JP5928252B2 - 全固体電池用負極体および全固体電池 - Google Patents
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Description
なお、以下の説明において、リチウムイオンが固体電解質材料を伝導する経路のことを「Liイオン伝導パス」と称する場合がある。
まず、本発明の全固体電池用負極体について説明する。本発明の全固体電池用負極体は、負極集電体、ならびに上記負極集電体上に形成され、負極活物質および固体電解質材料を含有する負極活物質層を有するものであって、上記負極活物質層は炭素系活物質および金属系活物質を混合した負極活物質を含有し、上記金属系活物質が、Liと合金化反応を起こす活物質であり、上記金属系活物質の含有量が、上記負極活物質層の厚さ方向における上記負極集電体を有しない表面側から上記負極集電体側にかけて大きくなることを特徴とするものである。
なお、以下の説明において「全固体電池用負極体」を単に「負極体」と称する場合がある。
なお、以下の説明において、「負極活物質層の厚さ方向における負極集電体を有しない表面」を単に「外表面」と称する場合がある。
上記増加勾配として具体的には、傾斜状増加や線状増加等のように連続的に増加するものであっても良く、段階的に増加するものであっても良い。また、段階的に増加する場合、負極活物質層内において、負極活物質の重量が後述する含有量以上を占める領域とそれ以下の含有量である領域との2層構造を有することにより増加勾配を示すものであっても良く、多段階構造を有することにより増加勾配を示すものであっても良い。
本発明の全固体電池用負極体10は、負極集電体1と、負極集電体1上に形成された負極活物質2および固体電解質材料3を含有する負極活物質層4とを有するものであり、負極活物質層4は、負極活物質2として炭素系活物質5および金属系活物質6を有するものである。また、金属系活物質6は、負極活物質層4の厚さ方向において負極集電体1側に多く存在している。
しかし、上記炭素系活物質により緩和しきれない応力は、上記金属系活物質の周辺に存在する固体電解質材料に作用するため、上記固体電解質材料に亀裂を生じさせてしまい、上記亀裂が生じた部分ではリチウムイオンを伝導することができなくなる。中でも外表面側において上述した固体電解質材料の亀裂の発生が多い場合、上記外表面側から伝導されたリチウムイオンは、早い段階でLiイオン伝導パスが阻害または切断されることとなり、負極活物質層の全域および負極集電体までリチウムイオンを伝導することができない。その結果、負極体の耐久性が低下し、入出力特性およびサイクル特性の向上が図れない。
本発明における負極活物質層は、負極集電体上に形成され、負極活物質および固体電解質材料を含有するものである。また、上記負極活物質のうち金属系活物質の含有量が、上記負極活物質層の厚さ方向における上記負極集電体を有しない表面側から上記負極集電体側にかけて大きくなることを特徴とするものである。
負極活物質は、炭素系活物質および金属系活物質を混合したものである。上記負極活物質は、それぞれの活物質にリチウムイオンが挿入および脱離することにより、充放電を行うものである。
以下、炭素系活物質および金属系活物質について説明する。
上記負極活物質における金属系活物質は、Liと合金化反応を起こす活物質であり、上記金属系活物質は単体の金属であっても良く、金属化合物であっても良い。
ここで、合金化反応とは、金属系活物質がLiイオンの金属イオンと反応し、リチウム合金に変化する反応を言う。
金属系活物質の放充電電位が炭素系活物質よりも貴であることにより、充電初期において金属系活物質へのリチウムイオン挿入脱離反応が、炭素系活物質へのリチウムイオン挿入脱離反応よりも先に起こる。このため、金属系活物質は体積が膨張した状態となるが、後述する炭素系活物質により上記膨張が適度に抑制されるため、負極活物質層内部において効果的に自己拘束力が掛かった状態にすることが可能となる。これにより、その後の充放電反応において、金属系活物質の体積変化による固体電解質の亀裂の発生や、Liイオン伝導パスの阻害または切断を防ぐことが可能となる。なお、上記金属系活物質が上記炭素系活物質よりも充放電電位が貴であることは、例えば、サイクリックボルタンメトリー法による測定を行うことにより確認することができる。
また、金属系活物質は炭素系活物質よりも理論容量が大きいことが好ましい。全固体電池の容量を向上させることができるからである。
また、金属化合物としては、上述した金属を有する化合物であることが好ましく、例えば、SiO、SnO、Ti2SnO6等の金属酸化物、SnS等の金属硫化物、SnP等の金属リン化物、Cu6Sn5等の合金等が好ましい。なお、本発明においては、上記金属系活物質を1種類のみ用いても良く、2種類以上用いても良い。
