第1の実施の形態.
<全体構成>
図1に示すように、本ヒートポンプシステムは、複数の給湯部1A〜1Cを有する。複数の給湯部の各々は貯湯ユニットと少なくとも1台以上のヒートポンプユニットとを備える。図1の例示では、給湯部1Aは貯湯ユニット10Aとヒートポンプユニット20Aとを有し、給湯部1Bは貯湯ユニット10Bとヒートポンプユニット20Bとを有し、給湯部1Cは貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20C,20Dを有する。なお図1の例示では3台の給湯部が示されているものの、2台以上の給湯部が設けられていれば良い。また給湯部の各々において1台の貯湯ユニットに対して1台のヒートポンプユニット又は2台のヒートポンプユニットが設けられているが、1台以上のヒートポンプユニットが設けられればよい。
貯湯ユニット10A〜10C同士は互いに通信可能に接続され、また貯湯ユニット10A〜10Cの各々は自身に対応して設けられるヒートポンプユニットと互いに通信可能に接続される。図1の例示では貯湯ユニット10A,10Bはそれぞれヒートポンプユニット20A,20Bと通信可能に接続され、貯湯ユニット10Cはヒートポンプユニット20C,20Dと通信可能に接続される。
また図1の例示ではリモートコントローラ30が設けられている。リモートコントローラ30は貯湯ユニット10A〜10Cと通信可能に設けられる。
次に図2を参照して本ヒートポンプシステムの機械的な内部構成の一例を説明する。ここでは貯湯ユニット10A〜10Cは互いに同一の構成を有し、ヒートポンプユニット20A〜20Dは互いに同一の構成を有する。よって図2の例示では、代表的に貯湯ユニット10Cの内部構成とヒートポンプユニット20Cの内部構成とがより詳細に示されている。
貯湯ユニット10Cは貯湯タンク11を備えている。貯湯タンク11は、例えば円筒状に形成されており、例えば460L(L:リットル)の容量を有している。貯湯タンク11には湯水が蓄えられる。なお貯湯ユニット10A〜10Cの貯湯タンク11は互いに異なる容量を有していても良い。
貯湯タンク11の底面には、貯湯タンク11内に給水するための給水口11aが設けられている。この給水口11aは給水配管h1に接続されており、貯湯タンク11は給水配管h1を介して給水される。後述するように貯湯タンク11から出湯しても、上記の給水によって貯湯タンク11内は常に湯水で満たされる。
貯湯タンク11の上面には出湯口11dが設けられている。この出湯口11dは出湯配管h4に接続される。出湯配管h4は例えば蛇口、シャワー(不図示)に接続され、貯湯タンク11からの湯が供給される。図2の例示では、各貯湯ユニット10A〜10Dの貯湯タンク11は共通の出湯配管に接続されて、湯水が不図示の蛇口、シャワーなどに供給される。また図2の例示するように、混合弁34を設けても良い。貯湯タンク11からの湯水は、混合弁34で給水配管h1からの市水が所望の混合比で加わった上で、不図示の蛇口、シャワーなどに供給される。
貯湯タンク11の下部(図1の例示では底面)には吐出口11bが設けられている。この吐出口11bは吐出配管h2の一端に接続されており、吐出配管h2の他端は吐出配管h21,h22に接続される。言い換えれば、吐出配管h2は吐出配管h21,h22に分岐する。吐出配管h21,h22はそれぞれヒートポンプユニット20C,20Dにも接続される。ヒートポンプユニット20Cは吐出配管h2,h21を介して貯湯タンク11から湯水を受け取り、当該湯水を加熱する。ヒートポンプユニット20Dは吐出配管h2,h22を介して貯湯タンク11から湯水を受け取り、当該湯水を加熱する。
貯湯タンク11の例えば上面には入湯口11cが設けられている。この入湯口11cは入湯配管h3の一端に接続されており、入湯配管h3の他端は入湯配管h31,h32に接続される。入湯配管h31,h32はそれぞれヒートポンプユニット20C,20Dにも接続される。ヒートポンプユニット20Cは加熱した湯水を入湯配管h31,h3を介して貯湯タンク11へと戻す。ヒートポンプユニット20Dは加熱した湯水を入湯配管h32,h3を介して貯湯タンク11へと戻す。
図2の例示では、吐出配管h21,h22にはポンプ12C,12Dが設けられる。これらのポンプ12C,12Dは、上述の経路で湯水を流すためのものである。また図2の例示ではポンプ12C,12Dは貯湯ユニット10Cに設けられているが、ヒートポンプユニット20C,20Dにそれぞれ設けられていても良い。ここではポンプ12C,12Dは貯湯ユニット10Cに設けられる場合を例示する。
ヒートポンプユニット20Cは冷媒回路200を備えている。冷媒回路200は貯湯タンク11からの湯水を加熱する。より詳細には、冷媒回路200は熱交換器21,22と圧縮機23と膨張機構24とを備えている。これらは冷媒配管27によって接続される。
圧縮機23は吸入口23aと吐出口23bとを備え、吸入口23aから吸入した冷媒を圧縮して吐出口23bから吐出する。吸入口23aは熱交換器22の一端22aに接続され、吐出口23bは熱交換器21の端21aに接続される。熱交換器21の端21bと熱交換器22の他端22bとは膨張機構24を介して互いに接続される。
熱交換器21は端21d,21cにおいてそれぞれ吐出配管h21および入湯配管h31と接続され、湯水と冷媒との間で熱交換を行う。より詳細には圧縮機23によって圧縮された冷媒が熱交換器21において凝縮され、これに伴って発する熱量が湯水に与えられる。つまり熱交換器21は凝縮器として機能する。
膨張機構24は例えば電子膨張弁であって、熱交換器21からの冷媒を絞り膨張させて熱交換器22へと供給する。熱交換器22は冷媒と例えば外気との間で熱交換を行う。より詳細には膨張機構24からの冷媒が熱交換器22において蒸発し、これに伴って外気から熱量を吸収する。つまり熱交換器22は蒸発器として機能する。熱交換器22からの冷媒は再び圧縮機23によって圧縮されて冷媒回路を循環する。
図2の例示ではヒートポンプユニット2Cにはファン26が設けられる。ファン26は熱交換器22へと送風して熱交換器22の熱交換を促進させる。
また本ヒートポンプシステムには、貯湯ユニット10A〜10C毎に温度検出部(例えばサーミスタ)3,3A〜3E,25の一群が設けられる。例えば貯湯ユニット10Cに対応して設けられる温度検出部3,3A〜3E,25は、貯湯ユニット10Cの貯湯タンク11の湯量に対応する位置に設けられる。
図2の例示では温度検出部3は例えば貯湯タンク11の上部に設けられ、温度検出部3A〜3Eは例えば貯湯タンク11の側面において互いに高さの異なる位置に設けられる。温度検出部3A〜3Eはそれぞれ貯湯タンク11の上部からこの順で配置され貯湯タンク11内の湯水の温度を検出する。
各温度検出部3,3A〜3Eはそれぞれ、貯湯タンク11の残湯量K(例えばK=ゼロL)、残湯量A(例えばA=50L),残湯量B(例えばB=150L),残湯量C(例えばC=230L),残湯量D(例えばD=310L),残湯量E(例えばE=370L)に対応する高さ位置に配設されている。
