以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子1は、平面視略台形の形状を有するミラー11と、このミラー11の下底11aに一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー11の上底11bに一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
このようなマイクロミラー素子1は、例えば、基板やケースなどの互いに平行に配設された一対の支持部材(図示せず)と、一端が一方の支持部材に接続され、他端に第1のばね部材12a〜12mの他端が接続された第1の板ばね部材(図示せず)と、一端が他方の支持部材に接続され、他端に第2のばね部材13a〜13nの他端が接続された第2の板ばね部材(図示せず)とにより支持されている。また、第1の板ばね部材および第2の板ばね部材の下方、すなわちミラー11の法線方向には、電極が対向配置されている。
便宜上、以下においては、第1のばね部材12a〜12mと第2のばね部材13a〜13nとを結ぶ方向を「Y軸方向」、ミラー11の平面に沿いかつY軸方向に直交する方向を「X軸方向」、ミラー11の法線方向、すなわちX軸方向およびY軸方向に直交する方向を「Z軸方向」ともいう。
ミラー11は、平面視略台形に形成されており、一方の面には反射面(図示せず)が形成されている。また、ミラー11の台形の下底に相当する第1の辺(以下、「下底」と言う。)11aには、第1のばね部材12a〜12mが接続されている。また、ミラー11の台形の上底に相当する第2の辺(以下、「上底」と言う。)11bには、第2のばね部材13a〜13nに接続されている。このようなミラー11は、ミラー11の高さ、すなわち下底11aと上底11bの距離をL、第1のばね部材12a〜12mのばね定数、すなわちZ軸方向の負荷と変位との関係を示す係数を合成した合成ばね定数をka、第2のばね部材13a〜13nの各ばね定数を合成した合成ばね定数をkb(≠ka)としたとき、上底11bから重心GまでのX軸方向における距離pは下式(1)を満たすように設定されている。このようにミラー11を形成する理由については後述する。
p=kaL/(ka+kb) ・・・(1)
第1のばね部材12a〜12mは、ミラー11の重心に近い側に接続されるものであり、本実施の形態においては一端がミラー11の下底11aに接続されている。また、他端は、支持部材(図示せず)に接続されている。このような第1のばね部材12a〜12mは、Y軸方向に延在するトーションばねなどの公知のばねから構成されている。また、第1のばね部材12a〜12mは、Y軸方向に所定間隔離間して互いに平行に配設されている。
第1のばね部材12a〜12mのばね定数を合成した合成ばね定数kaは、第1のばね部材12aのばね定数をka1、第1のばね部材12bのばね定数をka2、第1のばね部材12mのばね定数はkaNとすると、下式(2)に示すように、各ばね定数の和で表される。なお、第1のばね部材12a〜12mの数量は適宜自由に設定することができる。
ka=ka1+ka2+・・・+kaM ・・・(2)
第2のばね部材13a〜13nは、ミラー11の重心から遠い側に接続されるものであり、本実施の形態においては一端がミラー11の上底11bに接続されている。なお、他端は、支持部材(図示せず)に接続されている。また、第2のばね部材13a〜13nは、Y軸方向に所定間隔離間して互いに平行に配設されている。このような第2のばね部材13a〜13nは、Y軸方向に延在するトーションばねなどの公知のばねから構成されている。
本実施の形態において、第2のばね部材13a〜13nのばね定数を合成した合成ばね定数kbは、第2のばね部材13aのばね定数をkb1、第2のばね部材13bのばね定数をkb2、第2のばね部材13nのばね定数はkbMとすると、下式(3)に示すように、各ばね定数の和で表される。この第2のばね部材13a〜13nの合成ばね定数kbは、上述した第1のばね部材12a〜12mの合成ばね定数kaと異なっている。なお、第2のばね部材12a〜12mの数量は適宜自由に設定することができる。
kb=kb1+kb2+・・・+kbN ・・・(3)
このようなマイクロミラー素子1は、公知のLSI(Large Scale Integration)製造技術やマイクロマシニング技術によって形成することができる。
次に、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1の動作について説明する。
このようなマイクロミラー素子において、ミラー11の回動角度を変える場合、第1の板ばね部材および第2の板ばね部材を接地し、これらに対向配置された電極に選択的に正または負の電圧を与えることで第1の板ばね部材または第2の板ばね部材を静電引力で吸引させる。すると、第1の板ばね部材や第2の板ばね部材がZ軸方向に移動するので、これらに接続された第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nを介してミラー11がY軸に沿った回動軸回りに回動することとなる。
次に、ミラー11の重心の設定原理について説明する。
図2に示す対比例としてのマイクロミラー素子100は、中心を通るY軸に沿った軸yに対して線対称に形成された平面視長方形のミラー101と、対向する辺の一方の辺に接続された第1のばね部材12a〜12mと、他方の辺に接続された第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
このマイクロミラー素子100では、ミラー101に接続された第1のばね部材12a〜12mと第2のばね部材13a〜13nとの合成ばね定数が異なるが、ミラー101の重心が中心に設定されている。このため、光スイッチが振動や衝撃を受けることにより加速度が印加されると、ミラー101の回動軸回りの回転モーメントが釣り合っていないので、ミラー101が回動するため、このミラー101により反射される光信号の強度が変動してしまうことがあった。図3に示すように、回動角度の変動量はミラーに加わる加速度の大きさに比例している。このため、大きな加速度が加わるとミラー101が大きく回動してしまうので、例えば、ミラー101がマイクロミラー素子100の他の構成要素と衝突し、場合によってはこれらが破損してしまうこともあった。