本発明における炭素系活物質は、リチウムイオンの挿入脱離反応により充放電を行うものである。また、上述した金属系活物質がリチウムイオンの挿入反応による体積の膨張を生じた際に、クッション材として膨張を適度に抑制させる働きを有するものである。
また、本発明における炭素系活物質は、金属系活物質よりも体積膨張率が低いことが好ましい。外部拘束をより小型化することができるからである。
炭素系活物質の粒径が大きすぎると、後述する固体電解質材料との接触部で抵抗が増大する可能性があり、一方、炭素系活物質の粒径が小さすぎると、固体電解質材料よりも粒径が小さくなり、リチウムイオンの伝導の乏しい炭素系活物質が発生してしまうからである。
本発明においては、炭素系活物質の負極活物質層に占める重量の割合は、金属系活物質の占める重量の割合よりも多いことが好ましい。両者の重量の割合は比重やリチウムイオンの最大容量等により変化するため、特に限定されるものではないが、中でも炭素系活物質100重量部に対して、金属系活物質が、0.1重量部〜200重量部の範囲内であることが好ましく、1重量部〜100重量部の範囲内であることがより好ましく、1重量部〜50重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
金属系活物質の含有量が多すぎると、炭素系活物質が金属系活物質の体積膨張を抑制しきれず、固体電解質の亀裂の発生や、それに伴うLiイオン伝導パスの阻害または切断を防止することができなくなる可能性があるからである。一方、金属系活物質の含有量が少なすぎると、金属系活物質の相対的な割合が減少し、炭素系活物質の容量は金属系活物質に比べて小さいため、負極活物質層の容量が向上しない可能性があるからである。
炭素系活物質および金属系活物質の合計容量に対する、炭素系活物質の容量割合は、例えば、50%〜95%の範囲内であることが好ましく、70%〜95%の範囲内であることがより好ましい。一方、炭素系活物質および金属系活物質の合計容量に対する、金属系活物質の容量割合は、例えば、5%〜50%の範囲内であることが好ましく、5%〜30%の範囲内であることがより好ましい。また、炭素系活物質および金属系活物質の合計容量に対する、炭素系活物質の容量割合と金属系活物質の容量割合との差分は、例えば、10%以上であることが好ましく、10%〜45%の範囲内であることがより好ましい。
上記範囲よりも少ない場合は、リチウムイオンの挿入脱離を行う負極活物質の量が少ないため、体積容量が減少する可能性がある。一方、上記範囲よりも多い場合は、リチウムイオン伝導性が減少し、入出力が低下する可能性がある。
本発明における固体電解質材料としては、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質材料等の無機固体電解質材料を挙げることができるが、本発明においては、硫化物固体電解質材料または酸化物固体電解質材料を用いることが好ましく、硫化物固体電解質材料を用いることが特に好ましい。硫化物固体電解質材料はイオン伝導性が高い点で好ましく、酸化物固体電解質材料は化学的安定性が高い点で好ましい。なお、ハロゲン化物固体電解質材料とは、ハロゲンを含有する無機固体電解質材料をいう。
本発明における負極活物質層は、必要に応じて、結着材および導電化剤の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
導電化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、気相成長カーボン、黒鉛等の炭素材料を挙げることができる。また、結着材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を挙げることができる。
また、本発明の負極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
本発明における負極集電体は、上記負極活物質層の集電を行う機能を有するものである。負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、負極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
本発明の全固体電池用負極体は、上記金属系活物質の含有量が、上記負極活物質層の厚さ方向における上記負極集電体を有しない表面側(外表面側)から上記負極集電体側にかけて大きくなることを特徴とするものである。上記負極活物質の外表面側で金属系活物質の体積変化に伴うLiイオン伝導パスの阻害または切断の発生を防ぎ、本発明の負極体の耐久性およびサイクル特性を向上させることが可能となるからである。
なお上記値は、例えば負極体断面のEDXにおける元素マッピングを用いて確認することができる。
なお、負極集電体側付近の特定の厚さ領域と外表面側付近の特定の厚さ領域とは、負極活物質層のそれぞれの表面から同じ厚さ分の領域を意味する。