また吐出配管h2(或いは吐出配管h21,h22)の所定の位置には温度検出部25が設けられる。この温度検出部25によって検出される温度が温度基準値Tref(例えば45℃〜60℃)よりも高ければ、貯湯タンク11中には温度基準値Trefよりも温度が高い湯のみが蓄えられることとなる。よって温度検出部25は、貯湯タンク11の容量と同じ残湯量F(例えばF=460L)に対応する位置に設けられる、と把握できる。
なお温度検出部は次のように設けられればよい。即ち、貯湯タンク11において高さの異なる複数の位置と吐出配管h2,h21,h22における任意の位置とを含む複数の位置のうち、少なくとも2つ以上の位置に、温度検出部を設ければよい。これによって、残湯量が異なる位置に温度検出部が設けられるからである。
入湯配管h31にはそれぞれ沸き上げ温度検出部(以下、単に温度検出部と呼ぶ)28が設けられる。温度検出部28はヒートポンプユニット20Cで加熱された後の湯水の温度(沸き上げ温度)を検出する。後述するように沸き上げ運転においては、当該沸き上げ温度と、当該沸き上げ温度についての目標値T*(例えば65℃〜90℃)との偏差が低減するように湯水が加熱される。
次に図3を参照して本ヒートポンプシステムの電気的な内部構成の一例を説明する。ここでは貯湯ユニット10A〜10Cは互いに同一の構成を有し、ヒートポンプユニット20A〜20Dは互いに同一の構成を有する。よって図3の例示では、代表的に貯湯ユニット10Cの内部構成とヒートポンプユニット20Cの内部構成とが示されている。
貯湯ユニット10Cは図3に示すようにタンク側制御部(以下、単に制御部とも呼ぶ)102を有し、ヒートポンプユニット20Cはヒートポンプ側制御部(以下、単に制御部とも呼ぶ)202を有する。図3に例示するように制御部102はポンプ12C,12Dを制御し、制御部202はそれぞれ圧縮機23、膨張機構24およびファン26を制御する。即ち、ヒートポンプ側制御部202は冷媒回路200を制御する。
タンク側制御部102は自身に対応するヒートポンプ側制御部202と互いに通信可能に接続される。つまり、貯湯ユニット10Cに属するタンク側制御部102は、貯湯ユニット10Cに対応して設けられるヒートポンプユニット20C,20Dに属するヒートポンプ側制御部202と、通信可能に接続される。図3の例示では、貯湯ユニット10Cに伝送部101が設けられ、ヒートポンプユニット20Cには伝送部201が設けられる。タンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202とは伝送部101,201を介して互いに通信する。そしてタンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202は互いに協動して貯湯ユニット10Cおよびヒートポンプユニット20Cを制御して沸き上げ運転を実行する。これによって、貯湯ユニット10Cの貯湯タンク11からの湯水が冷媒回路200によって加熱されて、再び貯湯タンク11に戻される。
また貯湯ユニット10Cに属するタンク側制御部102と、他の貯湯ユニット10A,10Bに属するタンク側制御部102とは互いに通信可能に接続される(図1も参照)。
また図3の例示では、タンク側制御部102には温度検出部3,3A〜3Eが接続され、ヒートポンプ側制御部202には温度検出部25が接続される。また温度検出部25によって検出される温度はヒートポンプ側制御部202によってタンク側制御部102へと送信される。よってタンク側制御部102は貯湯タンク11に貯湯された残湯量を把握することができる。図2も参照して、例えば温度検出部3Cによって検出された温度が予め定められた温度基準値Trefよりも大きく、温度検出部3Dによって検出された温度が温度基準値Trefよりも小さい場合、残湯量は温度検出部3Cが設けられる高さに対応する残湯量Dであると判断できる。
図1,3の例示では、例えば貯湯ユニット10A〜10Cにはリモートコントローラ30が接続される。リモートコントローラ30は伝送部31と入力部32とを備える。伝送部31は貯湯ユニット10A〜10Cの伝送部101と通信可能に接続されて、貯湯ユニット10A〜10Cと通信を行う。入力部32は、例えば貯湯タンク11に貯湯する湯の量を設定するための入力部である。ユーザは、例えば温度検出部3A〜3E,25に対応する残湯量A〜Fのうちから一つ選択することができる。なお入力部32は、複数の貯湯ユニット10A〜10C毎に異なる湯量を設定できてもよい。これによってユーザは各貯湯ユニット10A〜10C毎に異なる湯量を設定することができる。
リモートコントローラ30によって設定された湯量は伝送部31,101を介してタンク側制御部102へと送信され、例えば記憶部104に記憶される。
また入力部32は貯湯タンク11内の湯の温度についての温度基準値Trefを入力しても良い。リモートコントローラ30によって設定された温度基準値Trefは、伝送部31,101を介してタンク側制御部102へと送信され、例えば記憶部104に記憶される。
また例えば貯湯ユニット10Cの記憶部104には、貯湯ユニット10Cに対応するヒートポンプユニット20C,20Dについての通信アドレス、貯湯ユニット10A,10Bについての通信アドレス、及びヒートポンプユニット20C,20Dの台数などが格納される。他の貯湯ユニット10A,10Bについても同様である。
また図3に例示するように、タンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202にはそれぞれ異常検知部103,203が接続される。異常検知部103は貯湯ユニット10Cにおける沸き上げ運転に関する異常(以下、単に異常とも呼ぶ)を検知し、検知した異常情報をタンク側制御部102へと送信する。異常検知部203はヒートポンプユニット20Cにおける沸き上げ運転に関する異常を検知し、検知した異常情報をヒートポンプ側制御部202へと送信する。例えば異常検知部103はポンプ12C,12Dなどの異常を検知し、異常検知部203は圧縮機23、膨張機構24およびファン26などの異常を検知する。もちろん、これ以外の沸き上げ運転に関する異常が検知されても良い。例えば圧縮機23の吐出口23b側を流れる冷媒の圧力が基準値を超えたことを異常として検知してもよい。このような異常検知自体は公知であるので詳細な説明は省略する。
また異常検知部103,203は、例えばタンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202との間の通信異常も検知する。このような通信異常が生じた場合には、制御部102,202による協働動作ができず、沸き上げ運転の実行できないからである。この場合、異常検知部103,203はタンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202との機能の一部として実現されてもよい。例えばタンク側制御部102は、返信を要求する信号をヒートポンプ側制御部202へと送信し、所定期間の間にその返信を受信できないときに、通信異常と判断する。