これに対し、本実施の形態では、振動や衝撃を受けることにより加速度が印加されても、ミラー11の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うように重心の位置が調整された形状にミラー11を形成している。例えば、図4に示すように、マイクロミラー素子100に鉛直下方への加速度aが印加され、ミラー11の上底11bが通常状態からZ軸方向に距離zだけ移動し、かつ、ミラー11がY軸方向に沿った回動軸回りに角度θだけ回動したものと仮定する。このとき、ミラー11における力の釣り合いは下式(4)、回転モーメントの釣り合いは下式(5)で表される。なお、下式(4)において、Faは、ミラー11の下底11aにかかる力で、第1のばね部材12a〜12mの合成ばね定数kaと下底11aの変位量すなわちLsinθとの積で表される。同様に、Fbは、ミラー11の上底11bにかかる力で、第2のばね部材13a〜13nの合成ばね定数kbと上底11bの変位量、すなわち距離zの積で表される。また、gは重力加速度、mはミラー11の質量である。さらに、下式(5)において、pは、上底11bから重心までの距離である。
m(a+g)=Fa+Fb ・・・(4)
p・m(a+g)=L・Fa ・・・(5)
マイクロミラー素子1が加速度が印加されたとき、ミラー11が回動しない、すなわちθ=0となるときの上底11bから重心までの距離pは上式(1)、すなわち、kaL/(ka+kb)となる。そこで、本実施の形態では、その式(1)を満たすようにミラー11を形成する。これにより、ミラー11の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子1に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー11にはミラー11のY軸に沿った回動軸回りの変位、すなわち回動変位が発生しないこととなる。このように、ミラー11の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー11が回動しないため、例えば、ミラー11が大きく回動してマイクロミラー素子1の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子1の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ミラー11の上底11bからミラー11の重心Gまでの距離pが、kaL/(ka+kb)を満たすようにミラー11を形成することにより、ミラーの重心の位置が、ミラー11が振動や衝撃を受けて加速度が印加されてもミラー11に作用する回転モーメントが釣り合う位置になるので、ミラー11が回動することを防ぐことができる。
なお、本実施の形態において、第1のばね部材12a〜12mと第2のばね部材13a〜13nの数量が異なる場合を例に説明したが、それらの合成ばね定数が異なるのであれば、第1のばね部材12a〜12mと第2のばね部材13a〜13nの数量は同じとするようにしてもよい。
また、本実施の形態において、ミラー11の平面形状が略台形の場合を例に説明したが、上式(1)を満たすのであればミラー11の平面形状は略台形に限定されず、適宜自由に設定することができる。また、ミラー11の断面形状についても、上式(1)を満たすのであれば、適宜自由に設定することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と、ミラーの平面形状を異ならせたものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、適宜説明を省略する。
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロミラー素子2は、基部22およびこの基部22に接続されたバランサ部23を備えたミラー21と、このミラー21の基部22に一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー21の基部22に一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
このようなマイクロミラー素子2は、例えば、基板やケースなどの互いに平行に配設された一対の支持部材(図示せず)と、一端が一方の支持部材に接続され、他端に第1のばね部材12a〜12mの他端が接続された第1の板ばね部材(図示せず)と、一端が他方の支持部材に接続され、他端に第2のばね部材13a〜13nの他端が接続された第2の板ばね部材(図示せず)とにより支持されている。これにより、通常、マイクロミラー素子2は、ミラー21の平面と第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nの軸線とが同一平面上に位置するように支持されている。また、第1の板ばね部材および第2の板ばね部材の下方、すなわちZ軸方向には電極が対向配置されている。
ミラー21は、平面視略長方形の基部22と、この基部22に連結された2つのバランサ部23とを備えている。
基部22は、長方形の第1の辺(以下、「一辺」と言う。)22aに第1のばね部材12a〜12mが接続され、一辺22aと向かい合う長方形の第2の辺(以下、「他辺」と言う。)22bに第2のばね部材13a〜13nが接続されている。また、一辺22aの両端には、連結部24を介して、バランサ部23が連結されている。
バランサ部23は、平面視略矩形の形状を有し、一辺22aからX軸方向に離間して配置されている。このようなバランサ部23は、連結部24により基部22に連結されている。
連結部24は、一端が基部22の一辺22aの一方の端部、他端がバランサ部23に接続され、基部22の対角線方向に延在する棒状の部材から構成されている。
