JP5747848B2 - 正極活物質層含有体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば全固体電池に用いられ、電池抵抗が低い正極活物質層含有体の製造方法に関する。
例えばリチウム二次電池は、高い起電力および高エネルギー密度を有するため、情報関連機器、通信機器の分野で広く実用化されている。一方、自動車の分野においても、環境問題、資源問題から電気自動車やハイブリッド自動車の開発が急がれており、これらの電源としても、リチウム二次電池が検討されている。
現在市販されているリチウム二次電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に代えて、電池を全固体化した全固体リチウム二次電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
このような全固体電池は、一般的には、正極活物質層と、負極活物質層と、正極活物質層および負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する。例えば特許文献1には、LiCoOおよびLiNiOの少なくとも一方である正極活物質と、硫化物固体電解質とを有し、正極活物質の平均粒径が1μm〜5μmの範囲内であり、正極活物質の体積分率が37vol%〜42vol%の範囲内である正極活物質層形成用材料が開示されている。この技術は、電子伝導性を良好に維持しつつ、リチウムイオン伝導度を向上させることを目的としている。
また、特許文献2では、単電池(正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層がこの順序で配置された積層体)を作製する方法の一例として加熱プレス法を用いることができる全固体電池が開示されている。
特開2009−238636号公報 特開2011−154902号公報
電池のエネルギー密度を向上させる観点から、正極活物質層に含まれる正極活物質の割合はより高いことが好ましい。一方、例えば特許文献1の実施例1には、正極活物質の体積割合が40体積%、正極活物質の平均粒径が4μm、硫化物固体電解質材料の平均粒径が7μmである正極活物質層が記載されているが、この場合に、単純に正極活物質の体積割合のみを増加させると、電池抵抗が高くなるという問題がある。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池抵抗が低い全固体電池に用いられる正極活物質層含有体の製造方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明においては、少なくとも正極活物質層を有する正極活物質層含有体の製造方法であって、正極活物質および固体電解質材料を含有し、上記正極活物質および上記固体電解質材料の合計に対する上記正極活物質の割合が50体積%より大きく、上記固体電解質材料に対する上記正極活物質の平均粒径比が、0.9以上である正極活物質層形成用材料を調製する調製工程と、上記固体電解質材料の軟化点以上の温度で、上記正極活物質層形成用材料を加熱プレスして正極活物質層含有体を形成する正極活物質層含有体形成工程と、を有することを特徴とする正極活物質層含有体の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記固体電解質材料の軟化点以上の温度で正極活物質層形成用材料を加熱プレスし、また上記正極活物質層形成用材料が、正極活物質の体積割合および固体電解質材料に対する正極活物質の平均粒径比が特定の範囲内となるように、正極活物質および固体電解質材料を含有することで、電池抵抗が低い正極活物質層含有体を得ることができる。
上記発明においては、上記正極活物質の平均粒径が5μm以下であり、上記固体電解質材料の平均粒径が3μm以下であることが好ましい。正極活物質および固体電解質材料の接触面積(反応面積)を増加させることができ、さらなる低抵抗化を図ることができるからである。
上記発明においては、上記加熱プレスの温度が100℃以上であることが好ましい。
本発明においては、例えば全固体電池に用いられ、電池抵抗が低い正極活物質層含有体を作製することができるという効果を奏する。
本発明の正極活物質層含有体の製造方法の一例を示すフローチャートである。 従来法で得られる正極活物質層含有体および本発明で得られる正極活物質層含有体を説明する説明図である。 本発明で得られる正極活物質層含有体の一例を示す概略断面図である。 本発明で得られる正極活物質層含有体の他の例を示す概略断面図である。 実施例3および比較例3で得られた正極活物質層含有体のSEM画像である。 実施例1〜3および比較例1〜3で得られた電池に対する、電池抵抗評価(10C放電)の結果である。 実施例1〜3および比較例1〜3で得られた電池に対する、拡散抵抗、反応抵抗および直流抵抗評価(10C放電)の結果である。 実施例3および比較例3で得られた電池の5sec出力の拘束圧依存性を示すグラフである。 比較例1〜3、比較例4−1〜4−2および参考例1で得られた電池に対する、電池容量評価の結果である。 比較例1〜3、比較例4−1〜4−2および参考例1で得られた電池に対する、電池抵抗評価(1C放電)の結果である。 比較例1〜3、比較例4−1〜4−2および参考例1で得られた電池に対する、電池抵抗評価(10C放電)の結果である。 比較例4−1〜4−3、比較例5、参考例2−1〜2−3および参考例3−1〜3−2で得られた電池に対する、電池容量評価の結果である。 比較例4−1〜4−3、比較例5、参考例2−1〜2−3および参考例3−1〜3−2で得られた電池に対する、電池抵抗評価(1C放電)の結果である。
以下、本発明の正極活物質層含有体の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の正極活物質層含有体の製造方法は、少なくとも正極活物質層を有する正極活物質層含有体の製造方法であって、正極活物質および固体電解質材料を含有し、上記正極活物質および上記固体電解質材料の合計に対する上記正極活物質の割合が50体積%より大きく、上記固体電解質材料に対する上記正極活物質の平均粒径比が、0.9以上である正極活物質層形成用材料を調製する調製工程と、上記固体電解質材料の軟化点以上の温度で、上記正極活物質層形成用材料を加熱プレスして正極活物質層含有体を形成する正極活物質層含有体形成工程と、を有することを特徴とするものである。