上記負極活物質層の厚さ方向において、外表面から負極活物質層全体の厚さの10%分の厚さ領域に含まれる金属系活物質の体積割合と、負極集電体側の表面から負極活物質層全体の厚さの10%分の厚さ領域に含まれる金属系活物質の体積割合との差が、50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましく、中でも75体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。なお、上記値は、上述した金属系活物質の含有量の測定に用いた方法により算出することができる。
なお、上記値は、上述した金属系活物質の含有量の測定に用いた方法により確認することができる。
なお、上記値は、上述した金属系活物質の含有量の測定に用いた方法により確認することができる。
次に、本発明の全固体電池について説明する。本発明の全固体電池は、負極集電体および上記負極集電体上に形成された負極活物質層を有する負極体と、正極集電体および上記正極集電体上に形成された正極活物質層を有する正極体と、上記負極活物質層および上記正極活物質層の間に形成された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、上記負極体が上述の全固体電池用負極体であることを特徴とするものである。
なお、負極体10は、上述した本発明の全固体電池用負極体であることを特徴とするものである。したがって、図2では図示しないが、負極活物質層2は炭素系活物質および金属系活物質を混合した負極活物質と固体電解質材料とを含有するものであり、負極活物質層2の固体電解質層側から負極集電体側にかけて金属系活物質の含有量が大きくなっている。
以下、本発明の全固体電池について、各構成ごとに説明する。
本発明の全固体電池における負極体は、負極集電体および上記負極集電体上に形成された負極活物質層を有するものであり、上述した本発明の全固体電池用負極体を用いるものである。
本発明の全固体電池における負極体については、上述した「A.全固体電池用負極体」の項で記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の全固体電池における正極体は、正極集電体および上記正極集電体上に形成された正極活物質層を有するものである。
本発明の全固体電池における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有するものである。また、上記正極活物質においてリチウムイオンの挿入脱離反応が起こり、充放電を起こすものである。
上記正極活物質層における固体電解質材料の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、10重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましい。
本発明の全固体電池における正極集電体は、上記正極活物質層の集電を行う機能を有するものである。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
本発明の全固体電池における正極体の形成方法は、一般的な方法を用いることができる。例えば、正極活物質と固体電解質材料と結着材と導電化剤とを含有する正極活物質層形成用ペーストを、正極集電体上に塗布して乾燥させた後プレスすることにより、上記正極集電体上に正極活物質層を有する正極体を形成することができる。
本発明の全固体電池における固体電解質層は、上記負極活物質層および上記正極活物質層の間に形成されるものである。
上記固体電解質層は少なくとも固体電解質材料を含有し、上記固体電解質材料を介して負極活物質層および正極活物質層との間のリチウムイオンの伝導を行うものである。
また、上記固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、例えば、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
上記固体電解質層の厚さは、全固体電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の全固体電池は、上述した負極体、正極体および固体電解質層を有するものであるが、通常使用する際は、これらの部材を収納する電池ケースを有するものである。上記電池ケースとしては、一般的な全固体電池の電池ケースを用いることができ、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
通常、全固体電池は、使用する容量領域であるSOC領域を決め、その範囲内にて制御して使用する。例えば車載用電池などでは、SOC20%−80%、SOC10%−80%、SOC20%−90%等様々に設定されている。例えば、SOC20%−80%で設定されている全固体電池は、電池容量が20%から80%の範囲において実際に使用されることを示す。