このようなバランサ部23を設けてミラー21の重心を調整することにより、ミラー21は、他辺22bから重心GまでのX軸方向に沿った距離pが上式(1)、すなわち、kaL/(ka+kb)を満たすようにされている。これにより、ミラー21の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子2に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー21にはミラー21の回動変位が発生しないこととなる。したがって、ミラー21の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー21が回動しないため、例えば、ミラー21が大きく回動してマイクロミラー素子2の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子2の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、バランサ部23を設けて、ミラー21の他辺22bからミラー21の重心Gまでの距離pが、kaL/(ka+kb)を満たすようにミラー21を形成することにより、ミラー21が振動や衝撃を受けて加速度が印加されても、ミラー21に作用する回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー21が回動することを防ぐことができる。
なお、本実施の形態において、バランサ部23を2個設ける場合を例に説明したが、バランサ部23を設ける数量については2個に限定されず、適宜自由に設定することができる。また、バランサ部23の平面形状についても、平面視略矩形に限定されず、適宜自由に設定できることは言うまでもない。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第2の実施の形態におけるバランサ部23の重心位置をより明確に規定するものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同等の構成要素については同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。
図7に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子2’は、基部22および連結部24を介して基部22に接続されたバランサ部23を備えたミラー21と、このミラー21の基部22に一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー21の基部22に一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
このようなマイクロミラー素子2’において、X軸方向における、他辺22bからミラー21の重心G1までの距離pが上式(1)を満たすとき、バランサ部23の重心G2と基部22の一辺22aとの距離qは次のように求められる。
例えば、マイクロミラー素子2’に鉛直下方への加速度aが印加され、ミラー21の基部22における他辺22bが通常状態からZ軸方向に距離zだけ移動し、かつ、基部22がY軸に沿った回動軸回りに角度θだけ回動したものと仮定する。このとき、ミラー21における力の釣り合いは下式(6)、回転モーメントの釣り合いは下式(7)で表される。なお、下式(6)において、Faは、一辺22aに係る力で、第1のばね部材12a〜12mの合成ばね定数kaと一辺22aの変位量すなわちLsinθとの積で表される。同様に、Fbは、第2のばね部材13a〜13nの合成ばね定数kbと他辺22bの変位量、すなわち距離zの積で表される。また、gは重力加速度、mは基部22の質量、m’はバランサ部23の質量である。また、基部22のX軸方向における重心G3は、一辺22aからL/2の位置である。
(m+m’)(a+g)=Fa+Fb ・・・(6)
qm’(a+g)+Fb・L=L/2・m(a+g) ・・・(7)
マイクロミラー素子2’が加速度が印加されたとき、ミラー21が回動しない、すなわちθ=0となるときのバランサ部23の重心G1と基部22の一辺22aとの距離qは、上式(6)、(7)から下式(8)で表される。
q={L/(ka+kb)}{(m/2m’)(ka−kb)−kb} ・・・(8)
この上式(8)を満たすようにバランサ部23の重心位置を設定することにより、ミラー21の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子2’に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー21には回動変位が発生が発生しないこととなる。したがって、ミラー21の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー21が回動しないため、例えば、ミラー21が大きく回動してマイクロミラー素子2の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子2の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、バランサ部23を設けて、バランサ部23の重心G1と基部22の一辺22aとの距離qが{L/(ka+kb)}{(m/2m’)(ka−kb)−kbを満たすようにミラー21を形成することにより、ミラー21が振動や衝撃を受けて加速度が印加されても、ミラー21に作用する回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー21が回動することを防ぐことができる。
<第1の実施例>
次に、本実施の形態に係る実施例について説明する。
図8に示すように、本実施例に係るマイクロミラー素子3は、平面視略の基部32およびこの基部32の一辺32aからX軸方向に延在するバランサ部33を備えた板状のミラー31と、基部32の一辺32aに一端が接続された第1のばね部材12と、基部32の一辺32aと向かい合う他辺32bに一端が接続された第2のばね部材13とを備えている。
基部32は、X軸方向の長さが600[μm]、Y軸方向の長さが100[μ]に形成されている。
バランサ部33は、基部32の一辺32aの両端からX軸方向に延在する平面視略矩形に形成されている。このバランサ部33は、X軸方向の長さが300[μm]、Y軸方向の長さが20[μ]に形成されている。
第1のばね部材12は、ばね定数が2kとされている。
第2のばね部材13は、ばね定数がkとされている。