図1は、本発明の正極活物質層含有体の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1に示される正極活物質層含有体の製造方法においては、まず、正極活物質および固体電解質材料を含有し、上述した体積割合および平均粒径比が特定の範囲内の値となる正極活物質層形成用材料を調製する調製工程と、上記正極活物質層形成用材料を加熱プレスして正極活物質層含有体を形成する正極活物質層含有体形成工程と、を有するものである。
本発明によれば、固体電解質材料の軟化点以上の温度で正極活物質層形成用材料を加熱プレスし、また上記正極活物質層形成用材料が、正極活物質の体積割合および固体電解質材料に対する正極活物質の平均粒径比が特定の範囲内となるように、正極活物質および固体電解質材料を含有することで、電池抵抗を低くすることができる正極活物質層含有体を得ることができる。
上述したように、例えば特許文献1の実施例1には、正極活物質の体積割合が40体積%、正極活物質の平均粒径が4μm、硫化物固体電解質材料の平均粒径が7μmである正極活物質層が記載されているが、この場合に、単純に正極活物質の体積割合のみを増加させると、電池抵抗が高くなるという問題がある。その理由としては、以下の通りであると考えられる。すなわち、平均粒径比(正極活物質/固体電解質材料)が低い状態で、単純に正極活物質の体積割合のみを増加させると、(i)正極活物質層におけるイオン伝導パスが細くなる(あるいは途切れる)という問題、(ii)正極活物質および固体電解質材料の接触面積が小さくなるという問題が生じる。(i)については、イオン伝導パスが短くなると、正極活物質に金属イオンが挿入・脱離する反応点への金属イオンの供給が律速となり、電池抵抗が増加すると考えられる。(ii)については、接触面積が小さいと、正極活物質に金属イオンが挿入・脱離する反応点が少なくなり、電池抵抗が増加すると考えられる。なお、正極活物質および固体電解質材料がどちらも所定の硬さを有し、正極活物質層をプレスしても粒子間の細かい隙間に両者が入り込み合うことがない場合には、(ii)の影響が顕著に現れると考えられる。
これに対して、本発明においては、上記平均粒径比を特定の値以上とすることで、正極活物質層におけるイオン伝導パスが確保される。その結果、電池抵抗が低下すると考えられる。また、上記平均粒径比を特定の値以上にすることで、正極活物質および固体電解質材料の接触面積を大きくなる。その結果、正極活物質に金属イオンが挿入・脱離する反応点を増加し、電池抵抗をさらに低くすることができると考えられる。
また、上述した反応点の増加を目的として、単純に正極活物質および固体電解質材料の接触面積のみを増加させる場合、十分に電池抵抗を低くすることはできないという問題がある。上記接触面積を増加させる目的で、例えば固体電解質材料を微細化する場合、微細化された固体電解質材料同士の界面における抵抗(拡散抵抗)が増加し、電池抵抗が高くなると考えられる(図2(a)参照)。これに対して、本発明においては、固体電解質材料の軟化点以上の温度で加熱プレスを行うことで、固体電解質材料同士の粒界が安定化(減少)し、拡散抵抗を低減させることができる(図2(b)参照)。
以下、本発明の正極活物質層含有体の製造方法について、構成ごとに説明する。
1.調製工程
まず、本発明における調製工程について説明する。本発明における調製工程は、正極活物質および固体電解質材料を含有し、上記正極活物質および上記固体電解質材料の合計に対する上記正極活物質の割合が50体積%より大きく、上記固体電解質材料に対する上記正極活物質の平均粒径比が、0.9以上である正極活物質層形成用材料を調製する工程である。
(1)正極活物質
本工程に用いられる正極活物質は、特に限定されるものではないが、例えばその平均粒径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μmの範囲内であることがさらに好ましい。正極活物質の平均粒径が大きすぎると、正極活物質および固体電解質材料の接触面積を十分に確保できない可能性があるからである。一方、正極活物質の平均粒径は、例えば0.1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。正極活物質の平均粒径が小さすぎると、粒界が増え、粒界抵抗が増大するからである。ここで、上記平均粒径とは、通常、粒度分布測定により測定した平均粒径D50をいうが、走査型電子顕微鏡(SEM)により算出した値を平均粒径としても良い。
本工程に用いられる正極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば酸化物活物質、硫化物活物質を挙げることができる。本工程に用いられる酸化物活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li1+xNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiNiVO、LiCoVO等の逆スピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等を挙げることができる。また、酸化物活物質として、LiNi0.8Co(0.2−x)Al(0<x<0.2)のように、遷移金属の一部を異種金属で置換した岩塩層状型活物質、Li1+xMn2−x−y(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znの少なくとも一種であり、0<x+y<2)のように、遷移金属の一部を異種金属で置換したスピネル型活物質、LiTi12等のチタン酸リチウムを用いても良い。一方、硫化物活物質としては、例えば、銅シェブレル、硫化鉄、硫化コバルト、硫化ニッケル等を挙げることができる。
