場合の可動ワッシャ45は、逆止弁44と絞り46との両方に兼用して設けられている。
46はばね室15とダンピング室16との間を流れる油液の流量を制限する絞りを示している。該絞り46は、可動ワッシャ45と各油路43との間に形成された流路面積の小さい隙間47とにより構成されている。該隙間47は、可動ワッシャ45が油路43の弁座43Aに着座した状態で、各油路43の上端側の開口の一部を塞ぐことにより、可動ワッシャ45の外周側と各油路43の内周面との間に形成されるものである。
これにより、油路43の上端側の開口は、流路面積の小さい隙間47として形成される。従って、プッシャ41が、戻しばね25により操作位置から中立位置に戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の流量を、各油路43と可動ワッシャ45との隙間47により制限することができる。その結果、ダンピング室16からばね室15に流れる油液の流量を小さくする(抑える)ことができる。このように、隙間47からなる絞り46は、プッシャ41が戻しばね25により操作位置から中立位置に戻される中立復帰時に、ダンピング効果を利かせることができる。
かくして、第2の実施の形態によるパイロットバルブ装置においても、プッシャ41が操作位置から中立位置に戻るときのみダンピング効果を利かせることができる。即ち、逆止弁44を構成する可動ワッシャ45は、図12に示すように、プッシャ41が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに油路43を開放し、図11に示すように、プッシャ41が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに油路43を閉じる。また、絞り46は、可動ワッシャ45が油路43を上側から塞いだ状態で、可動ワッシャ45と油路43との間に形成された流路面積の小さい隙間47とにより構成されている。
これにより、プッシャ41を操作位置から中立位置へと戻すときにだけダンピング効果を利かせることができるので、中立復帰時の揺れ戻しや振動を抑制することができる。さらに、ばね室15とダンピング室16とを画成するプッシャ41のピストン部41Aに油路43を設けている。該油路43には、逆止弁44としての可動ワッシャ45を設け、可動ワッシャ45と油路43との間には、絞り46としての隙間47を設けるという簡単な構成としているので、部品点数が少なくコストを低減させることができる。
次に、図14および図15は、本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、逆止弁は油路を上側から塞ぐ弾性ワッシャとして構成し、絞りは弾性ワッシャと油路との間に形成された隙間により構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
51はプッシャ26のピストン部26Aに設けられた油路を示している。該油路51は、ばね室15とダンピング室16とを連通するもので、上端側(ダンピング室16側)から下端側(ばね室15側)に内径寸法が同一な油孔として構成されている。油路51は、プッシャ26の軸部26Bから径方向外側に離間した同一の円周上に予め決められた間隔(例えば、90度の間隔)をもって4個配設されている(2個のみ図示)。なお、油路51の個数は、4個に限るものではなく、例えば1個または2個以上であってもよい。また、油路51の上端側の開口は、後述の弾性ワッシャ53が着座する弁座51Aとして構成されている。
52は油路51に設けられた逆止弁を示し、該逆止弁52はダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。即ち、逆止弁52は、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて油液が流れるのを許し、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときにダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。そして、逆止弁52は、前記弁座51Aおよび弾性ワッシャ53を含んで構成されている。
53は逆止弁52の弁体を構成する弾性板としての弾性ワッシャを示し、該弾性ワッシャ53は、例えば撓み変形可能な弾性材料により環状体に形成されている。弾性ワッシャ53の内周側は、プッシャ26の軸部26Bに形成された取付溝26B2に嵌合して固定され、弾性ワッシャ53の外周側は、プッシャ26のピストン部26Aの上面26A1に沿って径方向外側へと延び、各油路51の開口を部分的に閉塞している。そして、弾性ワッシャ53は、内周側が取付溝26B2に固定された固定端となり、外周側が上方に向けて弾性的に撓み変形することができる自由端となっている。この場合、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに油路51を開放し、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに油路51を上側から塞ぐものである。
即ち、弾性ワッシャ53は、図15に示すように、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて流れる油液の圧力に押されて弾性ワッシャ53の外周側が上方に向けて弾性的に撓み変形することにより弁座51Aから離座して油路51を開放する。一方、弾性ワッシャ53は、図14に示すように、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座51Aに着座することにより油路51の開口を部分的に遮断する。また、弾性ワッシャ53は、各油路51の上端側(ダンピング室16側)の開口の一部を塞ぐことにより、後述する絞り54の一部も構成している。即ち、この場合の弾性ワッシャ53は、逆止弁52と絞り54との両方に兼用して設けられている。