本発明の全固体電池は、例えばSOC5%以上で使用されても良く、SOC10%以上で使用されても良く、SOC20%以上で使用されても良い。
(硫化物固体電解質材料の合成)
硫化リチウム(Li2S、日本化学工業社製)および五硫化二リン(P2S5、アルドリッチ社製)を用いた。
Ar雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、Li2Sを0.7656g、P2S5を1.2344gとなるように秤量し、メノウ乳鉢で5分間混合した。
得られた混合物2gを、遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO2製)に投入し、脱水ヘプタン(水分量30ppm以下)4gを投入し、さらにZrO2ボール(φ=5mm)53gを投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、40時間メカニカルミリングを行った。その後、得られた試料を、ホットプレート上でヘプタンを除去するように乾燥させ、硫化物固体電解質材料(75Li2S・25P2S5ガラス)を得た。
(負極合材の作製)
グラファイト(三菱化学社製)7.24mgと、上述の合成例で得られた硫化物固体電解質材料6.6mgとを秤量し、これらを混合することで負極合材Aを得た。
また、アルミニウム(高純度化学社製)0.68mgと、上述の合成例で得られた硫化物固体電解質材料1.64mgとを秤量し、混合することで負極合材Bを得た。
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(日亜化学社製)12.03mg、VGCF(昭和電工社製)0.51mg、および上述の合成例で得られた硫化物固体電解質5.03mgを秤量し、混合することで正極合材を得た。
1cm2の金型に、上述の合成例で得られた硫化物固体電解質材料18gを秤量し、1ton/cm2の圧力でプレスして硫化物固体電解質層を形成した。得られた硫化物固体電解質層の片側に正極合材17.57mgを入れ、1ton/cm2の圧力でプレスして正極活物質層を形成した。次に、上記硫化物固体電解質層の反対側に負極合材Aを13.84mg入れ、さらに負極合材Bを2.32mg入れた後、4ton/cm2の圧力でプレスして負極活物質層を形成した。上記負極活物質層の厚さは77μmであり、また、負極合材Aにより形成される層の厚さは67μm、負極合材Bにより形成される層の厚さは10μmであった。
その後、上記正極活物質層の表面に15μmの膜厚のAl箔(日本製箔社製)を蒸着して正極集電体を形成し、また、上記負極活物質層の表面に10μmの膜厚のCu箔(日本製箔社製)を蒸着して負極集電体を形成することにより、評価用電池を得た。
(負極合材の作製)
グラファイト(三菱化学社製)7.24mg、アルミニウム(高純度化学社製)0.34mg、および上述の合成例で得られた硫化物固体電解質材料7.24mgを秤量し混合することで負極合材Cを合成した。
また、アルミニウム(高純度化学社製)0.34mgと、上述の合成例で得られた硫化物固体電解質材料0.82mgとを秤量し、混合することで負極合材Dを得た。
評価電池の作製において、硫化物固体電解質層の片側に負極合材Cを15.0mg入れ、さらに負極合材Dを1.16mg入れた後、4ton/cm2の圧力でプレスして負極活物質層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
上記負極活物質層の厚さは80μmであり、負極合材Cにより形成される層の厚さは75μm、負極合材Dにより形成される層の厚さは5μmであった。
(負極合材の作製)
グラファイト(三菱化学社製)7.24mgおよびアルミニウム(高純度化学社製)0.68mgを秤量し混合して負極合材Eを得た。
評価用電池の作製において、硫化物固体電解質層の片側に負極合材Eを16.16mg入れ、4ton/cm2の圧力でプレスして負極活物質層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。上記負極活物質層の厚さは78μmであった。
(100サイクル後の放電容量維持率)
実施例1〜2および比較例1で得られた評価用電池に対して、0.3mAで4.2Vまで定電流および定電圧充電(CCCV充電)を行った後、3Vまで0.3mAで放電を行い、初期の放電容量を確認した。
次に、60℃にて3mAで4.2Vまで定電流充電(CC充電)を行った後、3Vまで0.3mAで放電を行った。この充放電サイクルを100サイクル行い、その後0.3mAで4.2VまでCCCV充電を行った後、3Vまで0.3mAで放電を行った。充放電サイクルを100サイクル行った後のCCCV放電容量維持率およびCC放電容量維持率の結果を図4に示す。
実施例1および2の評価用電池の100サイクル後のCCCV放電容量維持率およびCC放電容量維持率は、比較例1の評価用電池よりも高いことが確認された。
