JP5938617B2 - コンタクトレンズ用液剤組成物 - Google Patents

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本発明は、コンタクトレンズ用液剤組成物に係り、充分な酵素安定性と高い蛋白質洗浄効果及び脂質洗浄効果があり、防腐効力もあり、安全に使用できるコンタクトレンズ用液剤組成物であって、特に手指洗浄時の肌荒れを防止し得ることの出来るコンタクトレンズ用液剤組成物に関するものである。
コンタクトレンズはソフトコンタクトレンズ及びハード系コンタクトレンズに大別されるが、いずれのコンタクトレンズにおいても装用に伴い涙液成分である脂質や蛋白質などの汚れが付着してくる。このため、コンタクトレンズを外した後の洗浄やケアはコンタクトレンズを安全かつ快適に装用するためにはきわめて重要である。コンタクトレンズの手入れ方法としては、界面活性剤を含有する液剤を用いて、手指で擦り洗浄したり、界面活性剤や蛋白質分解酵素を配合した液剤に浸漬することによって保存・洗浄する方法が行われている。浸漬した後には、やはり手指により蛋白分解酵素で浮き上がった汚れを物理的にこすり洗浄することが行われる。そして装用に際しては、ソフトコンタクトレンズの場合には酵素などを含まず、生理的に等張化された保存液ですすいで装用し、ハード系コンタクトレンズの場合には保存液や汚れを最後に水道水ですすぎ流して装用するのである。
また、コンタクトレンズに付着する細菌などを殺菌するためや、コンタクトレンズ用液剤組成物自体の防腐のために、抗菌剤などを添加して液剤に防腐又は殺菌効果を付加させることが必要である。抗菌剤にはポリヘキサメチレンビグアニドや4級アンモニウム系抗菌剤といったカチオン系の抗菌剤、ソルビン酸などのアニオン系防腐剤、ヨウ素や過酸化水素などの酸化剤、ホルムアルデヒドドナーやアルコール系の抗菌剤などが知られている。
脂質汚れを除去するための界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤などがあり、アニオン性界面活性剤は洗浄力が高い反面、眼に直接入ると刺激性が比較的強いため、ハード系コンタクトレンズに用いられることが多い。一方、ノニオン性界面活性剤は、洗浄力が比較的低い反面、刺激性が比較的弱いため、ソフトコンタクトレンズやハード系コンタクトレンズにも用いられているのである。
蛋白質分解酵素を配合した洗浄剤には、酵素が水溶液中で変性して失活しやすいため、従来よりグリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコールなどにより安定化させる技術が種々提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、これらは大量の多価アルコールを含み、別の保存液などで使用時に希釈して用いる必要があった。
そこで、希釈せずにそのまま用いることが出来る酵素洗浄剤もいくつか提案されている。例えば特許文献3には蛋白分解酵素、5〜30(w/v)%の多価アルコール、1〜5(w/v)%のアルカリ金属塩、及び0.5〜20(w/v)%の界面活性剤を含むコンタクトレンズ用液剤組成物が開示されており、特許文献4には界面活性剤と炭素数5〜6のポリオールと蛋白分解酵素とを含むコンタクトレンズ用液剤が開示されており、蛋白分解酵素の安定化と防腐効力を達成している。しかし、これらのコンタクトレンズ用液剤でも浸漬した後に手指でこすり洗浄をすることが望ましく、こすり洗浄の際には、界面活性剤や蛋白分解酵素により手指の角質層が剥がれたり、皮膚の水分が奪われて肌荒れを起こすといった問題が内在していたのである。
保湿成分を酵素安定化剤として用いたものも提案されている。例えば、特許文献5では化粧品などで保湿効果があることが知られているピロリドンカルボン酸を5(w/v)%以上を酵素安定化剤として用いて、そのままコンタクトレンズの保存液として使用できる液剤が提案されている。しかし、洗浄効果が充分でなかったり、また、アニオン性界面活性剤を配合すると白濁が生じる場合もあった(特許文献6参照)。また、特許文献6では同様に化粧品で保湿剤として用いられているトリメチルグリシンを3〜65(w/v)%を酵素安定化剤として用いている。しかし、トリメチルグリシンを配合した場合にも、蛋白分解酵素の洗浄力が充分に発揮されないといった問題があったのである。
また、ピロリドンカルボン酸やトリメチルグリシンをカチオン系殺菌剤と共に用いて抗菌効力の向上を狙ったものも開示されている。例えば、特許文献7では酸性成分としてピロリドンカルボン酸、塩基性成分として塩基性アミノ酸又はトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選択される1種を含有する緩衝剤にトリメチルグリシン、ビグアニド系消毒剤を含有するコンタクトレンズ用溶液が開示されている。また、特許文献8にはトリメチルグリシンの代わりに糖アルコールを用いることが開示されている。しかしながら、蛋白質分解酵素の安定性は考慮されておらず、またアニオン性界面活性剤を配合した場合には抗菌力の低下やレンズへ悪影響を及ぼす可能性があるのである。
アミノ酸はカチオン性の抗菌剤と組み合わせた場合に抗菌力を増強させることは、特許文献9においても開示されている。しかし、蛋白分解酵素との組み合わせは記載が無く、酵素を含むコンタクトレンズ用液剤において洗浄効果を低下させずに酵素安定性を向上させたり、肌荒れの防止効果があることは知られていない。
また、ポリビニルピロリドンは粘稠剤としてコンタクトレンズ用液剤においても、他の粘稠剤と同様に一般的に用いられており、コンタクトレンズの水濡れ性を維持したり、涙液層を安定化するためにも用いられている(例えば特許文献10)。しかし、酵素を含むコンタクトレンズ用ケア溶液において、ポリビニルピロリドンが肌荒れの防止作用やアミノ酸による肌荒れ防止作用を増強することは知られていなかった。