正極活物質の表面には、コート層が形成されていることが好ましい。例えば、酸化物活物質と、硫化物固体電解質材料との反応による高抵抗層の発生を抑制できるからである。上記コート層の材料としては、イオン伝導性を有する酸化物材料を挙げることができ、具体的には、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸リチウム(例えばLiTi12)、リン酸リチウム(LiPO)、LATP(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)、LAGP(例えばLi1.5Al0.5Ge1.5(PO)、LiWO、LiZrO、LiSiO、LiCO、LiBO等を挙げることができる。また、正極活物質の表面には、ZrO、Al、HgO、WO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O等の金属酸化物(Liを含有しない金属酸化物)が存在していても良い。より低抵抗化できるからである。
(2)固体電解質材料
本工程に用いられる固体電解質材料は、特に限定されるものではなく、例えばその平均粒径が3μm以下であることが好ましく、中でも1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。固体電解質材料の平均粒径が大きすぎると、固体電解質材料および正極活物質の接触面積を十分に確保できない可能性があるからである。また固体電解質材料の平均粒径が3μm以下である場合、後述する実施例の項に記載するように、全固体電池を作製した場合に、放電容量が高くなり、さらに高レート放電可能な全固体電池とすることができる。一方、固体電解質材料の平均粒径の下限値としては、例えば0.1μm程度とすることができる。なお、上記平均粒径は、上述した正極活物質の平均粒径と同様の方法で求めることができる。
本工程に用いられる固体電解質材料としては、特に限定されるものではないが、結晶化温度より低温で軟化点またはガラス転移点を有するものを用いることができる。また固体電解質材料としては、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料等を挙げることができる。硫化物固体電解質材料は、酸化物固体電解質材料に比べて、イオン伝導性が高いものが多い点で好ましく、酸化物固体電解質材料は、硫化物固体電解質材料に比べて、化学的安定性が高い点で好ましい。また、本発明における固体電解質材料は、非晶質材料であっても良く、結晶性材料であっても良い。非晶質材料は、例えば、原料組成物に対してメカニカルミリング法または溶融急冷法を適用することで得ることができる。結晶性材料は、例えば原料組成物に対して固相法を適用することで得ることができる。また、本発明においては、非晶質材料を結晶化温度以上の温度で熱処理した材料(ガラスセラミックス)を固体電解質材料として用いても良い。
Liイオン伝導性を有する硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiCl、LiS−P−LiBr、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)、Li10GeP12等を挙げることができる。一方、Liイオン伝導性を有する酸化物固体電解質材料としては、例えば、LiO−B−P、LiO−SiO、LiLaTaO(例えばLiLaTa12)、LiLaZrO(例えばLiLaZr12)、LiBaLaTaO(例えばLiBaLaTa12)、Li1+xSi1−x(0≦x<1、例えばLi3.6Si0.60.4)、Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)、Li1+xAlTi2−x(PO(0≦x≦2)、LiPO(4−3/2x)(0≦x<1)等を挙げることができる。また、本発明においては、その他の固体電解質材料として、LiIおよびLiN等を用いることができる。
特に、本工程においては、硫化物固体電解質材料が、LiSと、A(Aは、P、Si、Ge、AlおよびBの少なくとも一種である)の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものであることが好ましい。上記原料組成物は、ハロゲン化合物をさらに含有していても良い。Aの硫化物としては、例えば、P、P、SiS、GeS、Al、B等を挙げることができる。また、ハロゲン化合物としては、LiF、LiPF、LiCl、LiBr、LiI等を挙げることができ、中でもLiIが好ましい。
また、上記硫化物固体電解質材料は、オルト組成のアニオン構造(PS 3−構造、SiS 4−構造、GeS 4−構造、AlS 3−構造、BS 3−構造)を主成分として有することが好ましい。化学安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。オルト組成のアニオン構造の割合は、イオン伝導体における全アニオン構造に対して、60mol%以上であることが好ましく、70mol%以上であることがより好ましく、80mol%以上であることがさらに好ましく、90mol%以上であることが特に好ましい。なお、オルト組成のアニオン構造の割合は、ラマン分光法、NMR、XPS等により決定することができる。
ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいう。本発明においては、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。例えば、LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当し、LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−B系ではLiBSがオルト組成に該当し、LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当し、LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。
例えば、LiS−P系の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。LiS−Al系の場合、LiS−B系の場合も同様である。一方、LiS−SiS系の場合、オルト組成を得るLiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=66.7:33.3である。LiS−GeS系の場合も同様である。
