JP5928403B2 - 燃料電池のセル構造 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池の技術に関する。
燃料電池は、膜電極接合体とガス拡散層とを備える。燃料電池は、単セルが複数積層されて積層方向の両側から所定の荷重が加えられることで形成される。燃料電池では、燃料ガスと酸化ガスとの両極間のクロスリークを抑えるために、電解質膜の外周部に、ガスシール部材(ガスケット)が設けられている。このような燃料電池の一つとして、一方の電極上に配置したガス拡散層が、他方の電極上に配置したガス拡散層および電解質膜よりも小さく形成された燃料電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。また特許文献1の技術では、ガスケットを設けることによって、燃料ガスおよび酸化ガスのクロスリークの抑制を図っている。
特開2007−066766号公報
ガスケットを、小さい方のガス拡散層の外周に接するように設ける場合には、例えばガス拡散層やガスケットの形成の精度等に起因して、小さい方のガス拡散層の外周とガスケットとの間に隙間が生じる場合があった。
ガス拡散層の外周とガスケットとの間に隙間が存在すると、この隙間において、膜電極接合体が露出する。固体高分子形燃料電池では、例えば燃料電池が発電と停止を繰り返すことにより、膜電極接合体が湿潤状態と乾燥状態との間で状態変化を引き起こす。ここで、膜電極接合体のうち露出した部分(露出部分)には、燃料電池の両側から所定の荷重を加えた場合でも、十分な外力が加わらない。よって、膜電極接合体が湿潤状態になった場合に、露出部分が膨らむことで大きく変形して座屈が生じる可能性がある。また、膜電極接合体が乾燥状態となった場合は、露出部分は収縮して亀裂が生じる可能性がある。このように、膜電極接合体の変形が繰り返されることで、膜電極接合体に劣化や損傷が生じる可能性があった。
ここで、上記隙間に樹脂を充填することで、湿潤状態における膜電極接合体の膨らみを抑制できる場合がある。図15は、隙間に樹脂を充填した単セルの構造の一例を示す概略断面図である。この単セル10Rは、膜電極接合体(Menmrane Electrode Assembly,MEA)101のカソード103c上に配置した第1のガス拡散層104cが、膜電極接合体101のアノード103a上に配置した第2のガス拡散層104aおよび膜電極接合体101の電解質膜102よりも小さく形成されている。なお、第1のガス拡散層104cのカソード103cに接する側の面には第1の撥水層105cが形成されており、第2のガス拡散層104aのアノード103aに接する側の面には第2の撥水層105aが形成されている。
単セル10Rは、第1のガス拡散層104cの外周には、第1のセパレータ110cおよび第2のセパレータ110aの間で挟持されるように、シール部材120が形成されている。さらに、単セル10Rは、シール部材120と第1のガス拡散層104cとの間に生じた隙間に、充填材130として樹脂が充填されており、湿潤状態における膜電極接合体101の膨らみが抑制される。
しかしながら、充填材130の充填量が少なく、充填材130によって形成される層(以下、「充填材層」とも呼ぶ)の厚みが薄くなった場合において、以下の問題が発生する可能性がある。
充填材層の厚みが薄くなった場合、複数の単セル10Rを積層して組み付けるときに、積層方向両側から加えた荷重が、膜電極接合体101のうち充填材130と重なる部分(対応MEA部分)には十分に加わらない可能性がある。この場合には、電解質膜20の膨潤を抑えることが不十分となるので、膜電極接合体101が座屈して膜電極接合体が劣化または損傷する可能性があった。
また、カソード103c側の酸化ガスの圧力に対してアノード103a側の燃料ガスの圧力が大きく、アノード103aとカソード103cとの間の電極間のガス差圧が大きい箇所に上記隙間が存在する場合には、この電極間のガスの差圧(以下、「極間差圧」とも呼ぶ)によって膜電極接合体101に対して応力が発生する。この結果、膜電極接合体101の隙間の部分では、発生した応力に応じた機械的な変形が発生しやすくなる。充填材130が隙間に十分に充填されている場合には、膜電極接合体101に発生した応力を、形成された充填材層から加わる荷重によって抑制することにより、膜電極接合体10の変形を十分に抑制することが可能である。しかしながら、充填材130の充填量が少なくなった場合には、形成された充填材層から加わる荷重では、膜電極接合体101に発生した応力を抑制することができず、膜電極接合体101の変形を十分に抑制できない可能性があるからである。なお、極間差圧は、燃料ガスの圧力の方が酸化ガスの圧力よりも高く、通常、単セルへの燃料ガスの導入部側(入口側)において大きくなるので、燃料ガスの導入部側に存在する隙間への充填材の充填量が少なくなった場合には、膜電極接合体の変形が発生しやすくなる。このように、隙間に充填材を充填した場合でも、極間差圧によって膜電極接合体が劣化又は損傷する可能性があった。
膜電極接合体の劣化や損傷は、燃料ガスおよび酸化ガスのクロスリークを引き起こし得るため望ましくない。よって、膜電極接合体が湿潤状態と乾燥状態との間で状態変化しても、また、隙間への充填材の充填量が少なかった場合においても、膜電極接合体の劣化や損傷を抑制する技術が望まれていた。また、燃料電池においては、部品点数を抑制することや、製造工程を簡素化することや、製造コストを低減すること等が望まれていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態は、燃料電池のセル構造である。