特開平1−180515号公報 特開平9−38180号公報 特開平4−51015号公報 特開2004−77902号公報 特開平7−146454号公報 特開平11−178570号公報 特開2005−128220号公報 特開2006−198001号公報 WO2009/113161号公報 特開2007−77167号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、高い蛋白質洗浄効果、及び脂質洗浄効果があり、充分な酵素安定性と防腐効力があり、安全に使用できるコンタクトレンズ用溶液であって、特に手指洗浄時の肌荒れ防止効果があるコンタクトレンズ用液剤組成物、特に水性液剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(a)炭素数5〜6のポリオール、(b)蛋白分解酵素、(c)界面活性剤、(d)ピロリドンカルボン酸もしくはアミノ酸もしくはそれらの塩の中から選択される少なくとも1種類を組み合わせて使用することにより、高い蛋白質洗浄効果、及び脂質洗浄効果があり、充分な酵素安定性と防腐効力もあり、眼に対して安全に使用できるだけでなく、皮膚に対する保湿効果も高く、手指洗浄時の肌荒れを防止することができ得るコンタクトレンズ用液剤組成物を完成するに至ったのである。
ここで、炭素数5〜6のポリオールは、有利には1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロペンタン1,2−ジオールまたは1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、メチルシクロヘキサン−1,2,4−トリオール、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトロールの中から選択される少なくとも一種である。
また、前記アミノ酸は、有利には、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トレオニン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはこれらの塩から選択されるのである。
このように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物は、界面活性剤や蛋白分解酵素を含むコンタクトレンズ用液剤組成物を用いて手指洗浄を行う際に、皮膚に対する保湿性が向上し、肌荒れが防止されるのであり、皮膚保湿効果が高いにもかかわらず、コンタクトレンズに対する蛋白及び脂質洗浄効果も高く、溶液中での酵素安定性も高いために、使用時に希釈など行う必要もなく、また、充分な防腐効果を有しており、安全性と利便性を一層高めたコンタクトレンズ用液剤組成物なのである。
図1は実施例5及び比較例5の保湿効果試験の結果を示す図である。
本発明で用いられる炭素数5〜6のポリオールは蛋白質分解酵素を安定化する効果を有し、なお且つ防腐、抗菌、消毒効果を有するものであって、ノニオン性であるためにアニオン性の界面活性剤を使用しても抗菌力が低下することはないのである。また、炭素数が5より短いアルコールを用いた場合には、コンタクトレンズへの影響が大きくなったり、皮膚浸透性が高く安全に使用することが出来ず、炭素数が6より多いポリオールは酵素の安定化効果や抗菌効果は有するが、水性溶媒への溶解性が低下し、また、レンズへの蓄積性が高くなったり、レンズ規格への影響が懸念されるのである。本発明のポリオールは5〜6の炭素原子に少なくとも2以上の水酸基が結合したものであって、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4− ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロペンタン1,2−ジオールまたは1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、1,2,6− ヘキサントリオール、メチルシクロヘキサン−1,2,4−トリオール、シクロヘキサン−1,2,4,5− テトロールなどが挙げられる。また、驚くべきことに前記の炭素数5〜6のポリオールをピロリドンカルボン酸もしくはアミノ酸もしくはそれらの塩の中から選択される少なくとも1種類を組み合わせて使用すると、皮膚に対する保湿効果が顕著に高まることもわかった。炭素数5〜6のポリオールの使用濃度は、0.1〜15.0(w/v)%の範囲が好ましく、1.0〜5.0(w/v)%がより好ましい。前記ポリオールの濃度が0.1(w/v)%より低いと、防腐効力が不十分となり、15.0(w/v)%より多くなると、レンズの規格や表面状態に悪影響を及ぼす可能性があるのである。これらのポリオールの中でも、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが安全性、原料価格や供給面の点で特に好ましい。なお、これらの炭素数5〜6のポリオールはアニオン性界面活性剤と併用することができるため、高い脂質洗浄力が求められるハード系コンタクトレンズにより好適に用いることができる。
