JP5929801B2 - 窒化物結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[2]前記窒化物結晶原料に含まれる酸素以外のn型ドーパントの量が1000wtppm以下である、[1]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[3]前記成長工程の前にドーパント供給源隔離工程をさらに含む、[1]又は[2]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[4]前記反応容器は、前記反応容器内に設置部材を有し、前記反応容器及び前記設置部材は、n型ドーパントの量が1000wtppm以下の構成材で形成されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
[5]前記構成材は、白金族又は白金族合金を含む、[4]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[6]前記白金族合金は、Pt及びIrを含む合金であることを特徴とする[5]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[7]前記白金族合金のIrの含有率が前記白金族合金の全体重量の30重量%以下であることを特徴とする[6]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[8]前記反応容器は、前記反応容器内に設置部材を有し、前記反応容器及び前記設置部材は、n型ドーパントの量が1000wtppm以下のコーティング材またはライニング材で覆われている、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[9]前記コーティング剤は、白金族又は白金族合金を含むことを特徴とする[8]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[10]前記白金族合金は、Pt及びGaを含む合金であることを特徴とする[9]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[11]前記白金族合金は、Irを含む合金であることを特徴とする[9]又は[10]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[12]前記窒化物結晶中に含まれるn型ドーパントがSi、O、C、F、I、Cl、Br、S及びGeからなる群から選ばれる1以上の元素を含む、[1]〜[11]のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
[13]前記成長工程において、酸性鉱化剤を用いて窒化物結晶の成長を行う、[1]〜[12]のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
[14]前記酸性鉱化剤はハロゲン化物を含む、[13]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[15]前記成長工程は、320〜700℃の温度条件下で窒化物結晶を成長させる工程である、[1]〜[14]のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
[16]前記成長工程は、30〜700MPaの圧力条件下で窒化物結晶を成長させる工程である、[1]〜[15]のいずれかに記載の窒化物結晶の製造方法。
[17][1]〜[16]のいずれかに記載の製造方法により製造される窒化物結晶。
[18]酸素濃度が1.5×1018〜2.5×1019atoms/cm3であり、下記式で表されるドーパント活性化率ηが10〜90%であることを特徴とする、窒化物結晶。
[19]キャリア濃度が5×1017〜2×1019atoms/cm3である、[17]又は[18]に記載の窒化物結晶。
[20]Si濃度が1.5×1016atoms/cm3以下である、[17]〜[19]のいずれかに記載の窒化物結晶。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書においてwtppmとは重量ppmのことを意味する。
10−10}面として包括的に表される非極性面であり、具体的には(1−100)面や、(01−10)面、(−1010)面、(−1100)面、(0−110)面、(10−10)面を意味する。さらに、本明細書において「A面」とは、{2−1−10}面、{−12−10}面、{−1−120}面、{−2110}面、{1−210}面、{11−20}面として包括的に表される非極性面である。具体的には(11−20)面や、(2−1−10)面、(−12−10)面、(−1−120)面、(−2110)面、(1−210)面、を意味する。本明細書において「c軸」「m軸」「a軸」とは、それぞれC面、M面、A面に垂直な軸を意味する。
また、本明細書において「非極性面」とは、表面に周期表第13族金属元素と窒素元素の両方が存在しており、かつその存在比が1:1である面を意味する。具体的には、M面やA面を挙げることができる。本明細書において「半極性面」とは、例えば、周期表第13族金属窒化物が六方晶であってその主面が(hklm)で表される場合、{0001}面以外で、m=0ではない面をいう。すなわち(0001)面に対して傾いた面で、かつ非極性面ではない面をいう。表面に周期表第13族金属元素と窒素元素の両方あるいはC面のように片方のみが存在する場合で、かつその存在比が1:1でない面を意味する。h、k、l、mはそれぞれ独立に−5〜5のいずれかの整数であることが好ましく、−2〜2のいずれかの整数であることがより好ましく、低指数面であることが好ましい。窒化物結晶の主面として好ましく採用できる半極性面として、例えば[10−11]面、[10−1−1]面、[10−12]面、[10−1−2]面、[20−21]面、[202−1]面、[20−2−1]面、[10−12]面、[10−1−2]面、[11−21]面、[11−2−1]面、[11−22]面、[11−2−2]面、[11−24]面、[11−2−4]面などを挙げることができ、特に[10−11]面、[202−1]面を好ましい面として挙げることができる。