上記原料組成物が、LiSおよびPを含有する場合、LiSおよびPの合計に対するLiSの割合は、70mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましく、72mol%〜78mol%の範囲内であることがより好ましく、74mol%〜76mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記原料組成物が、LiSおよびAlを含有する場合、LiSおよびBを含有する場合も同様である。一方、上記原料組成物が、LiSおよびSiSを含有する場合、LiSおよびSiSの合計に対するLiSの割合は、62.5mol%〜70.9mol%の範囲内であることが好ましく、63mol%〜70mol%の範囲内であることがより好ましく、64mol%〜68mol%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、上記原料組成物が、LiSおよびGeSを含有する場合も同様である。
また、原料組成物が、ハロゲン化合物を含有する場合、原料組成物におけるハロゲン化合物の割合は、1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜40mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましい。
(3)正極活物質層形成用材料
本工程で得られる正極活物質層形成用材料は、少なくとも正極活物質および固体電解質材料を含有し、上記正極活物質および上記固体電解質材料の合計に対する上記正極活物質の割合が50体積%より大きく、上記固体電解質材料に対する上記正極活物質の平均粒径比が、0.9以上であれば特に限定されるものではない。
本工程で得られる正極活物質層形成用材料においては、正極活物質および固体電解質材料の合計に対する正極活物質の割合が、通常50体積%より大きく、55体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがより好ましい。上記体積割合が小さすぎると、エネルギー密度の向上を十分に図れない可能性があるからである。一方、上記割合は、特に限定されるものではないが、例えば95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましく、85体積%以下であることがさらに好ましい。上記体積割合が大きすぎると、イオン伝導パスおよび反応点を十分に確保できない可能性があるからである。
また、正極活物質層形成用材料においては、固体電解質材料に対する正極活物質の平均粒径比が0.9以上であれば特に限定するものではないが、例えば、1.6以上であることが好ましく、2.7以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。上記平均粒径比が小さすぎると、イオン伝導パスおよび両者の接触面積を充分に確保できない可能性があるからである。一方、上記平均粒径比は、特に限定されるものではないが、例えば20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。上記平均粒径比が大きすぎると、正極活物質の粒径が大きいことに起因して両者の接触面積が低下する可能性があるからである。ここで、上記平均粒径比は、正極活物質の平均粒径を、後述する固体電解質材料の平均粒径で除することにより、算出することができる。上記平均粒径とは、通常、粒度分布測定により測定した平均粒径D50をいうが、走査型電子顕微鏡(SEM)により算出した値を平均粒径としても良い。SEMによる算出では、固体電解質材料の粒子(n≧100)の最長径と最短径を測定し、その平均値を求めることとする。
ここで、上記平均粒径比が2.7より大きく、正極活物質の平均粒径が5μm以下であり、固体電解質材料の平均粒径が1.8μm以下であるような組み合わせで用いることが好ましい。正極活物質及び固体電解質材料が上記組み合わせとなるように正極活物質層形成用材料に含有される場合、電池抵抗をさらに低減することができる正極活物質含有体を得ることができる。その理由としては、正極活物質と固体電解質材料との平均粒径、およびその平均粒径比が上述した範囲内である場合、拡散抵抗低減および反応抵抗低減が両立可能となるためと考えられる。すなわち、正極活物質および固体電解質材料の平均粒径、およびその平均粒径比を上記範囲内とする場合、正極活物質および固体電解質材料の接触面積が増大し、正極活物質に金属イオンが吸蔵・脱離する反応点を十分に増加させることができるため、正極活物質および固体電解質材料の界面における抵抗(反応抵抗)を低減することができる。また一方、固体電解質材料の平均粒径を上記範囲内程度とする場合、通常、固体電解質材料同士の粒界における抵抗(拡散抵抗)が増加することが考えられるが、加熱プレスを行うことで、固体電解質材料の粒界を安定化することができる。そのため、拡散抵抗を増大させることなく、反応抵抗を低減することができ、拡散抵抗低減および反応抵抗低減の両立が可能となる。したがって、電池抵抗を特に低減することができる。
上述したような拡散抵抗低減および反応抵抗低減が両立可能となる組み合わせにおける、具体的な平均粒径比、正極活物質および固体電解質材料の平均粒径の値としては、次のように示すことができる。すなわち、上記平均粒径比としては、2.7より大きい値であり、例えば、3以上であることが好ましく、4〜20の範囲内であることが好ましい。また上記正極活物質の平均粒径としては、5μm以下であり、例えば2μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。また固体電解質材料の平均粒径としては、1.8μm以下であり、中でも1.5μm以下、さらに1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。一方、固体電解質材料の平均粒径としては、通常、0.1μm程度以上である。
また上記正極活物質層形成用材料に用いられる正極活物質および固体電解質材料の組み合わせとしては、例えば酸化物活物質および酸化物固体電解質材料、酸化物活物質および硫化物固体電解質材料等の組み合わせが考えられるが、中でも酸化物活物質および硫化物固体電解質材料の組み合わせを採用することが好ましい。さらに優れた電池特性を発揮できる正極活物質層含有体を得ることができるからである。