本発明の前記液剤組成物には、コンタクトレンズに付着する蛋白汚れを効果的に除去するために、蛋白分解酵素が配合される。本発明に使用される蛋白分解酵素としては、パパイン、ブロメライン、フィシン等の植物由来のプロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン等の動物由来のプロテアーゼ、バチルス属等の細菌が生産する細菌プロテアーゼ等の微生物由来のプロテアーゼ等の何れも使用することができる。具体的には、「ビオプラーゼ」(ナガセケムテックス(株)製)、「アルカラーゼ」、「エスペラーゼ」、「サビナーゼ」、「デュラザイム」、「ズブチリシンA」(ノボザイムズ・ジャパン(株)製)、「プロテアーゼN 『アマノ』」、「プロテアーゼS『アマノ』」(天野製薬(株)製)、「ビオソーク」(大和化成(株) 製)等を挙げることができる。液剤として初めから配合する場合の蛋白分解酵素濃度は、得ようとする洗浄効果や使用時間等に応じて適宜決定されるが、少なすぎると、洗浄効果が充分でなくなり、必要以上に多すぎても洗浄効果が高まることはなく、逆に手指洗浄時の皮膚に対する悪影響も懸念されるので、前記液剤中に、0.001〜5(w/v)%が適当である。そして、配合された蛋白分解酵素の安定化は、前記炭素数5〜6のポリオールの存在によって有利に図られるのである。
本発明の前記液剤組成物には、コンタクトレンズに付着する脂質汚れを主に効果的に除去するために、界面活性剤が配合される。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤があるが、本発明においては、コンタクトレンズへの影響が無く、水に溶解し、洗浄効果を有するものであれば、いずれも使用することが出来る。アニオン性界面活性剤は洗浄効果が高いものが多く、両性界面活性剤はアニオン性界面活性剤より洗浄力は低いがノニオン性界面活性剤よりは洗浄力が高く、刺激性もアニオン性とノニオン性界面活性剤の中間的なものが多い。ノニオン性界面活性剤は洗浄力は比較的低いが、刺激性も一般に低いのである。本発明ではこれらを適宜組み合わせて使用することが出来るが、洗浄効果を重視するとアニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
アニオン性界面活性剤としては、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン鎖を有するカルボキシ化エーテル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン鎖を有するアルキルエーテルリン酸塩/ 硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エーテル、N−アシルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などが挙げられる。これらは単独でも、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。この使用濃度は、0 .01〜5.0(w/v)%の範囲が好ましく、0.02〜1.0(w/v)%がより好ましい。アニオン性界面活性剤濃度が0.01(w/v)%より低いと、所望の洗浄効果を発揮しえず、また5.0(w/v)%よりも高くなると、洗浄効果として充分な上に必要以上の界面活性剤による眼刺激が生じるおそれがあるからである。これらのアニオン性界面活性剤のなかでも、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン鎖を有するアルキルエーテルリン酸塩/硫酸塩、アルキル硫酸塩、が特に好ましく用いられ、それぞれ具体的には、日光ケミカルズ(株)製「ニッコール OS−14」、日光ケミカルズ(株)製「ニッコールSBL−4N」、日本油脂(株)製「ニッサンパーソフトSP」などがある。
上記界面活性剤以外にも、洗浄効果のさらなる向上、洗浄液の刺激性緩和のためにノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を添加することができる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンステロール類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラノリンアルコール類、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド類等を挙げることが出来るのであり、中でも、好ましくはポリオキシエチレン鎖構造を含有しているものが採用される。また、両性界面活性剤としては、アルキルポリアミノエチルグリシン等のグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、等の酢酸ベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノプロピオン酸、アルキルアミノプロピオン酸塩等の両性界面活性剤等が挙げられる。これらの使用濃度は、0.01〜3.0(w/v)%の範囲が好ましく、0.02〜1.5(w/v)% がより好ましい。界面活性剤濃度が0.01(w/v)%より低いと、洗浄効果を発揮しえず、また3.0(w/v)%よりも高くなると、洗浄効果として充分な上に必要以上の界面活性剤を使用することになるからである。
本発明の前記液剤組成物には、ピロリドンカルボン酸もしくはアミノ酸もしくはそれらの塩の中から選択される少なくとも1種類が配合されることになる。ピロリドンカルボン酸はNMF(天然保湿因子)の一つとして、皮膚の中にも存在し、ナトリウム塩などは保湿・湿潤剤として化粧品にも用いられている。しかし、コンタクトレンズ用液剤組成物に手指洗浄時の皮膚保湿・保護剤として用いられてはいなかった。また、コンタクトレンズ洗浄剤には酵素安定化剤などとして使用されていた。しかし、ピロリドンカルボン酸だけでは酵素安定性や洗浄効果が不十分であったり、アニオン性界面活性剤と組み合わせると白濁する場合があるといった問題があった。そこで、ピロリドンカルボン酸を、炭素数5〜6のポリオール、蛋白分解酵素、界面活性剤と共に用いることによって、前記の問題を解決し、皮膚保湿・保護作用を有するコンタクトレンズ用液剤組成物が完成できたのである。