このような異常検知部103,203からの異常情報(通信異常を除く)を受け取ったタンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202とは、例えば当該異常情報を互いに通信する。これによって、タンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202とは、貯湯ユニット10Cとこれに対応するヒートポンプユニット20C,20Dに生じた異常を了知することができる。或いは、ヒートポンプ側制御部202が異常情報をタンク側制御部102に送信し、タンク側制御部102が代表して異常情報を記憶しても良い。
なお通信異常を検知した場合は、その通信異常が検知されたタンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202との間の通信はできない。この場合、次のように異常情報を記憶すると良い。ここではタンク側制御部102が当該記憶を行う動作を統括する場合を例にとって説明する。この場合、異常検知部103がタンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202との間の通信異常を検知し、タンク側制御部102が記憶部104にこの通信異常を記憶する。
またタンク側制御部102同士はこれらの異常情報を互いに通信し、例えば各々の記憶部104に記憶する。これによってタンク側制御部102はシステム全体の異常情報を了知することができる。
また異常検知部103は、貯湯ユニット10Cのタンク側制御部102と、他の貯湯ユニット10A,10Bのタンク側制御部102との間の通信異常を検知する。かかる通信異常もタンク側制御部102の機能として実現されてもよい。また貯湯ユニット10Aの異常検知部103も同様に、貯湯ユニット10Aのタンク側制御部102と他の貯湯ユニット10B,10Cとの間の通信異常を検知する。貯湯ユニット10Cの異常検知部103についても同様である。これによって、各貯湯ユニット10A〜10Cのタンク側制御部102は相互間の通信異常を了知することができる。
以下では、異常検知部103,203によって検知される上述の異常を纏めて単に異常と呼ぶ。また貯湯ユニット10A〜10Cを区別しないときには、これらを貯湯ユニット10と呼び、ヒートポンプユニット20A〜20Dを区別しないときには、これらをヒートポンプユニット20と呼ぶ。
またここでは、タンク側制御部102とヒートポンプ側制御部202はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read-Only-Memory)、RAM(Random-Access-Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM(Electrically-Erasable-Programmable-ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御部102,202はこれに限らず、制御部102,202によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
<通常モード>
ヒートポンプユニット20A〜10Cは通常モードで沸き上げ運転を実行する。通常モードとは、全ての異常検知部103,203が異常を検知しないときに実行されるモードである。
この異常の判断として、例えばタンク側制御部102の各々は次の第1〜第4の判断を実行する。即ち第1の判断として、タンク側制御部102は自身が属する貯湯ユニット10に異常(対応するヒートポンプユニット20との通信異常を含む)が生じているかを判断する。第2の判断として、タンク側制御部102は自身に対応するヒートポンプユニット20に異常が生じているかを判断する。第3の判断として、タンク側制御部102は他のタンク側制御部102から異常情報が送信されているかを判断する。第3の判断によって、他の貯湯ユニット10とこれに対応するヒートポンプユニット20とに異常が生じているか、が判断される。第4の判断として、タンク側制御部102は他のタンク側制御部102との間に通信異常が生じていないか、を判断する。
第1乃至第4の判断のいずれにおいても異常が生じていないと判断された場合に、例えば現在時刻が予め設定された時刻になったことを契機として、タンク側制御部102の各々は自身に対応するヒートポンプ側制御部202へと沸き上げ運転を指示する。なお、現在時刻は周知の計時手段によって取得することができ、予め設定された時刻は例えば夜間の時刻である。夜間の電気代は昼間の電気代よりも安価に設定されるからである。
沸き上げ運転の指示を受けたヒートポンプ側制御部202は自身に対応する圧縮機23、膨張機構24およびファン26を駆動する。またタンク側制御部102の各々は自身に対応するポンプを駆動する。
また制御部102,202は、温度検出部28によって検出された沸き上げ温度と、当該沸き上げ温度についての目標値T*との偏差が低減するように、冷媒回路200およびおポンプを制御する。例えば制御部102は当該偏差が低減するように、ポンプを流れる湯水の流量を増大/低減させる。より詳細には沸き上げ温度が目標値T*よりも低いときに流量を低減させ、高いときに流量を増大させる。
なお目標値T*は記憶部104又はヒートポンプユニット20A,20Bに設けられる不図示の記憶部に格納される。目標値T*は例えばリモートコントローラ30などによって設定されてもよい。言い換えれば、入力部32はユーザによって目標値T*を入力してもよい。リモートコントローラ2によって設定された目標値T*は例えば伝送部301,101を介して制御部102へと送信され、記憶部104に記憶される。或いは目標値T*は予め設定されていてもよい。
このような沸き上げ運転によって、貯湯タンク11からの湯水が対応するヒートポンプユニット20の熱交換器21で加熱されて貯湯タンク11へと戻され、貯湯タンク11の残湯量が増大する。
そして予め設定された残湯量に対応する温度検出部(例えば温度検出部3Cであり、以下では通常時温度検出部と呼ぶ)が予め設定された温度基準値Trefよりも高い温度を検出したときに、タンク側制御部102の各々は自身に対応するヒートポンプ側制御部202へと、沸き上げ運転の終了を指示する。沸き上げ運転の終了指示を受け取ったヒートポンプ側制御部は、自身に対応する圧縮機23、膨張機構24およびファン26の制御を終了する。またタンク側制御部102の各々は、自身に対応するポンプの駆動を終了する。これにより沸き上げ運転が終了する。
なお通常時温度検出部としてどの温度検出部を採用するかは例えばユーザがリモートコントローラ4を介して設定してもよい。言い換えれば、入力部32は通常時温度検出部として温度検出部3,3A〜3Eのうちどれを採用するのかを入力することができてもよい。或いは、例えば制御部102が過去の湯の使用状況などに鑑みて設定してもよい。この場合、通常時温度検出部は所定期間毎に更新され得る。このような通常時温度検出部は例えば記憶部104に記憶される。
そして例えば夜間に蓄えられた貯湯タンク11内の少なくとも一部の湯は次の日で消費され、再びその日の夜間で湯が沸き上げられる。なお通常運転は夜間の実行に限らず日中に実行されてもよい。例えば日中において全ての貯湯タンク11内の湯が全て消費される、若しくは残湯量が非常に小さくなった場合に、通常モードで沸き上げ運転が実行されてもよい。これによって貯湯タンク11内の湯が不足する状態(いわゆる湯切れ)を抑制する。