この燃料電池のセル構造は、矩形状の膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された矩形状の第1と第2のガス拡散層と、を備える矩形状の電極体であって、前記第1のガス拡散層は、前記第2のガス拡散層よりも面積が小さく、前記第1のガス拡散層の外周部は、前記膜電極接合体の外周部および前記第2のガス拡散層の外周部よりも内側に位置する、電極体と;矩形状の開口部を有するシール部材であって、前記開口部内に前記第1のガス拡散層を収納することにより前記第1のガス拡散層の外周部を覆うシール部材と;前記第1のガス拡散層の外周端部と前記シール部材の内周端部との間に充填された充填材と;前記シール部材の面上と前記第1のガス拡散層の面上に配置され、前記第1のガス拡散層の面に沿って酸化ガスを流す酸化ガス流路を有する第1のセパレータと;前記シール部材の面上と前記第2のガス拡散層の面上に配置され、前記第2のガス拡散層の面に沿って燃料ガスを流す燃料ガス流路を有する第2のセパレータと;前記電極体の第1の辺の外周側にあり、前記燃料ガス流路に外部から前記燃料ガスを供給するための前記燃料ガスの供給口と;前記第1の辺に対向する第2の辺の外周側にあり、前記燃料ガス流路から外部へ前記燃料ガスを排出するための前記燃料ガスの排出口と;を備える。前記電極体は、前記燃料ガスの供給口側に位置する前記第1のガス拡散層の第1の外周端部と前記シール部材の第1の内周端部との間の間隔が、前記燃料ガスの排出口側に位置する前記第1のガス拡散層の第2の外周端部と前記シール部材の第2の内周端部との間の間隔よりも小さくなるように、配置されている。
この形態のセル構造によれば、燃料ガスの供給口側における第1のガス拡散層とシール部材との間の隙間に位置する膜電極接合体に加わる応力を低減することができる。これにより、膜電極接合体が変形する可能性を低減でき、膜電極接合体が劣化または損傷する可能性を低減できる。
その他、本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、燃料電池のセル構造が提供される。このセル構造は、矩形状の膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された矩形状の第1と第2のガス拡散層と、を備える矩形状の電極体であって、前記第1のガス拡散層は、前記第2のガス拡散層よりも面積が小さく、前記第1のガス拡散層の外周部は、前記膜電極接合体の外周部および前記第2のガス拡散層の外周部よりも内側に位置する、電極体と;矩形状の開口部を有するシール部材であって、前記開口部に前記第1のガス拡散層を配置することにより前記第1のガス拡散層の外周部を覆うシール部材と;前記第1のガス拡散層の外周端部と前記シール部材の内周端部との間に充填された充填材と;前記シール部材の面上と前記第1のガス拡散層の面上に配置され、前記第1のガス拡散層の面に沿って酸化ガスを流す溝状の酸化ガス流路を有する第1のセパレータと;前記シール部材の面上と前記第2のガス拡散層の面上に配置され、前記第2のガス拡散層の面に沿って燃料ガスを流す溝状の燃料ガス流路を有する第2のセパレータと;前記電極体の第1の辺の外周側にあり、前記燃料ガス流路に外部から前記燃料ガスを供給するための前記燃料ガスの供給口と;前記第1の辺に対向する第2の辺の外周側にあり、前記燃料ガス流路から外部へ前記燃料ガスを排出するための前記燃料ガスの排出口と;を備える。前記電極体は、前記燃料ガスの供給口側に位置する前記第1のガス拡散層の第1の外周端部と前記シール部材の第1の内周端部との間の間隔が、前記燃料ガスの排出口側に位置する前記第1のガス拡散層の第2の外周端部と前記シール部材の第2の内周端部との間の間隔よりも小さくなるように、配置されている。この形態のセル構造によれば、燃料ガスの供給口側における第1のガス拡散層とシール部材との間の隙間に位置する膜電極接合体に加わる応力を低減することができる。これにより、膜電極接合体が変形する可能性を低減でき、膜電極接合体が劣化または損傷する可能性を低減できる。
(2)上記形態のセル構造において、さらに、前記電極体の前記第1の辺に垂直な第3の辺の外周側にあり、前記酸化ガス流路に外部から前記酸化ガスを供給するための前記酸化ガスの供給口と;前記第3の辺に対向する第4の辺の外周側に配置され、前記酸化ガス流路から外部へ前記酸化ガスを排出するための前記酸化ガスの排出口と;を備え、前記電極体は、前記酸化ガスの排出口側に位置する前記第1のガス拡散層の第3の外周端部と前記シール部材の第3の内周端部との間の間隔が、前記酸化ガスの供給口側に位置する前記第のガス拡散層の第4の外周端部と前記シール部材の第4の内周端部との間の間隔よりも大きくなるように、配置されていても良い。この形態のセル構造によれば、燃料ガスの供給口側において、燃料ガスの圧力と酸化ガスの圧力との圧力差を低減することができるので、第1のガス拡散層とシール部材との間の隙間に位置する膜電極接合体に加わる応力をより効果的に低減することができる。これにより、膜電極接合体が変形する可能性を低減でき、膜電極接合体が劣化又は損傷する可能性を低減できる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池のセル構造、燃料電池、燃料電池を搭載した車両等の形態で実現することができる。
一実施形態における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。 単セルの概略構成を示す説明図である。 図2(c)に示した単セルの概略断面の周縁部のうちの領域A1の部分を拡大して示す概略断面図である。 図2(c)に示した単セルの概略断面の周縁部のうちの領域A2の部分を拡大して示す概略断面図である。 燃料電池の製造方法の概略を示す説明図である。 サンプル#1におけるシール部材と第1のガス拡散層との配置関係を示す平面図である。 サンプル#2におけるシール部材と第1のガス拡散層との配置関係を示す平面図である。 サンプル#3におけるシール部材と第1のガス拡散層との配置関係を示す平面図である。 サンプル#4におけるシール部材と第1のガス拡散層との配置関係を示す平面図である。 各サンプルにおける隙間をまとめた表である。 各サンプルのa部およびc部において想定される引張応力を示す表である。 膜電極接合体の変形のモデルを示す模式図である。 a部の極間差圧およびc部の極間差圧をパラメータとしそれぞれにおける隙間と引張応力σとの関係を示すグラフである。 図13に基づいてa部およびc部における隙間と極間差圧Δpと引張応力σとの関係をまとめた表である。 隙間に樹脂を充填した単セルの構造の一例を示す概略断面図である。
A1:燃料電池の構成:
図1は、一実施形態における燃料電池システム5の概略構成を示す説明図である。燃料電池システム5は、燃料電池200と、水素タンク50と、エアコンプレッサ40と、制御部26と、を備える。水素タンク50は、燃料ガスとしての水素を貯蔵する。エアコンプレッサ40は、酸化ガスとしての圧縮空気を燃料電池200に供給する。制御部26は、燃料電池システム5全体の制御を行う。
燃料電池200は、固体高分子形燃料電池である。燃料電池200の構造は、複数の単セル10を積層したスタック構造である。燃料電池200は、複数の単セル10の他に、エンドプレート21と、絶縁板22と、集電板23と、を備える。積層方向(Z軸方向)の両側には、それぞれ集電板23、絶縁板22およびエンドプレート21が、単セル10側から外側に向かってこの順に配置されている。2枚のエンドプレート21の間は、テンションロッド24及びナット25により、所定の締結力(荷重)で締結されている。これにより、各単セル10には、所定の力が積層方向の両側から加えられる。ナット25の少なくとも一方には、ナット25を回転させて締結力を調製するための駆動部27が設けられている。
単セル10はそれぞれ、燃料ガス(水素)と酸化ガス(空気に含まれる酸素)との電気化学反応により発電を行う。水素タンク50に貯蔵された燃料ガスとしての水素は、減圧弁51によって減圧された後に水素ガス供給路53を流通する。流通する水素は、水素ガス供給路53に設けられた圧力調整弁52によって所定の圧力に調整されて、燃料電池200に供給される。燃料電池200に供給された水素を含有するガス(アノード供給ガス)は、燃料電池200の内部に形成されるアノードガス供給マニホールド(図示せず)を介して各単セル10に供給され、各単セル10における発電に利用される。各単セル10において利用されなかった水素を含有するガス(アノード排ガス)は、燃料電池200の内部に形成されるアノードガス排出マニホールド(図示せず)を介して集約される。そして、アノード排ガスは、アノード排ガス路54を介して燃料電池200の外部に排出される。なお、燃料電池システム5は、アノード排ガスを供給側に再循環させる構成を有しても良い。
エアコンプレッサ40によって加圧された空気は、酸化ガス供給路41を介して燃料電池200に供給される。燃料電池200に供給された酸素を含む空気(カソード供給ガス)は、カソードガス供給マニホールド(図示せず)を介して各単セル10に供給され、各単セル10における発電に利用される。各単セル10において利用されなかった空気(カソード排ガス)は、カソードガス排出マニホールド(図示せず)を介して集約され、カソード排ガス路48を介して燃料電池200の外部に排出される。
冷媒循環ポンプ46は、冷媒循環流路47を介して、燃料電池200に冷媒を供給する。燃料電池200で暖められた冷却媒体は、ラジエータ45で冷却され、再び燃料電池200に供給される。冷却媒体は、冷媒供給マニホールド(図示せず)を介して各単セル10に供給され、各単セル10を冷却する。各単セル10を通過した後の冷却媒体は、冷媒排出マニホールド(図示せず)を介して集約され、冷媒循環流路43を介してラジエータ45に流通する。冷却媒体としては、水や、水とエチレングリコールとの混合液などの不凍水を用いることができる。本実施形態では、冷却媒体として液体を用いているが、冷却媒体として空気を用いる構成であってもよい。
制御部26は、図示しないCPUやメモリ等を備えたコンピュータである。制御部26は、燃料電池システム5の各部に配された温度センサや圧力センサ、電圧計等からの信号を受信し、受信した信号に基づき燃料電池システム5全体の制御を行う。
図2は、単セル10の概略構成を示す説明図である。図2のうち、図2(a)は単セル10をカソード側から見た概略平面を示し、図2(b)は単セル10の内部をカソード側から透視して見た概略平面を示し、図2(c)は、図2(a)に示したA−A矢視概略断面を示している。図3は、図2(c)に示した単セル10の概略断面の周縁部のうちの領域A1の部分を拡大して示す概略断面図である。図4は、図2(c)に示した単セル10の概略断面の周縁部のうちの領域A2の部分を拡大して示す概略断面図である。
図2に示すように、単セル10は、電極体100と、電極体100の両面を挟むように配置された第1および第2のセパレータ110c,110aと、を備える。また、単セル10は、電極体100の外周を覆うように配置されたシール部材120を備える。
電極体100は、図2(c),図3,図4に示すように、膜電極接合体(MEA)101と、第1のガス拡散層104cと、第2のガス拡散層104aと、を備える。膜電電極接合体101は、電解質膜102と、電解質膜の両面に配置されたカソード103cおよびアノード103aと、を備える。電解質膜102は、固体高分子材料、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態において良好な電気伝導性を示す。カソード103cとアノード103aとはそれぞれ、触媒として、例えば白金、あるいは白金合金を備えている。より具体的には、カソード103cとアノード103aは、上記触媒を担持したカーボン粒子と、電解質膜102を構成する高分子電解質と同様の電解質と、を備えている。図2〜図4において、符号の末尾に「c」が付された部材はカソード103c側の部材であり、「a」が付された部材はアノード103a側の部材である。
第1のガス拡散層104cと第2のガス拡散層104aとは、膜電極接合体101を両側から挟むように配置されている。第1のガス拡散層104cのカソード103cに接する面には、第1の撥水層105cが設けられている。また、第2のガス拡散層104aのアノード103aに接する面には、第2の撥水層105aが設けられている。
第1と第2のガス拡散層104c,104aは、ガス透過性を有する導電性部材によって形成される。導電性部材としては、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロス、金属メッシュ、発泡金属等がある。また、第1と第2のガス拡散層104c,104aは、いずれも、平坦な板状部材として形成されている。第1と第2のガス拡散層104c,104aを設けることによって、電極に対するガス供給効率を向上させると共に、第1と第2のセパレータ110c,110aと電極との間の集電性を高めることができる。また、第1と第2のガス拡散層104c,104aによって、電解質膜102を保護することができる。