このように形成されたマイクロミラー素子3は、上述した式(8)を満たしている。したがって、ミラー31の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子3に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー31には回動変位が発生しないこととなる。このように、ミラー31の回動を防ぐことができるので、光信号の強度の変動を防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー31が回動しないため、例えば、ミラー31が大きく回動してマイクロミラー素子3の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子3の破損も防ぐことができる。
また、本実施例におけるマイクロミラー素子3は、図9に示すように、Y軸方向に多数配列することにより、マイクロミラーアレイを形成することができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第2の実施の形態におけるバランサ部の構成をより明確に規定するものである。したがって、本実施の形態において、第1〜第3の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、適宜説明を省略する。
図10に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子4は、基部42およびこの基部42に接続されたバランサ部43を備えたミラー41と、このミラー41の基部42に一端が接続された2個の第1のばね部材12a,12bと、基部42に一端が接続された1個の第2のばね部材13とを備えている。
ミラー41は、平面視略矩形の基部42と、この基部42に連結された2つのバランサ部43とを備えている。
基部42は、一辺42aに第1のばね部材12a,12b、一辺22aと向かい合う他辺22bに第2のばね部材13に接続されている。また、一辺22aの両端には、連結部44を介してバランサ部43が連結されている。
バランサ部43は、各辺がX軸方向またはY軸方向に沿った平面視略矩形に形成されている。このようなバランサ部43は、部分的に細く形成された連結部44により基部42に連結されている。
連結部44は、一端が基部42の一辺42aの一方の端部、他端が一方のバランサ部43に接続された、X軸方向に延在する棒状の部材から構成される。ここで、連結部44の幅、すなわちY軸方向の長さは、バランサ部43の幅、すなわちY軸方向の長さよりも小さく形成されている。
図11に示す対比例のマイクロミラー素子200のように、連結部の幅がバランサ部の幅と同一の場合、すなわち、バランサ部43’が一様の幅を有する場合、基部42’近傍におけるバランサ部43’の幅が大きいので、基部42’に照射される光信号bの一部がバランサ部43’に照射されることがある。すると、図12に示すように、光信号の反射光には、周波数軸方向に損失リップルが発生してしまう。
そこで、本実施の形態では、基部42に接続される連結部44の幅をバランサ部43の幅よりも小さくしている。これにより、図10に示すように、基部42に照射される光信号bが連結部44に照射される面積を小さくなる。したがって、図13に示すように、光信号の反射光に、周波数軸方向に損失リップルが発生することを防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、連結部44の幅をバランサ部43の幅よりも小さく形成することにより、ミラーの基部42以外に照射される光信号の面積を小さくすることができるので、結果として、損失リップルの発生を防ぐことができる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第2〜第4の実施の形態におけるバランサ部を、ミラーの基部と同一平面内ではなく、ミラーの反射面が形成された面と反対側の面に形成するものである。したがって、本実施の形態において、第2〜第4の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、適宜説明を省略する。
図14に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子5は、一方の面に反射面が形成された板状のミラー51と、この51の一方の端部51aに一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー51の他方の端部51bに一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
ここで、ミラー51は、例えば、平面視長方形に形成されている。また、ミラー51の反射面が形成された面と反対側の他方の面には、第1のばね部材12a〜12mが接続された端部51a側に、板状のバランサ部52が形成されている。
このようなバランサ部52は、ミラー51の端部51bから重心GまでのX軸方向に沿った距離pが上式(1)、すなわち、kaL/(ka+kb)を満たすように、位置および大きさが設定されている。これにより、ミラー51の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子5に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー51にはミラー51の回動変位が発生しないこととなる。したがって、ミラー51が回動することを防ぐことができるので、光信号の強度の変動を防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー51が回動しないため、例えば、ミラー51が大きく回動してマイクロミラー素子5の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子5の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、バランサ部52を設けることにより、ミラー51の端部51bから重心GまでのX軸方向に沿った距離pがkaL/(ka+kb)を満たすようにすることにより、ミラー51が振動や衝撃を受けて加速度が印加されてもミラー51に作用する回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー51が回動することを防ぐことができる。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態におけるミラー11の平面形状をより明確に規定するものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、適宜説明を省略する。