ピロリドンカルボン酸はピログルタミン酸とも言われ、D体、L体、DL体(ラセミ体)のいずれも用いることが出来る。また、遊離酸の形でもナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩など種々の塩でも使用することが出来る。ピロリドンカルボン酸もしくはその塩の使用濃度としては、0.001〜2.0(w/v)%の範囲が好ましく、0.01〜1.0(w/v)%の範囲がより好ましい。0.001(w/v)%より少ないと、皮膚保湿・肌荒れ防止効果が十分に発揮されず、2.0(w/v)%より高いと蛋白洗浄効果に悪影響を与えたり、アニオン性界面活性剤と組み合わせた場合に白濁が生じる可能性があるのである。
アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を有する有機化合物であり、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニンや、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、プロリンといった生体の蛋白質を構成するα−アミノ酸やタウリン、オルニチン、クレアチン、ヒドロキシプロリン、γ−アミノ酪酸、などが挙げられる。それらは光学異性体、ラセミ体が存在するものも多いが、そのいずれも使用することが出来る。好ましくは、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トレオニン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはこれらの塩であり、皮膚保湿効果の観点からアルギニン、トレオニンが最も好ましい。また、アミノ酸の中には酵素を安定化させたり、抗菌効果を高めるものもある。蛋白分解酵素の安定化効果が高いアミノ酸としては、アルギニン、トレオニン、アラニン、リジン、バリンなどが挙げられ、酵素安定化も保湿効果と共に高めるためにはこれらのアミノ酸が特に好ましい。抗菌効果を高めるものはアルギニンやリジンなどの塩基性アミノ酸が挙げられ、抗菌効果も保湿効果も高めるためにはこれら塩基性アミノ酸が特に好ましい。
これらのアミノ酸もしくはその塩の使用量としては、0.001〜2.0(w/v)%の範囲が好ましく、0.01〜1.0(w/v)%の範囲がより好ましい。0.001(w/v)%より少ないと、皮膚保湿・肌荒れ防止効果が十分に発揮されず、2.0(w/v)%より高くしても保湿効果が効果的に高まることは無いのである。本発明においては、これらのアミノ酸もしくはピロリドンカルボン酸、もしくはそれらの塩の中から選択される少なくとも1種類が配合されることになるが、言うまでもなく複数のアミノ酸とピロリドンカルボン酸を使用しても良い。生体の皮膚には約20種類の化合物から構成されるNMFと呼ばれる保湿成分が存在しており、むしろ複数のアミノ酸をバランスよく配合した方が、皮膚との適合性が良くなることが期待できるのである。そして、アミノ酸もしくはピロリドンカルボン酸もしくそれらの塩からなる保湿成分は全体としては10(w/v)%以下、好ましくは5(w/v)%以下、さらに好ましくは3(w/v)%以下である。これらの保湿成分を10(w/v)%以上配合しても皮膚保湿効果が高まることはなく、むしろ洗浄効果への悪影響が懸念されるのである。
本発明には、前記のアミノ酸もしくはピロリドンカルボン酸もしくそれらの塩からなる保湿成分以外にも、レンズへの影響がなく、皮膚や眼に安全で、水溶性である成分であれば、他の保湿成分も加えることができる。具体的には、乳酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸などのα−ヒドロキシ酸またはその塩、トレハロース、乳糖、ブドウ糖などの糖類やグルコサミンなどのアミノ糖、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などのムコ多糖やポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、などの水溶性高分子、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、尿素などが挙げられ、そのいずれも使用することが出来る。しかし、保湿成分でも化粧品などに使用されているセラミド、ラノリン、ワセリン、レシチンなどの脂溶成分は、コンタクトレンズの汚れの原因になるため使用することは好ましくない。また、これらの付加的な保湿成分の中でも、ポリビニルピロリドンはアミノ酸の保湿効果をより高める効果があり、特に好ましいのである。
本発明のコンタクトレンズ用液剤組成物においては、上記の成分に加えて、通常のコンタクトレンズ用液剤組成物に含まれる、緩衝剤、浸透圧調整剤、金属イオン封鎖剤、酵素安定化剤、防腐剤、増粘剤などを添加することが出来る。緩衝剤はpH変化が起こらないようにする目的で用いられ、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トロメタモール緩衝剤、クエン酸緩衝剤などがあり、これらを組み合わせて使用することも出来るが、中でもホウ酸緩衝剤は静菌効果を有することから、特に好ましい。このような緩衝剤の濃度は、一般に0.05〜3.0(w/v)%とされ、好ましくは0.1〜1.5(w/v)%、特に好ましくは0.3〜1.0(w/v)% とされる。緩衝剤の濃度が、0.05(w/v)%より低い場合には、コンタクトレンズ用液剤のpHを一定に保つことが難しくなるからであり、また3.0(w/v)%より高くても、pHの安定性がより向上せしめられるというわけではないからである。なお、液剤のpHは、涙液に近い方が好ましく、従って5〜9の範囲が好ましい。このpHは、前記緩衝剤により容易に維持されることとなり、保存、使用期間を通じて品質の安定した状態を保つことができるのである。