なお、貯湯ユニット10A〜10Cに対して共通の位置に設けられる温度検出部(例えば温度検出部3C)を通常時温度検出部として採用してもよい。或いは、貯湯ユニット10A〜10Cに対する通常時温度検出部として、互いに異なる位置に設けられる温度検出部を採用しても良い。例えば貯湯ユニット10A,10Bについては温度検出部3Dが温度基準値Trefよりも高い温度を検出したときに沸き上げ運転を終了し、貯湯ユニット10Cについては温度検出部3Cが温度基準値Trefよりも高い温度を検出したときに沸き上げ運転を終了しても良い。
また通常運転において、貯湯ユニット10Cに対応するヒートポンプユニット20C,20Dの両方が沸き上げ運転を実行しなくてもよく、いずれか一方のみが沸き上げ運転を実行してもよい。ここでは代表的に、ヒートポンプユニット20C,20Dの両方が運転することを想定する。
<異常時モード>
ヒートポンプシステムに異常を検知した場合、異常が関与しない給湯部1A〜1Cの少なくとも一つにおいて沸き上げ運転を異常時モードで実行する。ここでいう異常時モードとは、異常検知部103,203のいずれか一つが異常を検知したときに実行されるモードである。以下、より詳細に説明する。
異常の有無は上述の第1から第4の判断によって判別される。そして、貯湯ユニット10のうち異常が検知されない貯湯ユニット10の制御部102の各々は、自身に対応し且つ異常が検知されていないヒートポンプユニット20の制御部202に対して沸き上げ運転を指示する。例えば図4では、ヒートポンプユニット20Bに異常が生じていることが図面上では×で示されている。よって貯湯ユニット10Aの制御部102がヒートポンプユニット20Aの制御部202へと沸き上げ運転を指示し、貯湯ユニット10Cの制御部102がヒートポンプユニット20C,10Dの制御部202へと沸き上げ運転を指示する。
そして、いずれも異常が生じていない貯湯ユニット10およびヒートポンプユニット20において、タンク側制御部102がポンプを駆動し、ヒートポンプ側制御部202が冷媒回路200を制御する。図4の例示では、貯湯ユニット10Aの制御部102がポンプ12Aを駆動し、ヒートポンプユニット20Aの制御部202が冷媒回路200を制御する。同様に、貯湯ユニット10Cの制御部102がポンプ12C,12Dを駆動し、ヒートポンプユニット20C,20Dの制御部102が冷媒回路200を制御する。
これによって、異常が生じていない貯湯ユニット10及びヒートポンプユニット20を用いて沸き上げ運転が実行される。
この異常時モードでは、通常モードよりも、沸き上げ運転を終了する条件となる湯量が大きい。以下、より詳細な動作について説明する。タンク側制御部102の各々は所定の温度検出部が温度基準値Trefよりも高い温度を検出したときに、対応するヒートポンプ側制御部202へと沸き上げ運転の終了を指示する。この所定の温度検出部(例えば温度検出部25であり、以下では異常時終了温度検出部と呼ぶ)が対応する残湯量は通常時温度検出部のそれよりも大きい。
なお貯湯ユニット10A〜10Cで採用される通常時温度検出部が互いに異なる場合、貯湯ユニット10A〜10Cで採用される異常時終了温度検出部の残湯量は、それぞれ貯湯ユニット10A〜10Cで採用される通常時温度検出部の残湯量よりも大きければよい。また異常時終了温度検出部としてどの温度検出部が採用されるかは、例えば予め設定されて各々の記憶部104に記憶される。この設定は例えば残湯量で設定されてもよい。
またこの設定はリモートコントローラ4によって実行されてもよい。言い換えれば、入力部402は異常時終了温度検出部として温度検出部3,3A〜3E,25のうちどれを採用するのかを入力することができてもよい。或いは、例えば貯湯ユニット10A〜10Cの各々が記憶部104に格納された通常時温度検出部を確認し、これよりも残湯量が大きい位置に設けられた温度検出部を異常時終了温度検出部として採用しても良い。要するに、異常が検知された時点で設定されている通常時温度検出部よりも湯量が大きい温度検出部を採用すればよい。
以上のように、貯湯ユニット10およびヒートポンプユニット20のいずれかに異常が生じた場合、正常な貯湯ユニット10およびヒートポンプユニット20を用いて沸き上げ運転を実行する。そして通常モードで採用された残湯量よりも大きい残湯量で沸き上げ運転が終了する。よって、貯湯タンク11に蓄えられる残湯量を通常モードの残湯量よりも増大させることができる。したがって異常が生じたことによる湯の供給能力の低下を抑制することができる。
例えば本ヒートポンプシステムとは異なって異常時モードで沸き上げ運転を実行しない場合であれば次の状況で湯の供給能力が不足しえる。即ち、例えば日中において湯の使用量が増大することを見越して沸き上げ運転を実行する場合がある。この場合、正常なヒートポンプ式加熱装置のみで沸き上げ運転を実行すれば、動作するヒートポンプ式加熱装置が少ないので残湯量を速やかに増大できない。このような状況で貯湯タンク11内の湯が急激に使用されると必要な残湯量を確保できない、いわゆる湯切れが生じ得る。一方、本ヒートポンプシステムでは異常が生じたときには貯湯タンク11内の残湯量を通常運転よりも増大させることができる。よって、例えば日中に沸き上げ運転を実行する場合、その実行初期の残湯量を増大できる。したがって湯切れを抑制することができる。
なお異常時モードにおいても、通常モードの目標値T*を採用してポンプおよび冷媒回路200を制御することが望ましい。つまり、温度検出部28によって検出される沸き上げ温度と、目標値T*との偏差が低減するように、ポンプおよび冷媒回路200を制御することが望ましい。沸き上げ温度についての目標値T*を増大させれば成績係数(COP)の低下を招きえるところ、このような低下を抑制することができるからである。
なお異常時モードでの沸き上げ運転は通常モードの実行中であっても実行される。例えば通常モードの実行中に貯湯ユニット10及びヒートポンプユニット20のいずれかに異常が検知されると、異常時モードでの沸き上げ運転が実行される。或いは貯湯ユニット10及びヒートポンプユニット20が停止中であっても、異常が検知されると異常時モードでの沸き上げ運転が実行される。
<ヒートポンプ式加熱装置の台数>
ここでは異常時モードとして、異常が検知されない貯湯ユニット10およびヒートポンプユニット20の組の全てが沸き上げ運転を実行している。しかしながら、異常が検知されない貯湯ユニット10の少なくとも一つと、これと対応して設けられ異常が検知されないヒートポンプユニット20の少なくとも一つとが、沸き上げ運転を実行すればよい。例えば図4では、給湯部1Aにおいて沸き上げ運転が実行されればよい。ただし、全てが実行すれば、速やかに湯量を増大できる。
<異常時モードでの沸き上げ運転の実行条件>
