JP4902064B2 - コンタクトレンズ用液剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンタクトレンズ用液剤に関する。本発明のコンタクトレンズ用液剤は、消毒作用(殺菌作用)およびコンタクトレンズへの適合性(眼に対する安全性、レンズ形状の安定性など)に優れることから、コンタクトレンズの消毒、保存、すすぎなどに好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
現在、コンタクトレンズとしては、装用感に優れた含水性ソフトコンタクトレンズ、高酸素透過性を有するハードコンタクトレンズなどが一般に広く用いられている。これらのコンタクトレンズは、いずれも装用後に洗浄などの手入れを必要とし、特に含水性ソフトコンタクトレンズは、細菌、黴等の微生物による汚染を防ぐために消毒処理を必要とする。
【0003】
含水性ソフトコンタクトレンズを消毒する方法としては、コンタクトレンズをコンタクトレンズ用処理液中で煮沸する加熱消毒方法と、過酸化水素や殺菌消毒剤で消毒する、コールド消毒法と呼ばれる非加熱消毒方法とがある。しかしながら、これらの方法はいずれもその操作および取扱いが煩雑であり、特に非加熱消毒方法において過酸化水素を用いた場合には、中和処理を施す必要があり、その操作が煩雑となる。また殺菌消毒剤を用いた場合には、殺菌消毒剤がコンタクトレンズ内に浸透し、角膜の損傷、粘膜刺激等の眼障害、アレルギーなどを引き起こすことがある。
【0004】
殺菌消毒剤のコンタクトレンズ内への浸透を防ぎ、殺菌消毒剤を用いた場合の上記の問題点を解決するために、殺菌消毒剤としてビグアニド誘導体を用いたコンタクトレンズ消毒保存用溶液が提案されている(特開昭49−18043号公報および特開昭61−85301号公報参照)。このような液剤はすべてのコンタクトレンズケア(洗浄、消毒、すすぎ)が一液でできるという簡便さから、徐々に普及してきている。コンタクトレンズ消毒保存用溶液には、消毒効果(殺菌効果)の他に、コンタクトレンズへの適合性も要求されるが、消毒保存用溶液の種類によっては、コンタクトレンズへの適合性が低い場合がある。具体的には、消毒保存用溶液の消毒成分であるヘキサメチレンビグアニド誘導体がコンタクトレンズに吸着して眼障害を誘発したり、消毒保存用溶液にレンズを浸漬するとレンズの形状が変化し、レンズを装用できなくなる場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明の目的は、消毒作用(抗菌作用)およびコンタクトレンズへの適合性に優れるコンタクトレンズ用液剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、下記の一般式(I):
【化2】
で示されるヘキサメチレンビグアニド誘導体[以下、これをヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)ということがある]、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、金属イオン封鎖剤、リン酸緩衝剤および等張化剤を含む水溶液からなるコンタクトレンズ用液剤であって;
ヘキサメチレンビグアニド誘導体の含有量が0.1〜3ppm、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が0.01〜0.6重量%、高分子化合物の総含有量が0.6重量%以下であり、かつ界面活性剤を含まないコンタクトレンズ用液剤を提供することによって達成される。
【発明の実施の形態】
【0007】
上記の一般式(I)において、XおよびYはそれぞれ式:−(CH2)3NH2で示される基または式:−(CH2)3NHC(=NH)NHCNで示される基を表し、XおよびYの両方が式:−(CH2)3NH2で示される基または式:−(CH2)3NHC(=NH)NHCNで示される基を表しても、XおよびYの一方が式:−(CH2)3NH2で示される基を表し、他方が式:−(CH2)3NHC(=NH)NHCNで示される基を表してもよい。
【0008】