浸透圧調整剤は一般に生理的な浸透圧に近づけるために添加され、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸、ナトリウムなどが用いられ、に100〜1200mOsm程度、ソフトコンタクトレンズ用液剤に用いる場合には好ましくは200〜400mOsm程度の浸透圧に調整される。
金属イオン封鎖剤は涙液に含まれるカルシウムイオンなどがコンタクトレンズに不溶性塩として沈着しやすいため、このような汚れを除去または沈着防止するために添加される。金属イオン封鎖剤としては、眼科的に許容される化合物であれば特に制限はなく、例えばエチレンジアミン四酢酸、クエン酸、ニトリロ三酢酸、トリポリリン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレン−ジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレン−ホスホン酸)、アミノトリメチレンホスホン酸、N−アセチルデフェロキサミン、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩等の塩などを挙げることができる。中でも、エチレンジアミン四酢酸およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。金属イオン封鎖剤の使用濃度は、0.001〜0.1(w/v)%の範囲が好ましく、0.01〜0.05(w/v)%がより好ましい。金属イオン封鎖剤濃度が0.001(w/v)%より少ないと、多価金属イオンを除去する効果が不十分となり、0.1(w/v)%より多くても必要充分以上であるからである。
本発明においては、炭素数5〜6のポリオールによって蛋白分解酵素の安定化が図られるが、従来から用いられている多価アルコール類なども付加的に配合することも出来る。酵素安定化に用いられる多価アルコール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられ、中でもグリセリンまたはプロピレングリコールが酵素安定化効果が高く好ましい。これらの多価アルコール類の使用量は、0.5〜20(w/v)%、好ましくは1〜8(w/v)%で使用できる。
本発明に用いられる炭素数5〜6のポリオールは防腐、抗菌、消毒効果をも有するが、付加的に別の防腐、抗菌、または消毒剤を添加しても良い。付加的な抗菌剤としては従来より用いられている抗菌剤から、酵素安定性や洗浄効果など他成分への影響がなく、安全性の高いものが好ましい。具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロルヘキシジンやアレキシジンといったビグアニド基を有するカチオン性抗菌剤や、塩化ポリドロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、ポリクオタニウム−4、ポリクオタニウム−6、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−16、ポリクオタニウム−22などの4級アンモニウム基を有するカチオン性抗菌剤、ソルビン酸などのアニオン性の抗菌剤、5,5−ジメチルヒダントイン、メチロール化ヒダントインなどのホルムアルデヒドドナーなどから適宜選択される。
増粘剤は手指によるレンズ洗浄をする際の洗浄性を高めたり、界面活性剤の発泡性や泡の改質のために用いられる。ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、アラビアゴム、デキストリン、ガラクトマンナン、グルコマンナン、キサンタンガム、カチオン化デキストリン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン酸、アルギン酸、カラギーナン、ガラクタン、フラクタン、ムコ多糖及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる高分子多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カチオン化ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーからなる群より選ばれるビニル系高分子、及び平均分子量が約400〜約20000のマクロゴール、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリアルギニンからなる群より選ばれるペプチド系高分子、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、及び前記各共重合体の開環生成物またはその塩から選ばれる無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物には水溶性液剤組成物であり、実質的に水に不溶な成分は添加せず、調整法は通常の水溶液を調製する場合と同様に、所定量の滅菌精製水ないし脱イオン水に各成分を添加後、均一に溶解させることにより容易に得られるものである。そのようにして得られるコンタクトレンズ用液剤組成物は澄明であり、必要に応じて無菌ろ過滅菌等を行うこともできる。そして得られたコンタクトレンズ用液剤組成物を保存する容器の材質は一般的に点眼薬やコンタクトレンズケア溶液に用いられているものであれば特に制約を受けるものはなく、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、50〜1000mLのマルチドーズタイプのボトル、1〜20mL程度の一回使いきりのユニットドーズタイプのボトルのいずれの形態でも用いられる。また、吐出液を出すことが出来る一般的なノズルであっても、液を泡状にして噴出することが可能なノズルや、逆汚染防止機構のついたデラミボトルや逆止弁機構付きボトルなどいずれの形態のボトルでも用いることが可能である。