図15に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子1’は、平面視略台形の形状を有するミラー11と、このミラー11の下底11aに一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー11の上底11bに一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
ミラー11は、下底11aの長さがa、上底11bの長さがb、高さがLの平面視台形に形成されている。このような台形のミラー11の上底11bから重心GまでのX軸方向における距離pは、一般的に知られている公式から下式(9)で表すことができる。
p=(a+2b)/3(a+b) ・・・(9)
この式(9)と、上述したミラー11の回動軸回りの回転モーメントが釣り合う条件である上式(1)とから、下式(10)を導出することができる。なお、この下式(10)は、kb>2kaのときに限定される。
a={(ka−2kb)/(kb−2ka)}b ・・・(10)
この式(10)を満たすようにミラー11の平面形状を設定する、すなわち、下底11aと上底11bの長さを設定してミラー11の重心位置を調整することにより、ミラー11の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子1’に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー11には回動変位が発生が発生しないこととなる。したがって、ミラー11の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー11が回動しないため、例えば、ミラー11が大きく回動してマイクロミラー素子1’の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子1’の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、a={(ka−2kb)/(kb−2ka)}bを満たすようにミラー11の平面形状を設定することにより、ミラー11が振動や衝撃を受けて加速度が印加されても、ミラー11に作用する回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー11が回動することを防ぐことができる。
<第2の実施例>
次に、本実施の形態における実施例について説明する。
図16に示すように、本実施例に係るマイクロミラー素子1”は、平面視略台形の形状を有するミラー11と、このミラー11の下底11aに一端が接続された5個の第1のばね部材12a〜12eと、ミラー11の上底11bに一端が接続された2個の第2のばね部材13a,13bとを備えている。
ミラー11は、下底11aの長さが90[μm]、上底11bの長さが30[μm]、高さが60[μm]の平面視台形に形成されている。
第1のばね部材12a〜12eのばね定数は、それぞれkである。したがって、第1のばね部材12a〜12eの合成ばね定数kaは5kとなる。
第2のばね部材13a,13bのばね定数は、それぞれ2kである。したがって、第2のばね部材13a,13bの合成ばね定数は4kとなる。
このように形成されたマイクロミラー素子1”は、上述した式(10)を満たしている。したがって、ミラー11の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子1”に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー11には回動変位が発生しないこととなる。このように、ミラー11の回動を防ぐことができるので、光信号の強度の変動を防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー11が回動しないため、例えば、ミラー11が大きく回動してマイクロミラー素子1”の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子1の破損も防ぐことができる。
また、本実施例におけるマイクロミラー素子1”は、図17に示すように、Y軸方向に多数配列することにより、マイクロミラーアレイを形成することができる。このとき、ミラー11は平面視台形に形成されているので、隣り合うミラー11の上底と下底の向きが逆になるようにマイクロミラー素子1”を配列することが望ましい。言い換えると、マイクロミラー素子1’の第1のばね部材12a〜12mは、隣り合う他のマイクロミラー素子1’の第2のばね部材13a〜13nとX軸方向に隣り合っている。これにより、高密度化を実現することができる。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態における第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nのばね定数をより明確に規定するものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、適宜説明を省略する。
図18に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子5は、平面視略台形の形状を有するミラー11と、このミラー11の下底11aに一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー11の上底11bに一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。
ミラー11は、平面視略台形に形成されており、一方の面には反射面(図示せず)が形成されている。また、ミラー11の下底11aには、ミラー11の重心Gを通るX軸に沿った軸線に対して線対称に第1のばね部材12a〜12mが接続されている。同様に、上底11bには、その軸線に対して線対称に第2のばね部材13a〜13nに接続されている。このようなミラー11は上底11bから重心GまでのX軸方向における距離pが上式(1)を満たすように設定されている。
第1のばね部材12a〜12mは、線対称の位置に設けられた部材同士が同じばね定数を有するように設定されている。例えば、第1のばね部材12aのばね定数をka1としたとき、この第1のばね部材12aと線対称な位置に設けられた第1のばね部材12mのばね定数kaMはka1と等しい値となっている。