第1と第2の撥水層105c,105aは、カーボン粒子と、フッ素樹脂などの撥水性物質とを備えている。このような第1と第2の撥水層105c,105aは、カーボン粒子と撥水性物質とを含有する混合液である撥水インクを、第1と第2のガス拡散層104c,104aを構成する導電性部材の表面に塗布し、乾燥・焼成を行なうことによって形成される。第1と第2の撥水層105c,105aは、膜電極接合体101からガス拡散層104c,104aに移動しようとする液水を膜電極接合体101側に押し戻す。液水を押し戻すことによって電解質膜102が水分不足となることを抑制できる。また、液水をはじくことによって、第1と第2のガス拡散層104c,104aに備えられる細孔が液水によって閉塞されることを抑制できる。
図2(b),図3,図4に示すように、本実施形態では、第1のガス拡散層104cと第2のガス拡散層104aとは、その大きさ(面積)が異なっている。本実施形態では、第1のガス拡散層104cは第2のガス拡散層104aよりも面積が小さい。また、図2(b)に示すように、膜電極接合体101の面内方向(平面方向)において、第1のガス拡散層104cの外周端部(外周縁)は、膜電極接合体101の外周端部および第2のガス拡散層104aの外周端部(破線枠で示す)よりも内側(中央側)に位置する。
図2(c),図3,図4に示すように、第1と第2のセパレータ110c,110aは、電極体100およびシール部材120を両側から挟むように配置されている。第1と第2のセパレータ110c,110aは、ガス不透過な導電性部材によって形成される。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン等のカーボン製部材や、プレス成形したステンレス鋼などの金属製部材がある。第1と第2のセパレータ110c,110aの外形は、図2(a)に示すように、矩形状である。第1と第2のセパレータ110c,110aのうち、触媒電極層(カソード82あるいはアノード86)と対向する面には、図3,図4に示すように、反応ガスが流れる流路溝116c,116aを形成する凹凸形状が形成されている。流路溝116cは、第1のガス拡散層104cに対し、酸化ガスを流通させる酸化ガス流路を形成する。また、流路溝116aは、第2のガス拡散層104aに対し、燃料ガスを流通させる燃料ガス流路を形成する。以下では、流路溝116cを「酸化ガス流路116c」とも呼び、流路溝116aを「燃料ガス流路116a」とも呼ぶ
シール部材120は、シート状であり、合成樹脂(例えば、ポリオレフィン)によって形成される。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンやポリエチレンを用いることができる。シール部材120の厚みは、第1と第2のガス拡散層104c,104aの形状や第1と第2のセパレータ110c,110aの形状等によって適宜定めることができる。例えば、シール部材120の厚みは、100〜300μm程度である。シール部材120は、図3,図4に示すように、膜電極接合体101の外周部のうち第1のガス拡散層104cが配置された側の面上に貼り付けられている。シール部材120の外形は、図2(b)に示すように、矩形状である。また、シール部材120の中央には、第1のガス拡散層104cを収納する空間(開口部)が形成されている。シール部材120は、酸化ガス流路をシールする。
図3,図4に示すように、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120との間の隙間を塞ぐように、充填材130が上記隙間で露出する膜電極接合体101上に設けられている。また、充填材130は、シール部材120と膜電極接合体101との間に配置され、シール部材120を膜電極接合体101に取り付けるために用いられる。充填材130は、ポリイソブチレン、エポキシ、ウレタンなどの熱硬化性樹脂を含む。
図2(a),図2(b)に示すように、第1のセパレータ110cとシール部材120と第2のセパレータ110aとには、上記した燃料電池200の内部に形成される各種マニホールドを構成するための複数の貫通孔が以下で説明するように形成されている。なお、第2のセパレータ110aの平面図は省略されているが、第2のセパレータ110aに形成されている複数の貫通孔の位置と形状は、第1のセパレータ110cと同様である。
第1と第2のセパレータ110c,110aには、図2(a)に示すように、カソードガス供給マニホールドを構成する複数のカソードガス導入用貫通孔112iが一方の長辺(図の下辺)に沿って形成されており、カソードガス排出マニホールドを構成する複数のカソードガス排出用貫通孔112oが他方の長辺(図の上辺)に沿って形成されている。従って、カソードガス供給用貫通孔112iが設けられている側が酸化ガス(空気)の入口側であり、カソードガス排出用貫通孔112oが設けられている側が酸化ガスの出口側となる。また、第1のセパレータ110cには、アノードガス供給マニホールドを構成する複数のアノードガス導入用貫通孔114iが一方の短辺(図の左辺)に沿って形成されており、アノードガス排出マニホールドを構成する複数のアノードガス排出用貫通孔114oが他方の短辺(図の右辺)に沿って形成されている。従って、アノードガス供給用貫通孔114iが設けられている側の燃料ガス(水素)の入口側であり、アノードガス排出用貫通孔114oが設けられている側が燃料ガスの出口側となる。
シール部材120にも、図2(b)に示すように、カソードガス供給マニホールドを構成する複数のカソードガス導入用貫通孔122iが一方の長辺(図の下辺)に沿って形成されており、カソードガス排出マニホールドを構成する複数のカソードガス排出用貫通孔122oが他方の長辺(図の上辺)に沿って形成されている。また、シール部材120には、アノードガス供給マニホールドを構成する複数のアノードガス導入用貫通孔124iが一方の短辺(図の左辺)に沿って形成されており、アノードガス排出マニホールドを構成する複数のアノードガス排出用貫通孔124oが他方の短辺(図の右辺)に沿って形成されている。
