以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
図1を参照して、本実施の形態に係る車両1の全体ブロック図が説明される。車両1は、エンジン10と、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40と、減速機58と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、駆動輪80と、スタートスイッチ150と、パワーモードスイッチ152と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、複数の気筒102と、複数の気筒102の各々に燃料を供給する燃料噴射装置104とを含む。燃料噴射装置104は、ECU200からの制御信号S1に基づいて、各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、各気筒に対する燃料の噴射を停止したりする。
さらに、エンジン10には、エンジン10のクランク軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
PCU60は、バッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御されるコンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。コンバータは、バッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換してコンバータに出力する。コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてバッテリ70が充電される。なお、コンバータは、省略してもよい。
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。バッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
バッテリ70には、バッテリ70の電池温度TBを検出するための電池温度センサ156と、バッテリ70の電流IBを検出するための電流センサ158と、バッテリ70の電圧VBを検出するための電圧センサ160とが設けられる。
電池温度センサ156は、電池温度TBを示す信号をECU200に送信する。電流センサ158は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。電圧センサ160は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。
スタートスイッチ150は、たとえば、プッシュ式スイッチである。スタートスイッチ150は、キーをキーシリンダに差し込んで所定の位置まで回転させるものであってもよい。スタートスイッチ150は、ECU200に接続される。運転者がスタートスイッチ150を操作することに応じて、スタートスイッチ150は、信号STをECU200に送信する。
パワーモードスイッチ152は、通常モードとパワーモードとの間で車両1の走行モードを切り替えるためのスイッチである。通常モードおよびパワーモードは、車両1の加速要求に対する加速応答性が異なる走行モードである。パワーモードは、通常モードの選択時よりも車両1の加速要求に対する加速応答性を上昇させる走行モードである。なお、走行モードとしては特に2つに限定されるものではない。
パワーモードスイッチ152は、たとえば、プッシュ式スイッチであってもよいし、レバースイッチであってもよいし、ロータリースイッチであってもよい。パワーモードスイッチ152は、ECU200に接続される。運転者がパワーモードスイッチ152を操作することに応じて、パワーモードスイッチ152は、信号PWRをECU200に送信する。
なお、パワーモードの選択は、パワーモードスイッチ152の操作による選択に限定されるものではない。たとえば、ECU200は、車両1の走行位置、走行状態あるいは運転者の走行履歴等に基づいて通常モードからパワーモードに走行モードを切り替えてもよい。
また、ECU200には、第1レゾルバ12と、第2レゾルバ13と、車輪速センサ14と、操舵角センサ162と、アクセルペダルポジションセンサ164と、Gセンサ166とが接続される。
第1レゾルバ12は、第1MG20に設けられる。第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。
第2レゾルバ13は、第2MG30に設けられる。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
操舵角センサ162は、操舵角Staを検出する。操舵角Staは、車両1の進行方向に対する前輪側の駆動輪80の向きを示す。操舵角センサ162は、操舵角Staを示す信号をECU200に送信する。
