JP5926582B2 - 送電線の改修方法 - Google Patents
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ここで、送電線の接続は、直線スリーブ等の接続管で行われる。接続管は、送電線が鋼心アルミより線である場合、鋼線用の鋼パイプとアルミ線用のアルミパイプとから構成され、各パイプを断面中心方向に圧縮して、送電線の引っ張り強度以上の力に耐えられるようにするとともに、アルミ線の導通を確保する。
接続管による送電線の接続は、接続する両側送電線端のアルミ素線を、鋼線用パイプの半分の長さだけ切り落とし、露出した鋼芯線を鋼パイプに左右から挿入し鋼芯線を圧縮する。次いであらかじめ送電線にかぶせておいたアルミパイプを鋼線用パイプの真上に移動させ、圧縮してアルミ素線を接続する。この接続管による送電線の接続は、鉄塔と鉄塔との径間でなされることが多い。
なお、接続管の設置位置は、特に決まっているわけではないが、架線工事当時に1回線として設けられた3線でほぼ同じ位置に配置されることが多い。また、重機の接触等による送電線の損傷等に起因して送電線を接続した場合には、当該箇所の送電線を部分的に張り替えるため、接続管が架線工事当初と異なる箇所に配置されることもある。
空気中においてアルミの表面は薄い絶縁性の酸化被膜に覆われている。接続管を圧縮接続させると、この酸化被膜を機械的圧縮力によって破壊し、金属面同士を密着させ電気的導通部を確保している。しかし、長期使用に伴い雨水や塩害及び充填材の反応により電接部界面の酸化や接続箇所の偏心による導通部抵抗が増加して劣化し、抵抗値が増加していく。この劣化は、金属同士の接触面が存在する限り避けることができず、接続管の寿命は送電線自体のそれと比較してかなり短い場合もある。この場合、接続管を交換する必要が生じる。
なお、送電線を鉄塔に配置するには、上述した長尺の送電線をそのまま鉄塔に配置する方法の他、送電線を鉄塔の径間長に切断して、送電線を鉄塔に取り付ける2つのクランプの間にジャンパー線を送電線とは別に取り付けることもある。この場合も、鉄塔の径間に接続管が配置される場合がある。
以下この送電線の張り替えについて説明する。図11は従来の送電線張り替え状態を示す模式図である。送電線10は、複数、この場合5本の鉄塔11〜15を使用して架線されている。送電線10は、鉄塔13と鉄塔14の径間において接続管16で接続されている。この接続管16の劣化に対応するため、鉄塔12から鉄塔15の間の送電線10を張り替える。この作業に際して、鉄塔12に近接するエンジン場21には、仮設備として送電線巻き取り専用の車両である延線車、送電線巻き取り用のリールワインダー等を配置する必要がある。また、鉄塔15に近接するドラム場22には仮設備として送電線送り出し専用の車両である延線車、シューチェーン(ブレーキ)、新送電線を巻き取ったドラムを配置する必要がある。
ここで、エンジン場は、電線やワイヤを引き込む作業場所である。また、ドラム場は、電線やワイヤを送り出す作業場所である。何れも、鉄塔12、15の近隣で、各場に延線車等の仮設備を搬送するための道路23、24や、仮設備を配置するために十分な敷地(例えば400平方メートル:20m×20m)が必要となる。この事情は接続管の交換作業も同様である。
以上の送電線の交換は、接続管の交換の他、送電線の部分的な損傷を補修する場合にも行われ、この改修工事の実施にも上記の課題が存する。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、大がかりな敷地や地上設備を必要とすることなく、簡単な装備で容易に送電線を改修することができる送電線の改修方法を提供することを課題とする。
本発明によれば、劣化した既設の接続管が配置された送電線を支持する両側の鉄塔において、大がかりな敷地や地上設備を必要とせず、簡単な装備で容易に送電線を改修することができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の送電線の改修方法において、前記閉ループ状送電線の循環駆動は、前記一方の鉄塔の近くに配置したウインチで行うことを特徴とする。
本発明によれば、ウインチは閉ループ状送電線を循環駆動させるだけであるので、大がかりなものでなくともよく、運搬が容易であり、大きな設置面積を必要としない。
本発明によれば、閉ループ状送電線の循環駆動に際しては、送電線をくさび部材と挟持部とを備えた把持具で掴んで行うので、送電線を損傷することなく確実な作業ができる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の送電線の改修方法において、前記金車は、クローラ式であることを特徴とする。
本発明によれば、金車はクローラ式であるので、閉ループ状送電線を大きな曲率で方向転換させるに際して、取り扱いが容易となる。
本発明によれば、接続管の切断で短縮された長さ分の割線をジャンパー線に挿入するので、接続管の交換後においても送電線の長さが変更されない。