第2のばね部材13a〜13nは、線対称の位置に設けられた部材同士が同じばね定数を有するように設定されている。例えば、第2のばね部材13aのばね定数をkb1としたとき、この第2のばね部材13aと線対称な位置に設けられた第2のばね部材13nのばね定数kbNはkb1と等しい値となっている。
ここで、図19に示す対比例となるマイクロミラー素子300を示す。このマイクロミラー素子300は、本実施の形態に係るミラー11と同等の形状を有するミラー11と、このミラー11の下底11aに一端が接続されたn個の第1のばね部材12a’〜12m’と、ミラー11の上底11bに一端が接続されたm個の第2のばね部材13a’〜13n’とを備えている。
ここで、第1のばね部材12a’〜12m’は、ミラー11の下底11aにおいて、ミラー11の重心Gを通るX軸に沿った軸線に対して線対称な位置に接続されているが、線対称な位置にあるばね部材のばね定数が異なるものとなっている。
同様に、第2のばね部材13a’〜13n’は、ミラー11の上底11bにおいて、ミラー11の重心Gを通るX軸に沿った軸線に対して線対称な位置に接続されているが、線対称な位置にあるばね部材のばね定数が異なるものとなっている。
このような対比例であるマイクロミラー素子300の場合、ミラー11のY軸に沿った回動軸θy回りの回転モーメントは釣り合っているものの、ミラー11のX軸に沿った回動軸θx回りの回転モーメントが釣り合っていない。このため、ミラー11が振動や衝撃を受けて加速度が印加されると、ミラー11が回動軸θx回りに回動するため、このミラー11により反射される光信号の強度が変動してしまうことがあった。また、図20に示すように、回動軸θx回りの変動量は、印加される加速度の大きさに比例している。このため、大きな加速度が加わるとミラー11が大きく回動してしまうので、例えば、ミラー11がマイクロミラー素子300の他の構成要素と衝突し、場合によってはこれらが破損してしまうこともあった。
そこで、本実施の形態では、ミラー11の重心Gを通るX軸に沿った軸線に対して線対称の位置にある第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nのばね定数が同じものとなるようにしている。これにより、ミラー11のY軸に沿った回動軸θy回りの回転モーメントのみならず、ミラー11のX軸に沿った回動軸θx回りの回転モーメントも釣り合うことになるので、マイクロミラー素子5に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー11には回動軸θyおよび回動軸θx回りの回動変位が発生しないこととなる。このように、ミラー11の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図21に示すように、回動軸θx回りの変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー11が回動しないため、例えば、ミラー11が大きく回動してマイクロミラー素子1の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子5の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nをミラー11の重心Gを通るX軸に沿った軸線に対して線対称に複数配置し、線対称の位置に設けられたばね部材同士が同じばね定数を有するようにすることにより、ミラー11が振動や衝撃を受けて加速度が印加されても、ミラー11に作用するX軸回りの回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー11がX軸回りに回動することを防ぐことができる。
なお、本実施の形態においては、第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nの両方において、線対称の位置に設けられたばね部材同士が同じばね定数を有する場合を例に説明したが、一方が線対称の位置に設けられたばね部材同士が同じばね定数を有するようにしてもよい。このようにしても、ミラー11がX軸回りに回動することを軽減させることができる。
また、本実施の形態のように、線対称の位置に設けられたばね部材同士が同じばね定数を有するようにすることは、上述した第1〜第6の実施の形態で説明した各マイクロミラー素子およびマイクロミラーアレイのばね部材にも適用できることは言うまでもない。
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態における支持部材の構成をより明確に規定したものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して、適宜説明を省略する。
図22に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子6は、平面視略台形の形状を有するミラー11と、このミラー11の下底11aに一端が接続されたn個の第1のばね部材12a〜12mと、ミラー11の上底11bに一端が接続されたm個の第2のばね部材13a〜13nとを備えている。また、マイクロミラー素子6は、例えば、基板やケースなどの互いに平行に配設された一対の支持部材(図示せず)と、一端が一方の支持部材に接続され、他端に第1のばね部材12a〜12mの他端が接続されたm個の第1の板ばね部材61a〜61mと、一端が他方の支持部材に接続され、他端に第2のばね部材13a〜13nの他端が接続されたn個の第2の板ばね部材62a〜62nとをさらに備えている。さらに、図23に示すように、マイクロミラー素子6は、ミラー11の下方、すなわちミラー11の平面に直交する方向にミラー11と略平行に配設された基板63と、この基板63上で、かつ、第1の板ばね部材61a〜61mおよび第2の板ばね部材62a〜62nに対向する位置にそれぞれ電極64が配置されている。