なお、操舵角センサ162に代えて、ステアリングホイール(図示せず)の回転角度を検出する回転角度センサを用いてもよい。ECU200は、回転角度センサから受信したステアリングホイールの回転角度に基づいて操舵角Staを算出してもよい。
アクセルペダルポジションセンサ164は、車両1の加速要求を示すアクセルペダル168の踏み込み量APを検出する。アクセルペダルポジションセンサ164は、アクセルペダル168の踏み込み量APを示す信号をECU200に送信する。
Gセンサ166は、車両1に作用する加速度Gを検出する。Gセンサ166は、検出した加速度Gを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した加速度Gに基づいて車両1の走行路面の勾配Dgを算出する。Gセンサ166は、少なくとも車両1の走行路面の勾配Dgを検出するために必要な方向(たとえば、車両1の前後方向と上下方向)の加速度を検出する。なお、Gセンサ166に代えて、車両1の走行路面の勾配Dgを示す信号をECU200に送信する勾配センサを用いてもよい。
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル168の踏み込み量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、バッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、蓄電装置の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、バッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにバッテリ70の充電が必要な場合や、エアコン等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
ECU200は、バッテリ70の充電量および放電量を制御する際に、電池温度TBおよび現在のSOCに基づいて、バッテリ70の充電時に許容される入力電力(以下の説明においては、「充電電力上限値Win」と記載する)およびバッテリ70の放電時に許容される出力電力(以下の説明においては、「放電電力上限値Wout」と記載する)を設定する。たとえば、現在のSOCが低下すると、放電電力上限値Woutは徐々に低く設定される。一方、現在のSOCが高くなると、充電電力上限値Winは徐々に低下するように設定される。
また、バッテリ70として用いられる二次電池は、低温時に内部抵抗が上昇する温度依存性を有する。また、高温時には、さらなる発熱によって温度が過上昇することを防止する必要がある。このため、電池温度TBの低温時および高温時には、放電電力上限値Woutおよび充電電力上限値Winの各々を低下させることが好ましい。ECU200は、電池温度TBおよび現在SOCに応じて、たとえば、マップ等を用いることによって、充電電力上限値Winおよび放電電力上限値Woutを設定する。
以上のような構成を有する車両1において、パワーモードの選択時に、下り勾配の走行路面を走行する場合や、旋回中である場合には、加速応答性が通常モードの選択時よりも高いことによって運転者の意図しない車両の挙動が生じる場合がある。
そこで、本実施の形態においては、ECU200が、パワーモードの選択中であって、かつ、車両1の走行状態が、旋回中および下り勾配の路面での走行中のうちの少なくともいずれか一方の第1状態である場合には、パワーモードの選択中であって、かつ、走行状態が第1状態でない場合よりも加速応答性が低下するように車両を制御する点に特徴を有する。
また、本実施の形態において、ECU200は、パワーモードの選択中であって、かつ、走行状態が第1状態である場合には、加速応答性を低下させる割合を走行状態が第1状態でない場合よりも大きくする。
図2に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、モード要求判定部202と、踏み込み量判定部204と、制御値算出部206と、勾配判定部208と、旋回判定部210と、補正処理部212と、制御値決定部214と、車両制御部216とを含む。
モード要求判定部202は、パワーモードの要求があるか否かを判定する。たとえば、走行モードとしてパワーモードが選択されている場合には、パワーモードの要求があると判定する。なお、モード要求判定部202は、たとえば、パワーモードの要求がある場合には、要求判定フラグをオン状態にしてもよい。
踏み込み量判定部204は、モード要求判定部202によってパワーモードの要求があると判定された場合に、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きいか否かを判断する。