なお、以下では、カソードガス導入用貫通孔を「カソードガス供給マニホールド」とも呼び、カソードガス排出用貫通孔を「カソードガス排出マニホールド」とも呼ぶ。また、アノードガス導入用貫通孔を「アノードガス供給マニホールド」とも呼び、アノードガス排出用貫通孔を「カソードガス排出マニホールド」とも呼ぶ。
酸化ガスとしての空気は、図2(a)に示すように、酸化ガス(空気)の供給口となるカソード供給マニホールド112iから、第1のセパレータ110cに形成された酸化ガス流路116c(図3,図4参照)に導入され、電極体100の短辺方向(Y方向)に沿って流れ、酸化ガスの排出口となるカソードガス排出マニホールド112oを介して単セル10の外部へ排出される。これに対して、燃料ガスとしての水素は、燃料ガス(水素)の供給口となるアノードガス供給マニホールド114iから、第1のセパレータ110cに形成された燃料ガス流路116a(図3,図4参照)に導入され、電極体100の長辺方向(X方向)に沿って流れ、燃料ガスの排出口となるアノーガス排出マニホールド114oを介して単セル10の外部へ排出される。すなわち、酸化ガス流路の流路方向と燃料ガス流路の流路方向とが直交する構造とされている。
なお、第1のセパレータ110cとシール部材120と第2のセパレータ110aとには、さらに、冷媒供給マニホールドおよび冷媒排出マニホールドを構成するための複数の貫通孔も形成されるが、本発明の説明上特に必要がないので図示および説明を省略する。
図2(c),図3に示す間隔D1は、アノード供給マニホールド114i,124i側における第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔である。図2(c),図4に示す間隔D2は、アノード排出マニホールド114o,124o側における第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔である。本実施形態では、図4に示す水素排出側の間隔D2よりも、図3に示す水素供給側の間隔D1の方が小さくなるように、電極体100が配置されている点に特徴を有している。この配置構造については、さらに、後述する。
図5は、燃料電池200の製造方法の概略を示す説明図である。まず、膜電極接合体101を準備する(ステップS10)。次に、膜電極接合体101に、第1の撥水層105cが形成された第1のガス拡散層104cを取り付けると共に、第2の撥水層105aが形成された第2のガス拡散層104aを取り付ける(ステップS12)。すなわち、ステップS12は、電極体100を準備する工程である。
次に、膜電極接合体101の外周縁から内側の外周部のうち、第1のガス拡散層104cが配置された側の第1面101c上に、液状の充填材130を塗布する(ステップS14)。図5のステップS14では、図示の便宜上、充填材130が、シール部材120と電極体100との間に形成される空間Sの外側に塗布されているように描かれているが、実際には、充填材130は、この空間Sの位置に塗布される。塗布する充填材130の量は、空間Sの容積の1.2倍以上2.0倍以下が好ましい。充填材130の量が空間Sの容積の1.2倍以上であることで、後述するステップS16において、充填材130を確実に隙間Mから外側にはみ出させることができる。また、充填材130の量が空間Sの容積の2.0倍以下であることで、後述するステップS16において、隙間Mから充填材130が過度にはみ出す可能性を低減できる。過度に充填材130が隙間Mからはみ出すと、酸化ガス流路が閉塞する不具合が生じ得る。
次に、シール部材120を第1のガス拡散層104cを囲むように配置する。この際、上記したように、水素排出側の間隔D2(図4)よりも、水素供給側の間隔D1(図3)の方が小さくなるように配置する。これにより、充填材130の一部分がシール部材120によって押し出され、この結果、シール部材120と膜電極接合体101とによって挟まれた第1充填部分131と、隙間Mから第1のガス拡散層104cよりも膜電極接合体101の積層方向外側にはみ出した露出部分132と、が形成される(ステップS16)。この工程は、例えば、膜電極接合体101の積層方向に沿って見たときに、シール部材120と塗布した充填材130とが一部重なるようにして、シール部材120を充填材130上に配置することによって実現できる。
次に、第1と第2のセパレータ110c,110aを電極体100の両側に取り付ける(ステップS18)。詳細には、第1と第2のセパレータ110c,110aのうちシール部材120と当接する部分に接着剤を塗布して、第1と第2のセパレータ110c,110aによってシール部材120および電極体100を積層方向に圧縮する方向に力を加える。これにより、第1と第2のセパレータ110c,110aと、シール部材120とが取り付けられる。また、少なくとも第1のセパレータ110cを充填材130が硬化する温度以上に加熱する。これにより、充填材130を硬化させて充填材130と第1のセパレータ110cとを取り付ける。この結果、単セル10が製造される。単セル10を複数積層することで燃料電池200が製造される。
ここで、課題で説明したように、充填材130の充填量が少ない場合には、シール部材120と第1のガス拡散層104cとの間の隙間S(図5のステップS14参照)の部分では、電極間のガス差圧(極間差圧)によって発生する応力による膜電極接合体101の変形を抑制することが困難となる可能性がある。これに対して、本実施形態では、上記したように、極間差圧による膜電極接合体の変形の抑制を目的として、水素排出側における第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔D2よりも、水素供給側の間隔D1の方が小さくなるように、電極体100が配置された構造を有している(図2〜4参照)。このシール部材120および電極体100の配置構造は、以下の実施例で説明するように、充填材130の充填量が少ない場合においても、燃料ガスの圧力の方が酸化ガスの圧力よりも高くなるような極間差圧によって発生する膜電極接合体の変形を抑制することが可能である。