ここで、第1の板ばね部材61a〜61mは、第1のばね部材12a〜12mよりもばね定数が小さく設定されている。同様に、第2の板ばね部材62a〜62nについても、第2のばね部材13a〜13nよりもばね定数が小さく設定されている。したがって、ミラー11が上式(1)を満たすように形成することにより、ミラー11の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子6に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー11には回動変位が発生が発生しないこととなる。したがって、ミラー11の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー11が回動しないため、例えば、ミラー11が大きく回動してマイクロミラー素子6の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子6の破損も防ぐことができる。
このようなマイクロミラー素子6において、第1の板ばね部材61a〜61mおよび第2の板ばね部材62a〜62nを接地し、これらに対向配置された電極64に選択的に正または負の電圧を与えることで第1の板ばね部材61a〜61mまたは第2の板ばね部材62a〜62nを静電引力で吸引させる。すると、第1の板ばね部材61a〜61mや第2の板ばね部材62a〜62nがZ軸方向に移動するので、これらに接続された第1のばね部材12a〜12mおよび第2のばね部材13a〜13nを介してミラー11がY軸に沿った回動軸回りに回動することとなる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の板ばね部材61a〜61mおよび第2の板ばね部材62a〜62nを設けた場合であっても、ミラー11の上底11bから重心GまでのX軸方向に沿った距離pがkaL/(ka+kb)を満たすようにすることにより、ミラー11が振動や衝撃を受けて加速度が印加されてもミラー11に作用する回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー11が回動することを防ぐことができる。
また、本実施の形態のように、第1の板ばね部材61a〜61mおよび第2の板ばね部材62a〜62nを設けることは、上述した第1〜第7の実施の形態で説明した各マイクロミラー素子およびマイクロミラーアレイにも適用できることは言うまでもない。
[第9の実施の形態]
次に、本発明に係る第9の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第2の実施の形態における第1のばね部材の数量を2個、第2のばね部材の数量を1個にしたものである。したがって、本実施の形態において、第2の実施の形態と同等の構成要素については同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。
図24に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子7は、基部22および連結部24を介して基部22に接続された2個のバランサ部23を備えたミラー21と、このミラー21の基部22に一端が接続された2個の第1のばね部材12a,12bと、ミラー21の基部22に一端が接続された第2のばね部材13aとを備えている。
ここで、第1のばね部材12aのばね定数はka1、第1のばね部材12bのばね定数はka2である。したがって、合成ばね定数kaは、ka1+ka2で表される。
一方、第2のばね部材13aのばね定数は、kb1である。したがって、合成ばね定数kbは、kb1となる。
ミラー21は、平面視略矩形の基部22と、この基部22に連結された2つのバランサ部23とを備えている。
基部22は、一辺22aに第1のばね部材12a,12b、一辺22aと向かい合う他辺22bに第2のばね部材13aが接続されている。また、一辺22aの両端には、連結部24を介して、バランサ部23が連結されている。
バランサ部23は、平面視略矩形の形状を有し、一辺22aの両端からX軸方向に基部22から離間して配置されている。このようなバランサ部23は、連結部24により基部22に連結されている。
連結部24は、棒状の部材から構成され、一端が基部22の一辺22aの一方の端部、他端がバランサ部23に接続されている。
このようなマイクロミラー素子7においても、バランサ部23を設けることにより、ミラー21は、他辺22bから重心GまでのX軸方向に沿った距離pが上式(1)、すなわち、kaL/(ka+kb)を満たすように形成されている。これにより、ミラー21の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子7に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー21にはミラー21の回動変位が発生しないこととなる。したがって、ミラー21の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。また、図5に示すように、回動角度の変動量は加速度に関わらず生じず、大きな加速度が加わってもミラー21が回動しないため、例えば、ミラー21が大きく回動してマイクロミラー素子2の他の構成要素と衝突してこれらが破損するといったマイクロミラー素子2の破損も防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、2個の第1のばね部材12a,12bと、1個の第2のばね部材13aが接続されたミラー21においても、バランサ部23を設けて、ミラー21の他辺22bからミラー21の重心Gまでの距離pがkaL/(ka+kb)を満たすようにミラー21を形成することにより、ミラー21が振動や衝撃を受けて加速度が印加されても、ミラー21に作用する回転モーメントが釣り合うこととなるので、ミラー21が回動することを防ぐことができる。