また、これを分注してコンタクトレンズを保存するために用いられる容器の材質や形状についても、特に制約を受けるものはなく、一般に用いられるコンタクトレンズケースであればいずれも用いることが出来る。ハード系のコンタクトレンズ用レンズケースで一般的な、レンズホルダーが付随しているものや、ソフトコンタクトレンズ用レンズケースで一般的な凹部に溶液を満たしてレンズを浸漬するものや、過酸化水素消毒で一般的なバスケットタイプのレンズホルダーが付随しているものなど、そのいずれも用いることが出来る。
そして、こうして得られた本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物は、コンタクトレンズ用洗浄液、すすぎ液、保存液、蛋白除去剤、消毒液、またはこれらの機能をあわせもつ多目的溶液として用いることが出来る。具体的には、例えば、使用前に流通ボトルからコンタクトレンズケースに必要量を分注し、眼から外したコンタクトレンズをそのままコンタクトレンズケースにセットして浸漬して、保存や消毒を行うことが可能である。浸漬は1
0 分から2 4 時間、好ましくは3 0 分から8 時間浸漬することにより、保存・洗浄・消毒を行う。本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物に含まれる蛋白分解酵素、界面活性剤により浸漬中に蛋白除去や脂質除去などの洗浄が行われる。また、炭素数5〜6のポリオールにより本液剤の防腐および必要な場合はコンタクトレンズやコンタクトレンズケースの消毒も行うことが出来るのである。
また、浸漬前または/および浸漬後に、手指や手のひら等を用いてこすり洗浄を行うことが望ましい。すなわち、コンタクトレンズを親指と人差し指の間で、あるいは手のひらの上に保持しながら、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤組成物を数滴滴下し、数秒から数十秒こすり洗浄を行う。滴下する液は溶液状態であっても泡状にしてレンズを包むようにこすり洗浄をしても良い。このようなこすり洗浄は、液剤成分による化学的な洗浄力に加えて、物理的な洗浄力が作用するため、コンタクトレンズの汚れを効果的に除去することができる。この際、従来のコンタクトレンズ用洗浄液では界面活性剤や蛋白分解酵素による手あれを引き起こすおそれがあったが、本発明においては、保湿成分が作用し、皮膚の水分保持力が高まり、手あれを防ぐことができるのである。こすり洗浄後のコンタクトレンズは、本発明に伴うコンタクトレンズ用液剤組成物ですすいで汚れを除去して再装用したり、ハード系コンタクトレンズの場合には水道水ですすいで再装用することが出来る。
上記の一連の操作により、コンタクトレンズを効果的、かつ簡便に保存・洗浄・消毒をすることが出来、皮膚に対する保湿成分を含むことにより、こすり洗浄の際の手あれも防止することができるため、より安全で快適にコンタクトレンズを使用することが出来るのこととなる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお表中の成分の商品名は下記に示すものであり、各成分は(w/v%)で示す。
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
まず、本発明の実施例1〜4及び比較例1〜4の各種コンタクトレンズ用液剤を表1に示す成分組成において均一に精製水に溶解して調製した。そして調製した各液剤のpH及び浸透圧を、それぞれpHメーター(F−21型:堀場製作所(株)製)及び浸透圧計(OM−6040型:アークレイ(株)製)を用いて測定し、その結果を表1に合わせて示した。なお、(a)成分のC5〜6のポリオールとしては、1,2−ペンタンジオール(商品名「ハイドロライト−5」:(株)感光社製)、(b)成分の蛋白分解酵素としては、微生物由来のプロテアーゼ(商品名「エスペラーゼ」:ノボザイム・ジャパン(株)製)、(c)成分の界面活性剤はアニオン性界面活性剤として、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(商品名「ニッコールOS−14」:日光ケミカルズ(株)製)を、ノニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(40)セチルエーテル(商品名「ニッコールBC40−TX」:日光ケミカルズ(株)製)を用いた。(d)成分の保湿成分は味の素ヘルシーサプライ(株)製のピロリドンカルボン酸ナトリウム(表中ではPCAナトリウムと示す)、L−アルギニン、L−トレオニン、グリシン、DL−アラニン、L−リジン塩酸塩、セリン、L−プロリンを使用した。またその他の成分として、緩衝剤としてホウ酸及びホウ砂、浸透圧調整剤として塩化ナトリウム、多価アルコールとしてグリセリン、金属イオン封鎖剤としてエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム(表中「エデト酸ナトリウム」と示す)、増粘剤としてポリビニルピロリドン(商品名「コリドン30」:BASF Co.製)、α−ヒドロキシ酸塩としてDL−乳酸ナトリウムを使用した。
Figure 0005938617
(実施例5及び比較例5)
−保湿効果試験−
保湿効果試験は、ヒトの前腕を用いて、以下のような手順で生体角膜水負荷試験により評価した。先ず室温約20℃、湿度約66%の環境下に1時間試験部位を安定化させた。次に、前腕屈側に各試験液を2箇所づつ塗布する位置を定め、2.5×2.5cmで試験範囲にしるしをした。各試験液を試験範囲全体に綿棒を用いて塗布し、1分間放置した後、精製水で30秒間試験液を洗い流した。試験範囲以外の余分な水を拭き取り、2分間自然乾燥させた。次に、精製水を試験範囲中心部に1滴のせ、10秒後に吸水紙で吸い取った。吸い取った直後から、60秒、90秒、120秒後に肌湿度計(SR−101型;ロゼンスター(株)製)を用いて、水分含量(%)を測定した。測定結果の平均値を求め、各測定ポイントの水分含量(%)と試験開始前の水分含量との差から水分含量の変化量(%)を求め、結果を図1に示した。