本発明におけるヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)は、コンタクトレンズ用液剤の消毒作用(殺菌作用)に寄与する。ヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)としては、ヘキサメチレンビグアニドおよびヘキサメチレンビグアニドのポリマーが含まれ、これらは塩酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の塩であってもよい。ヘキサメチレンビグアニド誘導体の重合度を表すnは1〜500の範囲内であり、ヘキサメチレンビグアニド誘導体のコンタクトレンズ内部への浸透や蓄積を防ぐ観点および充分な殺菌性能を得る観点から、nは2〜300の範囲内であるのが好ましく、4〜200の範囲内であるのがより好ましい。nが500を超えると殺菌性能が低下する。ヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)としては、例えば、「Arlagard E」、「Cosmocil CQ」、「ProxelIB」、「Vantocil IB」[以上、ゼネカ(株)製、商品名]、「Mikrokill」、「Mikrokill 20」[以上、ブルックス(Brooks)社製、商品名]などとして市販されているものを用いることができる。
【0009】
本発明におけるヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)の含有量は0.1〜3ppmの範囲内であり、0.5〜1.5ppmの範囲内が好ましい。ヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)の含有量が0.1ppm未満の場合には、殺菌作用、静菌作用が充分ではなく、3ppmを超える場合には眼に対する安全性が低下する。
【0010】
本発明におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、コンタクトレンズ用液剤のコンタクトレンズへの適合性のうち、消毒成分であるヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)のコンタクトレンズへの吸着を抑制することに寄与する。一般に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとは、ヒドロキシプロポキシル基(−OC3H6OH)とメトキシ基(−OCH3)を有するセルロース誘導体を指し、本発明に用いるヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、ヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)のコンタクトレンズへの吸着を抑制する観点から、ヒドロキシプロポキシル基を2〜40重量%、メトキシ基を15〜40重量%含有するのが好ましく、ヒドロキシプロポキシル基を5〜15重量%、メトキシ基を25〜35重量%含有するのがより好ましい。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、保存安定性の観点から、2重量%水溶液の20℃における粘度が2000mPa・s以下のものを用いるのが好ましい。そして、本発明のコンタクトレンズ用液剤においては、眼に対する安全性の観点から、コンタクトレンズを30回浸漬処理した際のヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)の吸着量がコンタクトレンズ1枚当たり25μg以下であるのが好ましく、20μg以下であるのがより好ましい。
【0011】
本発明のコンタクトレンズ用液剤におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、0.01〜0.6重量%の範囲内である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が0.01重量%未満になると、ヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)のコンタクトレンズへの吸着量が多くなり、コンタクトレンズへの適合性が低下し、0.6重量%を越えると、コンタクトレンズ用液剤に浸漬したレンズの形状変化が大きくなり、コンタクトレンズへの適合性が低下する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量としては、コンタクトレンズへの適合性の観点から、0.01〜0.5重量%の範囲内であるのが好ましく、0.05〜0.5重量%の範囲内であるのがより好ましく、0.05〜0.3重量%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0012】