なお、本実施の形態において、バランサ部23を2個設ける場合を例に説明したが、バランサ部23を設ける数量については2個に限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、図25に示すマイクロミラー素子7’のように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子7にさらにもう1つのバランサ部25を設けるようにしてもよい。このバランサ部25は、一辺22aの中央部からX軸方向に基部22から離間して配置され、連結部26により基部22と連結されている。この連結部26は、一端が一辺22aの中央部に接続され、他端がバランサ部25に接続された、X軸方向に延在する棒状の部材からなる。このようなバランサ部25をさらに備えるマイクロミラー素子7’においても、本実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、本実施の形態に係るマイクロミラー素子7や上述したマイクロミラー素子7’は、Y軸方向に多数配列することにより、マイクロミラーアレイを形成することができる。このとき、そこで、図25に示すように、隣り合うマイクロミラー素子7’とバランサ部23,25が設けられた一辺22aと他辺22bとの向きが逆になるように配列することが望ましい。もし、図26に示すように、隣り合うマイクロミラー素子7’とバランサ部23,25が設けられた一辺22aと他辺22bとの向きが同じように配列すると、バランサ部23が基部22からY軸方向に離間して配設されているので、バランサ部23が隣り合うマイクロミラー素子7’のバランサ部23と干渉するため、基部22の間隔を短くすることができない。これに対して、図25に示すように、バランサ部23,25が設けられた一辺22aと、それらが設けられていない他辺22bとが交互に隣り合うようにマイクロミラー素子7’を配列することにより、バランサ部23が隣り合うマイクロミラー素子7’のバランサ部23と干渉しないので、基部22の間隔を短くすることができる。結果として、マイクロミラーアレイにおけるフィルファクタを高くすることができる。
<第3の実施例>
次に、本実施の形態に係る実施例について説明する。
図27に示すように、本実施例に係るマイクロミラーアレイは、マイクロミラー素子8がY軸方向に複数配列されている。
マイクロミラー素子8は、基部82および連結部84を介して基部82に接続された3個のバランサ部83を備えたミラー81と、このミラー81の基部82に一端が接続された2個の第1のばね部材12a,12bと、ミラー81の基部82に一端が接続された第2のばね部材13aとを備えている。また、マイクロミラー素子8は、例えば、基板やケースなどの互いに平行に配設された一対の支持部材(図示せず)と、一端が一方の支持部材に接続され、他端に第1のばね部材12a,12bの他端が接続された2個の第1の板ばね部材85a,85bと、一端が他方の支持部材に接続され、他端に第2のばね部材13aの他端が接続された第2の板ばね部材86とを備えている。さらに、図28に示すように、ミラー81の下方、すなわちミラー81の平面に直交する方向にミラー81と略平行に配設された基板87と、この基板87上で、かつ、第1の板ばね部材85a,85bおよび第2の板ばね部材86に対向する位置にそれぞれ電極88が配置されている。
ここで、第1のばね部材12aのばね定数はka1、第1のばね部材12bのばね定数はka2である。したがって、合成ばね定数kaは、ka1+ka2で表される。
一方、第2のばね部材13aのばね定数は、kb1である。したがって、合成ばね定数kbは、kb1となる。
ミラー81は、平面視略矩形の基部82と、この基部82に連結された3つのバランサ部83とを備えている。
基部82は、一辺82aに第1のばね部材12a,12b、一辺82aと向かい合う他辺82bに第2のばね部材13aが接続されている。また、一辺82aの両端および中央部には、連結部84を介して、バランサ部83が連結されている。本実施例において、基部82のX軸方向の長さは600[μm]、Y軸方向の長さは100[μm]に設定されている。また基部82の上面には、TiまたはAu薄膜が形成されている。
バランサ部83は、平面視略矩形の形状を有し、一辺82aの両端または中央部からX軸方向に基部82から離間して配置されている。本実施例において、バランサ部83のX軸方向の長さは200[μm]に設定されている。このようなバランサ部83は、連結部84により基部82に連結されている。
連結部84は、棒状の部材から構成され、一端が基部22の一辺22aの一方の端部または中央部、他端がバランサ部83に接続されている。本実例において、一辺82aからバランサ部83までのX軸方向における距離は40μmに設定されている。
第1の板ばね部材85a,85bおよび第2の板ばね部材86は、例えばSiから形成され、ミラー81の法線方向に移動可能とされている。
基板87は、例えばSi基板から構成されている。
電極88は、平面視略矩形の形状を有し、Auから構成されている。
このような形状を有するマイクロミラー素子8は、上式(8)を満たすようにバランサ部83の重心位置が設定されている。これにより、ミラー81の回動軸回りの回転モーメントが釣り合うことになるので、マイクロミラー素子8に振動や衝撃が加わることにより加速度が印加されても、ミラー81には回動変位が発生が発生しないこととなる。したがって、ミラー81の回動を防ぐことができるので、光信号の強度が変動することを防ぐことができる。
マイクロミラー素子8において、第1の板ばね部材85a,85bおよび第2の板ばね部材86を接地し、これらに対向配置された電極88に選択的に正または負の電圧を与えることで第1の板ばね部材85a,85bまたは第2の板ばね部材86を静電引力で吸引させる。すると、第1の板ばね部材85a,85bや第2の板ばね部材86がZ軸方向に移動するので、これらに接続された第1のばね部材12a,12bおよび第2のばね部材13aを介してミラー81がY軸に沿った回動軸回りに回動することとなる。
このようなマイクロミラー素子8は、図27に示すように、X軸方向に配列されることにより、マイクロミラーアレイを構成している。このマイクロミラーアレイにおいて、マイクロミラー素子8は、隣り合うマイクロミラー素子8とバランサ部83が設けられた一辺22aの向きが逆になるように配列されている。言い換えると、マイクロミラー素子8の1つの第1のばね部材12a,12bは、隣り合う他のマイクロミラー素子8の第2のばね部材13とX軸方向に隣り合っている。このように配列することで、バランサ部23が隣り合うマイクロミラー素子8のバランサ部25と干渉しないので、基部82の間隔を短くすることができる。結果として、マイクロミラーアレイにおけるフィルファクタを高くすることができる。
なお、上述した第1〜第8の実施の形態で示した各マイクロミラー素子についても、マイクロミラー素子8と同様に一列に複数配列することにより、フィルファクタの高いマイクロミラーアレイを構成できることは言うまでもない。