54はばね室15とダンピング室16との間を流れる油液の流量を制限する絞りを示している。該絞り54は、弾性ワッシャ53と各油路51との間に形成された流路面積の小さい隙間55とにより構成されている。該隙間55は、弾性ワッシャ53が油路51の弁座51Aに着座した状態で、各油路51の上端側の開口の一部を塞ぐことにより、弾性ワッシャ53の外周側と各油路51の内周面との間に形成されるものである。
これにより、油路51の上端側の開口は、流路面積の小さい隙間55として形成される。従って、図14に示すように、プッシャ26が戻しばね25により操作位置から中立位置に戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の流量を、各油路51と弾性ワッシャ53との隙間55により制限することができる。その結果、ダンピング室16からばね室15に流れる油液の流量を小さくする(抑える)ことができる。このように、隙間55からなる絞り54は、プッシャ26が戻しばね25により操作位置から中立位置に戻される中立復帰時に、ダンピング効果を利かせることができる。
かくして、第3の実施の形態によるパイロットバルブ装置においても、プッシャ26が操作位置から中立位置に戻るときのみダンピング効果を利かせることができる。即ち、逆止弁52を構成する弾性ワッシャ53は、プッシャ26が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに弾性的に撓み変形して油路51を開放し、プッシャ26が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに油路51を閉じる。
また、絞り54は、弾性ワッシャ53が油路51を上側から塞いだ状態で、弾性ワッシャ53と油路51との間に形成された流路面積の小さい隙間55とにより構成されている。これにより、プッシャ26を操作位置から中立位置へと戻すときにだけダンピング効果を利かせることができるので、中立復帰時の揺れ戻しや振動を抑制することができる。さらに、ばね室15とダンピング室16とを画成するプッシャ26のピストン部26Aに油路51を設けている。該油路51には、逆止弁52としての弾性ワッシャ53を設け、該弾性ワッシャ53と油路51との間には、絞り54としての隙間55を設けるという簡単な構成としているので、部品点数が少なくコストを低減させることができる。
次に、図16および図17は、本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、プッシャの軸部に絞りを構成する透孔を設けたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
61は第1の実施の形態によるプッシャ26に代えて用いられるプッシャを示し、該プッシャ61は、外部(操作レバー10)からの押圧操作により戻しばね25に抗してスプール22を摺動変位させるものである。そして、プッシャ61は、ばね室15とダンピング室16とを画成し後述の油路63が設けられたピストン部61Aと、該ピストン部61Aからダンピング室16内を介してケーシング2外に突出する軸部61Bと、ピストン部61Aの外周縁部から下方に向けて延び円筒状に形成された円筒部61Cとにより大略構成されている。
ピストン部61Aは、軸部61Bの下端側から径方向外方に向けて突出する環状体として形成され、その外径寸法はばね室15の内径寸法とほぼ同じ寸法となっている。また、ピストン部61Aには、その上面61A1と下面61A2との間を上,下方向に貫通して延び、ばね室15とダンピング室16とを連通する後述の油路63が設けられている。
プッシャ61の軸部61Bは、ピストン部61Aの中央部からダンピング室16内を上方に延びる円柱体として形成され、シール部材18を介してブッシング17の内周側に摺動可能に挿嵌されている。軸部61Bの上端側は、ケーシング2から突出し、その突出端には、ボール27が転動可能に設けられ、該ボール27はカム12の下面に点接触に近い状態で当接している。そして、操作レバー10を傾転操作したときには、カム12によりプッシャ61が下向きに押動され、これに追従してスプール22が下向きに変位する。
一方、軸部61Bの下端側には、スプール挿入穴61B1が上,下方向に延びて設けられ、該スプール挿入穴61B1内には、スプール22の頭部22B1が相対移動可能に挿入されている。スプール挿入穴61B1は、ばね受28を介してばね室15に常時連通している。スプール挿入穴61B1内も、ばね室15内やダンピング室16内と同様にタンクポート6からの油液により満たされている。
また、軸部61Bの外周側でピストン部61Aの近傍部分には、周方向に全周にわたって延び断面コ字形状に形成された環状の取付溝61B2が設けられている。該取付溝61B2には、後述のストッパ板62の内周側が抜止め状態で取付けられている。さらに、取付溝61B2の上側には、後述の透孔67が設けられている。
円筒部61Cは、ピストン部61Aの端部から下方に向けて延びる筒状の円筒体で、その外径寸法は、ばね室15の内径寸法とほぼ同じ寸法となっている。これにより、円筒部61Cは、ばね室15内を上,下方向に摺動可能になっている。また、円筒部61Cの内周側は、横断面円形状の空間部となり、この空間部の上端側は軸部61Bのスプール挿入穴61B1に連通している。そして、この空間部は、プッシャ61をケーシング2に組付けた状態でばね室15内に位置する。
62はプッシャ61の軸部61Bの取付溝61B2に固着して設けられたストッパ板を示し、該ストッパ板62の外周側は、プッシャ61のピストン部61Aの上面61A1に沿って径方向外側へと延びている。ストッパ板62は、後述の可動ワッシャ65がプッシャ61の軸部61Bの上方へ移動(摺動)するのを規制するものである。