本発明のコンタクトレンズ用液剤に、手擦り洗浄の際のレンズの破損率を低くするなどの目的で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の高分子化合物を添加してもよい。該高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体等のビニル系重合体、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチンなどの水溶性高分子が挙げられる。このような高分子化合物を添加する場合、コンタクトレンズ用液剤における高分子化合物の総含有量を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースも含めて0.6重量%以下とする必要がある。高分子化合物の総含有量が0.6重量%を越えると、たとえ浸透圧を涙液と等張としても、コンタクトレンズ用液剤に浸漬したレンズの形状変化が大きくなり、コンタクトレンズへの適合性が低下する。
【0013】
本発明のコンタクトレンズ用液剤は、涙液中の多価金属イオンをキレート化するために、金属イオン封鎖剤を含有する。コンタクトレンズの装用時に涙液中のカルシウムイオンなどの多価金属イオンがコンタクトレンズに沈着し、汚れの原因となる。沈着した多価金属イオンがコンタクトレンズ用液剤に含有された金属イオン封鎖剤により取り除かれて、コンタクトレンズが清浄に保たれる。金属イオン封鎖剤としては、眼科的に許容される化合物であれば特に制限はなく、例えばエチレンジアミン四酢酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸等の多価カルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩等の塩などを挙げることができる
【0014】
一般に人間の涙液のpHは約7、浸透圧は約290mOsmであり、コンタクトレンズ用液剤で処理したコンタクトレンズを装用するとき少量のコンタクトレンズ用液剤が眼に入ることを考慮すると、コンタクトレンズ用液剤は涙液に近いpH、浸透圧に調節しておくのが好ましい。コンタクトレンズ用液剤のpHまたは浸透圧が涙液のそれと大きく異なる場合、該コンタクトレンズ用液剤で処理したコンタクトレンズを装用した時、眼に刺激を与えたり充血を引き起こし、ひいては粘膜や角膜に障害を起こすことがある。
【0015】
本発明のコンタクトレンズ用液剤は、pHを適切な範囲に調整するため、眼に対する刺激が低く、またコンタクトレンズへの影響が少ないリン酸緩衝剤を含有する。本発明のコンタクトレンズ用液剤のpHは、レンズへの適合性の観点から、6.0〜8.0の範囲内に調整されているのが好ましく、6.5〜7.5の範囲内に調整されているのがより好ましい。リン酸緩衝剤としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが、一般に広く用いられており、入手が容易であるので、本発明において好適に使用される。
【0016】
コンタクトレンズ用液剤における上記のリン酸緩衝剤の濃度が低すぎると、緩衝能が低下し、一方リン酸緩衝剤の濃度が高すぎると、本発明におけるコンタクトレンズ用液剤の保存安定性が低下することがあることから、リン酸緩衝剤の濃度としては、10〜200mMの範囲内が好ましく、25〜75mMの範囲内がより好ましい。
【0017】
本発明のコンタクトレンズ用液剤の浸透圧は200〜400mOsmに調整されているのが好ましく、250〜350mOsmの範囲に調整されているのがより好ましい。浸透圧を上記の範囲内に保つために、本発明のコンタクトレンズ用液剤は等張化剤を含有する。等張化剤としては、眼科的に許容できる化合物であれば特に制限はなく、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類;グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、これらグリコール類の平均分子量1000以下の重合体などの非イオン性有機化合物およびこれらを組み合わせたものが好ましく用いられる。
【0018】
一般に、コンタクトレンズ用液剤には、コンタクトレンズに付着した汚れを洗浄・除去する目的で界面活性剤を添加することがある。しかしながら、本発明のコンタクトレンズ用液剤、すなわちヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、金属イオン封鎖剤、リン酸緩衝剤および等張化剤からなるコンタクトレンズ用液剤に界面活性剤を添加すると、浸透圧を涙液と等張にした場合でもコンタクトレンズ用液剤に浸漬したレンズの形状変化が大きくなり、コンタクトレンズへの適合性が低下してしまう。このため、本発明のコンタクトレンズ用液は界面活性剤を含まないことが必須の要件である。
【0019】