上述の例では、異常時モードの実行条件として異常の検知を採用している。ここでは実行条件として、さらに次で説明する温度検出部(以下、異常時実行温度検出部と呼ぶ)によって検出される温度も採用する。即ち、異常時実行温度検出部は、温度検出部3,3A〜3E,25のうち、例えば通常時温度検出部と異常時終了温度検出部との間に配置される温度検出部(上述のように通常時温度検出部として温度検出部3Cを採用し、異常時終了温度検出部として温度検出部25を採用したときには、例えば温度検出部3E)である。言い換えれば、通常時温度検出部が対応する残湯量よりも大きく、異常時終了温度検出部が対応する残湯量よりも小さい温度検出部が、異常時温度検出部として採用される。あるいは異常時実行温度検出部として異常時終了温度検出部を採用する。
異常時モードの実行条件として、まず上述のように異常の有無が判断される。そして、異常が検知されない貯湯ユニット10であって、異常が検知されないヒートポンプユニット20と対応して設けられるものに属する制御部102が、次の判断を実行する。即ち、当該制御部102は異常時実行温度検出部(例えば温度検出部3E)が検出した温度が温度基準値Trefよりも低いかどうかを判断する。肯定的な判断がなされたときのみ、当該貯湯ユニット10と当該ヒートポンプユニット20が沸き上げ運転を実行する。
例えば図4の例示において、ヒートポンプユニット20Bに異常が検知され、その時点で貯湯ユニット10Aにおける異常時実行温度検出部が温度基準値Trefよりも低い温度を検出し、貯湯ユニット10Cにおける異常時実行温度検出部が温度基準値Trefよりも高い温度を検出すれば、異常時モードとして貯湯ユニット10Aおよびヒートポンプユニット20Aのみが沸き上げ運転を実行する。
これによって異常時運転における不要な沸き上げ運転を抑制することができる。なぜなら、異常時実行温度検出部の検出温度が温度基準値Trefよりも大きければ、貯湯タンク11の残湯量は通常運転で得られる残湯量よりも大きいからである。この場合、必ずしも沸き上げ運転を必要としない。なお異常時実行温度検出部は異常時終了温度検出部に近いことが望ましい。これによって、さらに不要な沸き上げ運転を抑制できる。
また異常時実行温度検出部と異常時終了温度検出部とを異ならせれば、異常時モードによる沸き上げ運転の発停回数を低減できる。もしこれらが互いに一致していれば、下記のようにして頻回に発停が発生してしまう。即ち、少量の出湯が発生しても、あるいは出湯がなくても放熱によって異常時実行温度検出部の温度が低下しても、異常時実行温度検出部の検出温度に基づいて異常時運転が開始する。そして短時間で異常時運転が終了する。この繰り返しは頻回に発生しやすい。
一方で、上述のとおり異常時実行温度検出部(例えば温度検出部3E)が対応する残湯量は通常温度検出部(例えば温度検出部3C)のそれよりも大きい。したがって本動作によれば、通常モードによって得られる残湯量程度の湯が貯湯タンク11内に貯湯されているときであっても、その貯湯タンク11が属する貯湯ユニット10は異常時モードでの沸き上げ運転を適切に実行する。したがって必要な沸き上げ運転を適切に実行することができる。
なお異常時実行温度検出部としてどの温度検出部を採用するかは、異常時終了温度検出部と同様に例えば予め設定されて記憶部104に記憶される。設定方法についても異常時終了温度検出部と同様であるので繰り返しの説明を省略する。
<異常時運転の終了判定で用いられる温度検出部>
異常時モードにおいて、異常時終了温度検出部としては、最も大きい残湯量に対応する温度検出部(即ち温度検出部25)を採用することが望ましい。言い換えれば、残湯量が最も大きい位置に設けられる温度検出部を採用することが望ましい。ただし、吐出配管h2,h21,h22に温度検出部が設けられる場合、この温度検出部が対応する残湯量は貯湯タンク11の全量である。よって仮に吐出配管h2,h21,h22に複数の温度検出部が設けられる場合、この複数の温度検出部のうち任意の温度検出部を異常時終了温度検出部として採用しても良い。これによって、湯の供給能力を最も大きくできる。
またこれによって、ヒートポンプシステムに異常が生じたときに、貯湯タンク11内は全て湯で満たされるので、ユーザが異常時モードの動作を理解しやすいために受け入れやすく、湯切れが生じるかもしれないとの不安を最も解消できる。
<貯湯ユニットの電気的な構成の他の一例>
図5の貯湯ユニット10Cは、図3の貯湯ユニット10Cと比べて、伝送部105と制御部106とを更に備えている。制御部106は伝送部101,105を介して制御部102と通信可能に接続される。また制御部106は伝送部105を介してヒートポンプユニット20Dと通信可能に接続される。制御部106は制御部102とヒートポンプユニット20Dとの間の通信を仲介する。
また図5の例示では制御部102がポンプ12Cを制御し、制御部106がポンプ12Dを制御する。
このような貯湯ユニット10Cによれば、自身と接続されるヒートポンプユニット20の増減に対応しやすい。制御部102がポンプ12Cを制御する機能のみを有していたとしても、新たな制御部106を追加/削除することで、ヒートポンプユニット20の増減に対応することができるからである。
このようなヒートポンプシステムにおいて、制御部102と制御部106との間で通信異常が生じたときにも、異常時モードでの沸き上げ運転が実行されてもよい。この場合であってもヒートポンプユニット20Dを用いた沸き上げ運転が実行できないからである。
<リモートコントローラの通信異常>
貯湯ユニット10A〜10Cの各々とリモートコントローラ30との間の通信異常が生じたときにも、異常時モードでの沸き上げ運転が実行されてもよい。このような通信異常が生じれば、ユーザはヒートポンプシステムを操作できないので、残湯量を調整することができない。このような場合であっても異常時モードによって残湯量を増大できるので、湯切れを抑制することができる。
<具体的なフローチャートの一例>
次に異常時モードにおける貯湯ユニット10の各々の具体的な処理手順の一例について、図6を参照して述べる。なお図6の処理は貯湯ユニット10の各々が実行するものの、ここでは代表的に貯湯ユニット10Cが実行するものとして説明する。また以下では動作の主体をユニットとして説明するが、実際には制御部が実行する。
ステップS1にて、貯湯ユニット10Cは、自身に接続されるヒートポンプユニット20C,20Dの全てに異常が生じているかどうかを判断する。また貯湯ユニット10Cは自身に異常が生じているかどうかも併せて判断する。この判断は、ヒートポンプユニット20C,20Dからの異常情報と、異常検知部103からの異常情報とに基づいて判断される。なお貯湯ユニット10Cが図5の構成を有している場合には、制御部102,106との間の通信異常も判断してもよい。この点は以下で述べる異常の有無の判断において同様である。
ステップS1にて肯定的な判断がなされると、ステップS2にて貯湯ユニット10CはフラグF1をオンして他の貯湯ユニット10A,10Bに送信する。ただし貯湯ユニット10Cの通信異常により送信できないときはこの限りでは無い。フラグF1は、その貯湯ユニットに沸き上げ運転を実行できないことを示すフラグである。ステップS2の処理によって、貯湯ユニット10Cは、給湯部1Cによる沸き上げ運転ができないことを他の貯湯ユニット10A,10Bに通知する。