基準値AP_bは、たとえば、前回の計算サイクルにおけるアクセルペダル168の踏み込み量AP’(以下、前回値AP’とも記載する)である。基準値AP_bとしては、特に前回値AP’に限定されるものではなく、たとえば、前回以前のアクセルペダル168の踏み込み量に基づいて算出される値(たとえば、前回以前の所定期間の平均値)であってもよい。
所定値MRGは、基準値AP_bから大きくアクセルペダル168が踏み込まれたことが判定できる値であればよく、特に限定される値ではない。所定値MRGは、たとえば、踏み込み量の最大値の10%に対応する踏み込み量である。
なお、踏み込み量判定部204は、たとえば、要求判定フラグがオン状態である場合に、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きいか否かを判断する。また、踏み込み量判定部204は、たとえば、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きいと、踏み込み量判定フラグをオン状態にしてもよい。
制御値算出部206は、制御値AP_cを算出する。制御値AP_cは、車両1の要求駆動力の決定に用いられる加速要求の程度を示す要求値である。制御値算出部206は、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dに基づいて制御値AP_cを算出する。制御値算出部206は、たとえば、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと、図3に示すマップとに基づいて制御値AP_cを算出する。
図3に示すマップは、検出値AP_dと制御値AP_cとの関係を示すマップである。図3の縦軸は、制御値AP_cを示し、図3の横軸は、検出値AP_dを示す。
図3の実線は、パワーモード選択時において、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きい場合の検出値AP_dと制御値AP_cとの関係を示す。
検出値AP_dのゼロからAP_d(0)までの区間においては、検出値AP_dと制御値AP_cとの関係は、線形の関係となる。さらに、検出値AP_dのAP_d(0)から最大値AP_d(1)までの区間においては、図3の実線に示すように、検出値AP_dと制御値AP_cとの関係は、非線形の関係となる。
本実施の形態においては、検出値AP_dのAP_d(0)から最大値AP_d(1)までの区間においては、図3の実線は、後述する図3の太破線で示される値よりも同一の検出値AP_dに対する制御値AP_cが大きくなるように設定される。
図3の実線は、検出値AP_dのAP_d(0)から最大値AP_d(1)までの区間においては、検出値AP_dの増加に対して制御値AP_cが単調増加するように設定される。
制御値算出部206は、踏み込み量判定部204によってアクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きいと判定された場合に、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと、図3の実線とに基づいて制御値AP_cを算出する。
図3の太破線は、通常モードの選択時、および、パワーモード選択時であっても、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRG以下である場合の検出値AP_dと制御値AP_cとの関係を示す。図3の太破線における検出値AP_dと制御値AP_cとの関係は、線形の関係となる。検出値AP_dの最大値AP_d(1)と制御値AP_cの最大値AP_c(1)とは同一の値である。すなわち、図3の太破線における検出値AP_dと制御値AP_cとの比は、1:1となる。
制御値算出部206は、通常モードの選択時、および、パワーモード選択時であっても、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRG以下である場合には、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと、図3の太破線とに基づいて制御値AP_cを算出する。
なお、制御値算出部206は、たとえば、要求判定フラグおよび踏み込み量判定フラグがいずれもオン状態である場合には、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと、図3の実線とに基づいて制御値AP_cを算出してもよい。また、制御値算出部206は、たとえば、要求判定フラグおよび踏み込み量判定フラグのいずれかがオフ状態である場合には、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと、図3の太破線とに基づいて制御値AP_cを算出してもよい。