上記の界面活性剤としては、一般にコンタクトレンズ用洗浄剤等で用いられている界面活性剤、具体的にはカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。なかでもカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤をイオン性含水レンズ(FDA分類ではグループIIIまたはIVのソフトコンタクトレンズ)に使用した場合には、該界面活性剤のレンズへの吸着が顕著となり、コンタクトレンズ用液剤に浸漬したレンズの形状変化が大きくなるばかりでなく、該界面活性剤がレンズに濃縮吸着されて、眼障害を誘発する原因となることがある。
【0020】
カチオン性界面活性剤としては、親水基として1〜3級のアミンおよびこれらの塩(第4級アンモニウム塩を含む)に由来する基を含有する界面活性化合物が挙げられ、中でもアミンの塩に由来する基を有する界面活性化合物が一般的に用いられている。
アニオン性界面活性剤としては、親水基として脂肪酸、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩に由来する基を含む界面活性化合物が挙げられる。
両性界面活性剤は、分子内にカチオン性基とアニオン性基を有する界面活性剤であり、アミノ酸型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、スルホン酸塩型界面活性剤、リン酸エステル塩型界面活性剤などが挙げられる。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型(ポリエチレンオキサイド型)として分類される高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコール型として分類されるグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0022】
所定量の上記したヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、金属イオン封鎖剤、リン酸緩衝剤および等張化剤を滅菌精製水に溶解させることにより、本発明のコンタクトレンズ用液剤が得られる。得られたコンタクトレンズ用液剤は澄明であり、さらに必要に応じて無菌濾過などを行なうことができる。
【0023】
このようにして得られるコンタクトレンズ用液剤中に、コンタクトレンズを浸漬することにより、該コンタクトレンズを消毒および保存することができる。また本発明のコンタクトレンズ用液剤を用いて、すすぎ洗い、手指によるこすり洗いなどをすることにより、該コンタクトレンズのすすぎ、洗浄および消毒を行なうことができる。
【0024】
本発明のコンタクトレンズ用液剤で洗浄消毒するコンタクトレンズとしては、ヘキサメチレンビグアニド誘導体(I)のコンタクトレンズへの吸着を抑制する観点から、非イオン性ソフトコンタクトレンズが好ましく、低含水の非イオン性ソフトコンタクトレンズがより好ましく、50モル%以上の2−ヒドロキシエチルメタクリレート単量体単位を含むソフトコンタクトレンズがさらに好ましい。ここで、非イオン性ソフトコンタクトレンズとは、FDAの含水性ソフトコンタクトレンズ分類におけるグループIおよびIIに属するレンズを意味し、具体的にはpH7.2のときにイオン性モノマーを1モル%未満含むソフトコンタクトレンズを意味する。また、低含水の非イオン性ソフトコンタクトレンズとは、FDAの含水性ソフトコンタクトレンズ分類におけるグループIに属するレンズを意味し、具体的には含水率が50%未満で且つpH7.2のときにイオン性モノマーを1モル%未満含むソフトコンタクトレンズを意味する。このようなコンタクトレンズとしては、Polymacon、Crofilcon−A、Tetrafilcon−A、Deltafilcon−A等のコンタクトレンズ素材より得られるコンタクトレンズが挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
安全性、殺菌力、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)のレンズへの吸着量、直径の変化および浸透圧を以下の方法にしたがって測定または評価した。
【0027】
[コンタクトレンズ用液剤で処理したレンズの眼に対する安全性]