次にステップS10にて、貯湯ユニット10CはフラグF2をオフする。フラグF2はこの貯湯ユニット10Cに接続されたヒートポンプユニット20C,20Dに対して沸き上げ運転を指示するフラグである。フラグF2がオンしてこれをヒートポンプユニット20C,20Dに送信することで、ヒートポンプユニット20C,20Dが沸き上げ運転を実行する。よってステップS10ではヒートポンプユニット20C,20Dに沸き上げ運転を指示しない。
ステップS1にて否定的な判断がなされれば、ステップS3にて貯湯ユニット10CはフラグF1をオフして、他の貯湯ユニット10A,10Bに送信する。つまりステップS1にて否定的な判断がなされているので、貯湯ユニット10Cに異常が生じず、ヒートポンプユニット20C,20Dの少なくともいずれか一方には異常が生じていない。よって給湯部1Cによる沸き上げ運転は可能であることを、他の貯湯ユニット10A,20Bに通知している。
次にステップS4にて、貯湯ユニット10Cはヒートポンプユニット20C,20Dのいずれか一つで異常が生じているかどうかを判断する。ステップS4にて肯定的な判断がなされると、ステップS8にて貯湯ユニット10Cはヒートポンプユニット20C,20Dにおいて試運転完了情報があるかどうかを判断する。試運転完了情報とは、貯湯ユニット10と、これと接続されるヒートポンプユニットの各々とについて試運転を行い、問題なく試運転が完了したときに記録されるものであって、例えば記憶部104に格納される。
ステップS8にて否定的な判断がなされると、ステップS10を実行する。即ち、試運転完了情報がなければ貯湯ユニット10Cは沸き上げ運転を指示しない。試運転が完了していない状態で沸き上げ運転を実行すれば、不具合が発生する可能性があるからである。
ステップS8にて肯定的な判断がなされると、ステップS9にて貯湯ユニット10Cは温度検出部25が温度基準値Trefよりも高い温度を検出するかどうかを判断する。ステップS9にて肯定的な判断がなされると、ステップS10を実行する。即ち、貯湯ユニット10Cの貯湯タンク11には湯が全量蓄えられているので、貯湯ユニット10Cは沸き上げ運転を指示しない。
ステップS9にて否定的な判断がなされると、貯湯ユニット10CはフラグF2をオンして、ヒートポンプユニット20C,20Dのうち正常なヒートポンプに送信する。フラグF2は異常時モードでの沸き上げ運転を指示するフラグである。ステップS9によって給湯部1Cにおいて異常時モードでの沸き上げ運転が実行される。
つまり、ステップS4,S8,S9の処理によって次の場合に沸き上げ運転が実行される。即ち、ヒートポンプユニット20C,20Dのいずれか一方のみに異常が生じ、ヒートポンプについての試運転完了が終了しており、しかも貯湯タンク11の残湯量が沸き上げ運転を実行すべき残湯量であるときに、沸き上げ運転が実行される。
ステップS4にて否定的な判断がなされれば、ステップS5にて貯湯ユニット10Cは他の貯湯ユニット10A,10BについてのフラグF1がオンしているかどうかを判断する。つまり給湯部1A,1Bのいずれかで沸き上げ運転を実行できない異常が生じているかどうかを判断する。これは、例えば貯湯ユニット10Cが貯湯ユニット10A,10BへとフラグF1を要求することで実行される。
ステップS5にて肯定的な判断がなされるとステップS8を実行する。したがって、たとえ給湯部1Cに異常が生じていない場合であっても他の給湯部1A,1Bに異常が生じている場合には、試運転完了情報(ステップS8)と残湯量(ステップS9)とを条件として、給湯部1Cにおいて異常時モードでの沸き上げ運転が実行される。
ステップS5にて否定的な判断がなされると、ステップS6にて貯湯ユニット10Cはリモートコントローラ30との通信異常が生じているかどうかを判断する。この通信異常の有無は、例えば貯湯ユニット10Cがリモートコントローラ30へと返信を要求し、この要求を所定時間内に受信するか否かで判断することができる。
ステップS6にて肯定的な判断がなされると、ステップS8を実行する。したがって、給湯部1A〜1Cに異常が生じていない場合であってもリモートコントローラ30についての通信異常が生じている場合には、試運転完了情報(ステップS8)と残湯量(ステップS9)とを条件として、給湯部1Cにおいて異常時モードでの沸き上げ運転が実行される。
ステップS6にて否定的な判断がなされると、ステップS7にて貯湯ユニット10Cは自身と貯湯ユニット10A,10Bとの各々の間に通信異常が生じているかどうかを判断する。ステップS7にて肯定的な判断が実行されると、ステップS8を実行する。したがって、貯湯ユニット10Cと貯湯ユニット10A,10Bの各々と間に通信異常が生じている場合には、試運転完了情報(ステップS8)と残湯量(ステップS9)とを条件として、給湯部1Cにおいて異常時モードでの沸き上げ運転が実行される。
ステップS7にて否定的な判断がなされると、ステップS10を実行する。つまり、給湯部1A〜1Cには異常が生じておらず、またリモートコントローラ30と貯湯ユニット10Cとの間の通信異常も生じていない場合には、貯湯ユニット10Cは異常時モードでの沸き上げ運転を指示しない。
ステップS10,S11の実行後に再びステップS1を実行する。
図6のステップS1〜S11は繰り返し実行されるので、ステップS1の時点で以前に実行されたステップS11によってフラグF2がオンしている場合もある。この場合、ステップS9にて温度検出部25が温度基準値Trefよりも高い温度を検出すると、ステップS10にて異常時モードにおける沸き上げ運転が終了する。よって、ステップS9は異常時モードでの終了条件とも把握できる。
なお図6の例示では、残湯量についての沸き上げ運転の実行条件と終了条件とが同一である(ステップS9)。ただしこれに限らず、実行条件を異ならせてもよい。これは例えば図6のステップS9,S11(図6で破線囲みの部分)を図7に示す処理に置き換えることで実現される。
図6におけるステップS8にて否定的な判断がなされると、図7におけるステップS90にて、貯湯ユニット10CはフラグF2がオンしているかどうかを判断する。ステップS90にて肯定的な判断がなされれば、ステップS91にて貯湯ユニット10Cは異常時終了温度検出部(例えば温度検出部25)によって検出される温度が温度基準値Trefよりも高いかどうかを判断する。つまり、既にフラグF2がオンしていれば沸き上げ運転が実行されているので、終了判定としてステップS91を採用している。このステップS91にて否定的な判断がなされれば、再び図6のステップS1を実行し、肯定的な判断がなされれば、ステップS10にてフラグF2をオフして沸き上げ運転の終了を指示する。その後、再びステップS1を実行する。
ステップS90にて否定的な判断がなされれば、ステップS92にて貯湯ユニット10Cは異常時実行温度検出部(例えば温度検出部3E)によって検出される温度が温度基準値Tref以下であるかどうかを判断する。つまりフラグF2がオフしていれば沸き上げ運転を実行していないので、沸き上げ運転の実行判定としてステップS92を採用している。
ステップS92にて否定的な判断がなされれば、再び図6のステップS1を実行し、肯定的な判断がなされれば、ステップS11にて貯湯ユニット10CはフラグF2をオンして沸き上げ運転を指示する。その後、再びステップS1を実行する。
第2の実施の形態.