勾配判定部208は、車両1が下り勾配の路面を走行しているか否かを判定する。具体的には、勾配判定部208は、車両1の走行路面の勾配Dgがしきい値Dg(0)よりも小さい下り勾配であるか否かを判定する。
しきい値Dg(0)は、所定値であって、上り勾配を正方向とした場合には、負の値となる。しきい値Dg(0)は、パワーモード選択時に運転者のアクセルペダル168の微小操作に対して運転者の意図しない車両1の挙動が発生する可能性がある下り勾配の路面であるか否かを判定するためのしきい値である。しきい値Dg(0)は、実験等によって適合される。
なお、勾配判定部208は、たとえば、車両1の走行路面の勾配Dgがしきい値Dg(0)よりも小さい下り勾配である場合には、勾配判定フラグをオン状態にしてもよい。また、勾配判定部208は、たとえば、下り勾配を正方向とした場合には、車両1の走行路面の勾配Dgがしきい値Dg(0)の大きさよりも大きい下り勾配であるか否かを判定してもよい。
旋回判定部210は、車両1が旋回中であるか否かを判定する。具体的には、旋回判定部210は、操舵角Staの大きさ(絶対値)がしきい値Sta(0)よりも大きいか否かを判定する。
しきい値Sta(0)は、所定値である。しきい値Sta(0)は、パワーモード選択時に運転者のアクセルペダル168の微小操作に対して運転者の意図しない車両1の挙動が発生する可能性がある旋回状態であるか否かを判定するためのしきい値である。しきい値Sta(0)は、実験等によって適合される。
なお、旋回判定部210は、たとえば、操舵角Staの大きさがしきい値Sta(0)よりも大きい場合には、旋回判定フラグをオン状態にしてもよい。
補正処理部212は、勾配判定部208によって車両1が下り勾配の路面を走行していると判定された場合、あるいは、旋回判定部210によって、車両1が旋回中であると判定された場合に、制御値AP_cに勾配Dgに応じた第1ゲインgaと、操舵角Staに応じた第2ゲインgbとを乗じて制御値AP_cを補正する。
補正処理部212は、たとえば、勾配Dgと図4に示すマップとに基づいて第1ゲインgaを算出する。図4に示すマップは、勾配Dgと第1ゲインgaとの関係を示す。
図4に示すように、補正処理部212は、勾配DgがゼロとDg(0)との間である場合には、所定値ga(0)を第1ゲインgaとして決定する。なお、所定値ga(0)は、「1.0」よりも大きい値である。
さらに、補正処理部212は、勾配DgがDg(0)とDg(1)との間である場合には、勾配Dgの変化に対して第1ゲインgaを線形に変化させて第1ゲインgaを決定する。補正処理部212は、たとえば、勾配DgがDg(0)とDg(1)との間である場合には、勾配Dgが小さくなるほど(下り勾配の大きさが大きくなるほど)、第1ゲインgaが小さくなるように変化させて第1ゲインgaを決定する。
さらに、補正処理部212は、勾配DgがDg(1)よりも大きい場合には、「1.0」を第1ゲインgaとして決定する。なお、第1ゲインgaを決定するためのマップとしては、図4に示すマップに特に限定されるものではなく、たとえば、図4に示すマップのうちの勾配Dgの変化に対して第1ゲインgaが線形に変化する部分が勾配Dgの変化に対して第1ゲインgaが非線形に変化する部分に置き換えられたマップであってもよいし、勾配DgがDg(0)よりも大きい場合に「1.0」を第1ゲインgaとして決定するマップであってもよい。
同様に、補正処理部212は、たとえば、操舵角Staと図5に示すマップとに基づいて第2ゲインgbを算出する。図5に示すマップは、操舵角Staと第2ゲインgbとの関係を示す。
図5に示すように、補正処理部212は、操舵角Staの大きさがゼロとSta(0)との間である場合には、所定値gb(0)を第2ゲインgbとして決定する。なお、所定値gb(0)は、「1.0」よりも大きい値である。
さらに、補正処理部212は、操舵角StaがSta(0)とSta(1)との間である場合には、操舵角Staの大きさの変化に対して第2ゲインgbを線形に変化させて第2ゲインgbを決定する。補正処理部212は、たとえば、操舵角Staの大きさが大きくなるほど、第2ゲインgbが小さくなるように変化させて第2ゲインgbを決定する。
さらに、補正処理部212は、操舵角StaがSta(1)よりも大きい場合には、「1.0」を第2ゲインgbとして決定する。なお、第2ゲインgbを決定するためのマップとしては、図5に示すマップに特に限定されるものではなく、たとえば、図5に示すマップのうちの操舵角Staの変化に対して第2ゲインgbが線形に変化する部分が操舵角Staの変化に対して第2ゲインgbが非線形に変化する部分に置き換えられたマップであってもよいし、操舵角StagがSta(0)よりも大きい場合に「1.0」を第2ゲインgbとして決定するマップであってもよい。
また、制御値AP_cに第1ゲインgaと第2ゲインgbとを乗じた値が図3の実線に示される制御値AP_cを超えないようにga(0)およびgb(0)とが設定される。