正極活物質層形成用材料は、少なくとも正極活物質および固体電解質材料を含有するものであり、正極活物質および固体電解質材料のみを含有していても良く、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。正極活物質層形成用材料における正極活物質および固体電解質材料の合計の割合は、例えば80重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。なお、上記合計は、100重量%であっても良い。
正極活物質層形成用材料は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層形成用材料の電子伝導性を向上させることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料を挙げることができる。また、正極活物質層形成用材料は、さらに結着材を含有していても良い。結着材の添加により、正極活物質層に可撓性を付与することができる。結着材としては、例えば、ブチレンラバー(BR)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を挙げることができる。
正極活物質層形成用材料は、上記正極活物質および上記固体電解質材料が十分に分散されているものであれば特に限定されるものではなく、上記分散方法としては、例えば超音波分散法や、振とう法、高速インペラーミル法等を挙げることができる。
2.正極活物質層含有体形成工程
次に、本発明における正極活物質層含有体形成工程について説明する。本発明における正極活物質層含有体形成工程は、上記固体電解質材料の軟化点以上の温度で上述した正極活物質層形成用材料を加熱プレスして正極活物質層含有体を形成することを特徴とする工程である。
本工程における加熱プレス時の温度は、上記正極活物質層形成用材料に含有される固体電解質材料の軟化点以上の温度であれば特に限定されるものではなく、上記固体電解質材料の種類等に応じて適宜設定することができる。すなわち、固体電解質材料の軟化点以上結晶化温度未満の範囲内であっても良く、結晶化温度以上であっても良い。例えば、正極活物質層含有体に含有される固体電解質を非晶質とする場合、加熱プレス時の温度は軟化点以上結晶化温度未満の範囲内とすることが好ましい。また、正極活物質層含有体に含有される固体電解質を結晶質とする場合、加熱プレス時の温度は結晶化温度以上であることが好ましい。なお、上記軟化点の測定方法としては、例えば、示差熱分析法(DTA)により決定することができる。
具体的には、加熱プレス時の温度条件としては、例えば100℃以上であることが好ましく、100℃〜300℃の範囲内であることがより好ましく、120℃〜200℃の範囲内であることが特に好ましい。
上記加熱プレス時の圧力条件としては、正極活物質層形成用材料を加熱プレスして正極活物質層含有体を形成出来る程度であれば特に限定されるものではなく、通常、0.1ton/cm〜6ton/cm程度と設定することができる。例えば上記正極活物質層形成用材料に含有される固体電解質材料が結晶性硫化物固体電解質材料である場合、結晶化は高圧条件で行うことが好ましく、具体的には、4ton/cm〜6ton/cmの範囲内であることが好ましい。さらに、結晶化は上記加熱温度範囲において、上記圧力条件下、通常、0.1時間〜5時間程度行うことが好ましい。
本工程で得られる正極活物質層含有体は、少なくとも正極活物質層を含有しているものであれば特に限定されるものではなく、例えば正極活物質層のみからなるものであっても良く(第1態様)、正極活物質層と他の構成層とからなるものであっても良い(第2態様)。
以下、正極活物質層含有体の構成により2つの態様に分けて説明する。
(1)第1態様
正極活物質層含有体の第1態様は、正極活物質層のみからなるものである。すなわち、少なくとも正極活物質および固体電解質材料が混合された正極活物質層形成用材料からなるものである。
図3は本態様で得られる正極活物質層含有体の一例を示す概略断面図である。図3に示すように、第1態様の正極活物質層含有体10は、正極活物質1および固体電解質材料2を含有する正極活物質層20のみからなるものである。
本態様の正極活物質層含有体の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。本態様の正極活物質層含有体は、例えば全固体電池の正極活物質層として用いることができる。本態様で得られる正極活物質層含有体を用いた全固体電池の種類としては、全固体リチウム電池、全固体ナトリウム電池、全固体マグネシウム電池および全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも全固体リチウム電池が好ましい。また上記全固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池として有用だからである。また全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、および角型等を挙げることができる。
ここで、本態様の正極活物質層含有体を用いて全固体電池を作製する場合、さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、ニッケル、クロム、金、白金、アルミニウム、鉄、チタン、亜鉛およびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト、亜鉛およびカーボン等を挙げることができる。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な電池ケースを用いることができ、例えば、SUS製電池ケース、アルミニウム製電池ケース、アルミニウムラミネート箔等を挙げることができる。
(2)第2態様
正極活物質層含有体の第2態様は、正極活物質層および他の構成層からなるものである。他の構成層としては、例えば固体電解質層や負極活物質層等を挙げることができる。具体的には、本態様の正極活物質層含有体としては、2層構造(例えば正極活物質層および固体電解質層の積層体)、3層構造(例えば正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の積層体)等を挙げることができる。
本態様の正極活物質層含有体が正極活物質層および固体電解質層を備える場合、上記正極活物質層および上記固体電解質層の少なくとも一方が、上記「1.調製工程 (2)固体電解質材料」に記載した固体電解質材料を有するものであれば特に限定されない。