第2の実施の形態では、貯湯ユニットとヒートポンプユニットとを繋ぐ吐出配管および入湯配管の誤配管を検知することを目的とする。以下では3つの技術について記載する。
<第1技術>
ここでは少なくとも一つの貯湯ユニットと、複数のヒートポンプユニットが設けられるヒートポンプシステムを想定する。このようなヒートポンプシステムにおいて、一つの貯湯ユニットと、これと対応する一つのヒートポンプユニットとを用いて、沸き上げ運転を実行する。例えば図1,2において、貯湯ユニット10A及びヒートポンプユニット20Aのみを用いて沸き上げ運転を実行する。つまり他の貯湯ユニット10B,10Cとヒートポンプユニット20B〜10Dは沸き上げ運転を実行しない。
貯湯ユニット10Aとヒートポンプユニット20Aとが正しく接続されていれば、この沸き上げ運転によって貯湯ユニット10Aの貯湯タンク11の湯量は増大する。一方で、貯湯ユニット10Aとヒートポンプユニット20Aとが誤って接続されていれば、貯湯ユニット10Aの貯湯タンク11の湯量は増大しない。したがって湯量を検知することで誤配管を検出できる。例えばタンク側制御部102が温度検出部3,3A〜3E,25から沸き上げ運転前の湯量を検出し、同様に温度検出部3,3A〜3E,25によって沸き上げ運転中の湯量を検出し、沸き上げ運転前からの湯量の増大を検出する。そして、この湯量が増大していない場合に、タンク側制御部102は貯湯ユニット10Aとヒートポンプユニット20Aとの間に誤配管が生じていると判断する。
続けて、貯湯ユニット10Bとヒートポンプユニット20Bとの間の接続の正否を判断し、その後、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Cとの間の接続の正否を判断する。その後、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Dとの間の接続の正否を判断する。
以上のように順次に、一つの貯湯ユニットと一つのヒートポンプユニットを用いて沸き上げ運転を実行し、その都度、接続の正否を判断する。このようにして接続の正否を判断することで、複数の貯湯ユニットと複数のヒートポンプユニットとを用いて同時に沸き上げ運転を実行する場合に比べて、以下のような誤判断を防止することができる。
図8に例示するヒートポンプシステムにおいては、図2の例示と比較して、貯湯ユニット10Aに接続される入湯配管h3がヒートポンプユニット20Bに接続され、貯湯ユニット10Bに接続される入湯配管h3がヒートポンプユニット20Aに接続される。
このようなヒートポンプシステムにおいて、貯湯ユニット10A,10Bとヒートポンプユニット20A,20Bを用いて沸き上げ運転すると、貯湯ユニット10Aの貯湯タンク11Aから吐出配管h2を介してヒートポンプユニット20Aに湯水が供給され、ヒートポンプユニット20Aで加熱された湯水が入湯配管h3を介して、貯湯ユニット10Bの貯湯タンク11Bへと供給される。同様に、貯湯タンク11Bから吐出配管h2を介してヒートポンプユニット20Bへと供給され、ヒートポンプユニット20Bで加熱された湯水が入湯配管h3を介して貯湯タンク11Aへと供給される。この場合、誤配管が生じているにもかかわらず、貯湯タンク11A,11Bの湯量が増大するので、誤配管を検出できない。
一方で本第1技術によれば、貯湯ユニット10Aとヒートポンプユニット20Aとのみを用いて沸き上げ運転を実行して、接続の正否を判定する。よって、このような誤配管も検出できる。
また図8の例示では、ヒートポンプユニット20Dに接続されるべき吐出配管h22がヒートポンプユニット20Cに接続され、ヒートポンプユニット20Cに接続されるべき吐出配管h21がヒートポンプユニット20Dに接続されている。
さて第1技術とは異なって、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20C,20Dとを用いて沸き上げ運転を実行すると、貯湯ユニット10Cの貯湯タンク11Cからそれぞれ吐出配管h21,h22を介してヒートポンプユニット20D,20Cに湯水が供給され、ヒートポンプユニット20C,20Dで加熱された湯水が入湯配管h31,h32を介して貯湯タンク11Cへと供給される。この場合、誤配管が生じているにもかかわらず、貯湯タンク11Cの湯量が増大するので、誤配管を検出できない。
一方で第1技術によれば、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Cのみを用いて沸き上げ運転を実行して、接続の正否を判定する。この場合、ヒートポンプユニット20Cに対応するポンプ12Cが駆動し、貯湯タンク11Cからの湯水はヒートポンプユニット20Dへと供給される。ヒートポンプユニット20Dは湯水を加熱しないので、ヒートポンプユニット20Dからの湯水はその温度を高めることなく、入湯配管h32を介して貯湯タンク11Cに供給される。したがって、貯湯タンク11Cの湯量が増大しないので誤配管が検出される。
なお正しい配管接続であればヒートポンプユニット20Cに供給される湯水が、図8の例示ではヒートポンプユニット20Cに供給されない。よってヒートポンプユニット20Cの沸き上げ運転中に湯水の供給の有無を検知する検知部を設ければ、当該検知部によっても誤配管を検出することが可能である。このような検知部は公知であるため詳細は省略する。
誤配管が検出された場合は、作業員へと報知することが望ましい。例えば、リモートコントローラ30に表示部を設け、当該表示部に誤接続が生じていること、及び誤接続が生じている貯湯ユニットとヒートポンプユニットとを表示する。
<第2技術>
図9の例示では、ヒートポンプシステムは、貯湯ユニット10A,10Bと、これらに対応して設けられるヒートポンプユニット20A,20Bとを備えている。図9の例示では、貯湯ユニット10A,10Bとヒートポンプユニット20A,20Bは正しく接続されている。
貯湯ユニット10Aの貯湯タンク11Aは、その上部において入湯配管h24Aの一端に接続され、その下部において第二入湯配管h23Aの一端に接続される。入湯配管h23A,h24Aの他端は三方切替弁14Aに接続される。三方切替弁14Aは入湯配管h25Aを介してヒートポンプユニット20Aに接続される。三方切替弁14Aは入湯配管h25Aを入湯配管h23A,h24Aと選択的に接続する。また貯湯タンク11Aは、その底面において吐出配管h3Aと接続され、吐出配管h3Aを介してヒートポンプユニット20Aに接続される。