請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の送電線の改修方法において、前記既設の接続管を切断するときに短縮された送電線の長さ分の割線を、改修対象である送電線の径間に挿入する工程を含むことを特徴とする。
接続管の切断で短縮された長さ分の割線を送電線の径間に挿入するので、接続管の交換後においても送電線の長さが変更されない。
本発明によれば、同一回線の送電線を使用して改修を行うので、他の回線に影響を及ぼすことなく作業を行うことができる。
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載の送電線の改修方法において、前記閉ループ状送電線をなす2本の送電線が水平方向に並ぶよう、前記金車を配置することを特徴とする。
本発明によれば、改修対象の送電線の配置状態に応じて、金車を最良の姿勢とすることができる。
請求項9の発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載の送電線の改修方法において、前記閉ループ状送電線をなす2本の送電線が鉛直方向に並ぶよう、前記金車を配置することを特徴とする。
本発明によれば、改修対象の送電線の配置状態に応じて、金車を最良の姿勢とすることができる。
実施形態1に係る送電線の改修方法では、図1に示すように、複数の鉄塔11〜15に張り渡された長尺な送電線10のうち、2箇所の鉄塔13、14の径間に交換すべき接続管16が配置されている。ここで、接続管16が配置された送電線の両端をなす2本の鉄塔13、14のうち接続管の交換作業を行う鉄塔13を一方の鉄塔といい、もう一方の鉄塔14を他方の鉄塔という。
鉄塔13には、2つの碍子31、32が取り付けられている。送電線10は、各碍子31、32にそれぞれクランプ部材40、40を介して取り付けられる。クランプ部材40、40は送電線10を挟み込んで保持し、2つのクランプ部材40、40の間に配置される送電線はジャンパー線35を構成する。
このような構造を備えるクランプ部材40は、くさび42を緩めることにより、送電線10の所定位置に取り付けることができる。そのため、既設の送電線10に取り付けたクランプ部材40の位置を変更することができる。
なお、鉄塔に送電線を設置する構造は上記の例に限らない。例えば、圧縮引留クランプを使用して、所定長さの送電線の両端を碍子に取り付けて径間に張り渡し、鉄塔の両側に配置した碍子の間を張り渡した送電線とは別のジャンパー線で接続する構造とすることができる。
ここで、一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14に配置される機材、資材は大がかりなものではない。例えばウインチは、駆動用発電機と共に各鉄塔巡視用の歩行道(幅1m程度)を小型クローラ車などの運搬車で輸送でき、さらに、これらは鉄塔敷地内に収まる小面積(例えば50平方メートル(5m×10m))の敷地に設置できる。
接続管は、古い接続管と同じ構造を備える。すなわち、上述のとおりアルミ製及び鋼製のスリーブであり、送電線の2本の端部を挿入して圧着することにより、2本の送電線を接続する。また、仮ジョイント部材は、径間の両端部で鉄塔から切り離した2本の端部を接続して閉ループ状送電線とするための接続管である。送電線が銅系線であれば巻き付けグリップを、送電線がアルミ系線であれば延線クランプを使用する。
カムアロング本体55は、キャップ保持部56、57と、各キャップ保持部56、57から延設されたハンドル58、59とから構成される。キャップ保持部56、57は組み合わせた状態のキャップ51、52を挟み込んで保持できるよう、保持溝60、61が形成され、ヒンジ部62で開閉可能に連結されている。また、キャップ保持部56、57は、図4(b)に示すように、キャップ51、52を保持した状態で、締め付けボルト63、64で閉状態に固定するための、突起部65、66が形成されている。
ウインチは内燃機関、電動機などの動力を備えるものであるが、それほど大きな牽引力を必要としないため小型のもので足りる。このため、ウインチを鉄塔の敷地内に配置することができる。
まず、交換すべき接続管16が配置された送電線10の両端が接続された2本の鉄塔13、14を選定する。そして交換作業を一方の鉄塔13で行うものとし、一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14に上述した資材及び機材を配置する。ここでウインチは両鉄塔13、14の敷地内に配置する。