図4は、本態様の正極活物質層含有体の一例を示す概略断面図である。正極活物質層含有体10は、正極活物質層20および固体電解質層40を有する2層構造であっても良い。ここで、正極活物質層含有体が2層構造である場合、固体電解質材料2は、図4(a)に示すように、正極活物質層20に含有されるものであっても良く、図4(b)に示すように、固体電解質層40に含有されるものであっても良い。また、正極活物質層含有体10は、図4(c)に示すように、正極活物質層20と、固体電解質層40と、少なくとも負極活物質3を含有する負極活物質層30を備える3層構造であっても良い。
本態様の正極活物質層含有体における正極活物質層は、少なくとも上記「1.調製工程 (1)正極活物質」に記載の正極活物質を含有するものであり、必要に応じて、導電化材、結着材等を含有していても良い。なお、導電化材および結着材としては、上記「1.調製工程 (3)正極活物質層形成用材料」に記載したものと同様のものを用いることができる。正極活物質層の厚さは、目的とする正極活物質層含有体に応じて適宜設定できるものであるが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
本態様の正極活物質層含有体における固体電解質層は、少なくとも固体電解質材料を有する層であり、上記固体電解質材料としては、上記「1.正極活物質層形成用材料 (2)固体電解質材料」の項に記載したものと同様であるため、ここでの記載は省略する。なお、固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、例えば60重量%以上、中でも70重量%以上、特に80重量%以上であることが好ましい。固体電解質層は、結着材を含有していても良く、固体電解質材料のみから構成されていても良い。なお、結着材については、上記「1.調製工程 (3)正極活物質層形成用材料」に記載したものと同様のものを用いることができる。また固体電解質層の厚さは、目的とする正極活物質層含有体に応じて適宜設定できるものであるが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
本態様の正極活物質層含有体における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
上記負極活物質は、特に限定されるものではないが、例えばカーボン活物質、金属活物質、酸化物活物質等を挙げることができる。カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)等の黒鉛、ハードカーボンおよびソフトカーボン等の非晶質炭素等を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、Si、Sn、および、これらの元素を少なくとも一つ含有する合金等を挙げることができる。また、酸化物活物質としては、例えばNb、LiTi12、SiO等を挙げることができる。
負極活物質の形状としては、例えば、粒子形状、膜形状を挙げることができる。粒子形状の負極活物質の平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。なお、平均粒径の求め方については上述した通りである。また、負極活物質層における負極活物質の含有量は、例えば10重量%〜99重量%の範囲内であることが好ましく、20重量%〜90重量%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層は、固体電解質材料を含有することが好ましく、硫化物固体電解質材料を含有することがより好ましい。負極活物質層中のイオン伝導性を向上させることができるからである。なお、固体電解質材料については、上記「1.調製工程 (2)固体電解質材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。負極活物質層における固体電解質材料の含有量は、例えば、1重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、10重量%〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。負極活物質層は、さらに結着材を含有していても良い。なお、導電化材および結着材については、上記「1.調製工程 (3)正極活物質層形成用材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、負極活物質層の厚さは、目的とする正極活物質層含有体に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
本態様の正極活物質層含有体を用いた全固体電池におけるその他の構成等については、上記第1態様と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(硫化物固体電解質材料の合成)
出発原料として、硫化リチウム(LiS、日本化学工業製、純度99.9%)、五硫化二リン(P、Aldrich製、純度99.9%)およびヨウ化リチウム(LiI、アルドリッチ製)を用いた。次に、LiSおよびPを、75LiS・25Pのモル比(LiPO、オルト組成)となるように秤量した。次に、LiIの割合が30mol%となるようにLiIを秤量した。その混合物2gを遊星型ボールミルの容器(45cc、ZrO製)に投入し、ヘプタン(水分量30ppm以下、4g)を投入し、さらにZrOボール(φ=5mm、53g)を投入し、容器を完全に密閉した。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数500rpmで、40時間メカニカルミリングを行った。その後、100℃で乾燥することによりヘプタンを除去し、硫化物ガラスを得た。得られた硫化物ガラスをAr雰囲気下のガラス管の中に入れ、そのガラス管をSUS製密閉容器に入れた。その密閉容器に対して、10時間熱処理を行い、硫化物ガラスセラミックスを得た。
得られた硫化物ガラスセラミックス、ZrOボール(φ=1mm)、ヘプタン、ジブチルエーテルをZrOポットに投入し、ポットを完全に密閉した(Ar雰囲気)。このポットを遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、台盤回転数150rpmにて5時間湿式メカニカルミリングを行うことにより、硫化物ガラスセラミックスを粉砕し、平均粒径D50が0.8μm、1.5μm、2.5μmの硫化物固体電解質材料を得た。