貯湯ユニット10Bの貯湯タンク11Bは、その上部において入湯配管h24Bの一端に接続され、その下部において第二入湯配管h23Bの一端に接続される。入湯配管h23B,h24Bの他端は三方切替弁14Bに接続される。三方切替弁14Bは入湯配管h25Bを介してヒートポンプユニット20Bに接続される。三方切替弁14Bは入湯配管h25Bを入湯配管h23B,h24Bと選択的に接続する。また貯湯タンク11Bは、その底面において吐出配管h3Bと接続され、吐出配管h3Bを介してヒートポンプユニット20Bに接続される。
三方切替弁14A,14Bは例えば貯湯ユニット10A,10B(より詳細にはこれらに属するタンク側制御部102)によって制御される。なおここでは三方切替弁14Aは制御信号を受け取らない状態で、入湯配管h23A,h25Aを接続する。三方切替弁14Bについても同様である。
このようなヒートポンプシステムによれば、貯湯タンク11A,11Bに対して湯を供給する位置を選択することができる。
図10は図9のヒートポンプシステムにおいて誤接続が生じた場合の一例を示している。図10の例示では、ヒートポンプユニット20Aに接続されるべき入湯配管h25Aがヒートポンプユニット20Bに接続される。またヒートポンプユニット20Bに接続されるべき入湯配管h25Bがヒートポンプユニット20Aに接続される。
本ヒートポンプシステムにおいても、第1技術と同様に、一つの貯湯ユニットと一つのヒートポンプユニットとを用いて沸き上げ運転を実行し、接続の正否を判定する。例えば三方切替弁14Aを制御して入湯配管h25Aを入湯配管h24Aに接続し、貯湯ユニット10Aとヒートポンプユニット20Aとを用いて沸き上げ運転を実行する。このとき図9の例示では、貯湯タンク11Aからの湯水がヒートポンプユニット20Aで加熱されて貯湯タンク11Aへと戻る。よって貯湯タンク11Aの湯量は増大する。
一方で、図10の例示では、貯湯タンク11Aからの湯水がヒートポンプユニット20Aで加熱され、入湯配管h25B,h23Bをこの順で介して貯湯タンク11Bに供給される。このとき貯湯タンク11Bの下部における湯水の温度が増大する。そこで、第2技術においては貯湯タンク11Bの下部に設けられる温度検出部(不図示)が、この湯水の温度の増大を検出したことを以て誤接続と判定する。これは、貯湯ユニット10Bに属するタンク側制御部102が、貯湯ユニット10Aに属するタンク側制御部102へと、湯水の温度が増大した旨を通知することで、貯湯ユニット10Aに属するタンク側制御部102が誤接続を認識することができる。
以上のように第2の技術によれば、沸き上げ運転を実行する貯湯ユニットとは別の貯湯ユニットに属する貯湯タンクの湯水の温度の増大を検知する。したがって、ヒートポンプユニットに接続されるべき入湯配管に誤接続が生じていることを判断でき、またその入湯配管がどの貯湯ユニットに接続されているのかを知ることができる。即ち、湯水の温度が上昇した貯湯タンクを有する貯湯ユニットに、この入湯配管が接続されていることが分かる。
<第3技術>
図11の例示では、貯湯ユニット10Cに対応して2つのヒートポンプユニット20C,20Dが設けられており、誤接続が生じている。吐出配管h21は正しく接続されており、ポンプ12Cとヒートポンプユニット20Cとを接続する。なお図11の例示では、貯湯タンク11Cはその底面において2本の吐出配管と接続されており、そのうちの1本の吐出配管がポンプ12Cと接続され、残りの吐出配管がポンプ12Dと接続される。
入湯配管h31はヒートポンプユニット20Aと正しく接続されているものの、貯湯ユニット10Cと誤って接続されている。より詳細には入湯配管h31がポンプ12Dに接続されている。入湯配管h32は正しく接続されており、入湯配管h3とヒートポンプユニット20Dとを接続する。吐出配管h22はヒートポンプユニット20Dと正しく接続されているものの、貯湯ユニット10Cと誤って接続されている。より詳細には吐出配管h22が入湯配管h3に接続される。
このような接続関係において、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Cとを用いて沸き上げ運転を行った場合を考察する。このときポンプ12Cが動作する。したがって、貯湯タンク11Cからの湯水が吐出配管h21を介してヒートポンプユニット20Cに供給される。ヒートポンプユニット20Cは動作しているので、供給された湯水を加熱する。ヒートポンプユニット20Cで加熱された湯水は入湯配管h31を流れてポンプ12Dを通過し、その後、貯湯タンク11Cの底面から貯湯タンク11Cへと戻る。この場合、貯湯タンク11Cの湯量が増大するので、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Cとの間の接続は正しいと判断される。
次に貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Dとを用いて沸き上げ運転を実行する。このとき、ポンプ12Dが動作する。したがって、貯湯タンク11Cからの湯水が入湯配管h31を介してヒートポンプユニット20Cに供給される。ヒートポンプユニット20Cは動作していないので湯水は加熱されない。ヒートポンプユニット20Cからの湯水は吐出配管h21を流れてポンプ12Cを通過し、その後、貯湯タンク11Cの底面から貯湯タンク11Cへと戻る。この場合、貯湯タンク11Cの湯量は増大しないので、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Dとの間に誤接続が生じていると判断される。
そして誤接続を作業員に報知する。誤接続を認識した作業員は貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20C,10Dとの誤接続を修正する。
さて、再び接続の正否を判定するに際して、既に正しいと判断された貯湯ユニット10とヒートポンプユニット20Cとの間の接続の正否を判定せずに、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Dとの接続の正否を判定することを考える。この場合、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Cとの間の接続の正否を適切に判定しないまま、作業を終了することとなる。
そこで第3技術においては最初から接続の正否の判定をやり直す。つまり図11の例示では、貯湯ユニット10Cとヒートポンプユニット20Cとの接続の可否を再度判定する。これによって全ての貯湯ユニットと全てのヒートポンプユニットとの間の接続の正否を適切に判定することができる。