本発明の窒化物結晶の製造方法では、酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を使用して、アモノサーマル法により該窒化物結晶原料から窒化物結晶を製造する。具体的には、本発明の製造方法は、酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を反応容器の原料充填領域に充填して、反応容器中において超臨界及び/又は亜臨界状態の窒素含有溶媒の存在下で、窒化物結晶の成長を行う成長工程を含む。
以下、本発明に用いることができる窒化物結晶原料と、この窒化物結晶原料を用いた窒化物結晶成長方法について説明する。
本発明では、アモノサーマル法により成長させようとしている窒化物結晶を構成する原子を含む窒化物結晶原料を用いる。例えば、周期表第13族金属の窒化物結晶を成長させようとする場合は、周期表第13族金属を含む原料を用いる。好ましくは13族窒化物結晶の多結晶原料または単結晶原料を用い、これを13族原子の金属(メタル)と組み合わせて原料として用いても良い。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては13族原子がメタルの状態(ゼロ価)である金属成分を含有しても良い。例えば、成長させる窒化物結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化物原料としては、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。本発明で得られる窒化物結晶の種類としては、GaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、AllnGaNなどを挙げることができる。好ましいのはGaN、AlN、AlGaN、AllnGaNであり、より好ましいのはGaNである。よって、窒化物結晶原料としては、前述の結晶の多結晶原料および/またはこれらのメタルを組合せて用いることができる。
本発明の窒化物結晶の製造方法は、酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を使用して、反応容器中において超臨界及び/又は亜臨界状態の窒素含有溶媒の存在下で、窒化物の結晶成長を行う成長工程を含むことを特徴とする。
窒化物結晶原料の酸素濃度は、ドーパントとして十分な量を確保するために10wtppm以上であり、15wtppm以上であることが好ましく、16wtppm以上であることがより好ましく、20wtppm以上であることがさらに好ましい。また、窒化物結晶原料の酸素濃度は、不純物の少ない高品質の結晶とするために120wtppm以下であり、100wtppm以下であることが好ましく、80wtppm以下であることがより好ましく、80wtppm以下であることがさらに好ましい。窒化物結晶原料の酸素濃度を上記範囲内とすることで、得られる窒化物結晶のキャリア濃度を5×1017〜2×1019atoms/cm3とすることができ、高品質な窒化物結晶を得ることができる。
また、HVPE法で成長する場合に、成長温度を下げたり、V族原料ガスとIII族原料ガスのモル比を変更することで、酸素濃度を調整することもできる。V族原料ガスのモル比を上げると酸素濃度を上げることができる。
上述した活性化率の算出式から窒化物結晶が所望のキャリア濃度を有するためにドープすべき酸素量を導き出すことができ、さらに、これにより窒化物結晶原料が含有すべき酸素の量を導き出すことができる。
また、本発明では、上記の相関関係式を用いることにより、所望のキャリア濃度を有する窒化物結晶の製造条件を確立することができる。これにより、アモノサーマル法において、精密な酸素ドーピングを行うことが可能となり、高品質な窒化物結晶を得ることができる。
さらに、上記の相関関係式を用いることで、目的のキャリア濃度を有する窒化物結晶の生産効率を高めることができる。
酸素は活性化率が高いため、n型ドーパントとして有用である。このため、本発明では、窒化物結晶に目的濃度のキャリアを含有するために酸素をドーピングすることが好ましい。また、窒化物結晶に酸素をドーピングすることで、Siをドーピングした場合に比べて窒化物結晶の加工性を高めることができる。本発明では窒化物結晶に酸素をドーピングするために、n型ドーパントであるSiの含有量を一定量以下とすることが好ましい。
本発明の結晶成長方法では、反応容器内で窒化物結晶原料を溶解させ、それと同時に窒化物結晶を成長させる。窒化物結晶原料に均一に混合された酸素は、溶解される際に徐々に反応容器内に放出され、順次、窒化物結晶に取り込まれる。窒化物結晶原料には酸素は均一に混合されているため、窒化物結晶の成長過程において取り込まれる酸素の量は一定となり、窒化物結晶に含まれるキャリア濃度が均一となる。このように、本発明では、主としてドーパント供給源を窒化物結晶原料に限定することによって、窒化物結晶に酸素ドーパントを均一に添加することができる。窒化物結晶が全体として均一なキャリア濃度を有することで、結晶の導電性を安定させることができ、窒化物結晶の品質を高めることができるため好ましい。
下で行なう場合である。このときの窒素の割合は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。さらには窒素が100%の雰囲気でも好適に行なうことができる。
通常、アモノサーマル法では、反応容器内に窒化物結晶原料を充填する原料充填領域と種結晶を設置しておく結晶成長領域とを設けておき、原料充填領域において窒化物結晶原料を溶解し、結晶成長領域において種結晶上に窒化物結晶を成長させる。このとき、原料充填領域と結晶成長領域には温度差をつけて、原料充填領域において窒化物結晶原料がより溶解し、結晶成長領域において良質な窒化物結晶がより析出しやすくなるように制御することが好ましい。
6.1g/cm3×0.3=1.83g/cm3 (嵩密度)