(正極活物質層形成用材料の合成)
エタノール溶液に、等モルのLiOCおよびNb(OCを溶解させて作製した組成物をLiNi1/3Co1/3Mn1/3(日亜化学工業社製)の表面に、転動流動コーティング装置(SFP−01、株式会社パウレック製)を用いてスプレーコートした。その後、コーティングされたLiNi1/3Co1/3Mn1/3を、350℃、大気圧下で1時間の条件で熱処理し、LiNbOがコートされたLiNi1/3Co1/3Mn1/3を得た。得られた正極活物質を、ステンレスメッシュふるいを用いて分級し、平均粒径D50を所定の値に調整した。
次に、ポリプロピレン(PP)製容器に、上記正極活物質(平均粒径4μm)、上記硫化物固体電解質(平均粒径0.8μm)、導電化材(VGCF、昭和電工製)、結着材(ブチレンラバー系結着材の5重量%ヘプタン溶液)およびヘプタンを添加した。その後、PP製容器を、超音波分散装置(エスエムテー社製、UH−50)で30秒間撹拌した。その後、PP製容器を、振とう器(柴田科学株式会社製、TTM−1)で3分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間撹拌した。振とう器で3分間振とうさせた後、得られた組成物を、アプリケーターを用いてブレード法にて、カーボン塗工Al箔(昭和電工製、SDX)上に塗工した。その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥を行い、正極活物質層形成用材料を得た。正極活物質層形成用材料における正極活物質および硫化物固体電解質材料の体積割合は、正極活物質:硫化物固体電解質材料=60:40であった。
(電池の作製)
ポリプロピレン(PP)製容器に、負極活物質(天然黒鉛系カーボン、三菱化学社製、平均粒径10μm)、上記硫化物固体電解質材料(平均粒径2.5μm)、結着材(ブチレンラバー系結着材の5重量%ヘプタン溶液)およびヘプタンを添加した。次に、PP製容器を超音波分散装置で30秒間撹拌し、その後PP製容器を振とう器で30分間振とうさせた。得られた組成物を、アプリケーターを用いてブレード法にて、Cu箔上に塗工した。その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥を行い、負極合材を得た。
次に、PP製容器に、上記硫化物固体電解質材料(平均粒径2.5μm)、上記結着材およびヘプタンを添加した。次に、PP製容器を、超音波分散装置で30秒間撹拌し、その後、PP製容器を振とう器で30分間振とうさせた。得られた組成物を、アプリケーターを用いてブレード法にて、Al箔上に塗工した。その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥を行い、Al箔上に固体電解質層を得た。
次に、得られた固体電解質層の一方の表面に、正極活物質層形成用材料を添加して1ton/cmの圧力でプレスした後、固体電解質層の他の表面に、上記負極合材を添加して1ton/cmの圧力でプレスし、発電要素を得た。次に、発電要素を140℃、4ton/cmの圧力で5分間加熱プレスし、全固体電池を得た。
[実施例2]
平均粒径が1.5μmの硫化物固体電解質材料を用いたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。
[実施例3]
平均粒径が2.5μmの硫化物固体電解質材料を用いたこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。
[比較例1]
加熱プレス工程を行わないこと以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。
[比較例2]
加熱プレス工程を行わないこと以外は、実施例2と同様に全固体電池を作製した。
[比較例3]
加熱プレス工程を行わないこと以外は、実施例3と同様に全固体電池を作製した。
[評価1]
(SEM画像観察)
実施例3および比較例3で得られた正極活物質層含有体の断面をSEMで観察した。得られたSEM画像を図5に示す。図5(a)は、比較例3で得られた正極活物質層含有体の断面のSEM画像である。図5(a)に示されるように、固体電解質材料(SE)同士の粒界が多く存在することが確認できる。一方、図5(b)は、実施例3で得られた正極活物質層含有体の断面のSEM画像である。図5(b)に示されるように、固体電解質材料同士の粒界は図5(a)と比較して少ないことが確認できる。これより加熱プレスを適用することで、固体電解質材料の粒界が安定化(減少)することが確認された。
[評価2]
(電池抵抗評価)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた正極活物質層含有体を用いて作製した全固体電池を、3.6Vまで定電流−定電圧充電(終止電流0.027mA)した。その後15分休止し、0.1時間率(10C)で定電流放電を5秒間行った。この時の電圧降下分および電流値から、電池抵抗を求めた(R=ΔV/ΔI)。
平均粒径比(A/B)と10C放電における電池抵抗との関係を図6に示す。図6および表1に示すように、加熱プレスを適用する場合(実施例1〜3)、固体電解質材料の平均粒径が小さくなる(平均粒径比が大きくなる)に従って、電池抵抗を低減できることが確認された。これに対して、加熱プレスを適用しない場合、固体電解質材料の平均粒径が小さくなる(平均粒径比が大きくなる)に伴い電池抵抗も低減されるが、比較例2(平均粒径:1.5μm)において電池抵抗は極小値を示し、さらに微細化した比較例1(平均粒径:0.8μm)では再び電池抵抗が増大することが確認できた。そのため、平均粒径比が2.7以上である場合、本発明の効果がより発揮されると考えられる。