眼に対する安全性を評価するため、感度の高い代替評価法として細胞毒性試験による評価法を実施した。含水率38%のポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)を主成分とするコンタクトレンズ材料をコンタクトレンズ用液剤に4時間以上浸漬した後、該液剤を交換し再び4時間以上浸漬した。この操作を30回繰り返した。30回浸漬処理したコンタクトレンズ材料を用いて、「医療用具および医用材料の基礎的な生物学的試験のガイドライン1995解説」(株式会社薬事日報社発行、厚生省薬務局医療機器開発課監修)の「細胞毒性試験−医療用具又は材料と細胞との直接接触法による試験−」にしたがい、コロニーの形成率を観察した。以下にその方法を示す。
A.試験に使用した細胞株および培地
細胞株としてV79(チャイニーズハムスター肺由来)、培地としてME10を使用した。
B.試験方法
1)生理食塩液で膨潤した直径16mm、厚み0.5mmのPHEMAからなる含水率38%のコンタクトレンズ材料をコンタクトレンズ用液剤3mlに4時間以上静置・浸漬した後、液剤を新しい液剤と入れ替え、4時間以上静置・浸漬した。この操作を浸漬回数が30回となるまで繰返し行ったものを試験用試料とした。
2)30回浸漬処理した前記コンタクトレンズ材料を12穴プレートに入れ、細胞数が40〜50cellとなるように細胞株のME10培地液を入れた。
3)プレートを37℃の炭酸ガス培養器内に入れ、7日間静置して培養した。培養終了後、培地を捨て、平衡塩類溶液で洗った後、固定液(メタール)で細胞を固定した。
4)ギムザ染色液でコロニーを染色し、コロニーを計測した。培養用プレートに直接細胞をまいた時に形成したコロニー数をコントロールとし、これを100%とした時の各コンタクトレンズ材料のコロニー数の割合(%)をコロニー形成率とした。
【0028】
[殺菌力の評価方法]
ISO/DIS 14729にしたがい、コンタクトレンズ用液剤について、黄色ブドウ球菌に対する殺菌力(消毒効果)を、生菌数の対数減少により評価した。以下にその方法を示す。
A.使用した試験微生物及び培地:
以下に示す微生物と培地を用いて試験した。
1)微生物:
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC6538)
2)試験培地:
DPBST(0.05%w/vのポリソルベート80を添加したダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩液(宝酒造製))を微生物の希釈剤として、またSCDLP培地(日本製薬株式会社製)を殺菌成分の中和剤、SCDLP寒天培地(日本製薬株式会社製)を増殖用培地として用いた。
B.試験手順
以下の手順で殺菌効果を生菌の対数減少として計測した。
1)コンタクトレンズ用液剤10mlを入れた試験管に微生物数が1.0×105〜1.0×106cfu/mlとなるように微生物(黄色ブドウ球菌)のDPBST懸濁液を添加し、充分に混和して微生物を分散させた。
2)前記の微生物を添加したコンタクトレンズ用液剤を20〜25℃で4時間保存した後、この中から溶液1mlを分取し、SCDLP培地を用いて106倍まで連続的に10倍希釈を行った。
3)SCDLP寒天培地プレート上にSCDLP培地で希釈した前記溶液を平板混釈法で展開し、30〜35℃で2〜4日間インキュベートした後、コロニー数を計測し、微生物数の対数減少を算出した。なお、この微生物の対数減少が3以上の場合は効果有り、3未満の場合は効果なしと判定される。
【0029】
[コンタクトレンズ用液剤で処理した際のPHMBのレンズへの吸着量]
コンタクトレンズ用液剤とコンタクトレンズの適合性試験として、PHMBのレンズへの吸着量の測定を行った。
1)試験試料の調製:
ポリヒドロキシエチルメタクリレートを主成分とする含水率38%の素材(Polymacon)からなるコンタクトレンズをコンタクトレンズ用液剤に4時間以上静置・浸漬した。この操作を浸漬回数が30回となるまで繰返し行い、それを試験用試料とした。
2)PHMBのレンズへの吸着量の測定:
毎回、浸漬前後のコンタクトレンズ用液剤中のPHMB量を測定し、浸漬前のPHMB量から浸漬後のPHMB量を差し引き、一回の浸漬毎のPHMBの吸着量を算出した。30回すべてのPHMB量を積算し、それをPHMBのレンズへの吸着量とした。なお、PHMBの吸着量は「P.Gilbert、D.Pemberton、D.E.Wilkinson、J.Appl.Bacteriol.、69(4)、593(1990)」に記載されている測定方法にしたがって測定した。
3)効果判定
予め、10、25、50μg/枚のPHMBを含浸させたポリヒドロキシエチルメタクリレートを主成分とする含水率38%の素材(Polymacon)からなるコンタクトレンズを白色家兎に装用させ、眼刺激性(結膜の発赤の有無)を「医療用具および医用材料の基礎的な生物学的試験のガイドライン1995解説」(株式会社薬事日報社発行、厚生省薬務局医療機器開発課監修)の「眼刺激性試験」のDraize法で判断した。その結果、10μg/枚および25μg/枚の場合には眼刺激性は認められなかったが、50μg/枚の場合には眼刺激性が認められた。したがって、PHMB吸着量が25μg/枚以下のものがレンズとの適合性に優れていると判断される。