本実施形態による膜電極接合体の変形を抑制する効果を確認するために、以下に示す4種類の配置構造の異なるサンプル#1〜4について評価を行った。
図6は、サンプル#1におけるシール部材120と第1のガス拡散層104cとの配置関係を示す平面図である。サンプル#1は、第1のガス拡散層104cの外周端部が、燃料ガス(アノードガス)としての水素供給側および酸化ガス(カソードガス)としての空気排出側で、シール部材120の内周端部に接触するように配置されたサンプルである。サンプル#1は、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間隔として、水素供給側を水素排出側に比べて小さくするとともに、空気供給側を空気排出側に比べて小さくした構造の一例である。
図7は、サンプル#2におけるシール部材120と第1のガス拡散層104cとの配置関係を示す平面図である。サンプル#2は、第1のガス拡散層104cの外周端部が、水素排出側および空気供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されたサンプルである。サンプル#2は、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間隔として、水素供給側を水素排出側に比べて大きくするとともに、空気排出側を空気供給側に比べて大きくした構造の一例である。
図8は、サンプル#3におけるシール部材120と第1のガス拡散層104cとの配置関係を示す平面図である。サンプル3は、第1のガス拡散層104cの外周端部が、水素排出側および空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されたサンプルである。サンプル#3は、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間隔として、水素供給側を水素排出側に比べて大きくするとともに、空気排出側を空気供給側に比べて小さくした構造の一例である。
図9は、サンプル#4におけるシール部材120と第1のガス拡散層104cとの配置関係を示す平面図である。サンプル#4は、第1のガス拡散層104cの外周端部が、水素供給側および空気供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されたサンプルである。サンプル#4は、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間隔として、水素供給側を水素排出側に比べて小さくするとともに、空気排出側を空気供給側に比べて大きくした構造の一例である。
以上のように、サンプル#1およびサンプル#4は、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔(隙間)として水素供給側が水素排出側に比べて小さくなるように、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されたサンプルである。これに対して、サンプル#2およびサンプル#3は、第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔(隙間)として水素供給側が水素排出側に比べて大きくなるように、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されたサンプルである。
ただし、第1のガス拡散層104cの構造を考慮すると、第1のガス拡散層104cの外周端部がシール部材120の内周端部に接触するように配置されたとしても、0.5mm程度の隙間が生じる。なぜならば、第1のガス拡散層104cの外周端部のシール部材120に接触させる面(Z方向に沿った面)には凹凸があり、凸部分ではシール部材120と接触するが凹部分ではシール部材120と接触せずに隙間が生じるためである。
図10は、各サンプルにおける隙間をまとめた表である。サンプル#1では、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびc部のX方向の隙間(間隔)が0.5mmで、b部およびd部のX方向の隙間が1.5mmとなっている。また、サンプル#1では、第1のガス拡散層104cが空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびb部のY方向の隙間が0.5mmで、c部およびd部のY方向の隙間が1.5mmとなっている。
サンプル#2では、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびc部のX方向の隙間が1.5mmで、b部およびd部のX方向の隙間が0.5mmとなっている。また、サンプル#2では、第1のガス拡散層104cの外周端部が空気供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびb部のY方向の隙間が1.5mmで、c部およびd部のY方向の隙間が0.5mmとなっている。
サンプル#3では、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびc部のX方向の隙間が1.5mmで、b部およびd部のX方向の隙間が0.5mmとなっている。また、サンプル#3では、第1のガス拡散層104cの外周端部が空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびb部のY方向の隙間が0.5mmで、c部およびd部のY方向の隙間が1.5mmとなっている。
サンプル#4では、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびc部のX方向の隙間が0.5mmで、b部およびd部のX方向の隙間が1.5mmとなっている。また、サンプル#4では、第1のガス拡散層104cの外周端部が空気供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されているので、a部およびb部のY方向の隙間が1.5mmで、c部およびd部のY方向の隙間が0.5mmとなっている。