原料充填領域における窒化物結晶原料の「嵩密度」は、原料充填領域に充填した窒化物結晶原料の単位体積あたりの重量であり、窒化物結晶原料の重量を原料充填領域の自由容積で除することにより求めることができる。ここでいう原料充填領域の自由容積は、反応容器の原料充填領域の内容積から原料充填領域に存在する結晶原料以外の固体の容積を除いた容積である。そのような固体として、バッフル板や種結晶支持枠を支える支持枠、窒化物結晶原料を設置するための坩堝、バスケットや網状構造物等の構造物を例示することができ、原料充填領域内におけるこれらの体積を除くことにより自由容積を求めることができる。上述の具体例において、容器を反応容器とすれば、同様にして原料充填領域における窒化物結晶原料の嵩密度の算出が可能である。
また、逆に結晶原料を充填していない中空の網状構造物を原料充填領域に設置することにより、嵩密度を制御しても良い。例えば、そのような網状構造物を結晶原料と混合して原料充填領域に充填することができる。このとき両者の混合割合を調整すれば嵩密度を制御することができる。網状構造物は、予め原料充填領域に固定しておいても構わない。また、このような種々の態様の網状構造物は複数個使用しても良い。さらに、溶媒を通過させることができるような、網状でない構造物を採用することも可能である。
原料充填領域における窒化物結晶原料の嵩密度を上記範囲とするためには、嵩密度が0.7〜4.5g/cm3の範囲にある窒化物結晶原料を用いることが好ましい。より好ましくは1.5g/cm3以上であり、更に好ましくは1.8g/cm3以上であって、より好ましくは4.0g/cm3以下であり、更に好ましくは3.0g/cm3以下である。このような範囲の嵩密度を有する窒化物結晶原料を単独または組合せて用いることによって、原料充填領域における窒化物原料の溶解性を調整することが好ましい。
本発明における窒化物結晶原料は、L*a*b*表色系で表わした場合に、一定範囲のL*値、a*値及びb*値を有することが好ましい。ここで、L*a*b*表色系において、L*値は、結晶の明度を示し、数値が大きい(100に近い)方がより明度が高いことを表している。また、a*値は、赤色−緑色を示し、数値が小さい方が緑色であり、数値が大きい方が赤色であることを表している。b*値は、黄色−青色を示し、数値が小さい方が青色であり、数値が大きい方が黄色であることを表している。すなわち、L*値としては数値が大きい程、明るい傾向となり、a*値及びb*値としては、その絶対値が大きい程、色彩が鮮明となる。
本発明で用いる窒化物結晶原料の粒径は、嵩密度の調整のし易さや、取り扱いのし易さ等の面から反応容器のサイズによって好ましい範囲が異なる。具体的には、反応容器のサイズがより大きくなれば、窒化物結晶原料の粒径もより大きくて構わない。例えば、直径が26mm程度の反応容器を用いる場合の粒径は、最大径が0.5μm以上であるものを用いることが好ましく、1μm以上であるものを用いることがより好ましく、10μm以上であるものを用いることがさらに好ましく、また、20mm以下であるものを用いることが好ましく、15mm以下であるものを用いることがより好ましく、10mm以下であるものを用いることがさらに好ましい。また、例えば直径が60mm程度の反応容器を用いる場合の粒径は、最大径が0.5μm以上であるものを用いることが好ましく、1μm以上であるものを用いることがより好ましく、10μm以上であるものを用いることがさらに好ましく、また、50mm以下であるものを用いることが好ましく、30mm以下であるものを用いることがより好ましく、20mm以下であるものを用いることがさらに好ましい。
また、例えば直径が130mm程度の反応容器を用いる場合の粒径は、最大径が0.5μm以上であるものを用いることが好ましく、1μm以上であるものを用いることがより好ましく、10μm以上であるものを用いることがさらに好ましく、また、120mm以下であるものを用いることが好ましく、60mm以下であるものを用いることがより好ましく、30mm以下であるものを用いることがさらに好ましい。
なお、上述の窒化物結晶原料粒子が凝集してなる構造を有する窒化物結晶において、1次粒子はナノ単位の単結晶を意味しており、これらの単結晶が互いに凝集・結合して多結晶である二次粒子を構成する。通常、1次粒子は互いに結合して一体化しているため粒子として判別することができない。さらに、本発明で用いる窒化物結晶原料の形状が、後述するように珊瑚状である場合、粒子の最大径は、表面の突起部分を含めて求める。
本発明で用いる窒化物結晶原料の形状は、球状、断面が楕円である粒状、板状、直方形状、三角形状、珊瑚状(表面に凹凸があり表面積が大きくなった状態をいう)であっても良い。溶媒の対流を大きく阻害しないよう結晶原料間に一定の空隙が設けられていることが好ましい。また、嵩密度の調整が容易となるため、楕円粒状、直方形状、三角形状、珊瑚状、金平糖状であることがより好ましい。
本発明では、45°未満の安息角を有する窒化物結晶原料を使用することが好ましい。具体的には、成長させようとしている窒化物結晶を構成する原子を含む窒化物結晶原料のうち、安息角が特定の範囲のものを用いることができる。
本発明では、窒化物結晶原料を落下させる高さは、落下開始は床から約20cmとした。窒化物結晶原料が円錐形状になり始めたら円錐の頂部から20cmになるように落下位置を変化させ、この窒化物結晶原料を落下させて砂山の様に窒化物結晶原料を積み上げていき、積み上げた窒化物結晶原料の斜面が2回崩れた時点の値を採用した。また、ホソカワミクロン製パウダーテスター(品番PT−N)によって安息角の測定が可能な場合は、その値を安息角として用いることができる。
また、本発明で用いる窒化物結晶原料の安息角は、反応容器内への充填の際の扱い易さの観点から、15°以上であることが好ましく、20°以上であることがより好ましく、25°以上であることが特に好ましい。窒化物結晶原料の安息角が小さすぎると、該原料の形状や大きさなどによる摩擦が少なくなり、拡散しやすくなる。これにより、反応容器に充填する際などの取り扱い時に、窒化物結晶原料が舞い上がってしまうなどして取り扱いが困難になると考えられる。
一方、塊状の窒化物結晶原料であれば、機械研削やスライスなどを行い、所望の形状とすることができる。特にスライス工程を設け、板状にすることで、より容易に粉砕を行うことができる。
また、機械研削、スライス、粉砕などの加工を実施した後に、窒化物結晶原料を酸またはアルカリ溶液でエッチングすると、加工に由来する不純物の混入を除去することができる。
なお、粉砕工程中に窒化物結晶原料の温度が上がらないように必要に応じて冷却しても良い。