図1に示したように、本発明の実施例1〜4は比較例1〜4に比べて水分の変化量が僅かで、120秒後の変化量は−4.0〜−5.2%であった。(d)の保湿成分を加えていない比較例1及び比較例2では120秒後の変化量は−6.6〜−7.8であった。また、ピロリドンカルボン酸ナトリウム又はトリメチルグリシンをそれぞれ10%又は40%添加しハイドロライト−5を添加していない比較例3、比較例4においても水分含量変化量が大きく、120秒後の変化量は−8%をこえた。このことから、本発明のコンタクトレンズ用液剤は肌に対して水分保持効果を与えていることがわかる。
(実施例6及び比較例6)
−酵素安定性試験−
本発明の実施例1〜4及び比較例2〜4の各種コンタクトレンズ用液剤について、当該液剤の酵素活性を下記の手法に従って測定する一方、40℃で4週間保存した後にも同様にしてそれぞれの酵素活性を測定し、下式に従って、酵素活性残存率(%)を算出した。また、残存率が90%以上を○、80〜90%を△、80%未満の場合を×と判定し、結果を表2に示した。
−蛋白分解酵素の活性測定(TNBS法)−
各液剤(サンプル)0.6mLに1%亜硫酸ナトリウム溶液0.9mLを添加し、50℃で約2分放置する。そののち0.4%DMC基質溶液(20mLの精製水をバイアルビンに入れ、ホットプレートで80〜100℃に加温し、ジメチルカゼイン(ノボザイムズ・ジャパン(株)製)を0.20g加え20分程スターラーで撹拌して完全に溶かす。溶解後、ホウ酸緩衝液(ホウ砂4.28gとリン酸2水素ナトリウム・2水和物4.15gを精製水100mLに溶解したもの)20mLを加え、さらに精製水で全容50mLとした溶液)0.6mL添加し50℃で1分後、0.1%2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(TNBS)溶液を0.15mL加えてさらに50℃で25分置く。反応後、1.5mLの冷水を加えて、室温で25分置き、波長425nmにて吸光度(対照としてはサンプルの代わりに1%亜硫酸ナトリウム溶液0.6mLを使用したものをおいて)を測定する。酵素濃度既知の溶液を予め前記同様の方法により測定して検量線を作成しておき前記測定結果の吸光度からサンプルの酵素濃度を決定する。
酵素残存率(%)=(保存後のタンパク分解酵素活性/調製時のタンパク分解酵素活性)×100
Figure 0005938617
(実施例7及び比較例7)
−蛋白除去効果試験−
本発明の実施例3及び比較例2〜4の各種コンタクトレンズ用液剤について、蛋白除去効果試験を以下のようにして行った。まず、かかる蛋白除去効果試験に用いるために、牛製アルブミン:0.388(w/v)%、牛製γ−グロブリン:0.161(w/v)%、卵白リゾチーム:0.12(w/v)%、塩化ナトリウム:0.9(w/v)%、塩化カルシウム二水和物:0.015(w/v)%、リン酸二水素ナトリウム二水和物:0.104(w/v)%を水に溶解して調製し、1N水酸化ナトリウムを用いてpH7.0にした人工涙液を準備した。
試験用の前記ハードコンタクトレンズ(商品名「メニコンZ」:(株)メニコン製)を用意し、このコンタクトレンズを前記人工涙液10mL中に浸漬したまま、80℃×30分の熱処理を施し、その後、水道水で擦り洗いした。この操作を5回繰り返した後、レンズ表面が完全に白濁しているのを確認して、これらの人工白濁レンズを試験レンズとし、以下の実験に用いた。
得られた蛋白汚れレンズを4分割し、実体顕微鏡(商品名「エクリプスME600L」;ニコンインスティック製)に取り付けたデジタルカメラ(商品名「DSカメラヘッドDS−5M」:ニコンインスティック製)で各レンズ片を写真記録した。次いで、各試験液2mLに前記蛋白汚れレンズ片を1枚浸漬した。室温で2時間、4時間、6時間、8時間放置したのち、レンズ片を取り出し、水道水ですすぎ、乾燥させ、同様にデジタルカメラで各レンズ片を写真記録した。撮影したレンズ片の輝度を画像解析ソフトウエアにより読み取り、次の式から蛋白汚れ除去率(%)を算出し、結果を表3に示した。
蛋白汚れ除去率(%)=(1−所定時間浸漬後の輝度/浸漬前の輝度)×100
Figure 0005938617
実施例3のコンタクトレンズ用液剤は比較例2〜4の液剤と比べて高い蛋白除去率を示した。例えば、4時間後の除去率は実施例3の液剤は90%除去されていたが、比較例2では64%、比較例4では29%しか除去されておらず、比較例3では8時間たっても汚れはほとんど除去されなかった。このことから、本発明のコンタクトレンズ用液剤は高い蛋白洗浄効果を有することがわかる。また、比較例3及び比較例4は酵素安定性が本発明と同様に良好であったが蛋白除去効果が明らかに低いことがわかる。
−レンズへの影響試験−
(実施例8)
本発明の実施例3のコンタクトレンズ用液剤について、以下の試験によりコンタクトレンズに対する影響を確認した。実施例3のコンタクトレンズ用液剤2mLに酸素透過性ハードコンタクトレンズ(商品名「メニコンZ」:(株)メニコン製)1枚を8〜12時間浸漬した後、取り出して、同液剤を2〜3滴レンズに滴下し、指先にて5秒間こすり洗浄後、水道水にて5秒間すすぎ、再び新しい液剤2mL中に浸漬するサイクルを30サイクル繰り返した。処理後、当該レンズ(n=3)の外観、規格(ベースカーブ、パワー、サイズ)、表面の水濡れ性を測定し、試験前のレンズと比較した。なお、対照として現在市販されているコンタクトレンズ用洗浄保存液(商品名「オーツーケア」:(株)メニコン製)を使用した。その結果、本発明例、対照ともに外観、規格、水濡れ性に関し、試験前のレンズのそれとの間に差が無かった。従って、本発明例の液剤はレンズに対し、悪影響を与える物ではなく、良好な適合性を有していることが判る。