水素供給口(アノードガス供給マニホールド)から供給される水素のガス圧を300kPaとし、水素排出口(アノードガス排出マニホールド)へ排出される水素のガス圧を100kPaとするとともに、空気供給口(カソードガス供給マニホールド)から供給される空気のガス圧を200kPaとし、空気排出口(カソードガス排出マニホールド)へ排出される空気のガス圧を100kPaとした。この場合の各部a〜dで発生する極間のガス差圧(極間差圧)Δpは、a部:+200kPa、b部:0kPa、c部:+100kPa、d分:−100kPaとなる。差圧の符号が「+」の場合、(アノードにおける水素の圧力)>(カソードにおける空気の圧力)となることを示している。従って、a部とc部とでは、極間差圧Δpに応じて膜電極接合体に加わる応力によって、膜電極接合体の変形を引き起こす可能性がある。
図11は、各サンプルのa部およびc部において想定される引張応力を示す表である。図11に示された各引張応力は、以下に示すように計算により求めることができる。
図12は、膜電極接合体(MEA)の変形のモデルを示す模式図である。図12に示すように、膜電極接合体に垂直な仮想中心軸(一点鎖線)を中心として半径aの領域に外力pが加わった場合には、仮想中心軸を中心とした半径aの領域において膜電極接合体の変形が発生するものとする。この場合、膜電極接合体の変形前の仮想中心軸からの距離rおよび仮想中心軸回りの角度θで表される極座標(r,θ)における引張応力σrおよび引張応力σθは、r=aとして下式(1)で表される。
σ=σr=σθ=(B0/4(E・p2・r2/t21/3
=(B0/4(E・p2・a2/t21/3 …(1)
Eは用いられる膜電極接合体のヤング率であり、B0は定数であって、例えば、ポアソン比ν=0.4でB0=1.777である。また、tは膜電極接合体の膜厚である。
なお、上記式(1)は、一般的な材料力学における引張応力(以下、単に「応力」とも呼ぶ)σの式を膜電極接合体に適用した式である(Journal of Power Sources 194(2009)873−879参照)。
ここで、シール部材120の内周端部と第1のガス拡散層104cの外周端部との間の隙間で膜電極接合体に発生する応力は、図12で示した膜電極接合体における変形の領域の直径(2a)を隙間の大きさとみなすとともに、外力pを極間差圧Δpとすることにより、上記式(1)から隙間と引張応力σ(=σr)との関係を計算することができる。なお、図13は、a部の極間差圧(Δp=200kPa)およびc部の極間差圧(Δp=100kPa)をパラメータとし、それぞれにおける隙間と引張応力σとの関係を示すグラフである。また、図14は、図13に基づいてa部およびc部における隙間と極間差圧Δpと引張応力σとの関係をまとめた表である。
以上のようにして得られた結果(図13,14)に基づいて、図11に示した各サンプルのa部およびc部において想定される引張応力が求められる。サンプル#1では、c部における引張応力はサンプル#2およびサンプル#3と同じ7.9MPaであり、サンプル#2およびサンプル#3に対して大きくならず、a部における引張応力がサンプル#2およびサンプル#3の12.5MPaに対して6.0MPaと半分以下の大きさとなっている。また、サンプル#4では、a部における引張応力はサンプル#2およびサンプル#3と同じ12.5MPaであり、サンプル#2およびサンプル#3に対して大きくならず、c部における引張応力がサンプル#2およびサンプル#3の7.9MPaに対して3.8MPaと半分以下の大きさとなっている。
従って、サンプル#1およびサンプル#4のように、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置される構造によれば、水素の圧力が空気の圧力よりも高くなる極間差圧に応じて膜電極接合体に発生する応力を抑制することが可能であり、膜電極接合体の変形を抑制することが可能である。また、酸化ガス(空気)の流路方向と燃料ガス(水素)の流路方向とが直交する構造の場合には、サンプル#1のように、さらに、第1のガス拡散層104cの外周端部が空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置される構造であることが好ましい。サンプル#1では、水素の圧力が空気の圧力よりも高くなる極間差圧に応じて膜電極接合体に発生する応力をサンプル#4よりも抑制することが可能であり、膜電極接合体の変形をより抑制することが可能である。
なお、サンプル#1およびサンプル#4は、水素排出側における第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔(隙間)よりも水素供給側の間隔の方が小さくなる配置構造の一例として、水素供給側で第1のガス拡散層104cの外周端部がシール部材120の内周端部に接触するように配置されたものである。サンプル#1およびサンプル#4の場合であっても、上記したように、接触させるように配置した部分においても0.5mm程度の隙間が生じている。このことを考慮すれば、必ずしも、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置される必要はない。水素供給側におけるシール部材120の内周端部と第1のガス拡散層104cの外周端部との間隔が、水素排出側におけるシール部材120の内周端部と第1のガス拡散層104cの外周端部との間隔よりも小さくなるように配置されていてれば良い。この配置構造によれば、少なくとも、極間差圧が大きくなる水素供給側の位置にある隙間において膜電極接合体に発生する応力を抑制することが可能であり、膜電極接合体の変形を抑制することが可能である。ただし、サンプル#1およびサンプル#4のように、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側でシール部材120の内周端部に接触するように配置される構造が望ましい。