本発明の製造方法では、原料充填領域に結晶原料を充填した後に、アモノサーマル法により窒化物結晶を製造する。
アモノサーマル法とは、超臨界状態及び/又は亜臨界状態にあるアンモニア溶媒などの窒素を含有する溶媒と、結晶原料の溶解−析出反応を利用して所望の窒化物単結晶を製造する方法である。結晶成長は、アンモニアなどの溶媒への結晶原料溶解度の温度依存性を利用して、温度差により過飽和状態を発生させて結晶を析出させることにより行う。
本発明では、アモノサーマル法による窒化物結晶を成長させる際に、鉱化剤を用いることが好ましい。鉱化剤は、アンモニアなどの窒素を含有する溶媒に対する結晶原料の溶解度を向上させるために用いられる。
用いる鉱化剤は、塩基性鉱化剤であっても、酸性鉱化剤であっても良い。塩基性鉱化剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属と窒素原子を含む化合物で、アルカリ土類金属アミド、希土類アミド、窒化アルカリ金属、窒化アルカリ土類金属、アジド化合物、その他ヒドラジン類の塩が挙げられる。好ましい例は、アルカリ金属アミドで、具体例としてはナトリウムアミド(NaNH2)、カリウムアミド(KNH2)、リチウムアミド(LiNH2)が挙げられる。また、酸性鉱化剤としては、ハロゲン元素を含む化合物が好ましく用いられる。ハロゲン元素を含む鉱化剤の例としては、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素、アンモニウムヘキサハロシリケート、及びヒドロカルビルアンモニウムフルオリド、ハロゲン化テトラメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化ベンジルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジプロピルアンモニウム、及びハロゲン化イソプロピルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩、フッ化アルキルナトリウムのようなハロゲン化アルキル金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化金属等が例示される。このうち、好ましくはハロゲン元素を含む添加物(鉱化剤)であるハロゲン化アルカリ、アルカリ土類金属のハロゲン化物、金属のハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素であり、さらに好ましくはハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アンモニウム、周期表第13族金属のハロゲン化物が挙げられ、特に好ましくはハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化水素である。ハロゲン化アンモニウムとしては、例えば塩化アンモニウム(NH4Cl)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)、臭化アンモニウム(NH4Br)、フッ化アンモニウム(NH4F)が挙げられる。
窒化物原料以外からの酸素の供給を低減するために、鉱化剤に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000wtppm以下であることが好ましく、10wtppm以下であることがより好ましく、1wtppm以下であることがさらに好ましい。
反応容器内の雰囲気から水や酸素を除去する為には、反応容器内を封止した後に200℃以上に加熱して部材表面に付着した水分を水蒸気としてポンプ等にて1×10-7Paまで脱気する方法が考えられる。さらに、鉱化剤を高純度ガスで導入する方法も考えられる。また、予め露点が0℃以下の乾燥雰囲気中で部材や原料を保管して、その中で反応容器および反応容器内に配置する部材や原料などを組み立てる方法もある。
アモノサーマル法に用いられる溶媒には、窒素を含有する溶媒を用いることができる。窒素を含有する溶媒としては、成長させる窒化物単結晶の安定性を損なうことのない溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、尿素、アミン類(例えば、メチルアミンのような第1級アミン、ジメチルアミンのような第二級アミン、トリメチルアミンのような第三級アミン、エチレンジアミンのようなジアミン)、メラミン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
本発明の窒化物結晶の成長工程は、反応容器中で実施される。「反応容器」とは、超臨界および/または亜臨界状態の溶媒の存在下で窒化物結晶の製造を行うための容器を意味し、耐圧性容器内部の構造そのものや、耐圧性容器内に設置されるカプセルなどを好ましい例として挙げることができる。本発明で用いる反応容器としては、特表2003−511326号公報(国際公開第01/024921号パンフレット)や特表2007−509507号公報(国際公開第2005/043638号パンフレット)に記載されるように、反応容器の外から反応容器とその内容物にかける圧力を調整する機構を備えたオート
クレーブであっても良いし、そのような機構を有さないオートクレーブであっても良い。
反応容器は、窒化物結晶を成長させるときの高温高圧条件に耐え得るもの中から選択することが好ましい。高温強度が高く耐食性を有する材料で構成されているものが好ましく、特にアンモニア等の溶媒に対する耐食性に優れたNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金で構成されているものが好ましい。より好ましくはNi系の合金であり、具体的には、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標、以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィ
ギン リミテッドの登録商標、以下同じ)、RENE41(Teledyne Allvac, Incの登録商標)、Inconel718(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標)、ハステロイ(Haynes International,Incの登録商標)、ワスパロイ(United Technologies,Inc.の登録商標)が挙げられる。