補正処理部212は、図3の実線に示されるマップを用いて算出された制御値AP_cに図4のマップを用いて算出された第1ゲインgaと、図5のマップを用いて算出された第2ゲインgbとを乗じて補正後の制御値AP_c’を算出する。
また、補正処理部212は、勾配判定部208によって車両1が下り勾配の路面を走行していないと判定された場合であって、かつ、旋回判定部210によって、車両1が旋回中でないと判定された場合には、制御値AP_cの補正を行なわない。
なお、補正処理部212は、たとえば、勾配判定フラグおよび旋回判定フラグのうちのいずれか一方がオン状態である場合に、制御値AP_cに勾配Dgに応じた第1ゲインgaと、操舵角Staに応じた第2ゲインgbとを乗じて制御値AP_cを補正してもよい。また、補正処理部212は、たとえば、勾配判定フラグおよび旋回判定フラグのうちのいずれもがオフ状態である場合に、制御値AP_cを今回制御値AP_c(n)として決定してもよい。
制御値決定部214は、制御値算出部206によって算出された制御値AP_cあるいは補正処理部212による補正後の制御値AP_c’と、前回の計算サイクルにおいて車両1の要求駆動力の決定に用いられた制御値(以下、前回制御値と記載する)AP_c(n−1)とに基づいて今回の計算サイクルにおいて車両1の要求駆動力の決定に用いる制御値(以下、今回制御値と記載する)AP_c(n)を決定する。
たとえば、制御値決定部214は、今回制御値AP_c(n)が前回制御値AP_c(n−1)に対して大きく変動することを抑制するために前回制御値AP_c(n−1)に対する変動量を所定レートΔAPに制限して、今回制御値AP_c(n)を決定する。
制御値決定部214は、たとえば、補正後の制御値AP_c’または制御値AP_cと、前回制御値AP_c(n−1)との差が所定レートΔAPよりも大きい場合には、前回制御値AP_c(n−1)からΔAPだけ補正後の制御値AP_c’または制御値AP_cに近づけた値を今回制御値AP(n)として決定する。
制御値決定部214は、たとえば、補正後の制御値AP_c’が前回制御値AP_c(n−1)+ΔAPよりも大きい場合には、AP_c(n−1)+ΔAPを今回制御値AP_c(n)として決定する。
また、制御値決定部214は、たとえば、補正後の制御値AP_c’と、前回制御値AP_c(n−1)との差の大きさが所定レートΔAPよりも小さい場合には、補正後の制御値AP_c’を今回制御値AP_c(n)として決定する。
制御値決定部214は、補正処理部212によって制御値AP_cが補正された場合には、補正後の制御値AP_c’と、前回制御値AP_c(n−1)とに基づいて今回制御値AP_c(n)を決定する。
また、制御値決定部214は、補正処理部212によって補正されない場合には、制御値算出部206によって算出された制御値AP_cと、前回制御値AP_c(n−1)とに基づいて今回制御値AP_c(n)を決定する。
車両制御部216は、制御値決定部214によって決定された今回制御値AP_c(n)に基づいて車両1を制御する。具体的には、車両制御部216は、今回制御値AP_c(n)に基づいて車両1の要求駆動力を算出する。車両制御部216は、算出された車両1の要求駆動力に基づいて第1MG20、第2MG30およびエンジン10を制御する。また、車両制御部216は、エンジン10の停止状態が維持される場合には、算出された車両1の要求駆動力に基づいて第2MG30を制御する。
本実施の形態において、モード要求判定部202と、踏み込み量判定部204と、制御値算出部206と、勾配判定部208と、旋回判定部210と、補正処理部212と、制御値決定部214と、車両制御部216とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両1に搭載される。
図6を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。ECU200は、図6に示したフローチャートに基づくプログラムを所定の計算サイクル毎に実行する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、パワーモードの要求があるか否かを判定する。パワーモードの要求がある場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS112に移される。
S102にて、ECU200は、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きいか否かを判定する。アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きい場合(S102にてYES)には、処理はS104に移される。もしそうでない場合には(S102にてNO)、処理はS112に移される。