また、サンプル#1は、酸化ガスとしての空気の流路方向と燃料ガスとしての水素の流路方向とが直交する構造の場合に、さらに、空気供給側における第1のガス拡散層104cの外周端部とシール部材120の内周端部との間の間隔よりも空気排出側の間隔の方が小さくなる配置構造の一例として、第1のガス拡散層104cの外周端部が空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置されたものである。同様に、必ずしも、第1のガス拡散層104cの外周端部が空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置される必要はない。空気排出側におけるシール部材120の内周端部と第1のガス拡散層104cの外周端部との間隔が、空気供給側におけるシール部材120の内周端部と第1のガス拡散層104cの外周端部との間隔よりも小さくなるように配置されていれば良い。この配置構造によれば、水素供給側において膜電極接合体に加わる極間差圧を低減することが可能である。この結果、水素供給側かつ空気排出側の位置の隙間において膜電極接合体に発生する応力を抑制することが可能であり、膜電極接合体の変形を抑制することが可能である。ただし、サンプル#1のように、第1のガス拡散層104cの外周端部が水素供給側および空気排出側でシール部材120の内周端部に接触するように配置される構造が望ましい。
なお、上記実施形態では、シール部材120は、膜電極接合体101の外周部のうち第1のガス拡散層104cが配置された側(カソード側)に設けられた構造を例に説明しているが、第2のガス拡散層104aの外周端部も、第1のガス拡散層104cと同様に、膜電極接合体101の外周端部よりも内側に位置しており、第2のガス拡散層104aが配置された側(アノード側)にもシール部材120が設けられた構造の場合には、シール部材120の内周端部と第1のガス拡散層140cの外周端部との間の隙間およびシール部材120の内周端部と第2のガス拡散層104aの外周端部との間の隙間において、同様に適用することが可能である。
上記実施形態では、燃料ガス流路の流路方向が横方向で酸化ガス流路の流路方向が縦方向に直交する構造を例に説明したが、互いに逆であってもよい。また、燃料ガス流路および酸化ガス流路の両方の流路方向が横方向あるいは縦方向に同じ向きとした構造でもよく、この場合において、燃料ガスと酸化ガスの流れの方向も、互いに同じ方向を向いて良いし、互いに対向する方向を向いていてもよい。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
5…燃料電池システム
10,10R…単セル
20…電解質膜
21…エンドプレート
22…絶縁板
23…集電板
24…テンションロッド
25…ナット
26…制御部
27…駆動部
40…エアコンプレッサ
41…酸化ガス供給路
43…冷媒循環流路
45…ラジエータ
46…冷媒循環ポンプ
47…冷媒循環流路
48…カソード排ガス路
50…水素タンク
51…減圧弁
52…圧力調整弁
53…水素ガス供給路
54…アノード排ガス路
100…電極体
101…膜電極接合体(MEA)
102…電解質膜
103a…アノード
103c…カソード
104a…第2のガス拡散層
104c…第1のガス拡散層
105a…第2の撥水層
105c…第1の撥水層
106a…第2のガス拡散層
106c…第1のガス拡散層
110a…第2のセパレータ
110c…第1のセパレータ
116a…燃料ガス流路(流路溝)
116c…酸化ガス流路(流路溝)
120…シール部材
130…充填材
131…第1充填部分131
132…第2充填部分(露出部分)132
200…燃料電池
S…空間
M…隙間

Claims (2)

  1. 燃料電池のセル構造であって、
    矩形状の膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された矩形状の第1と第2のガス拡散層と、を備える矩形状の電極体であって、前記第1のガス拡散層は、前記第2のガス拡散層よりも面積が小さく、前記第1のガス拡散層の外周部は、前記膜電極接合体の外周部および前記第2のガス拡散層の外周部よりも内側に位置する、電極体と、
    矩形状の開口部を有するシール部材であって、前記開口部に前記第1のガス拡散層を収納することにより前記第1のガス拡散層の外周部を覆うシール部材と、
    前記第1のガス拡散層の外周端部と前記シール部材の内周端部との間に充填された充填材と、
    前記シール部材の面上と前記第1のガス拡散層の面上に配置され、前記第1のガス拡散層の面に沿って酸化ガスを流す酸化ガス流路を有する第1のセパレータと、
    前記シール部材の面上と前記第2のガス拡散層の面上に配置され、前記第2のガス拡散層の面に沿って燃料ガスを流す燃料ガス流路を有する第2のセパレータと、
    前記電極体の第1の辺の外周側にあり、前記燃料ガス流路に外部から前記燃料ガスを供給するための前記燃料ガスの供給口と、
    前記第1の辺に対向する第2の辺の外周側にあり、前記燃料ガス流路から外部へ前記燃料ガスを排出するための前記燃料ガスの排出口と、
    を備え、
    前記電極体は、前記燃料ガスの供給口側に位置する前記第1のガス拡散層の第1の外周端部と前記シール部材の第1の内周端部との間の間隔が、前記燃料ガスの排出口側に位置する前記第1のガス拡散層の第2の外周端部と前記シール部材の第2の内周端部との間の間隔よりも小さくなるように、配置されている
    ことを特徴とする燃料電池のセル構造。
  2. 請求項1に記載の燃料電池のセル構造であって、さらに、
    前記電極体の前記第1の辺に垂直な第3の辺の外周側にあり、前記酸化ガス流路に外部から前記酸化ガスを供給するための前記酸化ガスの供給口と、
    前記第3の辺に対向する第4の辺の外周側に配置され、前記酸化ガス流路から外部へ前記酸化ガスを排出するための前記酸化ガスの排出口と、
    を備え、
    前記電極体は、前記酸化ガスの排出口側に位置する前記第1のガス拡散層の第3の外周端部と前記シール部材の第3の内周端部との間の間隔が、前記酸化ガスの供給口側に位置する前記第のガス拡散層の第4の外周端部と前記シール部材の第4の内周端部との間の間隔よりも大きくなるように、配置されている
    ことを特徴とする燃料電池のセル構造。
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