また得られた電池抵抗値は、拡散抵抗、反応抵抗および直流抵抗の各抵抗値の総和で表されるものであり、比較例1〜3で得られた全固体電池における各抵抗値と平均粒径比との関係を図7(a)に示す。また実施例1〜3で得られた全固体電池における各抵抗値と平均粒径値との関係を図7(b)に示す。図7(b)に示されるように、実施例1〜3では、平均粒径比が大きくなるにしたがって、拡散抵抗および反応抵抗の両方が低減することが確認できる。これは、正極活物質層形成用材料を加熱プレスすることで、固体電解質材料同士の粒界状態が安定化されて拡散抵抗が低減し、固体電解質材料を微細化することで、活物質との界面における反応抵抗を低減することから、拡散抵抗低減および反応抵抗低減を両立できるためと考えられる。これに対して、図7(a)に示されるように、加熱プレスを適用しない比較例1〜3では、平均粒径比が大きくなるにしたがって、反応抵抗が低減していることが確認できる。しかしながら、拡散抵抗は平均粒径比が一定の値(2.7)で極小値を示し、さらに平均粒径比を大きくすると、大幅に増大することが確認できる。
[評価3]
(拘束圧依存性評価)
本発明の実施例1および比較例1で得られた電池の5secセル出力を測定した。その結果を図8に示す。図8に示されるように、低拘束圧(15kgf/cm)において、高拘束圧(450kgf/cm)時の80%以上の出力が維持できることが確認できる。これより、活物質および固体電解質材料の界面と、固体電解質材料同士の粒子界面とが、それぞれ強固に密着していることが示唆される。
[比較例4−1〜4−2、参考例1]
正極活物質および硫化物固体電解質材料の平均粒径等の条件を表2に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にして電池を作製した。
[評価4]
(1)電池容量評価
比較例1〜3、比較例4−1〜4−2、参考例1で得られた電池を、10時間率(0.1C)で4.55Vまで定電流−定電圧充電した。その後15分間休止し、10時間率(0.1C)で3.0Vまで定電流放電し、放電容量を求めた。
(2)電池抵抗評価
比較例1〜3、比較例4−1〜4−2、参考例1で得られた電池を、3.6Vまで定電流−定電圧充電(終止電流0.015mA)した。その後15分間休止し、1時間率(1C)で定電流放電を5秒間行った。また同様に0.1時間率(10C)で定電流放電を5秒間行った。この時の電圧降下分および電流値から、電池抵抗を求めた(R=ΔV/I)。
また平均粒径比(A/B)と放電容量との関係を図9に示す。図9に示すように、平均粒径比(A/B)が0.9以上である場合に、放電容量が高くなった。比較例1〜3は、比較例4−1〜4−2に比べてさらに放電容量が高くなった。また、平均粒径比(A/B)と1C放電における電池抵抗との関係を図10に示す。図10に示すように、平均粒径比(A/B)が0.9以上である場合に、電池抵抗が低くなった。また平均粒径比(A/B)と10C放電における電池抵抗との関係を図11に示す。図11および表2に示すように、比較例4−1、4−2および参考例1では、抵抗が高過ぎて測定不能であったのに対して、比較例1〜3では、測定可能な程度に低い抵抗であった。
[比較例4−3、参考例2−1〜2−3]
正極活物質および硫化物固体電解質材料の平均粒径等の条件を表3に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にして電池を作製した。
[比較例5、参考例3−1〜3−2]
正極合材における正極活物質および硫化物固体電解質材料の体積割合を、正極活物質:硫化物固体電解質材料=75:25とし、平均粒径等の条件を表4に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にして電池を作製した。
[評価5]
(1)電池容量評価
比較例4−1〜4−3、比較例5、参考例2−1〜2−3、参考例3−1および3−2で得られた電池を、10時間率(0.1C、0.304mA)で4.55Vまで定電流充電した。その後15分間休止し、10時間率(0.1C、0.304mA)で3.0Vまで定電流放電し、放電容量を求めた。
(2)電池抵抗評価
比較例4−1〜4−3、比較例5、参考例2−1〜2−3、参考例3−1および3−2で得られた電池を、3.6Vmで定電流−定電圧充電(終止電流0.015mA)した。その後15分休止し、1時間率(1C、3.04mA)で定電流放電を5秒間行った。この時の電圧降下分および電流値から、電池抵抗を求めた(R=ΔV/I)。
また、平均粒径比(A/B)と放電容量との関係を図12に示す。図12に示すように、平均粒径比(A/B)が0.9以上である場合に、放電容量が高くなった。また、平均粒径比(A/B)と電池抵抗との関係を図13に示す。図13に示すように、平均粒径比(A/B)が0.9以上である場合に、電池抵抗が小さくなった。
1 … 正極活物質
2 … 固体電解質材料
3 … 負極活物質
10 … 正極活物質層含有体
20 … 正極活物質層
30 … 負極活物質層
40 … 固体電解質層

Claims (3)

  1. 少なくとも正極活物質層を有する正極活物質層含有体の製造方法であって、
    正極活物質および固体電解質材料を含有し、前記正極活物質および前記固体電解質材料の合計に対する前記正極活物質の割合が50体積%より大きく95体積%以下であり、前記固体電解質材料に対する前記正極活物質の平均粒径比が、0.9以上である正極活物質層形成用材料を調製する調製工程と、
    前記固体電解質材料の軟化点以上の温度で、前記正極活物質層形成用材料を加熱プレスして正極活物質層含有体を形成する正極活物質層含有体形成工程と、を有し、
    前記正極活物質層形成用材料における前記正極活物質および前記固体電解質材料の合計の割合が、80重量%以上であり、
    前記正極活物質が、酸化物活物質であり、
    前記固体電解質材料が、硫化物固体電解質材料であり、
    前記正極活物質の平均粒径が、2μm〜5μmの範囲内であり、
    前記固体電解質材料の平均粒径が、0.8μm〜2.5μmの範囲内であることを特徴とする正極活物質層含有体の製造方法。
  2. 前記固体電解質材料に対する前記正極活物質の平均粒径比が、2.7以上であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質層含有体の製造方法。
  3. 前記加熱プレスの温度が、100℃〜300℃の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の正極活物質層含有体の製造方法。
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