【0030】
[コンタクトレンズ用液剤で処理した際の直径の変化]
コンタクトレンズ用液剤とコンタクトレンズの適合性試験として、コンタクトレンズ用液剤に浸漬前後のコンタクトレンズの直径の変化を測定した。
含水率58%のポリヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体(Etafilcon−A)を素材としたコンタクトレンズをコンタクトレンズ用液剤に24時間以上静置・浸漬した後、生理食塩液に24時間以上浸漬し、浸漬前後の直径の変化を測定した。なお、直径はISO 9338にしたがって測定し、適合・不適合の判定はISO 8362−2を用いて行い、浸漬前後の直径の変化が0.2mm以内の場合が適合、0.2mmを超える場合が不適合とされる。
【0031】
[浸透圧]
氷点降下法(機器名:アムコ社製オスメット浸透圧計2007型)で測定した。
【0032】
実施例1〜5および比較例1〜10
下記の表1に示した組成のコンタクトレンズ用液剤を調製し、細胞毒性、殺菌力、PHMB吸着量、直径の変化および浸透圧を測定した。その結果を表2に示す。なお、浸透圧は実施例および比較例ともに280〜350mOsmの範囲で調製した。
また、実施例および比較例では、下記の殺菌剤、界面活性剤、高分子化合物および緩衝剤を使用した。
[殺菌剤]
PHMB:ポリヘキサメチレンビグアニド(Cosmosil CQ、株式会社ゼネカ)
[界面活性剤]
ポロキサマー:非イオン性界面活性剤(LUTROL F127、BASF)ココアミドプロピルベタイン:両性界面活性剤(レボン2000、三洋化成)
ポロキサミン:非イオン性界面活性剤(Tetronic 1107 BASF)
[高分子化合物]
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ60SH50、信越化学工業株式会社)
PVA:ポリビニルアルコール(PVA105、株式会社クラレ)
ゼラチン:Bacto GELATIN(和光純薬社製)
[緩衝剤]
リン酸水素二ナトリウム/リン酸二水素ナトリウムを用いてpHを7.2に調整した。表記した濃度は、リン酸としてのモル濃度である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記の表から、実施例1〜5の本発明のコンタクトレンズ用液剤は、細胞毒性が低く、殺菌力が高く、PHMB吸着量および直径の変化が少ないことがわかる。
これに対して、界面活性剤を含んでいる比較例1〜5の液剤では直径の変化量が大きく、特に比較例3〜5では、液剤にレンズを浸漬するとレンズが大きく歪んでしまい、直径の測定が不可能であった。
また界面活性剤およびヒドロキシプロピルメチルセルロースをともに含んでいない比較例6〜8では、PHMBの吸着量が多くなり、細胞毒性が高い。
界面活性剤は含まれていないが、高分子化合物の総量が0.6重量%を超える比較例9および10では、レンズの直径の変化量が大きくなり、レンズに対して不適合と判断される。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、消毒作用(殺菌作用)およびコンタクトレンズへの適合性に優れ、コンタクトレンズの消毒、保存、すすぎなどに好適なコンタクトレンズ用液剤が提供される。
本発明のコンタクトレンズ用液剤を用いると、コンタクトレンズの殺菌・消毒を効果的に行なうことができ、レンズへの適合性にも優れていることから、コンタクトレンズを本剤で繰り返し処理しても眼組織に対して安全性が高い。したがって、使用期間が長いコンベンショナルタイプのソフトコンタクトレンズの消毒剤として特に好適に使用される。
Claims (5)
- 非イオン性ソフトコンタクトレンズ用である請求項1に記載のコンタクトレンズ用液剤。
- 低含水性の非イオン性ソフトコンタクトレンズ用である請求項2に記載のコンタクトレンズ用液剤。
- 50モル%以上の2−ヒドロキシエチルメタクリレート単量体単位を含むソフトコンタクトレンズ用である請求項3に記載のコンタクトレンズ用液剤。
- コンタクトレンズを30回処理した時、ヘキサメチレンビグアニド誘導体の吸着量が25μg/枚以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ用液剤。
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