−防腐効力試験−
(実施例9)
本発明の実施例3のコンタクトレンズ用液剤について、以下の試験により防腐効力を調べた。まず、供試菌として黄色ブドウ球菌(S.a.:Staphylococcus aureus ATCC6538)、大腸菌(E.c.:Escherichia coli ATCC8739)、緑膿菌(P.a.:Pseudomonas aeruginosa ATCC9027)の細菌3菌種については、SCD(ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト)寒天培地で33℃×24時間培養したものを用いて、酵母様真菌(C.a.:Candida albicans ATCC10231)についてはSGC培地(サブロー・ブドウ糖寒天培地)で33℃×24時間培養したものを用いて、それぞれ滅菌生理食塩液に懸濁し、10〜10cfu/mLの供試菌液となるように調製した。また、黒麹菌(A.n.:Aspergillus niger ATCC16404)についてはSGA培地で23℃×7日間培養したものを用い、0.05%ポリソルベート添加滅菌生理食塩液に懸濁し、10〜10cfu/mLの供試菌液となるように調製した。
次に、無菌的に調製した実施例3のコンタクトレンズ用液剤の10mLを別の滅菌済試験管に取り、そこへ各種の供試菌液の0.05mLを加えた。その後、それら各種の供試菌液配合液を、23℃の恒温槽中にて保管し、該配合液の調製から2週間後および4週間後に各配合液の一定量を取り出し、それぞれの配合液について、滅菌生理食塩液を用いて希釈し、寒天平板混釈法によって生菌数を調べた。この寒天平板混釈法における培養には、細菌3菌種はSCD寒天培地を用いて33℃×5日間の条件で、酵母様真菌についてはSGA培地を用いて33℃×5日間の条件で、また、黒麹菌についてはSGA培地を用いて23℃×7日間の条件にて培養した。
上記の方法により、接種直後の生菌数と、配合液の調製から2週間および4週間後の生菌数を求め、そして、かかる測定にて得られた生菌数から、下記の計算式に従って、対数に換算した菌減少量を求め、結果を表4に示した。
菌減少量〔対数換算〕=LOG(調製直後の菌懸濁1ml中の生菌数)−LOG(処理後の菌懸濁液1ml中の生菌数)
また、判定基準は、菌の減少量が各細菌については14日後に3.0LOG以上あり、28日後でも14日後と同レベル若しくはそれ以上減少した場合を○とし、真菌については14日後に接種菌数と同レベル若しくはそれ以上減少しており28日後でも14日後と同レベル若しくはそれ以上減少した場合を○とし、前記の条件を満たさない場合を×とした。
Figure 0005938617
表4に示すように本発明の実施例3は高い防腐効力を有することがわかる。
本発明は、コンタクトレンズのケアに使用する液剤であり、特に皮膚に対する保湿効果が高く、手指によるレンズ洗浄時の肌荒れを防止し得るコンタクトレンズ用液剤組成物である。特定成分の組み合わせにより、皮膚の保湿効果を有しながら、高い蛋白及び脂質洗浄効果があり、充分な酵素安定性と防腐効力があり、安全に使用することが出来る。

Claims (3)

  1. (a)炭素数5〜6のポリオール、(b)微生物由来の蛋白分解酵素、(c)界面活性剤であるα−オレフィンスルホン酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、(d)ピロリドンカルボン酸もしくはその塩の中から選択される少なくとも1種を含有し、前記(a)成分濃度が0.1〜15.0w/v%、前記(b)成分濃度が0.001〜5.0w/v%、前記(c)成分のうちα−オレフィンスルホン酸塩濃度が0.01〜5.0w/v%でポリオキシエチレンアルキルエーテル濃度が0.01〜3.0w/v%、前記(d)成分濃度が0.01〜0.5w/v%であることを特徴とするコンタクトレンズ用液剤組成物。
  2. (a)炭素数5〜6のポリオール、(b)微生物由来の蛋白分解酵素、(c)界面活性剤であるα−オレフィンスルホン酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、(d)アミノ酸であるアルギニン、リジン、ヒスチジン、トレオニン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、又はそれらの塩から選択される少なくとも2種、(e)ポリビニルピロリドン(コリドン30:BASF Co製)及び乳酸ナトリウムを含有し、前記(a)成分濃度が0.1〜15.0w/v%、前記(b)成分濃度が0.001〜5.0w/v%、前記(c)成分のうちα−オレフィンスルホン酸塩濃度が0.01〜5.0w/v%でポリオキシエチレンアルキルエーテル濃度が0.01〜3.0w/v%、前記(d)成分の1種類の濃度が0.001〜2.0w/v%であることを特徴とするコンタクトレンズ用液剤組成物。
  3. 前記炭素数5〜6のポリオールが、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロペンタン1,2−ジオールまたは1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、メチルシクロヘキサン−1,2,4−トリオール、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトロールの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用液剤組成物。
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