これらの合金の組成比率は、系内の溶媒の温度や圧力条件、および系内に含まれる鉱化剤およびそれらの反応物との反応性および/または酸化力・還元力、pH等の条件に従い、適宜選択すればよい。これら耐圧性容器に用いられる合金の耐腐食性は高いとはいえ、結晶品質に影響を全く及ぼさないほどに高い耐食性を有しているわけではない。これら合金は超臨界溶媒雰囲気、特に鉱化剤を含有するより厳しい腐食環境下においてはNi、Cr、Feなどの成分が溶液中に溶け出し結晶中に取り込まれることとなる。これらは得られる結晶のキャリア濃度に影響する可能性もあるため、できるだけこれらの不純物の取り込みを低減することが好ましい。したがって本発明では、これら耐圧性容器の内面腐食を抑制するために、内面を更に耐食性に優れる材料によって直接ライニングまたはコーティングする方法や、更に耐食性に優れる材料からなるカプセルを耐圧性容器内に配置する方法などにより反応容器を形成することが好ましい。
また、反応容器及び設置部材の表面をコーティングまたはライニングする場合は、n型ドーパントの量が1000wtppm以下のコーティング材またはライニング材でコーティングされていることが好ましい。コーティング材またはライニング材のn型ドーパントの量は1000wtppm以下であれば良く、100wtppm以下であることがより好ましく、10wtppm以下であることがさらに好ましい。n型ドーパントの量を上記上限値以下とすることで、所望のキャリア濃度を有する窒化物結晶を得るための条件設定をより正確に行うことができる。
前記反応容器及び設置部材の構成材、ライニング材及びコーティング材に求められる性能として、アモノサーマル法における結晶成長雰囲気中での溶解速度が低い事が求められる。溶解速度は3×10-2wt%/日以下であれば良く、さらに3×10-3wt%/日以下が好ましい。
白金族としては、Pt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Agが挙げられる。白金族合金は、これらの貴金属を主成分とする合金のことを言う。白金族合金の中でも優れた耐食性を有するPtまたはPt及びIrを含む合金を用いることが好ましい。
また、反応容器の内壁を白金族又は白金族合金とする場合や、反応容器及び設置部材の表面を白金族又は白金族合金でコーティングする場合は、コーティング材はPt及びGaを含む合金を用いることが好ましく、さらにIrを含む合金を用いることが好ましい。これらの白金族を含有する合金は、コーティングに適しており、優れた耐食性を持たせることができる。
さらに、反応容器は耐圧性容器であることが好ましい。特に、反応容器の内壁を白金族又は白金族合金とする場合や、反応容器及び設置部材の表面を白金族又は白金族合金でコーティングまたはライニングする場合は、反応容器を形成する他の素材で耐圧性を確保することが好ましい。
白金族以外で耐圧性と耐食性を有する材料としてはTi、W、Ni、Mo、Ru、Nbやその合金を使用することができる。好ましくは、Mo、W、Tiである。
本発明の窒化物結晶の製造方法に用いることのできる結晶製造装置の具体例を図1に示す。本発明で用いる結晶製造装置は反応容器を含む。図1は、本発明で用いることができる結晶製造装置の模式図である。図1に示される結晶製造装置において、結晶成長は、オートクレーブ1(耐圧性容器)中に反応容器として装填されるカプセル(内筒)20中で行われる。カプセル20は、原料を溶解するための原料充填領域9と結晶を成長させるための結晶成長領域6から構成されている。原料充填領域9には原料8とともに溶媒や鉱化剤を入れることができる。結晶成長領域6には種結晶7をワイヤー4で吊すなどして設置
することができる。原料充填領域9と結晶成長領域6の間には、2つの領域を区画バッフル板5が設置されている。バッフル板5の開孔率は2〜60%であるものが好ましく、3〜40%であるものがより好ましい。バッフル板の表面の材質は、反応容器であるカプセル20の材料と同一であることが好ましい。また、より耐食性を持たせ、成長させる結晶を高純度化するために、バッフル板の表面は、Ni、Ta、Ti、W、Mo、Ru、Nb、Pd、Pt、Au、Ir、pBNであることが好ましく、W、Mo、Ti、Pd、Pt、Au、Ir、pBNであることがより好ましく、Pt、Mo、Tiであることが特に好ましい。図1に示される結晶製造装置では、オートクレーブ1の内壁とカプセル20の間の空隙には、第2溶媒を充填することができるようになっている。ここには、バルブ10を介して窒素ボンベ13から窒素ガスを充填したり、アンモニアボンベ12からマスフローメーター14で流量を確認したりしながら第2溶媒としてアンモニアを充填することができる。また、真空ポンプ11により必要な減圧を行うこともできる。なお、本発明の窒化物結晶の製造方法を実施する際に用いる結晶製造装置には、バルブ、マスフローメーター等は必ずしも設置されていなくても良い。
本発明の窒化物結晶の製造方法の一例について説明する。本発明の窒化物結晶の製造方法を実施する際には、まず、反応容器内に、種結晶、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止する。ここで、種結晶としては、主面の面方位は特に限定されないが、C面を主面として成長させた窒化物結晶を所望の方向に切り出すことによって、主面が非極性面又は半極性面となる基板を得ることができる。これによって、M面などの非極性面、(10−11)、(20−21)などの半極性面を有する種結晶を得ることができる。
本発明において、意図しないドーピングは、窒化物結晶原料由来以外のn型ドーパントが窒化物結晶に取り込まれることで起こる。本発明では、成長工程の前にドーパント源隔離工程を設けることで、意図しないドーピングを抑制することができる。
図1に示す製造装置を用いる場合は、反応容器であるカプセル20内に種結晶7、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止した後に、カプセル20をオートクレーブ(耐圧性容器)1内に装填し、好ましくは耐圧性容器と該反応容器の間の空隙に第2溶媒を充填して耐圧性容器を密閉する。