(断面SEM測定)
実施例1および比較例1の評価用電池について、充放電サイクルを100サイクル行った後の全固体電池用負極体の断面を、SEMを用いて観察した。その結果を図5に示す。図5(a)が実施例1、図5(b)が比較例1の断面SEM像である。
図5(a)では、硫化物固体電解質材料に亀裂が見られなかったが、図5(b)ではアルミニウムの周辺に存在する硫化物固体電解質材料に亀裂が生じていることが確認された。なお、図示していないが、実施例2で得られた負極体についても、硫化物固体電解質材料に亀裂の発生は確認されなかった。
(負極合材の作製)
グラファイト(三菱化学社製)860mgと、アルミニウムの粉末(シグマアルドリッチ社製)71mgとを秤量し、これらを混合することで負極活物質を得た。
次に合成例で調製された硫化物固体電解質材料860mg秤量し、上記負極活物質と混合することで負極合材Fを得た。
合成例で調製した硫化物固体電解質材料100mgを用いて形成した硫化物固体電解質層の一方の表面に、負極合材F15mgを用いて作用層を形成し、次に硫化物固体電解質層の他方の表面に金属リチウムを用いて対極を形成し、単極評価用電池を作製した。
負極活物質にグラファイト930mgを用い、上記負極活物質と合成例で調製した硫化物固体電解質材料860mgとを混合し、負極合材Gを得た。この負極合材G17mgを用い、参考例1と同様にして単極評価用電池を得た。
負極活物質にアルミニウムの粉末930mgを用い、上記負極活物質と合成例で調製した硫化物固体電解質材料860mgと混合し、負極合材Hを得た。この負極合材H6.5mgを用い、参考例1と同様にして単極評価用電池を得た。
(初回不可逆効率)
参考例1、参考例2−1、および参考例2−2で得られた単極評価用電池を用い、電池評価環境温度25℃において、電流レート0.1Cで電圧0Vまで定電流放電を行い、その後、電流レート0.1Cで電圧1.5Vに達するまで定電流充電を行った。この時の重量容量、膨張前体積容量、および初回不可逆率の測定を行った。その結果を表1に示す。
また、参考例1で得られる作用極は、アルミニウムのみからなる参考例2−2の作用極よりも、初回不可逆率の値が低く、参考例2−1とほぼ変わらない値まで抑制されることが示唆される。つまり、アルミニウムにグラファイトを加えることで、グラファイトが緩衝材となり、アルミニウムの膨張収縮の影響を抑制していると考えられる。
(電池放電時における負極電位)
参考例1、参考例2−1、および参考例2−2で得られた単極評価用電池について、上述した充放電における全容量割合に対するリチウム挿入脱離電位を測定した。その結果を図6に示す。
2 …負極活物質
3 …固体電解質材料
4 …負極活物質層
5 …炭素系活物質
6 …金属系活物質
10 …全固体電池用負極体(負極体)
11 …正極体
12 …固体電解質層
20 …全固体電池
Claims (5)
- 負極集電体、ならびに前記負極集電体上に形成され、負極活物質および固体電解質材料を含有する負極活物質層を有する全固体電池用負極体であって、
前記負極活物質層は炭素系活物質および金属系活物質を混合した負極活物質を含有し、
前記金属系活物質が、Liと合金化反応を起こす活物質であり、
前記金属系活物質の含有量が、前記負極活物質層の厚さ方向における前記負極集電体を有しない表面側から前記負極集電体側にかけて大きくなることを特徴とする全固体電池用負極体。 - 前記固体電解質材料が硫化物固体電解質材料または酸化物固体電解質材料であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極体。
- 前記金属系活物質の充放電電位が前記炭素系活物質の充放電電位よりも貴であり、
前記炭素系活物質の前記負極活物質層に占める容量割合が、前記金属系活物質よりも多いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体電池用負極体。 - 前記金属系活物質の全重量の1/2以上が、前記負極活物質層の厚さ方向において、中央から前記負極集電体側に含有されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の全固体電池用負極体。
- 負極集電体および前記負極集電体上に形成された負極活物質層を有する負極体と、
正極集電体および前記正極集電体上に形成された正極活物質層を有する正極体と、
前記負極活物質層および前記正極活物質層の間に形成された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、
前記負極体が請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の全固体電池用負極体であることを特徴とする全固体電池
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