63はプッシャ61のピストン部61Aに設けられた油路を示している。該油路63は、ばね室15とダンピング室16とを連通するもので、上端側(ダンピング室16側)から下端側(ばね室15側)に内径寸法が同一な油孔として構成されている。油路63は、プッシャ61の軸部61Bから径方向外側に離間した同一の円周上に予め決められた間隔(例えば、90度の間隔)をもって4個配設されている(2個のみ図示)。なお、油路63の個数は、4個に限るものではなく、例えば1個または2個以上であってもよい。また、油路63の上端側の開口は、後述の可動ワッシャ65が着座する弁座63Aとして構成されている。
64は油路63に設けられた逆止弁を示し、該逆止弁64はダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。即ち、逆止弁64は、図17に示すように、プッシャ61が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて油液が流れるのを許し、図16に示すように、プッシャ61が操作位置から中立位置に向けて戻されるときにダンピング室16からばね室15に向けて油液が流れるのを抑えるものである。そして、逆止弁64は、前記ストッパ板62、前記弁座63A、および可動ワッシャ65を含んで構成されている。
65は逆止弁64の弁体を構成する可動板としての可動ワッシャを示し、該可動ワッシャ65は、例えば剛性材料により環状体に形成され、プッシャ61の軸部61B外周側に上,下方向に移動可能に設けられている。可動ワッシャ65の外周側は、プッシャ61のピストン部61Aの上面61A1に沿って径方向外側へと延び、各油路63の開口を閉塞している。そして、可動ワッシャ65は、プッシャ61が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに油路63を開放し、プッシャ61が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに油路63を上側から塞ぐものである。
即ち、図17に示すように、可動ワッシャ65は、プッシャ61が中立位置から操作位置に向けて押圧操作されるときに、ばね室15からダンピング室16に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座63Aから離座することにより油路63を開放する。この場合、可動ワッシャ65は、ストッパ板62に当接するまでプッシャ61の軸部61Bの外周側を上方に向けて摺動する。一方、図16に示すように、可動ワッシャ65は、プッシャ61が操作位置から中立位置に向けて戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の圧力に押されて弁座63Aに着座することにより油路63の開口を遮断する。
この場合、可動ワッシャ65は、弁座63Aとストッパ板62との間をプッシャ61の軸部61Bに沿って上,下方向に摺動する。ストッパ板62は、油路63の近傍に設けられているので、可動ワッシャ65が必要以上に上方に摺動移動するのを抑制することができる。これにより、可動ワッシャ65は、プッシャ61の軸部61Bで斜めになって引っ掛かるのを抑制することができ、弁座63Aとストッパ板62との間を滑らかに摺動することができる。
66はばね室15とダンピング室16との間を流れる油液の流量を制限する絞りを示している。該絞り66は、プッシャ61の軸部61Bにダンピング室16とスプール挿入穴61B1とを連通する小径の透孔67により構成されている。該透孔67は、プッシャ61のピストン部61Aに設けられた油路63の内径寸法よりも小さい内径寸法を有する油孔で、例えばプッシャ61の軸部61Bに1個設けられている。そして、透孔67は、プッシャ61の軸部61Bに設けられた取付溝61B2の上側でダンピング室16とばね室15とをスプール挿入穴61B1を介して常時連通している。なお、透孔67は、1個に限らず2個以上設けてもよい。
これにより、プッシャ61が、戻しばね25により操作位置から中立位置に戻されるときに、ダンピング室16からばね室15に向けて流れる油液の流量を、透孔67により制限することができる。この場合、プッシャ61が操作位置から中立位置に復帰するときに、油路63は可動ワッシャ65により遮断されているので、ダンピング室16からばね室15に流れる油液の流量を小さくする(抑える)ことができる。従って、透孔67からなる絞り66は、プッシャ61が戻しばね25により操作位置から中立位置に戻される中立復帰時に、ダンピング効果を利かせることができる。
かくして、第4の実施の形態によるパイロットバルブ装置においても、プッシャ61が操作位置から中立位置に戻るときのみダンピング効果を利かせることができる。特に、絞り66は、逆止弁64とは異なる位置で、プッシャ61の軸部61Bにダンピング室16とスプール挿入穴61B1とを連通して設けられた小径の透孔67として構成されている。これにより、透孔67をプッシャ61の軸部61Bに設けるという簡単な構成だけで絞り66を形成することができ、部品点数が少なくコストを低減させることができる。
なお、上述した第4の実施の形態では、逆止弁64をストッパ板62、弁座63A、および可動ワッシャ65を含んで構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第1の実施の形態の弁座29A3、ボール弁体31、およびワッシャ32により逆止弁を構成してもよく、また第3の実施の形態の弁座51Aおよび弾性ワッシャ53により逆止弁を構成してもよい。
また、上述した各実施の形態では、4個のパイロット弁21を有するパイロットバルブ装置1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2個のパイロット弁を有するパイロットバルブ装置に用いてもよい。
また、上述した各実施の形態では、油圧ショベルに搭載された油圧アクチュエータを操作するためのパイロットバルブ装置1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン等の他の建設機械に適用してもよく、さらには建設機械以外の産業用機械に搭載された油圧アクチュエータを操作するパイロットバルブ装置に適用してもよい。