なお、上述したの「反応温度」は、反応容器の外面に接するように設けられた熱電対、及び/又は外表面から一定の深さの穴に差し込まれた熱電対によって測定され、反応容器の内部温度へ換算して推定することができる。これら熱電対で測定された温度の平均値をもって平均温度とする。通常は、原料充填領域の温度と結晶成長領域の温度の平均値を平均温度とする。
本発明に係る窒化物結晶は、上述した製造方法によって得ることができる。本発明で得られる窒化物結晶の酸素濃度は1.5×1018〜2.5×1019atoms/cm3であり、下記式で求められるドーパント活性化率ηは10〜90%である。
窒化物結晶の酸素濃度として好ましくは2×1018atoms/cm3以上であり、より好ましくは2.5×1018atoms/cm3以上であって、好ましくは2×1019atoms/cm3以下であり、より好ましくは1.5×1019atoms/cm3以下である。また、ドーパント活性化率ηは、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であって、好ましくは85%以下であり、より好ましくは80%以下である。
得られた窒化物結晶のFの濃度は、好ましくは1×1018atoms/cm3以下であり、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下である。Clの濃度は、好ましくは1×1019atoms/cm3以下であり、より好ましくは3×1018atoms/cm3以下である。Brの濃度は、好ましくは1×1017atoms/cm3以下であり、より好ましくは1×1016atoms/cm3以下である。Iの濃度は、好ましくは1×1017atoms/cm3以下であり、より好ましくは3×1015atoms/cm3以下である。
本発明の窒化物結晶の製造方法により成長させた窒化物結晶層を所望の方向に切り出すことにより、任意の結晶方位を有するウエハ(半導体基板)を得ることができる。本発明の製造方法によって厚くて大口径のM面を有する窒化物結晶を製造した場合は、m軸に垂直な方向に切り出すことにより、大口径のM面ウエハを得ることができる。また、本発明の製造方法によって大口径の半極性面を有する窒化物結晶を製造した場合は、半極性面に平行に切り出すことにより、大口径の半極性面ウエハを得ることができる。これらのウエハも、均一で高品質であるという特徴を有する。
本発明の窒化物結晶やウエハは、デバイス、即ち発光素子や電子デバイスなどの用途に好適に用いられる。本発明の窒化物結晶やウエハが用いられる発光素子としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、それらと蛍光体を組み合わせた発光素子などを挙げることができる。また、本発明の窒化物結晶やウエハが用いられる電子デバイスとしては、高周波素子、高耐圧高出力素子などを挙げることができる。高周波素子の例としては、トランジスター(HEMT、HBT)があり、高耐圧高出力素子の例としては、サイリスター(IGBT)がある。本発明の窒化物結晶やウエハは、均一で高品質であるという特徴を有することから、前記のいずれの用途にも適している。中でも、均一性が高いことが特に要求される電子デバイス用途に適している。
本実施例では、図1に示す反応装置を用いて窒化物結晶を成長させた。
RENE41製オートクレーブ1を耐圧性容器として用い、Pt−Ir製カプセル20を反応容器として結晶成長を行なった。原料8として嵩密度が1.8g/cm3であり、色差がL*値63.99、a*値0.26、b*値11.71であり、酸素濃度が20wtppmである多結晶GaN粒子130gを秤量し、カプセル下部領域(原料充填領域9)内に設置した。色差測定は、日本電色工業ZE―2000測色色差計(標準白板 Y=95.03、X=95.03、Z=112.02)を用いて以下の要領で測定した。100マイクロメートル以下に粉砕した該窒化ガリウム多結晶粉体約2ccを、該色差計付属品の35mmφの透明の丸型セルの底につめた後に上から押さえて隙間無く装填した。粉末・ペースト試料台の上に設置してキャップをかぶせた後、30mmφの試料面積に対し反射測定した。
なお、上記にて使用したGaN多結晶原料の酸素濃度をCAMECA社製Ims−4fを用いたSIMSによって測定したところ、4.6×1018cm-3であることがわかった。
次に鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のNH4Fを充填NH3量に対してF濃度が0.5mol%となるよう秤量しカプセル内に投入した。さらに下部の原料充填領域9と上部の結晶成長領域6の間に白金製のバッフル板5設置した。種結晶7としてm面を主面とする六方晶系GaN単結晶3枚とc面ウェハー1枚を用いた。m面を主面とする種結晶の表面はCMP仕上げされているおり、c面ウェハーの主面はLAP処理がされている。これら種結晶7を直径0.3mmの白金ワイヤー7により白金製種子結晶支持枠に吊るし、カプセル上部の結晶成長領域6に設置した。
次に、カプセル下部を液体窒素で冷却し、バルブを開け外気に触れることなくHI充填した。流量制御に基づき、鉱化剤としてHIを充填NH3量に対してI濃度が1.5mol%となるよう充填した後、再びバルブを閉じた。次いで、カプセルをHIラインから外しNH3ガスラインに接続した。ガスラインを真空脱気、窒素パージを5回行った後、真空ポンプにて真空引きを行った。その後、NH3ラインのバルブを操作し、流量制御に基づき、NH3を先に充填したHIガスと等mol量充填し、バルブを閉じた。次いで、カプセルを液体窒素から取り出し、ドライアイスエタノール溶媒により冷却した。続いて再びバルブを開け外気に触れることなくNH3を充填したした後、再びバルブを閉じた。その後、キャップ上部のチューブを溶接機により封じ切った。
続いて、カプセルをオートクレーブに挿入し、オートクレーブを密封した。オートクレーブに付属したバルブ10を介して導管を真空ポンプ11に通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した。カプセルと同様に窒素ガスパージを複数回行なった。その後、真空状態を維持しながらオートクレーブ1をドライアイスメタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブ10を閉じた。次いで導管をNH3ボンベ12に通じるように操作した後、再びバルブ10を開け連続して外気に触れることなくNH3をオートクレーブ1に充填したした後、再びバルブ10を閉じた。