S104にて、ECU200は、第1制御値算出処理を実行する。具体的には、ECU200は、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと図3の実線に示されるマップとに基づいて制御値AP_cを算出する。
S106にて、ECU200は、走行路面の勾配Dgがしきい値Dg(0)よりも小さいか否かを判定する。走行路面の勾配Dgがしきい値Dg(0)よりも小さい場合には(S106にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでない場合には(S106にてNO)、処理はS108に移される。
S108にて、ECU200は、操舵角Staの大きさがしきい値Sta(0)よりも大きいか否かを判定する。操舵角Staがしきい値Sta(0)よりも大きい場合には(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでない場合には(S108にてNO)、処理はS114に移される。
S110にて、ECU200は、補正処理を実行する。補正処理については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返されない。S112にて、ECU200は、第2制御値算出処理を実行する。具体的には、ECU200は、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと図3の太破線に示されるマップとに基づいて制御値AP_cを算出する。S114にて、ECU200は、今回制御値AP_c(n)を決定する。今回制御値AP_c(n)の決定方法については、上述したとおりであるためその詳細な説明は繰り返されない。S116にて、ECU200は、決定された今回制御値AP_c(n)に基づいて車両1を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両に搭載されたECUの動作について説明する。
たとえば、通常モードが選択された状態で車両1が走行している場合(S100にてNO)、あるいは、パワーモードが選択された状態で車両1が走行しており、かつ、アクセルペダルの踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRG以下である場合には(S100にてYES、かつ、S102にてNO)、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと、図3の太破線に示されるマップとに基づいて制御値AP_cが算出され(S112)、今回制御値AP_c(n)が決定される(S114)。決定された今回制御値AP_c(n)に基づいて車両1が制御される(S116)。
一方、パワーモードが選択された状態で車両1が走行している場合を想定する(S100にてYES)。アクセルペダルの踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きい場合に(S102にてYES)、アクセルペダルの踏み込み量APの検出値AP_dと、図3の実線に示されるマップとに基づいて制御値AP_cが算出される(S104)。このとき、車両1が走行している路面の勾配がしきい値Dg(0)よりも小さい場合(S106にてYES)、あるいは、車両1の走行路面が平坦路であっても(S106にてNO)、車両1の操舵角Staの大きさがしきい値Sta(0)よりも大きい場合(S108にてYES)、補正処理が実行される(S110)。
すなわち、制御値AP_cに路面の勾配Dgに応じた第1ゲインgaと操舵角Staに応じた第2ゲインgbとを乗じて補正後の制御値AP_c’が算出され、今回制御値AP_c(n)が決定される(S114)。決定された今回制御値AP_c(n)に基づいて車両1が制御される(S116)。
このとき、路面の勾配Dgが小さくなるほど(下り勾配の大きさが大きくなるほど)第1ゲインgaは、1.0に近づく。そのため、下り勾配の大きさが大きくなるほど車両1の加速要求に対する加速応答性が低下することとなる。
また、操舵角Staが大きくなるほど第2ゲインgbは、1.0に近づく。そのため、操舵角Staが大きくなるほど車両1の加速要求に対する加速応答性が低下することとなる。
なお、車両1が平坦路で直進している場合には(S106にてNO、かつ、S108にてNO)、補正処理は行われずに今回制御値AP_c(n)が決定される(S114)。そして、決定された今回制御値AP_c(n)に基づいて車両1が制御される(S116)。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、車両1が下り勾配の走行路面を走行する場合や、車両1が旋回中である場合には、車両1が平坦路を直進している場合よりも第1ゲインgaおよび/または第2ゲインgbの値が小さくなる。そのため、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dに対する制御値AP_cが車両1が平坦路を直進している場合よりも小さくなる。その結果、加速要求に対する車両1の加速応答性が低下する。これによって、下り勾配の走行路面での走行中あるいは旋回中における運転者の意図しない車両の挙動の発生を抑制することができる。したがって、パワーモード選択時に運転者の意図しない車両の挙動の発生を抑制する車両用制御装置および車両用制御方法を提供することができる。