工程(b):図5(b)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔13において、送電線10と回線をなす3本の送電線から1本の送電線20を選択する。この送電線20は送電線10の下方に配置されている。送電線20は送電線10と同様の構造で鉄塔13に張られている。そして、送電線10、20をカムアロング50で把持し、カムアロング50のハンドル58、59に取り付けたワイヤロープ37をウインチで引っ張り、クランプ部材40(図2参照)をゆるめ、送電線10、20の張力を下げた後、クランプ部材40を外す。これにより送電線10、20が碍子31、32から外れる。改修対象以外の1本として選択する送電線は、同一回線のもの以外であってよい。この場合、使用する2本の送電線は上下方向以外、例えば水平方向に並設されることがある。さらに、選択した送電線の回線も停電する。また、新たな線を張り、これを利用することもできる。この場合、新たな線を張る手順が発生する。
工程(c):図5(c)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14において、ジャンパー線35をカッター36で切断する。その後、作業の邪魔にならないよう、接続管16の改修を行う径間側の碍子31を鉄塔13、14の腕金13a、14a側に寄せておく。
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14において、送電線10、20からクランプ部材40を外した状態となり、送電線10、20の各両端は、ワイヤロープ37で鉄塔13、14に取り付けられたカムアロング50で保持される。
工程(e):図6(e)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14に、クローラ金車70を取り付ける。実施形態1では、クローラ金車70を、2本の送電線10、20が水平方向に並ぶように配置している。なお、送電線の配置状態によって、クローラ金車70を送電線10、20が鉛直方向に並ぶように配置することができる。この設置方向は現場の状況により適宜選択することができる。
工程(f):図6(f)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14において、2本の送電線10、20の両端をそれぞれ仮ジョイント部材71で連結する。これにより、2本の送電線10、20は、閉ループ状送電線30を構成する。この状態で、カムアロング50は送電線10、20に取り付けられたままである。
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14において、クローラ金車70に閉ループ状送電線30を掛ける。また、一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14に、閉ループ状送電線30の一方側の送電線10をカムアロング50で引き寄せるための金車72を配置する。さらに、牽引側とするワイヤロープ37に延長ワイヤロープ38を取り付け、延長ワイヤロープ38の方向を金車72で下方に誘導して、地上に配置したウインチ39で牽引できるようにする。
工程(h):図7(h)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14に配置したウインチを駆動して閉ループ状送電線30の送電線10を引っ張り接続管16を一方の鉄塔13に近づける(図7(h)、図10(g)矢印A、B)。
工程(i):図7(i)、図10(i)参照
一方の鉄塔13においてクローラ金車70の手前側(クローラ金車70よりも径間側)で、接続管16の両側をカッター36で切断し、既設の接続管16を回収する。このとき、送電線10の部位のうち接続管16よりも径間側に位置する部位が、カムアロング50で保持された状態である。なお、図7(i)中の符号28は作業用はしごを示している。
一方の鉄塔13において、油圧圧縮機29を用いて新たな接続管26を圧縮して、2本の送電線10、20を後続し、再び閉ループ状送電線30とする。
工程(k):図8(k)、図10(k)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14で、ウインチ39を駆動して閉ループ状送電線30を引き、新しい接続管26を元に位置に戻す(図8(k)、図10(k)矢印C、D)。
工程(l):図8(l)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14で、閉ループ状送電線30を構成した仮ジョイント部材71を両鉄塔13、14に近づける。
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14で、送電線10、20をそれぞれクランプ部材40で碍子31に取り付ける。このとき、既設の接続管16を切断したとき短くなった長さだけ、クランプ部材40を外側(鉄塔13、14側)に移動して送電線10、20に固定する。これにより、送電線の径間長さは改修前と同じとなる。
工程(n):図9(n)参照
一方の鉄塔13及び他方の鉄塔14で、仮ジョイント部材71を取り外す。
工程(o):図9(o)参照