続いてオートクレーブ1を上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブ内部の平均温度が600℃、内部の温度差が20℃になるようにオートクレーブ外面温度で制御しながら昇温した。設定温度に達した後、その温度にて16.8日間保持した。オートクレーブ内の圧力は215MPaであった。また保持中のオートクレーブ外面制御温度のバラツキは±0.3℃以下であった。
その後、オートクレーブ1の外面の温度が400℃になるまで冷却し、オートクレーブに付属したバルブ10を開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。この時、オートクレーブとカプセルとの圧力差を利用しカプセルを割り、カプセル内に充填したNH3も取り除いた。
成長した結晶をSIMSにより分析すると、酸素濃度は2.20×1018atoms/cm3であり、Si濃度は1.14×1015atoms/cm3、F濃度は1.15×1017atoms/cm3、I濃度は2.60×1017atoms/cm3であった。
得られた窒化ガリウム結晶を、窒素90%−アンモニア10%雰囲気下で、1060℃、24時間アニール処理を行った後、ホール測定を行った。アニール後のGaN結晶のホール測定の結果から、キャリア濃度が1.90×1018atoms/cm3、移動度が288cm2/V・s、比抵抗が1.08×10-2Ωcmであることを確認した。
原料8として、嵩密度が2.2g/cm3であり、色差がL*値63.85、a*値0.48、b*値11.65であり、酸素濃度が13wtppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなった。成長した窒化ガリウム結晶をSIMSにより分析すると、酸素濃度は1.50×1018atoms/cm3であり、Si濃度は2.06×1014atoms/cm3であった。
得られた窒化ガリウム結晶を、窒素90%−アンモニア10%雰囲気下で、1060℃、24時間アニール処理を行った後、ホール測定を行った。アニール後のGaN結晶のホール測定の結果から、キャリア濃度が6.7×1017atoms/cm3、移動度が335cm2/V・s、比抵抗が2.40×10-2Ωcm、F濃度は4.30×1017atoms/cm3、I濃度は2.86×1017atoms/cm3であることを確認した。
原料8として嵩密度が1.8g/cm3であり、色差がL*値63.99、a*値0.26、b*値11.71であり、酸素濃度が20wtppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなった。成長した窒化ガリウム結晶をSIMSにより分析すると、酸素濃度は4.80×1018atoms/cm3であった。
得られた窒化ガリウム結晶を、窒素90%−アンモニア10%雰囲気下で、1060℃、24時間アニール処理を行った後、ホール測定を行った。アニール後のGaN結晶のホール測定の結果から、キャリア濃度が2.44×1017atoms/cm3、移動度が343cm2/V・s、比抵抗が2.33×10-2Ωcmであることを確認した。
原料8として嵩密度が1.8g/cm3であり、色差がL*値63.99、a*値0.26、b*値11.71であり、酸素濃度が20wtppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなった。成長した窒化ガリウム結晶をSIMSにより分析すると、酸素濃度は6.90×1018atoms/cm3であり、Si濃度は1.5×1016atoms/cm3であった。
得られた窒化ガリウム結晶を、窒素90%−アンモニア10%雰囲気下で、1060℃、24時間アニール処理を行った後、ホール測定を行った。アニール後のGaN結晶のホール測定の結果から、キャリア濃度が6.90×1017atoms/cm3、移動度が330cm2/V・s、比抵抗が2.11×10-2Ωcm、F濃度が2.7×1017atms/cm3、I濃度が2.5×1015atms/cm3以下、Cl濃度1.5×1015atms/cm3以下であることを確認した。
原料8として嵩密度が2.6g/cm3であり、色差がL*値58.77、a*値0.64、b*値11.38であり、酸素濃度が61ppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなった。得られた窒化ガリウム結晶を、窒素90%−アンモニア10%雰囲気下で、1060℃、24時間アニール処理を行った後、ホール測定を行った。アニール後のGaN結晶のホール測定の結果から、キャリア濃度が1.70×1018atoms/cm3であることを確認した。
原料8として嵩密度が1.9g/cm3であり、色差がL*値58.77、a*値0.64、b*値11.38であり、酸素濃度が78ppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなった。成長した窒化ガリウム結晶をSIMSにより分析すると、酸素濃度は9.9×1018atoms/cm3であり、Si濃度は7.4×1014atoms/cm3であった。
得られた窒化ガリウム結晶を、窒素90%−アンモニア10%雰囲気下で、1060℃、24時間アニール処理を行った後、ホール測定を行った。アニール後のGaN結晶のホール測定の結果から、キャリア濃度が3.09×1018atoms/cm3、移動度が226cm2/V・s、比抵抗が0.90×10-2Ωcm、F濃度が2.94×1017atms/cm3、I濃度が2.35×1015atms/cm3以下であることを確認した。
原料8として嵩密度が1.8g/cm3であり、酸素濃度が148wtppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなって、窒化ガリウム結晶を得た。得られた窒化ガリウム結晶は、全体に黒く着色しており、酸素などの不純物が極めて多く含まれる結晶であると推定された。