本実施の形態において、車両1が旋回中であるか否かを操舵角Staに基づいて判定したが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、Gセンサ166によって車両1の左右方向の加速度を検出可能な場合には、ECU200は、車両1の左右方向の加速度に基づいて車両1が旋回中であるか否かを判定してもよい。また、車両1の左右方向の加速度が大きくなるほど操舵角Staが大きくなることから、ECU200は、車両1の左右方向の加速度から操舵角Staを算出して、算出された操舵角Staと図5のマップとを用いて第2ゲインgbを算出してもよいし、あるいは、車両1の左右方向の加速度と、図5の横軸を車両1の左右方向の加速度に置き換えたマップとから第2ゲインgbを算出してもよい。
なお、本実施の形態においては、ECU200が今回制御値AP_c(n)に基づいて要求駆動力を算出するとして説明したが、たとえば、特にこれに限定されるものではない。たとえば、ECU200は、今回制御値AP_c(n)に基づいて、車両1に要求される要求パワーを決定し、決定された要求パワーに基づいて車両1を制御してもよい。
本実施の形態においては、車両1がモータジェネレータとエンジンとを駆動源とするハイブリッド車両であるとして説明するが、特に車両1はハイブリッド車両に限定されるものではない。たとえば、車両1は、エンジンのみを駆動源とする車両であってもよいし、あるいは、モータジェネレータのみを駆動源とする電気自動車であってもよい。
また、本実施の形態においては、車両1が下り勾配で走行している場合、あるいは、車両1が旋回中である場合に、第1ゲインgaおよび/または第2ゲインgbを用いて制御値AP_cを補正することによって車両1の加速応答性を低下させる割合を大きくするとして説明したが、特に加速応答性を低下させる方法としては第1ゲインgaおよび/または第2ゲインgbを用いた方法に限定されるものではない。たとえば、ECU200は、車両1が下り勾配で走行している場合、あるいは、車両1が旋回中である場合には、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと図3の実線に示されるマップとを用いた制御値AP_cの算出を無効化してもよい。具体的には、ECU200は、車両1が下り勾配で走行している場合、あるいは、車両1が旋回中である場合には、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと図3の太破線に示されるマップとを用いて算出される制御値AP_cに基づいて今回制御値AP_c(n)を決定してもよい。
さらに、本実施の形態においては、アクセルペダル168の踏み込み量APが基準値AP_b+所定値MRGよりも大きい場合に、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと図3の実線に示されるマップとに基づいて制御値AP_cを算出するとして説明したが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、パワーモードが選択されている場合には、アクセルペダル168の踏み込み量APの変動量に関わらず、アクセルペダル168の踏み込み量APの検出値AP_dと図3の実線に示されるマップとに基づいて制御値AP_cを算出してもよい。
さらに本実施の形態においては、ECU200は、加速要求の程度を示す要求値である制御値AP_cに係数(第1ゲインgaおよび/または第2ゲインgb)を乗じて制御値AP_cを補正し、補正後の制御値AP_c’に基づいて車両1を制御するとして説明したが、たとえば、加速要求に基づいて算出された車両1の制御に用いられる駆動指令値に係数を乗じて駆動指令値を修正し、修正された駆動指令値に基づいて車両1を制御してもよい。なお、いずれの場合においても、パワーモードの選択中であって、かつ、走行状態が第1状態である場合の係数は、パワーモードの選択中であって、かつ、走行状態が第1状態でない場合の係数よりも小さい値となることが望ましい。
また、係数は、いずれの場合においても、車両1の走行路面の下り勾配の大きさが大きくなるほど小さくなるように決定されことが望ましい。さらに係数は、いずれの場合においても、車両1の操舵角の大きさが大きくなるほどが小さくなるように決定されることが望ましい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。