ジャンパー線35を接続管27で接続する。この際、既設の接続管16の交換で送電線10が短くなった分、ジャンパー線35内に切り取った長さ分の割線73を挿入する。割線73を挿入するときには、接続管27が2本になる。これにより送電線接続管の交換は完了する。
さらに、本発明は、圧縮引留クランプを使用して、所定長さの送電線の両端を碍子に取り付けて径間に張り渡し、鉄塔の両側に配置した碍子の間を張り渡した送電線とは別のジャンパー線で接続する構造の場合には、クランプ部材から取り外した2本の送電線を仮ジョイント部材71と及び延長用の送電線を接続して閉ループ状送電線を構成して実施形態1と同様に接続管を交換する。そして、径間の送電線に短縮した分の割線を接続して、径間の送電線の長さが変わらないようにする。この場合、径間の送電線には2つの接続管が配置されることになるが、強度性能、送電性能を満足させることができる。
Claims (9)
- 隣接する2本の鉄塔の径間に張り渡された送電線の一部分を改修する送電線の改修方法であって、
改修作業を行う一方の鉄塔と、他方の鉄塔の径間に張り渡された複数本の送電線から改修対象以外の1本の送電線を選択し、選択した送電線と改修対象である送電線の両端を前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔から切り離す工程と、
切り離した2本の送電線の各両端を前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔において、それぞれ仮ジョイント部材で接続して閉ループ状送電線を形成する工程と、
前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔にそれぞれ金車を配置する工程と、
前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔において、前記閉ループ状送電線を前記金車にそれぞれ掛け回す工程と、
前記閉ループ状送電線を循環駆動して、送電線を接続する既設の接続管を前記一方の鉄塔に近づける工程と、
前記一方の鉄塔において前記既設の接続管部分を改修する工程と、
前記閉ループ状送電線を循環駆動して、前記仮ジョイント部材を前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔に近づける工程と、
前記仮ジョイント部材を取り外す工程と、
前記仮ジョイント部材を取り外した2本の送電線を前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔に取り付ける工程と、
を備え、
前記改修する工程は、前記一方の鉄塔において前記既設の接続管を送電線から切り離す工程と、前記一方の鉄塔において切り離した送電線の前記既設の接続管部分を新たな接続管で接続する工程と、を含むことを特徴とする送電線の改修方法。 - 前記閉ループ状送電線の循環駆動は、前記一方の鉄塔の近くに配置したウインチで行うことを特徴とする請求項1に記載の送電線の改修方法。
- 前記閉ループ状送電線の循環駆動に際しては、前記金車に掛けられた前記閉ループ状送電線の一方側の送電線を把持具でつかんで行うものであり、
前記把持具は、送電線を両側から挟む挟持部と、この挟持部と送電線との間に配置されるくさび部材とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の送電線の改修方法。 - 前記金車は、クローラ式であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の送電線の改修方法。
- 前記既設の接続管を切断するときに短縮された送電線の長さ分の割線を、前記一方の鉄塔及び前記他方の鉄塔の少なくとも一方側のジャンパー線に挿入する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の送電線の改修方法。
- 前記既設の接続管を切断するときに短縮された送電線の長さ分の割線を、改修対象である送電線の径間に挿入する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の送電線の改修方法。
- 選択する送電線は、改修対象である送電線と回線を同一にする送電線のうちの1本であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の送電線の改修方法。
- 前記閉ループ状送電線をなす2本の送電線が水平方向に並ぶよう、前記金車を配置することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の送電線の改修方法。
- 前記閉ループ状送電線をなす2本の送電線が鉛直方向に並ぶよう、前記金車を配置することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の送電線の改修方法。
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