原料8として嵩密度が0.8g/cm3であり、酸素濃度が130wtppmである多結晶GaN粒子を用いたほかは、表1に示す条件として、実施例1と同様におこなって、窒化ガリウム結晶を得た。得られた窒化ガリウム結晶は、全体に褐色〜黒色にやや着色しており、酸素などの不純物が含まれる結晶であると推定された。
比較例2は嵩密度が0.8g/cm2、酸素濃度が130wtppmのGaN結晶原料を用いて結晶を成長させたものである。図2に示す、実施例1〜4の窒化物結晶原料中の酸素濃度と成長結晶のキャリア濃度の関係から推測すると、比較例2では、キャリア濃度が1.50×1019atoms/cm3程度の窒化ガリウム結晶が得られたものと考えられ、キャリア濃度が高く適切な導電性を示す結晶を得ることができなかった。また、成長した窒化ガリウム結晶にはやや酸素に由来すると思われる着色があり、品質が劣るものであった。
図2は、窒化物結晶原料中の酸素濃度と成長した窒化ガリウム結晶のキャリア濃度の関係を示すグラフである。ひし形で表される点が実施例1〜6の結果であり、四角形で表される点は、比較例1および2の結果を示す。図2の近似線で表される通り、原料中の酸素濃度と成長結晶のキャリア濃度に相関関係があることがわかった。
図3は、成長した窒化ガリウム結晶中の酸素濃度とキャリア濃度の関係を示すグラフである。図3の右側の2点は参考例1および2の結果を示す。図3より、活性化率の平均は45%であることがわかった。
尚、アモノサーマル法により得られたGaN結晶中のドーパント活性化率を算出するために、実施例1に準ずる方法で得られたGaN結晶のキャリア濃度及び酸素濃度を測定した。参考例1では、得られた結晶中のキャリア濃度は、3.90×1018atoms/cm3であり、得られた結晶中の酸素濃度は、9.00×1018atoms/cm3であった。また、参考例2では、得られた結晶中のキャリア濃度は、9.54×1018atoms/cm3であり、得られた結晶中の酸素濃度は、2.00×1018atoms/cm3であった。
4 ワイヤー
5 バッフル板
6 結晶成長領域
7 種結晶
8 原料
9 原料充填領域
10 バルブ
11 真空ポンプ
12 アンモニアボンベ
13 窒素ボンベ
14 マスフローメーター
20 カプセル(内筒)
Claims (12)
- 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程(ただし、窒化物結晶原料の酸素濃度が1E19酸素原子/cm 3 以上であって、かつ、アモノサーマル法における成長環境がナトリウムを含む場合は除く。)を含むことを特徴とする、窒化物結晶の製造方法。
- 酸素濃度が10〜120wtppmであって酸素以外のn型ドーパントの含有量が1000wtppm以下である窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程を有する、窒化物結晶の製造方法。
- 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程と、該成長工程で使用する反応容器に前記原料を導入するのに先だって行われるドーパント供給源隔離工程とを有する、窒化物結晶の製造方法。
- 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程を有し、
該成長工程で使用される反応容器は、n型ドーパントの量が1000wtppm以下の構成材で形成されたものであるか、または、n型ドーパントの量が1000wtppm以下のコーティング材若しくはライニング材で覆われたものであり、かつ、
該成長工程で前記反応容器内に設置される設置部材は、n型ドーパントの量が1000wtppm以下の構成材で形成されたものであるか、または、n型ドーパントの量が1000wtppm以下のコーティング材若しくはライニング材で覆われたものである、
窒化物結晶の製造方法。 - 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程を有し、
該成長工程で使用される反応容器は、白金族又は白金族合金を含みn型ドーパントの量が1000wtppm以下の構成材で形成されたものであるか、または、白金族又は白金族合金を含みn型ドーパントの量が1000wtppm以下のコーティング材若しくはライニング材で覆われたものであり、かつ、
該成長工程で前記反応容器内に設置される設置部材は、白金族又は白金族合金を含みn型ドーパントの量が1000wtppm以下の構成材で形成されたものであるか、または、白金族又は白金族合金を含みn型ドーパントの量が1000wtppm以下のコーティング材若しくはライニング材で覆われたものである、
窒化物結晶の製造方法。 - 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程を有し、前記窒化物結晶中に含まれるn型ドーパントがSi、O、C、F、I、Cl、Br、S及びGeからなる群から選ばれる1以上の元素を含む、窒化物結晶の製造方法。
- 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料と酸性鉱化剤を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う、窒化物結晶の製造方法。
- 前記酸性鉱化剤はハロゲン化物を含む、請求項7に記載の製造方法。
- 前記ハロゲン化物がハロゲン化アンモニウムである、請求項8に記載の製造方法。
- 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程を有し、該成長工程では320〜700℃の温度条件下で該窒化物結晶を成長させる、窒化物結晶の製造方法。
- 酸素濃度が10〜120wtppmの窒化物結晶原料を用いてアモノサーマル法により窒化物結晶の成長を行う成長工程を有し、該成長工程では30〜700MPaの圧力条件下で窒化物結晶を成長させる、窒化物結晶の製造方法。
- 前記窒化物結晶原料および前記成長工程で成長させる窒化物結晶がGaNである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
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